『ボクらの時代』中村雅俊と小日向文世、45年前の“大スターと付き人”の関係性

 25日放送の『ボクらの時代』(フジテレビ系)に出演したのは中村雅俊、田山涼成、小日向文世の3人。ベテラン俳優たちの集いだが、その付き合いも長く、小日向は20代の頃に中村の付き人を経験しており、中村と田山は劇団「文学座」の先輩・後輩にあたる。

 中村が「小日向」と呼び、小日向は「中村さん」と呼ぶところにふたりの関係性がうかがえるが、しかし「付き人っていう感覚よりは、ちょっとした…

続きを読む

『コンフィデンスマンJP』最高視聴率の要因は“小池徹平のネクラ感”と“見事な伏線とパロディの使い方”!?

『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)6月4日放送の第9話は「スポーツ編」。最終回目前にして自己最高の視聴率9.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマーク。前週から1.2ポイントもアップした。

 映画化も発表され、止まらぬ勢いを見せた。第9話のあらすじは以下の通り。

 IT企業経営者・桂公彦(小池徹平)。彼はスポーツチームを買収しては自分の好き勝手に編成し、弱くなったら売却。それを繰り返し、スポーツファンたちから恨まれていた。ダー子(長澤まさみ)たちはニセモノのバスケットのクラブチームを桂に売りつけ、3年契約7.5憶円を騙し取ろうと企む。

『スラムダンク』(集英社)などからのパロディが目を引く回であったが、伏線を巧みに駆使し、笑いと感動を生み出していた。そのテクニックに触れながら、第9話「スポーツ編」を振り返りたい。

(これまでのレビューはこちらから)

■鼻につくIT企業経営者に共感してしまう“異質の1時間”

 伏線の使い方の前に、キャラクターとキャスティングの話からしたい。

 今回のメインゲストはIT経営者の桂を演じた小池徹平。一見、頼りなさそうな小池が経営者という役柄はミスキャストのように思えるが、小池が演じたからこそ良かった。

 世の中のIT企業経営者は鼻につくイメージの人間が多い。容姿・器量・人格が破綻しているにもかかわらず、美女や煌びやかな日常を満喫している(そうでない人もいるが)。

 その身の丈に合わない振る舞いが、鼻についてしまう理由。童顔な小池の身の丈に合わない生意気な振る舞いは、悪目立ちするIT経営者像とマッチしていた。

 この身の丈に合わない感じは、物語にも大きく作用している。小池扮する桂は、学生時代は運動音痴でパッとしない存在。恋した女子は皆、運動部のキャプテンの彼女になってしまう。経営者となり美女との結婚生活を手に入れたが、妻はサッカー選手に寝取られる。スポーツへのコンプレックスが金儲けの原動力となり、プロチームの支配欲求にまで転じる。

 浮かばれない青春を送っていた者は、大人になってからコンプレックスを埋めようと躍起になる。そんな人間の愚かしさが桂の憎らしさの一因となっていた。しかしその憎らしさの正体は、共感であるようにも思える。

 誰しもが完璧な青春など手に入れられない。一流の大学や企業に入った元ガリ勉君が同窓会で調子こいてリア充ぶったり、パッとしなかった女子が彼氏を得た途端「男ってさ~」と、すべてをわかったようなことを言い出したりする。スポーツ選手が引退後に勉強や経営に目覚めたり、勉強も運動も恋愛もソツなくこなした者は自分の普通さを想い悩み、変わったことをしようとする。

 身近な人にも自分自身にも、桂の痛々しさは当てはまるところがあるのではないか。桂という男は万人が共感できる悪役だったのかもしれない。だからこそ、ラストで桂がプロチームを金儲けの道具でなく真剣に育てようとする心境の変化に感動できた。人生とは青春の穴埋め作業なのかもしれないと思わされた1時間だった。

■“見せ球”と“クセ球”、スポーツにも通ずる脚本のテクニック

「スポーツ編」ということで、野球になぞらえて9話で使われた脚本術を紹介したい。

 前置きとして野球には“見せ球”という投球術がある。「速球を投げる前にわざと遅い球を放り、速球をより速く見せる」などがそれに当たる。

 違和感のある球を見せて、渾身の球でアウトを取りにいく。その作法は、脚本で言うところの“伏線”と似ている。

 バスケチームにいたダー子達の仲間、五十嵐(小手伸也)が秘密兵器と呼ばれ続け、その活躍を心待ちにさせる。いよいよ活躍!……という場面で、16秒で交代を余儀なくされ足を引っ張るだけとなる。普通に登場させて失敗させるよりも、秘密兵器という前フリを見せ続けたおかげで笑いの振れ幅は大きくなる。

