鬼嫁を前にりゅうちぇるが意外な芯の強さを見せる! 『夫はつらいよ』は現代を生きる男性のための番組か

「妻が強い方が家庭はうまくいく」と言われている。確かに、そうだ。「うちの嫁さん、怖くてよぉ~」とこぼすものの、実は幸せそうな夫の顔を見ることは多い。

 しかし、そればかりでもいけない。「強権をふるう妻と、肩身が狭い夫」という関係性が問題視されることは、実はあまりなかったりする。逆パターンと比較すると歴然だ。

 そんな境遇の夫に救いの手を伸ばす番組が、2週連続で放送された。10月9日と16日に放送されたのは、その名も『夫はつらいよ ~鬼嫁直談判バラエティ 願い事を一つだけ聞いてください!~』(テレビ朝日系)。鬼嫁に歯向かえない気弱な夫が、タレント応援団の後押しを受け、勇気を振り絞り、願い事を妻に直談判するバラエティである。

「タレント応援団」として出演したのは、この2人。新婚間もないりゅうちぇる、そして恐妻家としても有名なずんの飯尾和樹である。

「ウチは玄関開けたらイギリスだから。女王様!」(飯尾)

 

■グランドピアノを優雅に弾く鬼嫁と、ノートパソコンしか所有してない弱腰夫

 

 9日放送の第1回に登場したのは、名付けて“ルールブック妻”。交際当時は正真正銘のオタクであった夫を改造するため、交際する条件として自作のルールブックを夫に手渡している妻のことだ。

 ルールブックの内容だが、身に着けるとオタクに見えるNGファッションの数々(ネルシャツや迷彩柄、白靴下)が掲載されており、それらのファッションアイテムは実際に妻にすべて廃棄されてしまっている。

 それだけじゃない。結婚時には新たなルールブックが作成され、そこには「妻が起きる前に洗い物をしてゴミを捨てる」「毎朝料理を作る」といった条項が記されていたという。

 まだ、ある。35年ローンで建てた2,700万円の新築マイホームに訪れると、夫の私物はノートパソコン1台しかなかったのだ。妻の方は100万円のグランドピアノ、計110着の洋服を所有しているのに……。

 加えて「人をダメにする」という理由で、宝物であったゲーム機と4,000冊集めたマンガを全て処分されてしまう始末。先ほども述べたが、この夫は元オタクである。

「だって、マンガっていらないですよね」(鬼嫁)

 さすがに見かねた飯尾とりゅうちぇるが「毎朝5時にお弁当を作るのは大変では?」と訴えると、鬼嫁は「何かあるんだったら言えって言ってるじゃん!」という態度。言えないから、飯尾とりゅうちぇるが来ているのだが……。

■頑なな鬼嫁に熱意をぶつける、りゅうちぇるの芯の強さ

 

 16日放送の第2回目は、もっとキツい。花火大好きな鬼嫁に従い、年間70カ所の花火大会に連れていかれる弱腰夫。ちなみに、この夫は花火に全く興味がないという。

 しかも、見るだけではない。5台のカメラを使って撮影し、編集作業まで課せられている。その上、夫は仕事と花火が両立できなくなってしまい、嫁から仕事を辞めさせられてしまったというのだ。

飯尾「(夫が)仕事を続けたいと言ったら?」

鬼嫁「そしたら、まあ、離婚届持っておいでよって」

 現在、この夫の生活は「平日=編集作業、土日=花火大会」という生活を送っている。

 夫の願い事はただ一つ、「花火をやめたい」である。しかし、この家庭を見ると、そこまで主張するのは難しそうだ。そこで、夫とタレント応援団の3人は「1回、花火のない週末を送りたい」と譲歩して鬼嫁へ直談判することにした。

 この折衝の場で、りゅうちぇるが予想外の熱さを見せる。

「離婚はしたくないんですって。でも、花火と結婚はしてないから。離婚と花火が並ぶこと自体が、他の人からしたら『えっ!?』って思う」(りゅうちぇる)

 この説得に鬼嫁が折れた。この弱腰夫は、なんとか2日分の休みをゲットすることに成功している。

 世の鬼嫁の押しの強さには驚愕だが、同時に弱腰夫の頼りなさを再確認することとなった『夫はつらいよ』。

 妻を持つ男は、どう生きていくべきだろう? “恐妻家”飯尾和樹のスタイルか、しっかりと己を主張するりゅうちぇるのような態度なのか。両極端な2サンプルが揃った、現代の男子からすると参考になる番組であった。
(文=寺西ジャジューカ)

完全覚醒前夜! 中村ゆりかの“秘めたる狂気”が心をえぐる深夜ドラマ『ぼくは麻理のなか』

 フジテレビ系で月曜深夜に放送中の『ぼくは麻理のなか』は、心をえぐる痛々しいドラマだ。

 本作はもともと、フジテレビオンデマンドで放送されていた配信ドラマ。物語は、鬱屈した感情を抱えて引きこもり生活を過ごしていた大学生の小森(吉沢亮)が、“コンビニの天使”と呼んで、密かに好意を抱いていた女子高生の吉崎麻理(池田エライザ)の体の中に意識が入り込んでしまうところからスタートする。

『ぼくは麻理のなか』は、入れ替わりモノというジャンルに属している作品だ。

 古くは大林宣彦監督の映画『転校生』(1982)、最近では新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』(2016)など、若い男女の肉体が入れ替わるという物語は青春ドラマの定番なのだが、本作が面白いのは、小森と入れ替わった麻理の精神が小森の肉体に宿っておらず、行方不明となっていることだ。

 麻理(の肉体を持った小森)が自分のアパートで対面した小森が、普通の大学生として別人のように存在しているという導入部は、極めて不穏である。

 原作は『惡の華』(講談社)等の作品で知られる押見修造が「漫画アクション」(双葉社)で描いていた同名漫画。

 思春期の少年少女の鬱屈した感情を描かせたらピカイチの描写を持つ作家の漫画を映像化しているだけに、序盤で描かれる、小森がアパートで一人ゲームをしながら鬱屈していく様は、とてもリアルで見ていていたたまれない気持ちになる。

