流行ハイブランドを着用→UP→転売→身バレ逃亡 から不死鳥のように「restart…」するコーデUP系インスタの底なし承認欲求

 いつも寝る前にインスタをチェックしている。主にチェックするアカウントは『コーデUP系』と『ていねいな暮らし&子育て』系だ。このせいで正直、万年寝不足である。先週紹介したのは、インスタとメルカリにおける『子育て系』の“妊娠菌ビジネス”ムーブメントだったが、今週は『コーデUP系』キラキラアカウントたちの悲哀を綴りたい。

 そもそも『コーデUP系』アカウントとは何か。その名の通り、その日の自分のファッションを撮影してUPし、コーディネートを紹介するアカウントだ。全身鏡に姿をうつして自撮りするパターンと、第三者に撮影してもらうパターンがある。

 インスタ以前、『コーデUP系』が生息していたのは主にアメブロであった。だがインスタの盛り上がりとともに、アメブロでコーデをUPしていた女性たちが次々とインスタに参入。次第にアメブロの更新も途絶えていき、現在では開店休業状態もしくは閉鎖となっている。

 今では彼女らのインスタアカウントは多数のフォロワーを抱え、もはやただの恥ずかしいアイテムとなったダニ●ルウェリ●トンをはじめとしたブランドのプロモーションに使われるようになったほか、ファッション誌にも登場するなど、明らかにアメブロ時代よりも彼女らの注目度は上がった。それに呼応するかのように彼女らの写真テクも上がり、コーデ系を検索すれば、ファッション誌の1ページのごとくな完成度の写真が山のように出てくる。なんだかお洒落な壁の前で横を向いていたり、または歩いていたりと、カメラ目線ではないことが特徴だ。人気が上がると被写体とカメラの距離はだんだん縮まり、時折自撮りなどUPし始める。彼女らも、注目されることに喜びを感じていることは間違いないようだ。たまに家の中で靴を履いてUPしている人もいるが、これは一体どういうことなのか教えて欲しい。

 筆者が好んでウォッチする『コーデUP系』アカウントはまず、セリーヌを好んで持つ女性。ほか、チャーチのスタッズつきサイドゴア、マディソンブルーのビッグシャツ(襟を抜いて着るのが鉄則)、Acneのストール、6のアイテムなど、次々に巻き起こるやや高めのファッションアイテムブームに必ず乗っかるアカウントだ。もちろん、ユニクロやZARAも大好きなのが共通項である。先日、二子玉川のマクドナルドで遅いお昼を食べていたところ、隣の席に、Acneのストールを首に巻き(タグが見えるように巻いているところに彼女の意思を感じた)、チャーチのスタッズつきサイドゴア、セリーヌのバッグというまさにインスタ映えするアイテムを身につけまくった女性が座った。彼女も『コーデUP系』インスタグラマーなのではないか……? つい隣で必死にインスタ検索をしたがアカウントは特定できなかった。

 コーデではなく、買い物した直後に撮影したのか、ショッパーの写真をアップするアカウントもグッとくる。「newin♡」など書かれているとなお良い。このポストの翌日には「どの色にするか迷いましたが、この子をお迎えしました」と、アイテムを擬人化する謎の言い回しとともにコーデをUPするという流れが定番だ。なぜか『コーデUP系』のインスタグラマーはアイテムを擬人化しがちである。

 また、朝に車の中で撮影したと思われる、カルティエなどの高級腕時計やエルメス等ハイブランドのブレスをつけた手元、これまたハイブランドのバッグ、そしてハイブランドの靴が写り込むという、さりげないようでいて超人技なアングルの写真をアップ(スタバのコーヒーを持っていることが多い)しているアカウントもたまらない。

 流行りものに乗っかりまくり、ハイブランドをどれだけ持っているかを競うがごとくの写真の数々を見ていると、果たして彼女たちは本当にお洒落なのだろうか? という疑問に行き着く。お洒落を競っているのではなく、財力を競っているように見えてくるからだ。コーデUP系アカウントの中には、写真や、それとともにUPされる文章などから、夫と子供がいて、車を持ち、頻繁に旅行をして……など、だいたいの生活レベルを匂わせてくる女性もいるのだが、筆者のような心の歪んだ人間にとっては、財力にフォロワー数に、と、お洒落自慢ではなく単なる女性同士のマウンティングのように見えてくる。

ヤフオク出品と逃亡

 そんな思いでコーデ写真を真夜中にぼんやりと眺めていると、『コーデUP系』アカウントの一部は、かなり無理をしているのではないかという疑惑も湧いてくる。先日、取材で出会った人が「身なりの良い若い人は貯金がないことが多い」と語っていたが、そういう疑惑である。そこに給料の全額を突っ込んでいるどころか、借金までしている可能性も出てくる。買い物狂いは決して、アゲ嬢みたいな外見の人間ばかりではないのだ。小さなお子さんがいる女性もこうしたコーデUP系に参入していることがあり、疑惑は深まる一方。

 そもそも、ハイブランドを持つのが日常であるならば、あえてそんな写真はUPしないのではないか……? そう感じていたのは筆者だけではなかったようだ。ある日、同じくコーデ系ウォッチャーの友人から情報が入った。あるコーデUP系アカウントの女性が、UPしたコーデに使用したアイテムを「試着のみ」としてヤフオクに出品しているというのである。急いでチェックしたところ垢消し逃亡していた。しまった、間に合わなかった! と、その日は地団駄を踏んだがそんなに悲しむこともなかった。インスタでは、人気のコーデUP系アカウントが突如垢消しすることがある。そして忘れた頃……でもなく、そんなに時間をおかず「restart…」などと再出発する。彼女もあっという間に再出発を果たした。「restart…」系にはたいてい、身バレしたとか、裏の顔が暴かれたとか、何かあることを学んだ。

 昨年、好んでウォッチしていたあるコーデUP系アカウントが突如消えた。彼女ももしや……?? かなり必死に探したところ(本当に自分も何をやっているのか)、「restart…」しているアカウントに行き着いた。そして捜索のさなか、彼女もコーデ写真撮影時に着用していたアイテムを「試着のみ」などと売りさばきまくっていたことを知った。お~~い、お前もか! てか試着のみじゃないだろう。何回かそのアイテム着用してるの見たぞ。もしやコーデ撮影したら、別の汚れても良い服装にいそいそと着替えて出かけていたのだろうか? タグも大事にとっていたのか? それともタグをつけたまま着用していたのか? どっちにしてもセコいこと、この上ない。

 全部が全部、こうしたアカウントばかりではないだろうが、これは氷山の一角かもしれないという思いも消えない。コーデUP系のインスタバブルは、彼女らのようなバブルに踊らされる人間も生んでしまった。

(インスタ&メルカリウォッチャ〜京子)

全くブレない自己信頼感こそが、渋谷ギャルのカリスマたるゆえん/藤井みほな『GALS!』

 連載の第1回目でも触れたように、少女漫画誌『りぼん』全盛期だった90年代は女子高生がもてはやされていた時代でもあり、特に90年代の後半は“コギャル”ブーム。当時私はまだ小学生だったけど、コギャルに限らず女子高生の存在や彼女たちが生み出すあらゆる流行に世間の注目が集まっているのは何となく感じていたし、憧れを抱いた。そしてこの国のあらゆる流行は“東京”から生み出されるらしいと知って、自分が暮らしている何にもない田舎がものすごくつまんない場所に思えた。今回取り上げるのは、東京・渋谷で自由に生きるコギャルたちの高校生活を描いた、藤井みほなの『GALS!』(1998~2002年)。

 安室奈美恵が大ブレイクし彼女のファッションやスタイルを真似する“アムラー”が社会現象になったのは1995年のこと。10代の女性が“コギャル”と呼ばれて、女子高校生の社会的価値は急激に上昇、彼女たちと繋がりたい成人男性たちは金銭を支払って“援助交際”し、それが社会問題化した。援助交際というワードは96年の流行語大賞に入賞したほどだった。渋谷はギャルの聖地になり、97年に渋谷109のカリスマ店員が崇拝され、98年には日焼けした肌に派手メイクのヤマンバギャルが登場。97年末に安室が結婚して産休・育休に入り(98年末に復帰)、99年にモーニング娘。と浜崎あゆみがブレイクすると今度は白ギャルが流行った。そんな時代の流れを受けて、『GALS!』は女子小学生をメインターゲットとする『りぼん』で連載開始したのである。

 前回取り上げた水沢めぐみは、1979年に高校一年生の若さでデビューしてから(漫画を描きながら早稲田大学教育学部に進学して卒業もしているからすごすぎる)、保護者も安心の“良い漫画”を常に発表していた。それに対して、90年に水沢と同じく16歳の若さでデビューしたという共通項はあるものの、藤井みほなの描く作品は、保護者をハラハラさせていただろう。

 たとえば高校生モデルの恋と成長を描いた『パッションガールズ』(1994~1995年)では、主人公の櫻井エリカとそのライバルの月岡八純が共にめちゃくちゃ高飛車な性格で、顔を合わせばどちらが“上”であるかを巡って激しい(でもけっこう幼稚な)バトルを繰り広げる。2人の口をついて出るのは、露骨な「私は美しい」発言で、日常会話レベルで多用されていた。ファッションは、ブランド志向強め、露出度高め。そういえば、エリカの部屋には「私は美しい」と書かれた紙が貼ってあった。性的描写はキスシーンに留まっていたものの『パッションガールズ』は、『りぼん』の中では相当“下品な作品”だったと思う。『GALS!』の前作『秘密の花園』(1998年)では、女子中学生同士のセックスを(する前とした後の様子)描いて読者に度肝を抜かせ、また主人公・御園の首を絞める継母も猛烈に怖かった。『りぼん』だけど『りぼん』の枠にとらわれない自由度の高さが藤井みほなの魅力でありウリだった。

勧善懲悪のコギャル

 1998年にスタートした『GALS!』は、そんな藤井みほなの作風と、当時のコギャル全盛・渋谷サイコーの風潮、流行の存在を意識して憧れはじめる年頃という女子小学生読者のニーズという3つがマッチングしたのだろう。かなり下品でギャグ要素の強い作品なのだが、大ヒットした。2001年には『超GALS!寿蘭』のタイトルでアニメ化している。

 物語の舞台をはっきり「渋谷」と定めていて、『109』『渋谷センター街』『マック』『マツキヨ』といった実在の名称も出てくるのは、具体的な地名を記さない作品の多い『りぼん』では画期的だった。主人公は、“渋谷で最強のコギャル”として知られている寿蘭(ことぶき・らん)。私立鳳南(ほうなん)高校1年生。放課後は渋谷に繰り出し、常に渋谷で遊んでいる。蘭に憧れて鳳南高校に入学する者も大勢いるなど、コギャルのカリスマ的存在だ。

 何がどう“最強”なのか。まず、すれ違う男女が100%「すごいカワイイ!」と振り返る美貌。そして、特に格闘技をたしなんでいるワケでもなさそうなのに、めちゃくちゃ腕っ節が強い。勉強は出来ないが、運動神経も抜群に良い。喧嘩最強で、渋谷イチの美女。それが寿蘭なのである。

 両親と兄は揃って警察官で、さらには祖父母も曾祖父母も警察官だったという警察一家に育ち、父親から「警察官になれ」と口うるさく言われているが本人には全く持ってその気なし。蘭はとにかく「今」を楽しみたいのだ。赤メッシュやギャル系ファッションの蘭はチャラそうに見られがちだが、軽薄扱いされると「あたしをナメんじゃねえ!」と拳を振り回す。正義感が強く、曲がったことが大嫌い、男前な性格で、恋愛には相当鈍感、下ネタは人並みに喋るけれどキスもエッチもまだしていない(たぶん大事にとってある。なぜなら、自分のそれにものすごく高い価値があると認識しているから)。

 当時、さまざまなブームを生み出すコギャルたちを有力な消費ターゲットと見なす一方で、「品がない」「だらしない」「学生にふさわしくない」と眉をひそめたり、あるいは“援助交際”とセットで括ったり、コギャルに対する世間の視線や認識は必ずしも“良い”ものではなかった(私の中学にはルーズソックスを“ズルズルソックス”と呼んで嫌悪感を露わにする女性教師がいたなあ。職業柄仕方ないのか)。物語の世界にもそういう“良識”は取り入れられていて、蘭はそんな大人や世間の偏見に反発する。蘭自身はあくどいことや卑怯な真似を許さず、時に熱血発言だってする健全な精神のコギャルである。勧善懲悪のスーパーヒーローみたいな存在だ。作中には大人でも子どもでもなかなかクセの強い人物(闇を抱えた問題のある人物)が多数登場するのだが、卑怯なやつは許せないし、何だかんだ困っている人を放っておけない蘭があれこれ問題を解決する“正義の味方”的要素もあった。読んでいてスカッとする、女子高生版『半沢直樹』というか(でも復讐ものではない)。

 そんな蘭と行動をともにする親友が2人いる。

 蘭とは中学の頃からの親友の山咲美由(やまざき・みゆ)。彼女も私立鳳南高校1年生だが、裕福そうな蘭の家庭とは違い、育児放棄のシングルマザー家庭に育ち現在進行形で孤独を抱えている。中学時代は極悪不良で、チーマーのリーダーを務めていた美由、おそらくキレると蘭よりもっと喧嘩が強い。ただ、相手を殺しかねないため、蘭は美由を止めるストッパー的な役割でいなければならないと自覚し、いつもそばにいる。美由を支えるもう一人の存在は、蘭の実兄で新人警察官の大和だ。渋谷の交番に勤務し、たびたび補導される美由を親身になって救った大和は、美由に惚れられ今は相思相愛の恋人関係にある。美由が高校を卒業したら結婚する予定だ。

 もう1人は、初登場時は清楚なお嬢様系の優等生だった星野綾(ほしの・あや)、私立鳳南高校1年生。綾の両親は厳格で過干渉。そんな両親への反発で(肉体関係を伴わない)援助交際をしていたのだが、蘭にこっぴどく叱られ、そのことがきっかけで蘭、美由と打ち解けて仲間になった。自分に自信がなく、無意識に他人の評価を気にして動いてしまう性格だが、蘭や友人たちとの関係、恋愛を通して少しずつ成長していくキャラクター。

 『GALS!』は、この3人の友情を軸に、コギャル(女子高生)の恋愛、家族、高校生活、進路などを描いた青春ストーリーで、“コギャル”というカルチャーを活かした青春漫画といったところだ。3年半におよぶ長期連載で、登場人物も毎年進級し、やがて卒業する。

