「ヤッたからって恋人とは限らない」メンヘラの“ヤリマンアイドル”にとって、セックスする意味とは?

 “誰とでもセックスするヤリマン”と聞くと、我々は、受け身の人間性を想像してしまいがちである。確かに、一昔前に“サセ子”“公衆便所”と呼ばれていたようなヤリマン女性たちのイメージは、男の欲望に無条件に従う(どこか頭の弱い)女というものである。つまり、完全に他者の価値観、他者の欲望の中で生きているような女性像だ。

 しかし、昨年から“ヤリマン”を冠したトークライブを主催している筆者が会うような近年のヤリマン女性たちの多くは、驚くほど自己中心的で、自らの欲望を最優先する「捕食者」のメンタリティーなのだ。果たして、“ヤリマン”を自称する女性は、女性読者の目にはどう映るのだろうか?

第3回 ヤリマンアイドル白玉あも(前編)

■「セックス=恋人」じゃないって思った

 前回、前々回と紹介したヤリマンが「陽のヤリマン」なら今回紹介するのは「陰のヤリマン」。果てしなく暗い北の大地が育んだ、世にも不思議な“ヤリマンアイドル”白玉あも(33歳)である。

 ヤリマンアイドルは、歌を歌うわけでも、CDを出すわけでもない。アイドルがイベントで歌を歌うように、エロ系のトークライブに出てエロ話をし、アイドルがファンと触れ合ってチェキを撮るように、客に直接“顔面騎乗をしながら”チェキを撮る。

 北海道の最東部、人口3万人の根室市。年の離れた3人兄姉の末っ子として生まれ、小学生の頃には両親が離婚、母親とのいびつなふたり暮らしが始まる。情緒不安定な女の子、いわゆる「メンヘラ」だった。現在もたまにしているという自傷行為、リストカットを始めたのは中学生の頃。

「“死にたい”という気持ちもなかったし、理科室に、ちょうどよさそうな刃物があって、単純に切ってみたいと思っちゃった。感覚的におかしいんでしょうね、自分を傷付けてみたいって……。その時は1回で止まったんだけど、高校生くらいからは、急に机をドーンってやったり、教室で発狂したり してました。今となっては“親がいなかったのが寂しかったんだろうな”ってわかるんだけど、当時はなんで自分がそうなっちゃうかわかんなくて」

 そんな多感な15歳の頃にした初めてのセックスが、その後のセックス観を決定づけた。

「中3の時、同じく母子家庭の、すごく仲のいい同級生がいて、その彼が熱で学校を休んだんですね。それで学校から届け物を持っていったんですけど、彼の部屋でちょっとしゃべってたら『隣に来て』って言われて、一緒に蒲団に入ったらモゾモゾしだして、そこでセックス。

 “これで私も大人の女になったんだ”ってうれしかったし、ヤッたんだから“もう私と付き合うことになるだろう”って思った。その彼は、私が毎日一緒に学校行ってた女友達と付き合ってたんですよ。その子には悪いんだけど“最近うまくいってない”って聞いてたし“いいかな”って。どっかで“私の方が勝っちゃった”って感覚だったと思う」

 しかし、初セックスの相手とは、思うような関係にはならなかった。

「しばらくは仲良くしていたんですが、ある放課後、彼に呼ばれて行ってみたら、女友達がたくさん集まっていて、その前で“俺、オマエと別に付き合ってねえから”って言われた。私も内心傷付いたけど、“セックスをしても付き合えないんだ”って、そこから『セックス=恋人』じゃないって思った。だから、奥さんや彼女がいる人とも平気でヤるようになっちゃったんだと思う」

■援助交際で稼いだお金を、親にたかられる

 高校生になると携帯電話を持ち、多くのセックスを重ねてゆく。

 知らない大人と伝言ダイヤルやツーショットダイヤルで会って援助交際。札幌に遠征したこともある。先にお金が振り込まれると夜行バスで向かい、カラオケや食事に行き、ラブホでセックスしてお金をもらう。1回3万円から5万円ほど稼いだお金は、食費に充てていたという。

「離婚後、ママはご飯も作らなくなったし、洗濯もしないし、パパからの養育費は毎月入ってたんですけど、それは私に使ってくれなくなった。最初はそば屋でもバイトしてたんですけど、給料入ったら全部ママが持ってっちゃうんですよ。それで“バイトなんかしてらんない”って援交始めたんです」

 しかし、そのお金にまで母親の手がつく。

「後々通帳を調べられてバレて、“なんでこんなにいろんな人から振り込みがあるの!? アンタなにやってんの!?”って言われたんですけど、私が援交やめたらママも困るし、最終的には“この子は稼いでる”ってわかったので“車ぶつけたから×万円貸してくれない?”って私にたかってくるようになったんですよね……高校生の娘に3万円とか借りて、それでパチンコ行くんですよ。キチガイですよね……」

 ほとんどひとりで投げ出された状態で、援助交際で暮らしていた根室の高校生。そんなところに、セックスの快感などあるはずもない。

「気持ちいいって感覚は特になかったけど、こういうことしてる時って男の人、優しいなって思ったし、“ヤラせれば家に泊まりに来てくれる”って感覚がありました。長く関係が続いていたのは、地元のお祭りの運営サークルの人。そこには大人もいっぱいいて、飲み会にも呼んでもらってたんですよね。だから、そこの人とはだいたいヤッてます。

 一番多かったのは20歳過ぎの若い人で、あとはおじさんたち。奥さんもいる30歳過ぎのおじさんが車の中でイタズラしてきたり、家に呼んでベロベロに酒飲ませてヤッたり、別荘で乱交したり……」

 しかし、その中の誰ひとりとして恋愛関係はないというのだ。そのような異様な境遇で、“セックスを断る”という選択肢はなかったのだろうか?

