近藤真彦、「泣いちゃいました」というジャニー社長への追悼コメントに見る「怖いオトコ」の顔

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「長男でいながら、何度も泣いちゃいました」近藤真彦

 7月9日、ジャニーズ事務所社長・ジャニー喜多川氏が亡くなった。「最も多くのコンサートをプロデュースした人物」「最も多くのナンバーワン・シングルをプロデュースした人物」としてギネス世界記録の保持者である氏の逝去に対し、所属タレントたちがコメントを発表した。

 タレントたちのコメントは、自身を見いだしてくれたことへの「感謝」と故人の「人となり」に触れながら、愛情表現をしているものが多い。

 例えば、木村拓哉は「今の自分があるのも、ジャニーさんとの出会いが無ければ…。と思うと感謝してもしきれません」と「感謝」し、少年隊・東山紀之は「ジャニーさんが教えてくれた、人に対する優しさやプロ意識がなければ、僕はここに存在していなかったでしょう」と、故人の「人となり」を感じさせながら、その教えがどれほど有意義なものであったかを明かしている。

 例外として、TOKIOの長瀬智也が「ジャニーさんはカッコ良すぎるのでたぶん地獄行きです」と弔事の際に使われることのない「地獄」という言葉を使っているが、その後に「僕も地獄を目指している男なのでまた地獄で会いましょう」と続けているので、長瀬なりの愛情表現ということがわかる。

 そんな中、シンプルにしてオリジナリティーが高いと私が驚いたのが、マッチこと近藤真彦のコメントである。

「倒れてから3週間、病室で数々の奇跡を見せて頂きました。あらためてジャニーさんの強さを感じました。タレントと社員が、もしかしたらという心の準備をする時間もいただきました。さすがジャニーさん、最後まで最高なセルフマネジメントでした」

 と、ここまでは出来事とジャニー氏の「らしさ」を時系列順に説明している。注目すべきは、その後だ。

「長男でありながら、何度も泣いちゃいました」

 コメントを出したタレントたちは、ひたすらジャニー氏に感謝し、氏のイズムを継承していくことを誓っている。それは大人としては正しい判断だが、ビジネス的な立ち位置からのコメントと思えないこともない。しかし、マッチだけは弱さを隠さず、「泣く」ことで氏の喪失を悼んでいる。家族のような近しい人が旅立った時に、涙することはおかしなことではなく、むしろ当たり前である。となると、マッチの「泣いちゃいました」という言葉は、最も強い愛情表現はないのではないだろうか。

 この「泣いちゃいました」で、私は人の懐にすっと入り込むマッチの“怖さ”を思い出した。

 2015年、「週刊文春」(文藝春秋)に、「ジャニーズ女帝メリー喜多川 怒りの独白5時間」と題された、メリー喜多川副社長へのインタビューが掲載された。メリー氏の娘・ジュリー氏とSMAPのマネジャー飯島三智氏(当時)、それぞれを「社長候補」と記者が言ったことにメリーは激昂。「もし、ジュリーと飯島が問題になっているのなら、私はジュリーを残します。自分の子だから」と後継者はジュリーであることを宣言した。怒りの収まらないメリー氏は、飯島氏をインタビューの現場に呼び出し、「うちのトップはだれ?」と質問して、飯島氏に「近藤真彦です」と答えさせるなど、自分の娘だけでなく、マッチに対する強い思い入れを示している。 

 同記事で、記憶に残っているのがもう一つ。メリー氏はマッチの母親にも強く感情移入している点である。喫茶店を経営していたマッチの母親は、仕事の帰り道に自らが運転する車で、交通事故を起こした。2010年に放送された『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS系)で、本人が語ったところによると、マッチの母親は、大病院への搬送を頑なに拒んだという。救急車はその希望通り、“大病院ではない”病院に運び込んだが、結局そこでは手に負えず、再度大学病院に搬送され、42歳の生涯を閉じた。

 マッチの母親が、なぜ大きな病院に行かなかったのかというと、事故が公になることを恐れていたからと、マッチは説明する。つまり、自分の命と引き換えに、息子ひいてはジャニーズ事務所に迷惑をかけまいとしたということだろう。

 メリー氏はその事故を振り返りながら、インタビューでは「私がマッチの面倒を見るのは当たり前だと思う……話しているだけで涙が出てきちゃう」と落涙寸前の勢いで言い切っていた。

 このようなエピソードから、メリー氏は、面倒見の良い、情の深い人物と言えるだろう。明石家さんまもMBSラジオ『ヤングタウン土曜日』でこんなエピソードを披露している。さんまがジャニーズのタレントと共演が増えるようになった際、メリーに「うちの子どもたちが本当にお世話になって」という感謝の言葉をかけられたことに加え、「一緒のレストランになると、全部はろてくれはる。こっちがどれだけの人数であろうと払ってくれる」と証言した。

 それでは、メリー氏のような情の深い人が好むのは、どんな人だろうか。

 まず情が深い人というのは、「この人を大事にしなくてはならない」と思い込みやすい人と言えるだろう。それでは、どんな人を「大事にしたい」かというと、マッチの母親のように、身を挺して忠誠を誓ってくれる人と、「自分が面倒を見ないといけない気にさせる人」、つまり、庇護欲をそそる「甘え上手な人」と言えるのではないだろうか。

 若い世代にはぴんと来ないだろうが、昭和という時代は「オトコは人前で涙を見せるべきではない」という考えが主流だった。なぜ男性が泣いてはいけないかというと、泣くと「弱い人」「オトコらしくない」と見なされたからである。自分の評判を落としかねない弱さを露呈することは、情の深い人を「そこまでの犠牲を払ってくれるのなら、自分が面倒をみてあげなくては」という気持ちにさせるのではないだろうか。

 そういえば、マッチのかつての恋人、中森明菜も情が深い人だった。かつて明菜が「お母さん」と呼び、付き人を務めていた木村恵子氏が出した暴露本『中森明菜 哀しい性』(講談社)によると、明菜は「結婚のため」マッチにかなりの金額を貢いでいたそうだ。1987年の「日本レコード大賞」では、マッチと明菜は二人とも大賞候補としてノミネートされているが、受賞したのはマッチだった。発表を聞いた明菜が手を叩いて喜んでいたと記憶している。明菜はすでに2回レコード大賞を受賞していたが、自分が受賞したときよりも、はるかにうれしそうに見えた。自分よりも恋人が成功する方がうれしかったのかもしれない。

 ジャニーズ帝国の女帝メリーと昭和の歌姫・中森明菜を自在に操った近藤真彦。悪いオトコというと、口のうまい男性を連想する人も多いだろうが、本当に怖いのは「甘え上手」なオトコかもしれない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

近藤真彦、「泣いちゃいました」というジャニー社長への追悼コメントに見る「怖いオトコ」の顔

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「長男でいながら、何度も泣いちゃいました」近藤真彦

 7月9日、ジャニーズ事務所社長・ジャニー喜多川氏が亡くなった。「最も多くのコンサートをプロデュースした人物」「最も多くのナンバーワン・シングルをプロデュースした人物」としてギネス世界記録の保持者である氏の逝去に対し、所属タレントたちがコメントを発表した。

 タレントたちのコメントは、自身を見いだしてくれたことへの「感謝」と故人の「人となり」に触れながら、愛情表現をしているものが多い。

 例えば、木村拓哉は「今の自分があるのも、ジャニーさんとの出会いが無ければ…。と思うと感謝してもしきれません」と「感謝」し、少年隊・東山紀之は「ジャニーさんが教えてくれた、人に対する優しさやプロ意識がなければ、僕はここに存在していなかったでしょう」と、故人の「人となり」を感じさせながら、その教えがどれほど有意義なものであったかを明かしている。

