愛され体質の元夫と決別、二児を育てながら初めて「女」になった――悠子さん・57歳、更年期手前までの半生。

悠子さんはフリーランスの翻訳者兼通訳で、57歳・バツイチ。娘ふたりは31歳と26歳ですでに独立し、悠子さんは神戸で両親と同居している。

神戸に生まれ育ち奥手で夢見る文学少女だった悠子さんは、国立大学に進学。地味で真面目な生徒が大半の中、ハーフ風のルックスとチャラっと派手なオーラで異彩を放つ同級生男子に恋をした。何度かデートするまでこぎつけるものの、2~3カ月経つとふらりどこか他の女のもとへいってしまうような自由奔放な彼に翻弄される日々が続いていく。

だが彼は突如大学を中退、ミュージシャンになるといって東京へ行ってしまう。大学を卒業した悠子さんが彼のことは忘れて新しい人生を生きようと決意したとき……送られてきたSOS。「寂しい」――彼のそのひとことに悠子さんは「私がなんとかしないと、この人だめになっちゃう」といてもたってもいられなくなり、すぐに東京へと向かった。彼と再会後すぐに妊娠してしまい、自分の意思とは関係なくそのまま東京で暮らすことに……。

25歳でできちゃった結婚、26歳で出産。30歳で下の子を妊娠したことをきっかけに別居するものの、正式な離婚の成立はその10年後だった。10年の月日を要したのは、手続きのために元夫と顔を合わせ関わることがとにかくイヤだったからだという。

◎破天荒さで人を惹きつける元夫。一番身近にいた妻は疲れ果てて…

――元夫さんはずいぶんとユニークな人のように思えますが……。

「とにかくはちゃめちゃな人です。ミュージシャンになると言って東京に出たはずなのに、顔が男前だから役者が向いていると人から言われれば、またその気になり。詩人になるって詩を書いていたこともあったかな……」

――結局、何者かになったんでしょうか。

「いいえ。飽き性なんで無理なんですよ。結局ミュージシャンにも役者にもなれずで」

――できちゃった結婚ですが、子供が産まれてから彼は真面目に働いてくれたんでしょうか。

「一緒に住んでいる間は、まったくでしたね。私が働き、うちの親に援助もお願いして。それでなんとか食べていくって感じでした」

――その状況でふたりめを作ろうと決意されたのはどうして?

「私、子供は最初からふたり作ろうと決めていたんです。父親(元夫)があまりにもアテにならない人なので、ひとりっこだと可哀想だなと思ったんです。なにかあったときに手を取りあって助け合っていけるように、兄妹がいたほうがいいと考えました。そう考えてはいたけれど、実際にふたりめの妊娠がわかったときには、あ、これはダメだなと」

――ダメというのは具体的に言うと?

「我に返ったんです。元夫にはなんの期待もできない、ということにようやく気がついた。5歳の上の子がいて、私は働き通しで。これで下の子が産まれたら私パンクしちゃうと思ったんです。で、とにかく彼から離れて実家のある神戸に帰ろうと。我に返ってからは早かったですよ。上の子を連れて着の身着のまま状態で東京を出ました」

――子供が産まれても、悠子さんが働き通しでも、元夫さんは「よし、じゃあ俺も!」と奮起することはなかったんですね。

「元夫のお母さんは自分でお店を経営する働き者で。とにかく稼いで派手にお金も使う人だったんです。そのお母さんにお金と愛情をたっぷりとかけて育てられたせいか、女の人が稼いで食べさせてもらうことになんの抵抗もない人で」

――元夫さん、いま57歳ですよね。『女に食わせてもらうなんて男の沽券に関わる!』と言ってもおかしくない世代だと思いますが。

「そんな意識はまったくない! 幼い頃から、会う人会う人に『かっこいい、ハンサムだ』と言われ続け、芸能事務所からスカウトされたこともあった。とにかく自分が輝いていたい、目立っていたい。特別な存在だと思いこんでいる人ですから。だから、女の人が尽くして働いて食べさせてくれて当たり前なの」

――地元に戻ってきてからの生活は順調だったんでしょうか?

「31歳で下の子を出産して、その半年後には知人に事務職を紹介してもらい、就職することができました。でもその会社、私が35歳の時に倒産しちゃって」

――なんて波乱万丈! 一気に生活の危機に陥ってしまった?

「それが、ちょうどその頃は元夫が起こした会社が順調で。まとまったお金を送ってくるようになったんですね。それで私も生活に少し余裕ができたので、一念発起して、もともと得意だった英語をいかして、翻訳業として食べていけるように勉強したり、人脈を作ったりすることに集中するようになりました」

――元夫さんはいまでも東京住まいなんですか?

「いいえ。一時は自分で起業して羽振りがよかったんだけど、結局は経営を継続しきれずにつぶしちゃって。ある日突然、関西に帰ってきました。そのときは連絡がきたかな、『昔、悠子からもらったネクタイを絞めて、そっちに帰るから』って」

――わっ、なんかものすごくナルシスト臭が……。

「そう究極のナルシストなの! だから自分以外は愛せない。自分は特別で、尽くしてもらって当たり前。私が尽くしているうちは、私の傍にいるけども、私が尽くさないとわかると次のターゲットを探しにいく。きっと一生そうして生きていくんじゃないかな」

――でも、お金があるときはちゃんとまとまった額を送ってはくるんですよね。

「それも自分のためだと思います、結局。元夫は人にプレゼントするのが大好きで。私も離婚してるのに突然『これ、きっと悠子に似合うと思って』ってフェンディのバッグを贈られましたよ。こっちは子供抱えて必死なわけですから、フェンディなんていらないの。それなら現金でちょうだいって感じだった」

――あ~、なんとなくわかります。つまり、自分が気持ちよくなるために贈ってると。

「そうそう、こんなことサラっとしちゃう素敵な俺、みたいな感じなんですよ。そういうことはできるけど、きちんきちんと養育費を送るなんてことは絶対にできない。もっと強い女の人だったら、ガンガンお小言を言って彼を教育して大人にさせたのかもしれないけれど、私も若くて。子供のこと、日々のことだけで精いっぱいだったから」

――はたから聞くと、ちょっと魅力的な男性な気もするんですが……。

「そうなの! 男女問わず、誰もが彼をひと目見たら好きになる。惹かれてしまうの。うちの母もいまだに『○○さん(元夫の名)、最近どうしてるの?』って訊くぐらいですから」

――お嬢さん方は、お父さんとは会っていらっしゃいますか。

「会ってますね。向こうのお父さんとお母さんは私や子供たちにとてもよくしてくださったので、別居・離婚してからも孫の顔は見せてあげないとなと思って、子供を連れて定期的に彼の実家がある大阪まで会いに行っていたんです。やがて元夫も実家に戻ったので、私は顔を会わせないように子供だけで行かせるようになりましたけど」

――お嬢さん方、お父様のことをどんなふうに思われているんでしょうね。

「お母さんが好きになっちゃった気持ちはわかる。でもああいうタイプと結婚は絶対ないわ、って(笑)」

――しっかりしてる(笑)。悠子さんは、元夫さんに子供を会わせたくないとは考えなかったんですね。

「考えましたよ。関西に戻ってきてからもなんか怪しい水を販売したりと、いつもうさんくさいビジネスやってる人だし。子供に迷惑をかけることもあるかもしれないって危惧があったので、ホントは会わせたくはなかったけど……。でも会わさずに秘密にすると、どうしても知りたいという気持ちが強くなっちゃうでしょ、子供は。父親に変な幻想を抱かれても困るし。それなら会わせて、リアルな姿をとことん見せた方がいいと思ったんです」

――悠子さんはこちらに戻ってからはお会いになりました?

「私ね、元夫が関西に戻ってくることを知ってから鬱になっちゃって。それほど、もう絶対に関わりたくない人なんです。どうしても仕方ない用があり、1度だけ会いましたけど」

◎35歳で<女であること>に目覚め、常にセフレをキープする生活へ

――そんな強烈な元夫さんと30歳で別居してから、新しい恋はありましたか?

「30歳からの5年間はもう子供を育てるのに無我夢中で。もともと、恋愛には奥手なほうでしたし、セックスも元夫が初めての人。私にとってセックスは<相手が喜んでくれるからするもの>という認識でしかなかったので……。元夫と離れてからは特にセックスしたいなという気持ちにもなれなかったんだけど」

――けど、ってことは、もしや35歳以降に大きな展開が?

「いま思えば5年間必死で頑張って、子供も少し手が離れるようになって心に余裕ができたんでしょうね。私が子供連れて地元に戻ってきたと聞きつけた大学や高校の同級生たちが、心配して色々親切にしてくれたんです。それで、その中の何人かと……今の言葉でいうとセフレかな?」

――真面目で優等生で奥手だった悠子さんが、いきなりいろんなものすっとばしてセフレを持つ!?

「たぶんあの頃は、恋愛したいわけでもなかったんですね。ただ女性として扱ってくれて、デートの約束をして、美味しいものを食べさせてくれて、優しくしてくれる。そこを求めていたと思うんです。だから相手は全員既婚者でした。私は真剣な交際をしたいわけではなかったし、それでかまわなかったんです」

――ただただ自分のことを女として見て欲しくなった、ということでしょうか。

「そうだと思います。10代、20代の頃に気軽にセックスを楽しんでこなかったぶん、35歳以降でもうタガが外れたようになりましたね。セックスってそんな構えるものじゃないんだわ、って気がついてしまったんですよ。それに結婚生活がとにかくしんどくって耐えて尽くして、だったから。もう二度とそれはいらないと思ってたんです。相手が既婚者だと、当然結婚の話はでない。面倒なことは求められない。私にとっては楽だったんですね。3人ぐらい同時進行でセフレがいました」

――35歳を超えて女としてギラギラし始めたワケですね。

「まさにそう。10代20代はその逆で。女として見られることにすごく嫌悪があったのに、35歳から突然女として扱われることに快感を覚えてしまったんです。今思えば、あの時代の私は人生で一番ふわふわしてたな(笑)実生活は子供がいて、お金がなくって苦しかったんですけど、デートしているときはそういうの忘れられて楽しかったんですね。といっても子供もいるし、せいぜい月に1、2回でしたけど。そのときに女スイッチに切り替えられることで、日々の生活を乗り切ることができたんです」

――いつまでその複数セフレとの関係は続きました?

「36、7歳の頃かな。いつのまにか、その中のひとりだけと会うようになったんですね」

――セフレの中のエースだ(笑)。

「そうです。何人かいたセフレをどんどんふるいにかけていって。最終的にはその彼だけとずっと会い続けるようになりました。その彼とはね、35歳から45歳までずっと続いてましたよ。デートは月に1度だけ。それは暗黙のルール」

――月に1度の不倫デートを10年。ということはその彼はもはや単なるセフレではなく、恋人というか愛人というか……。ちなみにふるい落とされた人たちはどういうところがダメだったんですか?

「奥さんの悪口を私に言ったりする人はダメ。あと、あまりに私にぐいぐい依存してくるような人もダメ。最後に残ったのは、そういうのが一切ない人だった」

――お互いの家庭の話はしなかった?

「まったく。それを口に出して約束したことはなかったけれど、お互いにそこは守ってましたね。会うのも月に1度、それ以上会おうとも会いたいとも絶対口には出さなかったです、ふたりとも」

――10年も続いてるならきっと折々で距離を縮めたいとかいろんな思いもあったのでは……。

「う~ん、恋愛ではなかったんですよ、結局はふたりともが。だから一定の節度を10年間守れた」

――そんなふたりがどうして別れることに?

「バレたの、奥さんに。私、滅多に自分からメールなんてしなかったのに、あるとき魔が差したというか、自分からメールをして。よりによってそれを奥さんに見られたんです。すぐ彼から連絡がきました『メール見られちゃったんだよ』って。それで別れることに」

――えっ!? 10年続いていても、すぐに別れることを決められたんですね。

「うん、踏ん張ることはしなかった。情はすごくあったけれど……10年間ありがとうございました、ってお礼を言って終わったって感じかな。向こうに、妻子を棄てて君と一緒になりたい、って思いがないのはわかっていたし。私も一度もそれを望まなかった。だからバレたなら別れるという選択しかなかったわけで」

――別れ話のために直接会うことはしなかった?

