『さすらい温泉 遠藤憲一』しずちゃんの代打で漫才披露! 天津・木村が相方役を好演

 遠藤憲一が俳優を引退する決意で、派遣の仲居として各地の温泉で働いている。そんな設定のちょっとだけドキュメンタリー風味なドラマ『さすらい温泉 遠藤憲一』(テレビ東京系)。

 第4話となる今回は、南海キャンディーズ・しずちゃんと天津・木村の「新コンビ」が登場、我らが遠藤「健さん」も漫才を披露してくれました。

(前回までのレビューはこちらから)

 

■愛犬家・遠藤憲一

 今回も遠藤の30年来の友人(伊藤さん)のインタビューからスタート。「彼(遠藤)の本性に迫るべく」敢行してるインタビューらしいのだが、今回はずっと遠藤の飼っていたマルチーズの話。「引退」や「俳優」からどんどん遠ざかってゆく話題。

 後ほど温泉宿で卓球に興じる遠藤に、この亡くなった犬の話題を振ると明らかに動揺し始め、何かを振り切るように力み過ぎのスマッシュを鬼の形相で連発。

 引退の真相はいまだ謎だが、とりあえず彼がかなりの愛犬家だということだけはわかった。

 

■『千と千尋』のモデルとウワサの旅館

 今回、遠藤改め中井田健一(派遣中居業の時の名前)、通称・健さんが訪れたのは、長野県の渋温泉。

「厄除巡浴九湯めぐり」という9つの外湯巡りが人気の歴史ある温泉。奈良時代に発見され、戦国の世には、前回の山梨・下部温泉と同じく武田信玄の隠し湯になっていたという。

 健さんが今回働く宿・金具屋は、あの『千と千尋の神隠し』の舞台の参考になっているとの説もある見事な木造4階建て。

 変わった名前だと思ったらどうやら元が鍛冶屋で、温泉が出たため鞍替えしたということらしい。

 3つの名物風呂と並んでこの宿の売りは、登録有形文化財に指定されている130畳の大広間・飛天の間。昔は芝居小屋としても使われていたというこの舞台に地方営業として出演するため、ある芸人がやってくる。

 いまいち芽の出ない漫才コンビ・ワンワンパニックだ。

 遠藤のペットのインタビューからの流れから考えると、実に悪意のあるネーミングである。

 ちなみにファミコンカセット『オバケのQ太郎 ワンワンパニック』から取ったのかは、明らかにされなかった。

 

■ギスギスするお笑いコンビ

 しずちゃん演じる石原聡美は、舞台以外でも芸人らしく笑いを取ろうといじってくる相方のヒロト(天津・木村卓寛)に嫌気が差しており、支配人や健さんらの前でも、その不快感を隠そうとしない。

「こいつね、こんなブサイクな顔してますけど石原聡美って名前なんですよ? 聡明で美しいって書く……って、どこがやねん!」

「……(無視)」

 売れる気満々のヒロトに対し、役割を放棄し、無言を貫く聡美のギクシャクぶりが見るに耐えない。周囲が気を使うパターン。

 ヒロトは隙あらば売れようと「種」を巻き続けるタイプ。

 そしておそらく聡美は少なくとも舞台以外では割り切って「芸」を見せようとしないタイプ。

 どちらも間違いではないのだろうが、現時点では聡美の不満が燻って着火しかけてるのがわかる。

 さらに聡美には溺愛する男がおり、芸人を辞めて男と一緒になるつもりだという。

 結論から言うと、この彼氏は聡美を金ヅルとして利用していただけなのだが、電話で男に金を無心されてる姿を見てしまった健さんは、いきなり聡美に金を握らせる(おそらく1~2万円)。介入するスピードが光のように速い。

 営業のステージをすっぽかし、こっそり帰ろうとする聡美を待ち伏せし、バカを装って外湯めぐりに連れ出す健さん。聞き上手の健さんに心を開く聡美。

 いつも思うのだが、健さんはこういうとき、仲居の仕事を完全に放棄している。

 この日も夕方まで8つもの外湯を一緒に巡っており、やりたい放題。うらやましい。

 しかし、結局男の元へと去った聡美の代わりにヒロトと営業の舞台に立つ健さん。

■今回、四次元トランクから出てきたものは?

