国家プロジェクトと化した「婚活」 莫大な税金投入は誰のため?

内閣府が少子化対策として進める「結婚応援全国フォーラム」の写真を見て、結婚といいつつ、おじさんばかりで結婚する当事者がいない違和感をツイッターに書き込んだところ、「相変わらずおっさんだらけ」や「写真のみならず資料もクラクラするのがてんこ盛りだった件」などと政府の婚活事業が役所や企業の人たちで進められていることへの疑問などが多く表明されました。ツイッターでは、福井県が事業として行なっている結婚や出会いの相談を受けるボランティアの「縁結びさん」から「誰か独身の女の人はおらんか?」と聞かれ、仕方なく友人を紹介したところ、その友人は縁結びさんから会うなりため口で「選りごのみするな。自分の歳を考えろ。女は結婚さえすればいい」と説教され、結果的に友人を失うことになってしまったという悲劇も語られていました。

結婚応援フォーラムで紹介されている事例には、銀行に「婚活デスク」を置き専従担当者を配置する、結婚を世話するシニアを組織し「婚シェルジュ」制度を導入する、4人制の「タッチバレー」に40歳未満の男女を参加させ懇親させる等々があり、全国の自治体、企業や各団体に号令をかけ、婚活支援に総掛かりで乗り出している様子が浮かび上がります。

婚活は、いまや国家プロジェクトなのです。加藤勝信少子化・男女共同参画担当大臣は、結婚応援フォーラムに参加するため全国を飛び回っています。2013年度には「地域少子化対策強化交付金」が創設され、30.1億円、翌2014年度も同額、併せておよそ60億が計上されています。「結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援」がキーワードで、その中でも婚活・結婚支援に大きな金額が使われています。8月に発表された2016年度補正予算では、少子化対策交付金に40億があてられ、婚活支援などにとてつもない金額の税金が投入されています。

2015年度には、北海道から沖縄まで全国の47都道府県すべてがこの事業に取り組んでおり、その事業総数は、353件に及んでいます。全国津々浦々の市町村がこぞって政府の交付金に飛びつき、婚活・結婚支援を含む「切れ目のない支援」に邁進しているのです。

例えば福岡県が運営する結婚・子育て応援サイトでは、「あなたのライフプラン」を考えようというデモンストレーションがあります。これは「結婚は何年後にする?」「子どもは何人ほしい?」などの質問で、結婚への意欲や欲しい子どもの数を回答すると、その後のライフプランが示されるというものです。「パートナーに出会えそうなのはあなたが何歳の時?」「結婚はあなたが何歳の時にする予定?」などと結婚について具体的な希望を持っていないと前に進めないものですし、子どもについては、選べるのは「1人、2人、3人、4人、5人」。子どもを持たないという選択肢は選ばせてもらえない仕掛けになっています。

福岡県のサイトはピンクやオレンジの色合いで、見かけだけでは「ポジティブ・キャンペーン」というソフトな印象を受けますが、戦前の「産めよ増やせよ」の発想がゲーム仕立てで甦っており、不気味です。

いま若い女性たちを早く結婚させ子どもをたくさん産ませようと、国家が自治体・企業・団体を交付金・補助金という撒き餌で釣る「一億総活躍」という名の国家総動員が進行中なのです。

「めいわくありがた縁結び」——福井県の取り組み

実際に現場ではどういうことが起きているのでしょうか。実態を知りたいと、平成28年6月3日現在での交付金優良事例として選ばれている「めいわくありがた縁結び」を実施中の福井県に取材に行きました。

県庁に行くとさっそく目に付いたのが「プロポーズ ハイかYESで答えてね。」といったフレーズが書かれた3枚の結婚応援ポスターのパネル(写真1)でした。隣には、「ふくい結婚応援企業が100社到達!」という、女性を真ん中に回りを企業名が取り囲み、ハートのスタンプやハートの折り紙が満載の営業成績表のようなボード(写真2)が派手派手しく展示してありました。

ボードの下には、結婚応援のチラシ類もたくさん添えてありました。福井県庁が一丸となって結婚応援に邁進しているさまがみてとれます。

女性活躍推進課の「女性活躍推進課出会い創出支援グループ」主任のAさんに話を聞いたところ、福井県では新たに人口減少対策のためにふるさと県民局という局まで創設したこと、そして女性活躍推進課はその中に置かれており、結婚支援、女性活躍、NPO支援・男女共同参画の3つのセクションが置かれていると説明してくれました。

福井県の政策について聞くと、結婚に向けた意識の醸成をはかるCM 動画が並べられたページなどがある「結婚応援サイト」を作ったこと、「自分磨きで婚活力を向上」などという婚活セミナーで出会いを図っていること、さらに昨年2015年からは企業・団体内に、「職場の縁結びさん」を置き、独身従業員の結婚を応援するという「職場のめいわくありがた縁結び」という仕組みも始めたとのことです。この「めいわくありがた縁結び」というネーミングを作ったのは、なんと西川一誠福井知事自身なのだそうです。その他、結婚のお世話をする民間人である結婚相談員として、福井県全県で180人を、2010年からは新たにブライダル業や理容・美容業、お寺の住職、退職教員など250人を「地域の縁結びさん」として登録しているとも言っていました。

県が結婚支援に力を入れることに対して疑問はないかとA主任さんに尋ねたところ、「私たちは、結婚を望む方にお相手を紹介するだけですし、NPO法人全国地域結婚支援センター(東京都)や、福井県の人権担当部署にも連携をとってやっている(から何の問題もない)」と胸を張っていました。

A主任によれば、「職場の縁結びさん」には「独身の方に物が言えるような人」で「職場の先輩とか同僚とかの既婚者」が選ばれるそうです。結婚をすすめられる側に断りづらい雰囲気があることが想像できます。小さい会社だと社長さんが「縁結びさん」になる場合もあるというので、「社長さんに言われたら社員の方は断りづらくて大変じゃないですか」というと、「ですかねーたぶん」との他人事のような答え。「でも、思われているのとは違って福井は、中小企業がすごく多く、家族みたいというか、上と下がすごく近いといいますか」と言います。社長が「縁結びさん」になっている「家族みたい」な福井の中小企業で働いたら、もれなくお見合いがついてくるのではないかという怖れを覚える人もいるのではないでしょうか。

「職場の縁結びさん」は、独身の人に「あんた(結婚は)どうなのー」と声を掛けるそうです。「声を掛けられた人はいやじゃないですか?」と尋ねましたが、行政としては気にならないようでした。クレームの有無について聞くと、「私もだいじょうぶかな? と行政なのでいつもリスクを思うんです」と言いつつ、「今のところクレーム一つないんですよ」と胸を張っていました。

「LGBTの人は嫌でしょうね」というと、「そこはどうなんですかね」と笑いつつ「嫌な人には強制しないですから。単に掲示だけにするとか、事前に送っていいかという確認をした人にだけしかメールを送らない」と答えていました。「人口の5〜8%のLGBTのことは考えないといけないのでは。当事者は息苦しいと思う」と水を向けると「行政としては考えないといけないんでしょうけど、実際、そこまでは配慮していない」と言い、少子化対策のうちの課の範疇にはLGBTは入ってこないといいます。その上、どこの課が考えるべきなのか所管がわからないという言葉も聞かれました。人権担当部署と連携をとっていると言っていたにもかかわらず、です。

一連の婚活施策によって、どれだけの成果が上がっているのでしょうか。

A主任は、お見合い成立件数1000件(2015年)、成婚数は450組(全県5年間)というデータを提示し、さらに「職場の縁結びさんには合コンを設定してもらう」などともいっていました。女性活躍支援課で話を聞いているのに、「合コンは3対3がちょうどいい」といった「婚活」や「合コン」という言葉がお話を伺っている間に頻繁に飛び交いました。「女性活躍」とは合コンや婚活の事なのかという印象を抱いたくらいです。

A主任によれば、会社が結婚支援をしようとするメリットは「合コンによって、社員のコミュニケーション力を上げることになる。結婚すると会社に対する忠誠心というか、真剣度が上がる。人口減少に歯止めをかけることで社会貢献ができる」の3点だといいます。国家の少子化に貢献する企業、結婚して企業に忠誠心を尽くす社員、自治体の婚活セミナーや合コンによって市民がコミュニケーション力を上げ、企業の営業力をアップする、ということのようです。これでは、国家のために企業があり、企業のために社員がいる、そして社員は企業を通じて国家に貢献する、という風に国と自治体と市民の関係が逆転しています。市民は国家のために貢献する立場だったのでしょうか。

1時間半ほど取材しましたが、終始ノリノリで「課長、局長まで含めてポジティブシンキングの人しかない。いいことをやっているので楽しい」とA主任は、本心から楽しんでいる様子が伝わってきました。

このような「結婚早く!」「みんな結婚しよ」という結婚を急かすムードが、国の少子化対策資金を原資に醸成されているということは、「結婚=早めの子ども」が福井中だけでなく、国中で期待されているということになります。こうした空気は、結婚したくない人や子どもができない人、子どもをすぐに持てない人、子どもを欲しくない人、LGBTなどの性的少数者を追い詰めるだろうことは想像に難くありません。

年間30億の予算で出来たこと

「役所の担当者が楽しそうなのはよくわかります。人の世話をしていると何か人様のためにやっている気になってうれしいものです。責任がないからですよ」というのは富山県内で仲人会社を経営し、自らも仲人として約10年の実績を持つ片岡ゆうこさん。自治体が婚活支援を始めると聞いた時は、「黒船が来た」と真っ暗な気分になったといいます。片岡さんは、内閣府や関係大臣に「民業圧迫だ」とメールで必死のお願いまでしたそうです。

しかし現在は、自治体の婚活で失敗した方や、自治体にお世話になりたくないという方たちが片岡さんのところに駆け込んで来くるようになったそうです。「もう自治体の婚活のことをあまり悪く言わないことにしました。悪く言っていると、縦ジワができますしね」と片岡さんはカラカラと笑っていました。行政は信用できるという声もあるそうですが、自治体の婚活は成婚数が低く、単なる「出会い」の場やナンパの温床になってしまう場合もあるのだそうです。また片岡さんは「行政が企業を巻きこんでやると、結婚したくない人、結婚できない人、価値観の違う人もいるのにパワーハラスメントになりそうですね」とも指摘していました。確かに、行政が企業に号令をかけ、社員をも巻きこませるこの事業のあり方にはあまりにも多くの疑問が生じます。

なお先ほどのデータによれば、福井県は全県で平均して年間90組が成婚していることになります。ほどほどの成婚数に感じられますが、投入された税金のことを考えるとその評価は分かれるかもしれません。

福井県が婚活施策にどの程度の予算を投入しているかが不明だったため、参考までに後日訪問した富山県地方創生推進室のお話をご紹介すると、2年で3750万円の予算が計上されている富山県マリッジサポートセンターは、2年で1200人の会員登録と60組の成婚を目標にしているようです。しかし実際に達成されたのは、739名(男497名、女242名)の会員と16組の成婚、ということでした。

富山県の担当者に、費用対効果はどうご覧になっておられますかと尋ねると「H28年度に成立したカップル数(H28.10月末までの実績)でみますと、81組成立し、事業効果があったと考えております。」という回答でした。しかしながら、これはカップルが「出会った」ことを指しており、成婚にまで行き着くかどうかわからない数字です。実際、4000万円近く税金を投入したのに、成婚は1年10組にも届いていないということになります。

実は、この莫大な予算をかけた婚活支援については、河野太郎行革大臣による無駄遣いを検証する「行政事業レビュー」(2015年10月)でも検討され、「余り使い勝手のよくない」、「効果があったのか、今後、見直しを求める評価となった」とマスコミでも報じられました。「市役所が本当に街コンとか婚活、やる必要があるんですか。民間あるじゃないですか。主体が行政であるべきなのか。民間のだとお金がかかるという場合などは、利用者への補助でもいいのでは」「目的に対して手段がどうか、という点で行政じゃないといけないか、測定可能なやり方で評価を出すべき」などの有識者からの意見も出ています。

また、少子化対策と男女共同参画と両方の所管大臣である加藤大臣に「婚活支援に年間30億も出すのなら、性犯罪、性暴力被害者のための駆け込み寺である性暴力被害者ワンストップ支援センターに是非予算をつけてください。ワンストップ支援センターを全国に持っても23億です。今は予算も裏づけがいつまであるのかわからない、あるいは自分たちのお金を持ち出してやっておられます」と民進党の阿部知子衆議院議員は問題提起しています。

阿部議員は、「妊娠しても保険料は払い続けて、その後、出産手当もなく、育児休暇も有給ではとれない」という国保、国民健康保険に加入している自営業従業者や起業した女性に対する待遇の格差も指摘し、最低14週の出産休暇と公費による所得の3分の2負担を求め、「女性に多い非正規の問題をずっと放置していて、今少子化が問題にされるというのは、余りにも手当てすべきところを手当てしない」と言います。「女性活躍というなら、こういう非正規や、女性の起業をしている人の待遇改善をこそ、税金で予算化してほしい」と訴えてもいます。

私も、具体的に困っている女性たちを救う施策こそが真に求められている施策であると考えます。

全国津々浦々の地方自治体が国からの途方もない金額の交付金を受け取り、総力を挙げて進めている婚活事業。一体誰のために行われているのでしょうか。税金を払っている市民は納得しているのでしょうか。

子どもを産める年齢の女性たちは、「一億総活躍」という名のもとに、早く結婚させ子どもをたくさん産ませようとする国家の狙いをどう思っているのでしょうか。婚活支援という施策について、一度立ち止まって考え直してみる必要があるのではないでしょうか。

斉藤正美
富山大学非常勤講師。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程終了、博士(学術)。 専門は、社会学、社会運動研究、メディア研究。フェミニズム運動の流れを追う中で、男女共同参画政策に反対する右派運動にも関心を広げている。共著に、『社会運動の戸惑いーフェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』(山口智美・荻上チキとの共著、勁草書房2012)など。現在、『田嶋陽子論』(山口智美との共著)を執筆中。Twitter @msmsaito

国家プロジェクトと化した「婚活」 莫大な税金投入は誰のため?