「バレてからふたりで一度会いました。会った瞬間、もうそれまでとは漂う空気が変わってしまっているのがはっきりわかって。あぁもうホントに終わったんだと思ったから、そこで終わらせました」

――悠子さんは辛くはなかったんでしょうか。

「彼を失ってからかなりダメージがきたんです。10年間、月に1度、いろんなことを忘れてただ女になっていた日があったのに、それが突然プツンと閉ざされてしまって。45歳になってたし、もう2度と自分にはそんな日は来ないんだろうなって諦めにも襲われたし。だから別れた直後はかなり辛かったなぁ……」

――わかるような気がします。その年齢って揺れるものがありますよね、もう恋愛なんてできっこない、そんなこと金輪際自分にあるわけがないって。

「それで2年間はそんな思いで過ごしてたんですけど……」

――あら! もしや2年後にまた新たな出会いが!?

「そうなんですよ。仕事先のパーティに出席する機会があって、そこで知り合った男性なんですけれど。向こうもバツイチ子供なしで当時同じ47歳。結婚を前提につきあってくださいって、会ってすぐに交際を申し込まれたんです」

――モテますね~。すぐにOKしたんですか。

「前の彼と別れて落ち込みをまだ引きずっていた時だったので。『このタイミングで出会えたなんて神の助け』って思いましたよ。それまでは再婚したいなんて思ったこともなかったけれど、そんなふうに正式に申し込まれて、ご縁かもしれない、それもありかなと考えるように」

悠子さんの新しい恋の結末は……。後半は、更年期まっただ中での週末婚、そして悠子さんの更年期についてのお考えをうかがいます。

■日々晴雨/都内在住フリーライター、独身。いくつかのペンネームを使い分けながら、コラム、シナリオ、短編小説などを執筆。コピーライターとして企業のカタログやHPなどのライティングに携わることも。

ネット上に蔓延する『痴漢冤罪怖い』の空気を盛り立てるメディアの罪

 今春、電車内で痴漢を疑われた男性がその後線路に逃走する事案が頻発したことを受けて、痴漢冤罪の恐怖をうたう報道も増加した。messyではこれに関連して、『逃走=冤罪』と安直に結び付けてしまうことの不可解や、逃走したうちの一人が公判で実際には痴漢を認めたことを報じたが、いまだに『逃走=冤罪』論は根強い。そんな中「週刊現代」(講談社)が、ある逃走者に関する記事を掲載した。webにも転載され、拡散されている。

■「JR上野駅「痴漢転落死」は超一流ホテルの支配人だった」

 今年5月12日未明に京浜東北線内で「女性の手を握る」行為をしたとして駅員に事情を聞かれた40代男性についての記事である。男性は駅員室から逃走し、近くの雑居ビルの屋上から転落死した。記事によればこの男性は『ミシュランガイド東京』にも名前が載っている「超一流ホテルの支配人であり、インバウンド部門のリーダー」だったという。また、被害を訴えた女性は「神奈川県警に勤務する30代半ばの女性警察官」であり、当日の目撃者によれば逃げた男性を追うために「駅員と女性が男性を追いかけて繁華街に入っていき」、間をおかず「警察官も走っていきました。パラパラとでしたが、総勢10人以上はいた」と、多数の警察官らが男性を追っていたのだという。

 記事中には「今でも思いますが、痴漢を疑われても、逃げなければよかった。でも追いつめられたのでしょうね。家族にも、会社にも迷惑をかけたくない。だから、逃げてしまった。その結果こういうことになってしまったのでしょう」という男性の父親を名乗る人物のコメントもあり、記事全体として“痴漢をしたのではなく疑われたので逃げた”というニュアンスが強い内容となっている。

 当然ながらこれを受けてまたもやネット上では『逃走=冤罪』論からの意見が上がっている。「疑われるだけで人生台無しにされることも考えてほしい」、「痴漢に間違われたら女を殺すしかないだろう」、「被害者と言い張る輩からの主張だけで逮捕してしまう」、「誰が30過ぎのBBAの手なんか好き好んで触るんだよ…」、「手と手が触れただけで痴漢扱いされたら、たまったものじゃない」などである。また「状況からして冤罪臭がプンプン」という意見もあった。

 だが記事には、男性がホテル支配人という責任ある立場の人間だったこと、被害者が神奈川県警の警察官だったこと、逃走直後に10人前後の警察官が後を追ったということは記されているが、実際に男性が本当にやっていないのかは書かれていない。仮名であるため前科の有無も不明だ。周辺の人物による「男性が良い人だった」というコメントはあるが、痴漢行為の有無については言及がなく、家族や会社に迷惑をかけたくなかったから逃げて「こういうことになってしまったのでしょう」という推測のコメントのみであるため「やっていないのに逃げた」ことを証明してもいない。よって、この記事をもって『痴漢冤罪怖い』と怯えるのは早計すぎる。

◎朝日新聞と週刊現代記事の比較

 当日に何があったのか。男性の死亡を報じた新聞各紙の記事にはこうある。

■朝日新聞
『同日午前0時15分ごろ、京浜東北線の上り電車内で、30代の女性が近くにいたこの男性に手を握られた。女性は別の車両に移動したが、再び近づいてきたため、「なぜ触ったのか」ととがめ、一緒に上野駅で降車した』

■日本経済新聞
京浜東北線の車両に乗っていた30代の女性が「寝ている時に右手を触られた」として、上野駅で男性を駅員に引き渡した。男性は「触ってない」と主張し、駅事務所から逃げ出したという。

■産経新聞
同署によると、通報した30代の女性は「座席で寝ていたところ、隣に座っていた男性に右手を触られた」と訴えているという。女性は「なんで手を握ったんですか」と男性に声をかけて上野駅で一緒に下車。近くにいた別の乗客が男性を取り押さえ、駅事務室で駅員が話を聞こうとしたところ、男性が逃走した。

 一部スポーツ新聞もこの事件について伝えている。

■スポーツ報知
上野署などによると、男性と30代の女性がトラブルになったのは、12日午前0時15分ごろ、京浜東北線の西日暮里―日暮里間を走行中の上り電車内。隣に座っていた男性に右手を握られたという女性は「なぜ手を触ったのか」と被害を訴えて、一緒に上野駅で降車した。女性が別の車両に移動しても、男性が付いてきたとの情報もある。2人に面識はなかったという。

■サンケイスポーツ
上野署によると、男性は、電車内で隣に座っていた30代女性に「手を握られた」と痴漢被害を訴えられた。上野駅で女性と電車を降り事務室に連れて行かれたが、周囲が目を離した隙に逃げた。

____

 一部の新聞記事には「30代女性が男性に手を握られた」ことと「車両を移動したが再び近づいてきた」ことが報じられている。車内の混雑状況が気になり、女性と男性が降車したのは上野駅だが、金曜深夜の上野駅よりも下り方面にある上り電車内の混雑状況についてNAVITIMEとJR東日本に取材の申し入れを行ったところ「ユーザーさんの投稿により成り立っているサービスという特性上、特に記録も残していない」(NAVITIME)、「具体的にお出しできるものがない」(JR東日本東京本社広報)という回答だった。だが同区間を利用している人物によれば「逆はかなり混んでいますが、上りのその区間はその時間帯なら空いている」という。つまりさほど混んでいない電車内で隣に座っていた男性が女性の手を握り、女性が車両を変えたところ、再びついてきた、という報道が事実ならば、いわゆる「冤罪」イメージ(混雑した車内で不可抗力的に身体が触れた)とは異なる状況なのではないか。一方、週刊現代の記事にはこれらのことは記されていない。

 また一部新聞や週刊現代には「女性は寝ていた」ともあり、こうなってくると、女性が「手を握られた」と判断したことが「勘違い」だったのか「本当に握られたのか」も証明しづらい。ちなみに週刊現代では「男性が女性の手を握った」こと自体が否定されている。女性の勘違いにより無実の男性が突如、犯罪者扱いされたのか、それとも男性が女性の手を握る行為自体はあったのか、まさに藪の中である。女性が寝ていたのか、目を閉じていたけど起きていたのか、そもそも寝ていなかったのかも報道によって異なるので実際のところはわからない。ただ男性も女性も座席に座っていたことはどの報道でも共通している。

 結局、これらの報道から我々は「男性による、女性の手を握る行為」の存否を確認できないので、何も言えない。痴漢があったのか、冤罪なのか、判断材料に乏しいということだ。にもかかわらずネット上には、週刊現代の記事を受けて「やっぱり冤罪だったに違いない」と確信する声が多数出現しているから驚く。これによって「逃走=冤罪」の方程式がいっそう強化され、痴漢冤罪に「恐怖」を感じる者が多数いるようだ。「確実なことが何も分からない報道」で“冤罪を生み出す女性”の存在を作り出しそれを強く非難することも、痴漢がなかったので逃げて死んだのだと決めつけ“痴漢冤罪が怖い”と騒ぐことも、無意味である。

 さらに言えば週刊現代の記事には疑問がいくつかある。ひとつは「超一流ホテルの支配人」クラスの男性が、24時前後に何のために電車に乗っていたのかということ。また超一流ホテルの支配人クラスで、ある程度の知識と教養があるのであれば、そしてまた男性の父親が「偶然(手が)触れてしまうこともあるのでは」と言っているが、腕を動かした際にたまたま触れてしまったというだけならば大事には至らない、もしくは社の弁護士を立てて話し合いができる話だったのではないかということだ。当日になにがあったのか、引き続き取材を続けていく。

◎痴漢しない・できない環境を

 手を掴む行為が痴漢かどうかはさておき、迷惑防止条例に抵触する電車内での行為についてしばしば「触った・触ってない」の不毛な議論に終始してしまうのは、何と言っても、客観的証拠の少なさである。電車内での痴漢がこれだけ日本国民を冤罪の恐怖に陥れているにもかかわらず、何ら対策が進んでいない。『冤罪被害者』を生まないためには、女性専用車両だけでなく男性専用車両も作るべきであろう。JR東日本は2010年に埼京線の一部に防犯カメラを設置した。また山手線の全車両については、東京オリンピック開催の2020年までの防犯カメラ設置を目指すと発表がなされたが、都内の混雑が激しい他の路線についても検討する必要があるのではないか。

 何よりも本当に日々、実在の痴漢被害に悩む女性たちをこのような不毛なカウンタートークでうんざりさせないでほしい。多くの男性が痴漢冤罪を恐れているのと同様、多くの女性は痴漢を恐れている。防犯カメラや男女別車両など、電車内において痴漢が痴漢行為を行える機会を減らしていくことこそが、こうした不毛な議論を終わらせるための唯一の方法だ。本質的に、痴漢被害を撲滅するということは、痴漢を社会的に成敗しやすくするわけではなく、痴漢加害が起こらない状況を望むということなのだから。

(高橋ユキ)

ネット上に蔓延する『痴漢冤罪怖い』の空気を盛り立てるメディアの罪

 今春、電車内で痴漢を疑われた男性がその後線路に逃走する事案が頻発したことを受けて、痴漢冤罪の恐怖をうたう報道も増加した。messyではこれに関連して、『逃走=冤罪』と安直に結び付けてしまうことの不可解や、逃走したうちの一人が公判で実際には痴漢を認めたことを報じたが、いまだに『逃走=冤罪』論は根強い。そんな中「週刊現代」(講談社)が、ある逃走者に関する記事を掲載した。webにも転載され、拡散されている。

