ホストクラブに行ったことがない人間からすると、なぜ、身を滅ぼすほどにホストに金を使うのかがわからない。しばしばテレビや雑誌に登場する人気ホストたちが、そこまで入れあげるほど魅力的にも見えない。水商売や風俗嬢なら「同業者だからホストとは気が合う」と感じるのかもしれないが、坂口は大女優の娘、脇坂は医師。2人とも小学校から名門私立に通い、なに不自由なく育ったお嬢様たちだ。そういう彼女たちが奪い合った人気ホストXはどういう人物か。Xと接したことがあるというノンフィクションライターの杉浦由美子さんに話を伺った。
■華やかさと健康的で気さくな雰囲気を兼ね備える人
――Xは歌舞伎町のトップクラスの人気ホストで、テレビのバラエティにも出ていました。出演番組を見ましたが、チャラくて、容姿も個人的にはかっこよく見えなかったんですが……。
杉浦由美子さん(以下、杉浦) カメラを通して映える顔と、実際、近くで見て美しい顔は違います。芸能人は、カメラを通した時に魅力が発揮できる容姿や資質を持っていますが、ホストたちはカメラを通すと魅力はないけれど、実際に会うと本当にかっこいいんですよ。私は仕事柄、芸能人にも会いますが、実際に間近で見て最もかっこよかったのは、歌舞伎町のホストたちでした。彼らの魅力はテレビや雑誌を通してではなく、直に会って横に座ってもらわないと味わえない。そのためにはホストクラブに行って指名しないといけませんよね。
――このXも実際に会うとそんなに美形なんですか?
杉浦 純粋にルックスだけだと、Xさんは見劣りしました。ほかのホストが美形揃いすぎたんですけどね(笑)。でも、ジャニーズのスターをスタイルよくしたような男子が並んでいた中で、Xさんはフェロモンがすごかったので、強烈なインパクトがありました。
――フェロモン? オーラみたいなものですか?
杉浦 そうですね。同行した若い女性編集者さんは怖がって、Xさんに近づこうともしませんでしたね。確かに20代の女子だと同じ空気を吸っただけで妊娠しそうなフェロモンを放っていました。テレビでは軽薄でナヨッとして見えますが、実際はその真逆です。ロックスターのような華やかさと、健康的で気さくな雰囲気を兼ね備える人でした。
――「健康的」とホストは結びつかないイメージがありますが……。
杉浦 ホストの前職はモデルや美容師などが多いそうですが、Xさんの前職は木工大工です。ホストクラブの情報サイトで、新人ホストが「普通、ナンバーワンのホストは僕らを相手にもしてくれないのに、Xさんは面倒見がいい」とコメントしていましたが、大工さんは後輩の面倒を見ますよね。歌舞伎町にいても、職人気質を捨てなかったんじゃないでしょうか。彼の腕の筋肉もスポーツクラブで人工的に鍛えたものではなく、建築現場の仕事で作り上げていったナチュラルなマッスルでした。
また、ホストをやっていることを親に隠している人もいますが、Xさんはご両親も息子がナンバーワンホストになったことを心から喜んでいたようです。特にお母さんは元クラブ歌手で、「私の遺伝子のおかげでお前はナンバーワンになれた」と言ったとか。つまり、両親も彼もホストクラブは“エンターテインメント業”と捉えていたんでしょうね。仕事にも前向きで、とにかく明るかったですね。
■都会育ちのお嬢様には見たことない生き物
――なるほど。しかし、坂口も脇坂も超がつくお嬢育ち。そういう女性たちがなぜ、あそこまで彼にハマったんでしょうか?
杉浦 見たことない生き物だったからじゃないですか。小学校から名門私立に通っていた箱入り娘からすると、Xさんみたいな男性は新鮮だったんでしょう。ロックスターみたいなオーラを出しながら、後輩の面倒もみる“気のいい大工さんのあんちゃん”要素もある。都会育ちのお嬢様が地方出身の苦学生に惹かれるってよくあるんですが、そういうパターンだったのかもしれません。
それがこんな大きな騒動に発展したのは、やはり、彼女たちとXさんとの関係が“お金”の上に成り立っていたからでしょう。Xさんはとっくに一生遊んで暮らせる分を稼いでいるはずなのに、ホストをやり続けるのは、彼にとって歌舞伎町の店のナンバーワンでいることこそが自己実現だからでは。トップクラスのホストは本命の恋人をつくらないんですが、理由のひとつは、客を愛せなくなるからだとか。彼らは自分の自己実現を支えてくれる太い客を本気で愛さないとならないんですから。お金を出せば愛してくれる男性って日常的にまず存在しないでしょう。この世で数少ない“お金を使えば愛してくれる男”を好きになってしまったところに、今回の2人の悲劇はあったのだと思います。
(水野妖子)


