小芝風花、”隠れヲタOL”がハマり役! オスカー次世代スターの最有力候補に

 金曜夜10時からNHKで放送されている『トクサツガガガ』は、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中の丹羽庭の同名漫画をドラマ化したものだ。

 商社で働くOL・仲村叶(小芝風花)は、女子力が高い才女と同僚からは見られていたが、実は特撮を愛好する隠れオタク。戦隊ヒーロー番組『獅風怒闘ジュウショウワン』をはじめとする特撮番組が好きなのだが、オタク趣味を語り合える仲間に飢えていた……。

 オタク男性を主人公にした作品は多数あるが、女性オタクのことをここまで掘り下げたドラマは珍しいのではないかと思う。劇中に登場する架空の特撮ヒーロー番組も作り込まれており、「特撮協力」として戦隊ヒーローモノを手がける東映の名がクレジットされている。

 ただ、叶が必死で趣味を隠す姿を見て、今の時代、そこまでオタク趣味は恥ずかしいものなのか? という疑問も生じた。

 オタク男性の恋愛を描いたドラマ版『電車男』(フジテレビ系)が放送された2005年から、すでに14年がたとうとしている。今、『電車男』を見ると、オタクというだけで周囲から罵倒される主人公の姿に、理不尽なものを感じる。

 当時と比べれば、オタク趣味に対する偏見はだいぶ薄れている。2016年には特撮映画『シン・ゴジラ』も大ヒットした。そういった背景を踏まえると「そこまでオタク趣味を卑下して隠さなくても……」と思ってしまい、ドラマの中に入り込めずにいた。

 だが、第3話で、叶以外の女性オタクが描かれるようになると印象は変わっていく。

 劇中では、同じオタクでも趣味を隠さないオープンオタクもいれば、必死で隠すオタクもいて、女オタクにもいろいろなタイプがいるということが示唆される。

 次々と女性オタクが登場する姿と、特撮番組のヒーローに仲間が加わる姿が重ねて描かれるのだが、こういった女性オタクの多様性が描ければ、本作は大傑作となるのではないかと思う。

 女オタクの物語に関しては今後に期待という感じだが、それとは別にうれしいのは、叶を演じる小芝風花が、実に生き生きとしていることだ。

 小芝は現在21歳。小学3年生から中学2年まではフィギュアスケートに打ち込んでいたが、「イオン×オスカープロモーション ガールズオーディション2011」でグランプリを獲得したことをきっかけに芸能活動をスタート。

 14年には初主演映画『魔女の宅急便』でヒロインのキキを好演。そして、16年にNHK連続テレビ小説『あさが来た』で、ヒロインの娘・千代を演じたことで大きく注目される。ここまでは順風満帆なキャリアだといえるが、その後、当たり役に恵まれない状態が数年続くことになる。

 同じ『あさが来た』で友人役を演じた吉岡里帆が破竹の勢いで人気女優となっていたのに比べると、真面目で優等生的なイメージが強すぎたがゆえに、小芝の個性はわかりにくかった。特に『あさが来た』以降は、10代後半から20代へと変わる過渡期だったため、少女的なビジュアルと実年齢の落差もあり、無垢な少女を演じさせるべきか? 大人の女性を演じさせるべきか? キャスティングする側も迷っているように見えた。

 しかし、彼女の個性の薄さ――派手にも地味にも見えるし、子どもにも大人にも見えるビジュアルは、脇役だとその他大勢の中に埋もれてしまうが、中心に立たせるとハマる。長澤まさみや新垣結衣、事務所の先輩に当たる武井咲が、そういう存在だが、そんな小芝の個性の薄さがうまい具合にハマったのが『トクサツガガガ』だったといえよう。

 本作の隠れオタクのOLという設定は絶妙で、叶の職場できちんと働く姿と、家で特撮番組を見ている時のだらだらとした姿のギャップがとてもかわいい。美人だが、コンプレックスを抱えている真面目な女性を演じさせた時、小芝の魅力は最も際立つのだ。

 また、小芝のブレークは、オスカープロモーションにとっても大きな転換点となるのではないかと思う。オスカーは、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)シリーズで知られる米倉涼子こそ、数字が取れるスター女優として君臨しているが、それ以降に続く若手女優は足踏み状態となっている。

 結婚・出産した武井咲は早々復帰を果たすも、ハズキルーペのCM以外にはまだ出演しておらず、剛力彩芽はZOZOの社長として知られる前澤友作氏との交際宣言でワイドショーでこそ話題となっているが、女優業は停滞気味。

 次世代スター女優候補としては高橋ひかると吉本実優がいるが、演技力も人気も過渡期で完全に仕上がるには、まだ時間がかかりそう。そんな中、着々と力をつけてきた小芝が、一気に頭角を現したのだ。

 中途半端な状態でブレークしなかったからこそ、今の小芝には女優としての地肩の強さと安定感がある。

 今後は、平凡な女性を好演する女優として、飛躍するのではないかと思う。女優にとって個性の薄さは欠点ではない。むしろ、万人が共感できる等身大の女性を演じられるという長所なのだ。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

◆「女優の花道」過去記事はこちらから◆

小芝風花、”隠れヲタOL”がハマり役! オスカー次世代スターの最有力候補に

 金曜夜10時からNHKで放送されている『トクサツガガガ』は、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中の丹羽庭の同名漫画をドラマ化したものだ。

 商社で働くOL・仲村叶(小芝風花)は、女子力が高い才女と同僚からは見られていたが、実は特撮を愛好する隠れオタク。戦隊ヒーロー番組『獅風怒闘ジュウショウワン』をはじめとする特撮番組が好きなのだが、オタク趣味を語り合える仲間に飢えていた……。

 オタク男性を主人公にした作品は多数あるが、女性オタクのことをここまで掘り下げたドラマは珍しいのではないかと思う。劇中に登場する架空の特撮ヒーロー番組も作り込まれており、「特撮協力」として戦隊ヒーローモノを手がける東映の名がクレジットされている。

 ただ、叶が必死で趣味を隠す姿を見て、今の時代、そこまでオタク趣味は恥ずかしいものなのか? という疑問も生じた。

 オタク男性の恋愛を描いたドラマ版『電車男』(フジテレビ系)が放送された2005年から、すでに14年がたとうとしている。今、『電車男』を見ると、オタクというだけで周囲から罵倒される主人公の姿に、理不尽なものを感じる。

