羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「息子は全部自分で決めてやるタイプなんです」小室佳代氏
「週刊文春WOMAN」2021年夏号(文藝春秋)
フジサンケイグループ生みの親、鹿内氏一族について書かれた『メディアの支配者』(講談社)を読んだ。北海道・寒村に生まれた鹿内信隆氏がいかにしてのし上がり、フジサンケイグループのトップとして強権を振るうようになったかが描かれている。信隆氏は美術品のコレクターとしても知られ、箱根にある「彫刻の森美術館」を開くなど、美術に造詣が深かった人物だ。同書ではその理由を、鹿内家にある“狙い”があったからではないかと推測している。
フジテレビは、“文化芸術のノーベル賞”といわれる「高松宮記念世界文化賞」の授賞式を同局地上波で放送するなど、積極的に“応援”しているが、この賞は財団法人日本美術協会が主催しており、戦前から皇族方が総裁を務められている。文化芸術を口実に、鹿内家は日本最高のブランド・皇室とお近づきになりたかったのではないか、と著者は分析しているのだ。
そして、同じような思惑を感じさせる親子が、今、皇室を揺るがしている。秋篠宮家のご長女・眞子さまとの結婚問題の渦中にいる、小室圭氏と小室佳代氏だ。
眞子さまと小室氏は2017年9月に「ご婚約内定会見」を行ったものの、その後、週刊誌によって小室家のさまざまな疑惑が報じられ、18年2月に宮内庁が結婚延期を発表。これから2人はどうなるのか、いまだに先が見えない。だからこそ、国民の関心が高いのだろう。毎日のように眞子さまと小室氏について報じられた記事が、ネット上にアップされる。
たとえば、今年6月16日配信の「デイリー新潮」は、「小室圭さん、納采の儀の費用が“払えない” 秋篠宮家ご負担案が浮上していた」とスクープ。庶民の結納にあたる「納采の儀」を行うにあたり用意すべき品を示された際に、小室氏が「こんなにかかるんですか?」「母子家庭ということもあって、金銭的な余裕がなく……」と答えたため、秋篠宮さまが費用を肩代わりするおつもりだったというもの。
この記事が「Yahoo!ニュース」に転載されると、8,000件以上のコメントが集まり、「破談にすべきだ」「俺たちの税金を1円も使うな」といった怒りの声も書き込まれた。眞子さまと小室氏のニュースは、通常のニュースと比べるとコメント数が桁外れに多く、不快感があらわになっているものばかりだと感じる。
確かに、今の小室氏は叩きやすい。大手銀行に勤めている間に眞子さまにプロポーズしたが、結婚の意志が固まると退職。小室氏は国際弁護士になるために猛勉強しているようだが、「今年30歳になるのにまだ定職についていない」という見方をする人もいるだろう。さらに「週刊女性」(主婦と生活社)が報じた、母親である佳代氏と元交際相手の間で起こった400万円もの金銭トラブルや、今年4月に小室氏が発表した説明文書の中で繰り返された「借金ではないから、払わない」「借金じゃないのに、借金と言われて傷ついた」といわんばかりの文章を読めば、状況証拠的に「眞子さまの一時金目当て」「ロイヤルブランドを利用している」など、「小室家が皇室に近づくための結婚」と見て批判する人がいてもおかしくない。
こうして「カネに汚い親子」というバイアスがかかってしまっている今、小室氏親子は世論に対してとても不利だ。
たとえば、「週刊文春」20年12月17日号(文藝春秋)は、佳代氏が元婚約者に「次回は代官山ASOでキャビアのパスタを是非!」「今年は圭の大好きな恵比寿ウェスティンHの『龍天門』でお祝いDinnerしたく」というメールを送ったと報じている。2人が当時恋人同士であったことを考えると、佳代氏のおねだりがそれほどおかしな話だと私は思わないが、高級店の名前が上がっていることから、「ほら、やっぱりブランド好きでカネがかかる!」と見る人のほうが多かっただろう。
しかし、佳代氏と元婚約者については、金銭トラブルを円満に解決できなかったことが問題のはずであり、それがいつのまにか「カネに汚い佳代氏」という“虚像”が作りあげられ、一人歩きし続けているように私には思える。
その佳代氏について、「週刊文春WOMAN」2021年夏号(同)は「小室佳代さん密着取材一年」というタイトルで、同誌記者とのやりとりを掲載した。取材当初は頑として記者の取材に答えようとしなかった佳代氏だが、記者に子どもがいることがわかると、笑顔で会話を交わすようになったとか。小室氏親子については、マスコミで“一卵性母子”や“佳代さんの操り人形”と書かれることも多いが、佳代氏は「息子は全部自分で決めてやるタイプなんです」「(圭氏は)中学でインターナショナルスクールに進学することも自分で決めました」と語り、自身は過干渉な母ではないと主張している。