主人公がイケメンとくっつかない超展開

 女子の関心はいつでも恋とオシャレ、とばかりに、作中の女子高生たちは惚れた腫れたで忙しい。3人が在籍する鳳南高校は共学だが蘭たちはいつもコギャル同士で大騒ぎして盛り上がっているのが常で、男子生徒との絡みは少ない。その代わり、高校の枠を超えて“渋谷”つながりの他校男子生徒とはいつもつるんでいる。つまり、イケてるギャルは、イケてるメンズとセットで遊ぶのである。蘭たちが行動を共にするのは、「スーパー高校生グランプリ」で1位の乙幡麗(おとはた・れい)と2位の麻生裕也(あそう・ゆうや)。二人とも明匠第一高校の男子生徒で、いうまでもなく2人ともイケメン、渋谷を歩けばファンの女子に囲まれる人気者だ。実際、当時「スーパー高校生」の人気は凄まじかった。麗は見た目さわやか系で性格はクールでマイペース、裕也は見た目チャラそうだが相当なヘタレ。ちなみに2人とも学力は高い。明匠第一は男子校なのだが、麻布高校あたりがモデルなのだろうか。

 さて、その麗も裕也も、好きになった相手は蘭だった(ただし麗に関しては、伏線は多々あっても明確に示されるのは26話)。ここまではわりとよくある話である。読者の感触だと、最終的には麗とくっつくんじゃないかと想像する。が、鈍感すぎる蘭は、どちらの好意にも全く気づかず、第12話で突如登場したタツキチこと黒井達樹(くろい・たつき)と「お前面白いじゃん」という理由で、会った当日に付き合いはじめる。タツキチは蘭とノリが合うし面白い奴だが、麗、裕也ほどビジュアルが良いわけではなく(色黒のギャル男で町田在住)、いわゆる少女漫画の王道イケメンとは言い難いキャラで、こういう展開!? と衝撃的だった。しかも、かませ犬かと思いきや、その後ずーっとタツキチは「蘭の彼氏」として出続けるのである。

 麗は密かに蘭に思いを寄せながらも、自分に好意を抱く綾と付き合いはじめるし、裕也は蘭に告白できないまま、こちらも自分に好意を抱く池袋のコギャル・本多マミと(半ば強引に)付き合いように。裕也はいつの間にか「蘭が好き」ではなく「蘭が好きだった」に変化していったが、麗は「蘭が好き」でありながらも告白する気はなさそうだし、綾をきっぱり拒否するわけじゃないし、女子読者にはその真意が掴みかねるような人物だった。しかも要所要所で、蘭と麗の信頼関係が強調される場面もあり(タツキチ曰く、目に見えない深ーいトコでつながってる)、後半タツキチはかなり嫉妬していた。

 第28話ではいたずらメール事件の影響で「麗が蘭を好き」という話が蘭の耳にも入ったが、第29話ではこんなやりとりをする。

蘭「おめーがあたしにホレたとかゆー話 『つまんねージョークだ』って笑いとばしといていーよな?」
麗「…かまわねーけど? どう取るかなんて おまえの自由だし」

 結局、蘭と麗が結ばれることは最後までなかったし、蘭自身が麗に対してどのような感情を抱いているのかも、作中では明確にされないまま。恋愛に鈍感で無頓着な蘭(でも他人の恋愛には助言している)は、終盤こそ多少繊細な面を見せる描写があったものの、作中“恋する女の子”らしいふるまいをするシーンはなかった。恋愛に悩み右往左往するのは親友の美由、綾で、蘭は終始、振り回されない。蘭は「振り回す側」で、誰に何をされてもブレないのだ。それは恋愛以外のことでも同様で、家庭事情や進路のことで動揺したり、自分の心に抱え込んだりする描写は、美由、綾の見せ場となっていた。

 話を恋愛に戻すが、「ヒロインとイケメン男子が両想いになる」のが定番の少女漫画において、『GALS!』のような設定と展開は、よくいえば斬新、悪くいえばすっきりしない、疑問が残るといったところ。ただ、蘭&タツキチ、綾&麗、マミ&裕也、美由&大和、といった4組のカップルの成り立ちや変化を長いスパンで描いており、しかも「超幸せ」「超どん底」の描写よりも、「問題残しつつ、まあまあ幸せ」「嫌な予感」といった緩い浮き沈みの繰り返しで、だから読んでいる側としてはなかなかすっきりしないわけだが、それはリアルな描き方だったのだと、今にして思う。ちなみに作中を通して、蘭・美由・綾は3人とも(おそらく)処女だし、キスシーンもキスしそうなところに邪魔が入ったりと性的描写はかなり初々しいものになっている。「エッチは~」云々の台詞こそあるが、『りぼん』ゆえの自主規制なのだろうか。

なぜ寿蘭はブレないのか

 蘭は強い。腕っぷしもメンタルも強い。自分がかわいいこともオシャレでイケててモテるのも当たり前だと思っている。虚勢でも自己顕示欲の表出でもマウンティングでもなく、蘭にとって、自分が周囲に愛されることは疑う余地のないことだ。よい意味でプライドが高く、コギャルとしてだけでなく、人間としての誇りを持っている。誰のことよりも自分を信じきっていて、自己肯定感・自己信頼感が突出している少女だ。

 本作に登場するほとんどの10代女子は、ありとあらゆる“人目”を気にして「こんな風に見られたい」願望を抱いている。それ以上に強いのが“「こんな風に見られたくない」願望で、ダサいにしろチャラいにしろ自分の望まない姿で見られていると知ったら、猛烈にプライドが傷ついたり、凹んだりする。他人からの評価を気にするあまり、過ちを犯してしまう登場人物も多い。けれど蘭はたとえ「チャラい」「援交やってそう」などの誤解を受けても、傷ついたりしない。キレるけどキレて終わり。自分のことは誰よりも自分がよく知っているから、気にしない。

 蘭の強さの源は、強烈なまでの自己肯定感。自分を大事にしているから、他者の視線など気にしないし、他人と自分を比べない。誰かを恨んだり、傷つけたりいじめたりしない。いじめや仲間はずれを楽しみたがったり、スクールカーストに捉われたり、空気を読んだりいじったりするのはみんな、自分に自信がないからなのだ。

 そういえば、「自分より強い、太刀打ちできない相手」だと認識している人物が自分より進んだオシャレをしていたり目立つ行動をしたからって文句は言わないのに、「自分より弱いはず、劣っているはずの相手」がオシャレをしたり目だったりすると、モヤモヤして「何あれ許せない」の心理に陥る女子、学生時代、ものすごく多かった……。自分ももっとオシャレしよう、ではなく、相手を攻撃する方向にエネルギーを転じてしまう。自分より弱いと思っていたはずの子に劣等感を抱いている、という自分の状況が許せないのだろう。

 蘭はそもそも劣等感を抱くことがないから、誰のこともいじめない。卑劣なやつには容赦しないけど、自分に逆恨みして攻撃してきた後輩でも謝れば全部チャラ、あっさり許す(第18話)。『GALS!』連載開始の数年前に見たテレビドラマで「一番強い人間っていうのは、一番難しいことができる人間。人のこと許すって難しいよな」という台詞があったのだが(小学校を舞台にした学園ドラマ『みにくいアヒルの子』)、なるほど、人を許せる蘭は、やっぱり一番強い人間だ。そんな蘭が、劣等感に苛まれる他者にかける言葉は「自分サイコー」「とにかく自分を愛せ」と力強い。

「いいか どーせなら男が勝手に貢いでくるくらいのいい女になりな このあたしみたいにな!」
「親の期待にこたえんのに命かけるなんてさ つまんねー人生だな!」
「おめーはそーやって自分の悪口ばっか言ってるん自分が好きなのか!? 自分嫌いなやつが人に好きになってもらおーなんてさー そりゃ虫がよすぎるぜー」
「バカにされんのこわくてギャルやってられっかよ」
「どんな瞬間でもさ あたしは生きてるのが大好きだからに決まってんじゃん」
「まるで操り人形みてーだな お前自身がどこにもいねー そんなんで生きてる手ごたえあったのかよ?」
「心は目に見えねえ だから信じるっきゃないんじゃねーのか? 信じあえなくなったら…もうお手上げじゃん」

 『GALS!』のメイン読者は女子小学生。持ち物も洋服も好きな芸能人も、みんなとうまく合わせる“協調性”が重視される思春期、思い悩む子は多い。保護者からは疎まれそうな藤井みほな作品だけれど、読者に本当に必要な言葉を届けていたんじゃないだろうか。これらの言葉はさらに上の年代、女子中学生にも女子高生はもちろん、大人の女性にも必要だし、男女の別なく、自分の大切さを信じられない人々に届くべきだ。昨今はコギャルブームの頃よりずっと“空気読む”ことが求められる時代だが、だからこそ空気など無視してとことん自分を愛する蘭の生き様は魅力的に映る。あのころ『GALS!』読者だった女子たちも、今は20代。蘭みたいな、いい女になっているだろうか。

全くブレない自己信頼感こそが、渋谷ギャルのカリスマたるゆえん/藤井みほな『GALS!』

 連載の第1回目でも触れたように、少女漫画誌『りぼん』全盛期だった90年代は女子高生がもてはやされていた時代でもあり、特に90年代の後半は“コギャル”ブーム。当時私はまだ小学生だったけど、コギャルに限らず女子高生の存在や彼女たちが生み出すあらゆる流行に世間の注目が集まっているのは何となく感じていたし、憧れを抱いた。そしてこの国のあらゆる流行は“東京”から生み出されるらしいと知って、自分が暮らしている何にもない田舎がものすごくつまんない場所に思えた。今回取り上げるのは、東京・渋谷で自由に生きるコギャルたちの高校生活を描いた、藤井みほなの『GALS!』(1998~2002年)。

 安室奈美恵が大ブレイクし彼女のファッションやスタイルを真似する“アムラー”が社会現象になったのは1995年のこと。10代の女性が“コギャル”と呼ばれて、女子高校生の社会的価値は急激に上昇、彼女たちと繋がりたい成人男性たちは金銭を支払って“援助交際”し、それが社会問題化した。援助交際というワードは96年の流行語大賞に入賞したほどだった。渋谷はギャルの聖地になり、97年に渋谷109のカリスマ店員が崇拝され、98年には日焼けした肌に派手メイクのヤマンバギャルが登場。97年末に安室が結婚して産休・育休に入り(98年末に復帰)、99年にモーニング娘。と浜崎あゆみがブレイクすると今度は白ギャルが流行った。そんな時代の流れを受けて、『GALS!』は女子小学生をメインターゲットとする『りぼん』で連載開始したのである。

 前回取り上げた水沢めぐみは、1979年に高校一年生の若さでデビューしてから(漫画を描きながら早稲田大学教育学部に進学して卒業もしているからすごすぎる)、保護者も安心の“良い漫画”を常に発表していた。それに対して、90年に水沢と同じく16歳の若さでデビューしたという共通項はあるものの、藤井みほなの描く作品は、保護者をハラハラさせていただろう。

 たとえば高校生モデルの恋と成長を描いた『パッションガールズ』(1994~1995年)では、主人公の櫻井エリカとそのライバルの月岡八純が共にめちゃくちゃ高飛車な性格で、顔を合わせばどちらが“上”であるかを巡って激しい(でもけっこう幼稚な)バトルを繰り広げる。2人の口をついて出るのは、露骨な「私は美しい」発言で、日常会話レベルで多用されていた。ファッションは、ブランド志向強め、露出度高め。そういえば、エリカの部屋には「私は美しい」と書かれた紙が貼ってあった。性的描写はキスシーンに留まっていたものの『パッションガールズ』は、『りぼん』の中では相当“下品な作品”だったと思う。『GALS!』の前作『秘密の花園』(1998年)では、女子中学生同士のセックスを(する前とした後の様子)描いて読者に度肝を抜かせ、また主人公・御園の首を絞める継母も猛烈に怖かった。『りぼん』だけど『りぼん』の枠にとらわれない自由度の高さが藤井みほなの魅力でありウリだった。

勧善懲悪のコギャル

 1998年にスタートした『GALS!』は、そんな藤井みほなの作風と、当時のコギャル全盛・渋谷サイコーの風潮、流行の存在を意識して憧れはじめる年頃という女子小学生読者のニーズという3つがマッチングしたのだろう。かなり下品でギャグ要素の強い作品なのだが、大ヒットした。2001年には『超GALS!寿蘭』のタイトルでアニメ化している。

 物語の舞台をはっきり「渋谷」と定めていて、『109』『渋谷センター街』『マック』『マツキヨ』といった実在の名称も出てくるのは、具体的な地名を記さない作品の多い『りぼん』では画期的だった。主人公は、“渋谷で最強のコギャル”として知られている寿蘭(ことぶき・らん)。私立鳳南(ほうなん)高校1年生。放課後は渋谷に繰り出し、常に渋谷で遊んでいる。蘭に憧れて鳳南高校に入学する者も大勢いるなど、コギャルのカリスマ的存在だ。

 何がどう“最強”なのか。まず、すれ違う男女が100%「すごいカワイイ!」と振り返る美貌。そして、特に格闘技をたしなんでいるワケでもなさそうなのに、めちゃくちゃ腕っ節が強い。勉強は出来ないが、運動神経も抜群に良い。喧嘩最強で、渋谷イチの美女。それが寿蘭なのである。

 両親と兄は揃って警察官で、さらには祖父母も曾祖父母も警察官だったという警察一家に育ち、父親から「警察官になれ」と口うるさく言われているが本人には全く持ってその気なし。蘭はとにかく「今」を楽しみたいのだ。赤メッシュやギャル系ファッションの蘭はチャラそうに見られがちだが、軽薄扱いされると「あたしをナメんじゃねえ!」と拳を振り回す。正義感が強く、曲がったことが大嫌い、男前な性格で、恋愛には相当鈍感、下ネタは人並みに喋るけれどキスもエッチもまだしていない(たぶん大事にとってある。なぜなら、自分のそれにものすごく高い価値があると認識しているから)。

 当時、さまざまなブームを生み出すコギャルたちを有力な消費ターゲットと見なす一方で、「品がない」「だらしない」「学生にふさわしくない」と眉をひそめたり、あるいは“援助交際”とセットで括ったり、コギャルに対する世間の視線や認識は必ずしも“良い”ものではなかった(私の中学にはルーズソックスを“ズルズルソックス”と呼んで嫌悪感を露わにする女性教師がいたなあ。職業柄仕方ないのか)。物語の世界にもそういう“良識”は取り入れられていて、蘭はそんな大人や世間の偏見に反発する。蘭自身はあくどいことや卑怯な真似を許さず、時に熱血発言だってする健全な精神のコギャルである。勧善懲悪のスーパーヒーローみたいな存在だ。作中には大人でも子どもでもなかなかクセの強い人物(闇を抱えた問題のある人物)が多数登場するのだが、卑怯なやつは許せないし、何だかんだ困っている人を放っておけない蘭があれこれ問題を解決する“正義の味方”的要素もあった。読んでいてスカッとする、女子高生版『半沢直樹』というか(でも復讐ものではない)。

