今夜最終回!『コウノドリ』が描いた「新型出生前診断」の苦悩と“決断”の行方は……?

 周産期母子医療センター(出産の前後を通し、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や妊婦の喜びと悲しみ、生命の誕生の素晴らしさや難しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。

 残すところあと2回となり、クライマックスを迎えた第10話は11.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、やや下落。しかし最終回に向かって細部までかなり濃い、見応えのある内容。振り返ります。

 

■新型出生前診断とは

 

 高山透子(初音映莉子)とその夫・光弘(石田卓也)は、親に言われてさほど考えず受けた新型出生前診断(NIPT)により、生まれてくる子に21トリソミー(いわゆるダウン症候群)の陽性反応が出ていることを知る。しかし、その診断を受けたクリニックに電話で問い合わせても、郵送で結果を送りつけた以上の説明は行っていないようで、親身になってくれない。慌てた2人は、ペルソナの周産期センターにやってくる。

 産科医の鴻鳥(綾野剛)は、確定のためには羊水検査が必要であることだけでなく、その結果を踏まえ、どう受け止めていくか考えてほしいと伝える。

 新型出生前診断とは、21トリソミーを含む3つの染色体の疾患を調べることができる検査で、採血だけで手軽なため広まってきているが、結果のみを突きつけられて親が不安になったり、その後ちゃんとした診断を受けず安易に中絶を希望するケースも増えるなど、賛否あるようだ。ちゃんとケアしているところもあるのだろうが、わずかな手間でそこそこの金額を取れるので、診断を行う側にうま味があるのだろう。

「きちんとした遺伝カウンセリングを行わず、出生前診断を行う医療機関があるのは問題」「出た結果だけを伝えて、あとの判断を患者の丸投げするなんて」と、産科医の四宮(星野源)もかなり否定的だ。

 医師の間でも意見は分かれるようで「たった10ccの血を採って検査すればいいって気楽さが、そういう親(すぐ中絶希望)を生んでる」という反対派の急先鋒・四宮に対し、「罪悪感・嫌悪感を抱く人が多いですけど、親になる前に我が子の情報を集めるのは悪いことなんでしょうか」「もっと生まれてくる我が子の情報を知る権利について理解してほしい」と産科医・倉崎(松本若菜)は疑問を呈する。

 四宮は、その権利は当然だとしながらも「だが、その情報を知った後でどうするかを決めずに、出生前診断を行うのは無責任だ」だと言う。

 この四宮論と倉崎論が、世の新型出生前診断に対する反対派と賛成派の意見なのだろう。ソーシャルワーカーの向井(江口のりこ)も「赤ちゃんが置いてけぼりにならないように、夫婦できちんと話し合ってほしい」と安易な決断に慎重な意見を述べる。

 鴻鳥は、検査結果を受けての中絶についても「ご家庭の事情もあると思います、お2人で現実に向き合って決めていくことになります」とし、「僕たちはどんな結論になっても高山さんの決断を支えていきます、これからのこと一緒に考えていきましょう」と不安がる夫妻に向き合おうとする。

 

■もう一組も21トリソミーが発覚

 

 そして今回もう一組、辻明代(りょう)、夫・信英(近藤公園)夫妻も、ペルソナでの羊水検査でお腹の子どもに21トリソミーが発覚。こちらは悩みつつも中絶を希望している。

 夫婦で小さな稼業(お弁当屋)を営んでいたり、手のかかる小さい長女がいたりして、疾患を持つ子どもを抱えきれないというのがその理由だ。

「疾患のあるお子さんを育てる自信が最初からあるご家族なんていないと思います」「人がそれぞれ違うように、ダウン症のあるお子さんも一人一人に個性があります。育ててらっしゃるご家族にも、それぞれの思いがあるでしょう」と、中絶だけでない道も示す新生児科医・今橋(大森南朋)。

 しかし、「私たちがいなくなったあと、あいり(長女)に全部任せるなんてできないよ」と苦渋の決断をする。

 おそらく辻夫妻が上げたこれらのいくつかの理由が、中絶を選んだ人々に多くある理由なのだろう。

 