■「JR上野駅「痴漢転落死」は超一流ホテルの支配人だった」

 今年5月12日未明に京浜東北線内で「女性の手を握る」行為をしたとして駅員に事情を聞かれた40代男性についての記事である。男性は駅員室から逃走し、近くの雑居ビルの屋上から転落死した。記事によればこの男性は『ミシュランガイド東京』にも名前が載っている「超一流ホテルの支配人であり、インバウンド部門のリーダー」だったという。また、被害を訴えた女性は「神奈川県警に勤務する30代半ばの女性警察官」であり、当日の目撃者によれば逃げた男性を追うために「駅員と女性が男性を追いかけて繁華街に入っていき」、間をおかず「警察官も走っていきました。パラパラとでしたが、総勢10人以上はいた」と、多数の警察官らが男性を追っていたのだという。

 記事中には「今でも思いますが、痴漢を疑われても、逃げなければよかった。でも追いつめられたのでしょうね。家族にも、会社にも迷惑をかけたくない。だから、逃げてしまった。その結果こういうことになってしまったのでしょう」という男性の父親を名乗る人物のコメントもあり、記事全体として“痴漢をしたのではなく疑われたので逃げた”というニュアンスが強い内容となっている。

 当然ながらこれを受けてまたもやネット上では『逃走=冤罪』論からの意見が上がっている。「疑われるだけで人生台無しにされることも考えてほしい」、「痴漢に間違われたら女を殺すしかないだろう」、「被害者と言い張る輩からの主張だけで逮捕してしまう」、「誰が30過ぎのBBAの手なんか好き好んで触るんだよ…」、「手と手が触れただけで痴漢扱いされたら、たまったものじゃない」などである。また「状況からして冤罪臭がプンプン」という意見もあった。

 だが記事には、男性がホテル支配人という責任ある立場の人間だったこと、被害者が神奈川県警の警察官だったこと、逃走直後に10人前後の警察官が後を追ったということは記されているが、実際に男性が本当にやっていないのかは書かれていない。仮名であるため前科の有無も不明だ。周辺の人物による「男性が良い人だった」というコメントはあるが、痴漢行為の有無については言及がなく、家族や会社に迷惑をかけたくなかったから逃げて「こういうことになってしまったのでしょう」という推測のコメントのみであるため「やっていないのに逃げた」ことを証明してもいない。よって、この記事をもって『痴漢冤罪怖い』と怯えるのは早計すぎる。

◎朝日新聞と週刊現代記事の比較

 当日に何があったのか。男性の死亡を報じた新聞各紙の記事にはこうある。

■朝日新聞
『同日午前0時15分ごろ、京浜東北線の上り電車内で、30代の女性が近くにいたこの男性に手を握られた。女性は別の車両に移動したが、再び近づいてきたため、「なぜ触ったのか」ととがめ、一緒に上野駅で降車した』

■日本経済新聞
京浜東北線の車両に乗っていた30代の女性が「寝ている時に右手を触られた」として、上野駅で男性を駅員に引き渡した。男性は「触ってない」と主張し、駅事務所から逃げ出したという。

■産経新聞
同署によると、通報した30代の女性は「座席で寝ていたところ、隣に座っていた男性に右手を触られた」と訴えているという。女性は「なんで手を握ったんですか」と男性に声をかけて上野駅で一緒に下車。近くにいた別の乗客が男性を取り押さえ、駅事務室で駅員が話を聞こうとしたところ、男性が逃走した。

 一部スポーツ新聞もこの事件について伝えている。

■スポーツ報知
上野署などによると、男性と30代の女性がトラブルになったのは、12日午前0時15分ごろ、京浜東北線の西日暮里―日暮里間を走行中の上り電車内。隣に座っていた男性に右手を握られたという女性は「なぜ手を触ったのか」と被害を訴えて、一緒に上野駅で降車した。女性が別の車両に移動しても、男性が付いてきたとの情報もある。2人に面識はなかったという。

■サンケイスポーツ
上野署によると、男性は、電車内で隣に座っていた30代女性に「手を握られた」と痴漢被害を訴えられた。上野駅で女性と電車を降り事務室に連れて行かれたが、周囲が目を離した隙に逃げた。

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 一部の新聞記事には「30代女性が男性に手を握られた」ことと「車両を移動したが再び近づいてきた」ことが報じられている。車内の混雑状況が気になり、女性と男性が降車したのは上野駅だが、金曜深夜の上野駅よりも下り方面にある上り電車内の混雑状況についてNAVITIMEとJR東日本に取材の申し入れを行ったところ「ユーザーさんの投稿により成り立っているサービスという特性上、特に記録も残していない」(NAVITIME)、「具体的にお出しできるものがない」(JR東日本東京本社広報)という回答だった。だが同区間を利用している人物によれば「逆はかなり混んでいますが、上りのその区間はその時間帯なら空いている」という。つまりさほど混んでいない電車内で隣に座っていた男性が女性の手を握り、女性が車両を変えたところ、再びついてきた、という報道が事実ならば、いわゆる「冤罪」イメージ(混雑した車内で不可抗力的に身体が触れた)とは異なる状況なのではないか。一方、週刊現代の記事にはこれらのことは記されていない。

 また一部新聞や週刊現代には「女性は寝ていた」ともあり、こうなってくると、女性が「手を握られた」と判断したことが「勘違い」だったのか「本当に握られたのか」も証明しづらい。ちなみに週刊現代では「男性が女性の手を握った」こと自体が否定されている。女性の勘違いにより無実の男性が突如、犯罪者扱いされたのか、それとも男性が女性の手を握る行為自体はあったのか、まさに藪の中である。女性が寝ていたのか、目を閉じていたけど起きていたのか、そもそも寝ていなかったのかも報道によって異なるので実際のところはわからない。ただ男性も女性も座席に座っていたことはどの報道でも共通している。

 結局、これらの報道から我々は「男性による、女性の手を握る行為」の存否を確認できないので、何も言えない。痴漢があったのか、冤罪なのか、判断材料に乏しいということだ。にもかかわらずネット上には、週刊現代の記事を受けて「やっぱり冤罪だったに違いない」と確信する声が多数出現しているから驚く。これによって「逃走=冤罪」の方程式がいっそう強化され、痴漢冤罪に「恐怖」を感じる者が多数いるようだ。「確実なことが何も分からない報道」で“冤罪を生み出す女性”の存在を作り出しそれを強く非難することも、痴漢がなかったので逃げて死んだのだと決めつけ“痴漢冤罪が怖い”と騒ぐことも、無意味である。

 さらに言えば週刊現代の記事には疑問がいくつかある。ひとつは「超一流ホテルの支配人」クラスの男性が、24時前後に何のために電車に乗っていたのかということ。また超一流ホテルの支配人クラスで、ある程度の知識と教養があるのであれば、そしてまた男性の父親が「偶然(手が)触れてしまうこともあるのでは」と言っているが、腕を動かした際にたまたま触れてしまったというだけならば大事には至らない、もしくは社の弁護士を立てて話し合いができる話だったのではないかということだ。当日になにがあったのか、引き続き取材を続けていく。

◎痴漢しない・できない環境を

 手を掴む行為が痴漢かどうかはさておき、迷惑防止条例に抵触する電車内での行為についてしばしば「触った・触ってない」の不毛な議論に終始してしまうのは、何と言っても、客観的証拠の少なさである。電車内での痴漢がこれだけ日本国民を冤罪の恐怖に陥れているにもかかわらず、何ら対策が進んでいない。『冤罪被害者』を生まないためには、女性専用車両だけでなく男性専用車両も作るべきであろう。JR東日本は2010年に埼京線の一部に防犯カメラを設置した。また山手線の全車両については、東京オリンピック開催の2020年までの防犯カメラ設置を目指すと発表がなされたが、都内の混雑が激しい他の路線についても検討する必要があるのではないか。

 何よりも本当に日々、実在の痴漢被害に悩む女性たちをこのような不毛なカウンタートークでうんざりさせないでほしい。多くの男性が痴漢冤罪を恐れているのと同様、多くの女性は痴漢を恐れている。防犯カメラや男女別車両など、電車内において痴漢が痴漢行為を行える機会を減らしていくことこそが、こうした不毛な議論を終わらせるための唯一の方法だ。本質的に、痴漢被害を撲滅するということは、痴漢を社会的に成敗しやすくするわけではなく、痴漢加害が起こらない状況を望むということなのだから。

(高橋ユキ)

「豊胸おっぱい」の見た目と触り心地って実際どうなの?

こんにちは。突然ですが、私の好きな女性のタイプは“ボン・キュッ・ボン”のセクシーなお姉さんです。Instagramのフォローもそういった女性が多いので、満員気味の電車で彼女たちの写真を眺め、後ろの人の視線で我に返ることもしばしば(笑)。

私の場合は、「自分が好きなタイプの女性に見た目を寄せていたい」という思いが強いので、以前からスクワットと腹筋をできるだけ毎日(といっても最近は3日に一回になってしまってますが……)100回ずつしてハリのあるお尻を目指しています。

しかし、夏が近づくに連れて気になり始めるのは「おっぱい」。女性ボディビルダーを想像していただければわかる通り、おっぱいは筋力で大きくなるようなものではなく、脂肪の塊です。なかなかナチュラルに大きくするのは難しいので、「豊胸いいかもー」なんて思いをちらっと巡らせてみました。

これまで、「おっぱい好き」を公言し、大きいおっぱいがあればちょいちょい触らせていただいてるのですが、豊胸おっぱいは触り心地や見た目が少々私の求めるものと違い、思い止まっています。そこで今回は、リバ女子目線で「天然おっぱい」と「豊胸おっぱい」の違いをご説明いたします。

◎触り心地

・豊胸おっぱいは、ハリがありすぎて“ゴム玉”のような弾力の人もいます。

・天然おっぱいは、しっかり握るとムギュッと潰れるのですが、豊胸おっぱいは“芯”があるので握っても天然ほど潰れることはありません。

最新のシリコンは柔らかくなっているようですが、生理食塩水や昔のシリコンを使用している人は、ゴム玉ような感触でした。触り心地を気にして、使用物を入れ換える手術をする人もいるようです。ヒアルロン酸や脂肪を注入している人は、前者に比べさほど妙な弾力は気にならないような気がします。生理前の“張ってるおっぱい”に近い感触ですね。

◎見た目

・天然おっぱいは、ブラジャーをしていない状態だと横に広がったり下に垂れますが、豊胸おっぱいは、あまり広がらず前に突き出ています。特に、仰向けになった時が顕著で、豊胸の場合は綺麗なお椀型を保ったまま上を向いています。

・寄せて上げた時、天然おっぱいは自然と脂肪が持ち上がりますが、シリコンや食塩水のおっぱいは、「バッグ」と呼ばれる中身の形がくっきり出ちゃうので、小玉スイカが2つ並んでいるかのように真ん丸です。

最新のヒアルロン酸や脂肪注入だと、美容整形のドクターでも見た目で天然か施術済みかを判断するのがとても難しいようなので、これから手術をするのであればそのどちらを選ぶのが良いかもしれません。

しかし、脂肪注入の場合は、自分の脂肪を吸引して胸に注入するので、かなり自然に仕上がるものの、胸に定着せずに吸収しちゃったり、ナマモノなので脂肪が死滅してしまうこともあるのだとか。だからといって、手軽にできるヒアルロン酸を選んだとしても、大きくできるサイズには限界があったり、吸収されるから維持するためには定期的に注入しないといけないし、長期的に見るとコストがかさみます。

個人的には、豊胸でも大きいおっぱいはセクシーだと思うのですが、どの処置を選んでもどこかしらにリスクはあるし、セックスしてもたいていの場合は豊胸だと気づかれてしまうし……。いろんな女の子に見せて・触らせていただいて天然おっぱいとの違いを目の当たりにした結果、なかなか自分が手術を受ける勇気がでません。「水着を着る前に!」と豊胸をお考えの方は、豊胸バレ、メンテナンスコスト、失敗……“大きなおっぱいのために何を諦めるか”を術式選びの決め手にすると良いかもしれませんね。

■谷川明日香
芸能経験を経てライフスタイル、美容の会社を設立。モテ男育成や婚活講座の講師や男性用コスメ「オールインワンメンズケア」をプロデュース。TVなどメディアでバイセクシャルをカミングアウトしている。

「ノンケだけど、タチやっています」ノーマルだった彼がウリ専という世界で見たもの/インタビュー

 女性が男性に対して性的なサービスを行う風俗に対して、男性が男性に対してサービスを行う「売り専」。歴史を遡ると、少年たちが男色を売っていた江戸時代の陰間茶屋にまで行き着きますが、売り専が一体どのようなものなのか、どのような世界なのか、女性である私たちは知る由もありません。

 そんな時、知人のツテで実際に売り専で働くボーイさんと会うことができました。長身のガッチリ系イケメンのいちごう君(22)は、異性愛者だけど売り専に入店し、約1年勤めているそう。しかも、ノンケなのにタチ(アナルセックスにおいて挿入する側)をやっていると――。

 いちごう君が売り専という業界に足を踏み入れたのか、そして気になる売り専という世界について、じっくり教えてもらいました。

■出張ホストだと思っていたのに売り専だった
 ――どういうきっかけで売り専の世界に足を踏み入れることになったのですか?

