ハマるのは3番手? TBS『ごめん、愛してる』ヒロイン・吉岡里帆に、一抹の不安

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吉岡里帆オフィシャルブログ
 TBS日曜劇場『ごめん、愛してる』は、報われない片思いが連鎖していくメロドラマだ。  韓流ドラマのリメイクということもあってか、とにかく内容がコッテリとしている。     韓国で裏社会の仕事をしていた岡崎律(長瀬智也)は、頭部を銃で撃たれたことで、いつ命を落としてもおかしくない状態となる。残り少ない人生で、生き別れとなった母親と再会したいと思った律は、日本に帰国。そこで、韓国で偶然、助けた三田凜華(吉岡里帆)と再会する。     律の母親の日向麗子(大竹しのぶ)は、律のことを実の息子と気づかずに嫌悪しており、天才ピアニストの息子・サトル(坂口健太郎)を溺愛する。  幼なじみのサトルのスタイリストとして働く凜華は、彼に片思いしているが、サトルは天才サックス奏者で自由奔放な古沢塔子(大西礼芳)に魅かれている。    母親に正体を明かせぬまま、サトルのボディーガードとなった律は、自分と似た、届かぬ思いを抱える凜華と打ち解けていく。    吉岡が演じる凜華は、献身的に尽くす女性で、これまでにない純粋でまっすぐな正統派ヒロインだ。  彼女にとっては初めての大役で、ドラマの主役を演じられるような女優へとステップアップできるかどうかは、この役をどう演じるかで決まるといっても過言ではないだろう。  そのため、放送前から注目していたのだが、第2話まで見た印象でいうと、今までとは違う立ち位置に若干戸惑っているように見える。  初めて吉岡を意識したのは、2015年のNHKドラマ『美女と男子』だ。  彼女は若手清純派女優・朝倉かれん役を演じたのだが、一見清純派に見えながら、実は肉食系で、共演した若手俳優を翻弄していく姿はとても印象的だった。同時期に「週刊プレイボーイ」(集英社)で披露した水着グラビアの色っぽさも衝撃的だった。  その後、吉岡はNHK連続テレビ小説『あさが来た』に出演。のぶちゃんこと田村宜役を演じた。着物にメガネというチャーミングなルックスが受けて、マスコットキャラ的な人気を獲得した。  宮藤官九郎脚本の『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)では、小学校に赴任する教育実習生・佐倉悦子を好演。童貞の小学校教師・山路一豊(松坂桃李)を惑わす、魔性の女を演じた。  どの役も決して大きくない3番手、4番手の役なのだが、数分しか映らない場合でも、吉岡は着実に爪痕を残してきた。  彼女の演技は、なぜかとても目を引く。たとえば『ゆとりですがなにか』で、山路先生を見つめる場面は、瞬きをしていないこともあってか、異様な迫力があった。  彼女の演技には、意地でも目立ってやろうとする、成り上がり根性がにじみ出ている。そういう必死なところが、逆にかわいいなぁと思っていた。  そして、今年の冬クールに放送された『カルテット』(TBS系)で演じた来生有朱(きすぎ・ありす)は、吉岡にとって、最もハマった当たり役だといえるだろう。  ライブレストランでウエイトレスとして働く元地下アイドルの有朱は、とにかくめちゃくちゃな女だった。小学生時代のあだ名は淀君で、彼女が原因で必ず学級崩壊が起きたという。目が笑っていない有朱は生粋のトラブルメイカーで、劇中では主人公の楽器を盗んでメルカリに売ろうとする。底の浅い行動を繰り返しては、周囲の人間関係をかき乱していくのだ。  有朱は清純派の皮をかぶった魔性の女という、これまで吉岡が演じてきたキャラの総決算のような存在だった。計算高いが思慮の浅い、かわいいだけの中身が薄っぺらい女を演じさせたら、今の吉岡は完璧である。  しかし『カルテット』での成功は、主演女優にシフトしようとする際には、マイナスに働いているように見える。『ごめん、愛してる』で、どれだけけなげでかわいいヒロインを演じても、「ウソつけ!」と思ってしまうのだ。  気になったのは、吉岡の演技が『カルテット』の時と変わらないことだ。特に酔っ払って長瀬に絡むシーンのしゃべり方は有朱と同じなので、コイツ本当は腹黒い女なんじゃないかと、疑ってしまう。  脇役の時は、とにかく爪痕を残そうとする過剰な演技はプラスに働いていたが、画面に出ずっぱりの主演となると、主張が強すぎてうるさく見える。  凛果を演じるためには、今までとは違う主演の演技をしなければならない。今のところ1話よりは2話のほうが一歩引いた落ち着いたトーンになってきており、少しずつハマりつつあるが、それでもやっぱり隠しきれない過剰さがにじみ出てしまっているのだ。  果たして吉岡は、主演級の女優にステップアップできるのだろうか?  個人的には『カルテット』ぐらいのポジションで、脇でおいしいところを持っていく女優として定着するほうが彼女には合っていると思う。しかし、野心家の吉岡としては、そこにとどまるなんて我慢できないだろう。ドラマ自体の出来栄えもさることながら、吉岡の成り上がりストーリーの今後を占う上でも、見逃すことができない作品である。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

『にじいろジーン』レギュラーに加え、今期ドラマ3作に出演! “透明感バツグン”飯豊まりえの快進撃が始まる!?