 そんな蘭と行動をともにする親友が2人いる。

 蘭とは中学の頃からの親友の山咲美由(やまざき・みゆ)。彼女も私立鳳南高校1年生だが、裕福そうな蘭の家庭とは違い、育児放棄のシングルマザー家庭に育ち現在進行形で孤独を抱えている。中学時代は極悪不良で、チーマーのリーダーを務めていた美由、おそらくキレると蘭よりもっと喧嘩が強い。ただ、相手を殺しかねないため、蘭は美由を止めるストッパー的な役割でいなければならないと自覚し、いつもそばにいる。美由を支えるもう一人の存在は、蘭の実兄で新人警察官の大和だ。渋谷の交番に勤務し、たびたび補導される美由を親身になって救った大和は、美由に惚れられ今は相思相愛の恋人関係にある。美由が高校を卒業したら結婚する予定だ。

 もう1人は、初登場時は清楚なお嬢様系の優等生だった星野綾(ほしの・あや)、私立鳳南高校1年生。綾の両親は厳格で過干渉。そんな両親への反発で(肉体関係を伴わない)援助交際をしていたのだが、蘭にこっぴどく叱られ、そのことがきっかけで蘭、美由と打ち解けて仲間になった。自分に自信がなく、無意識に他人の評価を気にして動いてしまう性格だが、蘭や友人たちとの関係、恋愛を通して少しずつ成長していくキャラクター。

 『GALS!』は、この3人の友情を軸に、コギャル(女子高生)の恋愛、家族、高校生活、進路などを描いた青春ストーリーで、“コギャル”というカルチャーを活かした青春漫画といったところだ。3年半におよぶ長期連載で、登場人物も毎年進級し、やがて卒業する。

主人公がイケメンとくっつかない超展開

 女子の関心はいつでも恋とオシャレ、とばかりに、作中の女子高生たちは惚れた腫れたで忙しい。3人が在籍する鳳南高校は共学だが蘭たちはいつもコギャル同士で大騒ぎして盛り上がっているのが常で、男子生徒との絡みは少ない。その代わり、高校の枠を超えて“渋谷”つながりの他校男子生徒とはいつもつるんでいる。つまり、イケてるギャルは、イケてるメンズとセットで遊ぶのである。蘭たちが行動を共にするのは、「スーパー高校生グランプリ」で1位の乙幡麗(おとはた・れい)と2位の麻生裕也(あそう・ゆうや)。二人とも明匠第一高校の男子生徒で、いうまでもなく2人ともイケメン、渋谷を歩けばファンの女子に囲まれる人気者だ。実際、当時「スーパー高校生」の人気は凄まじかった。麗は見た目さわやか系で性格はクールでマイペース、裕也は見た目チャラそうだが相当なヘタレ。ちなみに2人とも学力は高い。明匠第一は男子校なのだが、麻布高校あたりがモデルなのだろうか。

 さて、その麗も裕也も、好きになった相手は蘭だった(ただし麗に関しては、伏線は多々あっても明確に示されるのは26話)。ここまではわりとよくある話である。読者の感触だと、最終的には麗とくっつくんじゃないかと想像する。が、鈍感すぎる蘭は、どちらの好意にも全く気づかず、第12話で突如登場したタツキチこと黒井達樹(くろい・たつき)と「お前面白いじゃん」という理由で、会った当日に付き合いはじめる。タツキチは蘭とノリが合うし面白い奴だが、麗、裕也ほどビジュアルが良いわけではなく(色黒のギャル男で町田在住)、いわゆる少女漫画の王道イケメンとは言い難いキャラで、こういう展開!? と衝撃的だった。しかも、かませ犬かと思いきや、その後ずーっとタツキチは「蘭の彼氏」として出続けるのである。

 麗は密かに蘭に思いを寄せながらも、自分に好意を抱く綾と付き合いはじめるし、裕也は蘭に告白できないまま、こちらも自分に好意を抱く池袋のコギャル・本多マミと(半ば強引に)付き合いように。裕也はいつの間にか「蘭が好き」ではなく「蘭が好きだった」に変化していったが、麗は「蘭が好き」でありながらも告白する気はなさそうだし、綾をきっぱり拒否するわけじゃないし、女子読者にはその真意が掴みかねるような人物だった。しかも要所要所で、蘭と麗の信頼関係が強調される場面もあり(タツキチ曰く、目に見えない深ーいトコでつながってる)、後半タツキチはかなり嫉妬していた。

 第28話ではいたずらメール事件の影響で「麗が蘭を好き」という話が蘭の耳にも入ったが、第29話ではこんなやりとりをする。

蘭「おめーがあたしにホレたとかゆー話 『つまんねージョークだ』って笑いとばしといていーよな?」
麗「…かまわねーけど? どう取るかなんて おまえの自由だし」

 結局、蘭と麗が結ばれることは最後までなかったし、蘭自身が麗に対してどのような感情を抱いているのかも、作中では明確にされないまま。恋愛に鈍感で無頓着な蘭(でも他人の恋愛には助言している)は、終盤こそ多少繊細な面を見せる描写があったものの、作中“恋する女の子”らしいふるまいをするシーンはなかった。恋愛に悩み右往左往するのは親友の美由、綾で、蘭は終始、振り回されない。蘭は「振り回す側」で、誰に何をされてもブレないのだ。それは恋愛以外のことでも同様で、家庭事情や進路のことで動揺したり、自分の心に抱え込んだりする描写は、美由、綾の見せ場となっていた。

 話を恋愛に戻すが、「ヒロインとイケメン男子が両想いになる」のが定番の少女漫画において、『GALS!』のような設定と展開は、よくいえば斬新、悪くいえばすっきりしない、疑問が残るといったところ。ただ、蘭&タツキチ、綾&麗、マミ&裕也、美由&大和、といった4組のカップルの成り立ちや変化を長いスパンで描いており、しかも「超幸せ」「超どん底」の描写よりも、「問題残しつつ、まあまあ幸せ」「嫌な予感」といった緩い浮き沈みの繰り返しで、だから読んでいる側としてはなかなかすっきりしないわけだが、それはリアルな描き方だったのだと、今にして思う。ちなみに作中を通して、蘭・美由・綾は3人とも(おそらく)処女だし、キスシーンもキスしそうなところに邪魔が入ったりと性的描写はかなり初々しいものになっている。「エッチは~」云々の台詞こそあるが、『りぼん』ゆえの自主規制なのだろうか。

なぜ寿蘭はブレないのか

 蘭は強い。腕っぷしもメンタルも強い。自分がかわいいこともオシャレでイケててモテるのも当たり前だと思っている。虚勢でも自己顕示欲の表出でもマウンティングでもなく、蘭にとって、自分が周囲に愛されることは疑う余地のないことだ。よい意味でプライドが高く、コギャルとしてだけでなく、人間としての誇りを持っている。誰のことよりも自分を信じきっていて、自己肯定感・自己信頼感が突出している少女だ。

 本作に登場するほとんどの10代女子は、ありとあらゆる“人目”を気にして「こんな風に見られたい」願望を抱いている。それ以上に強いのが“「こんな風に見られたくない」願望で、ダサいにしろチャラいにしろ自分の望まない姿で見られていると知ったら、猛烈にプライドが傷ついたり、凹んだりする。他人からの評価を気にするあまり、過ちを犯してしまう登場人物も多い。けれど蘭はたとえ「チャラい」「援交やってそう」などの誤解を受けても、傷ついたりしない。キレるけどキレて終わり。自分のことは誰よりも自分がよく知っているから、気にしない。

 蘭の強さの源は、強烈なまでの自己肯定感。自分を大事にしているから、他者の視線など気にしないし、他人と自分を比べない。誰かを恨んだり、傷つけたりいじめたりしない。いじめや仲間はずれを楽しみたがったり、スクールカーストに捉われたり、空気を読んだりいじったりするのはみんな、自分に自信がないからなのだ。

 そういえば、「自分より強い、太刀打ちできない相手」だと認識している人物が自分より進んだオシャレをしていたり目立つ行動をしたからって文句は言わないのに、「自分より弱いはず、劣っているはずの相手」がオシャレをしたり目だったりすると、モヤモヤして「何あれ許せない」の心理に陥る女子、学生時代、ものすごく多かった……。自分ももっとオシャレしよう、ではなく、相手を攻撃する方向にエネルギーを転じてしまう。自分より弱いと思っていたはずの子に劣等感を抱いている、という自分の状況が許せないのだろう。

 蘭はそもそも劣等感を抱くことがないから、誰のこともいじめない。卑劣なやつには容赦しないけど、自分に逆恨みして攻撃してきた後輩でも謝れば全部チャラ、あっさり許す(第18話)。『GALS!』連載開始の数年前に見たテレビドラマで「一番強い人間っていうのは、一番難しいことができる人間。人のこと許すって難しいよな」という台詞があったのだが(小学校を舞台にした学園ドラマ『みにくいアヒルの子』)、なるほど、人を許せる蘭は、やっぱり一番強い人間だ。そんな蘭が、劣等感に苛まれる他者にかける言葉は「自分サイコー」「とにかく自分を愛せ」と力強い。

「いいか どーせなら男が勝手に貢いでくるくらいのいい女になりな このあたしみたいにな!」
「親の期待にこたえんのに命かけるなんてさ つまんねー人生だな!」
「おめーはそーやって自分の悪口ばっか言ってるん自分が好きなのか!? 自分嫌いなやつが人に好きになってもらおーなんてさー そりゃ虫がよすぎるぜー」
「バカにされんのこわくてギャルやってられっかよ」
「どんな瞬間でもさ あたしは生きてるのが大好きだからに決まってんじゃん」
「まるで操り人形みてーだな お前自身がどこにもいねー そんなんで生きてる手ごたえあったのかよ?」
「心は目に見えねえ だから信じるっきゃないんじゃねーのか? 信じあえなくなったら…もうお手上げじゃん」

 『GALS!』のメイン読者は女子小学生。持ち物も洋服も好きな芸能人も、みんなとうまく合わせる“協調性”が重視される思春期、思い悩む子は多い。保護者からは疎まれそうな藤井みほな作品だけれど、読者に本当に必要な言葉を届けていたんじゃないだろうか。これらの言葉はさらに上の年代、女子中学生にも女子高生はもちろん、大人の女性にも必要だし、男女の別なく、自分の大切さを信じられない人々に届くべきだ。昨今はコギャルブームの頃よりずっと“空気読む”ことが求められる時代だが、だからこそ空気など無視してとことん自分を愛する蘭の生き様は魅力的に映る。あのころ『GALS!』読者だった女子たちも、今は20代。蘭みたいな、いい女になっているだろうか。

冷えとり健康法の震源地! トンデモ・ホリスティック情報誌「マーマーマガジン」を一挙プレイバック

靴下を5枚10枚と重ねるほどに「足裏から毒が出る!」と謳う冷えとり健康法(過去記事もご参照くださいませ)を、世に広めたホリスティック情報誌『マーマーマガジン』。

 現在は2回のリニューアルを経て、詩とインタビューの雑誌へと変化を遂げたご様子です。そこで今回はリニューアル記念として、勝手にバックナンバーをプレイバックしていきましょう(つっこみポイントの少ない号はスキップさせていただいています)。さて、どんなトンデモが誌面を飾っていたでしょうか?

◎オシャレでメジャー感漂う創刊準備号/2008年2月発売

 服部みれい氏(後の冷えとりの女王)が編集長として制作のかじ取りをし、アパレル会社のフレームワークより販売がスタート(以下、第14号まではフレームワークス発行)。

誌面では「murmurとは英語で風のざわめきやささやき声という意味。あたらしい時代に向けて、自然やからだの声ならぬ声にもっと耳をかたむけよう、そんな気持ちをこめて名付けました」と説明されていますが、この後始まる冷えとり布教展開には「まあまあ!」と驚くばかりです。

 この号では「愛する服」を有名人が語るグラビアへカヒミ・カリィや市川美和子といった文化系女子好みの有名人を起用したり、オーガニックコスメを紹介したりと、メジャー感漂う仕上がり。

◎さっそく飛ばし始める! ニューエイジエッセンスがほとばしる第2/2008年7月発売

 ナチュラルライフを提唱するアーティスト、アリシア・ベイ=ローレル氏インタビューにコミューンの話が出てきたり、フードコーディネーターによる料理企画のタイトルが「脱石油社会的食生活のすすめ」であったりと、消費社会に批判するニューエイジの雰囲気がさっそく現れはじめる第2号。

 ところで「自分で育てたものをつくる」=脱石油社会的食生活という設定のようですが、レシピに登場するガスコンロも市販の太白ごま油も、石油で動かす工場で作られているんですけどねえ。

◎カヒミのナチュラル語りが読める第3号/2008年11月発売

 注目は、創刊準備号にも登場したカヒミ・カリィのナチュラル語り。「喫煙者だったけど野草研究家の取材中にどんぐりの樹に抱き着いたら、吸いたくなくなった」という、妖怪に気を吸い取られたかのごとくエピソードは、ナチュラルに転ぼうと全盛期に発揮していた浮世離れした感性が顕在なのが伝わってきます。

その他、マクロビ、『沈黙の春』※、ジャック・マイヨールなど、自然派が愛する定番キーワードが盛りだくさんです。小沢健二といいカヒミといい、渋谷系で活躍したミュージシャンといえば〈消費文化の申し子〉という印象であったのですが、その反動で自然派に転ぶんでしょうかね?

 コアなネタが登場する「マーマーガールズ座談会(以下、座談会)」のお題は、〈自然派の洗濯洗剤〉。合成洗剤を「微量とはいえ、皮膚に入る」と語る服部みれい氏、経費毒思想の持ち主であることをアピール開始です。一方、「刺繍講座」企画に登場した「会議中に軍パンに刺繍する」という練習法は脱力度が高く、このバカバカしさは嫌いじゃありません。

※1962年に出版された、米国の海洋生物学者・レイチェルカーソンの著書。農薬による環境汚染の問題を指摘し、世界に環境問題を問いかけたエポックメイキング的な作品として広く知られている。

◎トンデモ度急上昇、控えめに冷えとり健康法が登場する第4号/2009年3月発売

 第1特集は、『沈黙の春』の著者、レイチェル・カーソンの研究者である上遠恵子氏インタビュー。服部みれい氏と一緒になって〈企業は悪!〉というイメージを植え付けるような陰謀論で盛り上がっております。

 激しいタイトルの料理企画「脱石油社会的食生活のすすめ」は、はやくも「有機的な料理の話」に変更。さすがに企業である出資元からつっこまれたのでしょうか?

