『モンテ・クリスト伯』でも好演! 岸井ゆきのは“90年代の深津絵里”の再来か

 特に意識しているわけではないのだが、なんだか気になる女優が何人かいる。そういう場合、顔と名前が一致していなくて、ネットで調べて「またこの人だ」と思うことが何度もあるのだ。

 ちょっと前なら、広瀬アリスがそういう女優だった。深夜ドラマの主演や、プライムタイムのドラマの3~4番手で出ているのを見て、「いいなぁ」と思うことが続いた。

 見た目ではなく、演技からにじみ出るたたずまいに惚れ込むので、彼女たちはその後、確実に伸びる。

 現在の自分にとって、岸井ゆきのはそういう女優だ。

 例えば、先日まで放送されていた『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)。本作は19世紀に発表されたアレクサンドル・デュマの小説を、現代を舞台にリメイクした作品だ。

 冤罪で逮捕され、異国の牢獄に監禁された青年・柴門暖(ディーン・フジオカ)が、思わぬ幸運で獄中生活から脱出。牢獄で知り合った大富豪の財産を相続し、別人となって自分を陥れた男たちに復讐していくという、ピカレスク(悪者)・ドラマである。

 岸井が演じたのは、主人公を陥れた犯人の娘・入間未蘭。

 海洋生物学の研究をしている大学院生だが、父親に結婚を強要され、自分の生き方に迷っていたところ、ある青年と恋に落ちる。しかし、入間家の遺産相続の問題に巻き込まれ、義母から毒殺されそうになるという、不幸な女性だ。

 岸井は身長148.5㎝と小柄で、劇中では化粧っ気がなく、服装も地味だったため10代かと思っていたら、現在26歳だという。

 未蘭のように真面目で勉強ばかりしていたため、世間に疎いまま大人になってしまったのか、どこか少女の面影が残っている女性を演じさせると岸井はハマる。

 同時期に放送されていた連続ドラマ『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』(NHK総合)では、新人教師・望月詩織を演じた。保護者から「娘が体罰を受けた」と言いがかりをつけられ、生徒との関わり方に悩む役なのだが、話し方や表情が妙に印象に残る。この役も、今まで真面目に生きてきた人なんだろうなぁという感じがにじみ出ていると同時に、影も感じる。

 ただ、笑うとどこかユーモラスで、ハムスターのような愛嬌がある。このあたりの明るさと影のバランスが絶妙で、シリアスもコメディもできるのが彼女の強みだ。そして、「選ばれなかった人間の哀しみ」がきちんと演じられる人でもある。

 それは、彼女の経歴に関係があるのかもしれない。

 岸井は小学校1年生から中学校3年生まで、器械体操の選手を目指して練習に打ち込んでいた。だが、練習中にバク転に失敗して以降、怖くなって跳べなくなってしまい、体操をやめてしまったという挫折の過去がある。高校生になり、新しい道を模索していたところ、女性カメラマンと知り合い、モデルを務めたことがきっかけで安藤サクラや門脇麦が所属する芸能事務所ユマニテから声がかかり、演技の道へと進むことになった。

 どんな役を演じても彼女の芝居には奥行きがあり、どこか影がある。それは彼女が、挫折を知っているからだろう。

 彼女の出演したCMで、とても印象に残っているものがある。

 就活生を演じた東京ガスのCMだ。仲間たちが次々と内定をもらっていく中、彼女だけは落ち続け、それが原因で両親とも気まずくなっている。そんな中、ついに最終面接までこぎ着け、内定間違いなしと手ごたえを感じた面接も、やっぱり落ちてしまう。

 CMは一応、母親が優しく励まして、前向きな感じにまとめようとしている。しかし、見終わった後の後味の悪さがすさまじかった。そのため視聴者から批判が相次ぎ、放送開始直後に打ち切りとなってしまったのだが、これは岸井の演技があまりにもリアルだったからだろう。

 暗い影を背負った業の深い特別な人になるというよりは、普通の人が抱えている不安や自信のなさを切なく演じられ女優で、コメディもシリアスもできるという意味では、90年代の深津絵里に近いのかもしれない。

 そういう女優ゆえに、匿名性が高くなって、名前が印象に残らないのだろうが、次回のNHK連続テレビ小説『まんぷく』への出演も決まっているため、岸井ゆきのの名が全国に知れ渡るのも時間の問題かと思う。だが、有名になっても、普通の人の切なさを演じられる感覚は持ち続けてほしいと願う。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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コスプレだけじゃない! “少女おばさん” 安達祐実が名バイプレイヤーとして再浮上

 内藤剛志主演『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)は今回でseason3となる人気ドラマだ。捜査一課を束ねる大岩純一(内藤)が部下たちの指揮を執りながら事件を解決していく刑事ドラマなのだが、season3になって新登場したのが、安達祐実が演じる女刑事・谷中萌奈佳(やなか・もなか)だ。

 谷中は幼少期から柔道の人気選手として活躍し、オリンピックで金メダルを期待される国民的スターだったが、メダルを獲ることなく引退。その後、義父の後を継いで警察官となり、広報課内に新設されたセルフブランディングルーム室長に就任、現役時代の知名度を生かす形で広報活動の仕事をしていた。劇中では彼女のポスターやメモ帳といったキャラクターグッズがたくさん登場するのだが、いうなれば警視庁のアイドル的存在である。

 一人だけの部署に押し込まれて今までくすぶっていたのだが、刑事として捜査に参加することで新たな人生を歩んでいく。

 演技が妙に生々しいのは、谷中のキャリアと、天才子役として国民的スターだった安達のキャリアが、重なるところが多いからだろう。

 安達は現在36歳。2歳の時にモデルデビューして以降、子役としてキャリアを重ね、小林稔侍と共演した「ハウス食品・咖喱(カリー)工房」のCMで人気となり、「具が大きい」というセリフはその年の流行語となった。

 1994年にはドラマ『家なき子』(日本テレビ系)で、主人公の小学生・相沢すずを演じる。母親の手術代と生活費のために靴磨きから万引まで、ありとあらゆる手段でお金を稼ごうとするすずの姿は、安達の子役離れした据わった目とすごみのある芝居で大きく注目された。「同情するなら金をくれ!」という決めゼリフも有名となり、高視聴率を獲得した。