内閣府が少子化対策として進める「結婚応援全国フォーラム」の写真を見て、結婚といいつつ、おじさんばかりで結婚する当事者がいない違和感をツイッターに書き込んだところ、「相変わらずおっさんだらけ」や「写真のみならず資料もクラクラするのがてんこ盛りだった件」などと政府の婚活事業が役所や企業の人たちで進められていることへの疑問などが多く表明されました。ツイッターでは、福井県が事業として行なっている結婚や出会いの相談を受けるボランティアの「縁結びさん」から「誰か独身の女の人はおらんか?」と聞かれ、仕方なく友人を紹介したところ、その友人は縁結びさんから会うなりため口で「選りごのみするな。自分の歳を考えろ。女は結婚さえすればいい」と説教され、結果的に友人を失うことになってしまったという悲劇も語られていました。

結婚応援フォーラムで紹介されている事例には、銀行に「婚活デスク」を置き専従担当者を配置する、結婚を世話するシニアを組織し「婚シェルジュ」制度を導入する、4人制の「タッチバレー」に40歳未満の男女を参加させ懇親させる等々があり、全国の自治体、企業や各団体に号令をかけ、婚活支援に総掛かりで乗り出している様子が浮かび上がります。

婚活は、いまや国家プロジェクトなのです。加藤勝信少子化・男女共同参画担当大臣は、結婚応援フォーラムに参加するため全国を飛び回っています。2013年度には「地域少子化対策強化交付金」が創設され、30.1億円、翌2014年度も同額、併せておよそ60億が計上されています。「結婚・妊娠・出産・育児の切れ目ない支援」がキーワードで、その中でも婚活・結婚支援に大きな金額が使われています。8月に発表された2016年度補正予算では、少子化対策交付金に40億があてられ、婚活支援などにとてつもない金額の税金が投入されています。

2015年度には、北海道から沖縄まで全国の47都道府県すべてがこの事業に取り組んでおり、その事業総数は、353件に及んでいます。全国津々浦々の市町村がこぞって政府の交付金に飛びつき、婚活・結婚支援を含む「切れ目のない支援」に邁進しているのです。

例えば福岡県が運営する結婚・子育て応援サイトでは、「あなたのライフプラン」を考えようというデモンストレーションがあります。これは「結婚は何年後にする?」「子どもは何人ほしい?」などの質問で、結婚への意欲や欲しい子どもの数を回答すると、その後のライフプランが示されるというものです。「パートナーに出会えそうなのはあなたが何歳の時?」「結婚はあなたが何歳の時にする予定?」などと結婚について具体的な希望を持っていないと前に進めないものですし、子どもについては、選べるのは「1人、2人、3人、4人、5人」。子どもを持たないという選択肢は選ばせてもらえない仕掛けになっています。

福岡県のサイトはピンクやオレンジの色合いで、見かけだけでは「ポジティブ・キャンペーン」というソフトな印象を受けますが、戦前の「産めよ増やせよ」の発想がゲーム仕立てで甦っており、不気味です。

いま若い女性たちを早く結婚させ子どもをたくさん産ませようと、国家が自治体・企業・団体を交付金・補助金という撒き餌で釣る「一億総活躍」という名の国家総動員が進行中なのです。

「めいわくありがた縁結び」——福井県の取り組み

実際に現場ではどういうことが起きているのでしょうか。実態を知りたいと、平成28年6月3日現在での交付金優良事例として選ばれている「めいわくありがた縁結び」を実施中の福井県に取材に行きました。

県庁に行くとさっそく目に付いたのが「プロポーズ ハイかYESで答えてね。」といったフレーズが書かれた3枚の結婚応援ポスターのパネル(写真1)でした。隣には、「ふくい結婚応援企業が100社到達!」という、女性を真ん中に回りを企業名が取り囲み、ハートのスタンプやハートの折り紙が満載の営業成績表のようなボード(写真2)が派手派手しく展示してありました。

ボードの下には、結婚応援のチラシ類もたくさん添えてありました。福井県庁が一丸となって結婚応援に邁進しているさまがみてとれます。

女性活躍推進課の「女性活躍推進課出会い創出支援グループ」主任のAさんに話を聞いたところ、福井県では新たに人口減少対策のためにふるさと県民局という局まで創設したこと、そして女性活躍推進課はその中に置かれており、結婚支援、女性活躍、NPO支援・男女共同参画の3つのセクションが置かれていると説明してくれました。

福井県の政策について聞くと、結婚に向けた意識の醸成をはかるCM 動画が並べられたページなどがある「結婚応援サイト」を作ったこと、「自分磨きで婚活力を向上」などという婚活セミナーで出会いを図っていること、さらに昨年2015年からは企業・団体内に、「職場の縁結びさん」を置き、独身従業員の結婚を応援するという「職場のめいわくありがた縁結び」という仕組みも始めたとのことです。この「めいわくありがた縁結び」というネーミングを作ったのは、なんと西川一誠福井知事自身なのだそうです。その他、結婚のお世話をする民間人である結婚相談員として、福井県全県で180人を、2010年からは新たにブライダル業や理容・美容業、お寺の住職、退職教員など250人を「地域の縁結びさん」として登録しているとも言っていました。

県が結婚支援に力を入れることに対して疑問はないかとA主任さんに尋ねたところ、「私たちは、結婚を望む方にお相手を紹介するだけですし、NPO法人全国地域結婚支援センター(東京都)や、福井県の人権担当部署にも連携をとってやっている(から何の問題もない)」と胸を張っていました。

A主任によれば、「職場の縁結びさん」には「独身の方に物が言えるような人」で「職場の先輩とか同僚とかの既婚者」が選ばれるそうです。結婚をすすめられる側に断りづらい雰囲気があることが想像できます。小さい会社だと社長さんが「縁結びさん」になる場合もあるというので、「社長さんに言われたら社員の方は断りづらくて大変じゃないですか」というと、「ですかねーたぶん」との他人事のような答え。「でも、思われているのとは違って福井は、中小企業がすごく多く、家族みたいというか、上と下がすごく近いといいますか」と言います。社長が「縁結びさん」になっている「家族みたい」な福井の中小企業で働いたら、もれなくお見合いがついてくるのではないかという怖れを覚える人もいるのではないでしょうか。

「職場の縁結びさん」は、独身の人に「あんた(結婚は)どうなのー」と声を掛けるそうです。「声を掛けられた人はいやじゃないですか?」と尋ねましたが、行政としては気にならないようでした。クレームの有無について聞くと、「私もだいじょうぶかな? と行政なのでいつもリスクを思うんです」と言いつつ、「今のところクレーム一つないんですよ」と胸を張っていました。

「LGBTの人は嫌でしょうね」というと、「そこはどうなんですかね」と笑いつつ「嫌な人には強制しないですから。単に掲示だけにするとか、事前に送っていいかという確認をした人にだけしかメールを送らない」と答えていました。「人口の5〜8%のLGBTのことは考えないといけないのでは。当事者は息苦しいと思う」と水を向けると「行政としては考えないといけないんでしょうけど、実際、そこまでは配慮していない」と言い、少子化対策のうちの課の範疇にはLGBTは入ってこないといいます。その上、どこの課が考えるべきなのか所管がわからないという言葉も聞かれました。人権担当部署と連携をとっていると言っていたにもかかわらず、です。

一連の婚活施策によって、どれだけの成果が上がっているのでしょうか。

A主任は、お見合い成立件数1000件(2015年)、成婚数は450組(全県5年間)というデータを提示し、さらに「職場の縁結びさんには合コンを設定してもらう」などともいっていました。女性活躍支援課で話を聞いているのに、「合コンは3対3がちょうどいい」といった「婚活」や「合コン」という言葉がお話を伺っている間に頻繁に飛び交いました。「女性活躍」とは合コンや婚活の事なのかという印象を抱いたくらいです。

A主任によれば、会社が結婚支援をしようとするメリットは「合コンによって、社員のコミュニケーション力を上げることになる。結婚すると会社に対する忠誠心というか、真剣度が上がる。人口減少に歯止めをかけることで社会貢献ができる」の3点だといいます。国家の少子化に貢献する企業、結婚して企業に忠誠心を尽くす社員、自治体の婚活セミナーや合コンによって市民がコミュニケーション力を上げ、企業の営業力をアップする、ということのようです。これでは、国家のために企業があり、企業のために社員がいる、そして社員は企業を通じて国家に貢献する、という風に国と自治体と市民の関係が逆転しています。市民は国家のために貢献する立場だったのでしょうか。

1時間半ほど取材しましたが、終始ノリノリで「課長、局長まで含めてポジティブシンキングの人しかない。いいことをやっているので楽しい」とA主任は、本心から楽しんでいる様子が伝わってきました。

このような「結婚早く!」「みんな結婚しよ」という結婚を急かすムードが、国の少子化対策資金を原資に醸成されているということは、「結婚=早めの子ども」が福井中だけでなく、国中で期待されているということになります。こうした空気は、結婚したくない人や子どもができない人、子どもをすぐに持てない人、子どもを欲しくない人、LGBTなどの性的少数者を追い詰めるだろうことは想像に難くありません。

年間30億の予算で出来たこと

「役所の担当者が楽しそうなのはよくわかります。人の世話をしていると何か人様のためにやっている気になってうれしいものです。責任がないからですよ」というのは富山県内で仲人会社を経営し、自らも仲人として約10年の実績を持つ片岡ゆうこさん。自治体が婚活支援を始めると聞いた時は、「黒船が来た」と真っ暗な気分になったといいます。片岡さんは、内閣府や関係大臣に「民業圧迫だ」とメールで必死のお願いまでしたそうです。

しかし現在は、自治体の婚活で失敗した方や、自治体にお世話になりたくないという方たちが片岡さんのところに駆け込んで来くるようになったそうです。「もう自治体の婚活のことをあまり悪く言わないことにしました。悪く言っていると、縦ジワができますしね」と片岡さんはカラカラと笑っていました。行政は信用できるという声もあるそうですが、自治体の婚活は成婚数が低く、単なる「出会い」の場やナンパの温床になってしまう場合もあるのだそうです。また片岡さんは「行政が企業を巻きこんでやると、結婚したくない人、結婚できない人、価値観の違う人もいるのにパワーハラスメントになりそうですね」とも指摘していました。確かに、行政が企業に号令をかけ、社員をも巻きこませるこの事業のあり方にはあまりにも多くの疑問が生じます。

なお先ほどのデータによれば、福井県は全県で平均して年間90組が成婚していることになります。ほどほどの成婚数に感じられますが、投入された税金のことを考えるとその評価は分かれるかもしれません。