ファッショングラビアは素足にバレエシューズやサンダルを履いているので、まだまだノーマル路線かと思いきや、「東洋医学の健康法」というコーナーに冷えとり健康法が登場し、基本理論を解説。

「からだ全体で美しくなる話」なるコラムでは、ヘアメイクアーティストが「化学物質は子宮にたまりやすい」と語り、「美容師時代に化学物質配合の毛染めをしていた女性が脳の手術をしたとき、コールタール状のものがべったりとついていたと聞いたことがあります」と、まともな美容師さんが迷惑しそうなトンデモトークを披露。

 座談会のお題は布ナプキン。「PMSが楽になった」「紙ナプキンを使っていると生理に対してネガティブになる」「燃やすとダイオキシンが出る」など、現在も布ナプユーザーの間で定番化している使い捨てナプキン(紙ナプキン)をディスるネタが登場。布ナプキンを使うようになってから〈経血コントロール〉できるようになったと報告する女子に対し、別の女子が「昔の人みたい」と合いの手を打つのも、テンプレ通りです(何の話がわからない!という方は、こちらをご参照ください)

◎「冷えとりファッション」提案で、本気を見せてくる第5号/2009年7月

 オシャレにスタイリングをした、靴下重ね履きファッショングラビアに力を入れてくる号。冷えとり布教開始号ともいえるでしょう。

 座談会は布ナプキン後篇。メンバーの妊娠報告に「よい生理は体をつくる」と盛り上がり、使い捨ての紙ナプキンを作っている企業に対しては「体のことを考えていない!」と叩きまくる、お約束展開です。

◎オーガニックと自己啓発の抱き合わせで、意識高い系雑誌になっていく第6号/2009年9月

 第1特集はオーガニックデニムで、第2特集はアフォメーション※という構成は、社会意識高い系を目指しているのでしょうか? 「今、編集部のまわりでアフォメーションが大人気!」とカジュアルに紹介していますが、消費社会に疑問を投げかけ、自己啓発をしていく流れって、どんだけニューエイジにあこがれてるんだ。

 座談会のお題は〈下着〉。〈修行ブラ〉で有名になった龍多美子氏が話題にのぼり、ブレが全くないのはお見事。みれい氏発にて、〈塩ブラジャー〉も登場。

※肯定的な自己宣言。引き寄せや自己啓発界隈で使われるメソッドのひとつ

◎自然療法好きな女子もおいていかれそうな、第8号/2010年3月発行

 ホメオパシー布教者として有名な由井寅子(ゆい・とらこ)氏インタビュー掲載号。オシャレブランドから出ているちょっとナチュラルなミニコミ誌と思って手に取った読者は、「波動って何!?」「カラダ、ココロ、魂の三位一体に作用する……ですか」と、さぞかし驚かれたことでしょう。

由井氏は自身の子ども時代について「だれひとりとしてわたしをかわいがらなかった」と語っていて、癒しを求めてホメオパシーに走ったような経緯をちらつかせております。そのこと自体はお気の毒ですし、ホメオパシーが精神的な救いになる場合もあることがよくわかりますが、「潰瘍性大腸炎が治った!」と明らかに因果関係がよくわからないことを掲載しちゃうこの雑誌はやっぱり怖い。

 10円玉1枚分ほどのごくごくわずかな圧で脳脊髄液の水圧システムのリズムに働きかけ、自然治癒力が発動されるきっかけをつくると謳われる療法をセルフケアでやってみようという企画「おうちでできるクラニオ講座」も、どうかしてるわ。

◎自然派こそが正しいよね! という選民意識バリバリの第9号/2010年6月発行

 後半にて、冷えとり健康法拡大企画。靴下だけでなく食にも言及し、からだを冷やすものは「薬」「白砂糖」、と紹介。一時期流行した〈しょうが紅茶〉は、冷えとりからみたら「ばかばかしいかぎりです」とバッサリ切り捨てていらっしゃいますが、こちらからみたら、靴下重ね履きこそが「ばかばかしいかぎり」です。

 座談会のお題は〈シャンプー〉で、塩シャンプーやアレッポ(石鹸)など自然派の洗髪が披露されている中で、突然〈マシェリ〉派が登場すると、参加者が爆笑。選民意識バリバリの、嫌なコミュニティだなー。いろいろ議論を展開し、結局は「あれこれさまようけれど、自然派系使うともとには戻れないよね~」という結論。界面活性剤が入っているような一般的なシャンプーを「チャラ男」と表現しているのも、感じ悪いことこのうえなし。

◎冷えとりライフと真逆に走る、黒柳徹子がまぶしすぎる第10号/2010年10月特大号

 黒柳徹子氏の三万字インタビューという特大号。冷えとり啓蒙誌で、寝る前に氷あずきを食べるとみれい氏に語る、最高にシュールな展開が楽しめます。

 最近太ったという話題が出ると、すかさず徹子へ冷えとりを勧めるみれい氏。しかし、「ええ~っ!? やせる~!? この靴下で~!?」と徹子に驚愕されて終了。冷えとり健康法に欠かせない半身浴についても、そもそも徹子氏は「風呂に入る時間は1分」であるとバッサリ。マイペースで有名な徹子節、マーマーマガジンでも光り輝いています。

「冷えとりはきもちいい」という冷えとりページでは、湿疹はかきむしれという恐ろしい指導を掲載。湿疹でかゆくなったらかきむしって毒の出口を広げてあげるというのが冷えとり健康法のお説ですが、昨今はそうやって悪化した肌荒れからアレルゲンが体内に侵入して食物アレルギーになることが解明されているのですから、毒の入り口を広げる、恐ろしい指導と言えるでしょう。

◎健康情報とは線引きしていただきたい、ホリスティック総集編な第11号/2010年12月発行

 アーユルヴェーダ、キネシオロジー、ホ・オポノポノ、冷えとり、クラニアルセイクラルなどをコンパクトに紹介。

みれい氏発の「ホリスティックな世界と出会うときのチェックリスト」では、「自分の直感を信じて!」というアドバイス。当連載でも繰り返しお伝えしていますが、健康にかかわることを〈感性〉で判断するのは本当に危険です。

 座談会は〈睡眠〉について。どんなスタイルで寝ているか?という話題では、「キッドブルーのネグリジェに、レギンス3~4枚プラス、靴下10~12枚」という冷えとりガールの恐ろしい日常が披露されておりました。「半身浴しながら寝る」という情報に対して「試してみるよ!」なんて発言も飛び出し、いつかこの座談会参加者から死者が出ないかと、読んでいて肝が冷えまくりです。

◎トンデモ系男子大集合~! な第12号/2011年3月発行

 校了の4日後に、東北地方太平洋沖地震が起こったタイミングの12号は、「エコ男子特集」。

 インディアンと出会った体験を語る編集者や、臨死体験で地球のはじまりを見たと語る彗星探検家。電子レンジをひたすらディスるパティシェ弓田亮氏、キャンドルナイトの呼びかけ人であり文化人類学者の辻信一氏、そして冷えとり健康法を発案した進藤医師が登場。エコ男子というより、トンデモ男子図鑑ですね。

 この号では座談会もメンバーはみれい氏以外は男性が参加。〈肛門の括約筋が感情とリンクしていると聞き、棒を挿入してみた〉という報告など、いつもとは違う方向に飛ばしております。ちなみにゆるいと性格も感情も陰になるそうです。出身校が同じで同じ療法をやっているという共通点が見つかったメンバー同士「ツインソウル!?」と盛り上がる男子たち、すみません、気持ち悪いです。

◎フレームワークと決別がはじまるか? な第13号/2011年7月発行

「大災害以降、何を企画してもどこかしらじらしい」と語り、自分が見聞きした半径3m以内で1冊を作ってみることにした、と冒頭で服部みれい氏が宣言。いよいよ企業とお別れのときがやってきたような気配がプンプン漂います。

 冷えとりファッションのモデルも自分でこなし、大特集のラストは「みれいの本棚」なるオススメ本の紹介、「都会でも田舎の暮らしはできるっ!」と自分の1週間を写真入りでレポするなど、「みれいマガジン」へまっしぐらっ★

◎リニューアル準備号も、みれいマガジン状態な第14号/2011年12月発行

さらにみれいマガジン化が進み、第1特集は、バンド仲間であるミュージシャンとの雑談「ミネコとミレコのおしゃべり天国」(センスが「オリーブ」時代のそれだわ)。さらにおふたりが街中をぶらぶらしているイメージ写真も12ページにわたりカラー掲載され、これを500円で売るのか! と唖然。

 ニュースページに自社の靴下が登場し、重ね履き用の靴下で荒稼ぎがはじまるのもこのあたりですかね?

◎日本は特別! という選民思想漂う第15号/2012年3月16日

ついにやりたいほうだいの自社発行(エムエムブックス)スタート号です。「昔の暮らしは素敵」系から発生する「日本は特別」思想、が堂々と第1特集。江戸しぐさと同じく根拠のない「日本人はモラルが高い」「サムシンググレートを感じている」という話や、江戸時代までの日本人がごく自然に行っていた呼吸法「密息」なども登場し、完全に〈あっち側〉へ渡り切った感の漂う号でありました。

◎伝説の冷えとり人生相談が掲載された第16号/2012年6月発行

「冷えとりをしたら夫が不要なものだと分かって離婚」という伝説の読者人生相談が掲載されている号。伝説、といっても完全にわたしの周りの話なんですけどね。

さらに、「ホリスティックな世界にのめりこんだら、夫が愛想をつかして出て行った」なる別の読者からの報告も続き、誌面的には「こんなに衝撃的に環境が変わるのね! すごい効果!」という反応でありますが、共同生活できないレベルにあなたたちが極端なんですってば。

 座談会では自然農法について盛り上がり、〈大規模農場で作った野菜は、野菜でなくて「石油製品」だって表現する人もいるくらいです〉と、煽るみれい氏。一方の価値を貶めることで自分が推すものの評価を高める、ゲスいやり口です。

◎第17号は、実用度の果てしなく低いセックス特集号/2012年12月発行

 子宮系女子が多用する言葉「まぐあい(セックス)」がマーマーマガジンにも登場。

さらに、「ホリスティックな世界にのめりこんだら、夫が愛想をつかして出て行った」なる別の読者からの報告も続き、誌面的には「こんなに衝撃的に環境が変わるのね! すごい効果!」という反応でありますが、共同生活できないレベルにあなたたちが極端なんですってば。

 座談会では自然農法について盛り上がり、〈大規模農場で作った野菜は、野菜でなくて「石油製品」だって表現する人もいるくらいです〉と、煽るみれい氏。一方の価値を貶めることで自分が推すものの評価を高める、ゲスいやり口です。

◎第17号は、実用度の果てしなく低いセックス特集号/2012年12月発行

 子宮系女子が多用する言葉「まぐあい(セックス)」がマーマーマガジンにも登場。

 実は私も弓田ごはんは食べたことがあります。味はとてもいいのですが、ただの食事ですから疾患が改善する効果はあるはずもありません。情報誌の作り手として、よくこんなことが書けるもんだとひたすら呆れるばかりです。

 読者のひろばは冷えとりママの実践報告。子どもの体中に湿疹が出ているが、毒出しなので靴下と手にシルクの靴下をつけさせているというもの(※子ども用のシルク手袋が見つからなかったので、靴下を手にはめさせてたようです)。さらに予防接種も薬も与えず、4カ月検診で医師にいやみを言われたが、強い信念をもてば大丈夫!だと思っています、とのこと。はい、完全に医療ネグレスト案件です。どうかそのお子さんが、無事育ちますように……。

◎今までのオーガニック推しはどうしちゃったの? な第19号(2013年7月発行)

特集は「土とともに生きる」。慣行栽培(一般的な農法)で使われるF1種について、「子孫のつくれない作物ばかり食べて、動物に異常は現れないのか」と読者を脅しにかかります。

さらに「有機肥料も問題がある場合があるようですね」と、けしかけるみれい氏、今までさんざんオーガニックを推しておいて、まさかの梯子外し!? 「ひふみ農園」という、国産スピ農法も登場。ひふみ祝詞(スピ界で有名な祝詞)を聞かせて育てた野菜は、育ちが違うそうです。

◎慣行栽培は体を冷やす! と農の世界でも冷えとりを語らせる第20号/2013年12月発行

 農特集続き。慣行農業をやっていると化学物質で土が冷えるから腰が悪くなる、でも自然栽培はあたたかい。いわば〈土の冷えとり健康法〉だよという、農と冷えとりのコラボトークという、ある意味、貴重な記事を掲載。

みれい氏の会社が運営するウエブショップ誕生や、「満を持して」と子ども用の冷えとり靴下販売開始のアナウンスも登場。紙面で紹介されている子ども用は16cmと18cmなので、不快なら自己申告できる年齢であると思いたい……けど、まだまだ親にコントロールされる頃だよなあ。ああ、冷えとりさせられる子どもが不憫。

 座談会はヘアケア談義再び。「ヘナは解毒作用がある」「セックスにもいい」「子宮と髪の毛は関係があるから生理中はシャンプー使うなと、産婆の祖母が言っていた」など、相変わらず根拠不明のトンデモガールズトークでみっしりです。

◎取りつくろった感の否めない、服特集の21号/2014年4月発行

「住まい特集を予定していたが、時間がかかってしまい、書籍用に予定していた服についてを取り上げました」とのこと、どこかとっちらかった印象があるのはそのせいでしょうか。この号では、「塩浴」も緊急特集。これも冷えとり健康法と同様に「PMSが軽くなった」「白髪が目立たなくなった」「やせた」など、因果関係不明の体験談がぎっしり。

*   *   *

 ホリスティック情報誌としてのマーマーマガジンは、これで終了です。これ以降は冒頭でご紹介したとおり、詩とインタビューの雑誌へとリニューアルとのこと。もしかしたらやっているご本人も、少々〈トンデモ疲れ〉したのではないでしょうか? それにしても謎物件を山のようにご紹介してくれたマーマーマガジン、関係者の皆さま大変お疲れさまでございました。

(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)

冷えとり健康法の震源地! トンデモ・ホリスティック情報誌「マーマーマガジン」を一挙プレイバック

靴下を5枚10枚と重ねるほどに「足裏から毒が出る!」と謳う冷えとり健康法(過去記事もご参照くださいませ)を、世に広めたホリスティック情報誌『マーマーマガジン』。

 現在は2回のリニューアルを経て、詩とインタビューの雑誌へと変化を遂げたご様子です。そこで今回はリニューアル記念として、勝手にバックナンバーをプレイバックしていきましょう(つっこみポイントの少ない号はスキップさせていただいています)。さて、どんなトンデモが誌面を飾っていたでしょうか?