「ないです。なんで断らなきゃいけないのかわかんなかったし、断った時にガッカリされるのが怖いっていうか。明日から連絡なくなるんじゃないかとか、“もう要らない”とか言われそうな気がして……。性的な役割でも必要とされているのはうれしかったです。ヤればまた遊んでくれるし、居場所は作れる」

 しかしその代償として、今も拭えない罪悪感が、彼女のセックスにはつきまとっている。

「セックスの後、嫌な気持ちになることが多いのは、奥さんや彼女がいるところで、なんにもないふりをするのがキツかったから。みんな、私とヤることは秘密なわけじゃないですか。だからセックスは“言っちゃいけないこと”って感じでした。もしも私のセックスを堂々と言えてたら、ちょっと人生変わってたかもしれないと思う」

■親戚からのひどい仕打ち

 実はその性へのネガティブな意識は、幼児期にまでさかのぼる。

「幼稚園に上がる前くらいの時に、高校生の従兄弟にオナニーの相手させられた。昼寝して起きたら、私のパンツを下ろして、太ももにこすりつけて素股みたいなことやってて、ハアハア言って……。そのまま精子をぶっかけられた」

 親戚からも、幼少期から性の対象としてばかり見られていたのだ。

「“これはママに言っちゃいけない”ってことは、なんとなくわかってた。私、なんか変なことしゃべったらいけないから、家族とか親戚で集まっても、あんまりしゃべらなくなったんですよ。みんな楽しくしてても 、“あのお兄ちゃん、私にエッチなことしたよね”と思ってたし……とにかく嫌でしたね、親戚といるのは」

 どこでも公言できないまま、異常な性体験だけを重ねていった10代だった。高校を出て函館の専門学校に通うようになって、家族関係のストレスはなくなったと思われたが、姉の早世で帰省した彼女に、容赦なくそれは襲いかかった。

「姉は脳腫瘍で倒れて3カ月くらいで死んだんだけど、葬式終わった後、ご飯食べたりする席で、従姉妹が“っていうか、なんでいるの? お姉ちゃんは子どももいるし生きていなきゃダメな人だったけど、アンタはいてもいなくても変わんないんだから、アンタが病気になって死ねばよかったんだよ”って言いだして。そしたらウチのママも泣きながら“そうなのよねえ”って言いだして……。いい大人がみんなそんな感じになっちゃって、“もうこんなところ一生関わりたくない”って思って、急遽その夜に飛行機とって帰って、その人たちとは一生バイバイですよね」

■東京へ出て風俗嬢に

 彼女は、函館の五稜郭前の交差点で援交相手と出会いまくっていた最中にも、セックスによって東京へ出る段取りをつけていた。

「高校3年生くらいから、ツーショットダイヤルで知り合った東京の人と、遠距離恋愛みたいな感じで付き合ってることにして、全然好きじゃなかったけど、“東京に出るための口実”を、その時点から作ってたんですよ。その人をキープしながら援交でお金をためて、東京に行く資金にしようって」

 もはや何かの復讐劇のような壮絶な話だが、彼女は必死にセックスをして、北海道を出たのだった。

「家は“東京に出てきたら同棲しよう”って、その人が用意してくれました。申し訳ないですけど、その人のことはまったく好きじゃなくて、1年くらいで別れました……ひどいですよね」

 上京した彼女はカフェの店員 になって働いたものの、半年ほどで辞めてしまう。風俗嬢になったのだ。風俗も、感覚的には援交と変わらないということだろうか?

「変わらないです。それよりもよかったのは、自分で獲物探さないでも、待ってればお金持ってる人が来るし、援交なら帰るタイミングわからないんでドライブ付き合ったりしてたんですけど、風俗は60分、90分とかで帰るんで、“なんていい仕事なんだ!”って思いましたね。人と深い話しなくていいし、嘘の名前で働けるし」

 なし崩しで始めたような風俗の仕事も、実は昔からの予定通りだった。

「東京に風俗の仕事があるって知って、“早くしたい”って思ってたんです。田舎の嫌なのって、横のしがらみだらけ。東京に出てしまえば、人殺した人もいるだろうし、もっと育ちが悪い人もいるだろうし、そういうところに出れば紛れるかなって思って……」

 世の中には、プロ野球選手に憧れる少年がいるように、風俗嬢に憧れる少女もいるのだ。

「風俗は、朝から夕方までの昼番でやってたので、彼氏にはカフェで働いてるふりをしてました。でもだんだん気付いていったっぽいんです。おごったり、プレゼントあげたりしてたから、お金持ってるってわかってたと思うし。彼氏もママみたいになってきて、“今月、車の支払いキツいなー”とか言ってくるんですよ。それで、私は困ってるの見るのに弱いから、“今月貸す?”“いいの?”みたいになって。だんだん関係性が変わっていくんですよね」