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飯豊まりえオフィシャルブログより
 夏クールの連続ドラマがポツポツと始まっているが、飯豊まりえの出演作がなんと3本もある。    1作目は、有料動画配信サービスdTVで配信中の『パパ活』。  飯豊が演じるのは、彼氏とケンカして家出した女子大生・赤間杏里。同棲していた彼氏とケンカして行く場所がないため、パパ活(出会い系サイトで援助してくれる年配の男性を募集すること。食事だけの関係から愛人関係までさまざま)をしようとしていたところ、偶然知り合った渡部篤郎演じる大学教授・栗山航が隠れ家にしている別宅に住ませてもらうことをきっかけに始まる恋愛ドラマだ。  脚本は『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)や『高校教師』(TBS系)など、大ヒットドラマを手がけてきた野島伸司。  1話23分と短いことを差し引いても、物語のテンポが良くてとても見やすい。同時に、パパ活という言葉に代表されるような性の匂いも立ち込めていて、今の地上波では展開することが難しくなってきている、野島ドラマならではのいかがわしい魅力に満ちている。  そんな野島ワールドで、演じる等身大の女子大生を演じる飯豊は、見事にハマっている。  2作目は、深夜ドラマ『マジで航海してます。』(MBS、TBS系)。外航船員を育成する大学が舞台のドラマで、武田玲奈とのW主演だ。    飯豊が演じるのは、天真爛漫な女の子・坂本真鈴。成り行きで流されるままに大学に入った石川燕(武田)とは逆に、小学生の頃に船のとりことなり、航海士を目指す真鈴は明るく快活で、まるで朝ドラのヒロインのようだ。  体の大きな飯豊がオーバーアクションでしゃべっていると服がビリッと破ける音がするのがお約束となっているのだが、明るいタッチの作品で、『パパ活』とは違った魅力が全開となっている。  3作目は、7月8日(土)深夜0時20分から始まる『居酒屋ふじ』(テレビ東京系)。永山絢斗演じる売れない俳優の恋人役で、印刷会社で働くOL・鯨井麻衣を演じる。  また、バラエティ番組『にじいろジーン』(フジテレビ系)の新レギュラーにも決まり、ここにきて一気にブレーク間近というムードが漂い始めている。  飯豊は現在19歳。2008年に「avex kids×ニコ☆プチ公開モデルオーディション」でグランプリを受賞、翌年から「ニコ☆プチ」(新潮社)の読者モデルとなる。その後、姉妹雑誌の「ニコラ」(同)に活動の拠点を移してモデルとして活躍する一方で、女優業にも進出。13年には『獣電戦隊キョウリュウジャー』(テレビ朝日系)の2代目キョウリュウバイオレットの弥生ウルシェードとして出演を果たす。ほかにも、『学校のカイダン』(日本テレビ系)や連続テレビ小説『まれ』(NHK)など多数のドラマに出演。  演技力は高く、スタイルも顔も良しと申し分ないのだが、役ごとに丁寧に演じ分けができる器用さのせいか、良く言えば無色透明、悪く言えば本人自身のキャラクターが薄い。そのためか、3番手、4番手の脇役に埋もれて伸び悩んでおり、素材はいいのにもったいないなぁと、思っていた。  ただ、彼女のようなタイプの若手女優は、高校卒業を転機として流れが変わることが多い。  波瑠や広瀬アリスも年齢が上がるに従って演じられる役の幅が広がっていったのだが、今の飯豊を見ていると、これまで積み上げてきた実績が、一気に爆発する予感がある。 『パパ活』での飯豊の芝居を見て感心したのは、話す相手ごとにリアクションを演じ分けていたことだ。  女友達と話している時はイマドキの女の子っぽく少し乱暴な口調でテンポよくしゃべる一方で、バイト先の男友達や彼氏と話している時はどこかそっけない。逆に彼女が憧れる大学教授と話している時は、女らしく振る舞うという感じで、人によってリアクションが微妙に違い、その違いが彼女と相手との関係性の表現になっていると同時に、役ごとにキャラクターを作り上げてきた飯豊の無色透明さともマッチしている。  おそらく今期の3作に登場する飯豊は、それぞれ違うアプローチの演技を見せてくれるだろう。その違いを比較するだけでも、彼女の演技の幅はとてもよくわかるはずだ。  無色透明だからこそ、何者にでもなれる。飯豊まりえの快進撃は、ここから始まるのだ。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

