映画『未来を花束にして』講演会で考えた、女性が活躍できない日本社会

 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 秘書仲間にはいろいろな人がいて、帰国子女も多いです。「人材のグローバリゼーションが進んでいる」と言いたいところですが、実際の永田町は、全く違います。古臭い男尊女卑が横行し、セクハラやパワハラが横行しているのです。その上、自分の言動がセクハラだとまったく気づいていない議員も多いんですよね。

 しかし、「紳士の国」とか「レディーファースト」のイメージが強く、女性の首相が2人も誕生しているイギリスでさえ、女性に男性と同等の参政権が与えられたのは、1928年のことだったそうです。イギリスも女性の地位が非常に低く、当時の女性の労働者の賃金は男性の2分の1から6分の1だった時代があったと知り、驚きました。

 このイギリスにおける女性参政権運動をテーマにした映画『未来を花束にして』が、2017年1月に日本でも公開されるそうで、公開に先駆け、日本でも講演会が行われました。

■イギリスの国会でも、いまだにセクハラは存在する

 この映画は、普通の女性たち(映画では“名もなき花”と表現されています)の日々の生活と参政権運動をリアルに描いており、運動を熱心にしていた女性たちが、決して「男勝り」ではなく、自分たちらしい服装と感性で働きながら子育てや家事をしていたごくごく普通の女性たちだったという部分が、とても印象に残ると思います。主演のメリル・ストリープは「すべての娘たちはこの歴史を知るべきであり、すべての息子たちはこの歴史を心に刻むべきである」というメッセージを出しています。

 ストリープ演じる主人公、エメリン・パンクハーストのひ孫にあたるヘレン・パンクハーストさんが来日し、「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」の特別講師として議員会館で講演をされ、イギリスでの女性の社会進出の取り組みや効果的な手法などをお話ししてくださいました。

 意外だったのは、イギリスの国会でも、いまだにセクハラは存在するということです。でも、国会がテレビ中継され、セクハラを受けた女性議員もその都度SNSにアップしたりするので、かなり減ってきたそうです。

 そういえば日本でも、2014年の東京都議会の塩村文夏議員が受けた「結婚しろ」「自分が子どもを産め」というセクハラヤジの映像がネットに出回り、批判であふれたことから、ヤジを飛ばした男性議員がかなりの社会的制裁を受けたことがありましたよね。

 でも、永田町では、こんな程度のセクハラなんて日常茶飯事です。日本の中心である永田町からセクハラがなくならない限り、女性が日本社会で活躍できないことは明白です。

■女性秘書も「愛人」と思われたい!?

 パンクハーストさんのお話をお聞きして、「権利は勝ち取るもの」だと実感しました。永田町にずっといると、もはやセクハラにも感覚がマヒしてしまいがちなのですが、やはり怒っていかなければならないなあとも思います。

 たとえば永田町では、おばさんになると女性扱いされません。これは一般企業や官庁も同じかもしれませんけどね。おばさんの前では、オッサンたちが平気で下ネタをしゃべります。年齢を重ねても女性であることは変わらないし、不快に思う気持ちも変わらないのにと憤りを感じることもしばしばです。

 それに、男性議員と女性秘書は、事あるごとに愛人関係を疑われます。これには女性秘書のほうにも問題があることが多いです。デキてもいないのに「デキてる」と言われたら、普通は怒ると思うのですが、それを女性秘書自身が「愛人と疑われているうちは華よねー」なんて言うんです。自分を納得させるためなのか、間違った感覚を洗脳されているのかわかりませんが、そんなことを言わなくてもいいのにと思います。

 「女性秘書=愛人」という考え方は、本当にどうにかしてほしいと思う日々。自他ともに認める「年増」になった神澤ですが、それでも「愛人」だと思われて仕事に支障の出ることがあります。それを愚痴ると、逆に「よかったね」などと言うのが永田町の感覚なんです。要するに「まだ女性として見られてよかったね」という皮肉なんでしょう。

■永田町では「年増の女は不要」

 さらに、政党職員の採用では、履歴書の審査の段階で、一定年齢以上の女性ははじかれます。「年増はダメだ」と公然と言う国会議員が多いのです。秘書としての経験値の高い人の方が即戦力として役立つはずなのに、年齢や外見を重視するのです。男性職員の採用の場合は、経験値と能力を重視するのに……。