 たまたまの巡り合わせなのか、彼女が周囲をそうさせているのか、どこまでいっても、お金とセックスが基盤になった人間関係なのである。そんな彼とも別れ、歌舞伎町のソープランドに転職した23歳頃、彼女に初めてのまともな彼氏ができる。
(文・写真=福田光睦/Modern Freaks Inc.代表/Twitterアカウント:@mitutika

(後編に続く)

アダルトグッズ専門店に教わる「女性用大人のおもちゃの基礎知識」

こんにちは、アダルトグッズ専門店・ワイルドワンの内山です。アダルトグッズ、セックストイズ、ラブグッズ、大人のおもちゃ……呼び方はさまざまですが、どんなものを指すのか――messy読者の皆様は、すでにご存知かと思います。私個人としては「大人のおもちゃ」という言葉の使い方が好きです。「おもちゃ」の認識は一般的に「子どもの遊具」。これが「大人の」とついた途端、淫靡な夜の雰囲気が広がりませんか? 「大人のおもちゃ」という言葉には、キラキラとした宝箱を覗くようなときめきを感じるんです。

ちなみに豆知識ですが、この「大人のおもちゃ」という素敵な名称を編み出したのは、国産の電動式バイブレーター「熊ん子」を発売した性具卸問屋の社長なんです。「熊ん子」とは昭和42年に発売された大ヒットバイブレーターです。「クマンコ」ってネーミングもセンスが光っていますよね。「クマンコクマンコ……」って何度も唱えたくなるリズム感があり、一度聞いたら忘れられません。

そんな遊び心溢れる「大人のおもちゃ」。今ではその種類も多く、それぞれ違った特性があります。しかし、ワイルドワンが運営するグッズ販売店舗やバイブバーには、いざ購入しようと思っても「好みの刺激はどれだろう」「何が何だかわからない」といった理由から、今まで試すのを断念してきた……という方がたくさんいらっしゃいます。そこで、当連載では、人気商品や注目おもちゃを、楽しいエピソードを交えながらご紹介していこうと思います。

4種の神器

今回はプロローグとして「大人のおもちゃってなーに?」というごくごく基礎的なお話から紐解かせていただきます。

まず、大人のおもちゃには男性用と女性用があります。性具ならではのカテゴライズの仕方ですね。さらに、女性用の中でも大きく4カテゴリーに分けられます。総称して「バイブ」と呼んでいたあのおもちゃが実は別のものだった! なんてことも。そんな一番浸透している「バイブ」からご説明していきましょう。

①バイブ

『シロバイブもっちり大福』
「電動式バイブレーター」略して「バイブ」と呼ばれている商品です。シニア世代なんかは「電動コケシ」と呼ぶ方もいます。形状、フォルムはさまざまですが、膣に挿入するための長い竿とクリトリスを刺激するための小さいバイブがついている二股タイプが一般的です。

竿の動き方は、振動したり、円を描くようにスイングしたり、上下にピストンしたりとバイブによってまったく違います。クリ用バイブを竿部分を膣に入れた状態でクリトリスへあてがい、バイブレーションさせます。これがいわゆる二点責めと言われる手法で、膣内、クリトリスの両方で感じることができます。また、クリ用バイブが付いていない“一本モノ”と呼ばれるものや細めのスティックタイプがあり、後者はバイブ初心者にオススメです。

②ローター

『ピンクローターTypeRビッグ』
「ピンクローター」という言葉を聞いたことがありませんか? その名の通り「ピンク色をしたローター」なんです。ローターとは、回転するモノや回転体を意味する言葉で「ピンクの回転体」と言ったところでしょうか。

とはいえ、いまやローターも種類が豊富な上に色もさまざまです。形状はコントローラーと本体がコードで繋がれているのが一般的ですが、コードレスタイプのものも多くあります。動きはローターが「振動する」だけ。とっても簡易的です。特にクリトリスへの刺激に適しているので、大人のおもちゃ自体をまったく使ったことのないビギナーにおススメ。とても軽くてコンパクトなので持ち運びに便利ですが、コードタイプは断線しやすいという欠点もあります。

③電動マッサージャー

『ピンクデンマバイブバーエディション2』
ここ10年ほどですっかり大人のおもちゃとして定着した感のある、通称「電マ」。もともとは肩こりなんかをほぐすマッサージ用家電製品だったものが、アダルトビデオの潮を吹かせるワンシーンで取り入れられるようになってから大きく注目され始めました。

今では性具の仲間入りを果たした電マですが、使い方は簡単でローターに似ています。先端のヘッド部分に大きなモーターがついていて、モーターが振動することで大きな刺激が得られます。振動は細かく揺れるローターとは真逆です。荒々しいほどに激しいため、即イキしたり、深いアクメを感じるというユーザーさんもいますが、ハードすぎて痛いと敬遠する方もいらっしゃり、好みの分かれるところです。ます。ローターの振動では物足りなくなった女性におススメします。またヘッド用アタッチメントもたくさん開発されているので、電マひとつあればアタッチメントの付け替えでバイブとしても使用ができるなど、今後も面白い発展を遂げそうなおもちゃです。

④ディルド

『みちのくディルド』
ズバリ、男性器をかたどったリアルな形状で、モーターなどの電子器具は一切ついていないものが一般的ですが、最近は中に振動させるモーターが仕込まれたタイプもあります。ディルドの歴史は古く、紀元前から存在していたなんて説があったり、江戸時代の春画にも描かれています。「張り型(はりかた・はりがた)」「こけし」と呼ばれることもしばしば。

多くがヌーディーな色みで亀頭、竿部分の再現度の高いものが多く、ものによってはタマ付きのディルドもあります。ディルドの下には吸盤があり、床や壁などお好みの場所へ接着させて膣、もしくはアヌスへ挿入させ、手や腰を使って動かします。亜流になりますが、ディルドを装着できるペニスバンドもあり、SMプレイやレズビアンカップルが好んで使います。バイブの電動が苦手な方や、男性器のリアリティにこだわる方におススメです。

次回からは、さらにディープに「大人のおもちゃ」を紹介していきます。そのためにも、今回の4つのカテゴリー分けを頭に叩き込んでおいてくださいね!

