羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「私を誰よりもわかってくれる人」高樹沙耶
(「デイリー新潮」2020年11月3日)
「恋愛体質」という言葉がある。20年くらい前の女性誌で頻繁に使われていた言葉で、正確に定義されてはいなかったが、「すぐ恋をしてしまう人」のような意味で使われていた。今と違って、「恋をしていないと、干からびる」「クリスマスに恋人がいないのは、寂しい女」と刷り込まれていた時代だったこともあり、女性たちは躍起になって、自分を「恋愛体質」に導こうとしていた。
具体的な方法としては、「一人でバーに飲みに行くこと」とか「ゆっくり話すこと」などが挙げられていた。確かに一人でいたほうが男性に声をかけられる率は上がるのかもしれないし、自分が優位に立ちたい男性は、ゆっくり話す女性……もっと言うと、積極的に自己主張をしない女性を好むかもしれない。しかし、そういう男性を女性側が好きになるかというと別の問題なので、「恋愛体質」になる方法、もしくは「恋愛体質」の人の条件としては不十分ではないだろうか。
恋愛体質の人の条件とは、一体どのようなものなのか。そう考えたときに、私の頭に真っ先に浮かぶ芸能人、それが元女優・高樹沙耶である。彼女は常にオトコの存在によって人生の選択を行い、新しいオトコができるたびに、方向転換をしてきた女性のように見え、それこそが恋愛体質の条件を体現していると思う。
『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)で、彼女の半生がまとめられていたことがある。映画『沙耶のいる透視図』で主演に抜てきされた高樹。フルヌードになることが条件だったが、高樹はためらうことなく、そのチャンスをつかんだ。そこから順調に女優として活躍を続け、人気ドラマに多数出演する。時代はバブル真っ只中、高樹はとてつもないカネを持つバブル紳士と飲み歩き、贅沢な生活を送る。遊んでいるときは楽しかったけれど、家に帰るとさみしかったと話していた。
女優のイメージが強い高樹だが、実は作詞家として活動していた時期もあったことをご存じだろうか。『はじめてのおつかい』(日本テレビ系)の挿入歌として知られる「しょげないでよBaby」は高樹の作詞で、90年代前半には、ほかの人気アーティストにも作詞提供をしている。彼女は女優だけでなく、作詞家としての才能もあるようだ。
そんな音楽業界のつながりで知り合ったかどうかは不明だが、高樹は1998年、シンガーソングライターの中西圭三と結婚するも、2000年に離婚。その後、ハワイに渡る。そこで知り合った婚約者である水中カメラマンの手ほどきを受け、フリーダイビングの日本大会で当時の日本新記録を達成、ハワイで行われたフリーダイビング大会では総合2位を記録し、銀メダルを獲得している。当時の高樹に密着した番組を見たことがあるが、フリーダイビングは深い水底に潜るため、呼吸ができなくなる不安と闘わなくてはならない。潜る前の高樹に、男性が「絶対に大丈夫」と暗示をかけるように声をかけていたのが印象的だった。
結局、この二人は結婚せずに、高樹は日本に戻って、まず千葉県・南房総で自給自足の生活を始める。その後、11年には、沖縄県・石垣に移住していたことが週刊誌に報じられ、16年には医療大麻の合法化を訴えて、「第24回参議院議員選挙」に出馬するも落選した。
高樹はこの間、「大麻草検証委員会」の幹事を務めていることを明らかにしていた。コンプライアンス遵守の流れが高まるテレビの世界で、現行、法律で禁止されている大麻を推す女優は、危険な存在でしかない。テレビの仕事は減り、12年には事務所との契約も解除となった。16年10月7日放送の『爆報!THEフライデー!』(TBS系)では、高樹は男性4人と共同生活を送りながら、コテージを経営していると話していたが、この男性のうちの一人が「大麻草検証委員会」の代表で、高樹との交際がうわさされていた人物である。そして、テレビ放映から間もない10月25日、高樹は大麻取締法違反の疑いで、現行犯逮捕されてしまう。執行猶予3年の有罪判決を受けたが、その後も大麻の合法化に向けてTwitterを中心に活動していた。
