少年犯罪や非行少女は他人事じゃない【刑務所のアイドルPaix2(ペペ)×元レディース・中村すえこ】

 元レディースの総長で少年院送致の経験もある中村すえこさんが監修・監督を務めた教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』が完成、上映会が続いている。映画では、少年院を出院(≒卒業)する直前の4人の少女が中村さんに収容の経緯や今の思いを明かし、一部に再現ドラマも織り込んだ。今回、少年院や刑務所の慰問で「Prisonコンサート」を続けている“刑務所のアイドル”こと女性デュオPaix2(ペペ)のお2人と中村さんが対談。前編では、少年院の少女たちの家庭環境や更生について話を聞いたが、後編では、それぞれの活動を続ける意味と今後について語ってもらった。

(前編はこちら)

■やり直したいと思っている子たちを応援したい

――後編では、映画のお話とともに、中村さんとPaix2(ペペ)のお2人の活動についてもお聞きしたいと思います。作品は商業映画ではなく、クラウドファンディングや寄付を募って資金を集めて「教育映画」として製作されていますね。

中村すえこ(以下、中村) はい。学校などでの上映も目指しているので、入場料は無料です。今後も月に1回ほどのペースで無料上映会を予定しています。

――中村さんは、少年院出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」に参加されて女子少年院での講話を続けていらっしゃるほか、働くシングルマザーで、大学生でもあるんですね。

中村 はい。国内にある9カ所の女子少年院全部に伺いました。「人生、何度でもやり直せるよ。この私だってできたから、大丈夫!」というようなお話をさせていただいています。やり直したいと思っている子たちを応援したいですね。大学では、社会科の高校教員免許を取得するために学んでいます。大学の授業でライフストーリーを語る機会があり、私が少年院時代のことを含めて話した時に、「非行は他人事ではない」と、周りの学生たちにも理解してもらえたんです。直接話すことや映像は伝わるんだなと、改めて思いましたね。

――Paix2(ペペ)のお2人は、全国の少年院や刑務所での「Prisonコンサート」の活動とともに、保護司、矯正支援官としてもご活躍です。

Megumi(井勝めぐみ) はい。2014年に保護司、15年に矯正支援官に就任させていただき、今年は7月から北海道・月形町の「観光典獄」にも任命していただきました。典獄とは所長のことです。

Manami(北尾真奈美) 保護司の仕事を通じて、加害者である受刑者の皆さんと被害者の皆さんとの間にいる「第三者的な立場」が重要だと実感しています。

――なるほど。少年院や刑務所の収容者を励ます時に、被害者の方にも思いをはせられているんですね。「Prisonコンサート」はボランティアで行われているそうですが、採算は合うんですか?

Megumi まったく合いません(笑)。矯正支援官は交通費と宿泊費など実費はいただけますけど、全額を賄えるほどではないんです。

Manami それでも続けているのは、いろんな出会いがあるからですね。出所した方がコンサートに来てくださったり、CDを買ってくださったりすると、「この方は、もう再犯することはないんだな」と思います。

Megumi 私たちの音楽活動を知って、お米を送ってくださる方もいて。コンサートを通じて、人の心の温かさをたくさん知ることもできました。

――すばらしいことですね。お2人は、歌手になる前に、別のお仕事をされていたんですよね。

Manami はい、私は大学の研究室にいて、Megumiは看護師でした。別々に「日本縦断カラオケ選抜歌謡祭」の鳥取大会に出場して、主催者から「デュオでやってみてはどうか」と声をかけられたんです。

――今のマネジャーさんですね。デビュー後は、地元のテレビやラジオに出演されて、「一日警察署長」も務められています。

Manami それで、署長さんから「歌がさわやかだから、刑務所で慰問をしてはどうか」と言われたんです。

――怖くなかったんですか?