(文章/ワイルドワン広報担当・内山)

「messyを見た」でプレゼント!
当連載を読んで興味を持たれた方は、見て、触れて、動かすことが可能な渋谷のバイブバーへいらしてくださいね。スタッフも運営も全員女性なので安心です。こだわりの内装と350本以上のバイブ、国内外から集めた大人のおもちゃが展示されています。「messyを見た」と言っていただければ「スティックローター」をプレゼントいたします!

THE VIBE BAR WILD ONE(ザ・バイブバー・ワイルドワン)

住所:東京都渋谷区道玄坂2-7-4 3F
電話番号
03-5456-1100 (月~土 PM17:00~PM24:00)VIBEBAR
03-3477-0800 (月~金 AM9:00~PM17:00) VIBEBAR 事務局
メール:info@vibebar.jp
定休日:日曜・祝祭日
営業時間:17:00~24:00
※入店受付は閉店時間の45分前までとなります
最寄り駅:JR渋谷駅・ハチ公口より徒歩3分
京王井の頭線渋谷駅・西口より徒歩1分

アダルトグッズ専門店に教わる「女性用大人のおもちゃの基礎知識」

こんにちは、アダルトグッズ専門店・ワイルドワンの内山です。アダルトグッズ、セックストイズ、ラブグッズ、大人のおもちゃ……呼び方はさまざまですが、どんなものを指すのか――messy読者の皆様は、すでにご存知かと思います。私個人としては「大人のおもちゃ」という言葉の使い方が好きです。「おもちゃ」の認識は一般的に「子どもの遊具」。これが「大人の」とついた途端、淫靡な夜の雰囲気が広がりませんか? 「大人のおもちゃ」という言葉には、キラキラとした宝箱を覗くようなときめきを感じるんです。

ちなみに豆知識ですが、この「大人のおもちゃ」という素敵な名称を編み出したのは、国産の電動式バイブレーター「熊ん子」を発売した性具卸問屋の社長なんです。「熊ん子」とは昭和42年に発売された大ヒットバイブレーターです。「クマンコ」ってネーミングもセンスが光っていますよね。「クマンコクマンコ……」って何度も唱えたくなるリズム感があり、一度聞いたら忘れられません。

そんな遊び心溢れる「大人のおもちゃ」。今ではその種類も多く、それぞれ違った特性があります。しかし、ワイルドワンが運営するグッズ販売店舗やバイブバーには、いざ購入しようと思っても「好みの刺激はどれだろう」「何が何だかわからない」といった理由から、今まで試すのを断念してきた……という方がたくさんいらっしゃいます。そこで、当連載では、人気商品や注目おもちゃを、楽しいエピソードを交えながらご紹介していこうと思います。

4種の神器

今回はプロローグとして「大人のおもちゃってなーに?」というごくごく基礎的なお話から紐解かせていただきます。

まず、大人のおもちゃには男性用と女性用があります。性具ならではのカテゴライズの仕方ですね。さらに、女性用の中でも大きく4カテゴリーに分けられます。総称して「バイブ」と呼んでいたあのおもちゃが実は別のものだった! なんてことも。そんな一番浸透している「バイブ」からご説明していきましょう。

①バイブ

『シロバイブもっちり大福』
「電動式バイブレーター」略して「バイブ」と呼ばれている商品です。シニア世代なんかは「電動コケシ」と呼ぶ方もいます。形状、フォルムはさまざまですが、膣に挿入するための長い竿とクリトリスを刺激するための小さいバイブがついている二股タイプが一般的です。

竿の動き方は、振動したり、円を描くようにスイングしたり、上下にピストンしたりとバイブによってまったく違います。クリ用バイブを竿部分を膣に入れた状態でクリトリスへあてがい、バイブレーションさせます。これがいわゆる二点責めと言われる手法で、膣内、クリトリスの両方で感じることができます。また、クリ用バイブが付いていない“一本モノ”と呼ばれるものや細めのスティックタイプがあり、後者はバイブ初心者にオススメです。

②ローター

『ピンクローターTypeRビッグ』
「ピンクローター」という言葉を聞いたことがありませんか? その名の通り「ピンク色をしたローター」なんです。ローターとは、回転するモノや回転体を意味する言葉で「ピンクの回転体」と言ったところでしょうか。

とはいえ、いまやローターも種類が豊富な上に色もさまざまです。形状はコントローラーと本体がコードで繋がれているのが一般的ですが、コードレスタイプのものも多くあります。動きはローターが「振動する」だけ。とっても簡易的です。特にクリトリスへの刺激に適しているので、大人のおもちゃ自体をまったく使ったことのないビギナーにおススメ。とても軽くてコンパクトなので持ち運びに便利ですが、コードタイプは断線しやすいという欠点もあります。

