武器はアイドルを思う心のみ! 自由をかけた親との戦い――ドラマ『婚外恋愛に似たもの』第4話

 世の中にある揉め事や悩み事の多くは、親子関係に起因していることが多い。子供を自分の分身のように考えて思う通りに育てたい親と、自我の目覚めとともにそこから離れたいと願う子。縁を切るとか疎遠になるということではなく、その問題を“きちんと整理できた時”、人は大人になるのではないかと思う。

 dTVで配信されている、栗山千明主演のドラマ『婚外恋愛に似たもの』第4話。今回は、大富豪の父との確執に苦しむ隅谷雅(平井理央)の“お家騒動”がテーマだった。

「隅谷雅はアイドルに夢中になっているショタコン」との怪文書を流した張本人が、自分の父親だと知った雅は、父に徹底抗戦を試みる。美佐代(栗山千明)の入れ知恵で、昌子(江口のりこ)と同性愛関係にあるとの文書を拡散するという作戦だ。

 当然、父からの反応はすぐにあった。

「そんなに親の望む人生が嫌か!」と怒りに震える父は、「嫌です。お父様に殺されてもかまわない」と言い切る雅に、親子の縁を切ることを告げる。雅は、人生を賭してアイドルを選んだのだ。

 もちろん、これは彼女がたまたま“ドルヲタ”という道を選び、顕在化したものであって、それが例えば芸能界への道でも、親の反対した相手との結婚でも、“親の束縛から離れ、自由になりたい”という、多くの人間に共通する思いであることは間違いない。

 雅はまさに、その瞬間、本当の大人になったのである。

  ドラマでは、子供と縁を切ることになった親の心情も語られている。実際に子供を持っている昌子は言う。

「子供が幸せな結婚をして、可愛い孫を生んでくれたらって思うのは、親なら当然の願望ではないか」

 確かにその通りだ。自分の子供が幸せになり、血を受け継いだ子孫を残してくれる、それはもはや遺伝子レベルに組み込まれた願望だともいえる。

 しかし、さまざまな事情があって、親のそのような願望を叶えてあげられない人はたくさんいる。親の思いと自分の思いが違っていたら、それは自分の気持ちを優先すべきだ。ただし、そんな場合でも、親にしてもらったことを忘れてはいけない。 雅自身も、そのことには気付いている。「覚えている」という事実はそれだけで価値のあることなのだ。

 今回の一件もあって、美佐代、昌子、雅には、絆のようなものが生まれてくる。ヲタク同士というのが入り口ではあっても、それぞれの境遇を知るにつれ、協力し合う関係になったのだ。

 三人で帰る道すがら、彼女たちは、偶然、雅の推しであるスノーホワイトのチカちゃん(増子敦貴)と遭遇する。驚いて立ちすくむ雅に、チカは「いつもありがとう」と声をかける。

 彼は、雅を知っていてくれた。いわゆる「認知」である。ドルヲタの中で「認知される」というのは、特別な意味がある。一方的に応援していた相手が、自分という存在を知っていてくれたのである。

 地下アイドルなどで、接触イベント(握手会やチェキ会など)が頻繁にあれば、比較的容易に認知してもらえる。SNSでリプを送ったり、ライブで目立つ格好をしたりして、積極的に自分をアピールし、覚えてもらうのがコツだ。その努力が実り、初めてこちらから名乗らずとも名前を呼んでもらえたり、サインに名前を書いてもらえたりしたときの感激は、ひとしおである。

 スノーホワイトは、そのような接触イベントはあまりやっている様子もないので、認知を知った雅の思いは想像するにあまりある。おそらく、これによってよりチカちゃんへの憧れはますます強くなったことだろう。ここでも「自分を覚えている」というのは重要な意味を持つのだ。

 一方、美佐代は夫(袴田吉彦)から、不倫相手であるアイドル・さなが、若い頃の美佐代に似ていたと告げられる。さなの写真を見た美佐代は思う。「見事な三番目顔だ……」。

 この、「三番目」を好きになるという夫の気持ち、実はよく理解できる。私も、アイドルグループで推しになるのは、実は一番人気の子であることは少ない。そこには、ファンとしての自分の存在価値のようなものを考えてしまうからかもしれない。