Megumi 怖かったというより、最初は刑務所の雰囲気に圧倒されて、とても緊張しました。

Manami 今はだいぶ変わりましたけど、以前はみんな灰色の服装で、色のない世界だったんです。

Megumi 慰問の際、受刑者の皆さんに許されているのは、歌い終わった後の拍手だけ。それ以外は何もしてはいけないので、とても静かで。「私たちがコンサートして、本当によかったのかな」って落ち込みました。でも、あとで感想文をいただいて、「楽しかったんだ……」とわかりました。

中村 それが今では刑務所のアイドルですからね。ストーカーとか、怖い思いはしないんですか(笑)?

Manami・Megumi (2人同時に)今のところはないです(笑)。

Megumi 一般のライブの時に、物販コーナーに黙って1万円札を置いて立ち去っていく人がいて。慌てて追いかけると、「いや、何かの足しにしてください」と言って帰っていかれました。

――その方も、元受刑者さんなのでしょうね。

Megumi たぶんそうだと思います。

中村 でも、1万円札を置いていけるということは、出所後も生活できてるということですよね。

Manami そう思います。刑務所でもらう「作業報奨金」の封筒を、封を切らずに持ってきてくださった方もいらっしゃいます。さすがにいただけなくて、福祉施設に寄付させていただきました。

中村 報奨金はすごいですね(笑)。いろんな方に応援されているんですね。お2人が、お金が目当てじゃないって伝わっているんでしょうね。

――最近の少年犯罪についてもお聞きします。少子化の影響で少年院の収容者数も減り、全国の施設で統廃合が進んでいると報じられていますね。一方で、少年犯罪の件数自体は減っていても、「振り込め詐欺」の受け子などで摘発される子どもたちは増えています。警察庁の調査などによると、刑法犯で摘発された少年は2万3,489人で、戦後最少を更新しています。でも、振り込め詐欺事件で2018年の1年間に摘発された20歳未満の少年は750人、前年の約1.6倍に上り、約8割が現金受け取り役の「受け子」です。

中村 最近の「受け子」にはワルっぽくない、いわゆる普通のイケメンふうの男の子も多いようです。罪の意識がないのでしょうね。建設現場で一日汗を流して働いても1万円にもならないのに、「受け子」なら2万円か3万円くらいにはなりますから、真面目に働く気はなくなりますよ。少女の売春も同じで、短時間で高額のお金をもらえますから、検挙されても、また同じことを繰り返します。摘発の件数は減っていても、再犯者は多いんですね。また、薬物犯罪も増えています。

――警視庁管内での大麻取締法違反の検挙件数は6年連続で増加しており、少女の覚せい剤取締法違反の事案も後を絶たないようですね(警視庁生活安全部少年育成課・平成30年中の「少年育成活動の概況」)。しかし、中村さんと、Paix2(ペペ)のお2人の「失敗しても人生を諦めないで、前を向いて歩いてほしい」というメッセージは、多くの方に伝わっていくと思います。

中村 はい。少年院に入って、社会に出て、また失敗しても諦めないでほしいです。映画にも、そういう思いを込めています。

Manami 私たちも「元気だせよ」をはじめとして、刑務所や少年院だけではなく、いろいろな方への応援歌をたくさん作っているので、ぜひ一般の方にも聴いていただきたいです。

――お2人の夢は、『NHK紅白歌合戦』への出場だそうですね。

Megumi はい、それだけが夢ではありませんが、もしも、そのような機会があれば、刑務所のグラウンドからの中継で出演させてほしいです。紅白は、大みそかの家族だんらんの象徴です。社会の皆さんに、幸せとはどういうことかを考えてもらえる機会になるのではないかと思うからです。塀の中で過ごす人もいれば、家族と過ごす人もいる。幸せの対比を幅広く伝えることができれば、少しでも犯罪の抑止につながるのではないかと思っています。