いちごう とりあえず勢いで田舎から東京にやって来たんですが、お金がなくて。即日でお金が欲しかったので、出張ホストに応募してみたら、実はその店が売り専だったんです。

――え~~! いつその店が売り専だと気づいたんですか?

いちごう 面接が終わってからでした。面接中もスタッフとの会話がどことなく噛み合わないなぁとは思っていたのですが(笑)。面接が終わった後に「うち男性のお客様しか来ないの、知っているよね?」って言われて。「いえ知りませんが」って返して……さすがに少し考える時間をもらいました。

――どのくらい考えたんですか?

いちごう 10分くらいですかね。まあ、お金ないし、とりあえず稼げるなら男性相手でも良いかなって思って。それでプロフィール用の写真撮影が終わったころに、いきなり「指名入ったから」って言われて。それでお客様の元に向かい、最初の一件目をこなし。

――こなしって言ったけど! そもそも研修とかなかったんですか?

いちごう 研修は一応ありました。まず、シャワー室の使い方とお客様の体の洗い方の説明ですね。自分が舐めたりするところは徹底的に洗って、うがい薬でうがいしてもらったらベッドに移動して。講習の時は「フェラさえできれば、あとは女性と一緒だ」って言われましたね。

――女性と一緒……なんですかね?

いちごう 前戯の内容自体にはたいして隔たりはないので。「童貞じゃないんだったら、フェラさえできればいい」と、フェラのやり方だけ習って……習ってというか、「されたことがあるならそのイメージでしてやってみて」とアドバイスされて実際にやってみた感じでした。それで「まあ最初はこんなもので大丈夫だよ」って。事前に新人だと伝えておけば、お客様もそういうものだと思ってくださるので。

――初めてを求めているんだから、まだぎこちないくらいのほうが良いかもしれません。

いちごう そうですね。新人にあんまり無茶なことをさせてくる人も少ないですし。でも初日は1件目が終わって脱力しているところに、すぐに2件目が入って、行ってみたらなかなか厳しいケースに当たってしまって。言葉責めをしながらすごい力でしごいてくる方でした。そのお客様は射精していたけど、僕はできず。多分“同時イキ”したかったんだと思いますけど……。

――初日と考えるとつらかったですね。

いちごう 今ならきっと上手く対処できるんですけど、最初は何をしたら良いのか分からないですよね。やっぱりどれが正解かわからない、どれが普通なのかもわからない状態なので、「そういうものなのかな」って思ってしまいますよね。だからその時は「ヤバイ世界だな」って思いました。

――そもそもいちごう君はノンケですよね。初対面の男性と密着する、キスをするということに対してすんなりと入って行けたんですか?

いちごう ……初日はやっぱり衝撃的でしたけど、2日目からは良識のある常連のお客様に当たって、その時の感覚として、初日受けた感覚よりも「ずっと楽だな」って言い方も変ですけど、気持ちとして楽だなっていう風に感じましたね。たぶん初日との落差のおかげで「これならできる」と思えて。2日目もきつかったら飛んでいたかもしれません。

■売り専は性行為だけをする場所じゃない
――そもそも売り専というものをあまり知らないので教えてください。風俗嬢の男性版ってイメージではあるんですけど。

いちごう 基本的にはそうですね。でも業務内容は性行為だけを求められる風俗と違って、売り専ってボーイの使い方が自由なんですよ。ボーイの時間を買う感覚に近いですね。

――じゃあ接客内容は性行為だけじゃないと。

いちごう たとえば話すのが上手いボーイだったら、お客様は一晩中貸し切って一緒に飲みに行ったりすることもありますし、見た目がきれいなボーイであれば、恋人みたいにデートすることもあります。あとマッサージが上手いボーイだったら、メンズマッサージをしたり。中には英語を話せるボーイもいて、外国人のお客様に連れられて通訳として使われたりっていうこともあります。風俗と違って求められる範囲は結構広くなっていますね。

――となると、風俗より料金は高くなるんですか?

いちごう それが風俗と比べると安いんですよね……。60分コースの場合は、風俗も売り専もだいたい1万5,000円前後。でも風俗の場合60分が90分になると料金が2倍近くになるんですが、売り専の場合は30分あたり4,000円前後しか増えないですね。24時間貸しきったとしても、だいたい7万円前後が相場になっています。長時間貸しきった場合、売り専は風俗と比べると大分安いですね。バック(給料)の取り分も、知り合いの風俗嬢はお客様が払う分、いわゆる売り上げの7割程度をもらっているらしいのですが、売り専はだいたい5割程度ですね。貸し切りのような長時間になるにつれて、取り分は上がっていくのですが、それでも6割くらいになります。

――風俗には店舗を持っているヘルスやソープ、店舗を持たないデリヘルなどがありますが、売り専ってどういう業務形態になっているんですか?

いちごう 個室はシャワーだけがついている部屋にベッドがあって、くらいのイメージですね。あとは売り専バーと呼ばれるもので、お客様がホストみたいにボーイを指名して飲んで、気に入ったらそのまま外に連れ出して性行為をするっていう、だいたいこの3種類ですね。

――女性が遊べるお店もあるんですか?

いちごう ありますね。でも女性が個室でボーイを指名するのはどこの店でも基本的に禁止ですね。ただ、やっぱり僕のようなノンケのボーイのところに行って、飲み指名という形で「他の店へお酒を飲みに行きます」という形で外に連れ出して、そこでボーイと女性の同意があれば買うことはできますね。飲み指名は通常の指名(60分1万5,000円前後)より数千円安いのですが、その分のバックを女性が払えば、ボーイが応じるって聞きますね。でも全面的に女性の入店を禁止している店もあるので、禁止されている店ではこの方法は無理ですね。

――でも女性も入れる売り専バーもあるんですね。

いちごう 一度行ってみれば分かるんですけど、ゲイバーとかウリ専バーっていうのは、店によっては「女性来るな」って雰囲気を出している店もあるんですが、中にはホストクラブに行くよりもずっと安くて、ある程度見た目も良い男の子と楽しく飲むことができる店もあるんです。また、スタッフの中には僕のようにゲイじゃない子もいるので、それ目当てで通っている女性もいるにはいます。

――女性向けとしてはそれこそいちごう君が最初働こうとした出張ホストもあるんですけどね。売り専と出張ホスト、どっちのが稼げるんですかね。

いちごう お金はどっちも見た感じ大差ないレベルでしたね。でも仕事の本数を詰めて稼ぐなら、売り専のほうが稼げるのでは。出張ホストはそんなに栄えていないですし。実は出張ホストのことを馬鹿にしている売り専は多くて、僕もその一人なんですけど。

――どうしてですか?

いちごう ルックスが悪いから(バッサリ)。出張ホストのスタッフ一覧を見て、「これで仕事になるのか?」って思いますね。むしろ払えって感じの人が多くないですか?

――たしかに。出張ホストのサイトを見ると、お金を払ってまで何かをしたいっていう男性キャストはあまりいないかも。売り専はイケメンが多いんですか?

いちごう ノンケの僕から見てもかわいい子とかいますよ。やっぱりルックスで売っている子は整っていますね。お客様にもいろんな好みやタイプがありますが、人気なのはほどほどに筋肉があるボーイさんか、小さくてかわいい系のボーイさんかなと。ぽっちゃり系の需要はそこまでなくて、ぽっちゃり系のボーイさんは周りから痩せろと突かれていますね。

――いちごう君も体型維持のためになにかしているんですか?

いちごう 筋トレはある程度していますね。鍛えすぎたら、筋肉フェチのお客様のカテゴリに入っちゃいますし、逆に鍛えすぎなかったらスレンダーな体型が好きな人しか指名が来なくなってしまうので、ちょうど中間の体型を維持できるようにしています。

――意識が高い。いちごう君はまだ22歳で若いですけど、中にはもっと年齢が上のボーイさんもいるんですか?

いちごう 業界で見ると僕は普通の年齢ですね。18~19歳のボーイさんもいますし。最年長だと30代前半くらいですね。でも、ある程度経験を積んだ30代のボーイさんは、コミュニケーションの取り方が上手で、相手の趣味にピタリと合わせた性行為のプレイができる。そういう人のがチップなどをもらえているので、店自体の売り上げ自体はそんなになくても、月で受け取っている金額としては年齢が上のボーイさんのが多かったりしますね。

――ちなみにいちごう君は今どのくらい稼いでいますか?

いちごう 今はだいたい週5日出勤して、昼から翌日の朝まで待機して、指名が入ったら仕事をする感じなんですが、それでおよそ月に60万くらいもらっていますね。でも売り専は、「月40万を超えると人間を辞め始める」って言いますね。なにか大切なものが本人の気づかない内に削れていってしまっているらしいです。

■気合で勃たせる!?
――いちごう君はノンケですよね。キスの感触って男性も女性でも変わらないですか?

いちごう 変わらないですね(バッサリ)。

――変わらないですか。でもキスは変わらなくとも、ノンケが男性とそういうことをしてモノを勃たせるって出来るものなんですか?

いちごう 気合で勃たせていますね。

――気合で勃つものなんですか!? 妄想とかするんですか?

いちごう 妄想は特にしないですね。しているノンケのボーイは多いと思いますけど。でも妄想とかしていたら、お客様の動きが目に入らないじゃないですか。気配りも出来なくなるので、妄想に浸るのは良くないですよね。だから気合で勃たせています。あと、そこまで強くない刺激でも勃ちやすい力の入れ方とかあるんですよね。

――コツがあるんですね。

いちごう イメージとしては、女性が自分の膣を締める動きってあるじゃないですか。そういった類のものだと思っていただければ。

――ちなみに、ノンケだけどウケって子もいるんですか?

いちごう というかノンケはウケのがやりやすいと言われていますね。ウケは穴さえあればできますけど、タチになるには勃たせなきゃいけないので。基本的にはウケのが楽と言われています。

――ノンケなのにバリタチってすごいんじゃ……。ウケも出来るようにすることは考えていないんですか?

いちごう 考えていないですね。

――自分がタチで攻めていて、気持ちよさそうなお客様を見て、興味が沸いたりしないんですか?

