世の中にある揉め事や悩み事の多くは、親子関係に起因していることが多い。子供を自分の分身のように考えて思う通りに育てたい親と、自我の目覚めとともにそこから離れたいと願う子。縁を切るとか疎遠になるということではなく、その問題を“きちんと整理できた時”、人は大人になるのではないかと思う。
dTVで配信されている、栗山千明主演のドラマ『婚外恋愛に似たもの』第4話。今回は、大富豪の父との確執に苦しむ隅谷雅(平井理央)の“お家騒動”がテーマだった。
「隅谷雅はアイドルに夢中になっているショタコン」との怪文書を流した張本人が、自分の父親だと知った雅は、父に徹底抗戦を試みる。美佐代(栗山千明)の入れ知恵で、昌子(江口のりこ)と同性愛関係にあるとの文書を拡散するという作戦だ。
当然、父からの反応はすぐにあった。
「そんなに親の望む人生が嫌か!」と怒りに震える父は、「嫌です。お父様に殺されてもかまわない」と言い切る雅に、親子の縁を切ることを告げる。雅は、人生を賭してアイドルを選んだのだ。
もちろん、これは彼女がたまたま“ドルヲタ”という道を選び、顕在化したものであって、それが例えば芸能界への道でも、親の反対した相手との結婚でも、“親の束縛から離れ、自由になりたい”という、多くの人間に共通する思いであることは間違いない。
雅はまさに、その瞬間、本当の大人になったのである。
ドラマでは、子供と縁を切ることになった親の心情も語られている。実際に子供を持っている昌子は言う。
「子供が幸せな結婚をして、可愛い孫を生んでくれたらって思うのは、親なら当然の願望ではないか」
確かにその通りだ。自分の子供が幸せになり、血を受け継いだ子孫を残してくれる、それはもはや遺伝子レベルに組み込まれた願望だともいえる。
しかし、さまざまな事情があって、親のそのような願望を叶えてあげられない人はたくさんいる。親の思いと自分の思いが違っていたら、それは自分の気持ちを優先すべきだ。ただし、そんな場合でも、親にしてもらったことを忘れてはいけない。 雅自身も、そのことには気付いている。「覚えている」という事実はそれだけで価値のあることなのだ。
今回の一件もあって、美佐代、昌子、雅には、絆のようなものが生まれてくる。ヲタク同士というのが入り口ではあっても、それぞれの境遇を知るにつれ、協力し合う関係になったのだ。
三人で帰る道すがら、彼女たちは、偶然、雅の推しであるスノーホワイトのチカちゃん(増子敦貴)と遭遇する。驚いて立ちすくむ雅に、チカは「いつもありがとう」と声をかける。
彼は、雅を知っていてくれた。いわゆる「認知」である。ドルヲタの中で「認知される」というのは、特別な意味がある。一方的に応援していた相手が、自分という存在を知っていてくれたのである。
地下アイドルなどで、接触イベント(握手会やチェキ会など)が頻繁にあれば、比較的容易に認知してもらえる。SNSでリプを送ったり、ライブで目立つ格好をしたりして、積極的に自分をアピールし、覚えてもらうのがコツだ。その努力が実り、初めてこちらから名乗らずとも名前を呼んでもらえたり、サインに名前を書いてもらえたりしたときの感激は、ひとしおである。
スノーホワイトは、そのような接触イベントはあまりやっている様子もないので、認知を知った雅の思いは想像するにあまりある。おそらく、これによってよりチカちゃんへの憧れはますます強くなったことだろう。ここでも「自分を覚えている」というのは重要な意味を持つのだ。
一方、美佐代は夫(袴田吉彦)から、不倫相手であるアイドル・さなが、若い頃の美佐代に似ていたと告げられる。さなの写真を見た美佐代は思う。「見事な三番目顔だ……」。
この、「三番目」を好きになるという夫の気持ち、実はよく理解できる。私も、アイドルグループで推しになるのは、実は一番人気の子であることは少ない。そこには、ファンとしての自分の存在価値のようなものを考えてしまうからかもしれない。
例えば、100人のファンがいるメンバーであれば、彼女にとって自分は100分の1の存在でしかない。しかし、30人のファンの中の一人であれば、その価値は3倍以上に膨らむのだ。
他にも、あまり歌がうまくないために、周りについていこうと努力する姿や、ダンスがぎこちなく必死になっている姿などは、私のような者にとっては、実に魅力的に見えるのである。一番の子にはない魅力を、三番目、四番目の子は兼ね備えているのである。
ドラマでは、最後に、次回以降キーとなるであろう人物、真美(安達祐実)が登場する。「目立たないにもほどがある平均的な女」、美佐代は真美をそう評した。友情で結ばれつつあるホワラー3人組に新たなメンバーの登場である。今度はどんなドルヲタっぷりが見られるのか、注目したい。
(文=プレヤード)
■ドラマ『婚外恋愛に似たもの』
dTVにて毎週金曜日配信