 なんでも出てくる健さんの「四次元トランク」から、今回は聡美と全く同じ舞台衣装(髪留めや蝶ネクタイまで)が。

 あらかじめ用意していたわけがあるはずないのだが、それでも出てくる。この番組唯一のファンタジー要素。

 今回は目的の服を探しているとき、トランクの中からテディベアらしきものや草鞋らしきものが飛び出しており、この「関係ない余計なもの」を見つけるのも楽しい。

 

■健さんの初漫才

 女装して漫才を行う健さん。

 関係ない枕からの「あーー結婚したい!」「突然やな!」。ネタへの入り方がよくある導入で笑ってしまった。

 細かくは省くが、この漫才シーンはしっかりネタ合わせして、舞台さながらに「ネタ」として披露したのだろう。

 荒いながらも新鮮なグルーブ感が出ていた。

 そして、イマイチ受けなくなってきた後半、帰ったはずの聡美が戻ってくる。

 男を振って吹っ切れたからなのか、健さんとの話で初心を思い出したからなのか、前のめりで大爆笑をとる聡美。

 だが、舞台を降りると恩人の健さんの姿はどこにもない。

「貴女の夢の足かせになっちゃいけない」と、聡美の「想い」が膨らむ前に身を引いたのだ。

 惚れさすだけ惚れさせて、置いていなくなる、西部劇のような美学。

 宿から出てきた聡美が大声で叫んだ「健さーーーん!」の声が「シェーーーン、カムバーーク!」みたいに聞こえた。

 仕事の途中で挨拶もなく派遣先からいなくなることになるが、そんなことはどうでもいいのだ。渡り鳥のように健さんは次の温泉に向かう。社会人失格なその気まぐれっぷりは、まさに「さすらい」。

 

■天津・木村の巧さ

 2006年に公開された映画『フラガール』以降、役者としても評価されているしずちゃんももちろんよかったが、天津・木村の「いかにもいそうな関西の若手漫才師のツッコミ」役もとてもよかった。

 相方との開きかけた距離を感じながらも、マネジャーもついてこない現場でマネジャー的な仕事もこなしつつ、割り切ったかのように相方の分まで腐らず周りに媚を売る。

 出番は決して多くないのだが、メインの邪魔をしない存在感で、的確に芝居を締めた。

 終わった後、爆笑だったことを支配人に褒められているときの、喜びながらも心の底からは喜んでいない、どこか醒めているような半・作り笑顔は、おそらく普段からしているのだろう、なんとも言えない味わいがあった。

 境目が薄れつつあるこのご時世、こんな分類に意味はないのかもしれないが、それでもコント師以上に漫才師は普段から素の部分まで微妙に「演じて」いるのだろう。そんな風に知ったかぶりたくなるくらい、自然な芝居だった。

 そして、ドラマ『火花』のときの井下好井・好井、とろサーモン・村田もそうだったが、ネタ中、片方が「本職」だと急造のコンビでもネタが締まる。

 面白い面白くない以前の、漫才として成り立ってる空気を作り出せるのが、プロならではの技術だ。

 今回の木村も、同じプロであるしずちゃん相手のときはともかく、「素人」である遠藤を、さりげなくフォロー、誘導しながら漫才として成り立たせていた。

 ただ台本のネタをやるだけでなく、観客へ見やすく橋渡しをし、呼吸をするように見所を整えながら、自然に話してるように話を運ぶのは、場数や経験がものをいうはずだ。

 木村が隙間を埋めたり諸々を担ってくれたので、急造のコンビの割に遠藤もやりやすかったのではないだろうか。

 途中から(演出的に)、意味なくエロ詩吟をやらされてしまうのでは? と、勝手にハラハラしながら見ていたが、そんな野暮なこともさせられることなく、無事役目を全うしていたのでよかったです。

 やってても、それはそれで見たかったけど。

 さて次回は法師温泉。オープニングでも使われてるあの名湯が登場。見ましょう。
(文=柿田太郎)

 

『さすらい温泉 遠藤憲一』旅情とエロス……久しぶりに地上波で女性の“生尻”を見た!