福井県が婚活施策にどの程度の予算を投入しているかが不明だったため、参考までに後日訪問した富山県地方創生推進室のお話をご紹介すると、2年で3750万円の予算が計上されている富山県マリッジサポートセンターは、2年で1200人の会員登録と60組の成婚を目標にしているようです。しかし実際に達成されたのは、739名(男497名、女242名)の会員と16組の成婚、ということでした。

富山県の担当者に、費用対効果はどうご覧になっておられますかと尋ねると「H28年度に成立したカップル数(H28.10月末までの実績)でみますと、81組成立し、事業効果があったと考えております。」という回答でした。しかしながら、これはカップルが「出会った」ことを指しており、成婚にまで行き着くかどうかわからない数字です。実際、4000万円近く税金を投入したのに、成婚は1年10組にも届いていないということになります。

実は、この莫大な予算をかけた婚活支援については、河野太郎行革大臣による無駄遣いを検証する「行政事業レビュー」(2015年10月)でも検討され、「余り使い勝手のよくない」、「効果があったのか、今後、見直しを求める評価となった」とマスコミでも報じられました。「市役所が本当に街コンとか婚活、やる必要があるんですか。民間あるじゃないですか。主体が行政であるべきなのか。民間のだとお金がかかるという場合などは、利用者への補助でもいいのでは」「目的に対して手段がどうか、という点で行政じゃないといけないか、測定可能なやり方で評価を出すべき」などの有識者からの意見も出ています。

また、少子化対策と男女共同参画と両方の所管大臣である加藤大臣に「婚活支援に年間30億も出すのなら、性犯罪、性暴力被害者のための駆け込み寺である性暴力被害者ワンストップ支援センターに是非予算をつけてください。ワンストップ支援センターを全国に持っても23億です。今は予算も裏づけがいつまであるのかわからない、あるいは自分たちのお金を持ち出してやっておられます」と民進党の阿部知子衆議院議員は問題提起しています。

阿部議員は、「妊娠しても保険料は払い続けて、その後、出産手当もなく、育児休暇も有給ではとれない」という国保、国民健康保険に加入している自営業従業者や起業した女性に対する待遇の格差も指摘し、最低14週の出産休暇と公費による所得の3分の2負担を求め、「女性に多い非正規の問題をずっと放置していて、今少子化が問題にされるというのは、余りにも手当てすべきところを手当てしない」と言います。「女性活躍というなら、こういう非正規や、女性の起業をしている人の待遇改善をこそ、税金で予算化してほしい」と訴えてもいます。

私も、具体的に困っている女性たちを救う施策こそが真に求められている施策であると考えます。

全国津々浦々の地方自治体が国からの途方もない金額の交付金を受け取り、総力を挙げて進めている婚活事業。一体誰のために行われているのでしょうか。税金を払っている市民は納得しているのでしょうか。

子どもを産める年齢の女性たちは、「一億総活躍」という名のもとに、早く結婚させ子どもをたくさん産ませようとする国家の狙いをどう思っているのでしょうか。婚活支援という施策について、一度立ち止まって考え直してみる必要があるのではないでしょうか。

斉藤正美
富山大学非常勤講師。お茶の水女子大学大学院人間文化研究科博士後期課程終了、博士(学術)。 専門は、社会学、社会運動研究、メディア研究。フェミニズム運動の流れを追う中で、男女共同参画政策に反対する右派運動にも関心を広げている。共著に、『社会運動の戸惑いーフェミニズムの「失われた時代」と草の根保守運動』(山口智美・荻上チキとの共著、勁草書房2012)など。現在、『田嶋陽子論』(山口智美との共著)を執筆中。Twitter @msmsaito

マッサージ技術免許取得者も! 元AV男優が営む「極上女性向け風俗」の存在

とあるパーティで15000人以上のセクシー女優を抱いた男・加藤鷹さんに出会った時、あのゴールデンフィンガーにどうしても触れてみたくて、ご本人に握手を求めちゃったんです。自分も芸能界にいた経験があるので、有名人に出会ってもミーハーな気持ちになったことは一度もなかったのですが、「これが好奇心なんだ♪」と自分ではっきりわかった瞬間でした。「どんな気持ちいい手をお持ちなんだろう……」と想像しちゃったんですよね(笑)。

大なり小なり「セックスで今まで感じたことのない快楽を味わってみたい……」「もっと気持ち良くなってみたい……」という願望は多くの人が持っているのではないでしょうか。

そんな女性の願望を叶えてくれる手段のひとつに『女性向け風俗』や『出張ホスト』などの選択肢があるわけですが、ネットでお店を検索しても、不安要素が多くなかなか手を出せないという声をよく聞きます。

しかし、実際にAVに出演していた男性が快楽へ誘ってくれたらどうでしょう? 他の男性たちよりは不安要素が少ないですよね。そんな極上(?)女性向け風俗を営む、元AV男優さんを元彼に紹介されたことがありました。

その彼は、1000本以上の作品に出演しているので、事前に容姿も確認できるし、実際に会う前に出演作品を見て妄想して気分を高めたり、プレイのオーダーもしやすいはず♡ 過激なスキンシップを求めていない方には、本格派セラピストとして海外のマッサージ技術の免許を取得した男性が、体をほぐしてくれるそう。女性向け風俗の利用を考えている方は、ぜひ参考にしてみてくださいね♪

ちなみに……
その男性を紹介された元彼と別れてから1年くらいが経ち、お店のHPを閲覧してみたら、セラピストとして元カレも登場しておりましたとさっ……チャンチャンっ♪(苦笑)

■ 谷川明日香
芸能経験を経てライフスタイル、美容の会社を設立。モテ男育成や婚活講座の講師や男性用コスメ「オールインワンメンズケア」をプロデュース。TVなどメディアでバイセクシャルをカミングアウトしている。

女子の鮮烈な欲望まみれだった少女漫画とレズビアン偏見の罪/椎名あゆみ『あなたとスキャンダル』

 椎名あゆみの代表作といえば、大人っぽい小学6年美少女と長身中学生男子の恋を描いた『ベイビィ☆LOVE』(1995~1998年)であるが、今回はあえてその前作にあたる『あなたとスキャンダル』(1993~1995年)について取り上げたい。高校生バンドの世界を描いた『あなスキャ』は、タイトル通りスキャンダラスなエピソードが次から次へと巻き起こり、臨場感あふれるシーンも多く、いちいち興奮させられて目が離せなくて、また登場人物たちの性格や行動が比較的ストレートでわかりやすいので、小学校低学年の女児にも読みやすい作品だった。スピーディーな展開とドリーミーな設定が魅力の『あなスキャ』、個人的には『カノジョは嘘を愛しすぎてる』みたいに実写映画にすればよかったのに!と思ってしまう。いや、キャスティングがまず難しすぎるか……。

 主人公は、ミーハーな女子高生・高崎友香(たかさき・ともか)15歳。お嬢様学校として知られる星蘭女子高校に通う1年生だが、友香を含む生徒たちの実態は、言葉遣いも汚い“お下品なお嬢様たち”。となりには金持ちの子息が通う星条男子高校があり、両校は合同で高校生とは思えないリッチなパーティーを開くなど、交流が盛んだが、友香はそもそも男嫌いで、となりの男子高は「お高くとまった気取った奴らが多い」と、良い印象を持っていない。友香が恋い焦がれているのは週に一度、ピアノのレッスンに向かう電車の中で見かける名前も知らない長身美形の「王子様」で、隠し撮りのためにカメラを持っていこうと企んだりする。

 そんなある日、友香はとなりの男子高の2年生・宮沢新(みやざわ・あらた)と接点を持つ。友香は憶えていなかったが、新はかつて友香と同じピアノ教室に通っていた時期があり、友香のピアノの腕前を知っていた。バンドを結成したばかりの新は、ぜひとも友香にキーボードを担当してほしいと考え、友香のことを探していたのだった。新にチケットを渡され、女子高と男子高の合同パーティー(ものすごく立派なホテルが会場!)に出向いた友香は、バンド演奏のステージを見てびっくり! ボーカルの彼はなんと、友香が毎週電車で見かけていた例の王子様だったのだ。そしてこのあと、とんでもない展開が待っていた。演奏終了後、コーラに酔った勢いとどさくさに紛れて彼に抱きつく友香。そのまま眠りについて目を覚ましても酔いが醒めておらず、彼に「好きです」と告白! それに対する彼の答えは、「あたしそーいう趣味ないから」。友香同様、多くの読者もこの時「!」となったであろう。だが、信じられないことに、彼、ではなく彼女、結城芹香(ゆうき・せりか)は、正真正銘「女」だったのである。当然友香は大ショック、「信じない!」とややヒステリックに叫んで現実逃避。連載がはじまった頃の友香は、男に免疫のない夢見る女の子。しかも落ち着きがなく、思い込みが激しく、暴走気味で鈍くさい。りぼん読者が憧れるタイプでも共感できるタイプでもなかった。逆に言えば、りぼん読者にとって等身大のキャラクターではあったかもしれない。

 でも、友香のピアノの腕前は凄いらしい。パーティーの翌日、新以外のバンドメンバーも女子高の音楽室で友香の演奏を聴き圧倒される。うちのバンドでキーボードをやらないかと、この時友香は正式に誘われるのだが、昨日のショックが尾を引いている友香はそれどころじゃない。放課後は校門のところで芹香が友香を待っていた。女子高の友達は皆、芹香が男だとは気づいておらず、友香を羨ましがってくる。「こいつらに『実は女でした』なんてまぬけなこといえるか」、と友香は内心ひやひや。芹香は、バンド加入の話を真剣に考えてくれないかと話す一方、友香の一目惚れに対しては「幻想」「笑っちゃうよ」とあまり取り合う様子はない。カチンときた友香は「女だとわかった今でもその気持ちはこれっぽっちも変わっていないわよ!!」と反発、バンドの話を引き受ける。友香がバンドに加わって、物語は本格的に動き出す。プロデビューを目指すバンド活動と恋愛ドタバタが絡まり合って、ハイペースに進行していく。

 バンド名はスパイラル(SPIRAL)で、メンバーは5人。キーボード担当の友香以外の4人をここで紹介する。ボーカル担当の結城芹香、16歳。女性でありながら、ビジュアルは至って男性的で背も高く、友香のみならず多くの女性がハマるような“イケメン”で、クォーターゆえ髪色は明るく、人目を惹きつける容姿が相まって、黙っていても存在感があって目立つタイプ。高校には通っておらず、5匹の猫とアパートで暮らし、バンド練習以外はバイトに明け暮れているのだが、何やらワケありの模様だ。 実は元華族の由緒正しい家で生まれ育った芹香だが、さまざまな背景から居心地の悪い思いをしていた。28歳の製薬会社専務と見合いをさせられたことでついに父親にぶち切れ、家出していた。後半、この婚約者に一流ホテルのスイートルームに監禁されるくだりもある。

 ギター担当の小椋武巳(おぐら・たけみ)、16歳、通称タケ。星条男子高の2年生だが、髪を腰まで伸ばすなど男子高校生らしからぬ風貌、すぐに女の子を口説きはじめる性癖があり、となりの女子高では「星条1のサイテー男」と呼ばれている。イケメン設定だが音痴でもあり、ギターを鳴らして歌うのは長渕剛だったりもする。読者には通じないよな……。このタケにマジ惚れしているのが友香の同級生で生粋のお嬢様女子なのだが、このコも相当良いキャラだった。

 ベース担当の中川保(なかがわ・たもつ)、15歳、星条男子高の1年生。ツリ目が特徴的で性格もクールで不愛想だが、バンドに対する意識や情熱は高い。年上の彼女アリ。登場人物の中では一番地味な役回りだったかもしれない。そして最後に、友香をキーボードに推薦した宮沢新、16歳はドラム担当。両親は既に他界し肉親は祖母のみだが、祖母(かなりパワフル!)は下宿屋(時代を感じる!)を営んでおり、にぎやかな環境で暮らしている。明るく社交的な性格の新はバンドのムードメーカーだ。嘘をつくのはヘタクソだが、実は冷静沈着で頭の回転も速かったりして頼りがいもある。新自身は友香に好意を抱いているのだが、芹香に対する気持ちの整理がつかないままの友香のことを励ましたり慰めたり。しかし友香の心は芹香でいっぱいで、歯がゆい思いをする。このもどかしい恋愛と、バンドのサクセスストーリーの両軸で物語は展開していく。