 例えば、100人のファンがいるメンバーであれば、彼女にとって自分は100分の1の存在でしかない。しかし、30人のファンの中の一人であれば、その価値は3倍以上に膨らむのだ。

 他にも、あまり歌がうまくないために、周りについていこうと努力する姿や、ダンスがぎこちなく必死になっている姿などは、私のような者にとっては、実に魅力的に見えるのである。一番の子にはない魅力を、三番目、四番目の子は兼ね備えているのである。

 ドラマでは、最後に、次回以降キーとなるであろう人物、真美(安達祐実)が登場する。「目立たないにもほどがある平均的な女」、美佐代は真美をそう評した。友情で結ばれつつあるホワラー3人組に新たなメンバーの登場である。今度はどんなドルヲタっぷりが見られるのか、注目したい。

(文=プレヤード)

■ドラマ『婚外恋愛に似たもの』
dTVにて毎週金曜日配信

武器はアイドルを思う心のみ! 自由をかけた親との戦い――ドラマ『婚外恋愛に似たもの』第4話

 世の中にある揉め事や悩み事の多くは、親子関係に起因していることが多い。子供を自分の分身のように考えて思う通りに育てたい親と、自我の目覚めとともにそこから離れたいと願う子。縁を切るとか疎遠になるということではなく、その問題を“きちんと整理できた時”、人は大人になるのではないかと思う。

 dTVで配信されている、栗山千明主演のドラマ『婚外恋愛に似たもの』第4話。今回は、大富豪の父との確執に苦しむ隅谷雅(平井理央)の“お家騒動”がテーマだった。

「隅谷雅はアイドルに夢中になっているショタコン」との怪文書を流した張本人が、自分の父親だと知った雅は、父に徹底抗戦を試みる。美佐代(栗山千明)の入れ知恵で、昌子(江口のりこ)と同性愛関係にあるとの文書を拡散するという作戦だ。

 当然、父からの反応はすぐにあった。

「そんなに親の望む人生が嫌か!」と怒りに震える父は、「嫌です。お父様に殺されてもかまわない」と言い切る雅に、親子の縁を切ることを告げる。雅は、人生を賭してアイドルを選んだのだ。

 もちろん、これは彼女がたまたま“ドルヲタ”という道を選び、顕在化したものであって、それが例えば芸能界への道でも、親の反対した相手との結婚でも、“親の束縛から離れ、自由になりたい”という、多くの人間に共通する思いであることは間違いない。

 雅はまさに、その瞬間、本当の大人になったのである。

  ドラマでは、子供と縁を切ることになった親の心情も語られている。実際に子供を持っている昌子は言う。

「子供が幸せな結婚をして、可愛い孫を生んでくれたらって思うのは、親なら当然の願望ではないか」

 確かにその通りだ。自分の子供が幸せになり、血を受け継いだ子孫を残してくれる、それはもはや遺伝子レベルに組み込まれた願望だともいえる。

 しかし、さまざまな事情があって、親のそのような願望を叶えてあげられない人はたくさんいる。親の思いと自分の思いが違っていたら、それは自分の気持ちを優先すべきだ。ただし、そんな場合でも、親にしてもらったことを忘れてはいけない。 雅自身も、そのことには気付いている。「覚えている」という事実はそれだけで価値のあることなのだ。

 今回の一件もあって、美佐代、昌子、雅には、絆のようなものが生まれてくる。ヲタク同士というのが入り口ではあっても、それぞれの境遇を知るにつれ、協力し合う関係になったのだ。

 三人で帰る道すがら、彼女たちは、偶然、雅の推しであるスノーホワイトのチカちゃん(増子敦貴)と遭遇する。驚いて立ちすくむ雅に、チカは「いつもありがとう」と声をかける。

 彼は、雅を知っていてくれた。いわゆる「認知」である。ドルヲタの中で「認知される」というのは、特別な意味がある。一方的に応援していた相手が、自分という存在を知っていてくれたのである。

 地下アイドルなどで、接触イベント(握手会やチェキ会など)が頻繁にあれば、比較的容易に認知してもらえる。SNSでリプを送ったり、ライブで目立つ格好をしたりして、積極的に自分をアピールし、覚えてもらうのがコツだ。その努力が実り、初めてこちらから名乗らずとも名前を呼んでもらえたり、サインに名前を書いてもらえたりしたときの感激は、ひとしおである。