 ちなみに『警視庁・捜査一課長』で共演する内藤は、『家なき子』ではすずを苦しめる最低の父親を演じていた。

 別のドラマで共演した2人をキャスティングして、過去作の雰囲気をにおわすドラマは少なくない。最近では『ロングバケーション』(フジテレビ系)で恋人役を演じた木村拓哉と山口智子が離婚した夫婦役を演じた『BG~身辺警護人~』(テレビ朝日系)が話題となったが、『家なき子』で激しく憎み合う親子だった内藤と安達が、刑事の上司と部下として事件に立ち向かう姿を見るのは、感慨深いものがある。

『家なき子』でブレークした安達は、その後も『ガラスの仮面』(同)等のドラマに出演し、女優として高い評価を獲得する一方、20代に入ると仕事が減っていく。

 人気子役は成長すると“子役の壁”に直面する。

 子役の壁には2種類ある。ひとつは肉体が成長することで、子役の頃のイメージとズレてしまうこと。もうひとつは逆で、年齢を重ねても子役時代の面影が残ってしまい、過去のイメージが強すぎて、大人の役が演じられなくなるということ。

 安達の場合は後者だった。当時の事務所が4番手5番手の役では出さないという方針だったこともあり、女優としての仕事が減っていく。

 20代の安達は、子役時代のイメージから脱却を図ろうとするものの、その糸口がつかめずにいた。転機となったのは30歳の時に出演した、東村アキコの漫画をドラマ化した『主に泣いてます』(フジテレビ系)だ。

 本作で彼女が演じたのは、大学教授の妻・青山由紀子ことゆっこ。夫の愛人をなじる姿は壮絶で、漫画的でありながら狂気を感じさせる怪演だった。

 本作以降、安達の演じる役柄は“少女おばさん”とでもいうような、彼女にしか演じられない独自の存在へと変わっていき、脇で印象的な存在感を見せる女優として再浮上していく。

 最近、『しゃべくり007』(日本テレビ系)に出演した際には、セーラー服姿を披露してかわいいとSNSで話題になった。昨年放送された『女囚セブン』(テレビ朝日系)では無銭飲食で捕まった女囚を演じ、回想シーンでセーラー服を披露している。これも30代には見えないと評判になった。

 20歳を過ぎても童顔で中学生にしか見えないグラビアアイドルが、合法ロリと呼ばれることがあるが、すでに二児の母である36歳の安達を言い表すのに、これ以上適切な言葉はないだろう。

『家なき子』の頃から、子役離れした大人っぽさが安達にはあり、それがすごみのある演技につながっていた。現在は逆に、30代でありながら、繊細な少女性が演技の中からにじみ出ている。

 再ブレークを果たした安達は、子役時代を否定するのではなく、積極的に引き受けることで、“子役の壁”を見事、乗り越えたのだ。

 最後に、そんな安達の魅力が一番あふれているコンテンツを紹介したい。オフィシャルフォトギャラリー(http://yumiadachi.com/)で発表している、夫の桑島智輝が撮影している写真だ。日常生活の何げない瞬間を切り取ったスナップ写真には生々しさと透明感があり、少女おばさんとしての安達の魅力が炸裂している。

(文=成馬零一)

 

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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日テレ『崖っぷちホテル!』浜辺美波の”ドヤ顔感”がクセになる!?

  浜辺美波は、圧が強い。

 例えば現在、日曜夜10時30分から放送されている『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)。本作は、ホテル総支配人だった父親の後を継いだ桜井佐耶(戸田恵梨香)が、経営が悪化している高級ホテル「グランデ・インヴルサ」を、副支配人・宇海直哉(岩田剛典)と共に立て直していく物語だ。

 浜辺が演じるのは、新人パティシエの鳳来ハル。マイペースで空気が読めず、自分勝手。しかし、デザートの腕は一流で、その実力を買われて料理長に抜擢される。ハルは飄々としていてつかみどころがない。ほかの従業員たちが突然現れた宇海に対して警戒する中、いつも楽しそうに、ニコニコしながらデザートを作っている。

 従業員の一人なのでそんなに大きな役ではないのだが、ついつい目が行ってしまうのは、浜辺のしゃべり方や行動がいちいち芝居がかっていて引っかかるからだろう。これは、いい意味でも、悪い意味でもだ。

 浜辺は今、演じることが楽しくて仕方がないといった感じだ。その気持ちが強すぎて、「私は演技をしてます」という感じが前面に出すぎていて、それがいつも、ちょっとだけ鼻につく。

 ただ、この“ちょっとだけ”のさじ加減が絶妙なのだ。

 これ以上、押し付けがましいとイライラさせられるだろうが、いつもその一歩手前で止め、過剰な何かが悪い印象になる前に散っていくので、逆にこれはなんなんだ? と気になってしまう。

 これは、彼女の出世作となった映画『君の膵臓をたべたい』の構造そのものである。本作で彼女は、ヒロインの山内桜良を演じた。

 人と関わるのが苦手な主人公の「ぼく」に突然話しかけてきた同級生の桜良は、実は膵臓の病気を抱えた余命1年の命。友達には同情されたくないからと、病気のことを秘密にして、「ぼく」にだけは自分の気持ちを話す桜良に、「ぼく」は翻弄される。

「なんなんだ? このわけのわからない女は」と最初は思うのだが、だんだん彼女の抱えている不器用さや優しさがいとおしいものに、主人公の目線を通して感じるようになっていく。

 難病モノというイメージが強いが、基本的にはちょっと変わった女の子に強引に引っ張り回される楽しさを描いた作品だ。芝居がかった浜辺の振る舞いが桜良の心情とリンクしたことで、本作は青春映画の傑作に仕上がった。

  浜辺は現在17歳。

 2011年に、長澤まさみを輩出した東宝シンデレラオーディションに応募してニュージェネレーション賞を受賞。東宝芸能のシンデレラルーム所属となり、同年公開のショートムービー『アリと恋文』で女優デビューした。

 人気アニメを実写ドラマ化した『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない。』(フジテレビ系、以下『あの花』)では、主人公のひきこもりの青年の前に現れる、幼少期に命を落とした幽霊の少女(ただし、なぜか年齢は成長している)・めんまを演じた。