愛情表現だけじゃない、性的欲求としてのキス

 芹香はクールに見えてお人好しな性格もあり友香を拒み切れず、なんだかんだで友香と芹香は距離を縮めていくが、その関係性は“同性愛”ではなく、“姉妹”か“友達”。友香自身も、芹香に対する独占欲は強くても、結局のところノンケだし、レズビアンを「変態」扱いしているし(それは同作の登場人物全員がそうなのだが)性的な意味での欲求はない。もしほんとうに同性恋愛が展開されていけば、りぼん作品としては異例だっただろうが、友香の初恋は「ときめいた相手が実は女だった」にとどまっている。

 スパイラルの合宿中、自分の気持ちをごまかせなくなった新は勢いで友香に告白。友香は新を恋愛対象として意識したことがなかった(と、新にはっきり言ってしまう!)。いつも元気で明るくて自分のよき理解者であると思っていた新からの告白に友香は戸惑い、そんな友香に、新は「絶対こっちむかせる」と宣言。何かと友香を気にかけていた新と、そんな新を信頼していた友香は、傍から見ると結構いいムードだったりもする。大体友香は芹香に思いを寄せながらも、新がドラム練習しているところに出くわした時は彼の演奏に「すごい かっこいい」とか言っていて、深い意味もなくただ思ったことを口にしただけなのだろうけど、新にしてみればふたりだけの場所でそんなこと言われたらうれしいに決まっているし、友香に対する思いが募っていくに決まっているのだ。うーん、友香って残酷! 自分の見ているもの以外目に入らないという、10代特有の残酷さと純粋さを十二分に持ち合わせている友香だったが、新の告白を機にどことなく新のことを意識するようになり、「新くんがあたし以外の人にやさしいのはイヤだ」と思っている自分に気づいていく。

 ではバンド活動はどうなっているのかというと、恋愛ドタバタの最中でもこちらは順調に進んでいた。スパイラルの目標はずばりプロデビュー。彼らの音楽に対する姿勢は大真面目でストイックだ。放課後の部活動のノリでスタジオに通っているわけじゃないのだ。最初こそ芹香目当てでバンドに入った友香も、「毎日がドキドキの連続」で、バンドに入ってよかったと思う。漫画なので音源は存在しないが、スパイラルのメンバーたちはみんな実力派で素人離れしている。ボーカル担当の芹香に至っては、タケが「今の日本でおまえ(芹香)ほどうたえる奴はいないぜ」と絶賛し、友香も「あの才能のためならなんでもしてあげたい」と賛同しプロデビューを目指すことに異論はない。15~16歳の高校生が主体的に集まったバンドが結成して間もなく実力派って……どえらい話である。また、スパイラルのチームワークと信頼関係がとんでもなく強靭だということが物語の中盤以降、読めば読むほど伝わってくる。

 高校生バンドが対象のコンテストがあり、グランプリを獲得すればCDデビューができる。スパイラルは難関のテープ審査を見事通過、関東大会の出場が決まる。このステージがきっかけで、スパイラルはレコード会社の女社長からデビューの話を持ち掛けられるが、コンテストの裏事情(実は出来レースだった)を聞かされて憤慨、女社長相手に遠慮なく文句をぶつけ「おばちゃん」呼ばわり……。スパイラルは怖いもの知らず、ピュア過ぎる。しかし女社長は「あなたたちがうちと契約してくれるなら、借金はチャラにしようと思ったんだけど」。例のコンテストでひと悶着あり、スパイラルが暴れまくったせいであらゆる機材が故障したのだ(証拠VTRあり)。その負債額、高校生にはいかんともしがたい600万円。ひぇー。

 ここから、芹香の謎めいた生い立ちや実家との確執、婚約者問題、そして失踪、タケから芹香への告白などなど、ほとんど芹香が主人公のような展開が続くが(人気キャラだったんだろうなあ)、他方、友香と新の関係もまた、小学生読者には刺激的な進展が描かれる。帰省中の芹香に会いにみんなで旅行しようと友香が提案、当日タケと保があえてドタキャン、友香と新ふたりきりで行くことに。旅館で過ごす夜、物音に怯えて新に抱きつく友香。浴衣姿ということも相まって、なかなかエロい。新の理性、自制心、平常心はガラガラと崩れ落ちていく。ものすごく露骨にセックスを連想させられる、きわどいシーンだ。しかし読者の期待とは裏腹に、その瞬間までセックスの予感など微塵も抱いていなかった友香は、拒絶して部屋を飛び出す。追いかけて「好きな女抱きしめたいと思て何が悪いねや!!」と叫ぶ新。「キスしたい」じゃなくて「抱きしめたい」かぁ! さらに「ゆかた1枚で抱きつかれた俺の身にもなれえや!」とも。「新くんがそおゆう人だとは思わなかった!!」と友香。高校生のセックスに対する認識の、男女間のズレがむき出しに……。この10ページ余りに渡る一連の展開に、小学生読者の頭はギンギンだっただろう。『りぼん』のラブシーンって大抵はキスに重点を置いていて、だからキスシーンはたくさん出てくるのだが、「性的欲求」というより「愛情表現」の意味合いを強調したものが多かった。その点で、絵にしろ台詞にしろ『あなスキャ』のラブシーンは、際どいラインまで突っ込んでいたといえる。男3人と旅行に行くという友香に対して星蘭女子の友達が言う「危ないじゃないの! 普段いい人でもいつ豹変するかわかんないんだよ!?」とか、芹香がホテルに監禁された時のタケの「男が女を監禁してやることといったらひとつだろーが!」とか、エロを連想させる台詞は多い。

 旅館での件があったあとも、友香はなかなか新と向きあわない(読んでいてイライラ)が、帰ってきた芹香の後押しでようやく自分の恋愛感情が誰に向いているのかを自覚、ついに友香と新は両想いになる。バンド活動はというと、レコード会社の女社長が再び現れ、別途コンテストにスパイラルを推薦。以前メンバーたちと商品扱いしたことを詫び、1日も早く世に出て欲しいとエールを送る。コンテストに出場したスパイラルは、晴れてCDデビュー。友香は「あたしたち恋人にはなれなかったけど親友にはなれるよね…?」と芹香に語りかけ、この世でたった1人だけのあたしの王子様は新だと悟って、もうこれ以上ないくらいのハッピーエンドで物語は終わった。

レズビアン=変態、という前提

 90年代「りぼん」はヒット作を連発しているが、その多くは、恋愛だけを題材にするのではなく、家庭事情や社会問題といった「大人」の動向に重きを置き、大人に翻弄される「子ども」の成長を描いている。『あなスキャ』にもその傾向は見られるが、他作品と趣が違うのは「大人の影がとっても薄い」ことだ。そのぶん、超ドリーミー。スパイラルは、高校生が自分たちの勝手で作ったバンドであり、彼らは自分の信じる方向のみを見据え、とにかく自力で何でも解決しようとする。大人に失望しているわけじゃないけど、大人をあてにするつもりはない。芹香を除く4人は金持ちの通う学校に在籍する高校生だから、経済的に裕福な保護者に依存しているだろうけど、作中彼らの親はほとんど出てこなくて、“うざい親”の干渉を受けることなく好き勝手にドタバタやっている高校生たちの姿は読者から見るとやたら楽しそうで、理想郷ともいえる。金だけ出して一切干渉してこない親たち、最高過ぎる! 現実の高校生はもっと子どもだし大人に依存しているし、バンドのプロデビューだってこんなにトントン拍子に運ばないし、話せばわかる大人ばっかりじゃないことを高校生になって知ったけど、『あなスキャ』連載当時小学校低学年だった私から見たスパイラルの面々は「理想の高校生」で、ものすごくかっこよかった。小学生にとって高校生は死ぬほど大人だったということを、今回『あなスキャ』を読み返して思い出した。

 当初、主人公の友香は、ピアノはうまいけど鈍くさくて“ビミョーな感じ”の主人公だった。ところが物語が進むにつれ、自分の才能を発揮する場ができて、バンド仲間にも大事にされている友香のことがだんだん羨ましくなった。駆け引きとか媚びとか、いわゆる“小悪魔ちゃん”を一切やらずして、つまり何の努力もなく地のまま「チーム男子の紅一点」というものすごく美味しいポジションにいられる友香。そんな友香を主人公とした『あなスキャ』は、女のいやらしい欲望存が分に詰まった作品ともいえる。作中、主人公の友香のみを中心に展開するのではなく、メインキャラ(友香、芹香、新)もサブキャラ(タケ、保)も含めたスパイラル5人全員に、それぞれの人間性や魅力が現れるような“見せ場”がしっかり用意されていたのもよかった。各キャラに、それなりにファンがついていただろうと思う。いわゆる“推しメン”的な感覚で、「タケ派」「新派」「保派」とかね。

 最後にひとつ特記しておくべきことがある。『あなスキャ』が連載されていたのは約20年前であり(ってことは、スパイラルはもうアラフォーなのか!)、当時の世相を反映させた結果ともいえるが、作中レズビアン、あるいは同性愛に対する差別が当たり前のように描かれていた。物語序盤の芹香が実は女だったという騒動は、「レズビアン=変態、気持ち悪い」という前提で成り立っている。レズビアンらしき女子生徒と接触すれば「気持ち悪~い」とハンカチで手をゴシゴシ、変態がうつると大変だから離れろ、とまで言う。『あなスキャ』の徹底的な同性愛否定描写は、レズビアンである女子読者を傷つけたり、大半のノンケ女子読者に「レズって変態」と偏見を植え付けていた側面は否定できない(2008年発売の文庫版では、「変態」「気持ち悪い」といった表現に修正がかかっている)。同性愛否定に疑問を投げかける登場人物は最後まで登場しなかった。高校生バンドがやりたい放題でスピーディーに展開する『あなスキャ』は、今読み返してもハラハラドキドキ、とても魅力が詰まった作品だが、それだけに同性愛否定描写が強かったことが残念事項でもある。

女子の鮮烈な欲望まみれだった少女漫画とレズビアン偏見の罪/椎名あゆみ『あなたとスキャンダル』

 椎名あゆみの代表作といえば、大人っぽい小学6年美少女と長身中学生男子の恋を描いた『ベイビィ☆LOVE』(1995~1998年)であるが、今回はあえてその前作にあたる『あなたとスキャンダル』(1993~1995年)について取り上げたい。高校生バンドの世界を描いた『あなスキャ』は、タイトル通りスキャンダラスなエピソードが次から次へと巻き起こり、臨場感あふれるシーンも多く、いちいち興奮させられて目が離せなくて、また登場人物たちの性格や行動が比較的ストレートでわかりやすいので、小学校低学年の女児にも読みやすい作品だった。スピーディーな展開とドリーミーな設定が魅力の『あなスキャ』、個人的には『カノジョは嘘を愛しすぎてる』みたいに実写映画にすればよかったのに!と思ってしまう。いや、キャスティングがまず難しすぎるか……。

 主人公は、ミーハーな女子高生・高崎友香(たかさき・ともか)15歳。お嬢様学校として知られる星蘭女子高校に通う1年生だが、友香を含む生徒たちの実態は、言葉遣いも汚い“お下品なお嬢様たち”。となりには金持ちの子息が通う星条男子高校があり、両校は合同で高校生とは思えないリッチなパーティーを開くなど、交流が盛んだが、友香はそもそも男嫌いで、となりの男子高は「お高くとまった気取った奴らが多い」と、良い印象を持っていない。友香が恋い焦がれているのは週に一度、ピアノのレッスンに向かう電車の中で見かける名前も知らない長身美形の「王子様」で、隠し撮りのためにカメラを持っていこうと企んだりする。