 遠藤憲一が俳優を引退する決意で、派遣の仲居として各地の温泉で働いている。そんな設定のちょっとだけドキュメンタリー風味なドラマ『さすらい温泉 遠藤憲一』(テレビ東京系)。

 第3話となる今回は、人気が落ちることを恐れ、仮病で休業中のトップアイドルのために健さんこと中井田健一(遠藤)が奮闘する。なんでも出てくるトランクから、今回もあり得ないサイズのモノが出てきます。

(前回までのレビューはこちらから)

 

■遠藤の友人が今回も登場

 今回も前回と同様、冒頭のインタビューでリアル(だと思われる)な友人・知人が普段の遠藤について語っている。

「(役者は)天職ではない」

「(遠藤は)そんなに器用ではない」

 のっけから営業妨害ではないかと思えるほどのコメントを叩きつける、遠慮ない素人たち。

 だが「台本を人の3倍(10倍)読む」など、非常に努力家な面も語られた。

 普段頑張りすぎている分、今回「風に当たってる」のではないかとの見立ても。

 いわゆるフェイクドキュメンタリーなのだが、引退とかの「設定」はともかく、知人らの遠藤に対する発言は本物だろう(そうあってほしい)。

 

■ビシバシステムに見えなくもない遠藤

 そんな健さんが今回訪れたのは山梨の下部温泉で、かの武田信玄の隠し湯とされる場所。

 さらにここは、全国に21カ所しかない「国民保険温泉地」の一つ。調べてみると、まず温泉として効能が折紙付となる「国民保養温泉地」というくくりがあり、その中でも医師の協力を得て温泉の保健的利用を促進することが期待できる条件を備えた温泉地を「国民保険温泉地」と呼ぶらしい。有名どころだと、大分・湯布院温泉や奈良の十津川温泉郷などもこれに当たる。

 そして今回派遣された宿は大市館・裕貴屋。明治8年創業で木造3階建ての建物(昭和11年建設)は、登録有形文化財に認定されているとのことで、温泉地に溶け込みながらも控えめな格式を感じる。

 ちなみに宿の支配人を住田隆が演じており、目のぎょろりとした遠藤と並ぶと初代ビシバシステムのように見えなくもない。住田の初代の相方は緋田康人(当時の名は西田康人)。ドラマ『半沢直樹』(TBS系)で日本中をムカつかせたあの「小木曽」といえば、わかる人も多いだろう。

 

■乃木坂46のヒット曲を作曲した人が劇中曲を

 さっそく働き出した健さんは、橋から川を見つめる宿泊客を勝手に自殺志願者だと思い込み、救助。それが、なんとあの人気アイドルグループ神田川55(KDG55)のセンター・大賀みな(大場美奈・SKE48)だった。無期限休養中の“みなるん”は、負傷した足の治療で湯治に来ているらしいのだが、どうやら人気投票でセンターから陥落しそうなのが怖くて、引退覚悟で逃げてきているのが本当のところらしい。

 部屋まで上がりこんで飯を食わそうとするお節介な健さんを、当初はうざがっていたみなるんだが、自分のために振り付けまで覚えようとしてる熱意にほだされ、心を開きかける。

 この劇中曲を作ったのは、坂道グループの曲も手掛けている小田切大(乃木坂46「おいでシャンプー」や欅坂46「302号室」作曲など)、ダンスの振り付けはNGT48の振り付けを手がけたこともある富田彩(監督・後藤庸介のツイッター情報)。

 同じテレ東の深夜ドラマ『忘却のサチコ』でもそうだったが、劇中の使い捨てのような架空の曲がちゃんと作られていると、何か誠意を感じる。

 