 当時と比べれば、オタク趣味に対する偏見はだいぶ薄れている。2016年には特撮映画『シン・ゴジラ』も大ヒットした。そういった背景を踏まえると「そこまでオタク趣味を卑下して隠さなくても……」と思ってしまい、ドラマの中に入り込めずにいた。

 だが、第3話で、叶以外の女性オタクが描かれるようになると印象は変わっていく。

 劇中では、同じオタクでも趣味を隠さないオープンオタクもいれば、必死で隠すオタクもいて、女オタクにもいろいろなタイプがいるということが示唆される。

 次々と女性オタクが登場する姿と、特撮番組のヒーローに仲間が加わる姿が重ねて描かれるのだが、こういった女性オタクの多様性が描ければ、本作は大傑作となるのではないかと思う。

 女オタクの物語に関しては今後に期待という感じだが、それとは別にうれしいのは、叶を演じる小芝風花が、実に生き生きとしていることだ。

 小芝は現在21歳。小学3年生から中学2年まではフィギュアスケートに打ち込んでいたが、「イオン×オスカープロモーション ガールズオーディション2011」でグランプリを獲得したことをきっかけに芸能活動をスタート。

 14年には初主演映画『魔女の宅急便』でヒロインのキキを好演。そして、16年にNHK連続テレビ小説『あさが来た』で、ヒロインの娘・千代を演じたことで大きく注目される。ここまでは順風満帆なキャリアだといえるが、その後、当たり役に恵まれない状態が数年続くことになる。

 同じ『あさが来た』で友人役を演じた吉岡里帆が破竹の勢いで人気女優となっていたのに比べると、真面目で優等生的なイメージが強すぎたがゆえに、小芝の個性はわかりにくかった。特に『あさが来た』以降は、10代後半から20代へと変わる過渡期だったため、少女的なビジュアルと実年齢の落差もあり、無垢な少女を演じさせるべきか? 大人の女性を演じさせるべきか? キャスティングする側も迷っているように見えた。

 しかし、彼女の個性の薄さ――派手にも地味にも見えるし、子どもにも大人にも見えるビジュアルは、脇役だとその他大勢の中に埋もれてしまうが、中心に立たせるとハマる。長澤まさみや新垣結衣、事務所の先輩に当たる武井咲が、そういう存在だが、そんな小芝の個性の薄さがうまい具合にハマったのが『トクサツガガガ』だったといえよう。

 本作の隠れオタクのOLという設定は絶妙で、叶の職場できちんと働く姿と、家で特撮番組を見ている時のだらだらとした姿のギャップがとてもかわいい。美人だが、コンプレックスを抱えている真面目な女性を演じさせた時、小芝の魅力は最も際立つのだ。

 また、小芝のブレークは、オスカープロモーションにとっても大きな転換点となるのではないかと思う。オスカーは、『ドクターX~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)シリーズで知られる米倉涼子こそ、数字が取れるスター女優として君臨しているが、それ以降に続く若手女優は足踏み状態となっている。

 結婚・出産した武井咲は早々復帰を果たすも、ハズキルーペのCM以外にはまだ出演しておらず、剛力彩芽はZOZOの社長として知られる前澤友作氏との交際宣言でワイドショーでこそ話題となっているが、女優業は停滞気味。

 次世代スター女優候補としては高橋ひかると吉本実優がいるが、演技力も人気も過渡期で完全に仕上がるには、まだ時間がかかりそう。そんな中、着々と力をつけてきた小芝が、一気に頭角を現したのだ。

 中途半端な状態でブレークしなかったからこそ、今の小芝には女優としての地肩の強さと安定感がある。

 今後は、平凡な女性を好演する女優として、飛躍するのではないかと思う。女優にとって個性の薄さは欠点ではない。むしろ、万人が共感できる等身大の女性を演じられるという長所なのだ。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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“女優”イモトアヤコが『下町ロケット』シリーズの転機に?

 お笑いと演技は親和性が高く、最近でもバカリズムやサンドウィッチマンの富澤たけしなど、俳優としても高い評価を受けている芸人は多い。一方、渡辺直美、ブルゾンちえみなどの女芸人がドラマに出演する機会も増えている。

 しかし、彼女たちが演じる役は、コミカルな三枚目や、モテないことを卑屈に語るようなネガティブな女性像ばかりで、いまいち演技力を生かしきれているとは言い切れない。

 これは、そういう役柄しか与えることができない作り手の問題が大きいのだが、そんな中、面白かったのが『下町ロケット』(TBS系)におけるイモトアヤコの起用方法だ。

 2015年に放送された第1作の続編で、今回は無人走行技術を搭載したトラクターの開発をめぐる開発競争が描かれた。前作では佃製作所が衝突する相手は、帝国重工という大企業や悪徳弁護士といったわかりやすい権力者だったのだが、今回は、かつて帝国重工に被害を被った中小企業や会社から追い出された技術者たちが敵として現れる。佃製作所は帝国重工とともに、彼らにトラクターの技術競争を挑む展開となっていく

『下町ロケット ゴースト』『下町ロケット ヤタガラス』の2作が原作で、ゴーストというタイトルは、佃製作所が対立するベンチャー企業「ギアゴースト」が由来だが、大手企業に虐げられて潰されてきた弱小企業の幽霊(ゴースト)という意味もあるのだろう。物語中盤でギアゴーストの開発したトラクターが「下町トラクター」と呼ばれ、大企業に立ち向かう彼らの物語がマスコミで神格化されていく展開は、池井戸潤が書いてきた必勝パターンだが、それが敵役の物語となっているところが面白いところだ。

『半沢直樹』以降、池井戸原作ドラマが大ヒットしてきたのは、弱者が強者に一矢報いる姿が爽快感につながっていたからだ。しかし今回、中小企業が悪役として登場する姿を見ていると、このシリーズも転機を迎えているのかもしれないと感じた。

 それはキャスティングにも強く現れている。もともとこのシリーズは、さまざまな分野から演者を連れてくることに定評がある。吉田鋼太郎や手塚とおるが広く知られるきっかけとなったことは有名な話だが、立川談春のような落語家からスポーツ解説者の松岡修造まで、実にさまざま。今回は古舘伊知郎と福澤朗という男性アナウンサーも出演していた。