 そして、それも女性差別だと気づいていないのです。一部の議員は「女性を優遇して何が悪い」とまで言い放ちます。女性のみ「年齢重視、外見重視の、どこが優遇なんだ!?」と叫びたくなります。

 それに、秘書同士でも、「女性としての賞味期限が、あと少しですよ」なんてことを言う人がいます。それもセクハラだと思いますが、ハラスメントだと気づいていないんです。「それ、セクハラですよ」と指摘すると「え、なんで? まだまだきれいだって褒めたつもりなんだけど?」などと反論するレベルなんですよ。

 もちろん容姿について、あれこれ言われるのも、女性秘書に対してだけです。最近、芸能人に使うように「劣化している」なんて言葉が永田町でも聞こえてきますが、それも女性議員や女性秘書に対してしか使われていません。

■女性の活躍は期待できない?

 議員秘書は基本的に立場が不安定で、議員の落選や失職、辞職などにより、突然職を失うこともあります。そんな時、女性の元秘書だけは「旦那さんがいるんだから、少し休んだら?」などと周囲に言われることがあります。気遣っているつもりなのですが、同じ言葉を男性秘書にも言えますか? と思うんです。

 男性の元秘書に対しては「家族もいるから大変だよね、早く次の職場が見つかるといいね」などと声をかけます。これも立派なセクハラですが、やはり気づいていない。独身の女性秘書から言わせると「議会は、ただでさえパイが少ない職場。旦那さんがいる人は、働かないでほしいのが本音」なのだそうです。

 きっと男性も同じ論理で、競争率を減らすために、夫のいる女性秘書には、先のような声がけをしてしまうのでしょう。でも、男女平等の感覚があれば、決して出てこない発言です。

 こんな残念な永田町ですから、世界経済フォーラム(WEF)が調査している男女の平等格差を表す「ジェンダーギャップ指数」(2015年)が145カ国中で日本は101位と、先進国ではダントツに低い状況というのにも納得がいきます。

 安倍総理から「女性の活躍」という発言を聞くたびに、正直、「本気でやる気はないくせに……」と、ため息をついています。

映画『未来を花束にして』講演会で考えた、女性が活躍できない日本社会

 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 秘書仲間にはいろいろな人がいて、帰国子女も多いです。「人材のグローバリゼーションが進んでいる」と言いたいところですが、実際の永田町は、全く違います。古臭い男尊女卑が横行し、セクハラやパワハラが横行しているのです。その上、自分の言動がセクハラだとまったく気づいていない議員も多いんですよね。

 しかし、「紳士の国」とか「レディーファースト」のイメージが強く、女性の首相が2人も誕生しているイギリスでさえ、女性に男性と同等の参政権が与えられたのは、1928年のことだったそうです。イギリスも女性の地位が非常に低く、当時の女性の労働者の賃金は男性の2分の1から6分の1だった時代があったと知り、驚きました。

 このイギリスにおける女性参政権運動をテーマにした映画『未来を花束にして』が、2017年1月に日本でも公開されるそうで、公開に先駆け、日本でも講演会が行われました。

■イギリスの国会でも、いまだにセクハラは存在する

 この映画は、普通の女性たち(映画では“名もなき花”と表現されています)の日々の生活と参政権運動をリアルに描いており、運動を熱心にしていた女性たちが、決して「男勝り」ではなく、自分たちらしい服装と感性で働きながら子育てや家事をしていたごくごく普通の女性たちだったという部分が、とても印象に残ると思います。主演のメリル・ストリープは「すべての娘たちはこの歴史を知るべきであり、すべての息子たちはこの歴史を心に刻むべきである」というメッセージを出しています。

 ストリープ演じる主人公、エメリン・パンクハーストのひ孫にあたるヘレン・パンクハーストさんが来日し、「政治分野における女性の参画と活躍を推進する議員連盟」の特別講師として議員会館で講演をされ、イギリスでの女性の社会進出の取り組みや効果的な手法などをお話ししてくださいました。

 意外だったのは、イギリスの国会でも、いまだにセクハラは存在するということです。でも、国会がテレビ中継され、セクハラを受けた女性議員もその都度SNSにアップしたりするので、かなり減ってきたそうです。

 そういえば日本でも、2014年の東京都議会の塩村文夏議員が受けた「結婚しろ」「自分が子どもを産め」というセクハラヤジの映像がネットに出回り、批判であふれたことから、ヤジを飛ばした男性議員がかなりの社会的制裁を受けたことがありましたよね。

 でも、永田町では、こんな程度のセクハラなんて日常茶飯事です。日本の中心である永田町からセクハラがなくならない限り、女性が日本社会で活躍できないことは明白です。

■女性秘書も「愛人」と思われたい!?