 このドラマは、画面のレイアウトがほとんどアニメと同じという完コピドラマだったのだが、中でも浜辺の演技はすごくて、絵と生身の人間の等身や骨格の違いはあるものの、そこにめんまがいると言っても過言ではない存在感を見せていた。

『あの花』のめんまのような漫画やアニメのキャラクターを演じると、浜辺はハマる。中でも圧巻だったのが、前クールに放送されていた深夜ドラマ『賭ケグルイ』(TBS系)だ。本作はギャンブルが公認されている私立高校を舞台としたドラマで、生徒たちはギャンブルの勝敗によって出来上がった階級制度に苦しめられていた。

 そこに、浜辺が演じる謎の転校生・蛇喰(じゃばみ)夢子がやってくる。彼女はギャンブルの天才で、相手のイカサマを見抜くと同時に、自分の快楽のために全財産を賭けるような危険な勝負を次々と仕掛けていく。

 トランプ等のカードゲームを見せるギャンブルモノの映像作品は、画面の動きが少ないため、淡白なものとなってしまう。『賭ケグルイ』は、その欠点を役者の芝居で補っていて、過剰なセリフ回しや心理描写がとにかく派手な作品となっていた。そんな中、夢子のライバル役を演じた森川葵は、水を得た魚のように過剰な内面をさらけ出す芝居をしていた。飛び道具的な過剰な芝居をやらせたら今の森川は若手女優ではダントツだが、そんな森川と拮抗するくらい、浜辺はヤバイ演技をしていた。

 極限状態で借金を何億円も背負いながら、ギャンブルに没頭していく夢子の表情は、性的興奮を覚えているようなエロティックなもので、10代の若手女優にこんないやらしい表情をさせていいのか? とドキドキした。

 一見、清純派美少女に見えるが、こちらの想像を超えた表情を次々と見せてくれる浜辺。「私すごいでしょ」というドヤ顔感が透けて見えて、イラつかされるところもあるのだが、それも含めて目が離せない。もはや、浜辺は、その「圧の強さ」を、演技のスタイルとして完全に自分のものにしたといえるだろう。今後どうなるのか、末恐ろしい存在である。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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ドラマ界にも吹き荒れる“乃木坂旋風”! 西野七瀬『電影少女』に注目せよ

 今や、公式ライバルのAKB48をしのぐ勢いのある乃木坂46だが、テレビドラマにも乃木坂旋風が押し寄せつつある。

 現在、与田祐希は『モブサイコ100』、1月末に次回のシングルをもってグループを卒業することを発表した生駒里奈は『オー・マイ・ジャンプ!~少年ジャンプが地球を救う~』、そして、西野七瀬は『電影少女-VIDEO GIRL AI 2018-』に出演している。どれも、テレビ東京系の深夜ドラマだというのが面白い。

 かつてAKB48のメンバーが『マジすか学園』シリーズ(テレビ東京/日本テレビ系)に出演したことで女優としての活路を切り開いていったように、今後は乃木坂のアイドルたちが女優として躍進していくことは間違いないだろう。

 中でも注目は、西野七瀬だ。

 彼女が出演している『電影少女』は土曜深夜0時20分から放送されているSF仕立ての恋愛ドラマだ。

 物語は海外で暮らす絵本作家の叔父の空き家で一人暮らしを始めた高校生・弄内翔(野村周平)が、古いVHSのビデオを見つけるところから始まる。

 ビデオの中にはビデオガールの天野アイ(西野七瀬)が封印されていた。実体化したアイは、3カ月だけ生命を獲得し、再生した男の願いを叶えてくれる理想の女の子になるはずだった。しかし、ビデオデッキが壊れていたせいで、性格や設定に不具合が生じてしまい、料理が下手で口調は乱暴という初期設定とは真逆の女の子になってしまう。

 本作は桂正和が1989~92年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載していた漫画『電影少女』の実写映像化作品だ。物語の舞台は2018年の現代で、原作漫画の続編となっている。

 ビデオガールのアイは年を取らない。漫画版の主人公で翔の叔父にあたる弄内洋太(戸次重幸)はすでに中年男性となっていて、アイには洋太の記憶がないというのは泣かせるが、そのことによって物語は、ちゃんと現代のものとなっている。

 それにしても驚いたのは、天野アイのビジュアルである。

 もともと桂正和の描く女の子は、アイドルの水着グラビアを見ているかのようなリアルな肉体描写と、漫画やアニメの記号化されたキャラクターの持つかわいらしさが共存していたのだが、ドラマ版『電影少女』は漫画版の感覚を実写に落とし込むことに完璧に成功している。

 自分のことをオレと言い、SFチックな衣装を着ている天野アイは、人間の姿をしているが人間ではないビデオガール。文字通り漫画の世界から現実に現れたような女の子だ。

 だから普通の女の子とは考え方も違い、微妙におっさんくさいところもある。でも気持ちはピュアで優しいという、チグハグなところがまた、チャーミングである。

 漫画版にあったエッチな描写は控えめだが、何気ないシーンで見せる華奢でスラッと伸びた手足からは健康な色気を感じる。

 とにかく、天野アイを演じる西野をかわいく見せようという作り手のこだわりが随所に炸裂しており、まるで動く写真集のようだ。

 特にエンドロールで流れるスチール写真が素晴らしい。

 映像は静止画で西野の映像は止まっているのだが、水や湯気といった周囲のものは動いているという不思議なものとなっている。これは時間の止まった少女としてのアイを見せる上で見事なアプローチと言えよう。監督の関和亮はPerfumeのMVを通して女の子の身体を人工的なアンドロイドのように見せてきたのだが、本作でも生身の女の子を漫画やアニメのキャラクターのように見せる手法は見事に生きている。

 そして、西野七瀬も天野アイに完璧になりきっている。

 最初に西野が天野アイを演じると知った時は正直、イメージと合わないなぁと思った。

 同じ乃木坂46ならショートカットで少年性も見え隠れして、本人も漫画好きの生駒里奈の方がいいのではないかと思った。しかし本作のために髪を切って登場した西野七瀬を見た時は驚いた。そこには、本物の天野アイがいると思った。