 例外として、TOKIOの長瀬智也が「ジャニーさんはカッコ良すぎるのでたぶん地獄行きです」と弔事の際に使われることのない「地獄」という言葉を使っているが、その後に「僕も地獄を目指している男なのでまた地獄で会いましょう」と続けているので、長瀬なりの愛情表現ということがわかる。

 そんな中、シンプルにしてオリジナリティーが高いと私が驚いたのが、マッチこと近藤真彦のコメントである。

「倒れてから3週間、病室で数々の奇跡を見せて頂きました。あらためてジャニーさんの強さを感じました。タレントと社員が、もしかしたらという心の準備をする時間もいただきました。さすがジャニーさん、最後まで最高なセルフマネジメントでした」

 と、ここまでは出来事とジャニー氏の「らしさ」を時系列順に説明している。注目すべきは、その後だ。

「長男でありながら、何度も泣いちゃいました」

 コメントを出したタレントたちは、ひたすらジャニー氏に感謝し、氏のイズムを継承していくことを誓っている。それは大人としては正しい判断だが、ビジネス的な立ち位置からのコメントと思えないこともない。しかし、マッチだけは弱さを隠さず、「泣く」ことで氏の喪失を悼んでいる。家族のような近しい人が旅立った時に、涙することはおかしなことではなく、むしろ当たり前である。となると、マッチの「泣いちゃいました」という言葉は、最も強い愛情表現はないのではないだろうか。

 この「泣いちゃいました」で、私は人の懐にすっと入り込むマッチの“怖さ”を思い出した。

 2015年、「週刊文春」(文藝春秋)に、「ジャニーズ女帝メリー喜多川 怒りの独白5時間」と題された、メリー喜多川副社長へのインタビューが掲載された。メリー氏の娘・ジュリー氏とSMAPのマネジャー飯島三智氏(当時)、それぞれを「社長候補」と記者が言ったことにメリーは激昂。「もし、ジュリーと飯島が問題になっているのなら、私はジュリーを残します。自分の子だから」と後継者はジュリーであることを宣言した。怒りの収まらないメリー氏は、飯島氏をインタビューの現場に呼び出し、「うちのトップはだれ?」と質問して、飯島氏に「近藤真彦です」と答えさせるなど、自分の娘だけでなく、マッチに対する強い思い入れを示している。 

 同記事で、記憶に残っているのがもう一つ。メリー氏はマッチの母親にも強く感情移入している点である。喫茶店を経営していたマッチの母親は、仕事の帰り道に自らが運転する車で、交通事故を起こした。2010年に放送された『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS系)で、本人が語ったところによると、マッチの母親は、大病院への搬送を頑なに拒んだという。救急車はその希望通り、“大病院ではない”病院に運び込んだが、結局そこでは手に負えず、再度大学病院に搬送され、42歳の生涯を閉じた。

 マッチの母親が、なぜ大きな病院に行かなかったのかというと、事故が公になることを恐れていたからと、マッチは説明する。つまり、自分の命と引き換えに、息子ひいてはジャニーズ事務所に迷惑をかけまいとしたということだろう。

 メリー氏はその事故を振り返りながら、インタビューでは「私がマッチの面倒を見るのは当たり前だと思う……話しているだけで涙が出てきちゃう」と落涙寸前の勢いで言い切っていた。

 このようなエピソードから、メリー氏は、面倒見の良い、情の深い人物と言えるだろう。明石家さんまもMBSラジオ『ヤングタウン土曜日』でこんなエピソードを披露している。さんまがジャニーズのタレントと共演が増えるようになった際、メリーに「うちの子どもたちが本当にお世話になって」という感謝の言葉をかけられたことに加え、「一緒のレストランになると、全部はろてくれはる。こっちがどれだけの人数であろうと払ってくれる」と証言した。

 それでは、メリー氏のような情の深い人が好むのは、どんな人だろうか。

 まず情が深い人というのは、「この人を大事にしなくてはならない」と思い込みやすい人と言えるだろう。それでは、どんな人を「大事にしたい」かというと、マッチの母親のように、身を挺して忠誠を誓ってくれる人と、「自分が面倒を見ないといけない気にさせる人」、つまり、庇護欲をそそる「甘え上手な人」と言えるのではないだろうか。

 若い世代にはぴんと来ないだろうが、昭和という時代は「オトコは人前で涙を見せるべきではない」という考えが主流だった。なぜ男性が泣いてはいけないかというと、泣くと「弱い人」「オトコらしくない」と見なされたからである。自分の評判を落としかねない弱さを露呈することは、情の深い人を「そこまでの犠牲を払ってくれるのなら、自分が面倒をみてあげなくては」という気持ちにさせるのではないだろうか。

 そういえば、マッチのかつての恋人、中森明菜も情が深い人だった。かつて明菜が「お母さん」と呼び、付き人を務めていた木村恵子氏が出した暴露本『中森明菜 哀しい性』(講談社)によると、明菜は「結婚のため」マッチにかなりの金額を貢いでいたそうだ。1987年の「日本レコード大賞」では、マッチと明菜は二人とも大賞候補としてノミネートされているが、受賞したのはマッチだった。発表を聞いた明菜が手を叩いて喜んでいたと記憶している。明菜はすでに2回レコード大賞を受賞していたが、自分が受賞したときよりも、はるかにうれしそうに見えた。自分よりも恋人が成功する方がうれしかったのかもしれない。

 ジャニーズ帝国の女帝メリーと昭和の歌姫・中森明菜を自在に操った近藤真彦。悪いオトコというと、口のうまい男性を連想する人も多いだろうが、本当に怖いのは「甘え上手」なオトコかもしれない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

坂上忍、32年前の「工藤夕貴との確執」暴露――「オトコの方がしつこい」言説を考える

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「オトコなのに、意外にしつこい」工藤夕貴
『ダウンタウンなう』(フジテレビ系、7月5日)

 ミュージシャン・崎谷健次郎に27年にも及ぶストーカー行為をしていた女が、ストーカー規制法違反容疑で逮捕された。「27年」という年月を費やしてのストーキングに驚いた人も多かっただろうが、知人の探偵が「オンナのストーカーは、ともかくしつこい」と言っていたのを思い出した。

 オトコのストーカーは、気持ちがだんだん高ぶると、「会いに行く」などの直接的な行為に出やすい一方、オンナのストーカーはそういった「実力行使」はせずに、メールや電話など、力を使わない、電子機器によるストーキングを行う傾向があるそうだ。手軽にできるからかどうかはわからないが、その分、ストーキングは長期化する傾向がみられると言っていた。

 例えば、高校生の子どもを持つ主婦から、長く続く嫌がらせの犯人を調べてほしいという依頼があり、探偵が調べてみるとたら、犯人は子どもの幼稚園のママ友だったそうだ。単純計算で、ストーカー女は12年の歳月をストーキングに費やしたことになるので、確かに「しつこい」と言えるだろう(※あくまでこの話は、私の知人の話であり、場合によっては探偵が対応できないこともある。ストーキングと感じる行為にあったら、すぐに警察など専門家に相談し、判断を仰ぐことをお勧めします)。  

 こう考えると、「オンナはしつこい」というのは正しいような気もするが、場合によってはオトコの方がしつこくなることもあるのではないだろうか。

 7月5日放送の『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)に女優・工藤夕貴が出演した。冒頭から、同番組レギュラーの坂上忍は、工藤に対する嫌悪感を隠さない。坂上が出演する番組を見ていると、坂上は出演者の女性を「ちゃん」か「さん」付けしていることに気づくが、工藤に関しては「夕貴」と呼び捨て。「台本に名前があると、共演を避けてきた」と言っており、実際にずっと共演していなかったそうだから、番組を盛り上げるためでなく、本当に「嫌い」と見ることができるのではないだろうか。