 パンクハーストさんのお話をお聞きして、「権利は勝ち取るもの」だと実感しました。永田町にずっといると、もはやセクハラにも感覚がマヒしてしまいがちなのですが、やはり怒っていかなければならないなあとも思います。

 たとえば永田町では、おばさんになると女性扱いされません。これは一般企業や官庁も同じかもしれませんけどね。おばさんの前では、オッサンたちが平気で下ネタをしゃべります。年齢を重ねても女性であることは変わらないし、不快に思う気持ちも変わらないのにと憤りを感じることもしばしばです。

 それに、男性議員と女性秘書は、事あるごとに愛人関係を疑われます。これには女性秘書のほうにも問題があることが多いです。デキてもいないのに「デキてる」と言われたら、普通は怒ると思うのですが、それを女性秘書自身が「愛人と疑われているうちは華よねー」なんて言うんです。自分を納得させるためなのか、間違った感覚を洗脳されているのかわかりませんが、そんなことを言わなくてもいいのにと思います。

 「女性秘書=愛人」という考え方は、本当にどうにかしてほしいと思う日々。自他ともに認める「年増」になった神澤ですが、それでも「愛人」だと思われて仕事に支障の出ることがあります。それを愚痴ると、逆に「よかったね」などと言うのが永田町の感覚なんです。要するに「まだ女性として見られてよかったね」という皮肉なんでしょう。

■永田町では「年増の女は不要」

 さらに、政党職員の採用では、履歴書の審査の段階で、一定年齢以上の女性ははじかれます。「年増はダメだ」と公然と言う国会議員が多いのです。秘書としての経験値の高い人の方が即戦力として役立つはずなのに、年齢や外見を重視するのです。男性職員の採用の場合は、経験値と能力を重視するのに……。

 そして、それも女性差別だと気づいていないのです。一部の議員は「女性を優遇して何が悪い」とまで言い放ちます。女性のみ「年齢重視、外見重視の、どこが優遇なんだ!?」と叫びたくなります。

 それに、秘書同士でも、「女性としての賞味期限が、あと少しですよ」なんてことを言う人がいます。それもセクハラだと思いますが、ハラスメントだと気づいていないんです。「それ、セクハラですよ」と指摘すると「え、なんで? まだまだきれいだって褒めたつもりなんだけど?」などと反論するレベルなんですよ。

 もちろん容姿について、あれこれ言われるのも、女性秘書に対してだけです。最近、芸能人に使うように「劣化している」なんて言葉が永田町でも聞こえてきますが、それも女性議員や女性秘書に対してしか使われていません。

■女性の活躍は期待できない?

 議員秘書は基本的に立場が不安定で、議員の落選や失職、辞職などにより、突然職を失うこともあります。そんな時、女性の元秘書だけは「旦那さんがいるんだから、少し休んだら?」などと周囲に言われることがあります。気遣っているつもりなのですが、同じ言葉を男性秘書にも言えますか? と思うんです。

 男性の元秘書に対しては「家族もいるから大変だよね、早く次の職場が見つかるといいね」などと声をかけます。これも立派なセクハラですが、やはり気づいていない。独身の女性秘書から言わせると「議会は、ただでさえパイが少ない職場。旦那さんがいる人は、働かないでほしいのが本音」なのだそうです。

 きっと男性も同じ論理で、競争率を減らすために、夫のいる女性秘書には、先のような声がけをしてしまうのでしょう。でも、男女平等の感覚があれば、決して出てこない発言です。

 こんな残念な永田町ですから、世界経済フォーラム(WEF)が調査している男女の平等格差を表す「ジェンダーギャップ指数」(2015年)が145カ国中で日本は101位と、先進国ではダントツに低い状況というのにも納得がいきます。

 安倍総理から「女性の活躍」という発言を聞くたびに、正直、「本気でやる気はないくせに……」と、ため息をついています。

永田町で「愛人顔」に分類される女性とは? 男性議員と女性秘書のヘンな距離感

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議員事務所が“素人キャバクラ”に!?