■ここだけドキュメント

 

 そして妊婦ではないが、たまたま長男の風邪の診察でペルソナに来ていた木村弓枝(奥山佳恵)が、次男とともに登場。同じくダウン症候群の次男を育てている弓枝だが、いろいろな人やデイケアなどの力を借りて仕事復帰していると明るく語る。

 実は奥山自身が同じ症状を持つ子どもの母親である。その奥山が「(新型出生前診断では一部の染色体疾患だけしかわからないのに)なんでこの子たちだけが弾かれるの?」「このまま生まれる前に検査するのが当たり前になって、どんどんダウン症のある子いなくなっちゃうんじゃないかなって……」と語る様子は、リアルな気持ちがこもっており、このキャスティング自体、実生活を踏まえてのものだろうから、セリフ(言葉)にも本人の気持ちが強く反映されているのだろう。こういうある種「ドキュメント」のようなドラマの作り方には賛否あるだろうが、それだけリアリティを大事にしているのだろう。

 

■苦しむ母親たち

 

 高山透子の羊水検査の結果は、21トリソミー・ダウン症候群。どうしていいか、まだ頭がついていかない透子に、夫も、双方の親も、子どもを諦めるように勧める。みな、苦労させたくないからという意見だ。

 しかし、なかなか子どもができず不妊治療を受けていた透子は割り切れない。果たして自分に育てられるのか? という葛藤。

 そんな中、知的な発達の違いや心臓病、呼吸器疾患の可能性、生まれてからも数回手術が必要な可能性があることなどと共に、「ただ、ダウン症のある子どもたち自身は、悩まずに幸福を感じて生きていけることも多いというデータがあります」と伝えられた透子は、うれしそうに見えた。

「……そうなんですか?」と何気ない言葉の中に、希望が芽生える瞬間が見える、いい表情。やはり、産みたいという気持ちが滲み出ていた。だからこそ悩みが深い。

 一方の辻明代。

 中期の人工中絶は、身体だけでなく心にも負担がかかるという鴻鳥の言葉など、周囲の心配に対し「私のことはいいんです」「大丈夫です」「我慢できます」と、自らを罰するかのように、苦しさを受け入れようとするのが印象的だった。

 布団の中で「お腹、蹴ったの……」と夫に報告する姿からも、決して望んで中絶するわけではないからこその苦しさが溢れていた。

 次の日、誘発剤を使っての苦しそうな処置の最中、「最後、この子、抱いてもいいですか」と頼む明代。その気持ちを案じ「わかりました」と笑顔で答える鴻鳥。

 無言で何も言わない(言えない)夫・信英の顔が、複雑な気持ちをよく表していた。

 その日の夜、抱っこした時の感想を「すごく小さくて暖かかったと」と涙ながらに語る明代の体を、無言でさすり続ける小松(吉田羊)。7話で子宮腺筋症のため子宮を摘出してる小松はどんな気持ちだったのか。

「寄り添うの、大切なあたしら(助産師)の仕事だよ」と、友人でもある同期の助産師・武田(須藤理彩)が語っていたが、それをひたむきに実践しているようにも見えた。

 

■決断

 

 産みたい気持ちが日増しに大きくなってきている高山透子。

「父さんや母さんがこう言ったからじゃなくて、私たち夫婦で話し合って決めたいの。どんな結論になってもいいから2人で一緒に考えようよ」と夫・光弘に訴える。

 中絶の意思を伝えに来た際も、エコーを見たいと言い出し、光弘は困惑する。

「今回は諦めよう、次は……っていうけど、それはこの子には関係ないよ」

 検査や診察が進むたびに、夫婦間での認識の差が浮き彫りになってきて、透子の気持ちに改めて気付かされた光弘は「ごめんな、最初に出生前診断を受けた時、俺たちには関係ないって思っていた。だけど子どもを持つって決めた時から、本当は関係ある話だったんだよな」「2人で出した結論だから、お前だけが背負う問題じゃないから」と、透子の苦しみに理解を示すようになる。