 ギャグシーンだけでなく、伏線は物語の大きな引っ張りにも使われていた。物語の序盤、桂が魅力的なプロチームの見学中に突然帰宅。そして桂は弱小チームと契約を結ぶ。突然の帰宅という違和感が伏線となり、謎が解けるまでチャンネルを変えられなくなる。

 物語の終盤、その伏線がヒントとなり、チームの買収と弱体化が、わざと赤字部門を出すという会社の税金対策であると同時に、桂のスポーツへの復讐になるという真実を浮き彫りにする。

 余談だが刑事ドラマやミステリーの視聴率が安定するのは、伏線の賜物。誰が何のためにどんなトリックで殺人に至るのか、伏線を散りばめながら視聴者をラストシーンまで誘導できる。

 そして、ネットでも話題となった、『スラムダンク』や『ROOKIES』(ともに集英社)などの名作コミックのパロディ。これは“クセ球”に置き換えられる。クセ球は、ストレートであるがブレる球であるため、バットの芯に当たりにくい特性を持つムービングファストボールなどを指す。

 第9話も、ストレートにやれば、視聴者に「つまらない!」と打ち返される場面で、パロディを使った。不良たちが更生する場面ではドラマ『ROOKIES』(TBS系)の主題歌を流し、「バスケがしたいです」と『スラムダンク』の名言を言わせる。普通の熱血スポ根シーンのはずが、パロディという一クセだけで、元ネタを知る者の喜びに変わり、笑いにもなる。

 また「バスケがしたいです」や「左手は添えるだけ」などの元ネタを知らないという前提で、冒頭に提示しておく配慮は見事だった。知らない人にとっては伏線となり、知っている人にとってはパロディとなる。

 伏線とパロディの使い方が見事だったからこそ、9話の視聴率は上昇するに至ったのではないだろうか。

■最終回、初の2ケタ視聴率となるか!?

 11日には、15分拡大で最終話「コンフィデンスマン編」が放映される。結婚詐欺を題材に、ダー子たちが別のコンフィデンスマンと戦いを繰り広げるようだ。予告によれば、ダー子たちが命の危機が訪れる! ただ、映画化を発表してしまったため、死なないことは明らかなのだが……。

 本レビューも次で最後と寂しさを感じつつ、本作の一ファンとして、最終話「コンフィデンスマン編」の有終の美を期待したい。

(文=許婚亭ちん宝)

『コンフィデンスマンJP』最高視聴率の要因は“小池徹平のネクラ感”と“見事な伏線とパロディの使い方”!?

『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)6月4日放送の第9話は「スポーツ編」。最終回目前にして自己最高の視聴率9.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマーク。前週から1.2ポイントもアップした。

 映画化も発表され、止まらぬ勢いを見せた。第9話のあらすじは以下の通り。

 IT企業経営者・桂公彦(小池徹平)。彼はスポーツチームを買収しては自分の好き勝手に編成し、弱くなったら売却。それを繰り返し、スポーツファンたちから恨まれていた。ダー子(長澤まさみ)たちはニセモノのバスケットのクラブチームを桂に売りつけ、3年契約7.5憶円を騙し取ろうと企む。

『スラムダンク』(集英社)などからのパロディが目を引く回であったが、伏線を巧みに駆使し、笑いと感動を生み出していた。そのテクニックに触れながら、第9話「スポーツ編」を振り返りたい。

(これまでのレビューはこちらから)

■鼻につくIT企業経営者に共感してしまう“異質の1時間”