■国民的アイドルのはずなのに……

 面白かったのはネットでウワサを聞きつけ集まってきたファンたちと、みなるんの距離感が全然「国民的アイドル」のそれではなかったこと。

「いっつもいっつもなんなの?」「握手会のときだって何回もしつこく来るし!」と、集まって来たファンたちをひとかたまりに敵と見なし、ブチ切れるみなるんも凄いが、「なんだよそれ……! みなるんをセンターにするために、幾らつぎ込んだと思ってるんだよ!」「そうだそうだ」「僕たちがいなけりゃ、とっくにセンター取られてるよ?」「そうだそうだ」と、負けじと本音をぶちまけるファンも凄い。

 ネットで匿名をいいことに本音をさらけ出す人は多くいるかもしれないが、白昼ファンが本人を取り囲んで文句を浴びせている様子は、荒れた地下アイドルの現場のよう。

 売れている「国民的アイドル」を取り囲む人の輪にライト層がまったくいないのが違和感の原因だと思うが、「人気」を表現するのは意外と難しい。

■武田信玄の鎧まで持参してる健さん

 そして再度心を閉ざしかけたみなるんを元気付けるため、恒例の健さん変装タイム。今回、古めかしく、さほど大きくもないトランクから出てきたのは、なんと武田信玄を思わせる鎧兜と衣類一式。腰には刀まで装着していたから、それも入っていたのだろう。もう絶対に収まる寸法ではないのだが、一体トランク内はどんな宇宙が広がっているのか。

 例によって、入っている他の服を撒き散らしながらトランク内を探すシーンでも、途中サンタの衣装らしきものをほっぽり投げていた。みなるんの薄着の私服から考えるに季節は夏前後だろうに、冬物までも押さえているのはさすがだ、というか怖い。

 怖いといえば、夜中に旅館内を鎧を着た男がうろついてるのに平然と後を追っかけるみなるんも怖い。

 普通に考えて超常現象なはずだし、そうじゃなかったとしても、かなり不審者だし、どっちにしろ、かなり怖いはずなのに。ファンへの対応といい、度胸が凄い。

 そして、鎧武者を追いかけていくと、そこにはオタ仲間らしき数人とサイリウムを両手にオタ芸(サイリウムダンス)をする健さんが。おそらく早着替えで鎧を脱いだのだろうが、たかだかこのためだけに鎧を着てまでみなるんを導くという発想が凄い。

 この健さんの熱意が届いたのか、みなるんも本域で踊り出し、アイドルとしてやっていこうという気持ちを取り戻すのだが、この時のみなるんのダンスが普通にかっこいい。ここだけで終わらせるのももったいないから、どこかで披露してしっかり成仏させてあげてほしい。

 

■フェイクドキュメンタリーという設定は後付け?

 ちなみに、みなるんはいわば俳優・遠藤憲一の同業者にあたるわけだが、どちらもお互いのことを知らなかったし、「えーー? まさか遠藤憲一さん!?」的なカタルシスも最後までない。

 フェイクドキュメンタリーとして見せようとしながらも、メーンのドラマ本編でまったく「遠藤憲一」的要素が入らないのは、あくまで流れ者の仲居ドラマとして撮った完全なフィクションに、何か事情があって後から頭とお尻にドキュメンタリー部分を付け足したのだろうか?

 そう思ってしまうくらい「ドキュメンタリー」部分と「ドラマ・フィクション」部分が断絶している。今後、種明かしがあるのだろうか?

 

■説明するほどでもない宿の情報を疑似体験

 今回も、「良さげな抹茶が出てくる」とか「ロースルロイスで送迎」とか「マシュマロを焼いて食べられる」とか(食べ放題らしく、ゆで卵やポップコーンも)、ドラマの中で実在する旅館の情報がさりげなく差し込まれており、行ったこともないのに見ているだけで旧知の宿に思えてくる。

 温泉(旅館)の贅沢なプロモーションビデオとして楽しむのも正解なのかもしれない。

 今回は女性の入浴シーンが踏み込んでいて、成宮潤というセクシー系の女優は、ぼかしていたとはいえ生尻まで披露していた。今や地上波ではなかなか見られなくなったお色気シーン。

 旅情だけでなく、そんな部分でも昭和を味わせてくれた。

 次回は南海キャンディーズのしずちゃんがマドンナで登場します。面白そう。
(文=柿田太郎)

 

『さすらい温泉 遠藤憲一』旅情とエロス……久しぶりに地上波で女性の“生尻”を見た!