 その意味で毎回、どんな俳優が登場するのか? というのも見どころのひとつなのだが、なんといっても素晴らしかったのは、ギアゴーストの女性技術者で、後に佃製作所と共闘することになる島津裕を演じたイモトアヤコを起用したことだろう。

 セーラー服に太い眉毛がトレードマークのイモトは、バラエティ番組『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)で珍獣ハンター・イモトとして世界中を旅する姿が話題となり、高い人気を獲得した。

 俳優としては、13年のドラマ『ご縁ハンター』(NHK)で婚活に苦しむ女性を演じ、一部で高い評価を受けていたが、近年では16年の北川景子主演ドラマ『家売るオンナ』(日本テレビ系)に出演。不動産会社で働く、やる気のない女性社員・白洲美加を演じた。当初は女芸人ということもあり、単純なコメディリリーフかと思ったが、物語が進むにつれて成長し、裏主人公とでもいうような存在感を見せていた。先日スタートした続編『家売るオンナの逆襲』にも引き続き出演しており、本作に欠かせない存在となっている。

『下町ロケット』でイモトが演じた島津は有能な技術者だが、それ以外は30代の地味な女性だ。普段は自信なさげに見えるが、独身であることを卑下したりといった女芸人的な振る舞いを見せる場面はほとんどない。佃社長とボウリング対決をする場面など、思わずクスッと笑ってしまうシーンはあるのだが、コメディ要素は薄く、抑制された芝居を見せている。つまり、等身大の働く女性として魅力的だったのだ。もしも華やかな女優が颯爽と演じていたら、女技術者としての島津に説得力は生まれなかっただろう。

『下町ロケット』にイモトが出演し、魅力的な女性を演じたことは、おじさんたちの物語だった本作にとっても大きな転機となるだろう。演技のうまい女芸人による等身大の女性が登場する作品はどんどん増えるはず。本作が、そのきっかけになればと思う。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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『放課後ソーダ日和』『宇宙を駆けるよだか』……WEBドラマが若手女優の活躍の場に?

 2018年はWEBドラマに、見るべき傑作が多かった。

 過去にも、又吉直樹の小説をNetflixでドラマ化した『火花』やGYAO!で配信され、後に再編集版が前後編2部作で映画化された『女子の事件は大抵、トイレで起きるのだ。』など、優れた作品はあったが、昨年は作品数も充実していた。

 プラットホームもYouTube、Instagram、LINEといった無料で見られる場所や、Netflix、Amazonプライム、Hulu、Paravi、FODといった会員制の定額有料動画サービスまでさまざまだ。

 中でもWEBドラマ一番の主戦場となっているのが、YouTubeだ。松本穂香が地方で暮らす鬱屈したYouTuberを演じた『♯アスアブ鈴木』、人気YouTuberグループ・ボンボンTVの『最後のねがいごと』、LINE NEWSで配信された、のん主演の『ミライさん』など、1話あたり10分前後と短い、若手の女優やアイドルが主演を務めるドラマが多く、民放地上波から青春ドラマがなくなっている中、若手俳優や新鋭クリエイターが自由に力を発揮する場となっている。

 特に素晴らしかったのが『放課後ソーダ日和』だ。タイトルの通り、放課後に喫茶店でクリームソーダを飲むという、ささやかな楽しみを謳歌する3人の女子高生の日常を描いた青春ドラマである。

 1話10分弱、全9話と短い作品で、『孤独のグルメ』(テレビ東京系)などの食べ歩きドラマの女子高生版とでもいうような作品だ。登場する喫茶店とクリームソーダは実在するものであり、毎回、メニューと地図が出てくるので、喫茶店へ遊びに行くこともできる。

 枝優花が監督を務めた映画『少女邂逅』のアナザーストーリー的な作品で、本作も枝が脚本・演出・編集を担当。プライムタイムのテレビドラマと違い、予算規模は小さめだが、だからこそ小回りが利くため、作家性の強い作品となっている。

 出演は森田想、田中芽依、蒼波純の3人だが、それぞれ、本人の個性と演じる役がリンクしている。中でも面白かったのが蒼波の見せ方だ。

 彼女は独特の存在感がある女優で、常に自然に振る舞っているため、良くも悪くも浮き上がってしまうのだが、そんな蒼波の“浮き上がってしまう存在感”が、うまく役柄に反映されていた。

 蒼波が演じるムウ子は、ある事情でしゃべることを拒絶して、スマホの人工音声で会話する、メガネに三つ編み姿のどんくさい女の子。友達ができたことで、自分の言葉でしゃべれるようになっていくのだが、あえてあまりしゃべらせないことで、繊細な表情の変化に現れる蒼波の魅力を引き出していた。

 彼女たちの悩みは、大人からは他愛のない、ほほえましいものに見えるが、10代の女の子にとっては、とても切実なもの。だからこそ、ドラマチックな展開はほとんどないのに、見ている側に訴えかけてくるものがある。

 羊文学の主題歌「ドラマ」も、素晴らしい切実な輝きを持った宝石箱のような作品である。

 一方、Netflixで放送されていた『宇宙を駆けるよだか』は、会員限定のクローズドなサービスだからこそできたハードな青春ドラマだった。物語は一種の入れ替わりモノで、かわいくて明るい女子高生・小日向あゆみ(清原果耶)が、恋人の水本公史郎(神山智洋・ジャニーズWEST)との初デートの日に、ブサイクなクラスメイト・海根然子(富田望生)が飛び降り自殺をするところを目撃したことで、外見が入れ替わってしまう。

 あゆみは、唯一自分の言うことを信じてくれた幼なじみの火賀俊平(重岡大毅・ジャニーズWEST)と共に入れ替わった謎を探っていくのだが、その過程で入れ替わったあゆみと然子の気持ちが描写されていく。題材が題材なだけに最初は見ることに抵抗があったのだが、外見と内面をめぐる葛藤を誠実に突き詰めた、青春ドラマの傑作となっていた。