 そして中絶手術の日、直前で透子は「産みたい……」との気持ちが溢れ出し、膝をつき泣き崩れる。

「でも、怖い。自信がない……でも……」どうしようもなくなった透子に、実母が声をかける。

「大丈夫。あんたがへばっても母さんが一緒に育てる」

 それを聞き、安心したように、さらに涙を流す透子。おそらく夫からその言葉を聞きたかったのだろうが、それを見て光弘は、初めて透子の産みたいという気持ちの大きさを見誤っていたことに気づく。

 透子の気持ちを理解したつもりが、まだ理解できていなかったという展開。

「昔だったら救えなかった命が、医学の進歩で救えるようになった。それは喜んでいいことかなと思う。だけど、命が救えるようになったからこそ、苦悩する家族だっている。命を救うって、どういうことなのかな」

 これは今橋が新生児科医・白川(坂口健太郎)に語っていた言葉だが、今回のテーマの難しさを表していると思う。

 まだ透子が(夫主導で)中絶で話を進めていた時、やはり辻と同じように最後に子どもを抱っこしてあげたいと言っていた。

 その感情が理解できない、と研修医の赤西(宮沢氷魚)は言う。今後、出生前診断がメジャーになり、中絶が当たり前になった時、医師としてどう向き合えばいいのかわからないと。この時、赤西に向かって(というか全員に向かって)鴻鳥が言っていた言葉を、少し長いが書き出してみる。

「その質問の答えは僕にはわからない。命は尊い、赤ちゃんが生まれてくることは奇跡だ。平等であるはずの命を選別してはいけない、その通りだ。けど、僕はずっと迷ってる。命を選別、その言葉にみんなが囚われてしまっていて、お母さん、お父さん、家族の事情に目が向けられていない。それぞれの事情の上に命は生まれてくる。育てていくのは家族なんだ。出生前診断を受けた結果、中絶を選択する家族もある。心が重くなる。いつまでも慣れることはない。けど悩みに悩んだ上で僕たちに助けを求めてる。その手を払いのけることはできない。中絶を決めたお母さんが赤ちゃんを最後に抱きたいと願う。確かに矛盾してるかもしれない。だけどその葛藤に僕らが寄り添わないで、誰が寄り添う。検査を受けた人、受けなかった人、赤ちゃんを産んだ人、産まなかった人、どの選択も間違っていない。いや、間違ってなかったと思えるように、産科医として家族と一緒に命と向き合っていく。それが僕に、僕たちにできることなんだと、そう信じて僕はここにいる」

 もう、ぐうの音も出ないほどの「正解」を語る鴻鳥。舞台なら長台詞で拍手が起こるシーンだ。産科医として日々「中絶」という難題と格闘しているのがよくわかる。

 

■白川問題

 

 自分の力不足を痛感し、ペルソナを出て小児循環器を学び直したいと決断した白川。

 その面接で「どうして小児循環器科医として学び直したいのか」と問われた白川は、「新生児科に尊敬する先生がいます。その先生のような新生児科になることが恩返しではない。別の知識、技術を身につけて一つでも多くの命を救えるようになりたいんです。そのためなら研修医からやり直したってかまいません」と語る。

 その際「尊敬する先生って今橋先生でしょ? ずいぶん大きな目標だ」と言われ、思わず嬉しそうに微笑む白川。

 前日「NICUを卒業することがゴールじゃない。そのあとに続く赤ちゃんとご家族の人生に寄り添いたい。それが俺たちの仕事の目標だって、今橋先生が教えてくれました」と今橋に直接語っていた。

 自身過剰で危なっかしい白川はすっかりなりを潜めたようで、それはそれで少し寂しいが、今橋という大きなお手本を持ったことで以前のように彼が自己顕示欲にとらわれ、道を踏み外すようなことは無さそうだ。

 

■父の死

 