『にじいろジーン』レギュラーに加え、今期ドラマ3作に出演! “透明感バツグン”飯豊まりえの快進撃が始まる!?

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飯豊まりえオフィシャルブログより
 夏クールの連続ドラマがポツポツと始まっているが、飯豊まりえの出演作がなんと3本もある。    1作目は、有料動画配信サービスdTVで配信中の『パパ活』。  飯豊が演じるのは、彼氏とケンカして家出した女子大生・赤間杏里。同棲していた彼氏とケンカして行く場所がないため、パパ活(出会い系サイトで援助してくれる年配の男性を募集すること。食事だけの関係から愛人関係までさまざま)をしようとしていたところ、偶然知り合った渡部篤郎演じる大学教授・栗山航が隠れ家にしている別宅に住ませてもらうことをきっかけに始まる恋愛ドラマだ。  脚本は『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)や『高校教師』(TBS系)など、大ヒットドラマを手がけてきた野島伸司。  1話23分と短いことを差し引いても、物語のテンポが良くてとても見やすい。同時に、パパ活という言葉に代表されるような性の匂いも立ち込めていて、今の地上波では展開することが難しくなってきている、野島ドラマならではのいかがわしい魅力に満ちている。  そんな野島ワールドで、演じる等身大の女子大生を演じる飯豊は、見事にハマっている。  2作目は、深夜ドラマ『マジで航海してます。』(MBS、TBS系)。外航船員を育成する大学が舞台のドラマで、武田玲奈とのW主演だ。    飯豊が演じるのは、天真爛漫な女の子・坂本真鈴。成り行きで流されるままに大学に入った石川燕(武田)とは逆に、小学生の頃に船のとりことなり、航海士を目指す真鈴は明るく快活で、まるで朝ドラのヒロインのようだ。  体の大きな飯豊がオーバーアクションでしゃべっていると服がビリッと破ける音がするのがお約束となっているのだが、明るいタッチの作品で、『パパ活』とは違った魅力が全開となっている。  3作目は、7月8日(土)深夜0時20分から始まる『居酒屋ふじ』(テレビ東京系)。永山絢斗演じる売れない俳優の恋人役で、印刷会社で働くOL・鯨井麻衣を演じる。  また、バラエティ番組『にじいろジーン』(フジテレビ系)の新レギュラーにも決まり、ここにきて一気にブレーク間近というムードが漂い始めている。  飯豊は現在19歳。2008年に「avex kids×ニコ☆プチ公開モデルオーディション」でグランプリを受賞、翌年から「ニコ☆プチ」(新潮社)の読者モデルとなる。その後、姉妹雑誌の「ニコラ」(同)に活動の拠点を移してモデルとして活躍する一方で、女優業にも進出。13年には『獣電戦隊キョウリュウジャー』(テレビ朝日系)の2代目キョウリュウバイオレットの弥生ウルシェードとして出演を果たす。ほかにも、『学校のカイダン』(日本テレビ系)や連続テレビ小説『まれ』(NHK)など多数のドラマに出演。  演技力は高く、スタイルも顔も良しと申し分ないのだが、役ごとに丁寧に演じ分けができる器用さのせいか、良く言えば無色透明、悪く言えば本人自身のキャラクターが薄い。そのためか、3番手、4番手の脇役に埋もれて伸び悩んでおり、素材はいいのにもったいないなぁと、思っていた。  ただ、彼女のようなタイプの若手女優は、高校卒業を転機として流れが変わることが多い。  波瑠や広瀬アリスも年齢が上がるに従って演じられる役の幅が広がっていったのだが、今の飯豊を見ていると、これまで積み上げてきた実績が、一気に爆発する予感がある。 『パパ活』での飯豊の芝居を見て感心したのは、話す相手ごとにリアクションを演じ分けていたことだ。  