③電動マッサージャー

『ピンクデンマバイブバーエディション2』
ここ10年ほどですっかり大人のおもちゃとして定着した感のある、通称「電マ」。もともとは肩こりなんかをほぐすマッサージ用家電製品だったものが、アダルトビデオの潮を吹かせるワンシーンで取り入れられるようになってから大きく注目され始めました。

今では性具の仲間入りを果たした電マですが、使い方は簡単でローターに似ています。先端のヘッド部分に大きなモーターがついていて、モーターが振動することで大きな刺激が得られます。振動は細かく揺れるローターとは真逆です。荒々しいほどに激しいため、即イキしたり、深いアクメを感じるというユーザーさんもいますが、ハードすぎて痛いと敬遠する方もいらっしゃり、好みの分かれるところです。ます。ローターの振動では物足りなくなった女性におススメします。またヘッド用アタッチメントもたくさん開発されているので、電マひとつあればアタッチメントの付け替えでバイブとしても使用ができるなど、今後も面白い発展を遂げそうなおもちゃです。

④ディルド

『みちのくディルド』
ズバリ、男性器をかたどったリアルな形状で、モーターなどの電子器具は一切ついていないものが一般的ですが、最近は中に振動させるモーターが仕込まれたタイプもあります。ディルドの歴史は古く、紀元前から存在していたなんて説があったり、江戸時代の春画にも描かれています。「張り型(はりかた・はりがた)」「こけし」と呼ばれることもしばしば。

多くがヌーディーな色みで亀頭、竿部分の再現度の高いものが多く、ものによってはタマ付きのディルドもあります。ディルドの下には吸盤があり、床や壁などお好みの場所へ接着させて膣、もしくはアヌスへ挿入させ、手や腰を使って動かします。亜流になりますが、ディルドを装着できるペニスバンドもあり、SMプレイやレズビアンカップルが好んで使います。バイブの電動が苦手な方や、男性器のリアリティにこだわる方におススメです。

次回からは、さらにディープに「大人のおもちゃ」を紹介していきます。そのためにも、今回の4つのカテゴリー分けを頭に叩き込んでおいてくださいね!

(文章/ワイルドワン広報担当・内山)

「messyを見た」でプレゼント!
当連載を読んで興味を持たれた方は、見て、触れて、動かすことが可能な渋谷のバイブバーへいらしてくださいね。スタッフも運営も全員女性なので安心です。こだわりの内装と350本以上のバイブ、国内外から集めた大人のおもちゃが展示されています。「messyを見た」と言っていただければ「スティックローター」をプレゼントいたします!

THE VIBE BAR WILD ONE(ザ・バイブバー・ワイルドワン)

住所:東京都渋谷区道玄坂2-7-4 3F
電話番号
03-5456-1100 (月~土 PM17:00~PM24:00)VIBEBAR
03-3477-0800 (月~金 AM9:00~PM17:00) VIBEBAR 事務局
メール:info@vibebar.jp
定休日:日曜・祝祭日
営業時間:17:00~24:00
※入店受付は閉店時間の45分前までとなります
最寄り駅:JR渋谷駅・ハチ公口より徒歩3分
京王井の頭線渋谷駅・西口より徒歩1分

読書会に理屈っぽい男は邪魔? 女性の連帯を強める読書会の歴史を探る

 今回のテーマは読書会です。皆さんは読書会に参加されたことはおありですか? 私は研究者なので本を読む会合にはよく行きますが、全く出たことがないという方もいらっしゃると思います。3月にmessyに掲載された福島淳による記事「エマ・ワトソンのフェミニスト・ブッククラブへようこそ! 広がりを見せるフェミニズムを語る熱い波」では、スターのエマ・ワトソンが読書サイト「Goodreads」でフェミニズム関係の本を推薦し、皆で意見交換するオンラインブッククラブが紹介されていました。今、英語圏ではこのように女性が女性向けに本をすすめたり、特定の本を皆で読んで議論したりする読書会が人気です。読書会と女性について、アメリカを中心に少し歴史を絡めながら紹介をしていきたいと思います。

◎女だけのクラブ

「男性は読書会なんてしないわ」

 上の文句はカレン・ジョイ・ファウラー『ジェイン・オースティンの読書会』で、登場人物のひとりバーナデットが言う台詞です(p. 10)。この小説は19世紀初めの英国の小説家、ジェイン・オースティンの全作品6編を読破する読書会の様子に、参加者の人生模様を絡めた物語です。2007年には映画化もされています。小説では、最初に読書会メンバーを女性だけにするかどうかでモメるところがあります。バーナデットの上の発言はずいぶん大げさで、読書会をやっている男性も実はたくさんいるのですが、北米では伝統的に読書会は女性が盛んにやるものという認識があるようです。

 バーナデットは読書会に男性を入れたくないと主張しており、以下のようにずいぶん手厳しい発言もします。

「男性が入ると、力関係がくずれてしまうわ。男性って、みんなで楽しく議論しないうえ、偉そうに一方的にしゃべるんですもの。自分の持ち時間なんか無視して、平気でいつまでもしゃべってるわ」(p. 10)