――ありがとうございました。

Paix2(ペペ)
Manami(マナミ、北尾真奈美)とMegumi(メグミ、井勝めぐみ)によるデュオ。01年に日本コロムビアよりメジャーデビュー。アルバムに『逢えたらいいな』(05年)、著書に『逢えたらいいな―プリズン・コンサート三〇〇回達成への道のり』(12年、鹿砦社)など。デビュー1年前から全国の刑務所や少年院などでの公演「Prisonコンサート」を続け、「受刑者のアイドル」と呼ばれる。14年に保護司、15年に矯正支援官に就任。16年 には「Prisonコンサート」400回の功績に対して法務大臣より感謝状を授与された。ユニット名はフランス語で「平和」を意味するpaix (発音は「ぺ」)を二つ重ねている。2019年7月より北海道・月形町の「月形観光大使(観光典獄)」に就任。「典獄」は「刑務所長」の意。
公式サイト

中村すえこ
ドキュメンタリー教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』監修・監督。15歳で少女たちの暴走族・レディースの総長となり、傷害事件を起こして少年院に1年間収容される。結婚、出産、離婚を経験してシングルマザーとして働きながら、09年に創設された少年院出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」に参加、多くの出院者と交流を続ける。著書『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(08年、ミリオン出版)が『ハードライフ~紫の青春・恋と喧嘩と特攻服~』(関顕嗣監督)として11年に映画化。
『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』公式サイト
法務省東京矯正管区主催上映会
日程:2019年9月22日(日)
場所:矯正研修所講堂(東京都昭島市もくせいの杜2-1-20)
上映時間:上映開始11:10〜中村すえこ舞台挨拶(終了13:10)
入場料:無料
主催:東京矯正管区
問い合わせ:東京矯正管区第三部 048-600-1500

少年犯罪や非行少女は他人事じゃない【刑務所のアイドルPaix2(ペペ)×元レディース・中村すえこ】

 元レディースの総長で少年院送致の経験もある中村すえこさんが監修・監督を務めた教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』が完成、上映会が続いている。映画では、少年院を出院(≒卒業)する直前の4人の少女が中村さんに収容の経緯や今の思いを明かし、一部に再現ドラマも織り込んだ。今回、少年院や刑務所の慰問で「Prisonコンサート」を続けている“刑務所のアイドル”こと女性デュオPaix2(ペペ)のお2人と中村さんが対談。前編では、少年院の少女たちの家庭環境や更生について話を聞いたが、後編では、それぞれの活動を続ける意味と今後について語ってもらった。

(前編はこちら)

■やり直したいと思っている子たちを応援したい

――後編では、映画のお話とともに、中村さんとPaix2(ペペ)のお2人の活動についてもお聞きしたいと思います。作品は商業映画ではなく、クラウドファンディングや寄付を募って資金を集めて「教育映画」として製作されていますね。

中村すえこ(以下、中村) はい。学校などでの上映も目指しているので、入場料は無料です。今後も月に1回ほどのペースで無料上映会を予定しています。

――中村さんは、少年院出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」に参加されて女子少年院での講話を続けていらっしゃるほか、働くシングルマザーで、大学生でもあるんですね。

中村 はい。国内にある9カ所の女子少年院全部に伺いました。「人生、何度でもやり直せるよ。この私だってできたから、大丈夫!」というようなお話をさせていただいています。やり直したいと思っている子たちを応援したいですね。大学では、社会科の高校教員免許を取得するために学んでいます。大学の授業でライフストーリーを語る機会があり、私が少年院時代のことを含めて話した時に、「非行は他人事ではない」と、周りの学生たちにも理解してもらえたんです。直接話すことや映像は伝わるんだなと、改めて思いましたね。

――Paix2(ペペ)のお2人は、全国の少年院や刑務所での「Prisonコンサート」の活動とともに、保護司、矯正支援官としてもご活躍です。

Megumi(井勝めぐみ) はい。2014年に保護司、15年に矯正支援官に就任させていただき、今年は7月から北海道・月形町の「観光典獄」にも任命していただきました。典獄とは所長のことです。

Manami(北尾真奈美) 保護司の仕事を通じて、加害者である受刑者の皆さんと被害者の皆さんとの間にいる「第三者的な立場」が重要だと実感しています。

――なるほど。少年院や刑務所の収容者を励ます時に、被害者の方にも思いをはせられているんですね。「Prisonコンサート」はボランティアで行われているそうですが、採算は合うんですか?