 伏線の使い方の前に、キャラクターとキャスティングの話からしたい。

 今回のメインゲストはIT経営者の桂を演じた小池徹平。一見、頼りなさそうな小池が経営者という役柄はミスキャストのように思えるが、小池が演じたからこそ良かった。

 世の中のIT企業経営者は鼻につくイメージの人間が多い。容姿・器量・人格が破綻しているにもかかわらず、美女や煌びやかな日常を満喫している(そうでない人もいるが)。

 その身の丈に合わない振る舞いが、鼻についてしまう理由。童顔な小池の身の丈に合わない生意気な振る舞いは、悪目立ちするIT経営者像とマッチしていた。

 この身の丈に合わない感じは、物語にも大きく作用している。小池扮する桂は、学生時代は運動音痴でパッとしない存在。恋した女子は皆、運動部のキャプテンの彼女になってしまう。経営者となり美女との結婚生活を手に入れたが、妻はサッカー選手に寝取られる。スポーツへのコンプレックスが金儲けの原動力となり、プロチームの支配欲求にまで転じる。

 浮かばれない青春を送っていた者は、大人になってからコンプレックスを埋めようと躍起になる。そんな人間の愚かしさが桂の憎らしさの一因となっていた。しかしその憎らしさの正体は、共感であるようにも思える。

 誰しもが完璧な青春など手に入れられない。一流の大学や企業に入った元ガリ勉君が同窓会で調子こいてリア充ぶったり、パッとしなかった女子が彼氏を得た途端「男ってさ~」と、すべてをわかったようなことを言い出したりする。スポーツ選手が引退後に勉強や経営に目覚めたり、勉強も運動も恋愛もソツなくこなした者は自分の普通さを想い悩み、変わったことをしようとする。

 身近な人にも自分自身にも、桂の痛々しさは当てはまるところがあるのではないか。桂という男は万人が共感できる悪役だったのかもしれない。だからこそ、ラストで桂がプロチームを金儲けの道具でなく真剣に育てようとする心境の変化に感動できた。人生とは青春の穴埋め作業なのかもしれないと思わされた1時間だった。

■“見せ球”と“クセ球”、スポーツにも通ずる脚本のテクニック

「スポーツ編」ということで、野球になぞらえて9話で使われた脚本術を紹介したい。

 前置きとして野球には“見せ球”という投球術がある。「速球を投げる前にわざと遅い球を放り、速球をより速く見せる」などがそれに当たる。

 違和感のある球を見せて、渾身の球でアウトを取りにいく。その作法は、脚本で言うところの“伏線”と似ている。

 バスケチームにいたダー子達の仲間、五十嵐(小手伸也)が秘密兵器と呼ばれ続け、その活躍を心待ちにさせる。いよいよ活躍!……という場面で、16秒で交代を余儀なくされ足を引っ張るだけとなる。普通に登場させて失敗させるよりも、秘密兵器という前フリを見せ続けたおかげで笑いの振れ幅は大きくなる。

 ギャグシーンだけでなく、伏線は物語の大きな引っ張りにも使われていた。物語の序盤、桂が魅力的なプロチームの見学中に突然帰宅。そして桂は弱小チームと契約を結ぶ。突然の帰宅という違和感が伏線となり、謎が解けるまでチャンネルを変えられなくなる。

 物語の終盤、その伏線がヒントとなり、チームの買収と弱体化が、わざと赤字部門を出すという会社の税金対策であると同時に、桂のスポーツへの復讐になるという真実を浮き彫りにする。

 余談だが刑事ドラマやミステリーの視聴率が安定するのは、伏線の賜物。誰が何のためにどんなトリックで殺人に至るのか、伏線を散りばめながら視聴者をラストシーンまで誘導できる。

 そして、ネットでも話題となった、『スラムダンク』や『ROOKIES』(ともに集英社)などの名作コミックのパロディ。これは“クセ球”に置き換えられる。クセ球は、ストレートであるがブレる球であるため、バットの芯に当たりにくい特性を持つムービングファストボールなどを指す。

 第9話も、ストレートにやれば、視聴者に「つまらない!」と打ち返される場面で、パロディを使った。不良たちが更生する場面ではドラマ『ROOKIES』(TBS系)の主題歌を流し、「バスケがしたいです」と『スラムダンク』の名言を言わせる。普通の熱血スポ根シーンのはずが、パロディという一クセだけで、元ネタを知る者の喜びに変わり、笑いにもなる。

 また「バスケがしたいです」や「左手は添えるだけ」などの元ネタを知らないという前提で、冒頭に提示しておく配慮は見事だった。知らない人にとっては伏線となり、知っている人にとってはパロディとなる。

 伏線とパロディの使い方が見事だったからこそ、9話の視聴率は上昇するに至ったのではないだろうか。

■最終回、初の2ケタ視聴率となるか!?