 女優としては野島伸司脚本のドラマ『49』(日本テレビ系)などに出演している西野だが、『電影少女』以前で、鮮烈な印象が残っているのは、映画『溺れるナイフ』などで知られる山戸結希監督が撮った西野のソロ曲のMV「ごめんね ずっと…」だ。

 このMVは、アイドルとして活躍する西野七瀬と、アイドルにならずに看護師になった西野七瀬の姿が同時に映し出され、幼少期や学生時代の映像や写真が挟み込まれるノンフィクション形式のMVだ。西野の哀しい歌声もあってか、なんだか見てはいけないヤバイものを見てしまったように感じて「あれは何だったのか?」と、今でも思い出す。

 MVの印象が鮮烈だったため、西野はもっと生々しい演技をする方向に女優として向かうのではないかと思っていた。

 だが、初主演となった映画『あさひなぐ』では『電影少女』にもつながるようなコミカルな姿も見せており、そして『電影少女』では、漫画的なキャラクターを演じるツボを完全につかんだように見える。

 漫画的なキャラクター性と女としての生々しい色気が、西野七瀬の中には共存している。

 かつてなら漫画の中でしか成立できなかった美少女・天野アイは、西野七瀬というアイドルの身体を借りることで見事、現代に蘇ったのだ。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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ドラマ界にも吹き荒れる“乃木坂旋風”! 西野七瀬『電影少女』に注目せよ

 今や、公式ライバルのAKB48をしのぐ勢いのある乃木坂46だが、テレビドラマにも乃木坂旋風が押し寄せつつある。

 現在、与田祐希は『モブサイコ100』、1月末に次回のシングルをもってグループを卒業することを発表した生駒里奈は『オー・マイ・ジャンプ!~少年ジャンプが地球を救う~』、そして、西野七瀬は『電影少女-VIDEO GIRL AI 2018-』に出演している。どれも、テレビ東京系の深夜ドラマだというのが面白い。

 かつてAKB48のメンバーが『マジすか学園』シリーズ(テレビ東京/日本テレビ系)に出演したことで女優としての活路を切り開いていったように、今後は乃木坂のアイドルたちが女優として躍進していくことは間違いないだろう。

 中でも注目は、西野七瀬だ。

 彼女が出演している『電影少女』は土曜深夜0時20分から放送されているSF仕立ての恋愛ドラマだ。

 物語は海外で暮らす絵本作家の叔父の空き家で一人暮らしを始めた高校生・弄内翔(野村周平)が、古いVHSのビデオを見つけるところから始まる。

 ビデオの中にはビデオガールの天野アイ(西野七瀬)が封印されていた。実体化したアイは、3カ月だけ生命を獲得し、再生した男の願いを叶えてくれる理想の女の子になるはずだった。しかし、ビデオデッキが壊れていたせいで、性格や設定に不具合が生じてしまい、料理が下手で口調は乱暴という初期設定とは真逆の女の子になってしまう。

 本作は桂正和が1989~92年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載していた漫画『電影少女』の実写映像化作品だ。物語の舞台は2018年の現代で、原作漫画の続編となっている。

 ビデオガールのアイは年を取らない。漫画版の主人公で翔の叔父にあたる弄内洋太(戸次重幸)はすでに中年男性となっていて、アイには洋太の記憶がないというのは泣かせるが、そのことによって物語は、ちゃんと現代のものとなっている。

 それにしても驚いたのは、天野アイのビジュアルである。

 もともと桂正和の描く女の子は、アイドルの水着グラビアを見ているかのようなリアルな肉体描写と、漫画やアニメの記号化されたキャラクターの持つかわいらしさが共存していたのだが、ドラマ版『電影少女』は漫画版の感覚を実写に落とし込むことに完璧に成功している。

 自分のことをオレと言い、SFチックな衣装を着ている天野アイは、人間の姿をしているが人間ではないビデオガール。文字通り漫画の世界から現実に現れたような女の子だ。

 だから普通の女の子とは考え方も違い、微妙におっさんくさいところもある。でも気持ちはピュアで優しいという、チグハグなところがまた、チャーミングである。

 漫画版にあったエッチな描写は控えめだが、何気ないシーンで見せる華奢でスラッと伸びた手足からは健康な色気を感じる。

 とにかく、天野アイを演じる西野をかわいく見せようという作り手のこだわりが随所に炸裂しており、まるで動く写真集のようだ。

 特にエンドロールで流れるスチール写真が素晴らしい。

 映像は静止画で西野の映像は止まっているのだが、水や湯気といった周囲のものは動いているという不思議なものとなっている。これは時間の止まった少女としてのアイを見せる上で見事なアプローチと言えよう。監督の関和亮はPerfumeのMVを通して女の子の身体を人工的なアンドロイドのように見せてきたのだが、本作でも生身の女の子を漫画やアニメのキャラクターのように見せる手法は見事に生きている。

 そして、西野七瀬も天野アイに完璧になりきっている。

 最初に西野が天野アイを演じると知った時は正直、イメージと合わないなぁと思った。

 同じ乃木坂46ならショートカットで少年性も見え隠れして、本人も漫画好きの生駒里奈の方がいいのではないかと思った。しかし本作のために髪を切って登場した西野七瀬を見た時は驚いた。そこには、本物の天野アイがいると思った。

 女優としては野島伸司脚本のドラマ『49』(日本テレビ系)などに出演している西野だが、『電影少女』以前で、鮮烈な印象が残っているのは、映画『溺れるナイフ』などで知られる山戸結希監督が撮った西野のソロ曲のMV「ごめんね ずっと…」だ。

 このMVは、アイドルとして活躍する西野七瀬と、アイドルにならずに看護師になった西野七瀬の姿が同時に映し出され、幼少期や学生時代の映像や写真が挟み込まれるノンフィクション形式のMVだ。西野の哀しい歌声もあってか、なんだか見てはいけないヤバイものを見てしまったように感じて「あれは何だったのか?」と、今でも思い出す。