 そこまで、工藤を嫌う理由を、坂上はこう説明した。

 今から32年前、あたち充原作の『タッチ』(小学館)の舞台版で共演した坂上と工藤。坂上はハタチではあったが、子役出身なので芸歴17年のベテラン。対する工藤は16歳のアイドル。その工藤が坂上の楽屋にやってきて、「あそこの芝居こうやってください」と、坂上に「ダメ出し」してきたそうだ。後輩に指図される筋合いはないと立腹した坂上だが、関係性を悪くしてはいけないと、今度は工藤の楽屋を訪れて「こうやってみたら、どう?」と提案したものの、工藤は「あっ、でもそれは、それをやっちゃうとこうなっちゃうんで、そうじゃない方がいいと思います」と譲歩するそぶりを見せなかったという。ダウンタウン・浜田雅功が「(悪いのは)お前(工藤)や」、松本人志が「ダメだよ、夕貴。そういうところが」と指摘していたところを見ると、芸能界では先輩の意見を聞かないのは、ダメなことなのだろう。

 工藤は「(坂上は)大人なんだから、ちょっと大目に見られなかったの?」「先輩なんで、逆に『そういうのは言っちゃうと損だよ』と教えてくれるとか」といった具合に、理由をつけて坂上に謝罪しようとしない。最後には「オトコなのに、意外にしつこい」と坂上が粘着質であるかのような発言をしていた。

 オトコとオンナ、どちらが「しつこい」のかは、人それぞれなわけだが、現在の日本、さらに芸能界に限定して言うのなら、オトコの方が「しつこさ」を発揮できるのではないだろうか。

 相手が気づいているのかは不明だが、一緒に仕事をした人に対して、思うところがあるというのは、よくあることだろう。しかし、よっぽどのことがなければ、そこには触れず、うやむやのままで終わる。

 その思うところが明るみに出るのは、どういう時かというと、被害を受けたと思っている側が「大出世」したときではないだろうか。俳優としてキャリアを積んできた坂上だが、近年は『バイキング』(フジテレビ系)をはじめ、多数のバラエティ番組で司会を務める日本有数の売れっ子と言える。芸能界では「何を言うかより、誰が言うか」が重視されると私は思っているので、売れっ子が「被害に遭った」と言えば、番組は時間を割いてくれて、その「しつこさ」は日の目を見る。

 しかし、女性芸能人は坂上のような出世パターンをなぞることが難しい。バラエティ番組は多数あれど、なぜか司会者は男性ばかりで、女性はアシスタントどまり。その多くはアイドルなど、若い女性である。ベテランの域に達した女性で、全国ネットの番組のメイン司会者となっている人は、ほとんどいないのが現状ではないだろうか。つまり、女性は出世できないので、「あの人から、こんなことされました」と被害を訴える機会を持たないとも言えるのだ。

 とは言いつつ、見方を変えれば、生き馬の目を抜く芸能界の一線で活躍する人たちは、男女とも自分に自信があり、サバイバルがうまく、容易にへこたれない人たちと見ていいだろう。結局、オトコ(オンナ)だから「しつこい」のではなく、売れっ子はみんなそもそも「しつこい」という“性質”を持っているというのが、芸能界なのではないだろうか。 

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

坂上忍、32年前の「工藤夕貴との確執」暴露――「オトコの方がしつこい」言説を考える

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「オトコなのに、意外にしつこい」工藤夕貴
『ダウンタウンなう』(フジテレビ系、7月5日)

 ミュージシャン・崎谷健次郎に27年にも及ぶストーカー行為をしていた女が、ストーカー規制法違反容疑で逮捕された。「27年」という年月を費やしてのストーキングに驚いた人も多かっただろうが、知人の探偵が「オンナのストーカーは、ともかくしつこい」と言っていたのを思い出した。

 オトコのストーカーは、気持ちがだんだん高ぶると、「会いに行く」などの直接的な行為に出やすい一方、オンナのストーカーはそういった「実力行使」はせずに、メールや電話など、力を使わない、電子機器によるストーキングを行う傾向があるそうだ。手軽にできるからかどうかはわからないが、その分、ストーキングは長期化する傾向がみられると言っていた。

 例えば、高校生の子どもを持つ主婦から、長く続く嫌がらせの犯人を調べてほしいという依頼があり、探偵が調べてみるとたら、犯人は子どもの幼稚園のママ友だったそうだ。単純計算で、ストーカー女は12年の歳月をストーキングに費やしたことになるので、確かに「しつこい」と言えるだろう(※あくまでこの話は、私の知人の話であり、場合によっては探偵が対応できないこともある。ストーキングと感じる行為にあったら、すぐに警察など専門家に相談し、判断を仰ぐことをお勧めします)。  

 こう考えると、「オンナはしつこい」というのは正しいような気もするが、場合によってはオトコの方がしつこくなることもあるのではないだろうか。

 7月5日放送の『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)に女優・工藤夕貴が出演した。冒頭から、同番組レギュラーの坂上忍は、工藤に対する嫌悪感を隠さない。坂上が出演する番組を見ていると、坂上は出演者の女性を「ちゃん」か「さん」付けしていることに気づくが、工藤に関しては「夕貴」と呼び捨て。「台本に名前があると、共演を避けてきた」と言っており、実際にずっと共演していなかったそうだから、番組を盛り上げるためでなく、本当に「嫌い」と見ることができるのではないだろうか。

 そこまで、工藤を嫌う理由を、坂上はこう説明した。

 今から32年前、あたち充原作の『タッチ』(小学館)の舞台版で共演した坂上と工藤。坂上はハタチではあったが、子役出身なので芸歴17年のベテラン。対する工藤は16歳のアイドル。その工藤が坂上の楽屋にやってきて、「あそこの芝居こうやってください」と、坂上に「ダメ出し」してきたそうだ。後輩に指図される筋合いはないと立腹した坂上だが、関係性を悪くしてはいけないと、今度は工藤の楽屋を訪れて「こうやってみたら、どう?」と提案したものの、工藤は「あっ、でもそれは、それをやっちゃうとこうなっちゃうんで、そうじゃない方がいいと思います」と譲歩するそぶりを見せなかったという。ダウンタウン・浜田雅功が「(悪いのは)お前(工藤)や」、松本人志が「ダメだよ、夕貴。そういうところが」と指摘していたところを見ると、芸能界では先輩の意見を聞かないのは、ダメなことなのだろう。

 工藤は「(坂上は)大人なんだから、ちょっと大目に見られなかったの?」「先輩なんで、逆に『そういうのは言っちゃうと損だよ』と教えてくれるとか」といった具合に、理由をつけて坂上に謝罪しようとしない。最後には「オトコなのに、意外にしつこい」と坂上が粘着質であるかのような発言をしていた。

 オトコとオンナ、どちらが「しつこい」のかは、人それぞれなわけだが、現在の日本、さらに芸能界に限定して言うのなら、オトコの方が「しつこさ」を発揮できるのではないだろうか。

 相手が気づいているのかは不明だが、一緒に仕事をした人に対して、思うところがあるというのは、よくあることだろう。しかし、よっぽどのことがなければ、そこには触れず、うやむやのままで終わる。

 その思うところが明るみに出るのは、どういう時かというと、被害を受けたと思っている側が「大出世」したときではないだろうか。俳優としてキャリアを積んできた坂上だが、近年は『バイキング』(フジテレビ系)をはじめ、多数のバラエティ番組で司会を務める日本有数の売れっ子と言える。芸能界では「何を言うかより、誰が言うか」が重視されると私は思っているので、売れっ子が「被害に遭った」と言えば、番組は時間を割いてくれて、その「しつこさ」は日の目を見る。

 しかし、女性芸能人は坂上のような出世パターンをなぞることが難しい。バラエティ番組は多数あれど、なぜか司会者は男性ばかりで、女性はアシスタントどまり。その多くはアイドルなど、若い女性である。ベテランの域に達した女性で、全国ネットの番組のメイン司会者となっている人は、ほとんどいないのが現状ではないだろうか。つまり、女性は出世できないので、「あの人から、こんなことされました」と被害を訴える機会を持たないとも言えるのだ。