 ほかにもParaviでは、堤幸彦演出の人気超能力ドラマの新シリーズであるSPECサーガ完結篇『SICK’S 恕乃抄』、FODとdTVでは野島伸司脚本のドラマ『彼氏をローンで買いました』など、今の民放地上波では困難なドラマが放送されている。

 このように同じWEBでもYouTubeと有料配信動画サイトでは違うアプローチで作られている。中でもInstagramのストーリー機能で限定配信された『それでも告白するみどりちゃん』(現在はYouTubeにアップされている)は、WEBならではの映像作品に仕上がっていた。

 物語は女子高生のみどり(りりか)が毎回、好きな男の子・谷口くん(中島広稀)にあの手この手で告白するというもの。毎回3分弱と短いため、ドラマというよりは、面白い動画という感じだが、注目ポイントは画面が縦長だということ。スマホで見ることを想定した縦長動画は、女優のフルショットを違和感なく収めることができ、映画やテレビドラマとは違った面白さがある。

 この縦長の映像を駆使した表現は、WEBドラマだからこそできる試みだといえるだろう。まだまだ試行錯誤中だが、ここから新しい作品が出てくるのではないかと楽しみである。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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『放課後ソーダ日和』『宇宙を駆けるよだか』……WEBドラマが若手女優の活躍の場に?

 2018年はWEBドラマに、見るべき傑作が多かった。

 過去にも、又吉直樹の小説をNetflixでドラマ化した『火花』やGYAO!で配信され、後に再編集版が前後編2部作で映画化された『女子の事件は大抵、トイレで起きるのだ。』など、優れた作品はあったが、昨年は作品数も充実していた。

 プラットホームもYouTube、Instagram、LINEといった無料で見られる場所や、Netflix、Amazonプライム、Hulu、Paravi、FODといった会員制の定額有料動画サービスまでさまざまだ。

 中でもWEBドラマ一番の主戦場となっているのが、YouTubeだ。松本穂香が地方で暮らす鬱屈したYouTuberを演じた『♯アスアブ鈴木』、人気YouTuberグループ・ボンボンTVの『最後のねがいごと』、LINE NEWSで配信された、のん主演の『ミライさん』など、1話あたり10分前後と短い、若手の女優やアイドルが主演を務めるドラマが多く、民放地上波から青春ドラマがなくなっている中、若手俳優や新鋭クリエイターが自由に力を発揮する場となっている。

 特に素晴らしかったのが『放課後ソーダ日和』だ。タイトルの通り、放課後に喫茶店でクリームソーダを飲むという、ささやかな楽しみを謳歌する3人の女子高生の日常を描いた青春ドラマである。

 1話10分弱、全9話と短い作品で、『孤独のグルメ』(テレビ東京系)などの食べ歩きドラマの女子高生版とでもいうような作品だ。登場する喫茶店とクリームソーダは実在するものであり、毎回、メニューと地図が出てくるので、喫茶店へ遊びに行くこともできる。

 枝優花が監督を務めた映画『少女邂逅』のアナザーストーリー的な作品で、本作も枝が脚本・演出・編集を担当。プライムタイムのテレビドラマと違い、予算規模は小さめだが、だからこそ小回りが利くため、作家性の強い作品となっている。

 出演は森田想、田中芽依、蒼波純の3人だが、それぞれ、本人の個性と演じる役がリンクしている。中でも面白かったのが蒼波の見せ方だ。

 彼女は独特の存在感がある女優で、常に自然に振る舞っているため、良くも悪くも浮き上がってしまうのだが、そんな蒼波の“浮き上がってしまう存在感”が、うまく役柄に反映されていた。

 蒼波が演じるムウ子は、ある事情でしゃべることを拒絶して、スマホの人工音声で会話する、メガネに三つ編み姿のどんくさい女の子。友達ができたことで、自分の言葉でしゃべれるようになっていくのだが、あえてあまりしゃべらせないことで、繊細な表情の変化に現れる蒼波の魅力を引き出していた。

 彼女たちの悩みは、大人からは他愛のない、ほほえましいものに見えるが、10代の女の子にとっては、とても切実なもの。だからこそ、ドラマチックな展開はほとんどないのに、見ている側に訴えかけてくるものがある。

 羊文学の主題歌「ドラマ」も、素晴らしい切実な輝きを持った宝石箱のような作品である。

 一方、Netflixで放送されていた『宇宙を駆けるよだか』は、会員限定のクローズドなサービスだからこそできたハードな青春ドラマだった。物語は一種の入れ替わりモノで、かわいくて明るい女子高生・小日向あゆみ(清原果耶)が、恋人の水本公史郎(神山智洋・ジャニーズWEST)との初デートの日に、ブサイクなクラスメイト・海根然子(富田望生)が飛び降り自殺をするところを目撃したことで、外見が入れ替わってしまう。

 あゆみは、唯一自分の言うことを信じてくれた幼なじみの火賀俊平(重岡大毅・ジャニーズWEST)と共に入れ替わった謎を探っていくのだが、その過程で入れ替わったあゆみと然子の気持ちが描写されていく。題材が題材なだけに最初は見ることに抵抗があったのだが、外見と内面をめぐる葛藤を誠実に突き詰めた、青春ドラマの傑作となっていた。

 ほかにもParaviでは、堤幸彦演出の人気超能力ドラマの新シリーズであるSPECサーガ完結篇『SICK’S 恕乃抄』、FODとdTVでは野島伸司脚本のドラマ『彼氏をローンで買いました』など、今の民放地上波では困難なドラマが放送されている。

 このように同じWEBでもYouTubeと有料配信動画サイトでは違うアプローチで作られている。中でもInstagramのストーリー機能で限定配信された『それでも告白するみどりちゃん』(現在はYouTubeにアップされている)は、WEBならではの映像作品に仕上がっていた。

 物語は女子高生のみどり(りりか)が毎回、好きな男の子・谷口くん(中島広稀)にあの手この手で告白するというもの。毎回3分弱と短いため、ドラマというよりは、面白い動画という感じだが、注目ポイントは画面が縦長だということ。スマホで見ることを想定した縦長動画は、女優のフルショットを違和感なく収めることができ、映画やテレビドラマとは違った面白さがある。

 この縦長の映像を駆使した表現は、WEBドラマだからこそできる試みだといえるだろう。まだまだ試行錯誤中だが、ここから新しい作品が出てくるのではないかと楽しみである。

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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綾瀬はるか、石原さとみ、徳永えり……30代前半女優がテレビドラマを席巻中!?