 MVの印象が鮮烈だったため、西野はもっと生々しい演技をする方向に女優として向かうのではないかと思っていた。

 だが、初主演となった映画『あさひなぐ』では『電影少女』にもつながるようなコミカルな姿も見せており、そして『電影少女』では、漫画的なキャラクターを演じるツボを完全につかんだように見える。

 漫画的なキャラクター性と女としての生々しい色気が、西野七瀬の中には共存している。

 かつてなら漫画の中でしか成立できなかった美少女・天野アイは、西野七瀬というアイドルの身体を借りることで見事、現代に蘇ったのだ。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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広瀬すずは『anone』で開花する──“大先輩”田中裕子の芝居にも呑まれない「影の魅力」

 広瀬すずが連続ドラマで初主演を務めたのは、2015年の学園ドラマ『学校のカイダン』(日本テレビ系)だった。あれから3年を経て、女優としてみるみる成長しており、人気・実力ともに10代の若手女優の中ではダントツの存在だと言っても過言ではない。

 すでに19年上半期のNHK連続テレビ小説『夏空-なつぞら-』のヒロインも決定しており、女優としての彼女をとりまく環境が、今後、より大きなものとなっていくことは間違いないだろう。

 おそらく所属事務所が長期的な視点で彼女を女優として成長させたいと考えているのだろう。彼女の出演作を見ていると、女優としての将来を考えた上で、役が選択されていると感心する。

 映画では『ちはやふる』(16~18年)や『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』(17年)のような若者向け青春映画に出演する一方、『海街diary』(15年)や『怒り』(16年)のような、作家性の強い文学的なドラマにも出演している。

 中でも、是枝裕和監督の『海街diary』に出演したことは、彼女にとって大きかったように思う。それ以前も女優としての勘の良さや華やかさはあったのだが、『海街diary』以降は、役に没入する力が以前よりも深くなった。その意味で、女優としての大きなターニングポイントだったと言える。こういう作品に定期的に出会えるのは、彼女にとって、とても幸福なことだ。

 そして、次の幸運な作品となりそうなのが、現在、日本テレビ系で水曜夜10時から放送中のドラマ『anone』である。

 本作は『最高の離婚』(フジテレビ系)や『カルテット』(TBS系)で知られる坂元裕二が脚本を手がけるドラマだ。チーフ演出は、作り込んだ重厚な映像に定評のある水田伸生。

 坂元と水田は、同枠で過去に芦田愛菜の出世作となった『Mother』、満島ひかりが貧困に苦しむシングルマザーを演じた『Woman』の2作を手がけている。重厚な社会派ドラマとして高い評価を受けるこのシリーズは、広瀬すずもファンだったそうだが、まさか自分が出演することになるとは思っていなかったらしい。

 広瀬すずが演じるのは、辻沢ハリカという少女。

 両親のいないハリカは、特殊清掃員のアルバイトをしながら、ネットカフェで暮らしていた。

 ハリカには、スマホのゲームアプリで交流している病気の友達がいた。入院中の少年・カノンが手術するには、多額のお金が必要だが、ハリカには何もしてあげることができない。

 そんなある日、ネットカフェで暮らす女友達が、海辺で現金の入ったカバンを見つけたという。ハリカたちはお金を探しに海辺へと向かうのだが、そこから物語は大きく転換していく。

 舞台は日本だが、映像自体はどこか無国籍感があるためか、リアルでありながらもどこかファンタジックな作品だ。物語も二転三転しており、まだ全貌は見えないのだが、この続きがまったく読めない不穏なムードが、物語に強い緊張感を与えていて目が離せない。

 ハリカを演じるにあたって、広瀬は髪をばっさりと切った。ハリカの姿は少女にも少年にも見える中性的なたたずまいだ。まるで、彼女の持つスケボーに描かれている天使のようで、ファンタジックな本作の象徴のような存在である。

 その意味でも、今までにも増して難しい役柄である。彼女自身、どう演じていいのか迷ったらしいが、次屋尚プロデューサーから「今までの広瀬すずでいい」と言われたことで開き直り、今の演技になったという。

 華やかなキャリアを重ねている彼女だが、実は広瀬すずの魅力は光よりも影の部分、今にも消え去ってしまいそうな弱々しさの中にあるのではないかと思う。

『anone』は、そんな彼女の影の部分がとても際立っていて、無表情でぽつんと立っているだけで見ている側を切なくさせる。

 それがよく出ているのが、ハリカの今にも消え去ってしまいそうな自信なさげに語られるか細いナレーションだろう。

 弱々しい声で切ないナレーションをさせると一番上手いと思う女優は深津絵里だと思っていたが、本作の広瀬すずの声は、深津に匹敵する切なさがある。

 カノンとチャットで会話するゲーム場面で、文字を読み上げるダイアローグに感情移入できるのは、彼女の今にも消え去りそうな声があってのものだ。

『anone』が広瀬すずにとって幸運なのは、阿部サダヲ、小林聡美、瑛太、田中裕子といった実力のある先輩俳優と共演できることだろう。

 特に田中裕子との芝居は、彼女にとって大きな経験となるのではないかと思う。

 田中の芝居は圧倒的で掴みどころがないため、我の強い俳優ほど、自分のリズムを崩して田中の世界に呑み込んでしまうところがあるのだが、第2話で広瀬が絡んだ際には、田中の芝居に対し善戦していたように見えた。これは、広瀬の演技が、いい意味で主張が弱いからだろう。

 広瀬を見ていると、主演女優に必要なのは自分を押し通す我の強さではなく、全体を包み込むような、おだやかな輝きだと実感する。ハリカを演じることで、その資質はより開花するはずだ。

 本作で彼女が女優としてどこまで成長するのか? 注目である。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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綾瀬はるか最強説を証明した『奥様は、取り扱い注意』稀代のコメディエンヌの“3つの才能”

 いよいよ次回で最終回となる『奥様は、取り扱い注意』(日本テレビ系)。

『GO』(講談社)で直木賞を受賞した小説家・金城一紀が脚本を手掛けている本作は、かつて某国の諜報機関に属しており、今は主婦として暮らしている伊佐山菜美(綾瀬はるか)が、町内で起きる難事件を次々と解決していくというドラマだ。