 とは言いつつ、見方を変えれば、生き馬の目を抜く芸能界の一線で活躍する人たちは、男女とも自分に自信があり、サバイバルがうまく、容易にへこたれない人たちと見ていいだろう。結局、オトコ(オンナ)だから「しつこい」のではなく、売れっ子はみんなそもそも「しつこい」という“性質”を持っているというのが、芸能界なのではないだろうか。 

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

坂口杏里の迷走はいつ始まったのか? 大女優の娘に生まれ、「コネで芸能界入り」のリスク

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「お金にならない」坂口杏里
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系、6月30日)

 前回、カラテカ・入江慎也を例に、「人脈はビジネスのメリットになり得るのか」について書いたが、6月30日放送の『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)を見て「コネで仕事を得ることはトクなのか?」について考えてみたくなった。

 学生時代の評価は、原則として「テストの点数」でなされる。テスト範囲も日程も全員に告知されているという意味で、平等である。しかし、この原則が崩れ始めるのが、就活あたりからではないだろうか。親の社会的ポジションによって「別のルート」を経る人とがいることを、知ってしまう。とりたてて優秀と思われていない人が人気企業に内定し、その後で「お父さんが有力者だったから」というウワサを聞くのは、今も昔もあることではないだろうか。

 例えば、元フジテレビアナウンサー・高橋真麻。父親が大物俳優・高橋英樹であることから、ネットで「コネ入社」だとバッシングされた。『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)に出演した真麻は、当時を振り返って「ラーメンの麺2本くらいしか食べられない」ほど、精神的に追い詰められていたことを告白する。局内の立場も微妙だったようだ。「態度が悪い」とウワサを流されて上司に怒られたり、仕事は顔の見えないナレーションしかない時期もあったと『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)で明かしていた。

 しかし、真麻は父・英樹から「誰がやってもいい仕事こそ、頑張りなさい」というアドバイスを受けて、地道に信用を築いていく。時代が、“非リア充ウケ”――リア充は疎まれ、非リア充が親近感を抱かれるようになってきたこともあって、バラエティで芸人のような仕事をこなし、自虐ネタで笑いも取れる“女子アナらしくない女子アナ”真麻に注目が集まることに。そして、フリーになっても仕事が途切れない勝ち組女子アナとなった。真麻が本当にコネ入社なのかそうでないかはわからないが(フジテレビは民間企業なので、縁故採用をしても法律違反ではないはずだ)、「コネ」とみなされることで、ほかの人の何倍も苦労をしたと言えるのではないだろうか。

 しかし、真麻のようにコネ疑惑を払しょくできる、もしくはコネを使ったとしても、それを上回る結果を出せる人は、本当に稀だろう。

 明石家さんまと大竹しのぶの娘で、「芸能界最強の二世」とも呼ばれたIMALUは、親のご威光で、デビュー直後から、モデル、製菓会社のCM、『おしゃれイズム』(日本テレビ系)のメインゲスト、『A-studio』(TBS系)のアシスタントMCといった具合に、「いい仕事」を獲得するが、アシスタントMC は1年以内にクビを切られるなど、いずれも結果を出せず。コネを使えばデビューすることはできても、コネで仕事をつなぎとめることはできない。芸能界は実に厳しい世界と言えるのではないだろうか。

 IMALUは親も健在で、本人も事務所を立ち上げるなど、裏方の仕事に活路を見いだしているからよい。こうなると、心配なのが、坂口杏里のように後ろ盾(親)もおらず、けれど、芸能界にいた日々を忘れられないというタイプではないだろうか。

 大女優・坂口良子さんを母に持つ杏里は17歳で芸能界入りし、おバカキャラとしてバラエティで活躍した。しかし、良子さんを病気で亡くしたことでホストクラブにはまり、遺産を使い果たすだけでなく、借金まで作ってしまう。返済のために、AV女優に転身するが、ホストへの恐喝で警察のお世話にもなった。その後、風俗店での勤務を公表する一方、芸能界に復帰したいという希望を明らかにしているものの、具体的な成果は出ていないようだ。『ザ・ノンフィクション』では、そんな杏里の姿を追う。

 2018年6月、浅草ロック座でストリップデビューすると発表された杏里だが、本番直前のリハーサルでもフリは頭に入っておらず、太ってしまったために衣装が着られない。ステージでの立ち位置すらわからない。ロック座名物・早着替えもこなせず、「私、プロじゃないもん」と文句を言う。とうとう、ロック座は「諸事情により、出演を見送ることになりました」と杏里の降板を発表する。「降板なんて私は言っていない」と杏里は言うが、番組での様子から考えると、「踊れないので、クビになった」と推察することもできるだろう。

 いまだ借金が1000万円以上残る杏里は、「夜の仕事」を続けざるを得ない。番組のディレクターが「フツウのバーでバイトすれば?」と質問すると、「お金にならない」と即答していた。確かに“フツウ”のバイトでは、1000万円以上の借金を完済するには気の遠くなるような時間がかかるだろう。

 さて、それでは「お金になる仕事」とは何かを、杏里は考えたことがあるだろうか。「お金になる仕事」は、フツウの人ができないこと、もしくはフツウの人がやりたくないことを生業にすることではないだろうか。前者の場合、高いギャラを受け取る分、結果に責任を負わなくていけないし、後者であればお金のためと割り切って我慢する強さが必要になる。

 杏里にとって、ロック座の仕事はやりたい仕事ではなかったのかもしれない。しかし、彼女はほかのダンサーを従えて踊る“主役”である以上、結果を出せば自分の業績になるし、お金にもなる。ストリップは興行だから、評判が良ければまた声がかかるだろう。うまくいけば借金返済も夢でない。杏里にとって、ロック座公演は汚名をすすぐためにも、借金返済の意味でも踏ん張り時だったのではないだろうか。

 何がチャンスで、いつが頑張り時なのか。杏里はそれがわかっていないように見える。一般人であれば、こういう人は芸能界に入れないが、杏里の場合、コネがあるので芸能界に入れてしまい、キラキラした経験までしてしまった。ゆえに、あきらめることができないというジレンマに陥っているのではないか。

 地上波のテレビが彼女に思い出したように声をかけるのは、ゆっくりと転落していく若い女性への興味からだろうが、芸能界復帰を目指す杏里は、これをチャンスと捉えてしまっているようにも思える。取材されることは、芸能界の復帰を確約するものではないものの、「もしかしたら芸能界に復帰できるのかもしれない」とポジティブ変換しているように感じられるのだ。

 杏里の迷走は、元をただせば、芸能界向きとは言えないぼんやりとした少女が、大女優の娘に生まれ、コネで芸能界に入ってしまったことに始まっているのではないだろうか。コネで仕事を得るとは、実はものすごくリスクの高いことに思えて仕方がない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

カラテカ・入江慎也、「闇営業で吉本解雇」に考える「人脈」なるものの脆弱さ

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「人脈は金で買えないしね」関ジャニ∞・村上信五
『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系、6月24日)

 6月24日放送『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)で、「若い時の自分に伝えたいことランキング」を紹介していた。第1位は「外国語を学べ」、第2位は「海外旅行に行け」、第3位は「人脈を広げておけ」といった結果だった。

 同番組司会の関ジャニ∞・村上信五は「人脈を広げておけ」に同調したのだろう、「人脈は金で買えないしね」と発言していた。

 人脈とは、金で買えない貴重なものであって、ゆえに若いときから、人脈を広げるように心がけておかねばならない。推測だが、村上発言を補強すると、このような意味になるだろう。