 遠藤憲一が俳優を引退する決意で、派遣の仲居として各地の温泉で働いている。そんな設定のちょっとだけドキュメンタリー風味なドラマ『さすらい温泉 遠藤憲一』(テレビ東京系)。

 第3話となる今回は、人気が落ちることを恐れ、仮病で休業中のトップアイドルのために健さんこと中井田健一(遠藤)が奮闘する。なんでも出てくるトランクから、今回もあり得ないサイズのモノが出てきます。

(前回までのレビューはこちらから)

 

■遠藤の友人が今回も登場

 今回も前回と同様、冒頭のインタビューでリアル(だと思われる)な友人・知人が普段の遠藤について語っている。

「(役者は)天職ではない」

「(遠藤は)そんなに器用ではない」

 のっけから営業妨害ではないかと思えるほどのコメントを叩きつける、遠慮ない素人たち。

 だが「台本を人の3倍(10倍)読む」など、非常に努力家な面も語られた。

 普段頑張りすぎている分、今回「風に当たってる」のではないかとの見立ても。

 いわゆるフェイクドキュメンタリーなのだが、引退とかの「設定」はともかく、知人らの遠藤に対する発言は本物だろう(そうあってほしい)。

 

■ビシバシステムに見えなくもない遠藤

 そんな健さんが今回訪れたのは山梨の下部温泉で、かの武田信玄の隠し湯とされる場所。

 さらにここは、全国に21カ所しかない「国民保険温泉地」の一つ。調べてみると、まず温泉として効能が折紙付となる「国民保養温泉地」というくくりがあり、その中でも医師の協力を得て温泉の保健的利用を促進することが期待できる条件を備えた温泉地を「国民保険温泉地」と呼ぶらしい。有名どころだと、大分・湯布院温泉や奈良の十津川温泉郷などもこれに当たる。

 そして今回派遣された宿は大市館・裕貴屋。明治8年創業で木造3階建ての建物(昭和11年建設)は、登録有形文化財に認定されているとのことで、温泉地に溶け込みながらも控えめな格式を感じる。

 ちなみに宿の支配人を住田隆が演じており、目のぎょろりとした遠藤と並ぶと初代ビシバシステムのように見えなくもない。住田の初代の相方は緋田康人(当時の名は西田康人)。ドラマ『半沢直樹』(TBS系)で日本中をムカつかせたあの「小木曽」といえば、わかる人も多いだろう。

 

■乃木坂46のヒット曲を作曲した人が劇中曲を

 さっそく働き出した健さんは、橋から川を見つめる宿泊客を勝手に自殺志願者だと思い込み、救助。それが、なんとあの人気アイドルグループ神田川55(KDG55)のセンター・大賀みな(大場美奈・SKE48)だった。無期限休養中の“みなるん”は、負傷した足の治療で湯治に来ているらしいのだが、どうやら人気投票でセンターから陥落しそうなのが怖くて、引退覚悟で逃げてきているのが本当のところらしい。

 部屋まで上がりこんで飯を食わそうとするお節介な健さんを、当初はうざがっていたみなるんだが、自分のために振り付けまで覚えようとしてる熱意にほだされ、心を開きかける。

 この劇中曲を作ったのは、坂道グループの曲も手掛けている小田切大(乃木坂46「おいでシャンプー」や欅坂46「302号室」作曲など)、ダンスの振り付けはNGT48の振り付けを手がけたこともある富田彩(監督・後藤庸介のツイッター情報)。

 同じテレ東の深夜ドラマ『忘却のサチコ』でもそうだったが、劇中の使い捨てのような架空の曲がちゃんと作られていると、何か誠意を感じる。

 