また、佳代氏本人に対する報道については、「誤った話が広まるのは本当に苦しい。一つ一つ訂正してもキリがないくらい」「二年ほど前には周りの人たちに『さようなら』と別れを告げて、いなくなろうとしたんです」など、間違った報道によって精神的に追い込まれ、命を絶とうとしたかのように思える発言もしている。さらに、元婚約者からは突然婚約破棄を言い渡され、それまで総額400万円の支援を受けていたため「清算はどうすればいいんですか」と聞いたところ、元婚約者から「差し上げたものです」と言われていたのに、それから1年後に「お金の返済を求めるお手紙」が届き、衝撃を受けたと告白。「話が膨らみすぎてしまって、信じてもらえないかもしれませんが、これが本当の話です」と話していた。
交際していた恋人が、別れた後に「あの時のカネを返せ」と言うのはよくあることだろうし、そのあたりの問題は法律の専門家にゆだねるしかない。物事はどこから見るかで印象は違ってくるので、佳代氏から見て「間違った報道」がなされているのも事実だろう。当事者のみが真実を知っている以上、小室氏親子が本当に「カネに汚い」かどうかは第三者にわからず、報道や世間が作り上げた虚像の部分もあるのではないだろうか。
しかしその一方で、小室氏親子には、独特の話の通じなさがあるようにも感じた。
「週刊文春WOMAN」に掲載されなかった可能性もあるが、佳代氏は記事の中で「お騒がせして申し訳ない」というニュアンスの発言をしていない。眞子さまに対しては、「ご心労をおかけして本当に申し訳なく思っています」と言ったものの、秋篠宮ご夫妻には言及せず、国民に対する言葉も見当たらない。
警察のお世話になるような「悪いこと」をしていないのだから、謝る必要はないと思っているのかもしれないが、自分のせいで愛する息子の結婚にブレーキがかかり、眞子さまや秋篠宮ご夫妻までバッシングにさらされ、「皇室不要論」を主張する国民まで現れた状況を考えれば、本心は別として、大人であり、親でもある立場から、エクスキューズ的な一言があってもいいのではないだろうか。「法に触れたわけではないから、謝らない」「でも、自分が傷ついたことは主張する」のは、小室氏の説明文書とそっくりで、話の通じなさは「よく似た母子」に思えて仕方ない。
オトナの世界では、「やりたいことをやるには、義務も果たす」のが暗黙のルールだ。上述したように、小室氏は結納の費用がかさむとわかった際、「母子家庭ということもあって、金銭的な余裕がなく……」と発言したようだが、その言い分が通るのは学生時代までだろう。一般的に、自活すべきとされる年齢をすでに超えており、幸いにして高い教育を受けているわけだから、眞子さまと結婚したいなら、仕事をして結納金を貯めるのは、小室氏の義務のようなものである。「母子家庭だから」という言い訳は通らないだろう。
週刊誌などで報道されている通り、小室氏は早くに父親を亡くし、母子家庭で育った。もしかしたら、母子ともども肩身の狭い経験や、心もとない思いをしたことがあったかもしれない。そうだとしたら、お気の毒なことだと思うが、それは同時に「個人的な事情」でもある。どの家族にも事情はあるわけで、「母子家庭」を伝家の宝刀のように振りかざす小室氏親子は、思考回路が自己中心的すぎやしないだろうか。
秋篠宮さまご夫妻や国民は、金銭トラブルの解決を求めているのに、この親子は常に、自分たちの事情と気持ちを訴えている。それでは当然、ご結婚問題はいつまでたっても解決しない。2人に悪気はないのだろうが、やはり「言っても言っても話が通じない人」に思えてしまうのだ。
親と子は別人格だが、一緒にいる時間が長い分、思考回路や行動パターンが似てしまうのは否めない。親から刷り込まれた“常識”が良くも悪くも壊れるのは、社会に出てさまざまな人の価値観に触れたときだろう。社会人になった子どもが「うちの親って常識あると思っていたけど、そうでもないな」と気づいても、それは親に対する批判ではなく、成長の証しととらえるべきだと思う。
しかし、小室氏は新卒で入った銀行を辞めてしまい、その後はアルバイトや学生生活を送っているため、同世代と比べて、社会人経験が圧倒的に少ないはずだ。こうなると、親である佳代氏の基準やルールの中で生きるしかなく、結果的に、一般社会から浮いてしまう。眞子さまはプリンセスなので、世間を知らないのは当たり前だと思うが、このままでは、眞子さまと小室氏親子の3人は“世間知らずスリートップ”として、日本からどんどん孤立していくだけではないか。
子どもが経済的に親から独立すると、自然に親の精神的傘下から逃れようとすることも多い。佳代氏の個人的な人となりは別として、30歳を迎えようとする子どもが母親の価値観で行動しているなら、あまりに情けない。小室氏は一刻も早く社会に出て、佳代氏から学んできた“常識”を壊すべきだろう。