 好きな女子高生と肉体が入れ替わった後も、楽しいエッチなイベントがいくらでもありそうなのに、男子生徒と一緒にカラオケに行ったら同級生の女子生徒から「人の彼氏に手を出すな」と怒られて孤立したり、男子生徒に強引に部屋に上がられてキスされるなど、良いことがひとつもない。内面が鬱屈していると、かわいい女子高生と肉体が入れ替わっても、鬱屈したまんまなんだと思うと切なくなってしまう。

 主演の池田エライザは、グラビアアイドルならではの色っぽさと、中に男の意識が入っているという落差をうまく出していて、麻理を好演している。一方、異様な存在感で、目が離せないのは、中村ゆりかが演じている柿口依だ。

 依はメガネをかけた陰気な雰囲気を醸し出している美少女。麻理のことを偏執的に追いかけていて、いち早く麻理の中に別の人間がいることに気づく。

 その後、麻理が元に戻れるようにいろいろと協力してくれるのだが、男性に対して嫌悪感を持っているため、麻理の中にいる小森に対しては、汚物を見るかのような対応をしている。

 小森も依も、人とコミュニケーションをするのが苦手で、鬱屈した感情が高ぶると早口になる場面があるのだが、依が麻理(の中にいる小森)を責め立てる場面の刺々しい口調は、圧巻の一言。世界のすべてを拒絶して、麻理のことを崇拝する眼鏡美少女というビジュアルに一発でやられてしまった。

 中村ゆりかは現在20歳。日本人と台湾人のハーフで、アイドルでは、ももいろクローバーZや私立恵比寿中学、若手女優では小松菜々や森川葵が在籍しているスターダストプロモーションの女優だ。

 スターダストの女優やアイドルは、細身の身体で年齢よりも幼く見えて少女性の強い子が多い。

 中村ゆりかも同様で、映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』(14)でも制服姿の美少女を演じていて、フェアリーテイルな存在感を見せていた。

 テレビドラマでは、『富士ファミリー』や連続テレビ小説『まれ』(ともにNHK)等に出演。主人公の思春期の姿や、物語の鍵を握るミステリアスな美少女としてビジュアルアイコン的に出演することが多かった。今回の『ぼくは麻理のなか』は、連続ドラマのレギュラーということもあって、今までは未知数だった演技力も見事に証明したといえる。おそらく、これから一気に主演級の役が増えていくのだろう。

 ビジュアルの魅力も去ることながら、グイグイと相手を追い込んでいくような畳み掛ける話し方を見せていて、今までとは違う個性を見せ始めている。

 今までも華奢な美少女という外見ながらも、『舞え!KAGURA姫』(NHK )での女子高生役のように、思い込んだらグイグイと自分の意見をぶつけてくる押しの強さを見せていた。今回の依は、麻理に対して狂信的な感情を抱いていることもあってか、切迫した感情が狂気のように押し寄せてくる。

 狂気を秘めた美少女役というと、同じ事務所の小松菜奈が映画界を席巻している。しかし、小松がカリスマ性のある女教祖のような絶対的な存在として上から来るのに対して、中村ゆりかの狂気は下から謙ってくる信者タイプの卑屈なヤバさなので、まったく違うアプローチが期待できる。

 ちなみに、原作漫画の依はショートカットにメガネで、必ずしも中村と外見が似ているわけではないのだが、違和感なく依になりきっている。

 ドラマのエンドロールでは、ドラマで展開したシーンと同じ箇所の漫画が流れるのだが、実写映像と見比べると、より面白いはずだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

完全覚醒前夜! 中村ゆりかの“秘めたる狂気”が心をえぐる深夜ドラマ『ぼくは麻理のなか』

 フジテレビ系で月曜深夜に放送中の『ぼくは麻理のなか』は、心をえぐる痛々しいドラマだ。

 本作はもともと、フジテレビオンデマンドで放送されていた配信ドラマ。物語は、鬱屈した感情を抱えて引きこもり生活を過ごしていた大学生の小森(吉沢亮)が、“コンビニの天使”と呼んで、密かに好意を抱いていた女子高生の吉崎麻理(池田エライザ)の体の中に意識が入り込んでしまうところからスタートする。

『ぼくは麻理のなか』は、入れ替わりモノというジャンルに属している作品だ。

 古くは大林宣彦監督の映画『転校生』(1982)、最近では新海誠監督のアニメ映画『君の名は。』(2016)など、若い男女の肉体が入れ替わるという物語は青春ドラマの定番なのだが、本作が面白いのは、小森と入れ替わった麻理の精神が小森の肉体に宿っておらず、行方不明となっていることだ。

 麻理(の肉体を持った小森)が自分のアパートで対面した小森が、普通の大学生として別人のように存在しているという導入部は、極めて不穏である。

 原作は『惡の華』(講談社)等の作品で知られる押見修造が「漫画アクション」(双葉社)で描いていた同名漫画。

 思春期の少年少女の鬱屈した感情を描かせたらピカイチの描写を持つ作家の漫画を映像化しているだけに、序盤で描かれる、小森がアパートで一人ゲームをしながら鬱屈していく様は、とてもリアルで見ていていたたまれない気持ちになる。

 好きな女子高生と肉体が入れ替わった後も、楽しいエッチなイベントがいくらでもありそうなのに、男子生徒と一緒にカラオケに行ったら同級生の女子生徒から「人の彼氏に手を出すな」と怒られて孤立したり、男子生徒に強引に部屋に上がられてキスされるなど、良いことがひとつもない。内面が鬱屈していると、かわいい女子高生と肉体が入れ替わっても、鬱屈したまんまなんだと思うと切なくなってしまう。

 主演の池田エライザは、グラビアアイドルならではの色っぽさと、中に男の意識が入っているという落差をうまく出していて、麻理を好演している。一方、異様な存在感で、目が離せないのは、中村ゆりかが演じている柿口依だ。

 依はメガネをかけた陰気な雰囲気を醸し出している美少女。麻理のことを偏執的に追いかけていて、いち早く麻理の中に別の人間がいることに気づく。

 その後、麻理が元に戻れるようにいろいろと協力してくれるのだが、男性に対して嫌悪感を持っているため、麻理の中にいる小森に対しては、汚物を見るかのような対応をしている。

 小森も依も、人とコミュニケーションをするのが苦手で、鬱屈した感情が高ぶると早口になる場面があるのだが、依が麻理(の中にいる小森)を責め立てる場面の刺々しい口調は、圧巻の一言。世界のすべてを拒絶して、麻理のことを崇拝する眼鏡美少女というビジュアルに一発でやられてしまった。