 父親の今後の話をするために、四宮の妹・夏実(相楽樹)が能登からやってきた。ステージ4の肺がんである四宮の父から渡すように頼まれたという「ヘソの緒」を手渡す。

 それを聞いた小松は「昔は女の子はお守りお嫁に行く時に渡されたり、戦争に行く時に持たされたりしたんだよね。あとは亡くなった時に、棺桶に入れてもらうと天国で迷子にならずお母さんに会えるとかね。お父さんの気持ちだね、しのりん(四宮)を守ってくれますようにって」。

 死を覚悟した父親から息子への、もの言わぬ「土産」。四宮は特に言葉を語ることはなかったが、何度か容器に入ったそれを眺めながら物思いにふけっていた。容器はもちろん輪島塗だ。

 そんなある日の勤務中、妹からの電話で父の死を知る四宮。しかし直後に緊急搬送の手術が入る。感情を殺して手術を終えた後、三たび故郷へと立つ四宮。

 

■今週の四宮と鴻鳥

 

 四宮が訃報のため再々度帰郷することになり「迷惑かけるな。カルテは……」と言いかけた瞬間に「大丈夫だ」と、すぐ送り出そうとする鴻鳥と「そうか」と受ける四宮。

 励まそうとしたのか「四宮……」と言いかけた瞬間、今度は負けぬ速さで「大丈夫だ」と答える四宮。武道の達人のようなやり取り。

「ペルソナのこと、頼むぞ」と伝える四宮が、いかに鴻鳥を信頼しているかがわかる。

 辻夫妻の中絶手術を終えたあと、一人佇む鴻鳥に、そっと暖かい飲み物を供する四宮。

 カンファレンスにて、中絶に対する苦悩や思いを熱く語ったあと、多くのスタッフの前で我に返り「すみません関係ない話をして」と謝る鴻鳥に、「関係なくない。必要な話だろ」とすかさずフォローを入れる四宮。

 危機が多ければ多いほどお互いを理解し、支え合う姿が目立つ。

 次回、最終回。高山夫妻の出産や、今回も登場していた小松の友達であり同期の助産師・武田を襲う危機など、最後まで詰まった内容。能登へむかった四宮や、その四宮の父親の訃報で曖昧になってしまった、小松が鴻鳥に伝えようとしていた内容も気にかかる。心して待ちたい。
(文=柿田太郎)

ちょっと仲よすぎ!? 綾野剛と星野源の“蜜月関係”が尊い『コウノドリ』に波乱はあるか

 周産期母子医療センター(出産の前後を通し、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や妊婦の喜びと悲しみ、生命の誕生の素晴らしさや難しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。いつも以上にさまざまな人間模様が入り混じった第9話は視聴率12.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、今回も見事に安定。振り返ります。

 

■3度目の流産

 

 今回の妊婦は、過去2回の流産を経験している篠原沙月(野原麻帆)。3回目の妊娠をしたものの、今回も検査で子どもの心拍を確認できず、担当の産科医・鴻鳥(綾野剛)から流産を告げられる。

 過去の経験を引きずっている沙月は、どこかで覚悟もしていたのだろう「……はい」と、力なく、それでいて自分を納得させるようにうなずく。うれしいはずの妊娠がわかるたび、流産に怯えながら過ごす毎日は想像できないほど不安だろう。

「3回も流産するのって、私のせいですか?」と自らを責めるように言う沙月に、鴻鳥は、初期の流産はほとんどが母親が原因でないこと、さまざまな偶然が重なり起きたのだという見解を伝える。

 助産師の小松(吉田羊)も、自分のせいにしてしまう母親が多いが、そんなことはないと声をかけるが、3回目の流産ということもあって、沙月は不育症の検査を希望する。

 不育症とは、妊娠はするが流産や死産を繰り返し、結果的に子どもに巡り会えない状態。しかし、検査を受けても原因がわからないことが多いので、余計にストレスを抱えてしまう患者が多いという。

 カンファレンスにて、意見交換を行う医師たち。

 産科医・四宮(星野源)は、流産が珍しいものではないと知ってもらうのが重要だと訴える。実際、妊娠女性の15%は流産になってしまうらしく、さらに沙月の年齢の35才だと、それは25%にもなるという。