◎オシャレでメジャー感漂う創刊準備号/2008年2月発売

 服部みれい氏(後の冷えとりの女王)が編集長として制作のかじ取りをし、アパレル会社のフレームワークより販売がスタート(以下、第14号まではフレームワークス発行)。

誌面では「murmurとは英語で風のざわめきやささやき声という意味。あたらしい時代に向けて、自然やからだの声ならぬ声にもっと耳をかたむけよう、そんな気持ちをこめて名付けました」と説明されていますが、この後始まる冷えとり布教展開には「まあまあ!」と驚くばかりです。

 この号では「愛する服」を有名人が語るグラビアへカヒミ・カリィや市川美和子といった文化系女子好みの有名人を起用したり、オーガニックコスメを紹介したりと、メジャー感漂う仕上がり。

◎さっそく飛ばし始める! ニューエイジエッセンスがほとばしる第2/2008年7月発売

 ナチュラルライフを提唱するアーティスト、アリシア・ベイ=ローレル氏インタビューにコミューンの話が出てきたり、フードコーディネーターによる料理企画のタイトルが「脱石油社会的食生活のすすめ」であったりと、消費社会に批判するニューエイジの雰囲気がさっそく現れはじめる第2号。

 ところで「自分で育てたものをつくる」=脱石油社会的食生活という設定のようですが、レシピに登場するガスコンロも市販の太白ごま油も、石油で動かす工場で作られているんですけどねえ。

◎カヒミのナチュラル語りが読める第3号/2008年11月発売

 注目は、創刊準備号にも登場したカヒミ・カリィのナチュラル語り。「喫煙者だったけど野草研究家の取材中にどんぐりの樹に抱き着いたら、吸いたくなくなった」という、妖怪に気を吸い取られたかのごとくエピソードは、ナチュラルに転ぼうと全盛期に発揮していた浮世離れした感性が顕在なのが伝わってきます。

その他、マクロビ、『沈黙の春』※、ジャック・マイヨールなど、自然派が愛する定番キーワードが盛りだくさんです。小沢健二といいカヒミといい、渋谷系で活躍したミュージシャンといえば〈消費文化の申し子〉という印象であったのですが、その反動で自然派に転ぶんでしょうかね?

 コアなネタが登場する「マーマーガールズ座談会(以下、座談会)」のお題は、〈自然派の洗濯洗剤〉。合成洗剤を「微量とはいえ、皮膚に入る」と語る服部みれい氏、経費毒思想の持ち主であることをアピール開始です。一方、「刺繍講座」企画に登場した「会議中に軍パンに刺繍する」という練習法は脱力度が高く、このバカバカしさは嫌いじゃありません。

※1962年に出版された、米国の海洋生物学者・レイチェルカーソンの著書。農薬による環境汚染の問題を指摘し、世界に環境問題を問いかけたエポックメイキング的な作品として広く知られている。

◎トンデモ度急上昇、控えめに冷えとり健康法が登場する第4号/2009年3月発売

 第1特集は、『沈黙の春』の著者、レイチェル・カーソンの研究者である上遠恵子氏インタビュー。服部みれい氏と一緒になって〈企業は悪!〉というイメージを植え付けるような陰謀論で盛り上がっております。

 激しいタイトルの料理企画「脱石油社会的食生活のすすめ」は、はやくも「有機的な料理の話」に変更。さすがに企業である出資元からつっこまれたのでしょうか?

ファッショングラビアは素足にバレエシューズやサンダルを履いているので、まだまだノーマル路線かと思いきや、「東洋医学の健康法」というコーナーに冷えとり健康法が登場し、基本理論を解説。

「からだ全体で美しくなる話」なるコラムでは、ヘアメイクアーティストが「化学物質は子宮にたまりやすい」と語り、「美容師時代に化学物質配合の毛染めをしていた女性が脳の手術をしたとき、コールタール状のものがべったりとついていたと聞いたことがあります」と、まともな美容師さんが迷惑しそうなトンデモトークを披露。

 座談会のお題は布ナプキン。「PMSが楽になった」「紙ナプキンを使っていると生理に対してネガティブになる」「燃やすとダイオキシンが出る」など、現在も布ナプユーザーの間で定番化している使い捨てナプキン(紙ナプキン)をディスるネタが登場。布ナプキンを使うようになってから〈経血コントロール〉できるようになったと報告する女子に対し、別の女子が「昔の人みたい」と合いの手を打つのも、テンプレ通りです(何の話がわからない!という方は、こちらをご参照ください)

◎「冷えとりファッション」提案で、本気を見せてくる第5号/2009年7月

 オシャレにスタイリングをした、靴下重ね履きファッショングラビアに力を入れてくる号。冷えとり布教開始号ともいえるでしょう。

 座談会は布ナプキン後篇。メンバーの妊娠報告に「よい生理は体をつくる」と盛り上がり、使い捨ての紙ナプキンを作っている企業に対しては「体のことを考えていない!」と叩きまくる、お約束展開です。

◎オーガニックと自己啓発の抱き合わせで、意識高い系雑誌になっていく第6号/2009年9月

 第1特集はオーガニックデニムで、第2特集はアフォメーション※という構成は、社会意識高い系を目指しているのでしょうか? 「今、編集部のまわりでアフォメーションが大人気!」とカジュアルに紹介していますが、消費社会に疑問を投げかけ、自己啓発をしていく流れって、どんだけニューエイジにあこがれてるんだ。

 座談会のお題は〈下着〉。〈修行ブラ〉で有名になった龍多美子氏が話題にのぼり、ブレが全くないのはお見事。みれい氏発にて、〈塩ブラジャー〉も登場。

※肯定的な自己宣言。引き寄せや自己啓発界隈で使われるメソッドのひとつ

◎自然療法好きな女子もおいていかれそうな、第8号/2010年3月発行

 ホメオパシー布教者として有名な由井寅子(ゆい・とらこ)氏インタビュー掲載号。オシャレブランドから出ているちょっとナチュラルなミニコミ誌と思って手に取った読者は、「波動って何!?」「カラダ、ココロ、魂の三位一体に作用する……ですか」と、さぞかし驚かれたことでしょう。

由井氏は自身の子ども時代について「だれひとりとしてわたしをかわいがらなかった」と語っていて、癒しを求めてホメオパシーに走ったような経緯をちらつかせております。そのこと自体はお気の毒ですし、ホメオパシーが精神的な救いになる場合もあることがよくわかりますが、「潰瘍性大腸炎が治った!」と明らかに因果関係がよくわからないことを掲載しちゃうこの雑誌はやっぱり怖い。

 10円玉1枚分ほどのごくごくわずかな圧で脳脊髄液の水圧システムのリズムに働きかけ、自然治癒力が発動されるきっかけをつくると謳われる療法をセルフケアでやってみようという企画「おうちでできるクラニオ講座」も、どうかしてるわ。

◎自然派こそが正しいよね! という選民意識バリバリの第9号/2010年6月発行

 後半にて、冷えとり健康法拡大企画。靴下だけでなく食にも言及し、からだを冷やすものは「薬」「白砂糖」、と紹介。一時期流行した〈しょうが紅茶〉は、冷えとりからみたら「ばかばかしいかぎりです」とバッサリ切り捨てていらっしゃいますが、こちらからみたら、靴下重ね履きこそが「ばかばかしいかぎり」です。

 座談会のお題は〈シャンプー〉で、塩シャンプーやアレッポ(石鹸)など自然派の洗髪が披露されている中で、突然〈マシェリ〉派が登場すると、参加者が爆笑。選民意識バリバリの、嫌なコミュニティだなー。いろいろ議論を展開し、結局は「あれこれさまようけれど、自然派系使うともとには戻れないよね~」という結論。界面活性剤が入っているような一般的なシャンプーを「チャラ男」と表現しているのも、感じ悪いことこのうえなし。

◎冷えとりライフと真逆に走る、黒柳徹子がまぶしすぎる第10号/2010年10月特大号

 黒柳徹子氏の三万字インタビューという特大号。冷えとり啓蒙誌で、寝る前に氷あずきを食べるとみれい氏に語る、最高にシュールな展開が楽しめます。

 最近太ったという話題が出ると、すかさず徹子へ冷えとりを勧めるみれい氏。しかし、「ええ~っ!? やせる~!? この靴下で~!?」と徹子に驚愕されて終了。冷えとり健康法に欠かせない半身浴についても、そもそも徹子氏は「風呂に入る時間は1分」であるとバッサリ。マイペースで有名な徹子節、マーマーマガジンでも光り輝いています。

「冷えとりはきもちいい」という冷えとりページでは、湿疹はかきむしれという恐ろしい指導を掲載。湿疹でかゆくなったらかきむしって毒の出口を広げてあげるというのが冷えとり健康法のお説ですが、昨今はそうやって悪化した肌荒れからアレルゲンが体内に侵入して食物アレルギーになることが解明されているのですから、毒の入り口を広げる、恐ろしい指導と言えるでしょう。

◎健康情報とは線引きしていただきたい、ホリスティック総集編な第11号/2010年12月発行

 アーユルヴェーダ、キネシオロジー、ホ・オポノポノ、冷えとり、クラニアルセイクラルなどをコンパクトに紹介。

みれい氏発の「ホリスティックな世界と出会うときのチェックリスト」では、「自分の直感を信じて!」というアドバイス。当連載でも繰り返しお伝えしていますが、健康にかかわることを〈感性〉で判断するのは本当に危険です。

 座談会は〈睡眠〉について。どんなスタイルで寝ているか?という話題では、「キッドブルーのネグリジェに、レギンス3~4枚プラス、靴下10~12枚」という冷えとりガールの恐ろしい日常が披露されておりました。「半身浴しながら寝る」という情報に対して「試してみるよ!」なんて発言も飛び出し、いつかこの座談会参加者から死者が出ないかと、読んでいて肝が冷えまくりです。

◎トンデモ系男子大集合~! な第12号/2011年3月発行

 校了の4日後に、東北地方太平洋沖地震が起こったタイミングの12号は、「エコ男子特集」。

 インディアンと出会った体験を語る編集者や、臨死体験で地球のはじまりを見たと語る彗星探検家。電子レンジをひたすらディスるパティシェ弓田亮氏、キャンドルナイトの呼びかけ人であり文化人類学者の辻信一氏、そして冷えとり健康法を発案した進藤医師が登場。エコ男子というより、トンデモ男子図鑑ですね。

 この号では座談会もメンバーはみれい氏以外は男性が参加。〈肛門の括約筋が感情とリンクしていると聞き、棒を挿入してみた〉という報告など、いつもとは違う方向に飛ばしております。ちなみにゆるいと性格も感情も陰になるそうです。出身校が同じで同じ療法をやっているという共通点が見つかったメンバー同士「ツインソウル!?」と盛り上がる男子たち、すみません、気持ち悪いです。

◎フレームワークと決別がはじまるか? な第13号/2011年7月発行

「大災害以降、何を企画してもどこかしらじらしい」と語り、自分が見聞きした半径3m以内で1冊を作ってみることにした、と冒頭で服部みれい氏が宣言。いよいよ企業とお別れのときがやってきたような気配がプンプン漂います。

 冷えとりファッションのモデルも自分でこなし、大特集のラストは「みれいの本棚」なるオススメ本の紹介、「都会でも田舎の暮らしはできるっ!」と自分の1週間を写真入りでレポするなど、「みれいマガジン」へまっしぐらっ★

◎リニューアル準備号も、みれいマガジン状態な第14号/2011年12月発行

さらにみれいマガジン化が進み、第1特集は、バンド仲間であるミュージシャンとの雑談「ミネコとミレコのおしゃべり天国」(センスが「オリーブ」時代のそれだわ)。さらにおふたりが街中をぶらぶらしているイメージ写真も12ページにわたりカラー掲載され、これを500円で売るのか! と唖然。

 ニュースページに自社の靴下が登場し、重ね履き用の靴下で荒稼ぎがはじまるのもこのあたりですかね?

◎日本は特別! という選民思想漂う第15号/2012年3月16日

ついにやりたいほうだいの自社発行(エムエムブックス)スタート号です。「昔の暮らしは素敵」系から発生する「日本は特別」思想、が堂々と第1特集。江戸しぐさと同じく根拠のない「日本人はモラルが高い」「サムシンググレートを感じている」という話や、江戸時代までの日本人がごく自然に行っていた呼吸法「密息」なども登場し、完全に〈あっち側〉へ渡り切った感の漂う号でありました。

◎伝説の冷えとり人生相談が掲載された第16号/2012年6月発行

「冷えとりをしたら夫が不要なものだと分かって離婚」という伝説の読者人生相談が掲載されている号。伝説、といっても完全にわたしの周りの話なんですけどね。

さらに、「ホリスティックな世界にのめりこんだら、夫が愛想をつかして出て行った」なる別の読者からの報告も続き、誌面的には「こんなに衝撃的に環境が変わるのね! すごい効果!」という反応でありますが、共同生活できないレベルにあなたたちが極端なんですってば。

 座談会では自然農法について盛り上がり、〈大規模農場で作った野菜は、野菜でなくて「石油製品」だって表現する人もいるくらいです〉と、煽るみれい氏。一方の価値を貶めることで自分が推すものの評価を高める、ゲスいやり口です。

◎第17号は、実用度の果てしなく低いセックス特集号/2012年12月発行

 子宮系女子が多用する言葉「まぐあい(セックス)」がマーマーマガジンにも登場。

さらに、「ホリスティックな世界にのめりこんだら、夫が愛想をつかして出て行った」なる別の読者からの報告も続き、誌面的には「こんなに衝撃的に環境が変わるのね! すごい効果!」という反応でありますが、共同生活できないレベルにあなたたちが極端なんですってば。

 座談会では自然農法について盛り上がり、〈大規模農場で作った野菜は、野菜でなくて「石油製品」だって表現する人もいるくらいです〉と、煽るみれい氏。一方の価値を貶めることで自分が推すものの評価を高める、ゲスいやり口です。

◎第17号は、実用度の果てしなく低いセックス特集号/2012年12月発行

 子宮系女子が多用する言葉「まぐあい(セックス)」がマーマーマガジンにも登場。

 実は私も弓田ごはんは食べたことがあります。味はとてもいいのですが、ただの食事ですから疾患が改善する効果はあるはずもありません。情報誌の作り手として、よくこんなことが書けるもんだとひたすら呆れるばかりです。

 読者のひろばは冷えとりママの実践報告。子どもの体中に湿疹が出ているが、毒出しなので靴下と手にシルクの靴下をつけさせているというもの(※子ども用のシルク手袋が見つからなかったので、靴下を手にはめさせてたようです)。さらに予防接種も薬も与えず、4カ月検診で医師にいやみを言われたが、強い信念をもてば大丈夫!だと思っています、とのこと。はい、完全に医療ネグレスト案件です。どうかそのお子さんが、無事育ちますように……。

◎今までのオーガニック推しはどうしちゃったの? な第19号(2013年7月発行)