女友達と話している時はイマドキの女の子っぽく少し乱暴な口調でテンポよくしゃべる一方で、バイト先の男友達や彼氏と話している時はどこかそっけない。逆に彼女が憧れる大学教授と話している時は、女らしく振る舞うという感じで、人によってリアクションが微妙に違い、その違いが彼女と相手との関係性の表現になっていると同時に、役ごとにキャラクターを作り上げてきた飯豊の無色透明さともマッチしている。  おそらく今期の3作に登場する飯豊は、それぞれ違うアプローチの演技を見せてくれるだろう。その違いを比較するだけでも、彼女の演技の幅はとてもよくわかるはずだ。  無色透明だからこそ、何者にでもなれる。飯豊まりえの快進撃は、ここから始まるのだ。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

朝ドラ『ひよっこ』でブレーク! “天然系ドジッ子”キャラで証明された、松本穂香の破壊力

朝ドラ『ひよっこ』でブレーク! 天然系ドジッ子キャラで証明された、松本穂香の破壊力の画像1
FLaMme公式サイトより
 NHK連続テレビ小説『ひよっこ』は、奥茨城村出身の谷田部みね子(有村架純)が東京で働きながら、行方不明となった父親を捜す姿を描いたドラマだ。  脚本は岡田惠和。『ちゅらさん』『おひさま』に続き、朝ドラは3本目。    1964年の東京オリンピック前後の時代を描くことで、2020年の東京オリンピックを控えた現代の空気と対峙させる試みや、饒舌すぎて前衛的な表現となっている増田明美のナレーションなど、見どころは多数あるのだが、現時点での面白さは、次々と登場する魅力的な登場人物たちだろう。  特にみね子が上京し、向島電機に就職して乙女寮で暮らすようになってからは、みね子と同じように地方からやってきた女の子が一気に増えて楽しかった。  みね子が乙女寮で同じ部屋になるのは、親友で女優を目指す、背が高い助川時子(佐久間由衣)。勉強に励む真面目な努力家で、通信制の高校で学んでいる秋田県出身の兼平豊子(藤野涼子)。一年先輩で、小柄で体が弱い秋田県出身の夏井優子(八木優希)。コーラス部を指導する高島雄大(井之脇海)と付き合っている山形県出身の寮長・秋葉幸子(小島藤子)。マイペースで食いしん坊のおかっぱメガネ、福島県出身の青天目(なばため)澄子(松本穂香)。  ほかにも、みね子たちを見守る母親的存在である永井愛子(和久井映見)も含め、登場人物がみんなかわいくていい子ばかりなので、アイドルドラマとして優れた作品になったといえる。  もともと朝ドラは、若手新人女優の登竜門としての側面が強く、ヒロインを演じることで成長していく女優の姿を楽しむというアイドルドラマとしての側面が強かった。  アイドルになりたい女の子を主人公にした『あまちゃん』以降は、ヒロインだけでなく主人公の親友や娘などといった脇役にも注目が集まるようになり、吉岡里帆のように朝ドラで脇役を演じた女優が注目されて売れていくことが、もうひとつのシンデレラストーリーとなっている。 『ひよっこ』はその極致で、乙女寮の女の子は誰を主人公にしても朝ドラが作れそうな魅力と物語を備えている。  中でも目を引くのが、松本穂香が演じた青天目澄子である。    澄子は、おかっぱのメガネっ子で福島弁を話すのだが、野暮ったい格好をして方言を話す姿が、逆にかわいさにつながっており、朝ドラヒロインの系譜でいうと、『あまちゃん』の天野アキ(能年玲奈)と『あさが来た』に登場したメガネっ子の“のぶちゃん”こと田村宜(吉岡里帆)を足して2で割ったような、天然系ドジッ子キャラだ。食べることと寝ることが好きで、いつもぼーっとしていて動きが遅く、話し方もゆっくり。  しかも方言なので、何を言っているのかわからないのだが、それがすさまじい破壊力を放っている。青天目という珍しい名字もあってか、人間というよりは「ゆるキャラ」的な存在で、そばにいるだけでみんなが癒やされているのが、見ていてよくわかる。  澄子が面白いのは、動作がゆっくりしているので、みんなが普通に話している時に一人だけズレた動きをしていることが多いという点。  