 11日には、15分拡大で最終話「コンフィデンスマン編」が放映される。結婚詐欺を題材に、ダー子たちが別のコンフィデンスマンと戦いを繰り広げるようだ。予告によれば、ダー子たちが命の危機が訪れる! ただ、映画化を発表してしまったため、死なないことは明らかなのだが……。

 本レビューも次で最後と寂しさを感じつつ、本作の一ファンとして、最終話「コンフィデンスマン編」の有終の美を期待したい。

(文=許婚亭ちん宝)

『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)三谷幸喜・クドカンにも劣らぬ古沢良太の手腕! 7話目にして“最高傑作”が誕生!

『コンフィデンスマンJP』の第7話「家族編」が5月21日に放送され、平均視聴率は8.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録した。

 リチャード(小日向文世)はバーで矢島理花(佐津川愛美)と出会う。現在、理花はスリ師をしているが、10億円の遺産を持つ与論要造(竜雷太)の末娘なのであった。ダー子(長澤まさみ)は、刑務所に服役中の理花に成りすまし、余命半年の要造から遺産をもらい受けようとする。しかし、18年ぶりに帰って来た理花がニセモノではないかと、兄・祐弥(岡田義徳)と姉・弥栄(桜井ユキ)は疑う。兄姉からの妨害を受けながら、ダー子は婚約者設定のボクちゃん(東出昌大)と共に、与論要造の信頼を勝ち取る日々が始まる。

 以上が「家族編」のあらすじ。視聴率は前回から0.6ポイント増。感想としては、「『コンフィデンスマンJP』に求めていた面白さはコレなのだ!」と断言できるほど、面白かった。今回は脚本の技術の高さに着眼点を置き、第7話の内容と魅力を振り返りたい。

(これまでのレビューはこちらから)

■『コンフィデンスマンJP』には“疑い”が欠けていた?

「面白いけれど、なぜか腑に落ちない」と、本作には何かが欠けていると感じてモヤッとしていた。しかし、第7話を見てモヤが晴れた。この物語には、ダー子たちに疑いの目を向ける存在が欠けていたのだ。疑り深かったのは第1話「ゴッドファーザー編」の江口洋介くらい。他の回のターゲットや周辺人物はスンナリとダー子たちに騙されてしまう。嘘が交錯するコンゲームというジャンルなのに、疑う存在がいなければ緊迫感は出ない。ノリや小ネタに誤魔化され、ハラハラドキドキという、コンゲームにおける楽しみの本質を忘れさせられていた。ある意味、このドラマに騙されていたのだ。

 第7話では、冒頭からダー子を偽物の理花だと気づき、疑う兄と姉の存在がある。屋敷のどこに理花の部屋があるかわかるだろう、と問われたり、DNA鑑定を持ちかけられたり、ピンチの場面が度々訪れる。また、家族というステージが緊張感を高めてくれた。家族には独自の文化と思い出がある、竜雷太演じる与論要造が「今年もアレが楽しみだな」と言えば、要造の言う“アレ”が何なのかわからないダー子たちは右往左往する。

「邪魔者の出現」と「難易度の高いステージの用意」。これらは基本要素であるが、第7話の面白さはそれに留まらない。古沢良太の特異性が存分に発揮されていた。

■脚本家・古沢良太の持つ、“ゲーム的展開”と“演歌の精神”

 まるでRPGゲームの世界を体験したような1時間だった。

 要造に実の娘だと思わせ10億円の遺産を騙し取るまでの“ゴール”。遺産を奪い合う兄姉という“敵”。獄中の理子から得た家族のエピソードという“アイテム”。アイテムの中に、「理子が家族からイジメを受けていた」というカードがある。このカードをどのタイミングで切るのかが、作中の楽しみでもあった。