特集は「土とともに生きる」。慣行栽培(一般的な農法)で使われるF1種について、「子孫のつくれない作物ばかり食べて、動物に異常は現れないのか」と読者を脅しにかかります。

さらに「有機肥料も問題がある場合があるようですね」と、けしかけるみれい氏、今までさんざんオーガニックを推しておいて、まさかの梯子外し!? 「ひふみ農園」という、国産スピ農法も登場。ひふみ祝詞(スピ界で有名な祝詞)を聞かせて育てた野菜は、育ちが違うそうです。

◎慣行栽培は体を冷やす! と農の世界でも冷えとりを語らせる第20号/2013年12月発行

 農特集続き。慣行農業をやっていると化学物質で土が冷えるから腰が悪くなる、でも自然栽培はあたたかい。いわば〈土の冷えとり健康法〉だよという、農と冷えとりのコラボトークという、ある意味、貴重な記事を掲載。

みれい氏の会社が運営するウエブショップ誕生や、「満を持して」と子ども用の冷えとり靴下販売開始のアナウンスも登場。紙面で紹介されている子ども用は16cmと18cmなので、不快なら自己申告できる年齢であると思いたい……けど、まだまだ親にコントロールされる頃だよなあ。ああ、冷えとりさせられる子どもが不憫。

 座談会はヘアケア談義再び。「ヘナは解毒作用がある」「セックスにもいい」「子宮と髪の毛は関係があるから生理中はシャンプー使うなと、産婆の祖母が言っていた」など、相変わらず根拠不明のトンデモガールズトークでみっしりです。

◎取りつくろった感の否めない、服特集の21号/2014年4月発行

「住まい特集を予定していたが、時間がかかってしまい、書籍用に予定していた服についてを取り上げました」とのこと、どこかとっちらかった印象があるのはそのせいでしょうか。この号では、「塩浴」も緊急特集。これも冷えとり健康法と同様に「PMSが軽くなった」「白髪が目立たなくなった」「やせた」など、因果関係不明の体験談がぎっしり。

*   *   *

 ホリスティック情報誌としてのマーマーマガジンは、これで終了です。これ以降は冒頭でご紹介したとおり、詩とインタビューの雑誌へとリニューアルとのこと。もしかしたらやっているご本人も、少々〈トンデモ疲れ〉したのではないでしょうか? それにしても謎物件を山のようにご紹介してくれたマーマーマガジン、関係者の皆さま大変お疲れさまでございました。

(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)

女性器整形でイキまくるボディを手に入れたグラドル、ノーハンドオナニー成功体験を語る!

 昨今、整形をカミングアウトする芸能人が増えているという。昨年4月には水沢アリーが『有吉反省会』(日本テレビ系)にて、「(顔も変わったというツッコミに対し)でももういじってない!」と白状、12月には『旅ずきんちゃん』(TBS系)にて、「(整形箇所は)あちこちっていうかちょっとずつ。どーんとやったときも1回あったんだけど、ちょっとずつもたまにしてた」と、繰り返していたことも告白。が、箇所の詳細は語らずじまい。

 ほかにも、ここ数年で森下悠里がヒアルロン酸注入をテレビ番組で告白している。ちなみに、以前の芸名のときよりもだいぶ成長した胸については、「男の人に触ってもらって大きくなった」と、しらこいことを言っているのだが。と、このように、“整形をカミングアウト”とは言うものの、奥歯にものが挟まった感が否めない。

そこに現れたひとりの女性。名は雨宮瑠菜さん、現役グラビアアイドルでビッチアイドルグループ、乙女♡BITCHリーダーだ。

「私、最近、マンコの開発を頑張っているんですよ。マンコに注射を打ったりしているんです」

 なんと雨宮さん、整形をカムアウトしてくれたのだ。しかも、マンコの! アイドルなのに!!

マンコ整形、150万円

 雨宮さんがマンコの整形をしたきかっけは、「マンコの限界に挑戦したかったから」だという。

「周りのAV女優やグラドルの友達が、乳首を触るだけで潮吹きできるとか、見られるだけで濡れるとか、超人エピソードを披露するんですよ。あるとき、AV女優の友達が、『クリトリスにピアスを開けて、死ぬほど痛かったんだけど、イキやすくなった』と言うんです」

 なんでもその友人は、クリトリスに直接刺激を与えなくても、イケるようになったというのだ。

「ピアスに意識を集中して、マンコのことを考えたら、それだけでイケるって言っていました。またまた〜、そんなことあるわけないじゃん、と言うとマジ顔で『チンコとマンコのことを想ってクリトリスに集中するだけで、全然イケる。瞑想するだけで』と念押ししてきたんです。なんなら、電車に乗っているときもイケるって」

 まるで超能力者のような特殊能力だが、雨宮さんはこれに触発された。気づくとスマホで、

<マンコ 開発>

 とグーグル検索していた。

「検索結果の一番上に出てきた、“女性器整形”をやっているクリニックにすぐに駆け込みました」

 クリニックの院長は手慣れた様子で、女性器整形の説明をしてくれたという。

「施術は何種類かあり、マンコの入り口を狭くする“タコツボ”。膣を狭くする“巾着”。膣の上に肉ひだを作る“数の子“。下につくる“ミミズ”、などなど。これらの施術は“M(名器)ショット”と呼ぶそうで、『どのコースにする?』と。プラス、Gスポットにヒアルロン酸を打って感度を上げる“Gショット”というのもある、と説明を受けました。ヒアルロン酸は1本3万円。すべての施術を網羅すると、1000万円近くかかることもあるそうです」

 そこで雨宮さんは「なけなしのお金、約150万円で」、Gスポットと巾着&ミミズのコースをチョイス。マンコに麻酔クリームを塗られながら、「彼氏いるの?」「今はいないですけど、これやってできたらいいですよね」などと談笑しつつ、無事施術を終えた。雨宮さんはマンコを整形し、晴れて名器となったのだ。

ノーハンドオナニー絶頂達成

 あっさりと話す雨宮さんだが、施術中、痛みなどはなかったのだろうか。

「麻酔をしましたし、痛みはそんなにありませんでしたね。強いて言うなら、“違和感”レベル。歯の治療と同じくらいだと思ってもらえれば。でも、施術中より施術後の違和感がすごかったんです。ヒアルロン酸を入れたばかりということもあり、マンコがパンッパンすぎて歩けないほど。まるで麻薬を密輸しているような歩き方になっていました。入浴時、洗おうと思って入り口を指で触れると、指が全然入らないしケツより固いんです!」

 そんな違和感も3日でなくなり、整形が馴染んだマンコには、驚くべきことが起こり始めた。

「お腹を押すだけでイケるようになりました。あるときは、電車に乗っていて暇だな~と思っていたときに、手持ち無沙汰でお腹をグリグリ押してみたんです。すると……あ、キタ……キタ……キターーー!! となって……」

 雨宮さんは、電車でイッた。憧れだった、友人と同じ能力を手に入れた瞬間だった。

「となると、チンコでも試したくなるじゃないですか。元々、巾着などは、男性相手へのサービス精神というか、おもてなし精神ゆえの整形だったので。モテたかったんですよね。離したくない女になれるかな、って。でも……」

 効果は薄い、と雨宮さんは自嘲気味に笑った。

「チンコって神経が少ないから、わからないんですかね? 『もしかしてキミ、巾着やってるでしょ!? やったー! 俺、巾着マンコが大好きなんだよね!』なんて言われたことないですし。好かれると思ってやったんですけどね。ヒアルロン酸なので、そのうち皮膚に馴染んでなくなってしまうので、効果が切れる前にもっと試したいですね」

 ともかく、雨宮さんはマンコに触れずにオナニーをする能力を手に入れた。

「私ってボディビルダータイプなんですよね。ビックリ人間的な。だからこういう話をしても、ファンは『頑張れ!』と応援してくれるんです」

 彼女のファンはその膣に触れることがなくとも、声援を送る。アイドルとファンの尊い関係がそこにある。

 女性は自らの高みを目指すため、マンコも整形をする。名器=愛される・モテる、という方程式は成り立たないが、自分の快感が高まったならそれで良い。雨宮さんには、ヒアルロン酸による一時的な特殊能力を存分に堪能してほしい。

(有屋町はる)

女性器整形でイキまくるボディを手に入れたグラドル、ノーハンドオナニー成功体験を語る!

 昨今、整形をカミングアウトする芸能人が増えているという。昨年4月には水沢アリーが『有吉反省会』(日本テレビ系)にて、「(顔も変わったというツッコミに対し)でももういじってない!」と白状、12月には『旅ずきんちゃん』(TBS系)にて、「(整形箇所は)あちこちっていうかちょっとずつ。どーんとやったときも1回あったんだけど、ちょっとずつもたまにしてた」と、繰り返していたことも告白。が、箇所の詳細は語らずじまい。

 ほかにも、ここ数年で森下悠里がヒアルロン酸注入をテレビ番組で告白している。ちなみに、以前の芸名のときよりもだいぶ成長した胸については、「男の人に触ってもらって大きくなった」と、しらこいことを言っているのだが。と、このように、“整形をカミングアウト”とは言うものの、奥歯にものが挟まった感が否めない。

そこに現れたひとりの女性。名は雨宮瑠菜さん、現役グラビアアイドルでビッチアイドルグループ、乙女♡BITCHリーダーだ。

「私、最近、マンコの開発を頑張っているんですよ。マンコに注射を打ったりしているんです」

 なんと雨宮さん、整形をカムアウトしてくれたのだ。しかも、マンコの! アイドルなのに!!

マンコ整形、150万円

 雨宮さんがマンコの整形をしたきかっけは、「マンコの限界に挑戦したかったから」だという。

「周りのAV女優やグラドルの友達が、乳首を触るだけで潮吹きできるとか、見られるだけで濡れるとか、超人エピソードを披露するんですよ。あるとき、AV女優の友達が、『クリトリスにピアスを開けて、死ぬほど痛かったんだけど、イキやすくなった』と言うんです」

 なんでもその友人は、クリトリスに直接刺激を与えなくても、イケるようになったというのだ。

「ピアスに意識を集中して、マンコのことを考えたら、それだけでイケるって言っていました。またまた〜、そんなことあるわけないじゃん、と言うとマジ顔で『チンコとマンコのことを想ってクリトリスに集中するだけで、全然イケる。瞑想するだけで』と念押ししてきたんです。なんなら、電車に乗っているときもイケるって」

 まるで超能力者のような特殊能力だが、雨宮さんはこれに触発された。気づくとスマホで、

<マンコ 開発>

 とグーグル検索していた。

「検索結果の一番上に出てきた、“女性器整形”をやっているクリニックにすぐに駆け込みました」

 クリニックの院長は手慣れた様子で、女性器整形の説明をしてくれたという。

「施術は何種類かあり、マンコの入り口を狭くする“タコツボ”。膣を狭くする“巾着”。膣の上に肉ひだを作る“数の子“。下につくる“ミミズ”、などなど。これらの施術は“M(名器)ショット”と呼ぶそうで、『どのコースにする?』と。プラス、Gスポットにヒアルロン酸を打って感度を上げる“Gショット”というのもある、と説明を受けました。ヒアルロン酸は1本3万円。すべての施術を網羅すると、1000万円近くかかることもあるそうです」

 そこで雨宮さんは「なけなしのお金、約150万円で」、Gスポットと巾着&ミミズのコースをチョイス。マンコに麻酔クリームを塗られながら、「彼氏いるの?」「今はいないですけど、これやってできたらいいですよね」などと談笑しつつ、無事施術を終えた。雨宮さんはマンコを整形し、晴れて名器となったのだ。

ノーハンドオナニー絶頂達成

 あっさりと話す雨宮さんだが、施術中、痛みなどはなかったのだろうか。

「麻酔をしましたし、痛みはそんなにありませんでしたね。強いて言うなら、“違和感”レベル。歯の治療と同じくらいだと思ってもらえれば。でも、施術中より施術後の違和感がすごかったんです。ヒアルロン酸を入れたばかりということもあり、マンコがパンッパンすぎて歩けないほど。まるで麻薬を密輸しているような歩き方になっていました。入浴時、洗おうと思って入り口を指で触れると、指が全然入らないしケツより固いんです!」

 そんな違和感も3日でなくなり、整形が馴染んだマンコには、驚くべきことが起こり始めた。

「お腹を押すだけでイケるようになりました。あるときは、電車に乗っていて暇だな~と思っていたときに、手持ち無沙汰でお腹をグリグリ押してみたんです。すると……あ、キタ……キタ……キターーー!! となって……」

 雨宮さんは、電車でイッた。憧れだった、友人と同じ能力を手に入れた瞬間だった。

「となると、チンコでも試したくなるじゃないですか。元々、巾着などは、男性相手へのサービス精神というか、おもてなし精神ゆえの整形だったので。モテたかったんですよね。離したくない女になれるかな、って。でも……」

 効果は薄い、と雨宮さんは自嘲気味に笑った。

「チンコって神経が少ないから、わからないんですかね? 『もしかしてキミ、巾着やってるでしょ!? やったー! 俺、巾着マンコが大好きなんだよね!』なんて言われたことないですし。好かれると思ってやったんですけどね。ヒアルロン酸なので、そのうち皮膚に馴染んでなくなってしまうので、効果が切れる前にもっと試したいですね」

 ともかく、雨宮さんはマンコに触れずにオナニーをする能力を手に入れた。

「私ってボディビルダータイプなんですよね。ビックリ人間的な。だからこういう話をしても、ファンは『頑張れ!』と応援してくれるんです」

 彼女のファンはその膣に触れることがなくとも、声援を送る。アイドルとファンの尊い関係がそこにある。

 女性は自らの高みを目指すため、マンコも整形をする。名器=愛される・モテる、という方程式は成り立たないが、自分の快感が高まったならそれで良い。雨宮さんには、ヒアルロン酸による一時的な特殊能力を存分に堪能してほしい。

(有屋町はる)

人肌をたくさん摂取して孤独の苦しさを知った。『一人交換日記』永田カビ×牧村朝子

漫画家・永田カビさんが、昨年12月に『一人交換日記』(小学館)を刊行された。本書は昨年話題になった『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』(イースト・プレス)のその後を描くもので、前作でさびしさのあまりレズ風俗に足を運んだ永田さんが、もう一人の永田さんと「一人交換日記」を交わすという体裁で、家族や愛、孤独と向き合う作品となっている。

今作で、長い葛藤、紆余曲折を経て一人暮らしを始めた永田さんは、その後どんな生活を送られているのか。家族との関係、探しているという「自分のものさし」は見つけられたのか、そして今はもう「さびしくない」のか。文筆家の牧村朝子さんがインタビューを行った。

「そっちの人だったのね」というひと言

牧村 『一人交換日記』が出てから1カ月が経ちましたが、最近の生活はどうですか?