『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系)等のハードな刑事モノを得意とする金城が、水曜ドラマ(日本テレビ系夜10時枠)という働く女性や母親を主人公にした女性向け作品を中心とするドラマ枠で書くと知った時は驚いた。

 しかしいざ、蓋を開けてみると面白く、パヤパヤッティーヤというおしゃれなスキャットの劇伴に象徴されるようなライトなコメディとして見せようとする演出と、女性差別に苦しむ女たちがクズ男たちに戦いを挑むというハードな脚本がケミストリーを生み出しており、水曜ドラマと金城一紀どちらにとっても幸福な新境地となっている。

 普通に考えたらミスマッチ極まりない本作が成功した最大の功績は、なんと言っても主演の綾瀬はるかの、すべてを呑み込む包容力にあることは間違いないだろう。

 主婦でありながら格闘術に長けて、実は亡国の諜報部員だったというめちゃくちゃな設定もコメディエンヌでありながらアクション女優としても活躍する綾瀬だからこそ可能なことだと言える。何よりあのアルカイックスマイルが、某国に雇われた特殊工作員という過去を持つ伊佐山菜美という人物像に説得力を与えている。これは綾瀬はるかにしか演じられない難役である。

 綾瀬はるかは出演作を立て続けにヒットさせてきた、今のテレビドラマを牽引する人気女優の一人である。

 15歳の時に第25回ホリプロスカウトキャラバンに応募して、審査員特別賞を受賞した綾瀬は、広島から芸能活動するために上京する。グラビアアイドルとして活躍する傍ら、『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)や『僕の生きる道』(フジテレビ系)といったドラマに出演するようになり、人気が広がっていく。

 そして当時大人気だった純愛小説をドラマ化した『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS系)で難病のヒロインを演じる。劇中では白血病治療の副作用で脱毛症になってしまうためスキンヘッドになるという場面もあったのだが、綾瀬は見事に演じ、若手人気女優の仲間入りをする。

 これ以降、『白夜行』や『仁-JIN-』(ともにTBS系)といったドラマで、少し影のある日本的な美女を演じていき、20代後半になるとコメディエンヌとしての才能を発揮し、水曜ドラマの常連となり『ホタルノヒカリ』シリーズや『きょうは会社休みます。』に出演。ドラマ女優として不動の地位を確立する。

 どちらの作品でも、仕事はできるが恋愛面では奥手という女性を綾瀬は演じている。ともすれば痛々しくて見てられないキャラクターだが、綾瀬が演じると、途端に上品でかわいいキャラクターになるのが、彼女のコメディエンヌとしての圧倒的なセンスだろう。

『嵐にしやがれ』(日本テレビ系)等のトークバラエティ番組にも出演する綾瀬だが、その時は、司会者を驚かせるような天然ボケを連発する。ゲストとしては対応に困るが、女性としてはめちゃくちゃ魅力的な振る舞いで、その姿は女優としてストイックに打ち込む姿からは想像できない面白さであると同時に、仕事はできるがプライベートはてんでダメという、過去に綾瀬が演じてきたヒロインたちの姿とも重なる。

 近年ではアクション女優としての才能も開花させており、先日は綾瀬が主演を務める大河ファンタジー『精霊の守り人』(NHK)シリーズの最終章(『精霊の守り人 最終章』)の放送がNHK土曜夜9時枠でスタートした。

 本作で綾瀬は短槍使いの用心棒・バルサを演じており、劇中では激しいアクションもおこなっている。『精霊の守り人』シリーズは3年にわたって断続的に続いているロングシリーズだが、初期作から最新作を続けて見ると綾瀬のアクションがみるみる洗練されていっているのがわかる。

 映画『僕の彼女はサイボーグ』や、大河ドラマ『八重の桜』(NHK)でも、その才能の片鱗をみせていたが、いよいよアクション女優としても本領を発揮し始めたと言えよう。

『奥様は、取扱い注意』の伊佐山菜美は、そんな綾瀬はるかの個性がすべて内包された役で、一見荒唐無稽な設定に見えながらも、ヒロインに妙な説得力があるのはそのためだろう。

 ヒューマンドラマで見せる古き良き日本人女性的な影のある芝居と、水曜ドラマでみせるコメディエンヌとしてのセンス。そして、ハードなアクションもこなせるという女優としての才能を3つも綾瀬は持っている。いや、デビュー当初から変わらないグラマラスな肉体が醸し出す健康な色気も含めれば四つだろうか。これだけの武器を兼ね備えているのだから、綾瀬が現時点で最強の女優であることは間違いないだろう。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

 

良質なNHKジュブナイル『アシガール』を輝かせる女優・黒島結菜の存在感

 若者向けに作られたジュブナイルドラマが好きだ。

 若手俳優を中心としたジュブナイルドラマには、コメディタッチのラブコメや、SFやファンタジーのような荒唐無稽なシチュエーションの作品が多い。大人の視聴者からはチープな作品だと低く見られがちだが、だからこそ描ける初々しい物語がそこにはあり、初恋の思い出のような甘酸っぱい気持ちを思い出させてくれる。

 近年はテレビの視聴者自体が高齢化していることもあってか、10代向け作品はなかなか作られなくなっているが、現在、NHK総合で土曜日の夜6時5分から放送されている『アシガール』は、久々にジュブナイル感のある甘酸っぱいドラマである。脚本は2000年に傑作ジュブナイルドラマ『六番目の小夜子』(NHK総合)を執筆した宮村優子。

『ごくせん』(集英社)などで知られる森本梢子の少女漫画を原作とする本作は、戦国時代にタイムスリップした女子高生・速川唯(黒島結菜)がイケメンの若君・羽木九八郎忠清(健太郎)に一目惚れして、若君のために孤軍奮闘するというという物語。

 引きこもりの弟が作ったタイムマシーンで戦国時代に向かうというシチュエーションこそコミカルで、一見すると若者向けのチープなラブコメに見えるものの、戦国時代の合戦の描写やタイムトラベルを用いたSF的な設定の見せ方などは、実に丁寧に作り込まれている。