 中村ゆりかは現在20歳。日本人と台湾人のハーフで、アイドルでは、ももいろクローバーZや私立恵比寿中学、若手女優では小松菜々や森川葵が在籍しているスターダストプロモーションの女優だ。

 スターダストの女優やアイドルは、細身の身体で年齢よりも幼く見えて少女性の強い子が多い。

 中村ゆりかも同様で、映画『ニシノユキヒコの恋と冒険』(14)でも制服姿の美少女を演じていて、フェアリーテイルな存在感を見せていた。

 テレビドラマでは、『富士ファミリー』や連続テレビ小説『まれ』(ともにNHK)等に出演。主人公の思春期の姿や、物語の鍵を握るミステリアスな美少女としてビジュアルアイコン的に出演することが多かった。今回の『ぼくは麻理のなか』は、連続ドラマのレギュラーということもあって、今までは未知数だった演技力も見事に証明したといえる。おそらく、これから一気に主演級の役が増えていくのだろう。

 ビジュアルの魅力も去ることながら、グイグイと相手を追い込んでいくような畳み掛ける話し方を見せていて、今までとは違う個性を見せ始めている。

 今までも華奢な美少女という外見ながらも、『舞え!KAGURA姫』(NHK )での女子高生役のように、思い込んだらグイグイと自分の意見をぶつけてくる押しの強さを見せていた。今回の依は、麻理に対して狂信的な感情を抱いていることもあってか、切迫した感情が狂気のように押し寄せてくる。

 狂気を秘めた美少女役というと、同じ事務所の小松菜奈が映画界を席巻している。しかし、小松がカリスマ性のある女教祖のような絶対的な存在として上から来るのに対して、中村ゆりかの狂気は下から謙ってくる信者タイプの卑屈なヤバさなので、まったく違うアプローチが期待できる。

 ちなみに、原作漫画の依はショートカットにメガネで、必ずしも中村と外見が似ているわけではないのだが、違和感なく依になりきっている。

 ドラマのエンドロールでは、ドラマで展開したシーンと同じ箇所の漫画が流れるのだが、実写映像と見比べると、より面白いはずだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち

1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

「貧しさをエンターテインメントに」里咲りさは、いかにして“Zeppワンマン”にたどり着いたのか

「貧しさをエンターテインメントに」里咲りさは、いかにしてZeppワンマンにたどり着いたのかの画像1
『サイン』(フローエンタテイメント)
 AKB48の成功以降、ライブハウスを拠点とする地下アイドルシーンは盛り上がりを見せており、文化として完全に定着したといえる。  しかし、日本のエンターテインメントの担い手の多くが直面している「儲からない」という壁に、彼女たちもまた、ぶつかっている。地下アイドルはライブの回数が多く、肉体的にも精神的にも消耗が激しい。しかし、それに見合う対価を受け取っているとは言い難く、ライブだけでは食えないのが現状だ。だから、多くの地下アイドルは疲弊して次々と辞めていく。  食えないこと以上に問題なのは「どうすれば売れるのか?」という出口が見えないことだ。  結局、大手芸能事務所に所属するか『ラストアイドル』(テレビ朝日系)のようなオーディション番組に参加して、秋元康がプロデュースするアイドルグループに入るしか道はなく、それができないなら、青春の思い出として文化祭感覚で楽しむしかない、というのが、地下アイドルに関わっている人々の本音ではないかと思う。  そんな中、地下アイドルでありながら、“売れる道”を切り開いているのが、里咲りさである。  里咲は、自分で作詞作曲を行うアイドル兼シンガーソングライターだ。運営も自分で手掛けているため、社長(しゃちょー)の愛称で親しまれている。  9月22日には、彼女のような個人で活動するアイドルが借りるのは難しいと言われている「Zeppダイバーシティ東京」でのワンマンライブも成功させた。  里咲りさとしてデビューして3年。彼女がここまでこられたのは、歌手としての力量もさることながら、運営としての才覚があったからだろう。  里咲がメディアで注目されたのは『ビートたけしのTVタックル!』(テレビ朝日系)のアイドル特集で、100円ショップで買ったタオルに名前をサインしたものを1,000円で売るといった「ぼったくり物販」をするアイドルとして出演したことがきっかけだった。  次々とユニークな商品を打ち出して、自分で手売りをする里咲の物販は毎回面白く、ライブと同じくらい見応えがある。  一方で里咲は、CD-Rを自分のパソコンで直接焼いて楽曲を売ることにこだわっており、オリコンチャートにCD-Rでランクインしたことも話題となった。  ぼったくり物販もCD-Rも、地下アイドルの貧しさの象徴のようなものだ。  しかし、里咲はそんな貧しさを逆手にとって、それ自体をエンターテインメント化することによって、注目を集めてきたのだ。  Zeppにはファンだけでなく、同業者のアイドルやアイドル関係の仕事をするマスコミ関係者も多数駆けつけていた。おそらく、彼女の動向に、地下アイドルに関わる者として希望を見いだしたいという人が多かったのだろう。  筆者が彼女に注目したのは、アイドルの運営として「お金の話」をあけすけに語り「売れたい」と公言していたからだ。  地下アイドルが儲からないという残酷物語自体は、メディアにあふれ返っていて珍しいものではない。ただ、里咲の話はなぜか聴いていて心地よく、むしろ応援したくなってしまう。  里咲はZeppワンマンのチケット売上枚数を公表し、損益分岐点まであと何枚かをアナウンスしていた。こういった、地下アイドルとしての自分自身が売れるために試行錯誤していくプロセス自体を実況してイベント化していくのが抜群にうまい。  インターネットの普及によってエンタメ業界の産業構造が大きく変化する中で、既存の売り方は通じなくなっている。真っ先にその影響を受けたのが音楽業界だ。そのため、今の時代のクリエイターは、ただ、表現をするだけではなく、AKBの握手会や選抜総選挙のように、表現を届けるための「手法」自体もデザインしなければならない。  表現を届ける「売り方」自体がクリエイティブで面白かったことが、里咲が注目されている大きな理由だろう。  しかし、これは諸刃の剣でもある。「売り方」ばかりに注目が集まると、肝心の表現自体が陰に隠れてしまうし、実力が伴っていなければ、やがて飽きられてしまう。  里咲はその不安についてインタビューで繰り返し語っていたが、今回のワンマンライブは歌手・里咲りさの、圧倒的な表現力を証明するものとなっていた。  会場は椅子席だったのだが、だからこそ曲を聴くことに集中できて、彼女の歌をじっくり堪能することができた。中でもよかったのは「カタルカストロ」や「TURE」といった暗い曲だ。  筆者が里咲に惹かれるのは、時々あふれ出す圧倒的な影の部分だ。明るい曲も悪くはないが、作家性を感じるのは暗い曲であり、この路線にはまだまだ前人未到の可能性があると思った。  ライブの最後で里咲はメジャーに行く(ただし、いい条件を提示するレコード会社を募集するという、FA宣言だが)と語っていたが、今後は、地下アイドルで自由奔放にやっていたことを、より大きな規模でできるかどうかが鍵となるだろう。  だが、あのライブを見る限り、心配は無用だろう。大きな会場であればあるほど、彼女の表現力はより高まっていくはずだ。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