 この小説ではバーナデットの反対にもかかわらず、読書会には男性であるグリッグが参加することになり、メンバーであるジョスリンとの恋が始まるという展開になります。

 バーナデット同様、読書会その他のクラブ活動で、男性が決まった持ち時間を守らなかったり、偉そうな態度をとったりすることに不満を持っている女性は多いようです。アメリカ文学研究者の尾崎俊介はアメリカ人とペーパーバックを扱った著書『ホールデンの肖像』で、人気テレビタレントで長きにわたりお昼の女性向けトーク番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』のホストをつとめていたオプラ・ウィンフリーが自分のお気に入りの本を紹介するコーナー「オプラズ・ブッククラブ」を詳しく解説しています。尾崎はここで「こけおどしの教養をちらつかせ、小うるさい理屈をこねるような男性知識人がほとんど登場しないので(中略)心置きなく女性的な目線で自由に本のことを語り合える」(p. 237)ことがこのコーナーの人気の原因のひとつだと分析しています。もちろん理屈っぽい批評をする人は女性にもいますし(私ですね)、また理屈っぽい批評が嫌いな男性読者も山ほどいるはずです。しかしながら女性の前でやたら威張りたがる男性に対して経験から警戒心を持っている女性は多いので、女性だけで本を読みたいという人もいるのでしょう。

◎キャラクターと自分語り

 このようなくつろいだ環境で行われる議論は、文体分析などよりも、むしろある本が読者の人生とどう結びつくかについてのものになりやすいようです。尾崎は家庭内で抑圧されている女性たちが「本をダシにして自らを語る」(p. 246)ことが読書会の重要な要素だと述べていますし、社会学者エリザベス・ロングも女性読書会でキャラクター中心の読解が好まれることを指摘しています(p. 230)。いくつも例をあげることができますが、たとえばカナダで女性読書会と刑務所読書会を組織している女性たちを中心にブッククラブの様子を描いたノンフィクション『プリズン・ブック・クラブ』では、リーダーのキャロルが「主人公の立場に自分を置くことが出来、登場人物の行ないについて考えられる本」(p. 38)を選書しようとしています。『ジェイン・オースティンの読書会』でも、どの登場人物が自分に似ているかとか、どの登場人物同士に結婚してほしいかとか、小説に描かれた恋愛から得られる人生訓は何かとか、こういった議論で読書会が盛り上がります。

 実際にやってみましょう。私は『高慢と偏見』に出てくるミスター・ダーシーがどうも好みではないのですが、たぶん自分の性格が少しミスター・ダーシーに似ていて人前で愛想良くするのが嫌いなので同類嫌悪なのかもしれないと思います……というようなことを話すわけです。こうした自分の人生や性格に結びつけた意見交換を行うことで女性たちの間に連帯感が生まれ、悩みのシェアや助け合いにつながることもあります。母と娘で親子のイベントとして議論に参加したり、友人同士で絆を深めたりする機能もあるのです。

 面白いのは、英文学の読解ではこうしたキャラクター中心の批評(「性格批評」などと呼ばれます)は伝統的に女性が活躍していた分野で、一方で古くさい手法として軽視されていたフシがあったことです。これは既に私が去年、『ユリイカ』に書いた「みんなのシェイクスピア、シェイクスピアのみんな-キャラクターとファンダムの歴史」でも説明しているので興味がある方はこちらも読んで頂きたいのですが、とくにシェイクスピアなどの分析においては19世紀のメアリ・カウデン・クラークやアンナ・ジェイムソンなどの女性批評家が性格批評で大きな業績を残してきました。自分を優柔不断でロマンティックなハムレットにたとえた(!)ロマン派詩人サミュエル・テイラー・コールリッジのように、この分野で面白い評論を残した男性批評家もいるのですが、いくぶん「女性的」な分野と考えられがちなところがあったのです。20世紀以降、先端的な批評理論を用いた分析が重視されるようになり、性格批評は時代遅れと見なされ、女性によって担われてきたことも含めてお遊びのように扱われることもありました。

 性格批評は最近、上演研究やフェミニスト批評、大衆文化研究などの影響もあり、人気を取り戻しています。これを考えると、登場人物について語り合う女性たちの読書会は、19世紀以来の性格批評の伝統を思いの外よく保存しているように見えます。コールリッジは「私自身にも少々ハムレットのようなところがある」(v.1, p. 69、拙訳)と言いましたが、読書会を開く女性たちには少々ロマン主義の批評家のようなところがあると言っていいのかもしれません。

◎読書の伝統と市民の育成

 19世紀風の性格批評がアメリカの女性読書会でしぶとく生き残ってきたことは、こうした読書会の起源が19世紀にあることに関係しているのかもしれません。シェイクスピア研究者キャサリン・ウェスト・シェイルによると、19世紀末から20世紀はじめくらいにかけて、シェイクスピアを中心に読むクラブだけで500以上もの会がアメリカ全土で結成され、その多くで女性が主導的役割を果たしたとのことです(Scheil, p. 1)。学術研究に女性が触れられる機会は今よりずっと少なかったため、読書会は女性にとって貴重な教育機会でした。クラブによっては本を読むだけではなく、女性参政権とか結婚などについて政治的議論をするところもあったそうです(Scheil, p. 39)。

 19世紀末にはアフリカ系アメリカ人女性の読書会も活発に活動しており、本を読むだけではなく人種差別の中で教育を向上させたり、社会問題に取り組んだりしていました(Scheil, p. 116)。読書をして知識や分析能力を得ることは、市民として社会に向き合うことと結びついていたようです。そう考えると、エマ・ワトソンのフェミニスト・ブッククラブはインターネットの時代の産物とはいえ、楽しみながら社会を考えるという19世紀的な読書会の後継者であると言えるでしょう。