◎「もったいない」という考え方をしない高樹沙耶
そんな高樹が先日10月6日、突然「この場から去ります」とツイートして、発信をやめた。
ニュースサイト「デイリー新潮」によると、高樹は大麻を合法化したいという気持ちに変わりはないようだ。アメリカやカナダの一部の州で大麻が合法化されたことを挙げ、「そんな世界的な流れのなかで、日本だけが取り残されたままでいる。テレビなどが平然と、大麻は覚せい剤と同じだと“ウソ”の情報を伝え続けているんです」と語っている。それでは、なぜ活動をストップさせることにしたかというと、「著名人で、ここまで声高に叫び続けているのは、私くらいじゃないですか。でも、いくら発信し続けても、わかってくれない。国が“ダメ、絶対ダメ”としている以上、メディアもそれに倣うし、進まないんだって気づいたとき、もう矢面に立ちたくないって思うようになってしまって」とのことだ。
もし、高樹が本当に大麻を合法化したいのなら、やみくもに他国の例を引っ張ってくるのではなく、大麻が本当に悪いものなのかを、自ら科学的に検証する姿勢が求められるように思うが、それはさておき、高樹は藤井風の「帰ろう」という歌を聞いて、気持ちが変わったという。「憎しみあいの果てに何が生まれる わたし、わたしが先に忘れよう」という歌詞に心打たれて、高樹はツイートをやめたそうだ。
そして、高樹の傍らには新たなオトコがいる。高樹が逮捕されたとき、これまで親切にしてくれた石垣島の人たちもよそよそしくなった。高樹はメンタルのバランスを崩して、精神科に通院するようになるが、その時に知り合った男性が親身になって励ましてくれたという。その男性は「私を誰よりもわかってくれる人」だそうで、すでに結婚して2年が経過しているとのこと。もちろん「大麻草検証委員会」代表の男性との関係は終わっている。
そんな高樹を「男にのめりこむタイプ」と見る人もいるだろうし、実際そうだと思うが、高樹の特筆すべき点は「激しくのめりこむが、終わった後の未練や後腐れがまったくないところ」ではないだろうか。
例えば、フリーダイビングを恋人の影響で始めたとしても、日本新記録を達成するとは相当センスがあったのだろう。その道を究めることもできたはずなのに、高樹は男性と別れたら、競技としてのフリーダイビングをやめてしまっている。同様に、大麻合法化に向けて活動するため、人気女優の座と経済的な基盤を手放してしまったが、そこを真剣に悔いているようにも見えない。新しいオトコが見つかったら、あれだけアツくなっていた大麻に関するツイートもあっさりやめてしまった。自分のやってきたことを大事に思うほど、“過去”は捨てにくくなるものだと思うが、高樹は物事に真剣に取り組むことはあっても、「もったいない」という考え方をしないし、忘却力に長けているといえる。
「サンクコスト効果」という言葉をご存じだろうか。投資した金額やかけた時間を惜しむあまり、判断を誤ってしまう心理状態のことを指す。恋愛にたとえると「恋人に誕生日プレゼントをあげたばかりだから(別れるのはソン)」「〇年も付き合ったんだから(別れたくない)」というような考え方がそれにあたるだろうが、思うに高樹はこういう未練というかケチくささみたいなものと無縁なのではないか。
冒頭で私は、「恋愛体質の人といえば、高樹沙耶」と述べたが、こうした彼女の特徴こそ、「恋愛体質」と呼ばれる人の条件だと思うのだ。日頃から後先考えずにはいられない人、目先の利益を気にしてしまう人は、「恋愛体質」なるものを目指しても無理だと思うし、目指す必要もないだろう。
「デイリー新潮」で、「うちの墓に入れば。最後まで、婆さんになっても面倒見るよ」と夫に言われたと高樹は明かしていたが、今その言葉を受けて「うれしい」と思うことと、結婚生活が続くかは別の話である。今の夫の好きなものに染まり、いっぱしの業績をあげ、その恋が終わればすっぱりやめる。そんな“男捨離”を繰り返していくように思えてならない。