 国会議員秘書歴20年の神澤志万と申します。セクハラ、パワハラ当たり前! 映画もテレビドラマもかなわないリアルな国会とその周辺について、現役議員秘書が暴露します。

■女性スタッフを「愛人顔の素人キャバ嬢」呼ばわり

 女性スタッフの顔を「愛人顔」と「そうでない顔」とにカテゴリー分けする……という、とんでもない風潮が永田町にはあります。議員たちも、「女性スタッフの起用は『愛人顔』ではない人を選ぶようにしている」と言っています。「愛人顔」かそうでないかの基準は謎ですが、おっさんたちには共通のイメージがあるようです。

 例えば、露出の激しい服装の女性スタッフがいる事務所には、しばしばマスコミの関係者や男性秘書仲間が休憩に集まります。おっさんたちは、陰で「素人キャバクラは楽しいな~。昼間からこんな会話していいんかい!」と自分でノリ突っ込みをしていたりします。その事務所の女性スタッフを、本人のいないところでは「愛人顔の素人キャバ嬢」なんて呼ぶのです。ほんと、失礼なおっさんたちです。

 また、男性議員と女性秘書との距離感が近すぎて、愛人関係をうわさされる事務所があれば、やっぱり、その女性秘書も「愛人顔」と呼ばれます。要するに「愛人顔」とは、顔の造形自体より女性の雰囲気を指すようです。色気があって魅力的だけれど、ちょっと態度がなれなれしいといったところでしょうか。いずれにしろ、永田町で女性を蔑視した表現が横行している証拠です。

■秘書の募集要件が「既婚・子ども有り」

 男性議員と女性秘書が他人に誤解を与えないように気を使うということにおいて、ひとつおもしろいエピソードがあります。

 ある独身の新人男性議員が、議員会館勤務の秘書の募集要件として、「女性・秘書経験者・既婚・子ども有り」と提示しました。自分の恋人や愛人と誤解されないようにとの配慮からです。後日、その条件に合う秘書を派閥のリーダー的事務所が斡旋しただけで、面接もなく採用が決定しました。いわゆる愛人顔ではなく、真面目な顔なので、誤解も生まないだろうと斡旋した側は思ったそうです。

 男性議員は、初登院の時に初めて、女性秘書と会ったそうです。その方は確かに結婚していて2児の母なのですが、外見が若々しくて、とても子持ちには見えなかったとか。だから、男性議員は、地元から上京する支援者たちに秘書を紹介する時必ず「この人は結婚していて、子どももいて、僕の秘書をしている○○さんです」と前置きをつけていました。その影響からか、秘書が選挙中に地元の集会で議員の代理として挨拶をする際、必ずと言っていいほど「人妻の○○秘書」と紹介されていたそうです。

 秘書仲間同士のランチの時に、それを聞いて噴き出してしまいました。その女性秘書は政策秘書としてとても優秀なのですが、もし面接をしていたら、「(若く見えて)誤解を生むから」と採用されていなかったかもしれません。能力よりも「ほかの採用条件」を優先してしまうのが永田町なのです。

■秘書の異性関係に対しては厳しい

 国会議員も広い意味では人気商売ですから、「イメージ」をとても大事にします。不倫なんて、もってのほかなのです。だから、男性議員と女性秘書は、横に並んで歩かないようにするとか、2人だけで食事をしないとか、打ち合わせもなるべくほかの人が同席の場で、または公共の場でなど、暗黙の細かいルールがあります。

 もちろん秘書は服装も露出を控え、スーツなどのカッチリしたものにしたり、言葉遣いにも気を使います。上司と部下を超えた親密さがあると誤解されたらいけないので、名前の呼び方も気をつけます。

 会議後に雑談をしていた時のこと。ある議員が、気が緩んでしまったのか、自分の秘書をファーストネームで呼んだことがありました。その場の空気が凍ったことは言うまでもありません。どこで誰が見ているかわかりませんし、絶対に、「そういう関係」は隠せるものではありません。

 また、永田町では、暗黙の了解として、秘書の採用条件に「男女関係にきれいなこと」という条件があります。疑惑程度でもアウトです。

 過去に飲み会で、秘書同士、酔った勢いでキスをしてしまい、そのうわさがもとでクビになった秘書もいますし、ただ単に方向が同じだからタクシーで一緒に帰っただけなのに、「持ち帰りした」と疑いをかけられ、やっぱりクビになった秘書もいます。

 国会議員の中には「浮気は男の甲斐性」みたいなことを言う男性もまだまだ多いのですが、秘書に対しては厳しいという、矛盾だらけの永田町です。

永田町で「愛人顔」に分類される女性とは? 男性議員と女性秘書のヘンな距離感

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議員事務所が“素人キャバクラ”に!?