 スノーホワイトは、そのような接触イベントはあまりやっている様子もないので、認知を知った雅の思いは想像するにあまりある。おそらく、これによってよりチカちゃんへの憧れはますます強くなったことだろう。ここでも「自分を覚えている」というのは重要な意味を持つのだ。

 一方、美佐代は夫(袴田吉彦)から、不倫相手であるアイドル・さなが、若い頃の美佐代に似ていたと告げられる。さなの写真を見た美佐代は思う。「見事な三番目顔だ……」。

 この、「三番目」を好きになるという夫の気持ち、実はよく理解できる。私も、アイドルグループで推しになるのは、実は一番人気の子であることは少ない。そこには、ファンとしての自分の存在価値のようなものを考えてしまうからかもしれない。

 例えば、100人のファンがいるメンバーであれば、彼女にとって自分は100分の1の存在でしかない。しかし、30人のファンの中の一人であれば、その価値は3倍以上に膨らむのだ。

 他にも、あまり歌がうまくないために、周りについていこうと努力する姿や、ダンスがぎこちなく必死になっている姿などは、私のような者にとっては、実に魅力的に見えるのである。一番の子にはない魅力を、三番目、四番目の子は兼ね備えているのである。

 ドラマでは、最後に、次回以降キーとなるであろう人物、真美(安達祐実)が登場する。「目立たないにもほどがある平均的な女」、美佐代は真美をそう評した。友情で結ばれつつあるホワラー3人組に新たなメンバーの登場である。今度はどんなドルヲタっぷりが見られるのか、注目したい。

(文=プレヤード)

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dTVにて毎週金曜日配信

「身バレ・親バレ・彼氏バレ」ドルヲタが恐れる危機とは? ドラマ『婚外恋愛に似たもの』第3話

「リア充(リアルが充実している)」という言葉が使われ始めたのはいつ頃だったろう。

 おそらく、ネットの中で力を持ち始めた大型掲示板あたりが最初だと思うが、「自身はリア充ではない」と自認している人が、「リア充爆発しろ!」などと書き込みをするようになって、徐々に広まっていったのではないかと思われる。

 つまり、非リア充側が、リア充側を敵視する時の力が、大きな原動力となったのだろう。

 ここで考えてみたいのだが、“非リア充”という言葉には、二つの意味が内在している。一つは文字通り「今のリアルが充実していない」こと、そしてもう一つは「リアル以上に非リアル(妄想の世界)が充実している」ことだ。

 dTVで配信されている、栗山千明主演ドラマ『婚外恋愛に似たもの』第3話のメインキャストである売れっ子経営コンサルタント・隅谷雅(平井理央)は、完全に後者である。

 大物資産家の父のもとに生まれ、勉強も仕事も一番だった。見た目も申し分のない美人で、「この人がリア充じゃなかったら、いったい誰がリア充なんだ?」と思われるほどだろう。しかし、彼女はバリバリと仕事をこなす一方で、近づいてくる男に興味も示さず、ただひたすらに推しである「スノーホワイト」のチカちゃん(増子敦貴)を「自分の夫」と思い込み、日々応援に明け暮れているのだ。まさに“推しとの非リアルが現実を凌駕している状態”だろう。

 もちろん、男性ヲタ界隈でも、好きな女性アイドルを「俺の嫁」と呼んではばからず、家に帰れば彼女のポスターを見たり音楽を聴いたりして過ごす人は少なくない(本来の夫婦は、部屋に妻の写真を過剰に貼ったり彼女の歌を聴いたりはしないだろうが)。しかし、雅のように、リアリストな面と夢見がちな面を、自分の中で共存させている例は、さすがに珍しいだろう。

 今回、もう一点象徴的だったのは、いわゆるエリート(=仕事ができる)のドルヲタの存在である。

 アイドルの現場では、とにかく湯水のようにお金を落としていく人、通称“財閥ヲタ”が存在する。CDやグッズを買い占め、特典会では何回もループ(繰り返し並ぶこと)をし、地方での公演があれば、どこまででも追いかけていく。確かに、もともと家が裕福な人もいると思うが、話を聞いてみると、やはり会社である程度の役職についていたり、高収入であったりする人が多いのも実情だ。