 そんなある日、友香はとなりの男子高の2年生・宮沢新(みやざわ・あらた)と接点を持つ。友香は憶えていなかったが、新はかつて友香と同じピアノ教室に通っていた時期があり、友香のピアノの腕前を知っていた。バンドを結成したばかりの新は、ぜひとも友香にキーボードを担当してほしいと考え、友香のことを探していたのだった。新にチケットを渡され、女子高と男子高の合同パーティー(ものすごく立派なホテルが会場!)に出向いた友香は、バンド演奏のステージを見てびっくり! ボーカルの彼はなんと、友香が毎週電車で見かけていた例の王子様だったのだ。そしてこのあと、とんでもない展開が待っていた。演奏終了後、コーラに酔った勢いとどさくさに紛れて彼に抱きつく友香。そのまま眠りについて目を覚ましても酔いが醒めておらず、彼に「好きです」と告白! それに対する彼の答えは、「あたしそーいう趣味ないから」。友香同様、多くの読者もこの時「!」となったであろう。だが、信じられないことに、彼、ではなく彼女、結城芹香(ゆうき・せりか)は、正真正銘「女」だったのである。当然友香は大ショック、「信じない!」とややヒステリックに叫んで現実逃避。連載がはじまった頃の友香は、男に免疫のない夢見る女の子。しかも落ち着きがなく、思い込みが激しく、暴走気味で鈍くさい。りぼん読者が憧れるタイプでも共感できるタイプでもなかった。逆に言えば、りぼん読者にとって等身大のキャラクターではあったかもしれない。

 でも、友香のピアノの腕前は凄いらしい。パーティーの翌日、新以外のバンドメンバーも女子高の音楽室で友香の演奏を聴き圧倒される。うちのバンドでキーボードをやらないかと、この時友香は正式に誘われるのだが、昨日のショックが尾を引いている友香はそれどころじゃない。放課後は校門のところで芹香が友香を待っていた。女子高の友達は皆、芹香が男だとは気づいておらず、友香を羨ましがってくる。「こいつらに『実は女でした』なんてまぬけなこといえるか」、と友香は内心ひやひや。芹香は、バンド加入の話を真剣に考えてくれないかと話す一方、友香の一目惚れに対しては「幻想」「笑っちゃうよ」とあまり取り合う様子はない。カチンときた友香は「女だとわかった今でもその気持ちはこれっぽっちも変わっていないわよ!!」と反発、バンドの話を引き受ける。友香がバンドに加わって、物語は本格的に動き出す。プロデビューを目指すバンド活動と恋愛ドタバタが絡まり合って、ハイペースに進行していく。

 バンド名はスパイラル(SPIRAL)で、メンバーは5人。キーボード担当の友香以外の4人をここで紹介する。ボーカル担当の結城芹香、16歳。女性でありながら、ビジュアルは至って男性的で背も高く、友香のみならず多くの女性がハマるような“イケメン”で、クォーターゆえ髪色は明るく、人目を惹きつける容姿が相まって、黙っていても存在感があって目立つタイプ。高校には通っておらず、5匹の猫とアパートで暮らし、バンド練習以外はバイトに明け暮れているのだが、何やらワケありの模様だ。 実は元華族の由緒正しい家で生まれ育った芹香だが、さまざまな背景から居心地の悪い思いをしていた。28歳の製薬会社専務と見合いをさせられたことでついに父親にぶち切れ、家出していた。後半、この婚約者に一流ホテルのスイートルームに監禁されるくだりもある。

 ギター担当の小椋武巳(おぐら・たけみ)、16歳、通称タケ。星条男子高の2年生だが、髪を腰まで伸ばすなど男子高校生らしからぬ風貌、すぐに女の子を口説きはじめる性癖があり、となりの女子高では「星条1のサイテー男」と呼ばれている。イケメン設定だが音痴でもあり、ギターを鳴らして歌うのは長渕剛だったりもする。読者には通じないよな……。このタケにマジ惚れしているのが友香の同級生で生粋のお嬢様女子なのだが、このコも相当良いキャラだった。

 ベース担当の中川保(なかがわ・たもつ)、15歳、星条男子高の1年生。ツリ目が特徴的で性格もクールで不愛想だが、バンドに対する意識や情熱は高い。年上の彼女アリ。登場人物の中では一番地味な役回りだったかもしれない。そして最後に、友香をキーボードに推薦した宮沢新、16歳はドラム担当。両親は既に他界し肉親は祖母のみだが、祖母(かなりパワフル!)は下宿屋(時代を感じる!)を営んでおり、にぎやかな環境で暮らしている。明るく社交的な性格の新はバンドのムードメーカーだ。嘘をつくのはヘタクソだが、実は冷静沈着で頭の回転も速かったりして頼りがいもある。新自身は友香に好意を抱いているのだが、芹香に対する気持ちの整理がつかないままの友香のことを励ましたり慰めたり。しかし友香の心は芹香でいっぱいで、歯がゆい思いをする。このもどかしい恋愛と、バンドのサクセスストーリーの両軸で物語は展開していく。

愛情表現だけじゃない、性的欲求としてのキス

 芹香はクールに見えてお人好しな性格もあり友香を拒み切れず、なんだかんだで友香と芹香は距離を縮めていくが、その関係性は“同性愛”ではなく、“姉妹”か“友達”。友香自身も、芹香に対する独占欲は強くても、結局のところノンケだし、レズビアンを「変態」扱いしているし(それは同作の登場人物全員がそうなのだが)性的な意味での欲求はない。もしほんとうに同性恋愛が展開されていけば、りぼん作品としては異例だっただろうが、友香の初恋は「ときめいた相手が実は女だった」にとどまっている。

 スパイラルの合宿中、自分の気持ちをごまかせなくなった新は勢いで友香に告白。友香は新を恋愛対象として意識したことがなかった(と、新にはっきり言ってしまう!)。いつも元気で明るくて自分のよき理解者であると思っていた新からの告白に友香は戸惑い、そんな友香に、新は「絶対こっちむかせる」と宣言。何かと友香を気にかけていた新と、そんな新を信頼していた友香は、傍から見ると結構いいムードだったりもする。大体友香は芹香に思いを寄せながらも、新がドラム練習しているところに出くわした時は彼の演奏に「すごい かっこいい」とか言っていて、深い意味もなくただ思ったことを口にしただけなのだろうけど、新にしてみればふたりだけの場所でそんなこと言われたらうれしいに決まっているし、友香に対する思いが募っていくに決まっているのだ。うーん、友香って残酷! 自分の見ているもの以外目に入らないという、10代特有の残酷さと純粋さを十二分に持ち合わせている友香だったが、新の告白を機にどことなく新のことを意識するようになり、「新くんがあたし以外の人にやさしいのはイヤだ」と思っている自分に気づいていく。

 ではバンド活動はどうなっているのかというと、恋愛ドタバタの最中でもこちらは順調に進んでいた。スパイラルの目標はずばりプロデビュー。彼らの音楽に対する姿勢は大真面目でストイックだ。放課後の部活動のノリでスタジオに通っているわけじゃないのだ。最初こそ芹香目当てでバンドに入った友香も、「毎日がドキドキの連続」で、バンドに入ってよかったと思う。漫画なので音源は存在しないが、スパイラルのメンバーたちはみんな実力派で素人離れしている。ボーカル担当の芹香に至っては、タケが「今の日本でおまえ(芹香)ほどうたえる奴はいないぜ」と絶賛し、友香も「あの才能のためならなんでもしてあげたい」と賛同しプロデビューを目指すことに異論はない。15~16歳の高校生が主体的に集まったバンドが結成して間もなく実力派って……どえらい話である。また、スパイラルのチームワークと信頼関係がとんでもなく強靭だということが物語の中盤以降、読めば読むほど伝わってくる。

 高校生バンドが対象のコンテストがあり、グランプリを獲得すればCDデビューができる。スパイラルは難関のテープ審査を見事通過、関東大会の出場が決まる。このステージがきっかけで、スパイラルはレコード会社の女社長からデビューの話を持ち掛けられるが、コンテストの裏事情(実は出来レースだった)を聞かされて憤慨、女社長相手に遠慮なく文句をぶつけ「おばちゃん」呼ばわり……。スパイラルは怖いもの知らず、ピュア過ぎる。しかし女社長は「あなたたちがうちと契約してくれるなら、借金はチャラにしようと思ったんだけど」。例のコンテストでひと悶着あり、スパイラルが暴れまくったせいであらゆる機材が故障したのだ(証拠VTRあり)。その負債額、高校生にはいかんともしがたい600万円。ひぇー。

 ここから、芹香の謎めいた生い立ちや実家との確執、婚約者問題、そして失踪、タケから芹香への告白などなど、ほとんど芹香が主人公のような展開が続くが(人気キャラだったんだろうなあ)、他方、友香と新の関係もまた、小学生読者には刺激的な進展が描かれる。帰省中の芹香に会いにみんなで旅行しようと友香が提案、当日タケと保があえてドタキャン、友香と新ふたりきりで行くことに。旅館で過ごす夜、物音に怯えて新に抱きつく友香。浴衣姿ということも相まって、なかなかエロい。新の理性、自制心、平常心はガラガラと崩れ落ちていく。ものすごく露骨にセックスを連想させられる、きわどいシーンだ。しかし読者の期待とは裏腹に、その瞬間までセックスの予感など微塵も抱いていなかった友香は、拒絶して部屋を飛び出す。追いかけて「好きな女抱きしめたいと思て何が悪いねや!!」と叫ぶ新。「キスしたい」じゃなくて「抱きしめたい」かぁ! さらに「ゆかた1枚で抱きつかれた俺の身にもなれえや!」とも。「新くんがそおゆう人だとは思わなかった!!」と友香。高校生のセックスに対する認識の、男女間のズレがむき出しに……。この10ページ余りに渡る一連の展開に、小学生読者の頭はギンギンだっただろう。『りぼん』のラブシーンって大抵はキスに重点を置いていて、だからキスシーンはたくさん出てくるのだが、「性的欲求」というより「愛情表現」の意味合いを強調したものが多かった。その点で、絵にしろ台詞にしろ『あなスキャ』のラブシーンは、際どいラインまで突っ込んでいたといえる。男3人と旅行に行くという友香に対して星蘭女子の友達が言う「危ないじゃないの! 普段いい人でもいつ豹変するかわかんないんだよ!?」とか、芹香がホテルに監禁された時のタケの「男が女を監禁してやることといったらひとつだろーが!」とか、エロを連想させる台詞は多い。

 旅館での件があったあとも、友香はなかなか新と向きあわない(読んでいてイライラ)が、帰ってきた芹香の後押しでようやく自分の恋愛感情が誰に向いているのかを自覚、ついに友香と新は両想いになる。バンド活動はというと、レコード会社の女社長が再び現れ、別途コンテストにスパイラルを推薦。以前メンバーたちと商品扱いしたことを詫び、1日も早く世に出て欲しいとエールを送る。コンテストに出場したスパイラルは、晴れてCDデビュー。友香は「あたしたち恋人にはなれなかったけど親友にはなれるよね…?」と芹香に語りかけ、この世でたった1人だけのあたしの王子様は新だと悟って、もうこれ以上ないくらいのハッピーエンドで物語は終わった。

レズビアン=変態、という前提

 90年代「りぼん」はヒット作を連発しているが、その多くは、恋愛だけを題材にするのではなく、家庭事情や社会問題といった「大人」の動向に重きを置き、大人に翻弄される「子ども」の成長を描いている。『あなスキャ』にもその傾向は見られるが、他作品と趣が違うのは「大人の影がとっても薄い」ことだ。そのぶん、超ドリーミー。スパイラルは、高校生が自分たちの勝手で作ったバンドであり、彼らは自分の信じる方向のみを見据え、とにかく自力で何でも解決しようとする。大人に失望しているわけじゃないけど、大人をあてにするつもりはない。芹香を除く4人は金持ちの通う学校に在籍する高校生だから、経済的に裕福な保護者に依存しているだろうけど、作中彼らの親はほとんど出てこなくて、“うざい親”の干渉を受けることなく好き勝手にドタバタやっている高校生たちの姿は読者から見るとやたら楽しそうで、理想郷ともいえる。金だけ出して一切干渉してこない親たち、最高過ぎる! 現実の高校生はもっと子どもだし大人に依存しているし、バンドのプロデビューだってこんなにトントン拍子に運ばないし、話せばわかる大人ばっかりじゃないことを高校生になって知ったけど、『あなスキャ』連載当時小学校低学年だった私から見たスパイラルの面々は「理想の高校生」で、ものすごくかっこよかった。小学生にとって高校生は死ぬほど大人だったということを、今回『あなスキャ』を読み返して思い出した。