 国会議員秘書歴20年の神澤志万と申します。セクハラ、パワハラ当たり前! 映画もテレビドラマもかなわないリアルな国会とその周辺について、現役議員秘書が暴露します。

■女性スタッフを「愛人顔の素人キャバ嬢」呼ばわり

 女性スタッフの顔を「愛人顔」と「そうでない顔」とにカテゴリー分けする……という、とんでもない風潮が永田町にはあります。議員たちも、「女性スタッフの起用は『愛人顔』ではない人を選ぶようにしている」と言っています。「愛人顔」かそうでないかの基準は謎ですが、おっさんたちには共通のイメージがあるようです。

 例えば、露出の激しい服装の女性スタッフがいる事務所には、しばしばマスコミの関係者や男性秘書仲間が休憩に集まります。おっさんたちは、陰で「素人キャバクラは楽しいな~。昼間からこんな会話していいんかい!」と自分でノリ突っ込みをしていたりします。その事務所の女性スタッフを、本人のいないところでは「愛人顔の素人キャバ嬢」なんて呼ぶのです。ほんと、失礼なおっさんたちです。

 また、男性議員と女性秘書との距離感が近すぎて、愛人関係をうわさされる事務所があれば、やっぱり、その女性秘書も「愛人顔」と呼ばれます。要するに「愛人顔」とは、顔の造形自体より女性の雰囲気を指すようです。色気があって魅力的だけれど、ちょっと態度がなれなれしいといったところでしょうか。いずれにしろ、永田町で女性を蔑視した表現が横行している証拠です。

■秘書の募集要件が「既婚・子ども有り」

 男性議員と女性秘書が他人に誤解を与えないように気を使うということにおいて、ひとつおもしろいエピソードがあります。

 ある独身の新人男性議員が、議員会館勤務の秘書の募集要件として、「女性・秘書経験者・既婚・子ども有り」と提示しました。自分の恋人や愛人と誤解されないようにとの配慮からです。後日、その条件に合う秘書を派閥のリーダー的事務所が斡旋しただけで、面接もなく採用が決定しました。いわゆる愛人顔ではなく、真面目な顔なので、誤解も生まないだろうと斡旋した側は思ったそうです。

 男性議員は、初登院の時に初めて、女性秘書と会ったそうです。その方は確かに結婚していて2児の母なのですが、外見が若々しくて、とても子持ちには見えなかったとか。だから、男性議員は、地元から上京する支援者たちに秘書を紹介する時必ず「この人は結婚していて、子どももいて、僕の秘書をしている○○さんです」と前置きをつけていました。その影響からか、秘書が選挙中に地元の集会で議員の代理として挨拶をする際、必ずと言っていいほど「人妻の○○秘書」と紹介されていたそうです。

 秘書仲間同士のランチの時に、それを聞いて噴き出してしまいました。その女性秘書は政策秘書としてとても優秀なのですが、もし面接をしていたら、「(若く見えて)誤解を生むから」と採用されていなかったかもしれません。能力よりも「ほかの採用条件」を優先してしまうのが永田町なのです。

■秘書の異性関係に対しては厳しい

 国会議員も広い意味では人気商売ですから、「イメージ」をとても大事にします。不倫なんて、もってのほかなのです。だから、男性議員と女性秘書は、横に並んで歩かないようにするとか、2人だけで食事をしないとか、打ち合わせもなるべくほかの人が同席の場で、または公共の場でなど、暗黙の細かいルールがあります。

 もちろん秘書は服装も露出を控え、スーツなどのカッチリしたものにしたり、言葉遣いにも気を使います。上司と部下を超えた親密さがあると誤解されたらいけないので、名前の呼び方も気をつけます。

 会議後に雑談をしていた時のこと。ある議員が、気が緩んでしまったのか、自分の秘書をファーストネームで呼んだことがありました。その場の空気が凍ったことは言うまでもありません。どこで誰が見ているかわかりませんし、絶対に、「そういう関係」は隠せるものではありません。

 また、永田町では、暗黙の了解として、秘書の採用条件に「男女関係にきれいなこと」という条件があります。疑惑程度でもアウトです。

 過去に飲み会で、秘書同士、酔った勢いでキスをしてしまい、そのうわさがもとでクビになった秘書もいますし、ただ単に方向が同じだからタクシーで一緒に帰っただけなのに、「持ち帰りした」と疑いをかけられ、やっぱりクビになった秘書もいます。