いちごう 別にならないですね。こちらは仕事で男性としているわけですから。快感を求める手段としては見ていないわけです。

――指名のお客様を増やすためにウケもするってことも考えていない。

いちごう 僕を指名してくれているお客様の多くは、タチである僕がウケに回って掘られている姿は想像したくないと思うんですよね。女性の方も自分の彼氏がペニバンで後ろから突かれていたら嫌だと思うんじゃないですか。

――なるほど。ひとつ聞いておきたいことがあって、売り専のボーイさん同士で恋愛ってあったりするんですか? BL(ボーイズラブ)だと売り専が題材の作品もあったりするので気になって。

いちごう 基本的にボーイ同士の恋愛は禁止ですね。過去に店のボーイに手を出したボーイさんはいますけど、やっぱりダメなものはダメで。罰金モノですよね。遊びでやるのもダメです。男としたいなら、外で拾ってくるなり、他の店の売り専を買ってって感じです。

――同僚とは言え、店としては大事な商品ですもんね。

いちごう ゲイのボーイさんからしたら、手を出してはいけないけど、見た目の整った男性が周りにたくさんいるっていう空間は多少の大変さはあるって聞いたことがありますけどね。でも売り専でボーイをやっている子って、二丁目を歩いていれば適当な男性を引っ掛けられるので、男に困っているボーイを見る方が珍しいですけどね。

「ノンケだけど、タチやっています」ノーマルだった彼がウリ専という世界で見たもの/インタビュー

 女性が男性に対して性的なサービスを行う風俗に対して、男性が男性に対してサービスを行う「売り専」。歴史を遡ると、少年たちが男色を売っていた江戸時代の陰間茶屋にまで行き着きますが、売り専が一体どのようなものなのか、どのような世界なのか、女性である私たちは知る由もありません。

 そんな時、知人のツテで実際に売り専で働くボーイさんと会うことができました。長身のガッチリ系イケメンのいちごう君(22)は、異性愛者だけど売り専に入店し、約1年勤めているそう。しかも、ノンケなのにタチ(アナルセックスにおいて挿入する側)をやっていると――。

 いちごう君が売り専という業界に足を踏み入れたのか、そして気になる売り専という世界について、じっくり教えてもらいました。

■出張ホストだと思っていたのに売り専だった
 ――どういうきっかけで売り専の世界に足を踏み入れることになったのですか?

いちごう とりあえず勢いで田舎から東京にやって来たんですが、お金がなくて。即日でお金が欲しかったので、出張ホストに応募してみたら、実はその店が売り専だったんです。

――え~~! いつその店が売り専だと気づいたんですか?

いちごう 面接が終わってからでした。面接中もスタッフとの会話がどことなく噛み合わないなぁとは思っていたのですが(笑)。面接が終わった後に「うち男性のお客様しか来ないの、知っているよね?」って言われて。「いえ知りませんが」って返して……さすがに少し考える時間をもらいました。

――どのくらい考えたんですか?

いちごう 10分くらいですかね。まあ、お金ないし、とりあえず稼げるなら男性相手でも良いかなって思って。それでプロフィール用の写真撮影が終わったころに、いきなり「指名入ったから」って言われて。それでお客様の元に向かい、最初の一件目をこなし。

――こなしって言ったけど! そもそも研修とかなかったんですか?

いちごう 研修は一応ありました。まず、シャワー室の使い方とお客様の体の洗い方の説明ですね。自分が舐めたりするところは徹底的に洗って、うがい薬でうがいしてもらったらベッドに移動して。講習の時は「フェラさえできれば、あとは女性と一緒だ」って言われましたね。

――女性と一緒……なんですかね?

いちごう 前戯の内容自体にはたいして隔たりはないので。「童貞じゃないんだったら、フェラさえできればいい」と、フェラのやり方だけ習って……習ってというか、「されたことがあるならそのイメージでしてやってみて」とアドバイスされて実際にやってみた感じでした。それで「まあ最初はこんなもので大丈夫だよ」って。事前に新人だと伝えておけば、お客様もそういうものだと思ってくださるので。

――初めてを求めているんだから、まだぎこちないくらいのほうが良いかもしれません。

いちごう そうですね。新人にあんまり無茶なことをさせてくる人も少ないですし。でも初日は1件目が終わって脱力しているところに、すぐに2件目が入って、行ってみたらなかなか厳しいケースに当たってしまって。言葉責めをしながらすごい力でしごいてくる方でした。そのお客様は射精していたけど、僕はできず。多分“同時イキ”したかったんだと思いますけど……。

――初日と考えるとつらかったですね。

いちごう 今ならきっと上手く対処できるんですけど、最初は何をしたら良いのか分からないですよね。やっぱりどれが正解かわからない、どれが普通なのかもわからない状態なので、「そういうものなのかな」って思ってしまいますよね。だからその時は「ヤバイ世界だな」って思いました。

――そもそもいちごう君はノンケですよね。初対面の男性と密着する、キスをするということに対してすんなりと入って行けたんですか?

いちごう ……初日はやっぱり衝撃的でしたけど、2日目からは良識のある常連のお客様に当たって、その時の感覚として、初日受けた感覚よりも「ずっと楽だな」って言い方も変ですけど、気持ちとして楽だなっていう風に感じましたね。たぶん初日との落差のおかげで「これならできる」と思えて。2日目もきつかったら飛んでいたかもしれません。

■売り専は性行為だけをする場所じゃない
――そもそも売り専というものをあまり知らないので教えてください。風俗嬢の男性版ってイメージではあるんですけど。

いちごう 基本的にはそうですね。でも業務内容は性行為だけを求められる風俗と違って、売り専ってボーイの使い方が自由なんですよ。ボーイの時間を買う感覚に近いですね。

――じゃあ接客内容は性行為だけじゃないと。

いちごう たとえば話すのが上手いボーイだったら、お客様は一晩中貸し切って一緒に飲みに行ったりすることもありますし、見た目がきれいなボーイであれば、恋人みたいにデートすることもあります。あとマッサージが上手いボーイだったら、メンズマッサージをしたり。中には英語を話せるボーイもいて、外国人のお客様に連れられて通訳として使われたりっていうこともあります。風俗と違って求められる範囲は結構広くなっていますね。

――となると、風俗より料金は高くなるんですか?

いちごう それが風俗と比べると安いんですよね……。60分コースの場合は、風俗も売り専もだいたい1万5,000円前後。でも風俗の場合60分が90分になると料金が2倍近くになるんですが、売り専の場合は30分あたり4,000円前後しか増えないですね。24時間貸しきったとしても、だいたい7万円前後が相場になっています。長時間貸しきった場合、売り専は風俗と比べると大分安いですね。バック(給料)の取り分も、知り合いの風俗嬢はお客様が払う分、いわゆる売り上げの7割程度をもらっているらしいのですが、売り専はだいたい5割程度ですね。貸し切りのような長時間になるにつれて、取り分は上がっていくのですが、それでも6割くらいになります。

――風俗には店舗を持っているヘルスやソープ、店舗を持たないデリヘルなどがありますが、売り専ってどういう業務形態になっているんですか?

いちごう 個室はシャワーだけがついている部屋にベッドがあって、くらいのイメージですね。あとは売り専バーと呼ばれるもので、お客様がホストみたいにボーイを指名して飲んで、気に入ったらそのまま外に連れ出して性行為をするっていう、だいたいこの3種類ですね。

――女性が遊べるお店もあるんですか?

いちごう ありますね。でも女性が個室でボーイを指名するのはどこの店でも基本的に禁止ですね。ただ、やっぱり僕のようなノンケのボーイのところに行って、飲み指名という形で「他の店へお酒を飲みに行きます」という形で外に連れ出して、そこでボーイと女性の同意があれば買うことはできますね。飲み指名は通常の指名(60分1万5,000円前後)より数千円安いのですが、その分のバックを女性が払えば、ボーイが応じるって聞きますね。でも全面的に女性の入店を禁止している店もあるので、禁止されている店ではこの方法は無理ですね。

――でも女性も入れる売り専バーもあるんですね。

いちごう 一度行ってみれば分かるんですけど、ゲイバーとかウリ専バーっていうのは、店によっては「女性来るな」って雰囲気を出している店もあるんですが、中にはホストクラブに行くよりもずっと安くて、ある程度見た目も良い男の子と楽しく飲むことができる店もあるんです。また、スタッフの中には僕のようにゲイじゃない子もいるので、それ目当てで通っている女性もいるにはいます。

――女性向けとしてはそれこそいちごう君が最初働こうとした出張ホストもあるんですけどね。売り専と出張ホスト、どっちのが稼げるんですかね。

いちごう お金はどっちも見た感じ大差ないレベルでしたね。でも仕事の本数を詰めて稼ぐなら、売り専のほうが稼げるのでは。出張ホストはそんなに栄えていないですし。実は出張ホストのことを馬鹿にしている売り専は多くて、僕もその一人なんですけど。

――どうしてですか?

いちごう ルックスが悪いから(バッサリ)。出張ホストのスタッフ一覧を見て、「これで仕事になるのか?」って思いますね。むしろ払えって感じの人が多くないですか?

――たしかに。出張ホストのサイトを見ると、お金を払ってまで何かをしたいっていう男性キャストはあまりいないかも。売り専はイケメンが多いんですか?

いちごう ノンケの僕から見てもかわいい子とかいますよ。やっぱりルックスで売っている子は整っていますね。お客様にもいろんな好みやタイプがありますが、人気なのはほどほどに筋肉があるボーイさんか、小さくてかわいい系のボーイさんかなと。ぽっちゃり系の需要はそこまでなくて、ぽっちゃり系のボーイさんは周りから痩せろと突かれていますね。

――いちごう君も体型維持のためになにかしているんですか?

いちごう 筋トレはある程度していますね。鍛えすぎたら、筋肉フェチのお客様のカテゴリに入っちゃいますし、逆に鍛えすぎなかったらスレンダーな体型が好きな人しか指名が来なくなってしまうので、ちょうど中間の体型を維持できるようにしています。

――意識が高い。いちごう君はまだ22歳で若いですけど、中にはもっと年齢が上のボーイさんもいるんですか?

いちごう 業界で見ると僕は普通の年齢ですね。18~19歳のボーイさんもいますし。最年長だと30代前半くらいですね。でも、ある程度経験を積んだ30代のボーイさんは、コミュニケーションの取り方が上手で、相手の趣味にピタリと合わせた性行為のプレイができる。そういう人のがチップなどをもらえているので、店自体の売り上げ自体はそんなになくても、月で受け取っている金額としては年齢が上のボーイさんのが多かったりしますね。

――ちなみにいちごう君は今どのくらい稼いでいますか?

いちごう 今はだいたい週5日出勤して、昼から翌日の朝まで待機して、指名が入ったら仕事をする感じなんですが、それでおよそ月に60万くらいもらっていますね。でも売り専は、「月40万を超えると人間を辞め始める」って言いますね。なにか大切なものが本人の気づかない内に削れていってしまっているらしいです。

■気合で勃たせる!?
――いちごう君はノンケですよね。キスの感触って男性も女性でも変わらないですか?

いちごう 変わらないですね(バッサリ)。

――変わらないですか。でもキスは変わらなくとも、ノンケが男性とそういうことをしてモノを勃たせるって出来るものなんですか?

いちごう 気合で勃たせていますね。

――気合で勃つものなんですか!? 妄想とかするんですか?

いちごう 妄想は特にしないですね。しているノンケのボーイは多いと思いますけど。でも妄想とかしていたら、お客様の動きが目に入らないじゃないですか。気配りも出来なくなるので、妄想に浸るのは良くないですよね。だから気合で勃たせています。あと、そこまで強くない刺激でも勃ちやすい力の入れ方とかあるんですよね。

――コツがあるんですね。

いちごう イメージとしては、女性が自分の膣を締める動きってあるじゃないですか。そういった類のものだと思っていただければ。

――ちなみに、ノンケだけどウケって子もいるんですか?

いちごう というかノンケはウケのがやりやすいと言われていますね。ウケは穴さえあればできますけど、タチになるには勃たせなきゃいけないので。基本的にはウケのが楽と言われています。

――ノンケなのにバリタチってすごいんじゃ……。ウケも出来るようにすることは考えていないんですか?

いちごう 考えていないですね。

――自分がタチで攻めていて、気持ちよさそうなお客様を見て、興味が沸いたりしないんですか?