 そういえば、かなり昔の話になるが、村上が所属するジャニーズ事務所の先輩・少年隊が一世を風靡していた頃、『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系)に出演したことがある。その際、演歌の女王・小林幸子が彼らを「ジャニーズ事務所の子は礼儀正しくて、如才ない」と感心していた。ジャンルを問わず、大御所の懐に飛び込み、かわいがってもらうのは“人脈”を広げるのに有効な手段なのかもしれない。

 一般人でも、「〇〇さんを知っている」「××さんと飲んだ」といった具合に、有力者の名前を口にする人がいるが、これも人脈というのが得難いものであると認識されているから、自慢になるのだろう。異業種交流会というものが昔からあるのも、「人脈によって成功の突破口が開ける」と思っている人が多いことを物語っているように感じる。しかし、人脈があればオールOKかというと、ちょっと違うのではないだろうか。

 5月20日放送の『女が女に怒る夜』(日本テレビ系)では、社長や著名人などと親しくなることで、利益を得ようとする“人脈女”3人が登場した。ジョニー・デップなどの海外セレブと親しいモデル、不動産業など会社社長と交遊がある女優、お笑い芸人と親しいグラドルが出演したが、失礼ながら、彼女たちはいずれもドラマや雑誌の常連ではなく、知名度としては発展途上だろう。彼女たちが人脈(主に男性)から得たものは、食事をごちそうになることや、渡航費や滞在地での生活費、お小遣いまでもらえる海外旅行だと話していた。テレビで話しても差し障りがないネタに絞ったのかもしれないが、「幅広い人脈」が生み出すものとしては、ちょっとスケールが小さくないだろうか。人脈によって得られる利益ではなく、「食事や旅行程度はプレゼントしてもらえるけれど、仕事の直接的なメリットにつながるわけではない」というビジネスの厳しさが、かえって浮き彫りにされたように私には感じられた。

 このように人脈があったところで、仕事でプラスになるとは限らないというのが私の個人的な考えだが、才能に恵まれた人は、人脈をビジネス化できるようだ。「友達5000人」を豪語していたお笑い芸人・カラテカ入江慎也は、株式会社入江コネクションを設立。昨年8月に『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)に出演した際、副業の月収が350万円であり、お笑いでの収入をはるかに上回っていることを明かしていた。

■入江の「人脈」はもう通用しない?

 しかし入江は今月、「フライデー」(講談社)に、事務所である吉本興業を通さずに仲介した営業、いわゆる闇営業の相手が大規模詐欺グループであったことを報じられた。雨上がり決死隊・宮迫博之やロンドンブーツ1号2号・田村亮などの人気芸人も参加していたそうだ。入江をはじめとして全員が「反社会的集団とは知らなかった」「ギャラはもらっていない」と説明し、入江は吉本興業を解雇、宮迫らは当初は厳重注意という処分を下されていた。しかし、その後、金銭の授受があったと認められ、宮迫らも、当面の間謹慎することになった。

 芸人としての活動はできなくなっても、副業としての「イリエコネクション」があるから、大丈夫。そう考える人もいるだろう。しかし、「イリエコネクション」に価値があるのは、入江が吉本興業に所属している現役の芸人の場合ではないだろうか。ビジネスの基本は信用だが、「イリエコネクション」に仕事を頼む人は、入江が知名度のある芸人であることを信用の担保にする人もいるだろう。加えて吉本興業という大きな組織に属しているのであれば、トラブルがあったときに、そこに駆け込むこともできる。

 また、お笑いの世界は、先輩を立てるのが鉄則だというので、入江を助ける後輩が出てくるのではと思う人もいるかもしれない。が、その論理が生きるのは、先輩後輩双方が現役の時ではないだろうか。それに、先輩を常に立てるというお笑いの世界の掟から言うと、今回の騒動は「入江が相手先の素性も確かめずに、先輩に迷惑をかけた。ヘタしたら、先輩の芸人生命にかかわる事件を起こした」とみることもできるだろう。そんなトラブルメーカー入江と現役の芸人が交流を持つかと言われると、首をかしげざるを得ない。

 結局、人脈をビジネスにつなげるために必要不可欠なこととは、大企業など信用されている機関に所属し、自分もそれなりに結果を出す、つまり実力があることではないだろうか。人脈があるから成功したのではなく、それなりに成功すると人脈がついてくる、ということだと思う。「知り合い」や「友達」だからおいしい仕事が回ってくるほど、ビジネスの世界は甘くない。

 冒頭で触れた「人脈は金で買えない」発言の村上は、ポスト中居正広とも言われるMC力で、今、伸び盛りだろう。ここまでの地位を築けたのはもちろん自分の実力だが、大前提として、ジャニーズ事務所所属であることが“信用”を与えてくれていることは、疑う余地はないのではないか。

 つまり、どんなに人脈を築いたとしても、入江のように解雇になっては元も子もない。かつて興行は反社会的勢力が取り仕切ることが多く、ゆえに芸能界とはずぶずぶな関係であった。しかし、時代は変わり、コンプラインス的にそれが許されなくなっている。週刊誌の記者でなくても、スマホさえあれば、証拠の音声や画像が録れて拡散できる時代であるため、自分にとって不都合な話をもみ消すことはできない。 

 安全第一。人脈を広げることより、工事現場でよく見るあの標語を、芸能人のみなさんは今一度かみ締めた方がいいのかもしれない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

カラテカ・入江慎也、「闇営業で吉本解雇」に考える「人脈」なるものの脆弱さ

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<今回の有名人>
「人脈は金で買えないしね」関ジャニ∞・村上信五
『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系、6月24日)

 6月24日放送『月曜から夜ふかし』(日本テレビ系)で、「若い時の自分に伝えたいことランキング」を紹介していた。第1位は「外国語を学べ」、第2位は「海外旅行に行け」、第3位は「人脈を広げておけ」といった結果だった。

 同番組司会の関ジャニ∞・村上信五は「人脈を広げておけ」に同調したのだろう、「人脈は金で買えないしね」と発言していた。

 人脈とは、金で買えない貴重なものであって、ゆえに若いときから、人脈を広げるように心がけておかねばならない。推測だが、村上発言を補強すると、このような意味になるだろう。

 そういえば、かなり昔の話になるが、村上が所属するジャニーズ事務所の先輩・少年隊が一世を風靡していた頃、『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系)に出演したことがある。その際、演歌の女王・小林幸子が彼らを「ジャニーズ事務所の子は礼儀正しくて、如才ない」と感心していた。ジャンルを問わず、大御所の懐に飛び込み、かわいがってもらうのは“人脈”を広げるのに有効な手段なのかもしれない。

 一般人でも、「〇〇さんを知っている」「××さんと飲んだ」といった具合に、有力者の名前を口にする人がいるが、これも人脈というのが得難いものであると認識されているから、自慢になるのだろう。異業種交流会というものが昔からあるのも、「人脈によって成功の突破口が開ける」と思っている人が多いことを物語っているように感じる。しかし、人脈があればオールOKかというと、ちょっと違うのではないだろうか。

 5月20日放送の『女が女に怒る夜』(日本テレビ系)では、社長や著名人などと親しくなることで、利益を得ようとする“人脈女”3人が登場した。ジョニー・デップなどの海外セレブと親しいモデル、不動産業など会社社長と交遊がある女優、お笑い芸人と親しいグラドルが出演したが、失礼ながら、彼女たちはいずれもドラマや雑誌の常連ではなく、知名度としては発展途上だろう。彼女たちが人脈(主に男性)から得たものは、食事をごちそうになることや、渡航費や滞在地での生活費、お小遣いまでもらえる海外旅行だと話していた。テレビで話しても差し障りがないネタに絞ったのかもしれないが、「幅広い人脈」が生み出すものとしては、ちょっとスケールが小さくないだろうか。人脈によって得られる利益ではなく、「食事や旅行程度はプレゼントしてもらえるけれど、仕事の直接的なメリットにつながるわけではない」というビジネスの厳しさが、かえって浮き彫りにされたように私には感じられた。

 このように人脈があったところで、仕事でプラスになるとは限らないというのが私の個人的な考えだが、才能に恵まれた人は、人脈をビジネス化できるようだ。「友達5000人」を豪語していたお笑い芸人・カラテカ入江慎也は、株式会社入江コネクションを設立。昨年8月に『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)に出演した際、副業の月収が350万円であり、お笑いでの収入をはるかに上回っていることを明かしていた。

■入江の「人脈」はもう通用しない?