Megumi まったく合いません(笑)。矯正支援官は交通費と宿泊費など実費はいただけますけど、全額を賄えるほどではないんです。

Manami それでも続けているのは、いろんな出会いがあるからですね。出所した方がコンサートに来てくださったり、CDを買ってくださったりすると、「この方は、もう再犯することはないんだな」と思います。

Megumi 私たちの音楽活動を知って、お米を送ってくださる方もいて。コンサートを通じて、人の心の温かさをたくさん知ることもできました。

――すばらしいことですね。お2人は、歌手になる前に、別のお仕事をされていたんですよね。

Manami はい、私は大学の研究室にいて、Megumiは看護師でした。別々に「日本縦断カラオケ選抜歌謡祭」の鳥取大会に出場して、主催者から「デュオでやってみてはどうか」と声をかけられたんです。

――今のマネジャーさんですね。デビュー後は、地元のテレビやラジオに出演されて、「一日警察署長」も務められています。

Manami それで、署長さんから「歌がさわやかだから、刑務所で慰問をしてはどうか」と言われたんです。

――怖くなかったんですか?

Megumi 怖かったというより、最初は刑務所の雰囲気に圧倒されて、とても緊張しました。

Manami 今はだいぶ変わりましたけど、以前はみんな灰色の服装で、色のない世界だったんです。

Megumi 慰問の際、受刑者の皆さんに許されているのは、歌い終わった後の拍手だけ。それ以外は何もしてはいけないので、とても静かで。「私たちがコンサートして、本当によかったのかな」って落ち込みました。でも、あとで感想文をいただいて、「楽しかったんだ……」とわかりました。

中村 それが今では刑務所のアイドルですからね。ストーカーとか、怖い思いはしないんですか(笑)?

Manami・Megumi (2人同時に)今のところはないです(笑)。

Megumi 一般のライブの時に、物販コーナーに黙って1万円札を置いて立ち去っていく人がいて。慌てて追いかけると、「いや、何かの足しにしてください」と言って帰っていかれました。

――その方も、元受刑者さんなのでしょうね。

Megumi たぶんそうだと思います。

中村 でも、1万円札を置いていけるということは、出所後も生活できてるということですよね。

Manami そう思います。刑務所でもらう「作業報奨金」の封筒を、封を切らずに持ってきてくださった方もいらっしゃいます。さすがにいただけなくて、福祉施設に寄付させていただきました。

中村 報奨金はすごいですね(笑)。いろんな方に応援されているんですね。お2人が、お金が目当てじゃないって伝わっているんでしょうね。

――最近の少年犯罪についてもお聞きします。少子化の影響で少年院の収容者数も減り、全国の施設で統廃合が進んでいると報じられていますね。一方で、少年犯罪の件数自体は減っていても、「振り込め詐欺」の受け子などで摘発される子どもたちは増えています。警察庁の調査などによると、刑法犯で摘発された少年は2万3,489人で、戦後最少を更新しています。でも、振り込め詐欺事件で2018年の1年間に摘発された20歳未満の少年は750人、前年の約1.6倍に上り、約8割が現金受け取り役の「受け子」です。

中村 最近の「受け子」にはワルっぽくない、いわゆる普通のイケメンふうの男の子も多いようです。罪の意識がないのでしょうね。建設現場で一日汗を流して働いても1万円にもならないのに、「受け子」なら2万円か3万円くらいにはなりますから、真面目に働く気はなくなりますよ。少女の売春も同じで、短時間で高額のお金をもらえますから、検挙されても、また同じことを繰り返します。摘発の件数は減っていても、再犯者は多いんですね。また、薬物犯罪も増えています。

――警視庁管内での大麻取締法違反の検挙件数は6年連続で増加しており、少女の覚せい剤取締法違反の事案も後を絶たないようですね(警視庁生活安全部少年育成課・平成30年中の「少年育成活動の概況」)。しかし、中村さんと、Paix2(ペペ)のお2人の「失敗しても人生を諦めないで、前を向いて歩いてほしい」というメッセージは、多くの方に伝わっていくと思います。