いちごう 別にならないですね。こちらは仕事で男性としているわけですから。快感を求める手段としては見ていないわけです。

――指名のお客様を増やすためにウケもするってことも考えていない。

いちごう 僕を指名してくれているお客様の多くは、タチである僕がウケに回って掘られている姿は想像したくないと思うんですよね。女性の方も自分の彼氏がペニバンで後ろから突かれていたら嫌だと思うんじゃないですか。

――なるほど。ひとつ聞いておきたいことがあって、売り専のボーイさん同士で恋愛ってあったりするんですか? BL(ボーイズラブ)だと売り専が題材の作品もあったりするので気になって。

いちごう 基本的にボーイ同士の恋愛は禁止ですね。過去に店のボーイに手を出したボーイさんはいますけど、やっぱりダメなものはダメで。罰金モノですよね。遊びでやるのもダメです。男としたいなら、外で拾ってくるなり、他の店の売り専を買ってって感じです。

――同僚とは言え、店としては大事な商品ですもんね。

いちごう ゲイのボーイさんからしたら、手を出してはいけないけど、見た目の整った男性が周りにたくさんいるっていう空間は多少の大変さはあるって聞いたことがありますけどね。でも売り専でボーイをやっている子って、二丁目を歩いていれば適当な男性を引っ掛けられるので、男に困っているボーイを見る方が珍しいですけどね。

なぜ「若いうちに産んだほうがいいよ」と言ってはいけないか/『文科省/高校「妊活」教材の嘘』

卵子の老化。妊活。不妊治療。卵子凍結保存。ここ数年でホットになった妊娠・出産をめぐるトピックだ。きっかけは2012年6月23日に放送されたNHKスペシャル『産みたいのに産めない~卵子老化の衝撃~』。番組でライトが当たったのは30代後半~40代のいわゆる高齢出産に該当する世代の女性たちだった。肉体的には健康であるがなかなか妊娠しない、おかしいと思い産婦人科を受診して初めて「卵子が“老化”しているため妊娠の可能性が低い」「女性の卵子は年齢とともに年を重ね、35歳の女性が出産できる可能性は20代の半分」という事実を知り悲嘆に暮れる、というものだ。女性たちが無知によって「産みたいのに産めない」状況に陥らないよう、啓発する内容。一方で、「卵子が若いうちに産めない」のは社会的要因が複雑に絡み合っており、一概に女性の無知が原因とは言えないことも指摘されてきた。

6月2日に厚生労働省が発表した平成28年の人口動態統計(概数)によれば、出生数は前年比2万8698人減の97万6979人で過去最少、初の100万人割れとなってしまった。女性が生涯に産む子供の推定人数を示す合計特殊出生率は1.44で、前年を下回り2年ぶりのマイナス。厚労省は「20代後半~30代前半の出生率が減った」とコメントしている。出産世代の女性人口は減少の一途。これ以上の少子高齢社会化を防ぐ対策が急務だということは分かる。労働人口が減り、経済規模が縮小し、社会保障制度も維持できなくなると予想されているからだ。であれば日本は「産みやすい社会」ひいては「子育てしやすい社会」に変革していかなければならないのだが、その課題解消の目途も立たないのに「とりあえず若者に産ませよう」という思惑ばかりが先走っている印象を受ける。

2015年8月、文科省が発行した高校保健体育の副教材『健康な生活を送るために(平成27年度版)』は、少子化対策を盛り込んだものだったが、そこには前述の“思惑”が凝縮されていた。この問題を徹底的に検証したのが、『文科省/高校「妊活」教材の嘘』(論創社)だ。かねてよりSNS等で同教材の問題を指摘してきた「高校保健・副教材の使用中止・回収を求める会」の活動記録である。

件の副教材は、妊娠・出産や性教育に特化したものではない。交通安全、生活習慣病、喫煙や飲酒、薬物乱用などに合わせて、性感染症の防止や妊娠・出産に関連するページがもうけられている一冊だ。しかしこの副教材に掲載されている「女性の妊娠のしやすさの年齢による変化」グラフは改ざんされたデータであり、妊娠・出産に関するページには他にも複数の間違いや不適切な記述が見られた。本書『文科省/高校「妊活」教材の嘘』は、「その分野の専門家たちが関わっていながら、なぜ改ざんや間違いは見過ごされたのか?」検証し、経緯と内容を明らかにした一冊だ。同時に、この副教材を現政権(第二次安倍政権)が文科省と連携し「早めの結婚・妊娠・出産を仕向けるよう、関連のページを強化した」プロパガンダであると見て警鐘を鳴らしている。

国の「産ませる」という政策的な意図と、学術・専門家団体の権力への欲望が結び合うとき、「科学的知識」に何が起こり、それは社会の中でどのように機能するのか。専門家たちによって権威付けられた「科学的知識」が正しいのか歪んでいるのか、それを誰が確認できるのか。教育現場の教員や生徒たち、そして市民はいかにより適切な情報にアクセスできるのか。これらについて考えるための材料を提示することが、本書のもう一つの目的である。(まえがきより)

◎間違いだらけの教材に、不信感が募る

高校保健体育の副教材『健康な生活を送るために(平成27年度版)』は、後述するイデオロギーの問題だけでなく、ミスが非常に多いものだった。まず「女性の妊娠のしやすさの年齢による変化」グラフは、女性は22歳をピークに妊娠しやすさが低下すると示していたが、出典をたどると明らかに不適切な曲線の改ざんがなされていることがわかった。のみならず、これは女性が各年齢で結婚期間や相手の年齢にかかわらず子供を産む能力(妊孕力)を求めようとしているものではなく、妊娠する可能性のある女性について一カ月以内に妊娠する確率がどれだけあるかを求める(結婚期間等の影響を取り除いていない)ものだ。かつ、半世紀以上前のデータであるが、それを隠して、新しい研究成果であるかのように出典が示されている。つまり信用に値するグラフではなかったということだ。にもかかわらず当該グラフは、今回の副教材より以前から、産婦人科界隈の一部や厚生労働省の広報制作物で繰り返し使用され“定番アイテム”と化していたこともわかった。誰も誤りに気付かなかったのか、それとも意図的な改ざんだったのだろうか。

また、「子供はどのような存在か」なるグラフの数値は間違っているし、「不妊で悩む人が増加している」という見出しで掲載されたグラフも誤り。さらに、「日本の若者は生殖知識が不足している」(=だから若いうちに産まないのではないか)という説の根拠として内閣府少子化危機突破タスクフォースが利用した「スターティング・ファミリーズ」調査という国際比較調査の結果もまた、信頼度の低いものであった。この調査は、まず英語版の質問文が作成されたのちに12言語(日本語版を含む)に翻訳され各国で実施されたものだが、翻訳の精度等に問題があり、英語との文法的・語彙的な共通性の低い言語が使われている国では軒並み正答率が低くなっている。また、国ごとに対象者の抽出方法も異なり、社会調査パネルを使った国と、不妊関連サイトなどからのオンライン調査・不妊治療クリニックに通院する人に回答させた国とでは後者の調査結果の方が妊娠リテラシーが高くなるのは必然である。そもそも調査のスポンサーである製薬会社(不妊症の治療薬も開発・販売している)がプレスリリースで調査結果について「必ずしもその国を代表するものではありません」と注意書きしているのに、日本の国会ではあたかも「日本人の妊娠リテラシーは低い」ことを示すものとして議論の根拠にされた。国会だけではない。産婦人科団体は積極的にこの調査結果を利用して「日本人の妊娠リテラシーは低い」と煽ってきた。専門家たちが、質の低い調査を精査せず、あるいは問題点を把握しながら悪利用する形で、お墨付きを与えてきたのである。こうしたデータの誤りや不適切な使用を、丁寧に明らかにしていく本書の執筆陣には頭が下がる。

アカデミックな業界に籍を置かない人間(の一部ではあると思うが)は、専門家(研究者)が調査し提示したデータや学会発表はすべて無条件に信用できる、と誤解している節があるように思う(評者自身も……自戒を込めて)。しかしそのデータがどのような文脈で利用されているか、本当は注意深く見なければいけない。たとえば『ためしてガッテン』『ホンマでっか!?TV』のようなバラエティ番組も、“わかりやすい演出”が加えられた恣意的な制作物だ。

さらに政府や省庁が公開する資料もまた、受け取り手は無条件に「正しいデータで作成されている」と認識してしまいがちだ。だが今回の副教材には、前述のように複数の間違いがあり、制作過程におけるチェック体制が機能していないことがはっきりしてしまっている。決して「高校生にもわかりやすいようにグラフを整えてあげました~」というレベルの話ではない。

そして単純なミスだけでなく、イデオロギー的問題も孕んでいる。<人生のいろいろな可能性や選択肢がある10代の女性に対して、結婚・妊娠・出産をしたほうがいい、それもなるべく早く――そう誘導しようとした>(p162)のだ。このような誘導によって若い世代にそうしたライフスタイルが模範的なものと刷り込まれ、あるはずだった彼ら彼女らの可能性・選択肢が失われていく。教育機関にあるまじきことだ。

◎なぜ誘導してはいけないのか

けれども一方で、「それのどこが悪いの?」と思う人もいるんじゃないか。しかも、たくさんいるんじゃないか。評者は、まったく邪気なく「女の子は若いうちに産んだほうがいいんだよ」と考え、若い女子にそう伝える大人はとてもたくさんいるだろうと思っている。

「産めない年齢になってから後悔しても遅いんだよ」「老後が淋しいよ」と、女性個人のためを装った言葉から、「女性なのに産まないなんてもったいない」「孫の顔が見たい」といった具合の押しつけ、さらに直接的に若者にこう言いはしないだろうが、「少子化で国が大変になるのに産まないなんて」「今の若い人はわがまま」「甘えている」……。そんなふうにうっすら思っている“大人”たち、身の回りにいないだろうか? そうした無意識の集合が、若い女性への“産めよ増やせよ”圧力になっていく。しかもその圧力をかける側は、ほぼ善意のつもりでいる。女性個人への善意、社会への善意。これが非常に厄介だと思う。

産む産まないは個人の権利。産まない選択もひとつの権利で、産まない選択をする成人女性が増加して日本の若者人口がいっそう減少したとしても、女性に「国のために産んでほしい」などとは口が裂けても言ってはならない。同様に、女性との間に子を持つ選択をしない男性にも、強要してはいけない。なぜなら「どう生きるか」を決めるのはその人だからだ。しかし高校保健体育の副教材『健康な生活を送るために(平成27年度版)』は、ワンパターンな人生設計しか見せようとしない。子供を産まない選択があることは教えてくれない。そのことが性的マイノリティをはじめ、いわゆる「男・女・子」の家族設計を持たない児童に対して苦痛を与えることは想像に難くない。

また、どう生きるかの想像をごく狭い範囲に限定させ、若い世代の可能性の芽を摘み取っていては、結局日本の経済成長も望めないだろう。この副教材は「幸せな生涯」を規定し、10代の選択肢と多様性を奪っている。

◎誰しも第三者が踏み込んではいけない領域がある

6月3日に東京・神谷町の東京麻布台セミナーハウスで、『文科省/高校「妊活」教材の嘘』出版記念シンポジウムが開かれた。同書の編者であり青山学院大学・慶應義塾大学等で非常勤講師を務める西山千恵子さんは、「でも(出産適齢期の)知識は必要でしょう?」という声にどう応じればいいのか触れた。いわく、性行為やわいせつ発言については“セクハラ”だが、同じようにプライベートな話題であるにもかかわらず結婚・妊娠・出産については踏み込んで良いという共通認識が社会にある。「生殖ハラスメント」という概念を流通させ「それは他人が踏み込んではいけない領域なのだ」と浸透させていくことが必要ではないか、という。

そのとおりで、この副教材にしろ、官製婚活にしろ、結婚や出産というごくごく私的な領域に第三者がズケズケと踏み込むことをこの社会は容認している。他方、育児や介護に関しては「家庭でカバー」することが望ましいというダブルスタンダードだ。産め、増やせ、産まないとつらいぞ、老後が孤独だぞ、淋しいぞ、貧乏になるぞ……様々な方向からの脅しが私たちを蝕む。

しかし10代という未知の可能性を持つ世代の人々にもっとも大事な保健体育の知識は、「自分の体も、相手の体も大切に」ということではないだろうか。少なくとも「大切にするとはどういうことか」を知ること。すると自ずから、「プライベートな領域について、第三者に抑圧されるべきでない」ことに気付けるだろう。生まれながらにして、自分はその権利を持っている。押し付けられても拒絶することができるし、自分で判断して良いのだ。そのことに気付かれては、困るのだろうか?