 確かに、こういう前知識があることで沙月のような女性が過剰に自分を追い込み、精神的に苦しんでしまうことの予防にはなるのかもしれない。

 しかし小松(吉田羊)は「確率の話をしたところで、お母さんの悲しみは埋まらないよ」と反論する。

 人一倍患者に寄り添う小松は、数字やデータとはまた違う、人と人との関わりにおいての意見が多い。翌日の手術前に「またさよならしなきゃいけないんですね……」とお腹をさする沙月を見て、手術中にそっと沙月の手を握る小松。

 後日、不妊治療外来の岸田医師(高橋洋)に、「ストレスをためないことが一番の薬」だと言われたのも辛そうだ。

 もちろん岸田の言っていることは正論なのだろうが、沙月が「別にためたくてためてるわけじゃないんですけどね」と小松に漏らしたように、一歩間違うと「ストレスをためた」沙月を責めているようにも受け取れてしまうのかもしれない。

 沙月は3年前に初の妊娠が発覚した時の母子手帳も捨てられずにいる。当時、眩しかったその「思い出」が、今は重く沙月にのしかかる。しかし、うれしかったその手帳を捨てることができず、忘れられないと。

 小松は、その沙月の気持ちを肯定する。

「無理に忘れる必要ないよ、だって今まで宿った子、みんな篠原さんの子なんだから」

 沙月に響いたようだが、闇の中を一人歩くような沙月を完全に照らすことはできないようだ。

 

■夫も悩んでいる

 

 精神的にかなりかなり参っている沙月をなんとか励まそうと、夫の修一(高橋光臣)は「俺はさ、子どもがいない2人だけの人生もいいと思ってる。2人なら好きなことできるし……」と語りだすも、すぐさま「全然うれしくないよ、慰めになってない」と沙月に遮られ、どう接していいのかすらわからなくなってしまう。

 修一は悩んで鴻鳥を訪ねる。

「苦しんでる妻に何もしてやれないんです」

 そして「自分の役目は今までのことを忘れさせてあげることなんでしょうけど」と語る修一に「忘れなくていい、忘れる必要はないと思います」と語る鴻鳥。

「僕は、出産は奇跡だと思っています。こんなに医学が進歩したのに、いま篠原さんご夫婦が悩んでる問題は、未だに原因がはっきりしていません。医者の僕たちでさえ、できることが少ない……。でも修一さんが『奥さんに寄り添って笑顔にしてあげたい』『近くでなんとかしてあげたい』って必死に頑張ってる姿は、奥さんにとって一番の治療になるんだと思います。そしてその思いは、きっと明日につながります」

 鴻鳥の言葉に後押しされたのか、沙月の好きなBABYの曲をピアノで練習しだす修一。それを見た沙月は、どんな医師のアドバイスや検査よりも励まされたようで、自分の味方がすぐ近くにいたことを再確認し、心が軽くなって涙を流す。

 後日、不育症の検査結果は異常なし。つまり原因はわからない。戸惑う篠原夫妻に、鴻鳥は言う。

「不育症の原因がわかって治療した女性が出産できる確率は85%です。原因がわからなくて治療した女性が出産できる確率は85%です」

「つまり、篠原さんは次の赤ちゃんを妊娠して出産に臨めるということがわかったんです。……でも不安ですよね、怖いですよね……」

 これを聞いた沙月は泣きながら気持ちを吐き出す。

「妊娠してないってことがわかると、少しホッとする自分がいて、一瞬でもお腹の中に赤ちゃんが宿ることが怖くて、こんなんじゃ母親になる資格ないですよね」

 子ども好きな夫に、子どもを産んであげられないのが一番つらいと謝る。修一も何もしてやれないことを詫びる。どちらも、もちろん悪くないのだが、お互いフタをしていた気持ちをさらけ出せたようだ。