中村 はい。少年院に入って、社会に出て、また失敗しても諦めないでほしいです。映画にも、そういう思いを込めています。

Manami 私たちも「元気だせよ」をはじめとして、刑務所や少年院だけではなく、いろいろな方への応援歌をたくさん作っているので、ぜひ一般の方にも聴いていただきたいです。

――お2人の夢は、『NHK紅白歌合戦』への出場だそうですね。

Megumi はい、それだけが夢ではありませんが、もしも、そのような機会があれば、刑務所のグラウンドからの中継で出演させてほしいです。紅白は、大みそかの家族だんらんの象徴です。社会の皆さんに、幸せとはどういうことかを考えてもらえる機会になるのではないかと思うからです。塀の中で過ごす人もいれば、家族と過ごす人もいる。幸せの対比を幅広く伝えることができれば、少しでも犯罪の抑止につながるのではないかと思っています。

――ありがとうございました。

Paix2(ペペ)
Manami(マナミ、北尾真奈美)とMegumi(メグミ、井勝めぐみ)によるデュオ。01年に日本コロムビアよりメジャーデビュー。アルバムに『逢えたらいいな』(05年)、著書に『逢えたらいいな―プリズン・コンサート三〇〇回達成への道のり』(12年、鹿砦社)など。デビュー1年前から全国の刑務所や少年院などでの公演「Prisonコンサート」を続け、「受刑者のアイドル」と呼ばれる。14年に保護司、15年に矯正支援官に就任。16年 には「Prisonコンサート」400回の功績に対して法務大臣より感謝状を授与された。ユニット名はフランス語で「平和」を意味するpaix (発音は「ぺ」)を二つ重ねている。2019年7月より北海道・月形町の「月形観光大使(観光典獄)」に就任。「典獄」は「刑務所長」の意。
公式サイト

中村すえこ
ドキュメンタリー教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』監修・監督。15歳で少女たちの暴走族・レディースの総長となり、傷害事件を起こして少年院に1年間収容される。結婚、出産、離婚を経験してシングルマザーとして働きながら、09年に創設された少年院出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」に参加、多くの出院者と交流を続ける。著書『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(08年、ミリオン出版)が『ハードライフ~紫の青春・恋と喧嘩と特攻服~』(関顕嗣監督)として11年に映画化。
『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』公式サイト
法務省東京矯正管区主催上映会
日程:2019年9月22日(日)
場所:矯正研修所講堂(東京都昭島市もくせいの杜2-1-20)
上映時間:上映開始11:10〜中村すえこ舞台挨拶(終了13:10)
入場料:無料
主催:東京矯正管区
問い合わせ:東京矯正管区第三部 048-600-1500

覚醒剤、万引、パパ活、整形――少年院の少女たちの事情【元レディース総長・中村すえこ×刑務所のアイドル・Paix2】

 元レディースの総長で少年院送致の経験もある中村すえこさんが監修・監督を務めた教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』が完成、上映会が続いている。映画では、少年院を出院(≒卒業)する直前の4人の少女が中村さんに収容の経緯や今の思いを明かし、一部に再現ドラマも織り込んだ。今回、少年院や刑務所の慰問で「Prisonコンサート」を続けている“刑務所のアイドル”こと女性デュオPaix2(ペペ)と、中村さんの対談で、少女たちの更生について話してもらった。

■「こんな少女たちがいる」と知ってほしくて

――この映画には、佳奈、沙羅、美和、遥香(いずれも仮名)の4人の少女たちが登場します。佳奈は乳児院と児童養護施設で育って覚醒剤にまで手を出し、沙羅は薬物依存症で生活保護を受けている母のために万引を続け、美和は整形手術を繰り返し、「パパ活」で稼いだ600万円をホストに貢ぎ、遥香は男の言いなりになって美人局に加担して検挙され、それぞれ少年院に収容されました。顔にはモザイクがかかっていますが、少女たちの「記憶」はとてもリアルに伝わってきますね。