 しかし入江は今月、「フライデー」(講談社)に、事務所である吉本興業を通さずに仲介した営業、いわゆる闇営業の相手が大規模詐欺グループであったことを報じられた。雨上がり決死隊・宮迫博之やロンドンブーツ1号2号・田村亮などの人気芸人も参加していたそうだ。入江をはじめとして全員が「反社会的集団とは知らなかった」「ギャラはもらっていない」と説明し、入江は吉本興業を解雇、宮迫らは当初は厳重注意という処分を下されていた。しかし、その後、金銭の授受があったと認められ、宮迫らも、当面の間謹慎することになった。

 芸人としての活動はできなくなっても、副業としての「イリエコネクション」があるから、大丈夫。そう考える人もいるだろう。しかし、「イリエコネクション」に価値があるのは、入江が吉本興業に所属している現役の芸人の場合ではないだろうか。ビジネスの基本は信用だが、「イリエコネクション」に仕事を頼む人は、入江が知名度のある芸人であることを信用の担保にする人もいるだろう。加えて吉本興業という大きな組織に属しているのであれば、トラブルがあったときに、そこに駆け込むこともできる。

 また、お笑いの世界は、先輩を立てるのが鉄則だというので、入江を助ける後輩が出てくるのではと思う人もいるかもしれない。が、その論理が生きるのは、先輩後輩双方が現役の時ではないだろうか。それに、先輩を常に立てるというお笑いの世界の掟から言うと、今回の騒動は「入江が相手先の素性も確かめずに、先輩に迷惑をかけた。ヘタしたら、先輩の芸人生命にかかわる事件を起こした」とみることもできるだろう。そんなトラブルメーカー入江と現役の芸人が交流を持つかと言われると、首をかしげざるを得ない。

 結局、人脈をビジネスにつなげるために必要不可欠なこととは、大企業など信用されている機関に所属し、自分もそれなりに結果を出す、つまり実力があることではないだろうか。人脈があるから成功したのではなく、それなりに成功すると人脈がついてくる、ということだと思う。「知り合い」や「友達」だからおいしい仕事が回ってくるほど、ビジネスの世界は甘くない。

 冒頭で触れた「人脈は金で買えない」発言の村上は、ポスト中居正広とも言われるMC力で、今、伸び盛りだろう。ここまでの地位を築けたのはもちろん自分の実力だが、大前提として、ジャニーズ事務所所属であることが“信用”を与えてくれていることは、疑う余地はないのではないか。

 つまり、どんなに人脈を築いたとしても、入江のように解雇になっては元も子もない。かつて興行は反社会的勢力が取り仕切ることが多く、ゆえに芸能界とはずぶずぶな関係であった。しかし、時代は変わり、コンプラインス的にそれが許されなくなっている。週刊誌の記者でなくても、スマホさえあれば、証拠の音声や画像が録れて拡散できる時代であるため、自分にとって不都合な話をもみ消すことはできない。 

 安全第一。人脈を広げることより、工事現場でよく見るあの標語を、芸能人のみなさんは今一度かみ締めた方がいいのかもしれない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

熊田曜子、夫と義母の愚痴連発――タレントとして「プラスにならない」と感じるワケ

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<今回の有名人>
「食べるって言ってたのに」熊田曜子
(6月12日、インスタグラムより)

 芸能人を指して「あの人は、〇〇キャラ」と言うことがある。これは、その芸能人が「〇〇という役回りを背負っています」ということだろう。つまり、ある種の演技なわけだが、そうは言っても、そのキャラを、はっきり覆されるとなんとなく変な感じがするのはどうしてだろうか。

 例えば、タレントのLiLiCo。スウェーデン人の父と日本人の母のダブルで、もともとは演歌歌手。ブレークのきっかけは『王様のブランチ』(TBS系)の映画コメンテーターになったことだった。「肉食系」と公言してはばからなかったLiLiCoは、レギュラー出演中の『ノンストップ』(フジテレビ系)で、ゲストとして登場したムード歌謡グループ・純烈の小田井涼平に出会う。初対面の時から縁を感じていたというLiLiCoだが、別の番組で共演したことをきっかけに交際をはじめ、結婚。いいなと思ったら、すぐに行動するのは“肉食キャラ”にふさわしいと言えるだろう。

 しかし、結婚後のLiLiCoは変わった。夫を“主人”と呼び、『ノンストップ』によると「夫をキッチンにいれない(料理はLiLiCoの担当という意味)」「夜中2時に起きて、主人の朝ごはんを作っている」といった具合に、もはや“肉食キャラ”ではなく、梨園妻のようなキャラの変化を遂げている。それが彼女の考え方、生き方だから他人がとやかく言うことではないが、「キャラとして」考えるなら、視聴者が違和感を抱いたり、多少混乱することは否めないだろう。

 このように、キャラというのは難しい。安易に変えるのはNGだが、ずっと同じキャラでは生き残れないのもまた事実だろう。特にママタレ業界は飽和状態が続いているので、何かキャラが必要になる。

 ママタレ業界で頭ひとつ抜け出した存在と言えば、ゆうこりんこと小倉優子ではないだろうか。夫から褒められたエピソードを語るなど、愛され妻キャラだったゆうこりんだが、妊娠中に夫が自分の後輩と不倫していたことを「週刊文春」(文藝春秋)にすっぱ抜かれ、離婚を選択する。ひと昔前、離婚といえば不幸でしかなく、家庭用洗剤などファミリー向け商品のCMには出られないと考えられていた時期もあったものの、ゆうこりんは離婚後、オリコン調査の「好きなママタレ」ランキングで1位を獲得し、P&Gの柔軟剤入り洗剤「ボールド」のCMに出演するなど、高い好感度を誇ることに。それは、シングルマザーとして、子育てと仕事にまい進するというキャラが好感をもたらしたということだろう。

 このように、かつては「みっともない」「隠したい」とみなされていたことが、今は「それもあり」と受け入れられるようになっている。それをビジネスチャンスと思っているのか、単にいろんなことがユルいのか、定期的に話題になっているのが、タレント・熊田曜子ではないだろうか。

 結婚前はおバカキャラとしてバラエティに出演することもあった熊田は、現在3人の子どもを育てるママタレント。以前、子どもたち3人を児童館に連れて行ったが、「大人1名につき、子ども2名までなので入れない」という注意を受け、中に入れなかったとブログに書いて、物議を醸した。安全性確保のための規則なので、施設、熊田、どちらに非があるという話ではないだろう。しかし、児童館の名前をはっきり書くあたりに、疑問が残る。子育て施設のお粗末さは、少子化にも関わる問題なので明らかにされてしかるべきだが、児童館の名前をあげれば、ネットの時代、少数ではあっても、そちらに抗議する人がいるということは、想像がつくのではないだろうか。3児を育てる社会派ママっぽいようにも思えるが、熊田は「やられたら、やり返す」といわんばかりのトゲを持っているのではないだろうか。

 そんな熊田、今度はインスタグラムのストーリーズに「朝起きて一番にする家事が、一口も食べてもらえなかったご飯の処理」と夫に対する愚痴をアップした。児童館の抗議と同じように「食べるって言ったのに」「このパターンもう100回は経験してるけど、かなりのダメージ」といった具合で、「言われたから用意した(押しつけではない)」「1~2回のことではない」というように、自分の正当性を匂わせるかのような文章も添えている。