 雅や財閥ヲタのように、何もかも恵まれている人がアイドルにハマるのには、どのような背景があるのだろうか。私はそこに、“お金では買えない存在に、お金をかければ近づくことができる”という心理が働いているように思う。

 そもそも、財閥ヲタは金持ちである。そして、今の日本において、お金で買えないものはほぼないだろう。そんな中で、“アイドル”と“彼(彼女)の心”は、お金ではとうてい手に入るものではないのだ。

 人間は欲深いとよく言われるが、まさにその通り。一通りのものが手に入れられる環境に置かれると、次に欲しくなるのは、“それでも手に入らないもの”なのだろう。アイドルにハマる財閥ヲタは、それを象徴した存在だと言える。

 雅は、それほどチカちゃんにハマっていながら、そのことを周囲にはひた隠しに隠している。個人でコンサルを営む彼女にとっては、世間の評判は大きくビジネスに影響するからだ。

 そんなある日、雅がドルヲタであることを公表する怪文書が、取引先の会社に次々と送られてくる。契約中止の連絡が相次ぎ、途方に暮れた雅であったが、美佐代(栗山千明)の助言により、その出どころを突き止めようとする。以前勤めていた会社に入り込み、犯人と思われる人を問い詰めてみると、今回の事件を指示したのはなんと、会長である、雅の父だった。

 いわゆる“親バレ”である。

 正確にリサーチしたわけではないが、ドルヲタの多くは、自身の趣味を親には隠しているケースが多い。実家で同居していれば、親に怪しまれ、カミングアウトすることもあるかもしれないが、離れて暮らしていれば、親バレするメリットはほぼ何一つない。

 雅のように、アイドルと“脳内結婚”し、現実で家庭を持つことにまったく興味を示さなければ、親としては子供の将来が心配でならないだろう。もちろん、親世代からすれば、ドルヲタというものが理解しにくい存在だということもある。私自身のことを考えてみても、テレビでドルヲタのドキュメンタリーなどが流れると、実家の親から電話があり「あんなふうにだけはならないように」と釘を刺されるのである。

 日本には昔から「知らぬが仏」ということわざがある。親に余計な心配をかけず、また、親から余計な干渉を受けずに済むのであれば、自分の趣味などというのは隠しておいたほうが幸せなのかもしれない。

 それはもちろん、リアルな世界での恋人やパートナー、ドラマの中で“息子バレ”をしてしまった昌子(江口のりこ)のように、多くの家族に知られてしまうことは、ドルヲタとして最も避けるべき危機のひとつなのである。

 そして、もう一つ、隠しておいた方がいい理由がある。人間にとって、楽しみというのは、密かであれば密かであるだけ、なんとも言えない甘美な魅力を放つものなのだ。仕事先にも、親にも、パートナーにも言えない。そんな“背徳感”を楽しむのもまた、アイドルの魅力であると思うのだ。

 次回、雅は、ドルヲタであることを世間に公表し、苦境に追い詰めた張本人である父親と対峙することになる。アイドルへの思いとプライドをかけて、父親とどのような対決をすることになるのだろう。多くのドルヲタが抱える問題のひとつの結論が出されるかもしれない。

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あなたにとってアイドルとは?――ヲタク心理を問われるドラマ『婚外恋愛に似たもの』第2話

「あなたにとって、アイドルとはどんな存在ですか?」

 アイドル好きを公言していると、しばしば聞かれる質問だ。正直、一言で説明することは難しい。実際、私自身も明確にわかってはいないし、ドルヲタ同士で酒を飲みながら延々と語り合ったこともある。最終的には、それぞれが自分の中に「アイドルとはこういう存在」というビジョンを持っていればそれが正解なのだと思う。

 dTVで配信中のドラマ『婚外恋愛に似たもの』第2話では、主人公たちのアイドルに対する思いが語られた。

 千葉の元ヤン主婦・益子昌子(江口のりこ)は、中学生の息子(畠山紫音)が万引きをしたとのことでスーパーに駆けつける。そこで目にしたのは、履歴書を万引きした息子の姿だった。「履歴書をどこに出すつもりだったのか?」そう問い詰める昌子。なかなか口を割らない息子であったが、やがて本当の気持ちを話し始める。