 今のテレビドラマは、30代前半の女優を中心に回っている。その筆頭が綾瀬はるか(33)と石原さとみ(31)だ。 

 綾瀬は今年『義母と娘のブルース』(TBS系)に出演。義理の娘を育てることになった元キャリアウーマンの亜希子を演じたのだが、機械のような亜希子が家庭の喜びを知ることで解放されていく姿をコミカルに演じ、コメディエンヌとしての新境地を開いた。

 一方、石原は野島伸司脚本の『高嶺の花』(日本テレビ系)と野木亜紀子脚本の『アンナチュラル』(TBS系)で主演を務めた。『高嶺の花』で演じたのが、高飛車でエロかわいい華道の家元 令嬢という過去の石原の イメージをなぞったものだったのに対し、『アンナチュラル』で演じた法医解剖医の三澄ミコトは理知的な女性で、今までとは違う多面的で人間味のある石原さとみ像の打ち出しに成功した。野木 の脚本は、30代女性のイメージを更新し、主演女優を知性を感じさせるな年相応の大人として描くことで印象を柔らかくする。『フェイクニュース』(NHK)の北川景子(32)や『獣になれない私たち』(日本テレビ系)の新垣結衣(30)も同様で、キャラクターが固定している女優ほど、野木の脚本に出ると年相応の女性として柔らかく見える。いま一番、女優を魅力的に描く脚本家だ。

 ダークホースとして意外な活躍を見せたのが『恋のツキ』(テレビ東京系)の徳永えり(30)。映画館でアルバイトする31歳の女性を演じたのだが、彼氏と同棲しながら、高校生の男の子に恋をして肉体関係を持ってしまう姿がめちゃくちゃリアル。過激な性描写に挑むと同時に、自分に自信のない31歳の女性の内面を赤裸々にさらけ出していた。

 実力、知名度ともにトップクラスのスター女優が集う30代に対し、群雄割拠の激戦区となっているのが20代の女優たちだ。彼女らの多くは、NHK朝ドラで主人公や脇役を演じることでキャリアを積んだ者が多い。

 土屋太鳳(23)、波瑠(27)、高畑充希(27)、有村架純(25)といった今年民放ドラマで主演を務めた女優は朝ドラヒロインを経験しており、いまや朝ドラを中心にテレビドラマは回っていると言っても過言ではない。しかし、朝ドラの印象が強いため、そのイメージからの脱却は大変そうで、『中学聖日記』(TBS系)で男子中学生と恋愛する教師の役を演じた有村のように、ショッキングな役に挑んだり、土屋や波瑠のように、とにかく出演作を増やすことでイメージの更新を図っているが、まだまだ模索中という感じだ。

 むしろ、朝ドラの脇役で光る演技を見せた松本穂香(21)、清野菜名(24)、広瀬アリス(24)といった女優の方が、自由に演じられるため、大きく飛躍しそうな気配がある。

 中でも注目なのが、現在『まんぷく』(NHK)に出演している岸井ゆきの(26)。童顔で小柄な体格 を生かして10代の少女を演じ、話題となっている。それ以前にも『モンテ・クリスト伯』(フジテレビ系)等の作品で光る演技を見せていたが、今後、主演作が増えそうだ。

 10代の若手女優は、『半分、青い。』(NHK)でヒロインを演じた永野芽郁(19)のような例外を除くと、若者向けドラマが減っていることもあり、活動の舞台は、少女漫画原作のティーンムービーや配信ドラマとなっている。

 着々とキャリアを積み重ねているのが、昨年、映画『君の膵臓をたべたい』のヒロインとして注目された浜辺美波(18)だ。今年は、『崖っぷちホテル!』(日本テレビ系)と『賭ケグルイ』(MBS)という2本の連ドラに出演。一見、清純派だが、会話のイントネーションや仕草に小技を効かせることで独自の個性を出してくるのが演技の特徴だ。中でも『賭ケグルイ』で演じた、ギャンブルジャンキーの女子高生・蛇喰夢子は素晴らしく、賭け事に興奮して恍惚とした表情を浮かべる場面は、禍々しい色気を放っていた。

 正統派美少女として今後、期待できそうなのが高橋ひかる(17)。2014年に第14回国民的美少女コンテストでグランプリを受賞した彼女は、武井咲や剛力彩芽の所属するオスカープロモーションの秘密兵器。今年は初の主演となる配信ドラマ『パフェちっく!』(FOD)と『高嶺の花』に出演した。まだ作品数は少ないが、いずれブレイクすること間違いないだろう。

『透明なゆりかご』(NHK)に『宇宙を駆けるよだか』(NETFLIX)と、出演作に恵まれたことで大きく飛躍したのが清原果耶(16)。14歳の時に『あさが来た』(NHK)で注目された清原だが、役に合わせて演技を変化させていくタイプだ。張り詰めた緊張感を、表現できる、貴重な存在である。

 最後に、演技力において10代最強といえるのが蒔田彩珠(16)。是枝裕和監督の映画では常連で、『万引き家族』にも出演している。今年のテレビドラマでは坂元裕二脚本の『anone』(日本テレビ系)と『透明なゆりかご』に出演。どちらもゲスト出演だったが、圧倒的な存在感を見せていた。そろそろ連続ドラマの主演で、彼女の演技をじっくりと堪能したいものである。

 

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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朝ドラ抜擢も納得! 30代になった戸田恵梨香の真骨頂は「大人の色気」と「親しみやすさ」

 2019年下半期のNHK連続テレビ小説『スカーレット』のヒロインに、戸田恵梨香が決定した。舞台は昭和30~40年の滋賀県で、実在の女性陶芸家を演じるという。

 朝ドラヒロインには2つの流れがある。ひとつは、若手新人女優の登竜門的なもの。最近では『半分、青い。』の永野芽郁がそうだ。ヒロインの成長と女優の成長がリンクするのがドラマ内での見どころで、朝ドラで初めて主役を演じる女優も少なくない。