『黒革の手帖』悪女役で新境地開拓! “リアル元子”武井咲は、結婚&妊娠でさらに化ける?

『黒革の手帖』悪女役で新境地開拓! リアル元子武井咲は結婚&妊娠でさらに化ける?の画像1
 突然の結婚、妊娠報道の渦中、大団円を迎えた『黒革の手帖』(テレビ朝日系)は、今の武井咲だからこそ演じられるピカレスクドラマの傑作だった。  松本清張の小説をドラマ化した本作は、銀行員の女性が政治家や財界の権力者の裏金を横領し、その金で銀座の一等地にクラブを構えるという悪女の成り上がり物語だ。  ヒロインの原口元子は、山本陽子や浅野ゆう子といった女優が演じてきた伝統ある役柄で、2004年には武井の先輩に当たるオスカープロモーションの米倉涼子が演じたことでも知られている。  本作に出演したことで、米倉は男に媚びない強い女というイメージを確立し、次々とテレ朝の連ドラに出演。やがて『ドクターX ~外科医・大門未知子~』で『相棒』の水谷豊と並ぶ、テレ朝にとってはなくてはならない看板スターとなった。  そんな『黒革の手帖』の新作を武井が演じるということは、オスカーやテレ朝が武井を米倉に続くスターに育てたいと思ってのことだろう。  歴代の元子を演じた女優陣と比べると武井は23歳と若く、顔立ちも線の細い美少女という感じだ。そのため、悪女を演じるには物足りないのではないかという下馬評が強かった。  しかし、第1話が終わった後で評価は一転。絶賛の嵐となった。  脚本を担当したのは映画『パッチギ!』や、連続テレビ小説『マッサン』の羽原大介。物語は原作小説を踏襲しているが、元子の設定は現代的なものへと脚色されていた。  本作の元子は、同じ銀行員でも派遣社員。昼は銀行で働きながら、夜は家の借金をホステスの仕事で返済してきたという境遇で、現代の貧困を体現するような弱者として登場した。  そんな元子が、コネ入社した女子社員のミスを肩代わりする形で、あっさりと派遣の契約を切られてしまう。理不尽な権力に、これでもかと追い詰められたところで反撃に出て、銀行から1億8,000万円を奪い取るという第1話には、カタルシスがあった。  普段は地味な格好で質素な暮らしをしている元子が、高価な着物を身にまとって傲慢な男たちを淡々と恫喝する姿は、スーパーヒロインのような格好良さで拍手喝采だった。  物語はその後、ドロドロの権力闘争となり、やがて元子が失脚した後に銀座のママとして返り咲くという展開になるのだが、武井の結婚&妊娠の騒動があったためか、戦いの果てに弱って憔悴していく元子と、武井の姿は、どこか重なって見えた。    武井を最初に意識したのは、野島伸司脚本のドラマ『GOLD』(フジテレビ系)だった。武井が演じたのは、天才スポーツ一家で幼少期から飛び込みの選手として鍛えられ、オリンピックに出場することを周囲から期待されていた少女だった。  幼くてかわいいというよりは、きれいだが危うさを抱えた大人びた美少女という佇まいで、張り詰めたような空気をまとっていてプールで見せる競泳水着の姿が美しく、周囲の期待と恋愛によって崩れていく思春期の危うさを見事に演じていた。  月9ドラマ『大切なことはすべて君が教えてくれた』(同)でも、三浦春馬が演じる高校教師を振り回す女子高生を好演していた。この時期の武井は、思春期の美少女が持つ危うさを演じさせると右に出る者がいなかった。  この2作に出演できたことは、若手女優として幸運なスタートだったといえる。ただ、出演作が多く、作品自体に当たり外れが多かったこともあってか、女優としては安く見られていた。  剛力彩芽もそうだが、オスカーは新人女優を次から次へとドラマに出演させる。そのためネットでは、ゴリ押しというイメージが先行していた。だが、武井はさまざまな作品に出演することでコメディや時代劇など幅広く演じるようになり、近年は安定感のある演技を見せるようになっていた。  そんな中、『黒革の手帖』での悪女役は、武井にとっても新境地だった。  EXILEのTAKAHIROとの結婚&妊娠の報道を知った時は驚いたが、「早めに出産したい」と語っていたので、有言実行という感じなのだろう。  同時に、今の若い子らしい選択とも思った。芸能界に限らないが、武井のような今の20代は、上の世代が結婚に躊躇しているうちに晩婚化、未婚化している姿を見てきた世代だ。  だから、自分たちのライフプランに関しては、かなり自覚的なのだろう。そういうクールに自分の人生を見ているような覚めた視線があるからこそ、シリアスな美少女からコミカルなコメディエンヌまで幅広く演じることができたのだ。  まさに、元子のような計算高さと大胆さを兼ね備えた女優だといえる。    おそらくテレ朝サイドとしては10年くらいのスパンで同じような役を演じてもらい、30歳ぐらいをめどに、米倉のようなテレ朝ドラマを代表するような大人の看板女優となってほしいと考えているのだろう。その期待に、武井は『黒革の手帖』で見事に応えたと思う。    出産後に、彼女がどういう距離感で女優業を続けていくのかわからない。だが、今回の結婚&妊娠は、女優として間違いなくプラスになるはずだ。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

『僕やり』セックスシーンに男子悶絶! 川栄李奈は今こそ脱ぐべき!!