「次はきっと大丈夫! 本当につらい経験をしたふたりだからこそ大丈夫。だって篠原さんには、こんな近くに世界一の味方がいるじゃないですか?」

 安易な励ましにも聞こえるが、しかし、底なしの不安に溺れる沙月のような症状の女性にとって、どんな専門家より、味方がそばにいることの心強さは勝るものなのだろう。

 ナレーションで鴻鳥が言う。

「人は必ず、誰かがそばにいて、誰かのそばにいる」

 結局、沙月はめでたく再度妊娠をし、子どもの心拍も確認、ここからまだわからないながらも、明るい未来につなげる結末を見せてくれた。

 

■下屋の成長

 

 産科、新生児科と研修をしてきた新人研修医・赤西(宮沢氷魚)は今週から救命科で研修を受けるようで、下屋(松岡茉優)と再度仕事をすることに。

 産科医師としてステップアップするために救命科に飛び込んだ下屋だが(第5話)、今でも加瀬(平山祐介)にどやしつけられている毎日。ついこの前まで産科医として指導してきた後輩・赤西の前でどやされ、使いものになっていない姿をさらすのはどれだけきついだろうか。

 そんなある日、妊娠高血圧症候群で倒れた妊婦が搬送されてくる。妊婦ということで、やや勝手の違いに戸惑う加瀬や救命部長の仙道(古舘寛治)を前に、下屋は緊急帝王切開を提案する。

「確かに血圧を下げることが母体には必要ですが、そうすると胎盤の血流も減少して赤ちゃんが低酸素になるリスクがあります」

 この時の下屋の気迫に押される加瀬や仙道。鴻鳥も四宮も来られない状況の中、元・産科、現・救命の落ちこぼれチームが緊急カイザーに挑む。この時の赤西が下屋を見る目が「尊敬」と「好意」が入り混じって、実によかった。

「加瀬先生、私はまだ救命医として使いものにならないこと、よくわかってます。でも赤ちゃんのことは任せてください! だから母体のことはよろしくお願いします」

 下屋の思いを「わかってるよ」と笑いながら受け止める加瀬。

 白川も小松も、いつもきつく当たってくる救命部長も見守る中、下屋の手術を行う。さながら「下屋の逆襲」だ。

 無事手術の終わった後、心配して駆けつけた鴻鳥に仙道が笑顔で言う。

「下屋先生がいてくれて、今回は助かった。言っとくけど『今回は』だからね」

仙道「彼女は救命医になれるかな?」

鴻鳥「どうですかね、ただ下屋は打たれ強くて図々しいです。それと、よく食べます(笑)」

 実際、「手術後なのによく食えますね?」と赤西に呆れられながら弁当を幸せそうに食べるシーンが、今回あった。

「ははは、じゃ、ここで使える駒になるかもな」と笑って立ち去る仙道に、きっちり頭を下げる鴻鳥。元・上司として、これほどうれしいことはないだろう。

 しかし、さんざん産科にきついことを言った仙道だが、急に優しくされると必要以上にキュンとしてしまう。DVの男がたまに優しさを見せる手口に通じるものがある。

 

■能登、ふたたび

 

 ステージ4の肺がんである四宮の父・晃志郎(塩見三省)が再度倒れたため、再び故郷の能登へ飛んだ四宮。ベッドで苦しそうにしている自分を心配する四宮(息子)に対し「俺は大丈夫だ。お前こそ自分の患者を放り投げて来たんだろ? すぐに帰れ」と強がる晃志郎。

 しかも、担当している妊婦の手術をすると言いだす始末。今の状態でできるわけがないと妹の夏実(相楽樹)が止めるが「できる! できるに決まってる!」と頑なに譲らない。

 しかも、そのタイミングで妊婦に早期胎盤剥離の疑いが発覚、緊急帝王切開手術の必要性が。あくまで自ら手術をしようとする父親の本気の姿を見て、四宮は決断する。

「わかった、俺がやる」「医院長に許可とってくれ」

 病をおしてまで現場に立とうとし、その町の出産を守ろうとする、父であり先輩医師である晃志郎の姿が、かつて患者を亡くして(前シーズン・9話)以来、塞ぎ込みがちだった四宮の心を溶かしていくようだ。