「ディセンバーズエンターテイメントスクールに送るつもりだった」

 そう、昌子が愛してやまないアイドルグループ「スノーホワイツ」の所属する事務所を受けようとしていたのだ。

 そもそも、昌子にとって推しの八王子(太田将煕)は、“理想の息子”だった。実際の息子の素行に苦しめられる昌子からすれば、アイドルに対しての感情は「母性」であったのかもしれない。

 実は、男性である私からしても、この感情は理解できる。

 若い頃、女性アイドルは、世間でよく言われるように「疑似恋愛」の対象であった。「あんな子と仲良くなりたい。恋人になりたい」そんな気持ちが強かったことも事実だ。しかし、自身が年を重ねるにしたがって、それだけでは説明のつかない感情も入ってくるようになった。複雑な感情ではあるが、その中には間違いなく「父性」というような気持ちが混じっいる。

 実際、アイドルの現場では、自分の娘のような年齢の女の子を応援しているファンが多く見られる。子供がいる人も、そうでない人もいるだろうが、「子供を応援したくなる気持ち」というのは多くの人に多くの人が共通して持つ感覚だと思う。

 昌子が、八王子に抱いた思いも、人間としてごく自然なものであったと言えよう。そして、それに対する息子の思いもまた胸に迫ってくる。

 母親がアイドルを理想の息子と思っている。そんな母親を喜ばせるため、自分もそのアイドルになろうとしたのだ。アイドルという存在をめぐって、親子の絆が深まっていく。そんなことが象徴されるいいシーンであった。

 一方、神田みらい(Da-iCE・岩岡徹)推しのセレブ主婦・桜井美佐代(栗山千明)は、同じホワラー(スノーホワイツのファン)ということで、昌子と仲良くなり、素直に自分の気持を話せるような関係にまでなる。

 昌子が美佐代のマンションを訪れた夜、テレビマンである美佐代の夫・修一郎(袴田吉彦)が怪しい男に襲われる。昌子の反撃により難を逃れたが、相手は修一郎が深い仲になったアイドル・さなのファンであった。

 ここで、アイドルファンの視点へと切り替わる。

 自分が好きなアイドルが、テレビ局関係者と不倫の関係にある。暴行は立派な犯罪だが、相手に一言言ってやりたくなる気持ちもわかる。その場に居合わせた美佐代も、昌子も、そしてもしかしたら修一郎でさえも、その男の気持ちは痛いほどわかっていたのかもしれない。この「2つの視点がぶつかりあうシーン」というのが、個人的には大好きだ。

 続いて、このドラマで重要な役となる人物が登場する。美佐代の会社員時代のライバル・隅谷雅(平井理央)だ。

「いつも上から三番目」を自認する美佐代にとって、何事もうまくこなし、一番になる雅は天敵なのである。鼻持ちならないセレブエリートの女性を、平井理央が嫌味な雰囲気たっぷりに演じている。彼女も実はホワラーで、次回以降、さらに美佐代らと大きく関わってくることになりそうだ。

 そして、スノーホワイツのライブに向かう朝、美佐代は言う。

「女にとってアイドルはデトックス」

 自分が若さを保ち、美しくいられるのもアイドルへの思いがあるからだという意味だろう。これは、女性アイドルを応援する男性ヲタクについても言えることだ。

 若い女の子を応援する男性は、おしなべて実年齢よりも若く見える。これは、現場でアイドルヲタを見ていての実感だ。それは、“若い子と会うから”という理由で意識的に服装などに気を使っていることもあるだろうが、やはり気持ちの面で“好きなものに夢中になっている”ということが、大きく働いていると思う。

 私自身、アイドルのライブを見たり、イベントで接したりしていると、自分が若くいられることを実感する。「好きなアイドルと1回握手をすると3日寿命が延びる」というのが私の持論である。

 男性アイドルの女性ヲタク、という視点で描かれたこのドラマ。1回25分と短いが、毎回、アイドルファンとしての立場を考えされるシーンが織り込まれている。もちろん、アイドルには興味がないという人が「ドルヲタってこういう世界なのね」という感覚で見ても十分に楽しめるであろう。