『僕やり』セックスシーンに男子悶絶! 川栄李奈は今こそ脱ぐべき!!の画像1
 川栄李奈は、いま一番エロい芝居ができる若手女優だ。  火曜夜9時から放送されている青春ドラマ『僕たちがやりました』(フジテレビ系)に出演している彼女を見ていると、それを強く感じる。  仲間たちと楽しい高校生活を過ごすトビオ(窪田正孝)の日常は、ある日を境に一変する。不良にリンチされた仲間の報復のために、不良の高校に爆弾をしかけるトビオたち。小さな爆発しか起こらないはずだったが、プロパンガスに引火したことで死傷者の出る大事故となってしまう。逮捕を恐れたトビオたちは逃亡生活を送ることになるのだが、そこから物語は予想外の方向へと転がっていく。  トビオたちの軽薄なノリは、見ていてイライラする。なんというか、ユーチューバーが悪ふざけしている動画を見せられているみたいな感じだ。それが延々と続くため、“ふざけるな!”と思うのだが、一方で現代的なリアリティがあり、目が離せない。  何より、今のテレビドラマでは描けなくなった若者を取り巻く性と暴力を正面から描こうという姿勢に好感が持てる。  1990年代なら野島伸司脚本の『未成年』(TBS系)、2000年代なら宮藤官九郎脚本の『池袋ウエストゲートパーク』(同)が描いていた、少年たちが性と暴力にまみれながら疾走していく姿の10年代バージョンがここにはある。  おそらく今、固唾を呑んで本作を見守っている10代の若者は多いのではないかと思う。     出てくる女の子たちも魅力的だ。  トビオの彼女でヒロイン・蓮子を演じる永野芽郁は、今までの優等生的なイメージをかなぐり捨てて、ギャルっぽい女子高生を好演している。そして一番目を引くのは、川栄李奈演じる今宵の、匂い立つような色気だ。  今宵はトビオの親友・伊佐美(間宮祥太朗)の恋人なのだが、寂しがり屋で、ほかの男にも色目を使ってしまう女の子だ。その一方で、クールな側面もあり、伊佐美の子どもを妊娠した時には、子どもを守るため、(爆破事件に関わった)伊佐美に別れを切り出す。  男に都合のいいバカな女に見えて、腹の底では何を考えているかわからない奥行きが見えるのは、川栄のふわっとした芝居によるところが大きい。    第5話で今宵が、童貞のトビオとセックスをする場面は多くの10代の男の子に衝撃を与えたのではないかと思う。残念ながら原作漫画のようなフルヌードとまではいかなかったが、ベッドで2人が抱き合う姿は生々しい色気があり、制約の多い民放地上波のドラマでは大健闘したといえる。  現在、女優として活躍する川栄だが、彼女はAKB48のメンバーだった。  もともと女優志望だったらしいが、アイドルとして活躍していた頃は、ユーキャンの通信教育で薬膳コーディネーターの資格試験を受ける姿がCMで流れていて、バラエティ番組では勉強ができないおバカキャラというイメージが強調されていた。おそらく、第2の指原莉乃的な売り出し方だったのだろう。  テレビで見ている限りは、そこまで女優に対する強い憧れがあったようには見えなかったが、もしかしたら、当時は「おバカタレント」という与えられた役割を、女優として演じていたのかもしれない。  AKB時代にも『ごめんね青春!』(TBS系)などのドラマに出演していたが、2015年に卒業して以降、本格的に女優業をスタートする。  前田敦子、大島優子、最近では松井玲奈、島崎遥香など、AKBグループでアイドルとしてキャリアを積み上げてから女優に転身するメンバーは多い。しかし、彼女らと比べると、川栄の女優業は少し毛色が違うものに見える。  前田や大島の女優業は、よくも悪くも、アイドルとしてのキャリアの末に獲得したものだ。だから、彼女たちが演じる役柄にはアイドル時代に培ったキャラクターが反映されている。  対して、川栄が演じる役柄は、アイドル時代の川栄のキャラクターとのつながりが薄いように見える。もっと言うと、“面白い女優だけど、この子誰だろう?”と思って調べると、川栄だったというケースがとても多い。これは、川栄が与えられた役を完全に演じ切っているからだろう。  それを最初に強く意識したのは、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』だった。  川栄が演じたのは仕出し弁当店の娘。脇役だったこともあって印象はとても地味で、アイドル時代の川栄のイメージとはまったく結びつかなった。  主演の高畑充希はもちろんのこと、浜野謙太やピエール瀧、平岩紙といった達者な俳優陣と並んでも違和感がなく、すでにベテラン女優のような貫禄を漂わせていた。   それ以降も川栄はテレビドラマに出演し、着々とキャリアを積み上げてきたが、この『僕たちがやりました』でエロが演じられる女優として、一気にブレークしたといえる。  だからこそ思うのだ。今こそ、川栄は脱ぐべきであると。  然るべき映画で濡れ場を演じれば、AKB女優だけでなく、同世代の若手女優の中でも、頭ひとつ飛び抜けた存在となれるはずだ。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

『僕やり』セックスシーンに男子悶絶! 川栄李奈は今こそ脱ぐべき!!