■国民的アイドルのはずなのに……

 面白かったのはネットでウワサを聞きつけ集まってきたファンたちと、みなるんの距離感が全然「国民的アイドル」のそれではなかったこと。

「いっつもいっつもなんなの?」「握手会のときだって何回もしつこく来るし!」と、集まって来たファンたちをひとかたまりに敵と見なし、ブチ切れるみなるんも凄いが、「なんだよそれ……! みなるんをセンターにするために、幾らつぎ込んだと思ってるんだよ!」「そうだそうだ」「僕たちがいなけりゃ、とっくにセンター取られてるよ?」「そうだそうだ」と、負けじと本音をぶちまけるファンも凄い。

 ネットで匿名をいいことに本音をさらけ出す人は多くいるかもしれないが、白昼ファンが本人を取り囲んで文句を浴びせている様子は、荒れた地下アイドルの現場のよう。

 売れている「国民的アイドル」を取り囲む人の輪にライト層がまったくいないのが違和感の原因だと思うが、「人気」を表現するのは意外と難しい。

■武田信玄の鎧まで持参してる健さん

 そして再度心を閉ざしかけたみなるんを元気付けるため、恒例の健さん変装タイム。今回、古めかしく、さほど大きくもないトランクから出てきたのは、なんと武田信玄を思わせる鎧兜と衣類一式。腰には刀まで装着していたから、それも入っていたのだろう。もう絶対に収まる寸法ではないのだが、一体トランク内はどんな宇宙が広がっているのか。

 例によって、入っている他の服を撒き散らしながらトランク内を探すシーンでも、途中サンタの衣装らしきものをほっぽり投げていた。みなるんの薄着の私服から考えるに季節は夏前後だろうに、冬物までも押さえているのはさすがだ、というか怖い。

 怖いといえば、夜中に旅館内を鎧を着た男がうろついてるのに平然と後を追っかけるみなるんも怖い。

 普通に考えて超常現象なはずだし、そうじゃなかったとしても、かなり不審者だし、どっちにしろ、かなり怖いはずなのに。ファンへの対応といい、度胸が凄い。

 そして、鎧武者を追いかけていくと、そこにはオタ仲間らしき数人とサイリウムを両手にオタ芸(サイリウムダンス)をする健さんが。おそらく早着替えで鎧を脱いだのだろうが、たかだかこのためだけに鎧を着てまでみなるんを導くという発想が凄い。

 この健さんの熱意が届いたのか、みなるんも本域で踊り出し、アイドルとしてやっていこうという気持ちを取り戻すのだが、この時のみなるんのダンスが普通にかっこいい。ここだけで終わらせるのももったいないから、どこかで披露してしっかり成仏させてあげてほしい。

 

■フェイクドキュメンタリーという設定は後付け?

 ちなみに、みなるんはいわば俳優・遠藤憲一の同業者にあたるわけだが、どちらもお互いのことを知らなかったし、「えーー? まさか遠藤憲一さん!?」的なカタルシスも最後までない。

 フェイクドキュメンタリーとして見せようとしながらも、メーンのドラマ本編でまったく「遠藤憲一」的要素が入らないのは、あくまで流れ者の仲居ドラマとして撮った完全なフィクションに、何か事情があって後から頭とお尻にドキュメンタリー部分を付け足したのだろうか?

 そう思ってしまうくらい「ドキュメンタリー」部分と「ドラマ・フィクション」部分が断絶している。今後、種明かしがあるのだろうか?

 

■説明するほどでもない宿の情報を疑似体験

 今回も、「良さげな抹茶が出てくる」とか「ロースルロイスで送迎」とか「マシュマロを焼いて食べられる」とか(食べ放題らしく、ゆで卵やポップコーンも)、ドラマの中で実在する旅館の情報がさりげなく差し込まれており、行ったこともないのに見ているだけで旧知の宿に思えてくる。

 温泉(旅館)の贅沢なプロモーションビデオとして楽しむのも正解なのかもしれない。

 今回は女性の入浴シーンが踏み込んでいて、成宮潤というセクシー系の女優は、ぼかしていたとはいえ生尻まで披露していた。今や地上波ではなかなか見られなくなったお色気シーン。

 旅情だけでなく、そんな部分でも昭和を味わせてくれた。

 次回は南海キャンディーズのしずちゃんがマドンナで登場します。面白そう。
(文=柿田太郎)