 今回テーマとなっていた、「自分にとってアイドルとはどんな存在か」。見ている人も、一度問いかけてみてはいかがだろうか。

 ちなみに私がヲタク仲間と議論した結論。それは、「アイドルは妖精」というものだった。気持ち悪い結論になってしまい、すみません。

(文=プレヤード)

■ドラマ『婚外恋愛に似たもの』
dTVにて毎週金曜日配信

人生が辛い時ほどアイドルは輝いて見える――ドルヲタを描いた栗山千明主演ドラマ『婚外恋愛に似たもの』レビュー

 今の時代、一口に「アイドル」と言っても、その種類は多岐に渡る。それらをひとくくりに語ることはもはや不可能だろう。ただ、絶対的に大きなくくりとして分けられるのは「女性アイドルのファン」と「男性アイドルのファン」である。

 その中で、「女性アイドルファン」については、地下のライブハウスでヲタ芸を打ち、サイリウムを振っているような姿で、ドラマやドキュメンタリーなどで多く取り上げられてきた。しかし、一方の「男性アイドルファン」というものは、あまりセンセーショナルにとらえられることがなかった。ある意味、ヲタクの中でもベールに包まれた存在だと言えるかもしれない。

 そんな男性アイドルのヲタクが主人公となった、宮木あや子の小説『婚外恋愛に似たもの』(光文社)が、ドコモの動画配信サイト「dTV」で連続ドラマ化された。6月22日に配信された第一話をチェックしたので、レビューしていこう。

 まず注目したいのは、今回の出演者だ。主人公・桜井美佐代を演じるのは、栗山千明。学生時代からモデル・女優として活躍し、男女問わず人気を集めているが、2000年に主演した深夜ドラマ『秘密倶楽部o-daiba.com』(フジテレビ系)では、宮崎あおいやベッキーらと「リアルシスターズ」を結成、アイドルファンからも大いに注目を集めた経歴がある。

 そして、有名なのは彼女のオタク趣味。アニメ、ゲーム、マンガなどに造詣が深く、役を演じる上でも、その気質が見え隠れすることがある。昨年放送されたドラマ『でも、結婚したいっ!~BL漫画家のこじらせ婚活記~』(同)では、そのヲタクぶりが遺憾なく発揮され、恋愛に疎いBL漫画家をリアリティを持って演じていた。

 第一話でもう一人のメインとなっていたのは、やんちゃな息子に手を焼くシングルマザー・益子昌子役の江口のりこ。言わずと知れた名バイプレーヤーだ。とにかく個性的な役を演じたらピカイチ、作品自体にコミカルさや深みを与えることができる。

 今回は、美佐代と昌子との置かれている環境の差がじっくりと描かれていた。子供はいないものの、テレビマンの夫(袴田吉彦)と結婚し、いわゆる「勝ち組」とも言える美佐代。高級マンションに暮らし、ブランド物を身につけるその姿からは、不満などなにもないように思える。

 しかし、義母からの「子供はまだか」との催促や、夫の女遊びなどに悩まされる日々。そんな時、街で偶然見かけた男性アイドルに心奪われてしまう。

 彼女が夢中になっているのは、5人組の男性アイドルグループ「スノーホワイツ」。中でも「みらきゅん」こと神田みらい(Da-iCE・岩岡徹)が彼女のイチオシだ。彼のことを思っている時が、彼女の唯一の幸せなのかもしれない。

 そんなある日、美佐代は、夫から家を出ていくようにと告げられる。もともとアイドル好きの夫は、「KGB64」という女性アイドルグループのメンバー、さなちゃんといい仲になり、一緒に暮らしたいというのだ。男性アイドルヲタの女性が、女性アイドルヲタの夫に別れを迫られるという修羅場の構図。 好きな女性アイドルと関係を持った夫を前に、美佐代は思う。

「好きなアイドルと寝たいとは思わない。でも一晩中独占できるなら、その美しい寝姿をただ眺めていたい」

 ここに男性と女性のアイドル観の違いが透けて見える。

 双方のアイドルファンの名誉のために言っておくが、アイドル好きの男性が皆アイドルと繋がりたいと思っているわけではなく、もちろん逆に女性がみな関係を持ちたいと思っていないわけでもない。ただ、一般的に、女性アイドルに対して男性ファンが「繋がりたい」という欲求を持つことは多い。