 特に戦国時代の美術背景はしっかりしていて、そこは流石、NHKである。

 何より、戦国時代を舞台である以上、戦で人が死ぬという残酷な現実から目をそらしていないのが素晴らしい。

 第6話では、唯が大ケガをした若君を現代にタイムスリップさせることで治療をして、弟と若君が現代の生活を満喫して親睦を深めるという、ほっこりする場面も描かれた。

 コミカルなところはコミカルだが、シリアスなところはしっかり押さえてある。こういうドラマこそ10代の若い視聴者に見て欲しいと思える作品だ。

 何より、本作の魅力を何倍にも輝かせているのが、主演の黒島結菜の圧倒的な存在感だろう。

 本作で黒島が演じる唯は、陸上部に所属する体育会系の女子高生で、日焼けしていて、前髪を下ろしていることもあってか、見た目は少年のようだ。

 タイムスリップしてからも、女子と気づかれずに足軽たちの中に紛れ込み、劇中では唯之助という男性に扮して、若君に近づき健気に支えようとする。

 戦国時代の荒野を歩く場面から始まるので、顔は泥だらけなのだが、こういう汚い格好が黒島にはよく似合う。

 黒島は、15年にNHK広島放送局で制作された『一番電車が走った』では、原子爆弾投下に遭遇する少女を演じていた。

 極限状態の中で、髪も服もボロボロに汚れていた彼女が最後に解放されて、行水をする姿は神々しいものがあった。

 本作でも薄汚れた男の子のような姿と、ふとした瞬間に見せる女の子らしい華奢な振る舞いのギャップが黒島の魅力を倍増させており、単純なかわいらしさや綺麗さだけではない「生命力の強さ」そのものを演技で表現できることこそ、彼女の魅力だろう。

 テレビドラマ好きの間で、黒島に注目が集まったのは14年。当時は『アオイホノオ』(テレビ東京系)や『ごめんね青春!』(TBS系)といったドラマに脇役として出演しており、その存在感に釘付けとなった。

 彼女は沖縄出身で同郷の満島ひかりに憧れているというが、眉毛が太く昭和の匂いがする女優だと当時は言われていた。いい意味で洗練されていない野暮ったさが黒島にはあったのだが、あれから3年が経ち、20歳となった今も彼女は初々しい演技をしており、ダイヤの原石のような存在感を見せている。

 16年には筒井康隆の伝説的なジュブナイル小説をドラマ化した『時をかける少女』(日本テレビ系)で主演を務めた。これも、華奢な身体が醸し出す少年のようなたたずまいが、原作の世界観に見事にハマっていた。

『時をかける少女』というと、80年代に大林宣彦が監督して原田知世が主演を務めた映画版が有名だが、今の黒島の存在感は、当時の角川映画で原田知世や薬師丸ひろ子が体現していたものと近いのかもしれない。

 彼女の素朴な魅力は、NHKドラマと相性がいいのだろう。連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『マッサン』や『夏目漱石の妻』など多数の作品に出演している。

『アシガール』では、ついに主演を務め、すっかりNHKにはなくてはならない女優となった黒島だが、そろそろ彼女を主人公にした朝ドラがみたいものだ。

 おそらく黒島なら、戦前や昭和を舞台にした作品なら何をやってもハマることは間違いないだろう。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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良質なNHKジュブナイル『アシガール』を輝かせる女優・黒島結菜の存在感

 若者向けに作られたジュブナイルドラマが好きだ。

 若手俳優を中心としたジュブナイルドラマには、コメディタッチのラブコメや、SFやファンタジーのような荒唐無稽なシチュエーションの作品が多い。大人の視聴者からはチープな作品だと低く見られがちだが、だからこそ描ける初々しい物語がそこにはあり、初恋の思い出のような甘酸っぱい気持ちを思い出させてくれる。

 近年はテレビの視聴者自体が高齢化していることもあってか、10代向け作品はなかなか作られなくなっているが、現在、NHK総合で土曜日の夜6時5分から放送されている『アシガール』は、久々にジュブナイル感のある甘酸っぱいドラマである。脚本は2000年に傑作ジュブナイルドラマ『六番目の小夜子』(NHK総合)を執筆した宮村優子。

『ごくせん』(集英社)などで知られる森本梢子の少女漫画を原作とする本作は、戦国時代にタイムスリップした女子高生・速川唯(黒島結菜)がイケメンの若君・羽木九八郎忠清(健太郎)に一目惚れして、若君のために孤軍奮闘するというという物語。

 引きこもりの弟が作ったタイムマシーンで戦国時代に向かうというシチュエーションこそコミカルで、一見すると若者向けのチープなラブコメに見えるものの、戦国時代の合戦の描写やタイムトラベルを用いたSF的な設定の見せ方などは、実に丁寧に作り込まれている。

 特に戦国時代の美術背景はしっかりしていて、そこは流石、NHKである。

 何より、戦国時代を舞台である以上、戦で人が死ぬという残酷な現実から目をそらしていないのが素晴らしい。

 第6話では、唯が大ケガをした若君を現代にタイムスリップさせることで治療をして、弟と若君が現代の生活を満喫して親睦を深めるという、ほっこりする場面も描かれた。

 コミカルなところはコミカルだが、シリアスなところはしっかり押さえてある。こういうドラマこそ10代の若い視聴者に見て欲しいと思える作品だ。

 何より、本作の魅力を何倍にも輝かせているのが、主演の黒島結菜の圧倒的な存在感だろう。

 本作で黒島が演じる唯は、陸上部に所属する体育会系の女子高生で、日焼けしていて、前髪を下ろしていることもあってか、見た目は少年のようだ。

 タイムスリップしてからも、女子と気づかれずに足軽たちの中に紛れ込み、劇中では唯之助という男性に扮して、若君に近づき健気に支えようとする。

 戦国時代の荒野を歩く場面から始まるので、顔は泥だらけなのだが、こういう汚い格好が黒島にはよく似合う。

 黒島は、15年にNHK広島放送局で制作された『一番電車が走った』では、原子爆弾投下に遭遇する少女を演じていた。

 極限状態の中で、髪も服もボロボロに汚れていた彼女が最後に解放されて、行水をする姿は神々しいものがあった。

 本作でも薄汚れた男の子のような姿と、ふとした瞬間に見せる女の子らしい華奢な振る舞いのギャップが黒島の魅力を倍増させており、単純なかわいらしさや綺麗さだけではない「生命力の強さ」そのものを演技で表現できることこそ、彼女の魅力だろう。