 当初、主人公の友香は、ピアノはうまいけど鈍くさくて“ビミョーな感じ”の主人公だった。ところが物語が進むにつれ、自分の才能を発揮する場ができて、バンド仲間にも大事にされている友香のことがだんだん羨ましくなった。駆け引きとか媚びとか、いわゆる“小悪魔ちゃん”を一切やらずして、つまり何の努力もなく地のまま「チーム男子の紅一点」というものすごく美味しいポジションにいられる友香。そんな友香を主人公とした『あなスキャ』は、女のいやらしい欲望存が分に詰まった作品ともいえる。作中、主人公の友香のみを中心に展開するのではなく、メインキャラ(友香、芹香、新)もサブキャラ(タケ、保)も含めたスパイラル5人全員に、それぞれの人間性や魅力が現れるような“見せ場”がしっかり用意されていたのもよかった。各キャラに、それなりにファンがついていただろうと思う。いわゆる“推しメン”的な感覚で、「タケ派」「新派」「保派」とかね。

 最後にひとつ特記しておくべきことがある。『あなスキャ』が連載されていたのは約20年前であり(ってことは、スパイラルはもうアラフォーなのか!)、当時の世相を反映させた結果ともいえるが、作中レズビアン、あるいは同性愛に対する差別が当たり前のように描かれていた。物語序盤の芹香が実は女だったという騒動は、「レズビアン=変態、気持ち悪い」という前提で成り立っている。レズビアンらしき女子生徒と接触すれば「気持ち悪~い」とハンカチで手をゴシゴシ、変態がうつると大変だから離れろ、とまで言う。『あなスキャ』の徹底的な同性愛否定描写は、レズビアンである女子読者を傷つけたり、大半のノンケ女子読者に「レズって変態」と偏見を植え付けていた側面は否定できない(2008年発売の文庫版では、「変態」「気持ち悪い」といった表現に修正がかかっている)。同性愛否定に疑問を投げかける登場人物は最後まで登場しなかった。高校生バンドがやりたい放題でスピーディーに展開する『あなスキャ』は、今読み返してもハラハラドキドキ、とても魅力が詰まった作品だが、それだけに同性愛否定描写が強かったことが残念事項でもある。

「膣トレ」、正直めんどくさい 頑張らなくてもゆるまん対策っ

 人類がまんこに加えてきた、美白・脱毛・装飾などなどの“まんこカスタマイズ”の歴史をふりかえる連載「まんこカスタマイズAtoZ」。今回は、「膣トレ以外で膣を締める方法」のお話です。(好評につき、連載期間延長決定!)

「セックスするのをやめたなら、あそこをキツくできますか?(Can I Make My Vagina Tighter If I Stop Having Sex?)」

 今年はじめ、アメリカの有名ヘルス&ビューティ雑誌「SELF」に載った記事のタイトルです。

 「ヤればヤるほどユルくなる」。この迷信、意外とワールドワイドみたいですね。たぶん、まんこを何かやわらかい穴みたいに考えているから、「広げたら伸びちゃって戻らない」みたいなイメージを持ってしまうのでしょう。

 ですが。

 まんこは、筋肉です。

 あるでしょう。「ほらほら、すっごい締まってきちゃったよ……?」とか言ってくる相手に(締まってんじゃねーよ締めてやってんだよwwwww)とか思いながらも「あんっ♡ あんっ♡」とか言ってあげるやさしさが、ぬくもりが、この世には。

 まんこは、筋肉です(2回目)。「ヤればヤるほどユルくなる」だなんて、とんでもない。これについては、なおえビューティクリニック院長・喜田直江医師も「迷信です」と断言していらっしゃいます。また、サンフランシスコの性科学専門家マイケル・カッスルマン氏も、こんなコメントをしています。

「口の両端を指で引っ張ってみてください。ゆるくなりました? じゃ、それ100回やってみてください。ゆるくなりました?」

 まんこは、筋肉です(3回目)。本来は使えば使うほど鍛えられるはず。そして鍛えれば、膣オーガズムを得やすくなる(いわゆる中イキ)、尿モレや子宮脱の予防になる、といったメリットが得られます。だからみんな膣トレに励むわけです。そのあたりは、過去記事「まんこも筋トレ♡ Bluetooth対応の最新膣トレグッズ」でも、膣トレ考案者・ケーゲル先生の情熱の物語とともにご紹介した通りです。

 いや、でもね。

 正直ね。

めんどくさいよね、「トレーニング」とか。

 ごめん、ケーゲル先生。

 繰り返しますが、まんこは筋肉です。ですから膣がユルいかキツいかということは、「ヤればヤるほどユルくなる」とか「小柄な女性はキツい」とかそういう話ではないわけです。むしろ、日ごろから全体的にどれだけ体を鍛えているかということに左右されるわけですね。

 ということで、膣トレの「ケーゲル体操」とかをちゃんと習慣づけられる人は、そもそも体を動かすのが好きな人なのでしょう。また、出産や加齢による筋肉の衰えでユルみを感じる人もいるわけですが、そういう場合はそもそも体操がキツいという場合もあるわけでしょう。

 膣の締まりをよくしたい。だけど膣トレとか、やってらんない。

 そんなあなたにも、膣の締まりをよくする方法があるんです。大きく分けて3つの方法を、順番にご紹介していきますね。

1.ただ座るだけ!筋トレマシーンで鍛える

 服を着たまま20分。アメリカで開発された座ったままの筋トレマシーンが、日本にやってきました。その名も、「ペルビックトレーナー」!

 ……ここまで言うとなんかこの機械を買わせようとする宣伝みたいですけど、たぶん、個人で買える値段ではないと思う(いまのところ)。ペルビックトレーナーを置いているクリニックに、ジム感覚で通うのが一般的です。

 やり方は簡単。普通の椅子に座って20分間、雑誌でも読んで待つだけ。服を脱ぐ必要もありません。もともとこちらのマシーンは、尿漏れに悩む患者向けに泌尿器科で使われていたものを、膣トレのために応用したものだそう。ぎゅっぎゅっと筋肉が動く感覚で、「効いてる♡」感を味わえそうです。

【長所】
・施術時間が短い(20分)
・薬品やメスを入れる必要がない
・座っているだけ、服すら脱がなくていいという手軽さ
・ヒップアップ効果も期待できる

【短所】
・筋トレなので、即効性が低い
・何もしないと筋肉も衰える為、通うのをやめると戻ってしまう可能性がある
・妊娠中や生理中、金属関節やペースメーカー装用の場合は不可、その他持病がある場合は要相談など、誰でも受けられるわけではない

2.なんか入れてふくらませて、穴自体を狭くする

 「鍛える系はそれだけでダルい」「何度もクリニックに通うのはめんどくさい」という方、いっそのこと膣内になんかを入れてふくらませちゃいましょう。まんこもプチ整形。専門の美容整形クリニックでは、「膣縮小術」などの名前で、くちびるをふくらませるプチ整形感覚の施術を膣にも行っています。

 重要なのは、何を入れるかです。ナチュラル派は、だんだんと自然に吸収されていくヒアルロン酸注入を行います。「一回で済ませたい!」派は、一度注入すれば半永久的に効果が持続するパールフィラー注入を行います。

 施術は麻酔をして行いますが、当日の内に帰宅してシャワーを浴びることも可能。要するに注射みたいなものなので、施術痕は針の先程度にしかならず、傷がふさがるのも早いです。

【長所】
・即効性が高い
・ダウンタイム(施術後に傷がふさがるまでの時間)が短い
・痛みが少ない

【短所】
・超音波、MRI、CTなどの検査で影として映る可能性がある(事前に医師に伝えるのがベター)
・万一アレルギーが出た場合は、注入したものを取り除かなければならない
・ヒアルロン酸の場合、ゆっくり吸収されて元に戻ってしまう(パールフィラー注入の場合は半永久的)

3.膣壁自体のコラーゲンを増やす

 最後にご紹介するのが、いわば「まんこ若返り術」。メスとか注射針はやだ~! でも筋トレもやだ~! という方向けの施術、「ウルトラヴェラ」です。

 これはもともと、顔のコラーゲンを増やしてリフトアップや小顔効果を出すという機械「ウルセラ」を、膣向けに開発しなおしたもの。子宮筋腫の治療などにも使われる超音波治療法「HIFU」で、一度あえて筋肉をいじめてあげることで、自分で再生しようとする力が働くというものです。自分の身体の自然治癒力によるものですから、効果が出始めるのは施術後3週間前後からになります。

【長所】
・痛みがほぼなく、麻酔が要らない
・ダウンタイム(施術後に傷がふさがるまでの時間)も全くない、施術当日からでも性交渉可能

【短所】
・永久に持続するわけではない(個人により、1年から1年半ほど)。定期的なメンテナンスが必要
・他の施術方法に比べて、やや高額になりがち

 本当はまあ、地道に筋トレできたらいいんでしょうけれど……毎日の仕事に、体調に、日々運動ができる人ばかりではありませんよね。そんな方向けに膣を締める方法を、今回は3パターンお伝えしました。もちろん、どれか一つ選ばなきゃ! という話ではなく、いくつかの方法を組み合わせる人もいます。

 1943年に“世界初の膣トレ”ケーゲル体操が開発されてから、約70年。これからの膣トレの未来にも、期待していきたいものです。

取材協力:婦人科形成専門・なおえビューティクリニック 喜田直江医師
http://www.naoe-clinic.net/

いつまで「25歳」に捉われる? 日本のコスメCM vs. 革新を目指すアメリカコスメCM

 日本で非難囂々(ごうごう)の挙げ句、放映中止となった資生堂インテグレートのCMを観てみた。25歳の誕生日を迎えた女性に対して、友人が「25歳は女の子じゃない。もうチヤホヤされない」と語りかけるものだ。筆者が日本にいた頃とまったく同じ「25歳」がキーワードとなっていることに驚かされた。当時、盛んに使われた「女はクリスマスケーキ」(25日を過ぎたら売れなくなる)という古いジョークそのままの世界観ではないか。

 25歳と言えば、実際には教育はもう修めた、社会経験もある程度積んで分別もつく、体力的にはまだ頑健でやりたいことのためなら無理も利く。同時に肌も体型も若く美しく、そこに大人のセクシーさが徐々に滲み始め……と、まさにベスト・エイジのはず。「25歳」を過ぎた女性を煽るCMは、資生堂がいまだに既成の概念に捉われていることの証左のように感じられた。

 一方、アメリカの化粧品メーカーは次々と革新的な広告を打っている。中でも一歩抜きん出たのがカヴァーガールだ。今秋、同社はCMに初の “ボーイ” アンバサダーを登場させた。アンバサダーとは広告に登場し、同社のメッセージを伝えるセレブ・モデルのこと。今、新製品のマスカラSo Lashy!(とってもまつ毛!)のCMを仕切っているのは、YouTube で大人気のメイクアップ・アーティスト、ジェームス・チャールズだ。弱冠17歳ながら卓越したスキルと独特のキラキラ・センスを駆使したジェームスのメイク・チュートリアル・ビデオは若い女性を夢中にさせている。

 そのジェームスと共にCMに登場するのがシンガーのケイティ・ペリー(白人)、人気女優のソフィア・ベルガラ(コロンビア生まれのラティーナ)、マルチな才能を持つDJエイミー・ファム(アジア系)、ビヨンセが紹介して人気沸騰のキュートなR&B姉妹、クロエ×ハリー(黒人)、そしてヒジャブを被ったコスメ・ブロガーのヌラ・アフィア。言うまでもなくイスラム教徒だ。

 アメリカ大統領選の直後にオンエアが始まったこのCM、アンチ・トランプ・デモ参加者の多様性をそのままコピーしたかのようのラインナップに思わずニヤリ。「どんなタイプのまつ毛にも使える」ことからキャッチフレーズは”Lash Equality” (まつ毛の平等)で、これも時勢への皮肉が込められているのかと良い意味で疑ってみたくなる。

 アメリカのコスメ・シーンはエスティローダー、ランコム、クリニーク、シセイドウなどデパートで売られる高価格ブランドと、カヴァーガールも含め、レブロン、メイベリンなどドラッグストアの棚に並ぶ大衆ブランドに大別される。たとえばマスカラならデパート・ブランドは30ドル程度、ドラッグストア・ブランドなら10ドル前後。購買者の年齢よりも所得によって分かれており、CMに起用するセレブも自ずと変わってくる。