『僕やり』セックスシーンに男子悶絶! 川栄李奈は今こそ脱ぐべき!!の画像1
 川栄李奈は、いま一番エロい芝居ができる若手女優だ。  火曜夜9時から放送されている青春ドラマ『僕たちがやりました』(フジテレビ系)に出演している彼女を見ていると、それを強く感じる。  仲間たちと楽しい高校生活を過ごすトビオ(窪田正孝)の日常は、ある日を境に一変する。不良にリンチされた仲間の報復のために、不良の高校に爆弾をしかけるトビオたち。小さな爆発しか起こらないはずだったが、プロパンガスに引火したことで死傷者の出る大事故となってしまう。逮捕を恐れたトビオたちは逃亡生活を送ることになるのだが、そこから物語は予想外の方向へと転がっていく。  トビオたちの軽薄なノリは、見ていてイライラする。なんというか、ユーチューバーが悪ふざけしている動画を見せられているみたいな感じだ。それが延々と続くため、“ふざけるな!”と思うのだが、一方で現代的なリアリティがあり、目が離せない。  何より、今のテレビドラマでは描けなくなった若者を取り巻く性と暴力を正面から描こうという姿勢に好感が持てる。  1990年代なら野島伸司脚本の『未成年』(TBS系)、2000年代なら宮藤官九郎脚本の『池袋ウエストゲートパーク』(同)が描いていた、少年たちが性と暴力にまみれながら疾走していく姿の10年代バージョンがここにはある。  おそらく今、固唾を呑んで本作を見守っている10代の若者は多いのではないかと思う。     出てくる女の子たちも魅力的だ。  トビオの彼女でヒロイン・蓮子を演じる永野芽郁は、今までの優等生的なイメージをかなぐり捨てて、ギャルっぽい女子高生を好演している。そして一番目を引くのは、川栄李奈演じる今宵の、匂い立つような色気だ。  今宵はトビオの親友・伊佐美(間宮祥太朗)の恋人なのだが、寂しがり屋で、ほかの男にも色目を使ってしまう女の子だ。その一方で、クールな側面もあり、伊佐美の子どもを妊娠した時には、子どもを守るため、(爆破事件に関わった)伊佐美に別れを切り出す。  男に都合のいいバカな女に見えて、腹の底では何を考えているかわからない奥行きが見えるのは、川栄のふわっとした芝居によるところが大きい。    第5話で今宵が、童貞のトビオとセックスをする場面は多くの10代の男の子に衝撃を与えたのではないかと思う。残念ながら原作漫画のようなフルヌードとまではいかなかったが、ベッドで2人が抱き合う姿は生々しい色気があり、制約の多い民放地上波のドラマでは大健闘したといえる。  現在、女優として活躍する川栄だが、彼女はAKB48のメンバーだった。  もともと女優志望だったらしいが、アイドルとして活躍していた頃は、ユーキャンの通信教育で薬膳コーディネーターの資格試験を受ける姿がCMで流れていて、バラエティ番組では勉強ができないおバカキャラというイメージが強調されていた。おそらく、第2の指原莉乃的な売り出し方だったのだろう。  テレビで見ている限りは、そこまで女優に対する強い憧れがあったようには見えなかったが、もしかしたら、当時は「おバカタレント」という与えられた役割を、女優として演じていたのかもしれない。  AKB時代にも『ごめんね青春!』(TBS系)などのドラマに出演していたが、2015年に卒業して以降、本格的に女優業をスタートする。  前田敦子、大島優子、最近では松井玲奈、島崎遥香など、AKBグループでアイドルとしてキャリアを積み上げてから女優に転身するメンバーは多い。しかし、彼女らと比べると、川栄の女優業は少し毛色が違うものに見える。  前田や大島の女優業は、よくも悪くも、アイドルとしてのキャリアの末に獲得したものだ。だから、彼女たちが演じる役柄にはアイドル時代に培ったキャラクターが反映されている。  対して、川栄が演じる役柄は、アイドル時代の川栄のキャラクターとのつながりが薄いように見える。もっと言うと、“面白い女優だけど、この子誰だろう?”と思って調べると、川栄だったというケースがとても多い。これは、川栄が与えられた役を完全に演じ切っているからだろう。  それを最初に強く意識したのは、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』だった。  川栄が演じたのは仕出し弁当店の娘。脇役だったこともあって印象はとても地味で、アイドル時代の川栄のイメージとはまったく結びつかなった。  主演の高畑充希はもちろんのこと、浜野謙太やピエール瀧、平岩紙といった達者な俳優陣と並んでも違和感がなく、すでにベテラン女優のような貫禄を漂わせていた。   それ以降も川栄はテレビドラマに出演し、着々とキャリアを積み上げてきたが、この『僕たちがやりました』でエロが演じられる女優として、一気にブレークしたといえる。  だからこそ思うのだ。今こそ、川栄は脱ぐべきであると。  然るべき映画で濡れ場を演じれば、AKB女優だけでなく、同世代の若手女優の中でも、頭ひとつ飛び抜けた存在となれるはずだ。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