 テレビドラマ好きの間で、黒島に注目が集まったのは14年。当時は『アオイホノオ』(テレビ東京系)や『ごめんね青春!』(TBS系)といったドラマに脇役として出演しており、その存在感に釘付けとなった。

 彼女は沖縄出身で同郷の満島ひかりに憧れているというが、眉毛が太く昭和の匂いがする女優だと当時は言われていた。いい意味で洗練されていない野暮ったさが黒島にはあったのだが、あれから3年が経ち、20歳となった今も彼女は初々しい演技をしており、ダイヤの原石のような存在感を見せている。

 16年には筒井康隆の伝説的なジュブナイル小説をドラマ化した『時をかける少女』(日本テレビ系)で主演を務めた。これも、華奢な身体が醸し出す少年のようなたたずまいが、原作の世界観に見事にハマっていた。

『時をかける少女』というと、80年代に大林宣彦が監督して原田知世が主演を務めた映画版が有名だが、今の黒島の存在感は、当時の角川映画で原田知世や薬師丸ひろ子が体現していたものと近いのかもしれない。

 彼女の素朴な魅力は、NHKドラマと相性がいいのだろう。連続テレビ小説(以下、朝ドラ)『マッサン』や『夏目漱石の妻』など多数の作品に出演している。

『アシガール』では、ついに主演を務め、すっかりNHKにはなくてはならない女優となった黒島だが、そろそろ彼女を主人公にした朝ドラがみたいものだ。

 おそらく黒島なら、戦前や昭和を舞台にした作品なら何をやってもハマることは間違いないだろう。
(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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鬼嫁を前にりゅうちぇるが意外な芯の強さを見せる! 『夫はつらいよ』は現代を生きる男性のための番組か

「妻が強い方が家庭はうまくいく」と言われている。確かに、そうだ。「うちの嫁さん、怖くてよぉ~」とこぼすものの、実は幸せそうな夫の顔を見ることは多い。

 しかし、そればかりでもいけない。「強権をふるう妻と、肩身が狭い夫」という関係性が問題視されることは、実はあまりなかったりする。逆パターンと比較すると歴然だ。

 そんな境遇の夫に救いの手を伸ばす番組が、2週連続で放送された。10月9日と16日に放送されたのは、その名も『夫はつらいよ ~鬼嫁直談判バラエティ 願い事を一つだけ聞いてください!~』(テレビ朝日系)。鬼嫁に歯向かえない気弱な夫が、タレント応援団の後押しを受け、勇気を振り絞り、願い事を妻に直談判するバラエティである。

「タレント応援団」として出演したのは、この2人。新婚間もないりゅうちぇる、そして恐妻家としても有名なずんの飯尾和樹である。

「ウチは玄関開けたらイギリスだから。女王様!」(飯尾)

 

■グランドピアノを優雅に弾く鬼嫁と、ノートパソコンしか所有してない弱腰夫

 

 9日放送の第1回に登場したのは、名付けて“ルールブック妻”。交際当時は正真正銘のオタクであった夫を改造するため、交際する条件として自作のルールブックを夫に手渡している妻のことだ。

 ルールブックの内容だが、身に着けるとオタクに見えるNGファッションの数々(ネルシャツや迷彩柄、白靴下)が掲載されており、それらのファッションアイテムは実際に妻にすべて廃棄されてしまっている。

 それだけじゃない。結婚時には新たなルールブックが作成され、そこには「妻が起きる前に洗い物をしてゴミを捨てる」「毎朝料理を作る」といった条項が記されていたという。

 まだ、ある。35年ローンで建てた2,700万円の新築マイホームに訪れると、夫の私物はノートパソコン1台しかなかったのだ。妻の方は100万円のグランドピアノ、計110着の洋服を所有しているのに……。

 加えて「人をダメにする」という理由で、宝物であったゲーム機と4,000冊集めたマンガを全て処分されてしまう始末。先ほども述べたが、この夫は元オタクである。

「だって、マンガっていらないですよね」(鬼嫁)

 さすがに見かねた飯尾とりゅうちぇるが「毎朝5時にお弁当を作るのは大変では?」と訴えると、鬼嫁は「何かあるんだったら言えって言ってるじゃん!」という態度。言えないから、飯尾とりゅうちぇるが来ているのだが……。

■頑なな鬼嫁に熱意をぶつける、りゅうちぇるの芯の強さ

 

 16日放送の第2回目は、もっとキツい。花火大好きな鬼嫁に従い、年間70カ所の花火大会に連れていかれる弱腰夫。ちなみに、この夫は花火に全く興味がないという。

 しかも、見るだけではない。5台のカメラを使って撮影し、編集作業まで課せられている。その上、夫は仕事と花火が両立できなくなってしまい、嫁から仕事を辞めさせられてしまったというのだ。

飯尾「(夫が)仕事を続けたいと言ったら?」

鬼嫁「そしたら、まあ、離婚届持っておいでよって」

 現在、この夫の生活は「平日=編集作業、土日=花火大会」という生活を送っている。

 夫の願い事はただ一つ、「花火をやめたい」である。しかし、この家庭を見ると、そこまで主張するのは難しそうだ。そこで、夫とタレント応援団の3人は「1回、花火のない週末を送りたい」と譲歩して鬼嫁へ直談判することにした。

 この折衝の場で、りゅうちぇるが予想外の熱さを見せる。

「離婚はしたくないんですって。でも、花火と結婚はしてないから。離婚と花火が並ぶこと自体が、他の人からしたら『えっ!?』って思う」(りゅうちぇる)

 この説得に鬼嫁が折れた。この弱腰夫は、なんとか2日分の休みをゲットすることに成功している。

 世の鬼嫁の押しの強さには驚愕だが、同時に弱腰夫の頼りなさを再確認することとなった『夫はつらいよ』。

 妻を持つ男は、どう生きていくべきだろう? “恐妻家”飯尾和樹のスタイルか、しっかりと己を主張するりゅうちぇるのような態度なのか。両極端な2サンプルが揃った、現代の男子からすると参考になる番組であった。
(文=寺西ジャジューカ)