 もちろん昔はどのブランドも一様にフェミニンな白人モデルの独壇場だったが、マイノリティの人口増加によって変化が起きた。カヴァーガールは黒人専用のサブ・ブランドQueenの広告には元ラッパーで今は俳優、シンガー、実業家として広く人気を集めるクイーン・ラティファを使っている。メイン・ブランドにも白人セレブに混じってリアーナ、ジャネル・モナイといった黒人ミュージシャンが登場し、基礎化粧品の広告には常にナチュラル・メイクのゲイのトークショー・ホスト、エレン・デジェネレスを起用した。そして今回、ついに男性の登場と相成ったのである。ちなみに同社のブランド名”CoverGirl” とは雑誌の表紙を飾る女性モデルのことであり、社名に反する人選も意に介さない英断だ。

 他方、デパート・ブランドはやや慎重かつ保守的。アメリカでは顧客の収入は人種と結びつく。高級品の購買層はやはりまだ白人が多く、例えばランコムはスポークスウーマン(=広告モデル)にジュリア・ロバーツ、ケイト・ウィンスレット、ペネロペ・クルスなどアメリカとヨーロッパの俳優を使っている。ランコムはそもそもフランスのブランドであり、ヨーロッパ俳優も起用されるわけだが、アメリカ人には欧州へのほのかな憧れもある。そんな中、2014年にルピタ・ニョンゴが同社初の黒人スポークスウーマンに抜擢されたのは驚きだった。

 ルピタはケニア人の両親のもとメキシコで生まれてケニアで育ち、4カ国語を操るケニア/メキシコの二重国籍俳優。アメリカの大学に進んで俳優として活動を始め、後にイェール大学も卒業。2013年にアメリカ映画『それでも夜は明ける』(12 Years a Slave)で奴隷主の愛人になることを強要され、そのために奴隷主の妻から虐待される奴隷女性を演じてアカデミー助演女優賞を受賞。そこから一気に人気と知名度がアップした。

 ランコムの黒人スポークスウーマンの抜擢は近年、黒人女性にも中高所得者が増え、かつ彼女たちがコスメに相当の額を投資する傾向を見越してのことだった。そうした高等教育を受けて収入の良い職に付き、可処分所得を持つ女性たちを惹き付けるために、ルピタの「錚々たる学歴」「郊外中流家庭育ちの上品さ」「ファッションセンスの良さ」は重要な要素だったのではないかと思える。

 それにしてもランコムとルピタの肌の色の取り合わせは衝撃だった。過去にドラッグストア・ブランドの広告に登場した黒人モデルは皆、肌の色が薄かった。そのほうが一般受けするからだ。また、ダークスキンは撮影が難しいというテクニカルな理由もあるだろう。そうした過去のルールをすべて取り去り、ルピタほどダークかつ美しい肌を持つ黒人女性が高級コスメ・ブランドのポスターに抜擢されたことは、いまだに新鮮な驚きなのである。

 アメリカにも「女は若いほどいい」という偏見はもちろんあるが、それを象徴する特定の年齢はない。日本では年齢と学年が完全一致し、新入社員の年齢も同じ。そこにキリのよい数字でモノゴトを区切る習慣と極端な男尊女卑の風習が重なり、生み出されたのが「25歳」ではないかと思う。この「区切る」文化が問題の根源になっているケースは他にも少なからずある。今後、日本に住む人の多様性を広げ、年齢的横並びを崩壊させるのも長い目でみればひとつのテかもしれない。

 ちなみに前出のカヴァーガールのCM、出演者がバラエティに富んでいるのは性別・人種・宗教だけではない。年齢も10 代、20代、30代、40代が混在している。ランコムのルピタ・ニョンゴも童顔だが、女盛りの33歳だ。

 結論:デパート・ブランドのランコム、ドラッグストア・ブランドのカヴァーガール。価格帯と顧客層は違えど、それぞれに革新的な広告を打ち、女性に対する既成の概念を打ち破ろうと頑張っているのである。

堂本かおる
ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。
ブログ:http://nybct.jugem.jp/
ウエブサイト:http://www.nybct.com/

いつまで「25歳」に捉われる? 日本のコスメCM vs. 革新を目指すアメリカコスメCM

 日本で非難囂々(ごうごう)の挙げ句、放映中止となった資生堂インテグレートのCMを観てみた。25歳の誕生日を迎えた女性に対して、友人が「25歳は女の子じゃない。もうチヤホヤされない」と語りかけるものだ。筆者が日本にいた頃とまったく同じ「25歳」がキーワードとなっていることに驚かされた。当時、盛んに使われた「女はクリスマスケーキ」(25日を過ぎたら売れなくなる)という古いジョークそのままの世界観ではないか。

 25歳と言えば、実際には教育はもう修めた、社会経験もある程度積んで分別もつく、体力的にはまだ頑健でやりたいことのためなら無理も利く。同時に肌も体型も若く美しく、そこに大人のセクシーさが徐々に滲み始め……と、まさにベスト・エイジのはず。「25歳」を過ぎた女性を煽るCMは、資生堂がいまだに既成の概念に捉われていることの証左のように感じられた。

 一方、アメリカの化粧品メーカーは次々と革新的な広告を打っている。中でも一歩抜きん出たのがカヴァーガールだ。今秋、同社はCMに初の “ボーイ” アンバサダーを登場させた。アンバサダーとは広告に登場し、同社のメッセージを伝えるセレブ・モデルのこと。今、新製品のマスカラSo Lashy!(とってもまつ毛!)のCMを仕切っているのは、YouTube で大人気のメイクアップ・アーティスト、ジェームス・チャールズだ。弱冠17歳ながら卓越したスキルと独特のキラキラ・センスを駆使したジェームスのメイク・チュートリアル・ビデオは若い女性を夢中にさせている。

 そのジェームスと共にCMに登場するのがシンガーのケイティ・ペリー(白人)、人気女優のソフィア・ベルガラ(コロンビア生まれのラティーナ)、マルチな才能を持つDJエイミー・ファム(アジア系)、ビヨンセが紹介して人気沸騰のキュートなR&B姉妹、クロエ×ハリー(黒人)、そしてヒジャブを被ったコスメ・ブロガーのヌラ・アフィア。言うまでもなくイスラム教徒だ。

 アメリカ大統領選の直後にオンエアが始まったこのCM、アンチ・トランプ・デモ参加者の多様性をそのままコピーしたかのようのラインナップに思わずニヤリ。「どんなタイプのまつ毛にも使える」ことからキャッチフレーズは”Lash Equality” (まつ毛の平等)で、これも時勢への皮肉が込められているのかと良い意味で疑ってみたくなる。

 アメリカのコスメ・シーンはエスティローダー、ランコム、クリニーク、シセイドウなどデパートで売られる高価格ブランドと、カヴァーガールも含め、レブロン、メイベリンなどドラッグストアの棚に並ぶ大衆ブランドに大別される。たとえばマスカラならデパート・ブランドは30ドル程度、ドラッグストア・ブランドなら10ドル前後。購買者の年齢よりも所得によって分かれており、CMに起用するセレブも自ずと変わってくる。

 もちろん昔はどのブランドも一様にフェミニンな白人モデルの独壇場だったが、マイノリティの人口増加によって変化が起きた。カヴァーガールは黒人専用のサブ・ブランドQueenの広告には元ラッパーで今は俳優、シンガー、実業家として広く人気を集めるクイーン・ラティファを使っている。メイン・ブランドにも白人セレブに混じってリアーナ、ジャネル・モナイといった黒人ミュージシャンが登場し、基礎化粧品の広告には常にナチュラル・メイクのゲイのトークショー・ホスト、エレン・デジェネレスを起用した。そして今回、ついに男性の登場と相成ったのである。ちなみに同社のブランド名”CoverGirl” とは雑誌の表紙を飾る女性モデルのことであり、社名に反する人選も意に介さない英断だ。

 他方、デパート・ブランドはやや慎重かつ保守的。アメリカでは顧客の収入は人種と結びつく。高級品の購買層はやはりまだ白人が多く、例えばランコムはスポークスウーマン(=広告モデル)にジュリア・ロバーツ、ケイト・ウィンスレット、ペネロペ・クルスなどアメリカとヨーロッパの俳優を使っている。ランコムはそもそもフランスのブランドであり、ヨーロッパ俳優も起用されるわけだが、アメリカ人には欧州へのほのかな憧れもある。そんな中、2014年にルピタ・ニョンゴが同社初の黒人スポークスウーマンに抜擢されたのは驚きだった。

 ルピタはケニア人の両親のもとメキシコで生まれてケニアで育ち、4カ国語を操るケニア/メキシコの二重国籍俳優。アメリカの大学に進んで俳優として活動を始め、後にイェール大学も卒業。2013年にアメリカ映画『それでも夜は明ける』(12 Years a Slave)で奴隷主の愛人になることを強要され、そのために奴隷主の妻から虐待される奴隷女性を演じてアカデミー助演女優賞を受賞。そこから一気に人気と知名度がアップした。

 ランコムの黒人スポークスウーマンの抜擢は近年、黒人女性にも中高所得者が増え、かつ彼女たちがコスメに相当の額を投資する傾向を見越してのことだった。そうした高等教育を受けて収入の良い職に付き、可処分所得を持つ女性たちを惹き付けるために、ルピタの「錚々たる学歴」「郊外中流家庭育ちの上品さ」「ファッションセンスの良さ」は重要な要素だったのではないかと思える。

 それにしてもランコムとルピタの肌の色の取り合わせは衝撃だった。過去にドラッグストア・ブランドの広告に登場した黒人モデルは皆、肌の色が薄かった。そのほうが一般受けするからだ。また、ダークスキンは撮影が難しいというテクニカルな理由もあるだろう。そうした過去のルールをすべて取り去り、ルピタほどダークかつ美しい肌を持つ黒人女性が高級コスメ・ブランドのポスターに抜擢されたことは、いまだに新鮮な驚きなのである。

 アメリカにも「女は若いほどいい」という偏見はもちろんあるが、それを象徴する特定の年齢はない。日本では年齢と学年が完全一致し、新入社員の年齢も同じ。そこにキリのよい数字でモノゴトを区切る習慣と極端な男尊女卑の風習が重なり、生み出されたのが「25歳」ではないかと思う。この「区切る」文化が問題の根源になっているケースは他にも少なからずある。今後、日本に住む人の多様性を広げ、年齢的横並びを崩壊させるのも長い目でみればひとつのテかもしれない。

 ちなみに前出のカヴァーガールのCM、出演者がバラエティに富んでいるのは性別・人種・宗教だけではない。年齢も10 代、20代、30代、40代が混在している。ランコムのルピタ・ニョンゴも童顔だが、女盛りの33歳だ。

 結論:デパート・ブランドのランコム、ドラッグストア・ブランドのカヴァーガール。価格帯と顧客層は違えど、それぞれに革新的な広告を打ち、女性に対する既成の概念を打ち破ろうと頑張っているのである。

堂本かおる
ニューヨーク在住のフリーランスライター。米国およびNYのブラックカルチャー、マイノリティ文化、移民、教育、犯罪など社会事情専門。
ブログ:http://nybct.jugem.jp/
ウエブサイト:http://www.nybct.com/

静かな音×丸洗いOK!有能すぎる「カナダのベストセラーバイブ」

◎SWAN トランペッター

 カナダのブランド・SWANの『Trumpetter』は、首長竜のような形が特徴的でGスポットやポルチオ刺激に最適なベストセラーバイブです。両端に太さの違う強力ローターが内蔵されているので、細いほうでスポットを刺激しても良し、太いほうで大きさを楽しんでも良しという画期的なバイブ! 見た目のデザインもシンプルで、そこまでいやらしさがなく、女性の方でも手に取りやすい商品です。

 機能はバイブレーションのみと、これまたシンプル。スイッチボタンは2つあり、長押しで振動が強まり、一度だけ押せば消えます。ボタンが光るので暗い場所でも操作しやすい上に、音が静か! 布団を一枚羽織れば何も聞こえませんよ。

 2つあるボタンを同時に三秒ほど押し続けるだけで、ロックを掛けることもできます。長年使い続けているとわかるのですが、ロック機能ってほんと便利なんですよ。さらに充電式なので電池のストックも必要ありません。旅先へ持って行くのも安心。鞄の中で振動し始めて大慌て! 宿の周りに電池が売っていなくてただの荷物に! なんてこともないのです。

 本体は完全防水なので、気を遣わずにじゃぶじゃぶ丸洗いできてとても衛生的。さらさらマットな触り心地なので、ローションをたっぷりつけて楽しむのが◎ですよ!