 そのほかにも、義母との確執(義母に食事を誘われて断ったら、義母が熊田の母に電話して、熊田の不心得をなじったり、怒りのLINEが長文で来たこと)や、夫が父の日にもかかわらず外出しようとしたが、頼んだら家にいてくれたなど、不安定な結婚生活を匂わせるものが多い。

 「結婚生活のささいないら立ちを隠さないキャラ」でいくのか、それとも、離婚のために今から自分に否がないイメージをつけようとしているのかはわからないが、どちらにしてもあまりプラスにはならないのではないだろうか。

 夫婦間のことで世間が同情してくれるとしたら、ゆうこりんのような“妊娠中の不倫”をはじめ、モデル・亜希(元夫である清原和博氏は覚せい剤取締法違反で逮捕された)のように、法に触れる案件で、100対0で夫側が悪くないと、意見が割れてバッシングの矛先が熊田に向くこともあるだろう。中途半端な揉め事はダメで、「そりゃ、夫が悪い」と10人中9人に言われるようでないと、自分のイメージだけが落ちて終わってしまう可能性がある。

 料理の件でいえば、幼い子どもが3人もいる中で、きちんと食事を準備したのにもかかわらず、必ず「メニューが悪い」「まずいから、夫が食べない」という人が出てくるだろう。義母の件も、熊田はブログで「義母に子どもを預けた」などのエピソードを書いていることから、「育児を手伝ってもらってるんだから、我慢しろ」という攻撃がないとは限らない。

 昨年4月に『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)に出演した熊田が、「夫が無断で会社をやめ、自分で仕事を始めていた」と語っていた。となると、「自営業の夫が、いつのまにか私の稼いだお金を全部使って事業に失敗した」くらいのインパクトがあるネタを放り込めないと、世間の同情を得るのは厳しいのではないか。

 芸能人が、きらびやかな世界に住む、手の届かない人物だった時代は終わり、今やいかに「あなた(一般人)と一緒」と思わせるかが人気のカギとなっているように思う。もしそうだとするならば、思わず視聴者が絶句するような不幸を引く力と、それをキャラとしてうまく見せる力が、これからの芸能界では求められるのかもしれない。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

Mattが美容家として成功しそうなワケ――叶姉妹、IKKOに通じる才能と「嫉妬買わない」戦略

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「お金のことは話しちゃいけないって、お父さんに言われてる」Matt
『ダウンタウンDX』(日本テレビ系、5月30日)

 美のエキスパートである美容家。美に詳しいことは当然だが、美容家として名をなしていくには、インパクトと滑稽さに似た「面白さ」が必要になってくるのではないだろうか。

 例えば、「25ans」(ハースト婦人画報社)の読者モデルから、世に出た叶姉妹。大きなバストとヒップという肉感的なボディーは、好き嫌いはあろうものの、インパクトがものすごかったことは間違いない。美肌のためにすっぽんを丸ごと1匹食べるという美容法は、どこかコミカルで注目を集めた。

 美容家・IKKOも同様である。ヘアメイクとしての実力は折り紙付きで、檀ふみ、余貴美子、相田翔子など女優陣から絶大な信頼を誇っているIKKOだが、美容家としてブレークするきっかけとなったのは、2006年に始まった『おネエMANS』(日本テレビ系)で、インパクトのあるキャラがウケたからだろう。

 今でこそLGBTの人たちを毎日テレビで見かけるが、当時はそういう時代ではなく、目新しさがあった。LGBTの人たちが押し付けられる偏見として、「女性より女性らしい」とか「芸術的な才能にあふれている」というものがあるが(性格や才能は個人の資質なので、性別に関係ない)、ヘアメイクとして高い技術力を誇り、超きれい好きで料理上手なIKKOは、偶然にも、このステレオタイプのおネエ像とマッチして(もしくはIKKO自身がマッチさせて)、人気を博していく。数年前、『そうだ旅(どっか)に行こう。』(テレビ東京系)に出演したIKKOに対し、共演の土田晃之が「このおじさんのどこがいいの?」とその人気を不思議がっていたが、女性にとって問題なのは性別ではなく、腕前やキャラだからではないだろうか。

 IKKOはタレント業と美容家を両立して、今も高い人気を誇っているが、IKKOとは違うアプローチで人気美容家のポジションに立てるような気がするのは、元読売巨人軍・桑田真澄氏の次男で、タレントのMattだと私は思う。

■Mattの強みとは何か?

 Mattのテレビ初出演は、17年1月の『櫻井・有吉THE夜会』(TBS系)である。ブライダルモデルをしているというMattは髪を金に染め、カラーコンタクトをつけ、顔の彫りを強調するメイクをするなど、白人に寄せたかのような装いで、インパクトは大きかった。美容に思い入れがあることは一目瞭然で、本人いわく「お小遣いはもらっていなくて、カードで支払う」「月に100万円使ってしまったこともある」とけろっとしたものだった。

 父である桑田氏と言えば、Mattとは反対に苦労人として知られている。子どもの頃、桑田氏の父が事業を興しては失敗し、家は貧乏だったという。息子の才能に気づいたのか、それともたまたまなのか、父は桑田氏をプロ野球選手にするために、小さい時から猛練習を開始する。プロ野球選手になるには体づくりも大切だが、桑田家にはおカネがない。そのため、母親は「私はおなかいっぱいなの」とウソをついて、桑田氏に肉を食べさせていたそうだ。そのせいか、桑田氏は「プロ野球選手になって、お母さんにラクをさせてあげたい、家を建ててあげたい」という夢を持っており、巨人軍入団早々、母親に家をプレゼントしたという。しかし、その桑田氏の息子は親のお金で贅沢三昧。ネットでは「桑田は子育てに失敗した」という書き込みも見られた。

 最近はMattをテレビで見ることがなくなっていたが、5月30日放送の『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)に半年ぶりに出演し、久しぶりにお茶の間に姿を現した。ダウンタウン・松本人志は、出演者の中では群を抜いて肌の白いMattを「外国人の子どもが遊ぶおもちゃ」、勝俣州和は「トイ・ストーリーに出てくる」と、やんわり人工的だと描写するが(余談だが、叶姉妹も出始めの頃は人工的と言われていた)、当のMattはネガティブにとらえた様子はない。整形については否定しつつ、今後も自分の目指す美に向かって、ひた走ることを宣言したのだ。

 Mattの強み、それは豊富な資金力による体験的な美容が語れることではないだろうか。充電期間、Mattが試したのは、まつエク(450本)、ケミカルピーリング、エレクトロポーション、ビタミン注射、白玉点滴、ヒーライト、ジェルネイルだそうだ。運動してダイエットをするというような自力美容ではなく、Matt美容は医療の力を積極的に借りるものが多い。自費診療にあたるものが多いので、ある程度の資金力がなくては無理だ。タレントとしてのMattの収入ではまだこれらの美容代をねん出できるかどうか疑問ではあり、桑田氏というスポンサーがいればこそできる技だろう。「お金のことは話しちゃいけないって、お父さんに言われてる」と、Mattは美容代について直接的な金額を明かさなかったが、「親のお金で贅沢している」という嫉妬を買わないために、有効な対策と言えるだろう。

 一般人の中にも、これらに挑戦したいという気持ちを持つ人は多いだろうが、値段が高いので、そう簡単に手は出せないし、だからこそ効果のあるものだけに挑戦したいと思うのではないか。その場合、Mattのように、実際に試して効果を見せられる人というのは、重宝されるだろう。IKKOは化粧品や美容法は語っても、こういった美容医療についてはコメントしないので、領域がかぶらないのもよい。

 さらにMattは、コミカルな部分も持ち合わせている。美容に気を使うわりには、朝から唐揚げ15個とご飯を食べ(サラダなどの野菜は食べない)、食後のデザートとしてチョコレートをたっぷり塗ったレーズンパンを食すなど、脂質・糖質が多めの食生活を送っている。あれだけ肌に気を使いながら、食生活はいいんかい! とつっこめる部分は、特に若い世代にコミカルに映るのではないか。