■ヒポポ照子
東京で働くお母さんのひとり。大きなカバを見るのが好きです。

なぜ「若いうちに産んだほうがいいよ」と言ってはいけないか/『文科省/高校「妊活」教材の嘘』

卵子の老化。妊活。不妊治療。卵子凍結保存。ここ数年でホットになった妊娠・出産をめぐるトピックだ。きっかけは2012年6月23日に放送されたNHKスペシャル『産みたいのに産めない~卵子老化の衝撃~』。番組でライトが当たったのは30代後半~40代のいわゆる高齢出産に該当する世代の女性たちだった。肉体的には健康であるがなかなか妊娠しない、おかしいと思い産婦人科を受診して初めて「卵子が“老化”しているため妊娠の可能性が低い」「女性の卵子は年齢とともに年を重ね、35歳の女性が出産できる可能性は20代の半分」という事実を知り悲嘆に暮れる、というものだ。女性たちが無知によって「産みたいのに産めない」状況に陥らないよう、啓発する内容。一方で、「卵子が若いうちに産めない」のは社会的要因が複雑に絡み合っており、一概に女性の無知が原因とは言えないことも指摘されてきた。

6月2日に厚生労働省が発表した平成28年の人口動態統計(概数)によれば、出生数は前年比2万8698人減の97万6979人で過去最少、初の100万人割れとなってしまった。女性が生涯に産む子供の推定人数を示す合計特殊出生率は1.44で、前年を下回り2年ぶりのマイナス。厚労省は「20代後半~30代前半の出生率が減った」とコメントしている。出産世代の女性人口は減少の一途。これ以上の少子高齢社会化を防ぐ対策が急務だということは分かる。労働人口が減り、経済規模が縮小し、社会保障制度も維持できなくなると予想されているからだ。であれば日本は「産みやすい社会」ひいては「子育てしやすい社会」に変革していかなければならないのだが、その課題解消の目途も立たないのに「とりあえず若者に産ませよう」という思惑ばかりが先走っている印象を受ける。

2015年8月、文科省が発行した高校保健体育の副教材『健康な生活を送るために(平成27年度版)』は、少子化対策を盛り込んだものだったが、そこには前述の“思惑”が凝縮されていた。この問題を徹底的に検証したのが、『文科省/高校「妊活」教材の嘘』(論創社)だ。かねてよりSNS等で同教材の問題を指摘してきた「高校保健・副教材の使用中止・回収を求める会」の活動記録である。

件の副教材は、妊娠・出産や性教育に特化したものではない。交通安全、生活習慣病、喫煙や飲酒、薬物乱用などに合わせて、性感染症の防止や妊娠・出産に関連するページがもうけられている一冊だ。しかしこの副教材に掲載されている「女性の妊娠のしやすさの年齢による変化」グラフは改ざんされたデータであり、妊娠・出産に関するページには他にも複数の間違いや不適切な記述が見られた。本書『文科省/高校「妊活」教材の嘘』は、「その分野の専門家たちが関わっていながら、なぜ改ざんや間違いは見過ごされたのか?」検証し、経緯と内容を明らかにした一冊だ。同時に、この副教材を現政権(第二次安倍政権)が文科省と連携し「早めの結婚・妊娠・出産を仕向けるよう、関連のページを強化した」プロパガンダであると見て警鐘を鳴らしている。

国の「産ませる」という政策的な意図と、学術・専門家団体の権力への欲望が結び合うとき、「科学的知識」に何が起こり、それは社会の中でどのように機能するのか。専門家たちによって権威付けられた「科学的知識」が正しいのか歪んでいるのか、それを誰が確認できるのか。教育現場の教員や生徒たち、そして市民はいかにより適切な情報にアクセスできるのか。これらについて考えるための材料を提示することが、本書のもう一つの目的である。(まえがきより)

◎間違いだらけの教材に、不信感が募る

高校保健体育の副教材『健康な生活を送るために(平成27年度版)』は、後述するイデオロギーの問題だけでなく、ミスが非常に多いものだった。まず「女性の妊娠のしやすさの年齢による変化」グラフは、女性は22歳をピークに妊娠しやすさが低下すると示していたが、出典をたどると明らかに不適切な曲線の改ざんがなされていることがわかった。のみならず、これは女性が各年齢で結婚期間や相手の年齢にかかわらず子供を産む能力(妊孕力)を求めようとしているものではなく、妊娠する可能性のある女性について一カ月以内に妊娠する確率がどれだけあるかを求める(結婚期間等の影響を取り除いていない)ものだ。かつ、半世紀以上前のデータであるが、それを隠して、新しい研究成果であるかのように出典が示されている。つまり信用に値するグラフではなかったということだ。にもかかわらず当該グラフは、今回の副教材より以前から、産婦人科界隈の一部や厚生労働省の広報制作物で繰り返し使用され“定番アイテム”と化していたこともわかった。誰も誤りに気付かなかったのか、それとも意図的な改ざんだったのだろうか。

また、「子供はどのような存在か」なるグラフの数値は間違っているし、「不妊で悩む人が増加している」という見出しで掲載されたグラフも誤り。さらに、「日本の若者は生殖知識が不足している」(=だから若いうちに産まないのではないか)という説の根拠として内閣府少子化危機突破タスクフォースが利用した「スターティング・ファミリーズ」調査という国際比較調査の結果もまた、信頼度の低いものであった。この調査は、まず英語版の質問文が作成されたのちに12言語(日本語版を含む)に翻訳され各国で実施されたものだが、翻訳の精度等に問題があり、英語との文法的・語彙的な共通性の低い言語が使われている国では軒並み正答率が低くなっている。また、国ごとに対象者の抽出方法も異なり、社会調査パネルを使った国と、不妊関連サイトなどからのオンライン調査・不妊治療クリニックに通院する人に回答させた国とでは後者の調査結果の方が妊娠リテラシーが高くなるのは必然である。そもそも調査のスポンサーである製薬会社(不妊症の治療薬も開発・販売している)がプレスリリースで調査結果について「必ずしもその国を代表するものではありません」と注意書きしているのに、日本の国会ではあたかも「日本人の妊娠リテラシーは低い」ことを示すものとして議論の根拠にされた。国会だけではない。産婦人科団体は積極的にこの調査結果を利用して「日本人の妊娠リテラシーは低い」と煽ってきた。専門家たちが、質の低い調査を精査せず、あるいは問題点を把握しながら悪利用する形で、お墨付きを与えてきたのである。こうしたデータの誤りや不適切な使用を、丁寧に明らかにしていく本書の執筆陣には頭が下がる。

アカデミックな業界に籍を置かない人間(の一部ではあると思うが)は、専門家(研究者)が調査し提示したデータや学会発表はすべて無条件に信用できる、と誤解している節があるように思う(評者自身も……自戒を込めて)。しかしそのデータがどのような文脈で利用されているか、本当は注意深く見なければいけない。たとえば『ためしてガッテン』『ホンマでっか!?TV』のようなバラエティ番組も、“わかりやすい演出”が加えられた恣意的な制作物だ。

さらに政府や省庁が公開する資料もまた、受け取り手は無条件に「正しいデータで作成されている」と認識してしまいがちだ。だが今回の副教材には、前述のように複数の間違いがあり、制作過程におけるチェック体制が機能していないことがはっきりしてしまっている。決して「高校生にもわかりやすいようにグラフを整えてあげました~」というレベルの話ではない。

そして単純なミスだけでなく、イデオロギー的問題も孕んでいる。<人生のいろいろな可能性や選択肢がある10代の女性に対して、結婚・妊娠・出産をしたほうがいい、それもなるべく早く――そう誘導しようとした>(p162)のだ。このような誘導によって若い世代にそうしたライフスタイルが模範的なものと刷り込まれ、あるはずだった彼ら彼女らの可能性・選択肢が失われていく。教育機関にあるまじきことだ。

◎なぜ誘導してはいけないのか

けれども一方で、「それのどこが悪いの?」と思う人もいるんじゃないか。しかも、たくさんいるんじゃないか。評者は、まったく邪気なく「女の子は若いうちに産んだほうがいいんだよ」と考え、若い女子にそう伝える大人はとてもたくさんいるだろうと思っている。

「産めない年齢になってから後悔しても遅いんだよ」「老後が淋しいよ」と、女性個人のためを装った言葉から、「女性なのに産まないなんてもったいない」「孫の顔が見たい」といった具合の押しつけ、さらに直接的に若者にこう言いはしないだろうが、「少子化で国が大変になるのに産まないなんて」「今の若い人はわがまま」「甘えている」……。そんなふうにうっすら思っている“大人”たち、身の回りにいないだろうか? そうした無意識の集合が、若い女性への“産めよ増やせよ”圧力になっていく。しかもその圧力をかける側は、ほぼ善意のつもりでいる。女性個人への善意、社会への善意。これが非常に厄介だと思う。

産む産まないは個人の権利。産まない選択もひとつの権利で、産まない選択をする成人女性が増加して日本の若者人口がいっそう減少したとしても、女性に「国のために産んでほしい」などとは口が裂けても言ってはならない。同様に、女性との間に子を持つ選択をしない男性にも、強要してはいけない。なぜなら「どう生きるか」を決めるのはその人だからだ。しかし高校保健体育の副教材『健康な生活を送るために(平成27年度版)』は、ワンパターンな人生設計しか見せようとしない。子供を産まない選択があることは教えてくれない。そのことが性的マイノリティをはじめ、いわゆる「男・女・子」の家族設計を持たない児童に対して苦痛を与えることは想像に難くない。

また、どう生きるかの想像をごく狭い範囲に限定させ、若い世代の可能性の芽を摘み取っていては、結局日本の経済成長も望めないだろう。この副教材は「幸せな生涯」を規定し、10代の選択肢と多様性を奪っている。

◎誰しも第三者が踏み込んではいけない領域がある

6月3日に東京・神谷町の東京麻布台セミナーハウスで、『文科省/高校「妊活」教材の嘘』出版記念シンポジウムが開かれた。同書の編者であり青山学院大学・慶應義塾大学等で非常勤講師を務める西山千恵子さんは、「でも(出産適齢期の)知識は必要でしょう?」という声にどう応じればいいのか触れた。いわく、性行為やわいせつ発言については“セクハラ”だが、同じようにプライベートな話題であるにもかかわらず結婚・妊娠・出産については踏み込んで良いという共通認識が社会にある。「生殖ハラスメント」という概念を流通させ「それは他人が踏み込んではいけない領域なのだ」と浸透させていくことが必要ではないか、という。

そのとおりで、この副教材にしろ、官製婚活にしろ、結婚や出産というごくごく私的な領域に第三者がズケズケと踏み込むことをこの社会は容認している。他方、育児や介護に関しては「家庭でカバー」することが望ましいというダブルスタンダードだ。産め、増やせ、産まないとつらいぞ、老後が孤独だぞ、淋しいぞ、貧乏になるぞ……様々な方向からの脅しが私たちを蝕む。

しかし10代という未知の可能性を持つ世代の人々にもっとも大事な保健体育の知識は、「自分の体も、相手の体も大切に」ということではないだろうか。少なくとも「大切にするとはどういうことか」を知ること。すると自ずから、「プライベートな領域について、第三者に抑圧されるべきでない」ことに気付けるだろう。生まれながらにして、自分はその権利を持っている。押し付けられても拒絶することができるし、自分で判断して良いのだ。そのことに気付かれては、困るのだろうか?