「叱られたい」新規ファンが急増!? ももクロの“あかりん”が、女優・早見あかりになるまで

「叱られたい」新規ファンが急増!? ももクロのあかりんが、女優・早見あかりになるまでの画像1
スターダストプロモーション公式サイトより
 金曜深夜に放送されている『デッドストック~未知への挑戦~』(テレビ東京系)は、テレ東の深夜ドラマならではのカルトな作品だ。  物語の舞台はテレビ東京。新人ADの常田大陸(村上虹郎)は、2016年の社内移転の際に発掘された大量の番組素材を整理する部署・未確認素材センターに配属される。  VTRを整理する日々の中で、常田は心霊現象の映った映像を発見する。常田の同僚で、同センターに配属された女性ディレクター・二階堂早織(早見あかり)は、心霊映像を素材にして新しい番組を制作しようと思い、常田と共に取材を開始する。  過去の映像を元に怪事件を調査する常田たちは、どんどんひどい事件に巻き込まれていく。物語はもちろんだが、昔のVTRを多用した映像が不気味で、唐突に終わることも多いためか、後味がめちゃくちゃ悪い。  それも含めて、深夜に見るにはもってこいのホラードラマなのだが、違う意味で大きな見どころとなっているのが、二階堂を演じる早見あかりの存在だ。    二階堂は常田を振り回す“困ったお姉ちゃん”という感じ。色白で目鼻立ちがくっきりしているため、海外のホラー映画で悲鳴を上げる美女のようで、本作のようなホラーテイストの作品とは相性がいい。  身長は165cmと、今の女優としては決して高くはないのだが、肩幅が広いためか、どのアングルから見ても普通の女優より大きく見える。そのたくましい感じが、それこそ二階堂のような大人の女を演じると見事にハマる。  二階堂が「あんた、しっかりしなさいよね」と上から目線で常田に言う場面は、見ていて気持ちがよく、ついつい自分も叱られたいと思ってしまう。  早見の声には迫力があり、いつも怒っているように聞こえるのだが、それが身内に心配されているようで、妙な親近感を抱いてしまう。  筆者は現在40歳で、2倍近く年が離れているのに、早見を見ていると「お姉ちゃん、ごめんなさい」と、年下の弟のような気分になってしまうのだ。  これは、彼女がアイドルだった頃から感じていたことだ。  今ではAKB48と並ぶメジャーアイドルとなったももいろクローバーZが、まだ“ももいろクローバー”だった時代、早見はサブリーダーとしてグループを支えていた。  リーダーの百田夏菜子を筆頭に、ももクロは子どもっぽさが前面に出ていたアイドルグループだったのだが、そんな中、一人だけ大人っぽい雰囲気を漂わせていたのが早見だった。  今、当時のライブ映像を見返すと、子どもの中に一人だけ思春期の少女がいるみたいで、そのアンバランスな立ち位置が彼女の魅力だった。    アイドルというのは不思議なもので、元AKB48の前田敦子や島崎遥香のように、アイドルの世界になじめずに違和感を抱えて苦悩している女の子のほうが、魅力的に見えることがある。そこに思春期の葛藤が交わるとなおさらで、つまり最もアイドルに向いていない人がアイドルとして輝いてしまうのだ。それは早見も同様で、本人はアイドルに向いていないと思っていたが、ももクロ時代の早見は誰よりも、アイドルとして輝いていた。  だからこそ、女優として成功して、(できれば朝ドラで主演を務めて)ももクロとNHK『紅白』で共演してほしいと多くのファンは思っていた。  だが、ももクロ卒業後、早見は女優としてすぐに成功したわけではなかった。  アイドルグループに所属していた時は、女優やファッションモデルのほうが似合っていると思われたが、いざ、女優として活動するようになると、何をやっても同じ口調で独自のぎこちなさが残る。普通に話していても芝居がかって見えたので、現代を舞台にしたリアルな作品だと、どうしても、その存在が浮き上がってしまうのだ。    逆に相性がよかったのは、朝ドラ『マッサン』(NHK)や『ちかえもん』(同)といった時代劇だった。着物を着てかしこまった言葉で話している時のほうが、物語にうまくハマっていた。  おそらく早見は、自然な演技よりも、極端にキャラクターを作り込んだ時のほうが、女優としての魅力が際立つのだろう。その意味で、極めてアイドル的な女優だったといえる。  映画『百瀬、こっちを向いて。』や連続ドラマ『ラーメン大好き小泉さん』(フジテレビ系)などで演じた、クールなキャラクターが多かったが、こういった役柄はももクロ時代の“あかりん”の立ち位置の延長線上にあるものだった。  10代後半は、大人と子どもの間で揺れ動く思春期の不器用な少女を演じることがあった早見だが、最近は『デッドストック』の二階堂のような、大人の女性を演じる機会が増えてきている。早見自身も22歳となり、大人っぽくなった外見に、ようやく内面が追いついてきたのだろう。  相変わらずぎこちなさはあるが、それはもはや、彼女の個性といっていいだろう。 『デッドストック』がきっかけで、「早見あかりに叱られたい」という新規ファンが増えるのではないかと、ひそかに期待している。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

ゲロシーンも完全再現! 『銀魂』でイジリ倒された橋本環奈の、コメディエンヌとしての才能

ゲロシーンも完全再現! 『銀魂』でイジリ倒された橋本環奈の、コメディエンヌとしての才能の画像1
橋本環奈オフィシャルブログより
 フジテレビ系で日曜夜9時に放送中の『警視庁いきもの係』は、記憶喪失の警部・須藤友三(渡部篤郎)が警視庁総務課動植物管理係(通称・警視庁いきもの係)に所属する女性警察官・薄圭子(橋本環奈)とともに、動物にまつわる事件を捜査するという異色の刑事ドラマだ。  同じ時間帯に放送されているTBS系日曜劇場に視聴率で惨敗しているため、このドラマ枠自体が今作で終了することが、すでに決まっている。  そのため、消化試合的な空気が漂っているが、ドラマ自体は面白く、緩い作りが見ていて安心する。  何より、橋本環奈が演じる圭子がかわいい。  圭子は動植物管理係が創設された際に一般から採用された女性で、大学では獣医学を専攻していた。だが、見た目が子どもっぽいため、警察官にはとても見えない。  物語は動物が絡む一話完結のミステリードラマ以上のものではないが、かわいい動物と橋本がじゃれ合っている姿を見ているだけで、目の保養になる。    身長152cmと、今の女優にしては小柄な橋本の制服姿は、グラビアやCMで見る時よりも幼い感じがして、まるで中学生のようだが、ハスキーボイスなのでギリギリ大人っぽく見える。この見た目と声のアンバランスさが強い印象をもたらす。  演技に関しては、現時点ではめちゃくちゃうまいというわけではない。しかし、思いきりがいいため、見ていて気持ちがいい。コントロールは苦手だが、剛速球を投げるピッチャーのようで、今後の成長に期待が持てる。    2010年代初頭、AKB48とももいろクローバーZがブレークしたことで、地下アイドルブームが起こった。その影響は今も続いており、個人で活動するインディーズアイドルや地方を拠点としたローカルアイドルを大量に生み出し、面白いことをやっていれば事務所の後ろ盾がなくても、ネットでバズってオタクが見つけてくれる――という幻想が広まった。  橋本も、そうやって見つかったアイドルだ。  橋本は福岡で活動するRev.From DVLというグループアイドルで活動していた中学3年生の時に、アイドルファンが撮影したライブ写真が「奇跡の一枚」としてネット上で話題となった。    その後、彼女はCMやバラエティ番組に多数出演するようになり、「かわいすぎるローカルアイドル」「1000年に1人の逸材」として大きく注目された。  女優としては『水球ヤンキース』や『貴族探偵』(ともにフジテレビ系)などのドラマに出演。2016年には、伝説のアイドル映画『セーラー服と機関銃』の続編に当たる『セーラー服と機関銃-卒業-』で主演を務めた。  角川映画40周年記念作品という鳴り物入りで公開された作品だが、“橋本を美少女として撮る”というビジュアルに対する意識は高かったものの、彼女が演じる主人公の星泉がお飾り人形みたいで、あまり物語とリンクしているとはいえず、彼女の魅力を生かしているとは思えなかった  かつて主演を務めた薬師丸ひろ子と比べるのはかわいそうだが、それを差し引いても、映画としてあまりうまくいっているとはいえなかった。  彼女が不幸なのは、“美少女”というイメージが定着しすぎていることだろう。そのため、人間として生き生きとした役が与えられず、いつもお客さん的な扱いで終わってしまう。  そんな中、彼女のイメージをいい意味でぶっ壊したのが、現在公開中の『銀魂』である。  本作は、「週刊少年ジャンプ」(集英社)の人気漫画を映画化したもので、宇宙人に支配された架空の幕末を舞台にしたSF時代劇コメディだ。  橋本が演じるのは、宇宙最強「夜兎族」の生き残りの少女・神楽。神楽は三つ編みにチャイナ服を着て、語尾に「~アル」「~ヨ」と話す漫画的なキャラクターだ。ジャンプ史上初のゲロを吐いたヒロインであるため“ゲロイン”といわれているのだが、そこもしっかりと再現されていた(モザイクはかかっていたが)。  原作通り、下品なセリフも多い。今までの美少女的イメージからは大きく逸脱しており、こっちが心配になるような不細工な顔も披露している、 何より、フルショットが多いため、今までごまかしていたもっさり感が際立っている。だが、そんなもっさり感が、なんともいえない愛嬌につながっている。  監督はコメディの名手で、役者の魅力を引き出すことに長けた福田雄一だ。美少女という神棚に上げられて息苦しそうにしていた橋本を、福田は地べたに引きずり下ろして徹底的にイジリ倒すことで、今までにない魅力を引き出すことに成功した。 『銀魂』の後にも、同じく福田が監督するジャンプの漫画の映画化『斉木楠雄のΨ難』主演が決定しており、今後が楽しみである。 『銀魂』ほどではないが『警視庁いきもの係』の圭子も、渡部篤郎とのやりとりを見ていてクスッと笑わされることが多く、コメディエンヌとしての片鱗を少しずつ見せ始めている。  ドラマ自体はあだ花として終わりそうだが、橋本にとっては、大きな飛躍となる作品に違いない。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。 ◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