時子と豊子がケンカを始めてしまった時、みね子が寝たふりをして困っている中で、澄子は気づかずにずっと寝ている。登場するたびに何かを食べていて、食堂でも気づいたらおかわりをしている。 『あさが来た』ののぶちゃんもおかしな動きをしていたが、『ひよっこ』のほうが自覚的に描かれており、作り手が澄子を楽しんでいるのがよくわかる。  澄子を演じる松本は、有村と同じ芸能事務所・フラームに所属する20歳。17歳の時に『あまちゃん』を見て本格的に女優を目指そうと思い、事務所に応募したという。  本人の印象としては、事務所の先輩である広末涼子の系譜にあたるショートカットで透明感のある女の子という感じで、清純派女優のど真ん中である。    ドラマ出演はまだ少ないが、ワコール「ブラ・リサイクルキャンペーン」のWEBムービーや「江崎グリコ ビーフカレーLEE『辛い(うまい)』編」のCMなどに出演しており、それぞれ印象は違うが、目元が独特で小動物のようだ。  澄子は、メガネにおかっぱという極端なキャラクターだが、元の容姿がここまでいいと、多少変なコスプレをしても逆に愛嬌が際立つのだなと、CM等を見て思った。    残念ながら、物語上では向島電機は倒産し、乙女寮の面々はバラバラになってしまった。澄子も石鹸工場に転職し、今は物語から退場している。  しかし、NHKのトーク番組『土曜スタジオパーク』の『ひよっこ』特集に、佐久間由、衣藤野涼子と松本が出演した際、乙女寮の面々の再登場はあると言っていたので、楽しみである。  その時、石鹸工場に就職した澄子は大人に成長して戻ってくるのか、相変わらずマイペースでおっとりしているのか?   澄子の再登場を心待ちにしながら、今も『ひよっこ』を追いかけている。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

朝ドラ『ひよっこ』でブレーク! “天然系ドジッ子”キャラで証明された、松本穂香の破壊力

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FLaMme公式サイトより
 NHK連続テレビ小説『ひよっこ』は、奥茨城村出身の谷田部みね子(有村架純)が東京で働きながら、行方不明となった父親を捜す姿を描いたドラマだ。  脚本は岡田惠和。『ちゅらさん』『おひさま』に続き、朝ドラは3本目。    1964年の東京オリンピック前後の時代を描くことで、2020年の東京オリンピックを控えた現代の空気と対峙させる試みや、饒舌すぎて前衛的な表現となっている増田明美のナレーションなど、見どころは多数あるのだが、現時点での面白さは、次々と登場する魅力的な登場人物たちだろう。  特にみね子が上京し、向島電機に就職して乙女寮で暮らすようになってからは、みね子と同じように地方からやってきた女の子が一気に増えて楽しかった。  みね子が乙女寮で同じ部屋になるのは、親友で女優を目指す、背が高い助川時子(佐久間由衣)。勉強に励む真面目な努力家で、通信制の高校で学んでいる秋田県出身の兼平豊子(藤野涼子)。一年先輩で、小柄で体が弱い秋田県出身の夏井優子(八木優希)。コーラス部を指導する高島雄大(井之脇海)と付き合っている山形県出身の寮長・秋葉幸子(小島藤子)。マイペースで食いしん坊のおかっぱメガネ、福島県出身の青天目(なばため)澄子(松本穂香)。  ほかにも、みね子たちを見守る母親的存在である永井愛子(和久井映見)も含め、登場人物がみんなかわいくていい子ばかりなので、アイドルドラマとして優れた作品になったといえる。  もともと朝ドラは、若手新人女優の登竜門としての側面が強く、ヒロインを演じることで成長していく女優の姿を楽しむというアイドルドラマとしての側面が強かった。  アイドルになりたい女の子を主人公にした『あまちゃん』以降は、ヒロインだけでなく主人公の親友や娘などといった脇役にも注目が集まるようになり、吉岡里帆のように朝ドラで脇役を演じた女優が注目されて売れていくことが、もうひとつのシンデレラストーリーとなっている。 『ひよっこ』はその極致で、乙女寮の女の子は誰を主人公にしても朝ドラが作れそうな魅力と物語を備えている。  