 もうひとつは、演技の実力や女優としての実績が認められて起用されるもの。現在放送中の『まんぷく』でヒロインを演じる安藤サクラが、こちらのタイプだろう。前者は10代後半から20代初頭の女優が多いのに対して、後者は20代後半から30代以上の女優が中心となる。

 戸田は完全に後者だ。つまり、アイドル性ではなく、女優としての力量が認められての起用だろう。

 華のあるルックスゆえに、アイドル女優的な印象が強かった戸田だが、『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系)で共演した新垣結衣と同様、大人の女性を演じられる実力派女優となりつつある。

 それは現在放送中の『大恋愛~僕を忘れる君と』(TBS系)を見れば、誰しも納得することだろう。

 本作で戸田が演じるのはエリート女性医師の北澤尚。エリート精神科医の井原侑市(松岡昌宏)と結婚間近だったが、引っ越しのアルバイトをする40代の元小説家・間宮真司(ムロツヨシ)と恋に落ちる。自分が好きだった小説の作者だったことから、尚は真司に運命を感じ、エリート医師との結婚をあっさりと破棄して、親の反対を押し切り、真司との恋に突き進んでいく。

 同時に、尚が若年性アルツハイマーだと判明。物語は格差恋愛モノから難病モノとなっていく。記憶が抜け落ちていく自分に苦悩する姿は迫真の芝居となっているが、何より印象に残るのは、第1話で運命の相手に向かって突き進む尚の姿である。ここには、自分の中にある恋愛感情がコントロールできない時の、理屈を超えた生々しさがある。

 戸田は、スレンダーな体形と眼光の鋭さゆえに、オシャレで洗練された色気のある女優という印象が強く、男からすると敷居が高く、近寄りがたい美人といったところ。だが、バラエティ番組などで見せる素の戸田はぶっきらぼうで男っぽく、とても親しみやすい。ハスキーな声で楽しそうにしゃべる姿は、“本音でズケズケしゃべってくれる気さくなネーちゃん”という感じで、一緒に酒が飲みたくなる。

『大恋愛』でも、ムロツヨシと居酒屋で楽しそうにしている姿がとても魅力的だ。ムロ演じる中年男性と恋に落ちても自然に見えるのは、ムロのシリアスな演技が見事なのはもちろんだが、その会話を受け止める戸田の仕草に飾らない人柄がにじみ出ているからだろう。

 戸田は現在30歳。2000年、11歳のときに朝ドラ『オードリー』で女優デビューを果たす。

 中学卒業とともに上京し、「週刊ヤングジャンプ」(集英社)の「制コレ’03」のメンバーとなり、05年に学園ドラマ『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)で注目される。その後『LIAR GAME』(フジテレビ系)や『SPEC』(TBS系)といったドラマで主演を務め、人気女優としての地位を確立する。

 数々の代表作を持つ戸田だが、今の『大恋愛』の尚につながる大人の色気と親しみやすさを初めて意識したのは、NHKドラマ『書店員ミチルの身の上話』だ。

 戸田が演じたのは、地方の書店員として働いていた古川ミチル。彼氏がいる一方で、東京の出版社に勤める書店営業の男性と不倫していたミチルは、ふとした思いつきで東京に行き、そのまま幼なじみの男性の元に居候してしまう。

『ミチル』における戸田の演技の注目すべき点は、20代の女性の中にある、自分でも理解していない不安定な感情を見事にすくい上げていたことだ。

 やがてミチルは2億円の宝くじに当せんしたことがきっかけで、ドミノ倒し的に事件が起こり、漂流するような人生を過ごすことになるのだが、彼女の何を考えているのかわからない短絡的な行動は妙にリアルで、一見、普通に見える人でも、こういう不安定さを心の奥底に抱えて生きているんだと実感させてくれた。

『大恋愛』の脚本家・大石静は、『ミチル』の戸田の演技を絶賛していたが、尚が婚約を破棄して真司との格差恋愛に突き進んでいく姿は、自分を抑えられないミチルの不安定さを恋愛衝動に落とし込んだような、どこに向かうのかわからない演技だった。

 戸田は、普通の人間が無意識に抱え込んでいる、コントロールすることのできない衝動を表現にできる稀有な女優なのだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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アクションからコメディ、濡れ場まで……女優・清野菜名は万能すぎ!

 日曜夜10時30分から放送されているドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)は、不思議なこだわりに満ちたドラマだ。

 本作は「週刊少年サンデー」(小学館)で長期連載されていた西森博之のヤンキー漫画をドラマ化したもの。脚本とチーフ演出を担当するのは福田雄一だ。

『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京系)などで知られるコメディドラマの名手で、一時期は、毎クール1本は深夜ドラマ枠に福田のドラマがあるような状態だった。

 思わずクスクスと笑ってしまう脱力系コメディが多く、一見ゆるい作りとなっているだが、実はこのゆるい笑いを支えるために、ディテールに対しては毎回こだわっており、今作では80年代テイストの再現にとても力を入れている。

 特に、劇中に登場する女性キャラクターのファッションが衝撃的だ。

 橋本環奈と若月佑美(乃木坂46)はスケバンキャラを演じており、ダボダボのロングスカートにケバめの化粧で、迫力のある芝居を見せている。

 映画『銀魂』『斉木楠雄のψ難』と福田作品への出演が続いている橋本は、今作でも捨て身で豪快な芝居を披露。第4話の、47秒間にわたって白目を見開く芝居はネット上でも話題となった。福田作品に出演したことで、コメディエンヌとしての才能を大きく開花させつつある。

 一方、橋本とはまったく違うアプローチで驚かされたのが、清野菜名である。

 清野が演じるのは、赤坂理子という聖子ちゃんカットのヒロイン。主人公の不良コンビ、三橋貴志(賀来賢人)、伊藤真司(伊藤健太郎)と対等に話せる同級生の女の子という位置付けだが、聖子ちゃんカットにロングスカートという垢抜けない格好がめちゃくちゃ似合っていて、ダサかわいいとでもいうようなルックスに衝撃を受けた。

 今の感覚からすると、聖子ちゃんカットの髪形は顔が平べったく広がっているように見えてしまうので、女優としては若干、損な役回りなのだが、実に楽しそうに演じていて違和感はまったくない。