永田 『一人交換日記』で描きましたが、『さびしすぎてレズ風俗に行きましたレポ』に「孤独とは物理的に一人で居ることじゃなく、周りの人に自分の能力や人格を認められないことだと思います」という感想をいただいたんですね。そのときは納得したんですけど、一人暮らしを始めてからは、ずっと一人で自分のためだけに家事をしていることにどんどんさびしくなってきちゃって。半年以上帰っていなかった実家にときどき帰るようになりました。しばらく離れてみたことによって実家との関係はいろんな意味で変わりました。メールしていても関係が良くなったのを実感しますし、帰れば温かく迎えてくれて。

牧村 ご家族はカビさんの作品を読まれているんですか?

永田 父親は漫画の読み方がわからないらしくて、読めなくて読んでないようです。最初の本が出たときは、読めないなりに「親の顔に泥を塗った」って怒っていたみたいで、恐ろしくて実家にしばらく帰れませんでした。最近、母親が友達に「娘が本を出した」と話が出来るくらい開き直ってくれるようになって、父親も「重版したらしいよ」と母親が話すと「そうか、すごいな」と言ってくれるようになったみたいです。この半年で多少は変化があったのかもしれません。

牧村 お母様は前作の「レズ」「風俗」という言葉に反応されたと描かれていましたけど、今作についてはなんておっしゃっていました?

永田 今作の最後に、好意を寄せてくれた女性に私が応えようとしたシーンがありますが、たぶんそれをみて母親が「そっちの人だったのね」と言ったんです。すごい傷ついちゃって。アラウンド60歳くらいの、「同性愛は川岸の向こう側のこと」って感覚は根強いんだなあと感じました。

「好き」に名前はいらない

牧村 お母様は「そっちの人」って表現をされたんですね。ご自身はそう思いますか?

永田 まだわからないし定義する必要はないと思ってます。好きになったら、ただ好きになればいい。「好き」がどういう種類のものを考えて名前をつけないといけないわけじゃないと思います。

『ユリ熊嵐』ってアニメを見ていたら、「恋人」「友達」とかじゃなくて、ただ「スキ」とだけ言っていたんですね。お母さんのことも、子どものことも、友達のことも、どんな相手でも「スキはスキ」って言っているんです。「LGBTがどうたら」「何々愛」みたいにわけてない。『ユーリ!!! on ICE』だと「愛」とだけ言ってました。コーチと教え子でも、選手同士でも、「愛は愛」って描かれている。それが心地よくて。世間がそうなっているならいいことだなあって私は思っています。

牧村 今作の感想を見ていたら「作者はレズビアンじゃないんだなと思いました」という方も、逆に「この作品を読んで作者はレズビアンだと確信しました」っていう方もいらっしゃいました。

永田 決めたいんですよね、みんなね。人間って、もやっとしたままにしておくのが苦手だから、何か決めたいんだと思うんですけど……前作が最後までもやっとしたままだったから、今作に答えを見つけようとするところはあったのかもしれないです。

牧村 なるほどね。でも今回の作品は、ご自身のセクシュアリティを探求される描写はなかったですよね。なさっていましたか?

永田 していないし、しなくていいと思ってます。むしろしないままでいたいかなあ。

『一人交換日記』は永田さんであって永田さんじゃない

牧村 『一人交換日記』は、カビさんがカビさんに向けて日記を描く、交換日記という体裁になっていますよね。中学時代から「一人交換日記」をされていたそうですが、セクシュアリティについて今の考えに至るのに、この方法って役に立ちましたか?

永田 中学生のときは遊びでやっていただけなので役に立ってなくて。そういう感動的な繋がりはないんですよね(笑)。

牧村 そうなんですね! 何か繋がりがあるなら聞きたいと思っていたんですけど(笑)。

永田 あの頃は本当に友達がいなさすぎて暇だったので、名前をつけた自分の別人格たちと「今日の部活は嫌だった」とか他愛のないことを会話していたんです。今回の作品は担当編集さんが「一人交換日記」というワードを拾って、やり方を提案してくださって出来たもので中学時代のものとは繋がってなくて。

牧村 無理矢理繋がりを見出そうとするならば、出てくるのは全部自分というところですかね。cakesのインタビューでは、「(今回の作品で)永田カビさんが嫌われないように」って担当編集さんがおっしゃってましたね。

永田 実は「言われた記憶ないなあ」って話を聞きながら思ってました(笑)。私が人の話をちゃんと聞いてないだけかもしれない……。「これは永田さんだけど、キャラクターだから」とは打ち合わせで繰り返しおっしゃっていたのはちゃんと覚えてます。

牧村 カビさんは、別人格としての永田カビを描いている認識ではない?

永田 人に伝わる形にする作業をしている時点で、自分とは一段階違うものになるだろうな、とは思います。

孤独なのは人を信用していないから?

牧村 そんな作品の中の自分に対して、読者の中には「早起きしろ」とか「お酒を減らせ」とか言ってくる人がいますよね? 「21時までに帰ってこい」とカビさんに言ったお父様と被って見えるんです。

永田 確かに当時の父親の「想定内にいて欲しい」「自分のコントロール下に置きたい」っていうのと通じる部分があるかもしれませんね。

牧村 うーん、でも「想定内にいて欲しい」って表現をすると、その人たちの気持ちもわからなくもないかなあ。カビさんは「誰かを愛したい」って思っていらっしゃるんですよね? そういう人が見つかったときに、同じようなことをするでしょうか? どうやって人を愛すると思いますか?

永田 えー難しい。どうなんでしょう。されてきたのと同じようにしてしまうだろうから、しないようにしようと思いつつも、気を抜いた瞬間にしてしまうのかも……。

牧村 「23時なんて遅いじゃない、21時には帰ってきてよ!」って言ってしまうかもしれない?

永田 気を抜いたらしてしまいそうだなあ。親からされてきたことをしてしまうんだろうから。

牧村 そっかあ。最近、恋愛関係はどうですか?

永田 特に何もなくて。でも『一人交換日記』が出てから新しく友達が二人できました。友達って表現をしてますけど、みんなのことをただ好きなんです。だから、もしかしたらそういう関係になるかもしれないし、ならないかもしれないくらいのつもりでいます。でも友達はみんな、結婚していたり結婚を考えたりしているから、私とはときどき会って話したりする相手って認識って感じで、ちょっとさびしくはありますね。

牧村 『一人交換日記』の中で、あまりにさびしくて、布団を被っても寒さがとれないシーンがありますよね。今もなりますか?

永田 あのときの寒さは、実家にいたときのさびしさだったんですけど、一人暮らしを始めてからもっとすごいさびしさがあることを知りました。寒いとかじゃない、胸がぎゅうっと締め付けられるような……孤独ってこんなに苦しかったんだって思い知りました。

牧村 何なんでしょうね、その源にあるのは。

永田 私が人を信用してないからかもしれません。人から愛されているって実感を覚えても、「いや、そんなことないんだ、どうせそんな愛していないんだろう」って思ってしまっていて、勝手にさびしくなっているんじゃないかなって。

牧村 そのことに気づいてから、何かされてますか?

永田 なんだろう……愛されていると信じようとか、自分を大事にしようとか、心がけているんですけど、出来てないですね。

牧村 時間がかかることなんでしょうね。

永田 そうですよね。いつかきっと出来るようになると思って、心がけ続けることが大事なんだと思います。

抱きしめられて知った「人肌に触れればすべてが救われる神話」

牧村 「人肌との接触によって救われる神話」がウソだったことに気づいた、でも脱せていないって今作で描かれていますよね。

永田 それは、最近脱せられたと思ってます。既に結構時間がかかってるじゃないですか。

牧村 作品2個分の時間がかかってますね(笑)。

永田 そうなんです(笑)。今は「人肌を摂取しにいかなくては!」って脅迫的には思わないし、メールの文面で温かい気持ちになれたらそれだけで嬉しいです。「人肌に触れればすべてが救われる神話」はないと認識しています、最近は。

牧村 「人肌に触れられれば救われるんだ神話」から脱することが出来るようになったきっかけって思い当たりますか?

永田 うーん……。「抱きしめられたい」ってめちゃくちゃ描いたからか、会う友達会う友達みんなが抱きしめてくれるんですよ。「外国人かよ!」ってノリで、自然に抱きしめてくれるんです。抱きしめられたい欲が満たされてきているのに、でもさびしいんですよね。たぶん人肌に触れられてもさびしさがあるということがわかったんだと思います。

牧村 人肌をたくさん摂取したのに満たされないというのは、今作の最後に描かれていたことに通じるんですかね? 交際を前提にお友達になってくださいと声をかけてきた方とデートするとき、相手の方がすごく嬉しそうな顔をされているのをみて「私は、この人のことを、あんなに嬉しそうな顔できるほど好きじゃない」って描かれていたり、「相手のことをもっと思っていないとホテルに行っても楽しめない」って描かれてましたよね。

永田 あの方については、失礼なことを描いてしまいがちなんですけど……最近、誰でもいいから抱きしめてもらいたかったわけじゃなかったんだって分かったんです。自分が心から信用しているし、大好きな相手が抱きしめてくれたら嬉しいけど、何回か会っただけの人に抱きしめられても居心地が悪いだけなんだって。

牧村 カビさんがツイッターで『ユニコ』の話を書いていらっしゃったでしょう? 「人と会えるようになってからの孤独」って。もしかしたら、美味しいものを食べちゃったから空腹がつらいって気持ちに近いのかなって思ったんですけど……。

永田 そうそう、そうなんです。前作で描いたように、3年くらい人と会わなかった期間があって、その間は、人と会わなくても、さびしくても平気だって思い込むことでやりすごしていたんです。でも人と会うようになってきて、こちらから声をかけられるようになってから、今までは心を鈍化させて平気だって思い込んでいたんだって気づいたんです。

牧村 だからいま一人暮らしが染みているんですかね。

永田 そうだと思います。さびしさが意識にがんがんのぼってきているんです。

いまは「ものさしのゼロ」を探している

牧村 カビさんはどうして漫画を描き続けていらっしゃるんですか?

永田 この前、pixivのインタビューでも答えたんですけど、背水の陣なんです。他のことはどれも続かなかったし、普通に会社勤めができなかった。でも漫画だけは、こういう風にちょっと売れたりお金が入ってきたりしてる。だから、もうこれしかないんだって思って。たぶん良くないんですけどね、そんな風に思いつめてやるのは。

牧村 やりたいから描くといよりは、これしかできないから描くに近い?

永田 やりたいのはやりたいです。会社勤めが出来てしまったとしても、たぶん空いた時間に漫画は描くと思うから。漫画はやりたいし、本当にこれしかないっていうのと、両方ですね。

牧村 描き続ける先に何をご覧になっていますか。

永田 「どこにたどり着けばいいんだろう?」って本当に思っていて……。一人暮らしもそうだし、漫画もそうだし。「家電がどんどん揃ってきたけど、一体どこが到達点なんだろう」って思っちゃうんですよね。「洗濯機を買った。で、なに?」って……。何のために頑張っているんだろう? って思っちゃうんです。いまは「どこまで走ればいいんだろう?」って息切れしながら走っている感じですね(笑)。

牧村 自分のものさしを持つことについて描いていらしたでしょう? あれからものさしを持つことは出来ましたか?

永田 最近ふと思った仮説なんですけど、昔の、本当にダメで、「これが自分だなんて認めたくない」っていう自分も自分の一部だって認められたところから、ものさしが出来るんじゃないかなって。

牧村 正確に理解できているかな。「ものさしの目のゼロを書く」みたいなことであっていますか?

永田 あー、そうかも。

牧村 そしたら3cm上がって2cm下がるのがわかりますもんね。ゼロはどこにあるんでしょうね。

永田 ゼロに向き合えていないのかもしれないですねえ。ゼロがわかればいいのかなあ。底辺の自分を自分と認めること……。

牧村 まずはゼロを探して、そのあとに、「あのときの自分よりは出来るようになった」「これだけ預金残高もあるし、本も売れた。ケータイの連絡先も増えてきた」って目盛りをちょっとずつ増やしていくのかもしれませんね。じゃあ今は、ものさしのゼロになるかもしれない自分のどん底も探しているし、行く先も探している状態なんですね。

永田 そうですねえ。その間でふわふわしている感じかな。

人を救うほうにはいきたくない

牧村 読者に伝えたいことはありますか?

永田 特に……(笑)。本当に好きに読んでくれたらいいなあって思います。よく「同じような境遇の人が励まされたと言っていたら嬉しいですか?」って聞かれるんですけど、もちろんありがたいんだけど、年齢層も性別も関係なくいろんな人が読んで「全然理解できない」でも「こんな奴許せない」でも、なんでもいいので好きに感想を持ってもらえたらいいなと思っています。

牧村 カビさんって去年12月に『果てしのない世界め』(平凡社)を出された少年アヤさんをお読みになりますよね。少年アヤさんについてある評論家の方が「この人は共闘してくれている。だからみんなアヤさんの幸せを願う」と書かれていたんです。もしかしたらカビさんもそれに近いのかもしれないって思いました。例えば美輪明宏さんは教祖じゃないですか。高いところにいて導いてくれる人。でもアヤさんとかカビさんは、一緒に迷ってくれて、悩んでくれて、一緒に道を歩いてくれる、そんな人なのかもしれません。

永田 そうなれていたらいいですけど。人が、自分のことをそんな風に思ってくれていることをまだ信じられないです。

牧村 だから「好きに読んでください」ってなるのかもしれないですね。

永田 ああ……期待しちゃうと辛いと思って、好きに読んでくださいって言ってるのかな。実際に「エンターテイメントとして消費してくれていてもいいんだけどな」って思っているところもあるんですけど。

牧村 「力になれたら嬉しいです」「寄り添えたら嬉しいです」って思ってはいるけど、でもそれを表に出すのは怖い?