 国会議員の中には「浮気は男の甲斐性」みたいなことを言う男性もまだまだ多いのですが、秘書に対しては厳しいという、矛盾だらけの永田町です。

女性秘書はお給仕係!? 永田町に根強い「男尊女卑」思想

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Photo by Norio NAKAYAMA from Flickr

 国会議員秘書歴20年の神澤志万と申します。セクハラ、パワハラ当たり前! 映画もテレビドラマもかなわないリアルな国会とその周辺について、現役議員秘書が暴露します。

■激高すると「女のくせに」と罵る議員や男性秘書

 民進党の山尾志桜里政調会長が予算委員会で安倍総理に対して「男尊女卑政権」という言葉を使用して問題になりました。「男尊女卑なんて、久々に聞いたわ」と思われた方も多いと思います。

 でも、永田町は、日常的に「男尊女卑」な感じです。そもそも事務所のスタッフについても、「男性=秘書」「女性=事務員」としか見られていません。実際には女性の秘書もいるのに、女性を一人前の秘書や議員として見ない傾向は、特に自民党は強いですね。

 いまだに激高すると「女のくせに」と罵る議員や男性秘書が、たーーーくさんいます。神澤がそう言われた回数は、優に1,000回を超えると思いますよ。そういう意味では、安倍総理の「1億総活躍」は、まずはお膝元の自民党内で実践してほしいですね。

 なので、山尾さんの発言の真意も理解できなくはないのですが、「衆議院予算委員会」というNHKで中継されていた場での「単なるパフォーマンス」との見方も強いです。だって委員会は議論の場なんですから。

■女性秘書の仕事は、議員の席に灰皿を用意することから始まる

 だいぶ慣れましたが、神澤も秘書になりたての頃は驚くことばかりでした。20年前の自民党の会議室は喫煙が当然で、たばこの煙で白い霧がかかってるようでした。女性秘書の仕事は、議員の席ひとつひとつに灰皿を用意することから始まるという感じで、女性秘書は、議員たちからすると「清掃員」か飲み物の「お給仕係」にしか見られてませんでした。男性=秘書、女性=事務員としか考えられていないんですね。「オンナはオトコの指示に従っておけ」ということです。

 その頃の政党の中で、女性も人間として扱われていた唯一の政党は、民主党だったと思います。民主党の女性秘書の中には、元総理の政策秘書として活躍した方もいました。当時の自民党では、女性の政策秘書なんて考えられなかった時代です。市販されている『国会議員要覧』という国会議員の名簿には、公設秘書の名も掲載されていますが、そのリストにも民主党議員事務所には女性らしき名前が多くありました。

■女を馬鹿にすると後が怖い

 でも、いくら民主党が女性の存在意義を認めていても、「女なんて」という世間の風潮はなかなか消えません。

 「はい、○○事務所です」「秘書に代わって」「私も秘書ですが?」「じゃあ、男の秘書に代わってよ」なんてやりとりは、自民や民進に限ったことではないのです。「女性は事務員」で「単なる電話番」のイメージが強いのです。

 議員への陳情で来訪される人たちも、同じです。女性の政策秘書には見向きもせず、スーツを着ている男子学生のインターンに対して懸命に内容を説明し、お願いする姿もよく見られます。「女性」というだけで、陳情団の皆さんの視界に入らないようなんですね。

 永田町でいう「インターン」とは、短期間だけ「社会勉強」に来る大学生で、バイト代ももらえません。政治どころかあいさつの仕方もわからない子たちなのに、「スーツを着ている」というだけで、ペコペコする大人がいるんです。

 もっともオンナをバカにすると、後が怖いですよ(笑)。自身がスルーされた政策秘書さんは、陳情もスルーしちゃいますからね。政策秘書が女性と知って、廊下で慌てて必死に謝る陳情団を何度か見かけました。「男尊女卑の実践者」が、きちんと対応してもらえるはずはないのです。

「イクメン議員」の不倫辞職が自民党的にも大迷惑だった件【現役議員秘書がぶっちゃける国会ウラ情報】

<p> セクハラ、パワハラ当たり前! 映画もテレビドラマもかなわないリアルな国会とその周辺について、現役議員秘書が暴露します。<br />  読者の皆様、はじめまして。国会議員秘書歴20年の神澤志万と申します。</p>