 同時に、理子は空手道場の娘で武道の使い手だ。第2話では主人公の三橋と話している途中で、突然、殴りかかる場面があるのだが、格闘場面に入る殺陣の自然さに思わず見入ってしまった。

  そう、清野の芝居は何をやっても自然なのだ。

 橋本が、これでもかと自分を捨てた豪快なアプローチで攻め込んでいくのに対し、清野は80年代にいてもおかしくない、格闘技ができる女子高生に完全になりきっている。だから彼女の芝居は、普段の日常パートとコメディパート、そして格闘パートと自然に切り替わり、すべてがシームレスにつながっているのだ。

 コメディパートと同じくらい、ケンカパートの見せ場が多い作品のため、出演俳優はアクションシーンでも奮闘している。そんな中でも清野のアクションは別格で、あまりにうますぎて、さらっと流れてしまうのだが、そんなところにも毎回感心している。

 清野は現在24歳。もともと、ローティーン向けのファッション雑誌「ピチレモン」(学研プラス)の専属モデルとして活躍していたが、高校入学を機に上京。映画『バイオハザード』のミラ・ジョヴォヴィッチのアクションシーンに衝撃を受け、高校時代は事務所の紹介でアクション監督・坂口拓のアクション養成所に通い、スキルを学んだ。

 その後、女優へと転身。しかし当初は仕事が少なく、ボディダブル(演技の吹き替え、出演者が出られないシーンの替え玉。楽器の演奏やアクションの代役などが多い)ばかりだった。

 女優を辞めようかと迷っていたところ、2014年に園子温の映画『TOKYO TRIBE』のオーディションに応募する。1度目は落選するが、2度目のアクションメンバーのオーディションで監督の目に留まり、急きょ・ヒロインのスンミ役に大抜擢された。アクションだけでなく、ヌードや濡れ場もある過激な役柄だったが、本作で高い評価を受けた清野の出演作は急増した。

 翌年には、押井守監督の映画『東京無国籍少女』で主演を務める。清野が演じたのは、心身を病んだ高校生・藍。美術高校を舞台に、妄想と現実が入り混じった日常が淡々と描写されていく観念的な作品だが、物語後半に怒涛のアクションシーンがある。このアクションも日常の芝居と地続きになっていて、作品のテーマと見事合致していたことに驚かされた。

 その後、連続ドラマ『ウロボロス〜この愛こそ、正義。』(TBS系)等の作品に出演し、アクションができることが売りの女優として注目を浴びた清野だったが、近年は『やすらぎの郷』や『トットちゃん!』(ともにテレビ朝日系)などのドラマにも出演、演技派としての評価が高まっている。そして今年は、NHK連続テレビ小説『半分、青い。』でヒロインの親友・裕子を演じたことで、その知名度は全国区のものとなった。

 アクションを入り口に、女優としての道を切り開いてきた清野。コメディから激しい濡れ場まで、なんでも自然にこなせるシームレスな演技は、彼女が持つ最大の武器である。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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NHK朝ドラ『半分、青い。』で化けた! 永野芽郁が名実ともに”若手No.1女優”へ急成長中

 永野芽郁というと、映画『俺物語!!』で演じた、ふわっとした天然系のお嬢様というイメージが強かった。

 紙袋をかぶった男子高校生を好きになる女子高生を演じた連続ドラマ『こえ恋』(テレビ東京系)もそうだが、リアルな女性よりは現実感のない浮世離れしたキャラクターを演じた時の印象のほうが強く、NHK連続テレビ小説の『半分、青い。』もその路線を踏襲するのかと思っていた。

 しかし、本作で永野が演じる楡野鈴愛(にれの・すずめ)は一筋縄では行かない複雑な個性を持った女性で、しかも年齢を重ねることで、どんどん変化していく。

 そんな鈴愛を演じることで永野もまた、今までの殻を脱ぎ捨て、どんどん女優として成長しているのが、手に取るようにわかる。

 左耳が聞こえないという障害を抱える鈴愛は高校卒業後、故郷の岐阜から上京し、漫画家・秋風羽織(豊川悦司)のアシスタントとして働くことになる。数年の下積みののち、やがて漫画家デビュー。しかし、連載はマンネリ化した末に打ち切られ、やがて才能の限界を感じ、漫画家を辞めることになる。一方、幼なじみで、誰よりも深いつながりのあった萩尾律(佐藤健)も結婚してしまう。

 その後、100円ショップで働くようになった鈴愛はバイト先にやってきた森山涼次(間宮祥太朗)と知り合う。映画会社で助監督として働く涼次と意気投合した鈴愛は、出会って6日で結婚。しかし、一見優しい涼次には優柔不断なところがあり、2人のお金を映画製作資金に使ってしまう。

 今までは、おっとりとしたイメージが強かった永野だったが、本作の鈴愛はアクティブ。同時に朝ドラヒロインとしては型破りの存在というか、とても生々しいところがある。夢を持った前向きな女性という意味では朝ドラヒロインの類型に見えるが、脚本の北川悦吏子は鈴愛を単なるいい子として描いていない。それが一番表れているのが、律との関係だろう。鈴愛は律との関係は特別なものだが、恋愛は別だと考えており、別の人を2回好きになっている。

 これは朝ドラヒロインとしては軽薄に見えるが、普通の女性としてはよくある感覚だろう。涼次に「28年間、一途に律を思っていたが失恋した」と話す鈴愛に対して、ナレーションで「自分の都合のいいとこだけつなげて、ストーリーねじ曲げてます。こういう人っているわよね」とツッコまれる始末。

 涼次との結婚も、30歳が迫る焦りから勢いでしたもので、そういう打算的な弱さがあるところが、逆に魅力的に見える。ちなみに、涼次との結婚までの流れが描かれた第15週のタイトルは「すがりたい!」である。

 鈴愛は、女としてズルい部分も持ち合わせているが、嫌な感じにならない。それは、そのズルさを肝心な場面で使いこなせないズッコケたところがあるからだろう。

 複雑で多面的な鈴愛を愛おしい存在として演じられる永野のコメディエンヌとしての才能には、特筆すべきものがある。ゆくゆくは、綾瀬はるかのような女優になっていくのかもしれない。

 SNSでは鈴愛が激しく口論する場面や、感情をあらわにする長台詞のシーンが話題だが、何より驚くのは、一人の女性が年を重ねていく様子をしっかり演じ分けていることだろう。