 皆さんも読書会を組織してみてはいかがでしょうか? インターネットが発達した今では、実際に一箇所に集まらなくても、同じ本さえ読んでいればオンラインで意見交換をすることもできます(私もやったことがあります)。オースティンの小説やシェイクスピアの戯曲に出てくるお気に入りの人物について話すのもいいですし、こうした作品の政治性や歴史的背景について調べてみるのも楽しいですよ。

◎参考資料リスト

アン・ウォームズリー『プリズン・ブック・クラブ-コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』向井和美訳、紀伊國屋書店、2016。
尾崎俊介『ホールデンの肖像-ペーパーバックからみるアメリカの読書文化』新宿書房、2014。
北村紗衣「みんなのシェイクスピア、シェイクスピアのみんな-キャラクターとファンダムの歴史」、『ユリイカ』2015年4月臨時創刊号:pp. 175-182。
カレン・ジョイ・ファウラー『ジェイン・オースティンの読書会』中野康司訳、ちくま文庫、2013。
エリザベス・ロング『ブッククラブ-アメリカ女性と読書』田口瑛子訳、日本図書館協会、2006。
Samuel Taylor Coleridge, Specimens of the Table Talk of the Late Samuel Taylor Coleridge, 2 vols, London, 1835.
Katherine West Scheil, She Hath Been Reading: Women and Shakespeare Clubs in America, Cornell University Press, 2012.

読書会に理屈っぽい男は邪魔? 女性の連帯を強める読書会の歴史を探る

 今回のテーマは読書会です。皆さんは読書会に参加されたことはおありですか? 私は研究者なので本を読む会合にはよく行きますが、全く出たことがないという方もいらっしゃると思います。3月にmessyに掲載された福島淳による記事「エマ・ワトソンのフェミニスト・ブッククラブへようこそ! 広がりを見せるフェミニズムを語る熱い波」では、スターのエマ・ワトソンが読書サイト「Goodreads」でフェミニズム関係の本を推薦し、皆で意見交換するオンラインブッククラブが紹介されていました。今、英語圏ではこのように女性が女性向けに本をすすめたり、特定の本を皆で読んで議論したりする読書会が人気です。読書会と女性について、アメリカを中心に少し歴史を絡めながら紹介をしていきたいと思います。

◎女だけのクラブ

「男性は読書会なんてしないわ」

 上の文句はカレン・ジョイ・ファウラー『ジェイン・オースティンの読書会』で、登場人物のひとりバーナデットが言う台詞です(p. 10)。この小説は19世紀初めの英国の小説家、ジェイン・オースティンの全作品6編を読破する読書会の様子に、参加者の人生模様を絡めた物語です。2007年には映画化もされています。小説では、最初に読書会メンバーを女性だけにするかどうかでモメるところがあります。バーナデットの上の発言はずいぶん大げさで、読書会をやっている男性も実はたくさんいるのですが、北米では伝統的に読書会は女性が盛んにやるものという認識があるようです。

 バーナデットは読書会に男性を入れたくないと主張しており、以下のようにずいぶん手厳しい発言もします。

「男性が入ると、力関係がくずれてしまうわ。男性って、みんなで楽しく議論しないうえ、偉そうに一方的にしゃべるんですもの。自分の持ち時間なんか無視して、平気でいつまでもしゃべってるわ」(p. 10)

 この小説ではバーナデットの反対にもかかわらず、読書会には男性であるグリッグが参加することになり、メンバーであるジョスリンとの恋が始まるという展開になります。

 バーナデット同様、読書会その他のクラブ活動で、男性が決まった持ち時間を守らなかったり、偉そうな態度をとったりすることに不満を持っている女性は多いようです。アメリカ文学研究者の尾崎俊介はアメリカ人とペーパーバックを扱った著書『ホールデンの肖像』で、人気テレビタレントで長きにわたりお昼の女性向けトーク番組『オプラ・ウィンフリー・ショー』のホストをつとめていたオプラ・ウィンフリーが自分のお気に入りの本を紹介するコーナー「オプラズ・ブッククラブ」を詳しく解説しています。尾崎はここで「こけおどしの教養をちらつかせ、小うるさい理屈をこねるような男性知識人がほとんど登場しないので(中略)心置きなく女性的な目線で自由に本のことを語り合える」(p. 237)ことがこのコーナーの人気の原因のひとつだと分析しています。もちろん理屈っぽい批評をする人は女性にもいますし(私ですね)、また理屈っぽい批評が嫌いな男性読者も山ほどいるはずです。しかしながら女性の前でやたら威張りたがる男性に対して経験から警戒心を持っている女性は多いので、女性だけで本を読みたいという人もいるのでしょう。