■ヒポポ照子
東京で働くお母さんのひとり。大きなカバを見るのが好きです。

聞く耳をもったあなたに読んでほしい。「説得の書」として書かれたジェンダー論の教科書/加藤秀一『はじめてのジェンダー論』(有斐閣)

かつてお世話になっている研究者の方からこんな話を聞いたことがある。教師の力量とは、真面目でどんな授業でも熱心に聞く学生や、「授業を真面目に受けるなんてかっこ悪い」とばかりに授業に背を向ける学生ではなく、よい授業をすれば耳を傾け、つまらない授業をすれば話を聞きもしない、そんな学生を振り向かせられるかにあらわれる、と。

 この「格言」はジェンダー論の営みにもあてはまると思う。フェミニズムに親和的な人の共感に依存して議論をおろそかにしたり、頑ななセクシストの悪意に疲弊したりする前に、聞く耳を持った人をきちんと筋道を立てて説得しなければならない。そのためには、正確な論理と、理解を促すための適切な比喩やアナロジーが必要で、そしてこの『はじめてのジェンダー論』にはそれがある。

 以下、この本の構成と特徴を簡単に紹介し、評者なりの評価を述べていく。

 本書ではまず「はじめに」と1章で、性別に関する「分類」の実践に着目してジェンダーを検討していくとの方針が宣言される。2〜4章では、性の多様性に触れつつ性別概念を多面的に理解する。続く5〜6章で「性差」「性役割」などジェンダーを考える際の基本の道具立てを整理し、その上で7〜12章で「教育」「恋愛」「性暴力」「性別役割分業」などのいくつかのトピックについての検討する、という構成になっている。

 このような構成は、ジェンダー論の教科書としてはかなり異例である。私の読んできた教科書では、まずフェミニズムの歴史を追いかけて、その中で鍛え上げられたジェンダーに関する概念や理論を整理し、具体的な問題を分析し、(運が良ければ)最後に性の多様性に言及、というものが多い。フェミニズムの歴史に関する記述をばっさりとカットし、ほぼ冒頭(2章以降)に性の多様性に関する議論を置き「普通の男/普通の女」を前提に性別を考えることの不徹底さを論じるのは、「説得の書」らしい思い切った構成だと思う。

 評者が本書のもっとも重要な意義だと考えるのは、ジェンダーという言葉が指す多様な要素を「性別に関する分類の実践」として統一的な視座のもとで把握する、という指針である。加藤自身も指摘している通り(p.iii)、ジェンダーという言葉の意味は文脈に応じて少しずつずれるが、加藤のこの視座から見れば、どうしてあれもこれもが「ジェンダー」と呼ばれるのかはかなり理解しやすくなる。ある人が性染色体に基づいて女性だと判断されることと、ノーメイクの女性が「女らしくない」と評価されることは、かなりかけ離れた事柄に思える。しかし、男で/女であることに異なる要素を割り当て、ある人を男として/女として把握する際にその要素を「適切」に使用している点では共通している。ジェンダー論に、「性別」や「男」「女」の意味が少しずつずれたさまざまなテーマが含まれるのは、人々を男と女に分けて(=「分類」して)扱う際の、特定の要素の「適切」な使用(これこそ「ジェンダー」という単語の中身である)という実践を共通しておこなっているからである。

 もう一つの大きな意義は、本書が論理的思考に貫かれている点である。ジェンダー論は文字通り「論」なので、「女性差別はいけないこと」となんとなく思う人を増やすのではなく、「女性差別はいけないこと」だとの理解と納得を人々に提供せねばならない。徹頭徹尾「説得の書」として書かれた本書は、それゆえまぎれもなくジェンダー「論」の教科書であると思う。「きちんと論理的にものごとを考えることが何かダサいことであるかのようにみなされる風潮そのものに疑問をもっているので、『理屈っぽい』こと自体は素晴らしいことだと思っています」(p.75)とは、なんとかっこいいパンチラインだろうか。加藤の文体でジェンダー論を学ぶことの知的快楽を、ぜひ読者にも堪能していただきたい。

 補足として、2点ほど疑問点を指摘しておきたい。1点目は「おネエ」に関する記述である。p.38-39で加藤は「芸能界などの非日常的な世界」で「トランス男性でなくトランス女性ばかりが活躍する」事態を体現する存在として「オネエ」タレントを捉え、唯一の固有名としてマツコ・デラックスを挙げているが、マツコはトランス女性ではなく「女装するゲイ男性」なのではないか(本人に訊いたわけではないので断定はできないが)。「オネエ」=トランス女性と必ずしも加藤が限定しているわけではないが、トランス女性、女装するゲイ男性、「女性らしい」異性愛男性(尾木ママやりゅうちぇるなど)などが混在したカテゴリとしての「オネエ」に言及しないのは、誤解を招きかねない記述だと評者は考える。

 2点目はきわめて些細な疑問である。p.110で、いくつかの例と並んで、テレビのバラエティ番組で取りあげられた食材が翌日のスーパーマーケットで売り切れることが挙げられ、こういった「メディアに踊らされている」人を「馬鹿にする」ことは「もっともなこと」と加藤は述べる。しかし、評者の感覚ではこの例は不適切であるようにも思える。

 すでにいくつもの調査が明らかにしている通り、食にまつわる家事労働における面倒くささの大きな一因は献立を考えることである。だとすれば、テレビなどで特定の食材がとりあげられた際にそれをメニューに加えるのは、そのことで一回献立を考えずに済むからではないか。私はこれを「恵方巻き仮説」と呼んでいるのだが(恵方巻きの日は献立決めも調理も、包丁で切ることさえ必要ないのだから!)、だとすればこれは人々の、とりわけ専業主婦をはじめとする女性の性役割からの切実にしてしたたかな離脱だと言えるのではないか。そう言えば本書には家事労働に関する記述がほとんどない。加藤がジェンダーという概念で家事労働をどう分析するのも読んでみたかった、と思う。

■森山至貴
1982年神奈川県生まれ。現在、早稲田大学文学学術院専任講師。専門は社会学、クィア・スタディーズ。主著に『LGBTを読みとく―クィア・スタディーズ入門』(筑摩書房、2017)がある。(写真撮影:島崎信一)

ユニリーバ・Lux「女らしさを捨てて働くべき?」 設問自体がセクハラ。働く女性が「自分らしく輝くことを応援」するなら性別二元論をやめてください

ニリーバ・ジャパンのヘアケア・ボディケア製品「Lux(ラックス)」のTwitterキャンペーンアカウント「@LuxOfficial」が、「LUX 働く女性の意識アンケート」を行っている。

\働く女性の本音、教えてください/ LUXは、一人でも多くの女性たちが、自分らしく輝くことを応援する活動をスタートします。 その第一歩として、まずは、「働く女性たちの本音」を知る為にアンケートを実施! ぜひお気軽に投票してください。(https://twitter.com/i/moments/874177942741372928)

用意されている設問は以下の5つだ。

■バリバリ仕事で活躍するためには、“女らしさ”を時として捨てなければいけないって思いますか?

■「仕事だけじゃなくて、プライベートも充実させたい!でも、これからのことを考えると、今の仕事とプライベートを両立できるか不安…」そんなこと考えることありますか?

■働いているときのあなたの心の中を教えてください

■いまだに仕事上で、男女の格差を痛感することはありますか?

■「美しすぎる女性弁護士」のように、男性が多い職場で活躍している女性が取り上げられている現状について、あなたはどう思いますか?

そして自由回答方式ではない。それぞれ、4つの選択肢が回答として用意されている。たとえば1番上の設問への選択肢はこうなっている。

<バリバリ仕事で活躍するためには、“女らしさ”を時として捨てなければいけないって思いますか?>

・そんなのイヤだ!
・女を捨てなきゃいけない瞬間はある
・男には負けたくないから仕方ない
・仕事も女であることを活用すべき

これら選択肢の背景には、「バリバリ仕事で活躍する」イコール「長時間労働で成果を出す一部男性と同様の働き方をする」という認識がある。そもそも「女らしさ」とは何かの定義がなされていないが、口紅とハイヒールの絵文字が「女らしさ」を象徴しているのだろう。また、ヘアケア・ボディケア用品を取り扱うLuxだけに、艶やかな髪や潤いのある肌なども「女らしさ」のひとつのポイントなのだろうと思う。そうした「女らしさ」を捨てる、つまり髪をボサボサに振り乱すなど(あるいは極端なショートカット)して化粧も剥がれ落ちた(長時間休みなく仕事に従事していればそうなるが)姿で、仕事のみに一極集中する働き方を想定したうえで、「捨てる? どうする?」と問うている。

「女であることを活用」というフレーズにはいかにもなイヤらしさが漂う。実務ではなく「女らしさ」を評価されることで<バリバリ活躍>できると見ているのだろうか。また、もし「男に負けたくない」と勝ち負けにこだわって仕事をする女性がいるとすれば、それは「女だから」という性別由来の理由で評価を下げられることがあるせいだろう。

この設問からは、<女のままではバリバリ活躍など出来ないはずだ>ということが読み取れる。幅広い世代・職域の女性をターゲットにした商品を展開しながら、「女らしさ」を侮辱するのはどういうことだろう? 性別二元論に基づいた設問自体が、「女が働くこと」を否定していると気付かないのだろうか。

自分が心地いいと思える服装・髪型・化粧が「女らしい」とされるものであったとして、それを「捨て」ることなく、かつ「活用」することもなく、働くことは可能なはずだ。しかしその選択肢は回答欄に用意されていない。仕事で「女らしさ」を求められることがセクハラだという認識も欠けている。

ファッションビル・ルミネの問題CMも、資生堂インテグレートのCMも、今回のLuxアンケートも、すべてに共通しているのは、「働いている女性」と「美容・ファッション」を安直に結びつけて煽っているところだ。どんな服を着ようと、どんなメイクをしようと、容姿の良さをサービス内容に含むような業務でない限り、仕事に直接関係はしない。しかし一連の案件は、今まさに「仕事中」である「女性」に対して、仕事とは無関係な「美容・ファッション」に気を配れとアドバイスをよこす。それが女であるお前のためなのだ、と。どこからどう見てもセクハラであって、働く女性を応援するテイを取りながら締め付けているのと同じだ。いい加減、気が付いてほしい。

◎ふつうに働けばいいじゃん。
3つめの設問<働いているときのあなたの心の中を教えてください>への回答選択肢はこうだった。

・仕事は大変だけどやっぱり楽しい
・できる女性になるべく頑張りたい
・プライベートを楽しみに乗りきる
・「これは仕事」と割り切っちゃう

男性を対象にしたアンケートだったら、こういった選択肢になるだろうか? おそらく「家族のために頑張る」とか「昇進したい」とか「起業のための修行期間」といった選択肢も用意されるのではないだろうか。しかし上記の選択肢では、なぜか女性が一般的に「仕事vsプライベート」という構図を内面化していることになっており、かつ“お気楽”な調子で仕事に従事していることがイメージされる。家族のために働く女性も、昇進や起業を目標にする女性も、さほど仕事を大変ではないと感じている女性も(男性も)いるはずだが……。

ちなみに筆者は、特に大変でもなく楽しい仕事をしている。運よく自分に合った仕事を自分の裁量で出来ているからだ。家族も含め生活するための収入は必要だし(お金はどれだけあっても困らない)、時にはやりたくないこともやるが、さほど苦痛は覚えていない。女らしさを意識して働いてもいない。キラキラでもバリバリでもない8時間労働の会社員だ。だからLuxのアンケート調査に回答しなかった。当てはまる選択肢がないから、回答しようがない。自宅でもキラキラ要素はゼロだ(夫の帰宅は22時以降が大半。キラキラ輝くママのワンオペ時間割に対抗して「輝かない頑張らないママの時間割」公開)。

あと<働いているときの心の中>って、今目の前にある業務のこととか、少し先の会議のこととか、今日の夕飯何にしようとか、昨日イヤなことあったなあとか、いろいろだ。仕事とプライベートを天秤にかけるようなことをモヤモヤ考えながら作業できるものか? 要するに設問そのものがおかしい、やり直し!

そもそも過剰なワーク>ライフのバランスで働くことを“バリバリ活躍”することと同義だとみなし、それこそが“男の働き方”であって、女もそれに合わせなければ活躍は難しいとする労働観って、誰が得するのだろう。時間外労働にも喜んで取り組む体育会系(奴隷根性ともいう)労働者の恩恵を預かるのは、経営陣だけである。そんな働き方に合わせず、“女性らしさ”なども意識せず、適切な働き方を模索したいものだ。

(ヒポポ照子)