“大根女優”本田翼が『わにとかげぎす』で覚醒! モデル系女優の正しい使い方とは?

大根女優本田翼が『わにとかげぎす』で覚醒! モデル系美女の正しい使い方とは?の画像1
『わにとかげぎす』TBS
 水曜深夜に放送されている『わにとかげぎす』(TBS系)が面白い。  深夜のスーパーマーケットで働く38歳の富岡ゆうじ(有田哲平)は、孤独な日々に不安を覚えて、流れ星に「友達をください」と願う。そんな富岡の元に同じアパートで暮らす美女・羽田梓(本田翼)が現れ、富岡の人生は一変していく。  本作は、90年代に大ヒットしたギャグ漫画『行け!稲中卓球部』や暗黒青春漫画『ヒミズ』の作者として知られる古谷実の同名漫画をドラマ化したものだ。  古谷はコメディとシリアスの間を横断することで、哲学的な要素を描く漫画家だ。この『わにとかげぎす』も、笑いの中に怖さが、怖さの中に笑いがあり、その往復によって人生の深淵を表現している。  染谷将太と二階堂ふみの荒々しいぶつかり合いと、物語を震災直後に変更して被災地の風景を取り込んだ園子温監督の『ヒミズ』や、森田剛が演じる連続殺人鬼の怪演が話題となった吉田恵輔監督の『ヒメアノ~ル』など、近年、古谷作品の映像化は増えているが、傑作が多い。  どの作品も漫画のビジュアルやストーリーを単純になぞるのではなく、原作の良さを残した上で、現代の物語に脚色している。そして、役者の魅力を最大限引き出し、実写映像ならではの面白さを生むことに成功している。  本作も、放送前は、くりぃむしちゅーの有田哲平が主演とあって、イメージが違うのではないかと不安だったが、思った以上にハマっている。  水曜日のカンパネラのコムアイや、ラッパーのDOTAMAなど、普通のドラマでは見られないユニークなキャスティングも功を奏している。中でも一番健闘しているのは、羽田梓を演じている本田翼だろう。 本田が演じる羽田はモデル体形の美女でありながら、38歳のさえない中年男性の富岡のことを好きになり、ストーカーみたいにつきまとう。  古谷の漫画には、不細工でさえない男のことを無条件に好きになってくれる女性が必ず登場する。その多くは、スタイルの良いモデル系の美人なのだが、本田は古谷のヒロインそのものだといえる。  羽田は、トランプに描かれたジョーカーのイラストのおじさんが初恋の人で、富岡のことも顔が理由で惚れたのだが、クールなたたずまいで富岡につきまといながら、そんな自分の変態性に恥じらいを感じている。恋愛となると必要以上に照れて狼狽するのは古谷作品の特徴で、それはどんな美女でも例外ではない。羽田も富岡を前にするとデレデレで、クールな外見とのギャップがすさまじくカワイイ。    モデル出身の美女がテレビドラマや映画に出演すると、演技がヘタとか棒読みとかボロクソに言われる。「non-no」(集英社)の専属モデルとして活躍する本田も例外ではない。個人的にはそんなに悪いとは思わなかったが、2年前に主演を務めた月9の恋愛ドラマ『恋仲』(フジテレビ系)での演技も、散々な言われようだった。  おそらくこれは本田やモデル出身の女優の問題というよりは、そういうモデル系のクールな美女を生身の人間としてちゃんと描ける作家が、極端に少ないことが問題なのだろう。決して彼女たちの責任ではない。    そんな中、『わにとかげぎす』は、本田の魅力をこれ以上ない形で魅力的な人間として描き出している。第3話では、彼女が富岡に、かつての彼氏に、隠しカメラでトイレ姿を盗撮されて、動画をネットに流出させられたという悲しい過去を告白。「汚れてますよね。終わってますよね、私。変態ですよね」と言いながら、なげやりに笑う表情はとても素晴らしかった。  ともすれば、男に都合のいい記号的な美女になりかねないが、きちんと生活感のある、一人の人間として描かれているのだ。  もちろん、ビジュアルの見せ方も完璧で、長い脚を惜しみなく披露している。  劇中ではショートパンツのボタンが外れて下着が少しだけ見えているカットが何度か入るのだが、はっきり言ってナマ脚のほうが100倍エロい。「本田翼といえばナマ脚」というイメージは、本作で決定付けられたと言っても過言ではない。おそらく本田にとっては、女優としての転機となることは間違いないだろう。 (文=成馬零一) ●なりま・れいいち 1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。