 また、Mattが最高に女性向けだなと思うのが、スピリチュアルが好きなところである。インスタグラムのストーリーズでは、“波動”について触れている。「地球と宇宙には、約1週間の時差がある」「自分が1ミリでも思ったことは大体1週間後に結果として出てきて、あなたにたくさんのミッションを与え、そこに人間は対応しています」といった具合に、もともとスピリチュアルが好きな人、もしくは悩みを抱えている人が惹きつけられるであろう内容を公開しているのだ。今後、Mattがタレントとして露出が増えれば、この波動説を証明したとされ、ファンはもとより、スピリチュアル界隈からのオファーも増えるだろう。

 二世タレントは多いが、芸能界は厳しいので、親の名前を抜きにして活躍できている人というのは、ごく少数である。Mattが二世チームのトップに立つ日は、案外遠くない気がする。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

Mattが美容家として成功しそうなワケ――叶姉妹、IKKOに通じる才能と「嫉妬買わない」戦略

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「お金のことは話しちゃいけないって、お父さんに言われてる」Matt
『ダウンタウンDX』(日本テレビ系、5月30日)

 美のエキスパートである美容家。美に詳しいことは当然だが、美容家として名をなしていくには、インパクトと滑稽さに似た「面白さ」が必要になってくるのではないだろうか。

 例えば、「25ans」(ハースト婦人画報社)の読者モデルから、世に出た叶姉妹。大きなバストとヒップという肉感的なボディーは、好き嫌いはあろうものの、インパクトがものすごかったことは間違いない。美肌のためにすっぽんを丸ごと1匹食べるという美容法は、どこかコミカルで注目を集めた。

 美容家・IKKOも同様である。ヘアメイクとしての実力は折り紙付きで、檀ふみ、余貴美子、相田翔子など女優陣から絶大な信頼を誇っているIKKOだが、美容家としてブレークするきっかけとなったのは、2006年に始まった『おネエMANS』(日本テレビ系)で、インパクトのあるキャラがウケたからだろう。

 今でこそLGBTの人たちを毎日テレビで見かけるが、当時はそういう時代ではなく、目新しさがあった。LGBTの人たちが押し付けられる偏見として、「女性より女性らしい」とか「芸術的な才能にあふれている」というものがあるが(性格や才能は個人の資質なので、性別に関係ない)、ヘアメイクとして高い技術力を誇り、超きれい好きで料理上手なIKKOは、偶然にも、このステレオタイプのおネエ像とマッチして(もしくはIKKO自身がマッチさせて)、人気を博していく。数年前、『そうだ旅(どっか)に行こう。』(テレビ東京系)に出演したIKKOに対し、共演の土田晃之が「このおじさんのどこがいいの?」とその人気を不思議がっていたが、女性にとって問題なのは性別ではなく、腕前やキャラだからではないだろうか。

 IKKOはタレント業と美容家を両立して、今も高い人気を誇っているが、IKKOとは違うアプローチで人気美容家のポジションに立てるような気がするのは、元読売巨人軍・桑田真澄氏の次男で、タレントのMattだと私は思う。

■Mattの強みとは何か?

 Mattのテレビ初出演は、17年1月の『櫻井・有吉THE夜会』(TBS系)である。ブライダルモデルをしているというMattは髪を金に染め、カラーコンタクトをつけ、顔の彫りを強調するメイクをするなど、白人に寄せたかのような装いで、インパクトは大きかった。美容に思い入れがあることは一目瞭然で、本人いわく「お小遣いはもらっていなくて、カードで支払う」「月に100万円使ってしまったこともある」とけろっとしたものだった。

 父である桑田氏と言えば、Mattとは反対に苦労人として知られている。子どもの頃、桑田氏の父が事業を興しては失敗し、家は貧乏だったという。息子の才能に気づいたのか、それともたまたまなのか、父は桑田氏をプロ野球選手にするために、小さい時から猛練習を開始する。プロ野球選手になるには体づくりも大切だが、桑田家にはおカネがない。そのため、母親は「私はおなかいっぱいなの」とウソをついて、桑田氏に肉を食べさせていたそうだ。そのせいか、桑田氏は「プロ野球選手になって、お母さんにラクをさせてあげたい、家を建ててあげたい」という夢を持っており、巨人軍入団早々、母親に家をプレゼントしたという。しかし、その桑田氏の息子は親のお金で贅沢三昧。ネットでは「桑田は子育てに失敗した」という書き込みも見られた。

 最近はMattをテレビで見ることがなくなっていたが、5月30日放送の『ダウンタウンDX』(日本テレビ系)に半年ぶりに出演し、久しぶりにお茶の間に姿を現した。ダウンタウン・松本人志は、出演者の中では群を抜いて肌の白いMattを「外国人の子どもが遊ぶおもちゃ」、勝俣州和は「トイ・ストーリーに出てくる」と、やんわり人工的だと描写するが(余談だが、叶姉妹も出始めの頃は人工的と言われていた)、当のMattはネガティブにとらえた様子はない。整形については否定しつつ、今後も自分の目指す美に向かって、ひた走ることを宣言したのだ。

 Mattの強み、それは豊富な資金力による体験的な美容が語れることではないだろうか。充電期間、Mattが試したのは、まつエク(450本)、ケミカルピーリング、エレクトロポーション、ビタミン注射、白玉点滴、ヒーライト、ジェルネイルだそうだ。運動してダイエットをするというような自力美容ではなく、Matt美容は医療の力を積極的に借りるものが多い。自費診療にあたるものが多いので、ある程度の資金力がなくては無理だ。タレントとしてのMattの収入ではまだこれらの美容代をねん出できるかどうか疑問ではあり、桑田氏というスポンサーがいればこそできる技だろう。「お金のことは話しちゃいけないって、お父さんに言われてる」と、Mattは美容代について直接的な金額を明かさなかったが、「親のお金で贅沢している」という嫉妬を買わないために、有効な対策と言えるだろう。

 一般人の中にも、これらに挑戦したいという気持ちを持つ人は多いだろうが、値段が高いので、そう簡単に手は出せないし、だからこそ効果のあるものだけに挑戦したいと思うのではないか。その場合、Mattのように、実際に試して効果を見せられる人というのは、重宝されるだろう。IKKOは化粧品や美容法は語っても、こういった美容医療についてはコメントしないので、領域がかぶらないのもよい。

 さらにMattは、コミカルな部分も持ち合わせている。美容に気を使うわりには、朝から唐揚げ15個とご飯を食べ(サラダなどの野菜は食べない)、食後のデザートとしてチョコレートをたっぷり塗ったレーズンパンを食すなど、脂質・糖質が多めの食生活を送っている。あれだけ肌に気を使いながら、食生活はいいんかい! とつっこめる部分は、特に若い世代にコミカルに映るのではないか。

 また、Mattが最高に女性向けだなと思うのが、スピリチュアルが好きなところである。インスタグラムのストーリーズでは、“波動”について触れている。「地球と宇宙には、約1週間の時差がある」「自分が1ミリでも思ったことは大体1週間後に結果として出てきて、あなたにたくさんのミッションを与え、そこに人間は対応しています」といった具合に、もともとスピリチュアルが好きな人、もしくは悩みを抱えている人が惹きつけられるであろう内容を公開しているのだ。今後、Mattがタレントとして露出が増えれば、この波動説を証明したとされ、ファンはもとより、スピリチュアル界隈からのオファーも増えるだろう。

 二世タレントは多いが、芸能界は厳しいので、親の名前を抜きにして活躍できている人というのは、ごく少数である。Mattが二世チームのトップに立つ日は、案外遠くない気がする。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。