(バイブバースタッフ・K)

当連載を読んで興味を持たれた方は、見て、触れて、動かすことが可能な渋谷のバイブバーへいらしてくださいね。スタッフも運営も全員女性なので安心です。こだわりの内装と350本以上のバイブ、国内外から集めた大人のおもちゃが展示されています。「messyを見た」と言っていただければ「スティックローター」をプレゼントいたします!

◎THE VIBE BAR WILD ONE(ザ・バイブバー・ワイルドワン)

住所:東京都渋谷区道玄坂2-7-4 3F
電話番号
03-5456-1100 (月~土 PM17:00~PM24:00)VIBEBAR
03-3477-0800 (月~金 AM9:00~PM17:00) VIBEBAR 事務局
メール:info@vibebar.jp
定休日:日曜・祝祭日
営業時間:17:00~24:00
※入店受付は閉店時間の45分前までとなります
最寄り駅:JR渋谷駅・ハチ公口より徒歩3分
京王井の頭線渋谷駅・西口より徒歩1分

■ バイブバースタッフ・K
渋谷にある女性、カップルのためのセクシャルコンセプトバーTHE VIBE BAR WILD ONEのスタッフ。バイブコンシェルジュ歴3年越えのベテラン。
twitter:@VIBEBAR_wildone

押しかけ同居、孫プラン…成人した娘に忍び寄る親の“希望”“心配”という名の要求

 安倍政権がぶちあげた『一億総活躍社会』関連予算の目玉事業の一つとされている「三世代の同居に対応した新築住宅取得促進支援事業」。少子化対策として祖父母世代との同居をすすめるものであるが、ご存知の通り、これを疑問視する意見も多い。親子だからといって良好な関係を維持している家庭ばかりではないし、この祖父母世代が相当なくせ者である場合もあるからだ。小町を眺めても、これじゃ祖父母世代との同居はとても無理だと思うようなトピが多々みられる。

「娘にわたす金額がわからない。」

 トピ主(女性・年齢不明)夫と2人の子どもとの4人暮らし。本当は子どもは4人いるが、長女は結婚し車で2時間ほどの都市部に夫と2人で住んでいる。トピ主一家は、田舎に住んでいるそうだ。ちなみに「子ども」という書き方をしているが、同居している子らはおそらく成人済みである。

「婿の実家が用意した、新築狭小住宅です。都会はあんな小さい家が立ち並んでいるんですね。ビックリしました。15坪もない家ですが3LDKです」

 おっと~、いきなり婿の実家族&娘の新居をdisですか? しかもこれはただのジャブで、本題はとんでもないのだ。トピ主は勝手にその“新築狭小住宅”へ押しかける計画を立てたという。

「私の夫も高齢ですが退職後も働いてましたが、いよいよガタがきはじめました。退職前は社宅暮らしでした。年金は払い込み月数が少ない為、少ないです。私が働こうと思い、働きましたが私も高血圧のため無理でした。今、住んでいるアパートの家賃にさえ、事欠く始末です。同居の娘の入れてくれるお金は食費・光熱費・携帯に消えてしまいます。大家からやいのやいのと催促されてホトホト困っております」
「この際、長女の家でお世話になろうかと思っています。都会で働けると娘たちも喜んでいます」
「勿論、お金は入れます。その額でご相談ですがいかほどが適正価格でしょうか。家事・炊事・洗濯は私が頑張ります。娘夫婦は共働きなので助かると思います。生活保護の受給は考えていません」

 いやいやいやいや、金額うんぬんの話じゃなくて! トピ主は“長女も喜ぶ”と思い込んでいる様子で、長女夫婦へひと月にどれくらい支払うのがよいのだろうか、という相談だ。そもそも娘2人も一緒に引っ越すつもりって……。15坪もない土地に建てた3LDKに、長女夫婦・トピ主夫婦・成人した娘2人の6人で住もうって? 危険な臭いが漂いまくりだ。「びっくり」投票は軽く1万を超えている。今年見たトピの中でもかなりの食い込みっぷりである。

「狭いを難癖つけた家に 家族4人で転がりこんで 家事をするから 感謝されると思い込んでいるストーリー…滑稽です」
「正直(現時点で)田舎で家賃も払えないのでしたら、適正価格が払えるとは思えません。まずはいくら払う気があるのかが前提です」

 と、トピ主一家の支払い能力を疑問視する声や、最初に都会の家を狭いとdisっておきながら……という批判が噴出。「まずは長女夫婦がトピ主一家を受け入れてくれるのか、その意思を確認して内諾をもらってから相談すべきでしょう」と、そもそも許可も得てないのに先走り過ぎという意見も多かった。このトピ主はこれまで、多くのことにおいて娘に相談なしに色々と要求していたのではないか……と伺わせる見事なトピ文ではある。

 この手のトピ主がコメント欄の批判にはひるまないことは小町の通常の流れであり、案の定レスで反論を始めた。

「私的には娘ふたりの今まで入れてたお金 計六万円と夫の分二万円の合計八万円が妥当かなと思っています。私の分は家事をするので免除して貰うつもりです。都会ではこの金額では無理なんでしょうか」

 いや、だから、長女に話もしてないのに勝手に話を進め過ぎなところに皆「ビックリ」してるのに……。てか同居の娘には月3万円もらっていたのであれば、その金額を上げるなりして、それまで通り4人で暮らせば良いのではないか。娘たちも一緒に長女の家に引っ越すのは……長女および長女の旦那および長女の義家族の心境、一切想像できないのか?

 これにも引き続き「先方の意見も聞かず勝手に決めていいことではない」というコメントが並ぶがやはりトピ主は気にしない。「3LDKに6人は無理と書かれている方が多いですが、大丈夫ですよ。社宅は3DKで6人で住んでましたもん」など、我々は条件をクリアできるのである、といわんばかりに主張を続ける。じゃ早く長女に相談しなよ!

 だがトピ主はなかなか長女に相談することなく、延々と自分の希望を語り続ける。

「都会なら娘達も良い男性と巡り合えるかもですし、何より給料が違います」
「長女が私達の事で婿さん(と)揉めるのは不本意ですから、もしそうなれば(同居ではなく)家賃の援助をお願いするのもありかなと思っています」
「長女が離婚になる事はないと思います。長女だけは鳶が鷹産んだといわれる位、容姿端麗・頭脳明晰な子で唯一大学も出ました(自力ですが)そんな子なので婿から熱烈な求愛をされた経緯があります。本心を言えばもっと金持ちで私達ひっくるめて面倒みてくれるような婿ならと思うこともあります」

 ヒィ~怖い。そんな主張の中にもしかし「今のアパートの家賃を二か月間滞納しており連帯保証人の長女に近々連絡がいく」ことや「長女の下の唯一の息子は勝手に婿養子に入り、手切れ金とやら貰って疎遠になったままです」ことなどがサラッと書いてある。てか息子から手切れ金って、このままだと長女からも手切れ金もらうことになるよ!

 そうして引っ張った挙げ句トピ主はようやく長女に話したが……。

「大激怒です…。罵詈雑言を浴びせられました。滞納分の家賃と二か月分先払いで大家さんに月曜日に振り込んでくれる事になりました。二か月の間に市営住宅に移り、私が働けとの事です。来週なら平日休みがとれるようで、長女も市営住宅の申込みに同席するらしいです。ハローワークにもいくつもりみたい。同居が無理なら家賃の援助をとお願いしましたが、ダメでした」
「『アンタ(トピ主)が働けるのに働かず、何故私が家賃はらわなきゃいけないのか。私も○○のようにお金払ってでも縁切りしたい位だ』と他にも言われました」

 だがトピ主は自分が考えてきた勝手な妄想が、長女にとってどれほど困った話かは考えることはないようだ。

「一人で大きくなったように勘違いしてるけど、子供の頃の色んな苦労が思い出されて空しくなりました。私だって言いたい事、我慢してましたが、子供は言いたい事言えるんですもんね。皆さんの仰る通り金額なんて考えるだけ無駄な事でした」
「返済計画書と借用書を来週会うときまでに用意しろとの事…。負担してくれると思っていたら、なんか怒られ損でしたわ。私の体の不調を訴えると『150位で何が高血圧だ、死ぬまで働け』ですと…。鬼のような娘…。」

 家賃を支払ってくれたにもかかわらず、鬼扱いされる長女が心底気の毒である。とっとと縁切りするが吉。

「娘を結婚させる方法」

 トピ主(女性・年齢不明)には25歳で就職3年目になる娘がいる。資格職で年収もよく、旅行、ショッピング、趣味、習い事、友達とのお出かけ等、それなりに若い世代を謳歌しているそうだ。友達もみんな独身で、娘は結婚に全く興味がなく「結婚なんて今の時代、気をつかって、相手に合わせてそんなことしたくない、ママとパパを見てたら結婚は墓場だ」と言うらしい。だがトピ主は企んでいることがある。

「私のプランでは、26歳で結婚28歳で第一子、その後30歳くらいまでに3人(長男、次男、長女)子供を産み終わってほしいのです。いっそのこと、でき婚でも、シンママでも、財産狙いでも構わないと思うくらいです。高齢出産は心配ですから」

 おいおい、なんだかずいぶん他人のライフプラン細かく練ってくるなぁ。そもそも30歳くらいまでに3人……って、25歳のいまから結婚しても間に合うかってスケジュールだよ。

「子育ても、日常生活のサポートもするから、子どもを産むだけでいいからと譲歩するものの、ボーイフレンドはいても、彼はいないです。婚活させるべきでしょうか? 早く孫を確実に抱きたいのです。主人の両親が高齢で、早くしないと祖父母にも可愛がってもらえません。急いで、とにかく結婚、出産。宜しくお願い致します」

 彼氏がいない25歳のスタートで30歳までに3人の子ども、しかも男2人に女1人を産め、とは、仕事でもこんな無理な案件そうそうない。これも先のトピ主と同じく娘にブチ切れられるんじゃないだろうか。コメントでは先のトピ主と同じようなことを言われている。

「子供の人生はあなたの人生ではありません。放っておいてあげなよ」
「トピ主さんは、娘さんに『結婚は墓場』と教えてしまったのでしょ。もう遅いと思います。しかも娘さんを結婚させたい理由が『早く孫を確実に抱きたい』ですもんね。勝手です。『子供を産むだけでいい』という話も酷い」

 そう思うな~。娘の幸せを願っての結婚じゃないところが恐ろしい。孫をなんだと思ってるんだろう。人間だぞ。だが、トピ主はコメントでこのように考えた理由のひとつを明かした。

「『結婚なんてしたくない子供なんて考えられない』と言った意味のことを豪語されていたバリキャリの女性何人かが35歳や40歳位で焦って、あるいは友達が結婚すると聞いて独身の仲間が減り、婚活や、不妊治療をしていらっしゃるのを見たことがあるからです。どうせ結婚するなら、ずるずる伸ばさず良い時期で婚活にしても年齢的に、有利な20代がいいからです。女性の人生としてひと通り、結婚や子供をと考えるのは、娘の幸せにならないのでしょうか?(中略)娘の人生、王道を歩ませたいのです」

 王道。トピ主はトピ文に書いたような人生を“女の王道”と考えているようだ。だが、もう女性も普通に働く時代。体力のある若い頃に出産育児をすることは確かにメリットもあるが、娘さんにも今やりたいことがあるだろう。

 またトピ文で娘さんが「パパとママを見てたら結婚は墓場だ」と言ったことについてもこう釈明した。

「自由で誰にも束縛されず、お金も時間も、好きに自分のペースでできる気楽な独身の生活に比べて、主人の仕事のサポートや親戚に気をつかう私を見て独身よりは、大変かなという意味で、多大なマイナスで言っている訳ではないです」

 本当だろうか……?『墓場』とまで言われたのだからもう少し重く受け止めた方がよいのではないか。娘さんはひょっとしたら結婚自体をするつもりがないのかもしれない。

「娘は恋愛や結婚に関しては、のんびりしているので、心配してるんです」

 と、最後まで諦める素振りは見せなかったトピ主、今後も何かと娘にこの『王道の人生計画』をすすめ、手切れ金を渡されないことを祈るばかりである。

(ブログウォッチャー京子)