古女房の摩訶不思議な変化物語――官能ホラー小説『秘めやかな蜜の味』

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『秘めやかな蜜の味』/実業之日本社

■今回の官能小説
『秘めやかな蜜の味』坂井希久子(実業之日本社)

 セックスすると、相手に対して情が沸くのが人の性。特に女は、抱かれた男に対して情念を抱いてしまうこともあるのではないだろうか。ベッドでもそれ以外でも、たっぷり愛してくれる男に対しては、燃え上がるほどの熱い愛情を注ぐ。しかし、裏切られたり、不条理な形で捨てられたりすると、女は豹変してしまう。それまでの“愛されていた女”からは想像もつかないほどの憎しみを持ち、相手を奈落の底まで追いつめてしまうのだ。嫉妬や妬みにかられ、なりふり構わなくなったその姿は、もしかしたら人ではなく“別のなにか”にも見えてしまうのかもしれない。

 今回ご紹介する『秘めやかな蜜の味』(実業之日本社)は、高齢化の進んだ小さな町に移り住んだ、40を目前にした夫婦の物語だ。39歳になる牧衛は、都会を離れて幼い頃に住んでいたこの町にやってきた。妻の環とひっそりと静かな田舎暮らしを送る日々――しかし、牧衛の周りには、次から次に“不思議な女性たち”が現れる。本書は、現実と空想の間で翻弄される牧衛を描いた、「官能ホラー」小説である。