中村すえこ(以下、中村) そうなんです。私は少年院の出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」の活動として全国の女子少年院を回ってきたのですが、今どきの「不良少女」たちの抱える複雑な事情は、私の子どもの頃とは違うなと実感しています。私の頃はなんでも暴力で解決して、もっと単純だった気がします(笑)。

 収容の期間を終えて出院したところで、少女たちが社会で生きていくにはハードルがたくさんあります。直接助けてあげられなくても、まず「こんな子たちがいるんだ」と多くの方に知ってほしくて、ドキュメンタリー映画を作りたいと考えてきました。

――中村さんの少女時代を綴った著書『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(ミリオン出版)も映画化されていますね。   

中村 はい。この時に「映画の発信力ってすごいな」と思ったんです。今回は法務省にも協力をいただいているので、かなり突っ込んだ取材ができました。全部で110分と長めなんですが、カットしたくない場面もたくさんありました。

――Paix2(ペペ)のお2人は、映画を見て、どのように感じましたか? お2人は、2000年から国内の少年院や刑務所などで「Prisonコンサート」を開催されており、公演回数は9月7日現在で487回にも上っていますね。

Manami(北尾真奈美) 一言でいえば、作品は「重かった」ですね。少年院の子どもたちとは、コンサートの時しか接することがないので。

――「Prisonコンサート」では、子どもたちはとても楽しそうにしていますね。

Manami はい。みんないい顔をしているので、「(罪を犯して少年院にいても)法務教官の先生方に守られて、助けられているんだな」と思っていたんです。でも、この映画を見て、それだけではないんだなと気づきました。少年院について、私たちはまだまだ知らないこともあるし、先生も大変だなと思いました。

Megumi(井勝めぐみ) 本当に先生方は大変ですね。私もそう思いました。Manamiと同じで、公演を通じてしか知らなかった少年院の少女たちについて、いろいろ知ることができました。また、彼女たちがカメラの前で自分を表現できているのは素晴らしいとも思いました。私たち大人が「こういう人生もある」と知り、今後できることや問題点などを考えることができる作品です。いろんな葛藤があっても、少年院での経験は将来、報われるんじゃないかなあとも考えています。

中村 はい、むしろ少年院に行かずに矯正教育を受けなかった子たちのほうが心配です。逮捕されないまま悪いことを続けて大人になって、刑務所に行ったら、もう矯正は難しいですね。刑務官の指示に従っていればいい刑務所と違って、少年院は、とにかく先生たちが自分に向き合わせて考えさせますから、すごく厳しいんです。でも、それが結局は自分のためになります。私も少年院に行って多くのことを学びました。まあ最初から逮捕されるようなことをしてはダメなんですけれども(笑)。

Manami なるほど。ある少年院のコンサートで、入ったばかりの女の子と出会って、たまたま1年後に同じ施設で再会したことがありました。1年間で表情がまったく違いましたね。出院が間近で、生き生きとしていました。先生方がきちんと向き合ってくれたからでしょうが、出院してから自分を保っていくのは大変だろうなと、かわいそうに思ったことがあります。

中村 たしかに出院後のほうが心配ですね。出てからの「居場所」、つまり住むところと働く場所の問題はとても大きいです。そもそも少年院に行くような子たちは家庭も崩壊しているし、まず帰るところがありません。映画には、せっかくの居場所からいなくなってしまう子が登場します。詳しくは映画を見ていただいて(笑)。

――出演している少女たちは、それぞれ親との葛藤を抱えていました。保護者の考え方もそれぞれですし、少年院の先生である法務教官にもいろいろな方がいらっしゃるのだと思いますが、子どもたちに寄り添うことの難しさがわかります。

中村 非行に走る原因は、たいていは親との関係です。その親もいい育ち方をしていないことがほとんどです。親に愛されたことがないから、うまく愛情が表現できないのも、彼女たちの特性ですね。自分のことも好きじゃないんです。

Megumi それ、わかります。以前、コンサートの後にいただく感想文に、「こんな私と握手をしてくれて、うれしかった」と書かれていたことがありました。私は「公演を聴いてくれてありがとう」という気持ちで、普通に握手をしただけなんですが、まだ子どもの彼女たちが「こんな私」と言っていて……。反抗も、したくてしているのではないのでしょう。自分がどうしていいかわからない子どもたちと、距離を縮められたらいいですね。