中でも目を引くのが、松本穂香が演じた青天目澄子である。    澄子は、おかっぱのメガネっ子で福島弁を話すのだが、野暮ったい格好をして方言を話す姿が、逆にかわいさにつながっており、朝ドラヒロインの系譜でいうと、『あまちゃん』の天野アキ(能年玲奈)と『あさが来た』に登場したメガネっ子の“のぶちゃん”こと田村宜(吉岡里帆)を足して2で割ったような、天然系ドジッ子キャラだ。食べることと寝ることが好きで、いつもぼーっとしていて動きが遅く、話し方もゆっくり。  しかも方言なので、何を言っているのかわからないのだが、それがすさまじい破壊力を放っている。青天目という珍しい名字もあってか、人間というよりは「ゆるキャラ」的な存在で、そばにいるだけでみんなが癒やされているのが、見ていてよくわかる。  澄子が面白いのは、動作がゆっくりしているので、みんなが普通に話している時に一人だけズレた動きをしていることが多いという点。  時子と豊子がケンカを始めてしまった時、みね子が寝たふりをして困っている中で、澄子は気づかずにずっと寝ている。登場するたびに何かを食べていて、食堂でも気づいたらおかわりをしている。 『あさが来た』ののぶちゃんもおかしな動きをしていたが、『ひよっこ』のほうが自覚的に描かれており、作り手が澄子を楽しんでいるのがよくわかる。  澄子を演じる松本は、有村と同じ芸能事務所・フラームに所属する20歳。17歳の時に『あまちゃん』を見て本格的に女優を目指そうと思い、事務所に応募したという。  本人の印象としては、事務所の先輩である広末涼子の系譜にあたるショートカットで透明感のある女の子という感じで、清純派女優のど真ん中である。    ドラマ出演はまだ少ないが、ワコール「ブラ・リサイクルキャンペーン」のWEBムービーや「江崎グリコ ビーフカレーLEE『辛い(うまい)』編」のCMなどに出演しており、それぞれ印象は違うが、目元が独特で小動物のようだ。  澄子は、メガネにおかっぱという極端なキャラクターだが、元の容姿がここまでいいと、多少変なコスプレをしても逆に愛嬌が際立つのだなと、CM等を見て思った。    残念ながら、物語上では向島電機は倒産し、乙女寮の面々はバラバラになってしまった。澄子も石鹸工場に転職し、今は物語から退場している。  しかし、NHKのトーク番組『土曜スタジオパーク』の『ひよっこ』特集に、佐久間由、衣藤野涼子と松本が出演した際、乙女寮の面々の再登場はあると言っていたので、楽しみである。  その時、石鹸工場に就職した澄子は大人に成長して戻ってくるのか、相変わらずマイペースでおっとりしているのか?   澄子の再登場を心待ちにしながら、今も『ひよっこ』を追いかけている。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

もうゴリ押しなんて言わせない!? 『女囚セブン』で剛力彩芽が獲得した、新たな“ハマり役”

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『女囚セブン』(テレビ朝日系)に出演する剛力彩芽が神々しい。  本作は、金曜23時15分から放送されている、女性刑務所を舞台にしたコメディタッチのドラマ。    京都で働く芸鼓の神渡琴音(剛力彩芽)は、先輩の雪乃(寺川里奈)を殺害した罪で逮捕される。しかし、それは冤罪だった。自らの汚名を晴らし、真犯人を突き止めるために自ら進んで女子刑務所に入る琴音。  雪乃は法務大臣の内藤裕次郎(高嶋政伸)の秘書・本郷(寿大聡)と付き合っており、彼らの悪事の数々を“黒革の手帳”に記録していた。  内藤は“黒革の手帳”を奪うため、看守たちに操られた女囚を使って琴音を追い詰めようとするが、琴音は女囚たちを仲間につけて、内藤を追い詰めていく。  脚本は西荻弓絵。『ケイゾク』や『SPEC』(ともにTBS系)といった堤幸彦演出のカルトミステリードラマで知られているが、近年のヒット作といえば、『女囚セブン』と同じ金曜ナイトドラマ枠で制作された政治コメディドラマ『民王』だろう。 