永田 そこまで力になれるとも思ってないんです。最後まで責任を持てるかというと、もてないと思うし。だから人を救うほうにはいきたくないかなあ。

牧村 これからも作品は読ませていただきたいですし、どのくらい時間がかかるのかわからないけど、カビさんがものさしを見つけられたときのことをなにより読みたいです。

永田 ありがとうございます。ぜひ描き続けたいと思っています。
(聞き手/牧村朝子、構成/カネコアキラ)

妊娠菌をばら撒き、そして売る妊婦たちの狂気が垣間見えるインスタ&メルカリの闇

 いつも寝る前にインスタをチェックしている。主にチェックするアカウントは『コーデUP系』と『ていねいな暮らし&子育て』系だ。このせいで正直、万年寝不足である。

 先日、知り合いの編集者に「いまの新米ママさんはどうやって育児の情報収集をしているのか」と尋ねたところ、芸能人ブログでも雑誌でもなく「インスタで月齢の近い子を持つママさんのアカウントをチェックしている」のだという。筆者は4年前の出産後、もっぱらママタレブログ(特にギャル曽根)の育児奮闘記事を読んで心を和ませていたのだが、もうそんな時代は終わっていたことを遅ればせながら悟ったのであった。というわけで、いつもウォッチする系統とは別に、育児系のタグでインスタをウォッチしてみたところ、驚きのムーブメントを発見した。その名も“妊娠菌”である。これって妊婦の常識だったの!? オカルトに疎いもんで全然ノーチェックだったが、知らなかったことを(ウォッチャー的に)後悔した。

妊娠菌タグ画像の共通点

 「#妊娠菌」タグで検索してみたところ、もはや追いきれないほどの写真の数々。いや……てか妊娠菌って何!? まさか妊娠菌という菌が移って妊娠するとかいう、迷信めいたものですかね? と想像したら、その通りだった。ひねりがなくて驚いた。何のエビデンスがあるのか……なんて無粋なことはさておき、現状確認である。エビデンス、あるわけない。

「#妊娠菌」タグのつけられた写真には、いくつか同じものが写っていた。透明なアクリル樹脂らしきもので作られた、うさぎのイラストつきお守りと、おにぎり(ゆで卵付きのことが多い)、そして「#赤富士」だ。

 この透明な「お守り」には何の意味が……? 気になって片っ端からチェックしてみたところ『うん子宝』という名称で、うさぎのウンコが中に入っているらしい!「#ベビ待ち」や「#不妊治療中」の女性が多く入手しているようだ。調べると、それを配っているサイトもあった。子孫繁栄のシンボルのうさぎ、幸運を呼び寄せるウンコ、こういったものを組み合わせて、うさぎ型の中にウンコを入れた『うん子宝』が生まれた様子。パワーストーンなんかもプラスして、うさぎの中にはウンコだけでなく、これでもかと縁起物が詰め込まれている。これは作者が妊活のお守りとしてうさぎのウンコを樹脂で固めうさぎ型のお守りを作ったところ、妊娠したというストーリーがあったことから、ご利益を求めてもっぱらインスタ場でプチブームを巻き起こしている……らしい。常々思うがインスタで巻き起こるブームは局所的だが熱狂的でもある。無料ということもあってか、申し込みは殺到している様子。

 そしておにぎり。こちらも気になり、おにぎり画像を片っ端からチェックしてみたところ「#妊婦おにぎり」というものだと発覚した。妊婦おにぎり……腹が減った妊婦が食べるおにぎりではなく、妊婦が握ったおにぎりだった。「妊娠ジンクスで臨月の(臨月じゃなくてもよいという説もあり)妊婦さんにおにぎりを握ってもらうと妊婦菌が移るという噂」があることから、臨月の妊婦さんが実際に握って友人にプレゼントしたり、「#ベビ待ち」の女性が臨月の友人などに頼んで握ってもらうなどのパターンがあるようだ。「海苔おにぎり」と「塩おにぎり」が良く、さらに「ゆでたまごも良い」という記述がチラホラみられたが、どう良いのかはわからなかった。古来から日本に伝わる文化なのだろうか。東日本限定の風習らしいという記述も確認でき、なにか民俗学的な匂いも漂う。

 「#赤富士」は「陣痛中に妊婦さんが描いた赤い富士山の絵」。芸能人ブログでも度々登場するのでご存知の方も多いだろう。こちらのサイトによると、この絵を描いてもらうと妊娠するというジンクスがあるのだという。へぇ~。タモリの安産お守りみたいなもんですかね……? インスタでは、友人からもらったり、インスタで仲良くなった妊婦さんからもらったり、というような赤富士の写真がけっこう確認できる。

 妊娠を心待ちにしている夫婦もいるので、こうしたジンクスで気持ちを上げることはもちろん否定しない。藁にもすがる思いで、こうしたアイテムを入手する妊娠希望者もいるのかもしれない。ただ……。

メルカリで横行する妊娠菌ビジネス

 インスタは妊娠菌を浴びたいユーザーがいる一方で、不気味なことに『陽性反応が出ている妊娠検査薬』の写真も多い。オシッコかけた検査薬の写真をアップするのって誰得なわけ!? あまりにもプライベートをさらけだしすぎていて、とにかく驚きと(ウォッチャー的な)喜びがないまぜになった複雑な感情に襲われた。妊娠を望む女性にとっては、他人の妊娠を知ることで心乱されることもあるのではないか、とこっちの心が乱れそうだ。インスタは優しさと、自己顕示欲の結果としての残酷さが同居している。

 ちなみに最近筆者はインスタとメルカリを同時にチェックし、ユーザーの紐付けなどの作業にも勤しんでいる究極の暇人なのだが(仕事も忙しいので常に寝不足)、この「#妊娠菌」関連グッズについてメルカリでチェックしてみると、これまた驚くべき事態になっていた。なんと一般女性たちによる妊娠菌ビジネスが横行していたのである。

 まず「妊婦おにぎり」関連の「妊婦米」と称した、本当のただの白米。「妊娠中のママから貰ったお米をお守りにして身につけたり、それで作ったおにぎりを食べると妊娠できるというジンクスがあります」とあるが、この出品者は4人目を妊娠中で、1合300円で売っていた。これ悪いけど高すぎっ!!!! でもなんと購入者がいた。「#ベビ待ち」の女性たちがカモにされている瞬間を見た。これは果たして親切といえるのか?

 ほかには妊婦が描いた『ザクロの絵』。ザクロの絵を寝室の北側に飾ると子宝に恵まれるという説があり、とくに妊娠している女性が描いたものがご利益が高いと言われる……と出品紹介文にはあった。559円。中途半端な値段~っ!!! しかも売れてるし! さらに、出品者がいただいて育てていると妊娠が発覚したという縁起の良い「子宝草」。これが一株333円。筆者は植物をうまく育てることができた試しがないため、たぶん、枯らすだろう。結果的に自分から“縁起物を枯らす”という縁起の悪い事態を招きそうだから、買えないな。

 もちろん『赤富士』も売られている。300円程度が相場のようだが、本当に陣痛中に描いたのか疑うほどに、しっかりとした筆跡のものもある……。これが陣痛中に描かれたものだと証明するものはなにもない。産後に一儲けする算段だったのか、6枚以上の陣痛赤富士を出品している猛者もいる。苦しみながら6枚連続で描いたのか? ほか「妊娠中の私が描いた絵です」と555円で素人がただの絵を販売していた。お前なぁ……。ここまでくると、そもそもご利益とは何なのか、縁起が良いとはどういうことなのか……と、根源的なことを考え始めてしまった。メルカリで会ったこともない妊婦が描いた絵を買って、何のご利益があるのだろうか。いや絶対ないと思う。

 もうひとつ、メルカリで気になったのは、女の子の産み分けグッズ(という名の潤滑ゼリー)「ハローベビーガール」である。使っている途中に妊娠が発覚したので残りを売ります、という売り文句であるが……メルカリ以外の通販ページでこの商品を調べると、さも女の子を授かりやすいかのような紹介文が書かれていた。これには山田ノジル先生も過去記事でサラリと触れているがいつかぜひ検証をお願いしたいと思っている。

(インスタ&メルカリウォッチャ〜京子)

妊娠菌をばら撒き、そして売る妊婦たちの狂気が垣間見えるインスタ&メルカリの闇

 いつも寝る前にインスタをチェックしている。主にチェックするアカウントは『コーデUP系』と『ていねいな暮らし&子育て』系だ。このせいで正直、万年寝不足である。

 先日、知り合いの編集者に「いまの新米ママさんはどうやって育児の情報収集をしているのか」と尋ねたところ、芸能人ブログでも雑誌でもなく「インスタで月齢の近い子を持つママさんのアカウントをチェックしている」のだという。筆者は4年前の出産後、もっぱらママタレブログ(特にギャル曽根)の育児奮闘記事を読んで心を和ませていたのだが、もうそんな時代は終わっていたことを遅ればせながら悟ったのであった。というわけで、いつもウォッチする系統とは別に、育児系のタグでインスタをウォッチしてみたところ、驚きのムーブメントを発見した。その名も“妊娠菌”である。これって妊婦の常識だったの!? オカルトに疎いもんで全然ノーチェックだったが、知らなかったことを(ウォッチャー的に)後悔した。

妊娠菌タグ画像の共通点

 「#妊娠菌」タグで検索してみたところ、もはや追いきれないほどの写真の数々。いや……てか妊娠菌って何!? まさか妊娠菌という菌が移って妊娠するとかいう、迷信めいたものですかね? と想像したら、その通りだった。ひねりがなくて驚いた。何のエビデンスがあるのか……なんて無粋なことはさておき、現状確認である。エビデンス、あるわけない。

「#妊娠菌」タグのつけられた写真には、いくつか同じものが写っていた。透明なアクリル樹脂らしきもので作られた、うさぎのイラストつきお守りと、おにぎり(ゆで卵付きのことが多い)、そして「#赤富士」だ。

 この透明な「お守り」には何の意味が……? 気になって片っ端からチェックしてみたところ『うん子宝』という名称で、うさぎのウンコが中に入っているらしい!「#ベビ待ち」や「#不妊治療中」の女性が多く入手しているようだ。調べると、それを配っているサイトもあった。子孫繁栄のシンボルのうさぎ、幸運を呼び寄せるウンコ、こういったものを組み合わせて、うさぎ型の中にウンコを入れた『うん子宝』が生まれた様子。パワーストーンなんかもプラスして、うさぎの中にはウンコだけでなく、これでもかと縁起物が詰め込まれている。これは作者が妊活のお守りとしてうさぎのウンコを樹脂で固めうさぎ型のお守りを作ったところ、妊娠したというストーリーがあったことから、ご利益を求めてもっぱらインスタ場でプチブームを巻き起こしている……らしい。常々思うがインスタで巻き起こるブームは局所的だが熱狂的でもある。無料ということもあってか、申し込みは殺到している様子。

 そしておにぎり。こちらも気になり、おにぎり画像を片っ端からチェックしてみたところ「#妊婦おにぎり」というものだと発覚した。妊婦おにぎり……腹が減った妊婦が食べるおにぎりではなく、妊婦が握ったおにぎりだった。「妊娠ジンクスで臨月の(臨月じゃなくてもよいという説もあり)妊婦さんにおにぎりを握ってもらうと妊婦菌が移るという噂」があることから、臨月の妊婦さんが実際に握って友人にプレゼントしたり、「#ベビ待ち」の女性が臨月の友人などに頼んで握ってもらうなどのパターンがあるようだ。「海苔おにぎり」と「塩おにぎり」が良く、さらに「ゆでたまごも良い」という記述がチラホラみられたが、どう良いのかはわからなかった。古来から日本に伝わる文化なのだろうか。東日本限定の風習らしいという記述も確認でき、なにか民俗学的な匂いも漂う。

 「#赤富士」は「陣痛中に妊婦さんが描いた赤い富士山の絵」。芸能人ブログでも度々登場するのでご存知の方も多いだろう。こちらのサイトによると、この絵を描いてもらうと妊娠するというジンクスがあるのだという。へぇ~。タモリの安産お守りみたいなもんですかね……? インスタでは、友人からもらったり、インスタで仲良くなった妊婦さんからもらったり、というような赤富士の写真がけっこう確認できる。

 妊娠を心待ちにしている夫婦もいるので、こうしたジンクスで気持ちを上げることはもちろん否定しない。藁にもすがる思いで、こうしたアイテムを入手する妊娠希望者もいるのかもしれない。ただ……。

メルカリで横行する妊娠菌ビジネス

 インスタは妊娠菌を浴びたいユーザーがいる一方で、不気味なことに『陽性反応が出ている妊娠検査薬』の写真も多い。オシッコかけた検査薬の写真をアップするのって誰得なわけ!? あまりにもプライベートをさらけだしすぎていて、とにかく驚きと(ウォッチャー的な)喜びがないまぜになった複雑な感情に襲われた。妊娠を望む女性にとっては、他人の妊娠を知ることで心乱されることもあるのではないか、とこっちの心が乱れそうだ。インスタは優しさと、自己顕示欲の結果としての残酷さが同居している。

 ちなみに最近筆者はインスタとメルカリを同時にチェックし、ユーザーの紐付けなどの作業にも勤しんでいる究極の暇人なのだが(仕事も忙しいので常に寝不足)、この「#妊娠菌」関連グッズについてメルカリでチェックしてみると、これまた驚くべき事態になっていた。なんと一般女性たちによる妊娠菌ビジネスが横行していたのである。

 まず「妊婦おにぎり」関連の「妊婦米」と称した、本当のただの白米。「妊娠中のママから貰ったお米をお守りにして身につけたり、それで作ったおにぎりを食べると妊娠できるというジンクスがあります」とあるが、この出品者は4人目を妊娠中で、1合300円で売っていた。これ悪いけど高すぎっ!!!! でもなんと購入者がいた。「#ベビ待ち」の女性たちがカモにされている瞬間を見た。これは果たして親切といえるのか?

 ほかには妊婦が描いた『ザクロの絵』。ザクロの絵を寝室の北側に飾ると子宝に恵まれるという説があり、とくに妊娠している女性が描いたものがご利益が高いと言われる……と出品紹介文にはあった。559円。中途半端な値段~っ!!! しかも売れてるし! さらに、出品者がいただいて育てていると妊娠が発覚したという縁起の良い「子宝草」。これが一株333円。筆者は植物をうまく育てることができた試しがないため、たぶん、枯らすだろう。結果的に自分から“縁起物を枯らす”という縁起の悪い事態を招きそうだから、買えないな。

 もちろん『赤富士』も売られている。300円程度が相場のようだが、本当に陣痛中に描いたのか疑うほどに、しっかりとした筆跡のものもある……。これが陣痛中に描かれたものだと証明するものはなにもない。産後に一儲けする算段だったのか、6枚以上の陣痛赤富士を出品している猛者もいる。苦しみながら6枚連続で描いたのか? ほか「妊娠中の私が描いた絵です」と555円で素人がただの絵を販売していた。お前なぁ……。ここまでくると、そもそもご利益とは何なのか、縁起が良いとはどういうことなのか……と、根源的なことを考え始めてしまった。メルカリで会ったこともない妊婦が描いた絵を買って、何のご利益があるのだろうか。いや絶対ないと思う。

 もうひとつ、メルカリで気になったのは、女の子の産み分けグッズ(という名の潤滑ゼリー)「ハローベビーガール」である。使っている途中に妊娠が発覚したので残りを売ります、という売り文句であるが……メルカリ以外の通販ページでこの商品を調べると、さも女の子を授かりやすいかのような紹介文が書かれていた。これには山田ノジル先生も過去記事でサラリと触れているがいつかぜひ検証をお願いしたいと思っている。

(インスタ&メルカリウォッチャ〜京子)