 物語は鈴愛の生まれた1971年から始まり、現在は2000年となっており、最終的に物語は現代に向かっている。女の一代記は朝ドラの王道だが、昭和ではなく平成日本が物語の中心だというのが本作の面白いところだろう。

 物語は幼少期から始まり、高校時代、漫画家として生きた20代、そして第2の人生といえる結婚時代と時間が経過していくのだが、永野は時代ごとの鈴愛の変化を見事に演じ分けている。

 特に漫画家としてデビューした後、4年たって再会した律との出会いと別れの後、すぐに4年がたち、28歳になった鈴愛が仕事もままならず、律も結婚してしまったことで精神的に追い詰められて、最終的に夢を諦めるに至る過程の弱っていく様は圧巻だった。

 現在の鈴愛は、秋風先生の元にやってきた時とは比べ物にならないくらい顔が疲れている。仕事にも恋愛にも自信なさげで、だからこそ、“だめんず”とわかっていても涼次にすがってしまう。

 うまい俳優は、細かい仕草やしゃべり方の背後に、そのキャラクターが今までどういう人生を歩んできたかを感じさせるものだが、永野の演技を見ていると、描かれていない鈴愛の空白の時間を想像することができる。おそらく演出サイドが北川の脚本の意図を読み取り、的確に指導しているのだろうが、何より永野が多面的な存在である鈴愛を自分のものにしているのが、よくわかる。

 ドラマは折り返し地点を過ぎたところで、まだ約2カ月、残っている。一人の女優が少女から晩年まで演じるタイプの朝ドラは、後半に行くに従って無理が出てくるものだが、永野なら、年齢の変化を的確に演じられるはずだ。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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『モンテ・クリスト伯』でも好演! 岸井ゆきのは“90年代の深津絵里”の再来か

 特に意識しているわけではないのだが、なんだか気になる女優が何人かいる。そういう場合、顔と名前が一致していなくて、ネットで調べて「またこの人だ」と思うことが何度もあるのだ。

 ちょっと前なら、広瀬アリスがそういう女優だった。深夜ドラマの主演や、プライムタイムのドラマの3~4番手で出ているのを見て、「いいなぁ」と思うことが続いた。

 見た目ではなく、演技からにじみ出るたたずまいに惚れ込むので、彼女たちはその後、確実に伸びる。

 現在の自分にとって、岸井ゆきのはそういう女優だ。

 例えば、先日まで放送されていた『モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)。本作は19世紀に発表されたアレクサンドル・デュマの小説を、現代を舞台にリメイクした作品だ。

 冤罪で逮捕され、異国の牢獄に監禁された青年・柴門暖(ディーン・フジオカ)が、思わぬ幸運で獄中生活から脱出。牢獄で知り合った大富豪の財産を相続し、別人となって自分を陥れた男たちに復讐していくという、ピカレスク(悪者)・ドラマである。

 岸井が演じたのは、主人公を陥れた犯人の娘・入間未蘭。

 海洋生物学の研究をしている大学院生だが、父親に結婚を強要され、自分の生き方に迷っていたところ、ある青年と恋に落ちる。しかし、入間家の遺産相続の問題に巻き込まれ、義母から毒殺されそうになるという、不幸な女性だ。

 岸井は身長148.5㎝と小柄で、劇中では化粧っ気がなく、服装も地味だったため10代かと思っていたら、現在26歳だという。

 未蘭のように真面目で勉強ばかりしていたため、世間に疎いまま大人になってしまったのか、どこか少女の面影が残っている女性を演じさせると岸井はハマる。

 同時期に放送されていた連続ドラマ『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』(NHK総合)では、新人教師・望月詩織を演じた。保護者から「娘が体罰を受けた」と言いがかりをつけられ、生徒との関わり方に悩む役なのだが、話し方や表情が妙に印象に残る。この役も、今まで真面目に生きてきた人なんだろうなぁという感じがにじみ出ていると同時に、影も感じる。

 ただ、笑うとどこかユーモラスで、ハムスターのような愛嬌がある。このあたりの明るさと影のバランスが絶妙で、シリアスもコメディもできるのが彼女の強みだ。そして、「選ばれなかった人間の哀しみ」がきちんと演じられる人でもある。

 それは、彼女の経歴に関係があるのかもしれない。

 岸井は小学校1年生から中学校3年生まで、器械体操の選手を目指して練習に打ち込んでいた。だが、練習中にバク転に失敗して以降、怖くなって跳べなくなってしまい、体操をやめてしまったという挫折の過去がある。高校生になり、新しい道を模索していたところ、女性カメラマンと知り合い、モデルを務めたことがきっかけで安藤サクラや門脇麦が所属する芸能事務所ユマニテから声がかかり、演技の道へと進むことになった。

 どんな役を演じても彼女の芝居には奥行きがあり、どこか影がある。それは彼女が、挫折を知っているからだろう。

 彼女の出演したCMで、とても印象に残っているものがある。

 就活生を演じた東京ガスのCMだ。仲間たちが次々と内定をもらっていく中、彼女だけは落ち続け、それが原因で両親とも気まずくなっている。そんな中、ついに最終面接までこぎ着け、内定間違いなしと手ごたえを感じた面接も、やっぱり落ちてしまう。

 CMは一応、母親が優しく励まして、前向きな感じにまとめようとしている。しかし、見終わった後の後味の悪さがすさまじかった。そのため視聴者から批判が相次ぎ、放送開始直後に打ち切りとなってしまったのだが、これは岸井の演技があまりにもリアルだったからだろう。

 暗い影を背負った業の深い特別な人になるというよりは、普通の人が抱えている不安や自信のなさを切なく演じられ女優で、コメディもシリアスもできるという意味では、90年代の深津絵里に近いのかもしれない。

 そういう女優ゆえに、匿名性が高くなって、名前が印象に残らないのだろうが、次回のNHK連続テレビ小説『まんぷく』への出演も決まっているため、岸井ゆきのの名が全国に知れ渡るのも時間の問題かと思う。だが、有名になっても、普通の人の切なさを演じられる感覚は持ち続けてほしいと願う。

(文=成馬零一)

●なりま・れいいち
1976年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

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