 屋敷の中で展開する物語であるが、“ステージ”もめくるめく展開を見せる。以下、ネタばれ注意ではあるが……

1、 実の娘だと信じさせるため、兄姉の妨害を乗り越える。

2、兄姉がダー子たちと同じ遺産目当ての偽物の息子&娘だと気づく。

同時にダー子たちも偽物とバレ、牽制し合いながらの要造への媚売り合戦が展開。

3、要造の望みが建前の媚売りでなく本音でぶつかり合える家族の存在だとわかる。

敵対した兄姉と協力し合い、ケンカも罵倒もある普通の家族を目指す。

 遺産10億円ゲットという大目的のため、中間目標が変わりダー子たちの行動ラインまで変化していく。この後も予想を裏切る展開が続くが、オンデマンドで最後まで見てほしい。前述した「本物の理子がイジメを受けていた」というカードを切るタイミングが抜群だったからこそ、ハラハラドキドキ展開のコンゲームは、感動のヒューマンドラマへと変貌する。今まで媚売りに始終していたダー子たちが、要造の望みを知った後での食卓のシーンは、涙がこぼれる。現代日本で家族の食卓がノスタルジーと化してしまったのだと気づかされ、切ない気持ちにさせられた。

 古沢良太の脚本の良さは、視聴者を飽きさせないゲーム的な展開と胸に染みる演歌な部分にある。その両方を併せ持つ脚本家は国内に古沢良太、ただ一人だと思う。

■コメディ作家BIG3古沢良太・宮藤官九郎・三谷幸喜の違いとは?

 古沢良太はビッグネーム故に、三谷幸喜や宮藤官九郎と比較されたり、並べられることがある。同じコメディのジャンルを得意とする3人であるが、笑いのトリガーは明確に違う。しかし、第7話「家族編」は古沢良太の独自の良さに加え、三谷幸喜と宮藤官九郎の得意とする技まで駆使されていた。そのため、コメディ作家大御所3人の違いについて触れてみたい。

 まずは三谷幸喜。彼の笑いは、“状況”で引き起こされる。映画『ラヂオの時間』『THE 有頂天ホテル』やドラマ『王様のレストラン』(フジテレビ系)、どの作品も限定された空間で起きてほしくないトラブルに登場人物たちが見舞われる。そして登場人物は誰もが真剣だからこそ、ミスをする際には笑えてしまう。焦って下手を打つ者、考えすぎて見当違いをする者、欲に駆られて事態が見えなくなる者。トラブルの中でそれぞれの個性が浮き彫りとなり、人間ドラマが生じていく。だからこそ、“ドタバタ”ではなく“喜劇”と呼ばれ、作風には気品すら感じられる。

 次に宮藤官九郎。彼の作品の笑いの肝は“緩急”にある。例えば『あまちゃん』(NHK総合)では、天野春子(小泉今日子)の傍若無人な振る舞いで笑いが起き、娘を想う繊細な親心に泣かされる。上京とアイドルになる不安を感じる娘・アキ(能年玲奈)に 「私変わった(成長した)?」と問われた際の返答は圧巻だ。

「変わってないよ、アキは。昔も今も、地味で暗くて向上心も協調性も存在感も個性も華もないパッとしない子だけど……だけど、みんなに好かれたね。こっち(岩手)に来て、みんなに好かれた。あんたじゃなくてみんなが変わったんだよ。自信持ちなさい、それはね案外すごいことなんだからね」

 おバカさと真面目さのギャップに魅せられて、登場人物たちは視聴者の心に寄り添う友達となる。だからクドカンドラマの最終回はいつも寂しくなってしまう。

 そして、古沢良太の笑いのトリガーはどこにあるのか? それは登場人物同士の“対立”の中にある。文学ニートとリケジョの恋を描いた『デート』(フジテレビ系)、悪徳弁護士と清廉潔白な弁護士の活躍を描いた『リーガルハイ』(同)。意見の違う者同士のチグハグ感に笑い、相反する主張から物事の本質まで見えそうになる。

 本作第7話「家族編」に話を戻すと、ピンチが次々に起きる“状況”設定には三谷幸喜を、コメディとヒューマンの“緩急”は宮藤官九郎を彷彿とさせた。そして古沢良太自身が得意とする“対立”構図の果てに、家族の本質は血の繋がりには無いというメッセージ性まで感させる。

 無駄な小ネタや自分の見せたい画に執着しなかった三橋利行氏の演出も相まって、古沢良太の脚本の良さが見えたのかもしれない。残り3話。古沢脚本×三橋監督のコンビをまた見られることを期待しつつ、第8話「美のカリスマ編」も楽しみにしたい。

(文=許婚亭ちん宝)