 これは、男女の資質によるものが大きいだろう。

「夜空に輝く星を見て、男はそこに行くことを願い、女はそれを手にすることを願う」そんな言葉を聞いたことがある。男性ヲタクと女性ヲタクの違いがあるとすれば、そこに介在するセクシャリティの差だと言えるかもしれない。

 さて、一方の昌子である。彼女は、問題ばかり起こしている中学生の男の子を抱えたシングルマザー。スーパーのレジのパートをしながら息子を養っているが、生活は楽にはならない。そんな彼女が心の支えにしているのもまた「スノーホワイツ」。彼女は「ハッチ」こと八王子(太田将煕)のファンである。

 彼女がパートをする高級スーパーに、美佐代が買い物に来るシーンで二人の運命が繋がる。ひょんなことからお互い“ホワラー(スノーホワイツのファン)”であることを知り、話をするのだ。

 ここでは、二人の格差が顕著に現れる。セレブな生活をし、客として食材を買う者と、そこで働く者。しかし、その格差さえも「同じアイドルのファン」ということで、一瞬で消え去ってしまう。これこそが、アイドルファンの中にある自由なのだ。

  そしてもう一つ、二人が「今の現実をつらい」と感じている点も重要だ。アイドルとはつらい気持ちを感じた時に、すっと心に入ってくるものだ。人生がつらければつらいほど、アイドルはより輝いて見える。そんな気がする。この二人もそうなのであろう。

 美佐代は、自分は「一番になりたくてもいつも三番目の女」だと思い悩む。ヒエラルキーの底辺にいる人から見れば、三番目など羨ましくて仕方がないだろう。しかし、人の思い、欲望というものは、相対的に見てしまいがちなのだ。

 アイドルの現場というのは、そんな社会のヒエラルキーをなくしてしまう空間だ。

 もちろん、同じイベントに来た人にも、収入や家庭など差はあるだろう。しかし、好きなアイドルを思い、応援する瞬間において、それらを消し去る力があるのだ。ファンになってしまえば、誰が偉いわけでも誰がみじめなわけでもない。それが根底にあることを知ってもらいたい。おそらくは、このドラマも、その素晴らしさを伝えてくれるものとなっていくことだろう。

 第一話では少しの登場となったものの、他のキャストも見逃せない。

 まずは、女経営者、隅谷雅役の平井理央。元フジテレビアナウンサーのイメージが強いが、もともとは『おはスタ』(テレビ東京)の「おはガール」として活動するなど、アイドルファンにも人気が高かった。実際にアイドル側にいた彼女が、アイドルファンの側を演じるというのが、なんとも面白い。

 主要メンバーの中で一番の「オタク具合」を見せてくれるのではと期待されるのが、片岡真弓役の富山えり子。14年の『ごめんね青春!』(TBS系)や、16年の『重版出来!』(TBS系)など、アイドル女優が出演したドラマにも出ていたので馴染みがあるだろう。今年1月~3月に放送された、芳根京子主演の『海月姫』(フジテレビ系)で、人形オタクの女性を見事に演じていたのも記憶に新しい。ちなみに同作では、昌子役の江口のりこも、個性的な役で出演していた。この二人の掛け合いがまた見られるというのも興味深い。

 最後は、専業主婦・山田真美役の安達祐実。子役時代から積み重ねてきたキャリアでは、アイドル的な曲を出していたこともある。彼女の中で「オタク」という存在がどう消化され、演じられるのかも見ものである。

「婚外恋愛」という不思議なワードが冠されたこのドラマ。「不倫」でも「浮気」でもない愛情の形を見せてくれるのではないかと思っている。

 なお、最後になるが、回想シーンでアイドルのコスプレをした栗山千明はなかなかのサービスショットだった。「男性アイドルファン」がテーマであるだけに、メインターゲットは女性に設定されているだろうが、男性が見ても十分に楽しめる作品となっているし、今後も遊び心あふれる展開を見せてくれるのではないかと期待は高まるばかりだ。

(文=プレヤード)

■ドラマ『婚外恋愛に似たもの』
dTVにて6月22日より毎週金曜日配信