中村 私もそうでしたけど、子どもたちは寂しいんです。当時は、それすらわかりませんでした。それで、私の場合は暴走族ですが、知り合った仲間次第で窃盗や美人局、男の子ならオレオレ詐欺の受け子などの非行に関わっていくんですね。そういう子どもたちは「加害者」ではあるんですが、その前に家庭が貧困だったり、虐待や育児放棄をされていたりした「被害者」なんです。

――そんな環境で生まれ育ったら、「いい子になれ」というほうがムリですね。

中村 でも、世間の大半の人たちは、加害者である少年が被害者という事実は知らないし、知ろうともしません。「少年院に収容された非行少年」と言う印象しか持っていません。事件を起こして少年院で学び直しても、社会に出てまた挫折してしまう子どもたちもいることを、多くの方に知っていただきたいと思っています。

――私たち大人が温かい目で見守れば、状況は変わるかもしれませんね。

中村 作品が別世界の話ではないと感じてほしいです。こうした事実を知ることで、人も社会も変われると信じています。

Megumi 私は、たまたま学校に行かせてもらえたけれど、そうではない子どもたちもたくさんいる。直接彼らに何かをできなくても、それを「知ること」から始まるんですね。
(後編に続く)

Paix2(ペペ)
Manami(マナミ、北尾真奈美)とMegumi(メグミ、井勝めぐみ)によるデュオ。2001年に日本コロムビアよりメジャーデビュー。アルバムに『逢えたらいいな』(05年)、著書に『逢えたらいいな―プリズン・コンサート三〇〇回達成への道のり』(12年、鹿砦社)など。デビュー1年前から全国の刑務所や少年院などでの公演「Prisonコンサート」を続け、「受刑者のアイドル」と呼ばれる。14年に保護司、15年に矯正支援官に就任。16年には「Prisonコンサート」400回の功績に対して法務大臣より感謝状を授与された。ユニット名はフランス語で「平和」を意味するpaix (発音は「ぺ」)を二つ重ねている。2019年7月より北海道・月形町の「月形観光大使(観光典獄)」に就任。「典獄」は「刑務所長」の意。
公式サイト

中村すえこ
ドキュメンタリー教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』監修・監督。15歳で少女たちの暴走族・レディースの総長となり、傷害事件を起こして少年院に1年間収容される。結婚、出産、離婚を経験してシングルマザーとして働きながら、09年に創設された少年院出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」に参加、多くの出院者と交流を続ける。著書『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(08年、ミリオン出版)が『ハードライフ~紫の青春・恋と喧嘩と特攻服~』(関顕嗣監督)として11年に映画化。
『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』公式サイト

法務省東京矯正管区主催上映会
日程:2019年9月22日(日)
場所:矯正研修所講堂(東京都昭島市もくせいの杜2-1-20)
上映時間:上映開始11:10〜中村すえこ舞台挨拶(終了13:10)
入場料:無料
主催:東京矯正管区
問い合わせ:東京矯正管区第三部 048-600-1500

罪を犯した人がやり直すために何が必要か 元レディース総長が、行き場のない少女たちを支える理由

<p> 「犯罪白書」によると、2013年に刑法犯で検挙された少年は約9万人。少年犯罪は成人犯罪とともに戦後から減少傾向が続いているものの、「再非行少年」(いわゆる再犯)の割合は13年で過去最高の34.3%に達した。検挙された少年の約3割に非行歴があることになり、成人の再犯率(約4割)に迫る勢いだ。<br />  「少年院を出ても、居場所がなければ再犯に結びつきやすいのです」。こう話す中村すえこさんは、自らも女子少年院暮らしを経験し、現在は出院者を受け入れる「セリエ中間支援施設」を準備中だが、なんとレディース(女性だけの暴走族)の元総長として知られた存在だった。行き場のない少年少女を支える活動についてお聞きした。</p>