韓国の世界遺産エリアで、高齢者による売春が多発している。
問題となっているのは、ソウル市鍾路(チョンノ)区に位置する宗廟(チョンミョ)周辺。朝鮮王朝歴代の王と王妃を祀った王家の霊廟で、1995年にユネスコ世界文化遺産に指定された建物だ。現在は、高齢者たちの憩いの場としても親しまれている。
韓国メディア「ソウル新聞」が現地取材したところによると、この宗廟の周辺で、50代以上に見える女性たちが、高齢男性に売春を持ちかけているという。客に声をかける際、栄養ドリンク「バッカス」を差し出していることから、彼女たちは“バッカスおばさん”と呼ばれている。だが、最近は売春婦が高齢化し、“バッカスおばあさん”も珍しくないらしい。20年以上、売春を続けているという75歳の女性は、こう証言している。
「今は60代でも若いほう。80代も、『バッカス』片手に、大勢繰り出してるよ」
彼女たちの性ビジネスは、宗廟周辺の商店に被害を及ぼしているそうだ。ある居酒屋の店主は、「バッカスおばあさんたちが、来店した高齢者たちを連れて行ってしまうから、商売の邪魔になっている」と嘆く。
この高齢者による性売買は、カナダのメディア「VICE」やシンガポールのチャンネル・ニュース・アジア(CNA)などが取り上げたこともあり、宗廟を訪れた外国人観光客にも認知されているという。実際、前出の「ソウル新聞」がインタビューした外国人観光客も、この地で公然と売春が行われている事実を知っていると答えていた。観光地のイメージダウンは避けられず、韓国ネット民も「外国でも放送されているなんて、恥ずかしい」「外国に発信されてしまったいま、高齢売春は根絶しなければ」などと嘆いている。中には、「売春で観光客を集めよう」と皮肉るコメントもあった。
もっとも、高齢者による売春は今に始まったことではなく、1990年代から問題視されてきた。昨年には“バッカスおばあさん”を主人公にした映画『バッカス・レディ』も公開されているほどだ。
しかし、最近は、その数が急増している。韓国警察庁の発表によれば、13年には全国で183件が摘発されたが、昨年は603件と3倍以上に膨れ上がっているのだ。
そこには、今年9月の時点で、人口のうち65歳以上が占める割合が14.02%に達し、「高齢社会」(高齢者人口の比率が14~21%)に突入したことも関係しているといわれているが、さらに深刻なのは、高齢者の貧困のほうだという。何しろ韓国の65~74歳の相対的貧困率は42.7%、75歳以上に至っては60.2%に上っており、OECD加盟国中ワースト1位となっている。
ただ、“バッカスおばあさん”たちが売春でがっぽり稼いでいるかというと、そうでもないようだ。14年にイギリスBBCが彼女たちを取材した際は、性交渉までこぎ着けても2~3万ウォン(約2,000~3,000円)を受け取るにすぎないと報じていた。また、ある高齢売春婦は、「数万ウォン(数千円)を稼いでも、摘発されたら、その何倍もの罰金を払わないといけない」と明かしており、彼女たちがハイリスク・ローリターンな商売を行っていることがわかる。
こうした状況について、韓国老人相談センターのイ・ホソン所長は、「基礎生活受給費(生活保護)を受けられない高齢者たちは、(社会の)死角に隠れてしまっている」としながら、「一般的な売春婦たちを対象にした自立支援活動も、高齢者たちにとっては何の意味も持たない」と指摘している。
警察は、老人相談センターによる指導に力を入れているが、目の前の生活に困窮している彼女たちには効果が薄いようだ。取り締まりと処罰を強めるべきだとの声も聞かれるが、より根本的な対策が実施されなければ、結局はいたちごっこになる可能性が高いだろう。宗廟が、世界遺産の権威を取り戻す日は来るだろうか?
(文=S-KOREA)
●参考記事
・国際犯罪の温床にも…韓国人女性たちが“遠征売春”に手を出す理由
http://s-korea.jp/archives/18683?zo
・「キレる老人」急増どころか貧困率49.6%!? 日本と似て非なる韓国の“高齢者問題”
http://s-korea.jp/archives/13650?zo