『民王』は、笑いの中に政治ネタを盛り込んでいく手腕が実に巧みだったが、本作もコミカルな描写の中にゲス不倫、老人介護、待機児童、政治家の汚職などといった時事ネタが盛り込まれており、真実を隠ぺいしようとする権力に立ち向かう社会派ドラマとなっている。  そんなコメディだか、シリアスだかわからない人を食った世界観と、剛力のたたずまいは、実に相性がいい。  剛力が演じる琴音は寡黙で無表情のため、何を考えているかわからないミステリアスな芸妓だ。しかし、女囚が仕掛けてくる食事にゴキブリを入れるといったイジメを、鋭い勘と鍛え抜かれた体術で難なくかわしていく。  毎回の見せ場は、安達祐実や山口紗弥加といった実力派女優が演じる女囚たちとの議論対決だ。琴音は京ことばでゆったりとしゃべりながら相手の心の傷をえぐり出していき、精神的に追い込んだ後、「罪は犯すやつが悪いんやない。犯させる奴が悪いんどす」と言って、女囚たちを救済していく。  普通ならあり得ない、荒唐無稽なヒロインである。  しかし、剛力が演じると、妙な実在感が生まれる。  雑誌「Seventeen」(集英社)の専属モデルとして人気だった剛力彩芽は、 月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』(フジテレビ系)に出演以降、剛力という珍しい名字とショートカットの端正な顔立ちが注目され、女優として活躍するようになった。しかし、出演作が途切れることなく続いているため、ネットでは「ゴリ押しだ」というアンチの声が目立つ。  剛力の所属するオスカープロモーションは、所属女優を途切れることなく新作ドラマにブッキングする。同じ事務所の武井咲にも同じ戦略がとられているが、人気商売であるため早いうちに顔を売ると同時に、場数をこなすことで成長させたいという意図はよくわかる。  なんでも演じてきた雑食性が、結果的に今の武井と剛力の女優としてのタフさを作り出しているのは紛れもない事実だが、彼女らの出演作は玉石混交で、本人に合っていないものも多い。   特に原作モノの場合は(原作の)イメージと違うという反発も多く、もう少し丁寧に選べばいいのにと、昔から思っていた。  先輩の米倉涼子を筆頭に、オスカーの女優はスタイルのいい美女が多い。  彼女たちのような美女タイプはモデルやグラビア、あるいは短時間のCMなら相性がいいのだが、日常生活に根差した長尺のテレビドラマにおいては起用がとても難しい。  そのまま登場させると、顔が小さく、等身の高い美人である彼女たちは違和感が強すぎるのだ。  そのため違和感のない役というと、現実にはありえないようなゴージャスなメロドラマのヒロインになるか、荒唐無稽なスーパーヒロインを演じるしかない。  先輩の米倉も最初は女優としてうまくいかなかったが、『ドクターX~外科医・大門未知子』(テレビ朝日系)のようなスーパーヒロインを演じることで活路を見いだした。  では、剛力はどうか?    なかなかハマり役がなかった剛力だが、少し風向きが変わってきたのは、前作『レンタルの恋』(TBS系)だ。  剛力は、相手が望む理想の彼女を演じるレンタル彼女・高杉レミを演じた。  毎回、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の初号機やカブトムシのコスプレをするシーンがあるコメディ色の強い作品だったが、本作でもミステリアスで神秘的な美女を演じていた。 『レンタルの恋』以降、剛力=ゴリ押しというイメージは消えつつあり、評価も高まっている。    面白いのは、コミカルな役柄を演じることで、剛力の持つ圧倒的な造形の美しさもまた際立つことだ。  武井も同じようにコミカルとシリアスを横断することで評価されているが、今の剛力も同じ道を歩みだしている。その成果が『女囚セブン』の琴音だろう。  コミカルな芝居で安心させてから、圧倒的な美しさを見せつける。  緩いコメディのように見えて、実は社会派ドラマの『女囚セブン』と同様、剛力もまた、コミカルとシリアスを横断することで、新たなハマり役を獲得したのだ。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。