◎キャラクターと自分語り

 このようなくつろいだ環境で行われる議論は、文体分析などよりも、むしろある本が読者の人生とどう結びつくかについてのものになりやすいようです。尾崎は家庭内で抑圧されている女性たちが「本をダシにして自らを語る」(p. 246)ことが読書会の重要な要素だと述べていますし、社会学者エリザベス・ロングも女性読書会でキャラクター中心の読解が好まれることを指摘しています(p. 230)。いくつも例をあげることができますが、たとえばカナダで女性読書会と刑務所読書会を組織している女性たちを中心にブッククラブの様子を描いたノンフィクション『プリズン・ブック・クラブ』では、リーダーのキャロルが「主人公の立場に自分を置くことが出来、登場人物の行ないについて考えられる本」(p. 38)を選書しようとしています。『ジェイン・オースティンの読書会』でも、どの登場人物が自分に似ているかとか、どの登場人物同士に結婚してほしいかとか、小説に描かれた恋愛から得られる人生訓は何かとか、こういった議論で読書会が盛り上がります。

 実際にやってみましょう。私は『高慢と偏見』に出てくるミスター・ダーシーがどうも好みではないのですが、たぶん自分の性格が少しミスター・ダーシーに似ていて人前で愛想良くするのが嫌いなので同類嫌悪なのかもしれないと思います……というようなことを話すわけです。こうした自分の人生や性格に結びつけた意見交換を行うことで女性たちの間に連帯感が生まれ、悩みのシェアや助け合いにつながることもあります。母と娘で親子のイベントとして議論に参加したり、友人同士で絆を深めたりする機能もあるのです。

 面白いのは、英文学の読解ではこうしたキャラクター中心の批評(「性格批評」などと呼ばれます)は伝統的に女性が活躍していた分野で、一方で古くさい手法として軽視されていたフシがあったことです。これは既に私が去年、『ユリイカ』に書いた「みんなのシェイクスピア、シェイクスピアのみんな-キャラクターとファンダムの歴史」でも説明しているので興味がある方はこちらも読んで頂きたいのですが、とくにシェイクスピアなどの分析においては19世紀のメアリ・カウデン・クラークやアンナ・ジェイムソンなどの女性批評家が性格批評で大きな業績を残してきました。自分を優柔不断でロマンティックなハムレットにたとえた(!)ロマン派詩人サミュエル・テイラー・コールリッジのように、この分野で面白い評論を残した男性批評家もいるのですが、いくぶん「女性的」な分野と考えられがちなところがあったのです。20世紀以降、先端的な批評理論を用いた分析が重視されるようになり、性格批評は時代遅れと見なされ、女性によって担われてきたことも含めてお遊びのように扱われることもありました。

 性格批評は最近、上演研究やフェミニスト批評、大衆文化研究などの影響もあり、人気を取り戻しています。これを考えると、登場人物について語り合う女性たちの読書会は、19世紀以来の性格批評の伝統を思いの外よく保存しているように見えます。コールリッジは「私自身にも少々ハムレットのようなところがある」(v.1, p. 69、拙訳)と言いましたが、読書会を開く女性たちには少々ロマン主義の批評家のようなところがあると言っていいのかもしれません。

◎読書の伝統と市民の育成

 19世紀風の性格批評がアメリカの女性読書会でしぶとく生き残ってきたことは、こうした読書会の起源が19世紀にあることに関係しているのかもしれません。シェイクスピア研究者キャサリン・ウェスト・シェイルによると、19世紀末から20世紀はじめくらいにかけて、シェイクスピアを中心に読むクラブだけで500以上もの会がアメリカ全土で結成され、その多くで女性が主導的役割を果たしたとのことです(Scheil, p. 1)。学術研究に女性が触れられる機会は今よりずっと少なかったため、読書会は女性にとって貴重な教育機会でした。クラブによっては本を読むだけではなく、女性参政権とか結婚などについて政治的議論をするところもあったそうです(Scheil, p. 39)。

 19世紀末にはアフリカ系アメリカ人女性の読書会も活発に活動しており、本を読むだけではなく人種差別の中で教育を向上させたり、社会問題に取り組んだりしていました(Scheil, p. 116)。読書をして知識や分析能力を得ることは、市民として社会に向き合うことと結びついていたようです。そう考えると、エマ・ワトソンのフェミニスト・ブッククラブはインターネットの時代の産物とはいえ、楽しみながら社会を考えるという19世紀的な読書会の後継者であると言えるでしょう。

 皆さんも読書会を組織してみてはいかがでしょうか? インターネットが発達した今では、実際に一箇所に集まらなくても、同じ本さえ読んでいればオンラインで意見交換をすることもできます(私もやったことがあります)。オースティンの小説やシェイクスピアの戯曲に出てくるお気に入りの人物について話すのもいいですし、こうした作品の政治性や歴史的背景について調べてみるのも楽しいですよ。

◎参考資料リスト

アン・ウォームズリー『プリズン・ブック・クラブ-コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年』向井和美訳、紀伊國屋書店、2016。
尾崎俊介『ホールデンの肖像-ペーパーバックからみるアメリカの読書文化』新宿書房、2014。
北村紗衣「みんなのシェイクスピア、シェイクスピアのみんな-キャラクターとファンダムの歴史」、『ユリイカ』2015年4月臨時創刊号:pp. 175-182。
カレン・ジョイ・ファウラー『ジェイン・オースティンの読書会』中野康司訳、ちくま文庫、2013。
エリザベス・ロング『ブッククラブ-アメリカ女性と読書』田口瑛子訳、日本図書館協会、2006。
Samuel Taylor Coleridge, Specimens of the Table Talk of the Late Samuel Taylor Coleridge, 2 vols, London, 1835.
Katherine West Scheil, She Hath Been Reading: Women and Shakespeare Clubs in America, Cornell University Press, 2012.