 だが、妊婦の夫は、急に現れた「東京の医師(四宮)」を受け入れられない。そこへ、夏実に支えられて現れた晃志郎が言う。

「うちの息子、信じてやってください。東京で立派に産婦人科の医者やってます、だから大丈夫です」

 表情は特に変わりはしなかったし、何も言わなかったが、四宮は、とてもうれしかったはずだ。

「春樹、頼むな」

『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』(1989)でショーン・コネリー演じる父親が、宝に目が眩んだ息子の目をさますために、ずっと「ジュニア」と呼んでいたのに「インディアナ」と呼ぶシーンを思い出した。

 四宮が勤めるペルソナに比べ、はるかに設備の足りない病院で行う手術。助手も専門の医師ではなく、慣れない整形外科医の年配の医師が担当。しかし四宮は、いつになく熱く燃えていたように見える。

 無事手術が終わったあと、晃志郎の病室で四宮が素直に言う。

四宮「父さん、よくここで医者続けてきたな」

晃志郎「ここが、好きだからな」

 この時、四宮は、自分が現場を離れ、大学で研究に専念すべきかどうかというということに答えを出したのではないか。

 帰ろうとする四宮に「春樹、まだまだ、お前には負けんぞ」。

 父の一言一句が四宮に響く。

「何言ってんだよ」、そう言い返すのが精一杯の四宮。

「ありがとな」と震える手を差し出し、握手をする親子。こんな時間が持てる親子は幸せだろう。

 

■白川へ送る言葉

 

 短いシーンだが、小児循環器科での研修のため、研修先が決まり次第出ていくことが決まっている白川(坂口健太郎)に、上司の今橋(大森南朋)が語った言葉が良かった。

 わがままを謝る白川に、「正直、羨ましいと思ってる。僕はずっとここ(ペルソナ)から出たことがないから、ここを出て勉強したいと思ったことはあるけど、白川先生みたいに行動に移せなかった。だから白川先生の考えはすごい勇気だと思っている。その勇気がきっと成長させてくれるはずです。……僕もわがまま言っていいかな? またここに戻ってきてほしい、その時は今みたいな先輩と後輩の関係じゃなく、同じ立場で小さな命を一緒に救いたい」

 この言葉で、自らの失敗をきっかけに出ていく後ろめたさを持つ白川の心がどれだけ軽くなっただろうか。原作ではもっとクセの強い今橋だが、今回は患者に寄り添いすぎる小松をさりげなく心配し飯に誘うなど、絵に描いたような「頼れる上司」だ。今回、特にそれが目立った回だった。

 

■今週の四宮と鴻鳥

 

 四宮は忙しい中、帰郷するその罪悪感からか、引き継ぎ事項を事細かく伝えようとするが、鴻鳥は、「僕は四宮ほど、患者のカルテを丁寧に書いてる産科医を他に知らない。だから心配するな」と送り出す。

 そう言われて「ありがとう」でも「すまん」でもなく、「わかった」と答える四宮。

 他にも、帰って来た四宮の報告に「うらやましいな」と寂しく言った鴻鳥を見つめる四宮もよかった。鴻鳥は父親も母親も知らずに育ったからだ。もう2人が対立することも、今シーズンは特になさそうだ。

 今回の最後、下屋が「私は絶対、2人を超えますから!」と宣言したのを受けて、

「下屋のくせに100年早い」

「でも楽しみだね」

 と、2人で肩を並べて去って行く姿は、まるでコンビで活躍する藤子不二雄やゆでたまごのようでした。

 また今回、四宮の同期である倉崎医師(松本若菜)の回想シーンにおいて、新人時代のあどけない2人も登場した。まだ四宮が心を閉ざす前で、仲が良かった頃だ。しかし、最近はその頃に近づいてきている、いやむしろそれ以上の蜜月関係にも見える。ちょっと仲よすぎな気もするので、もうひと波乱期待したい。

 今回は、不育症の話を軸に、今までの展開のその後を見せたり、四宮の決断への道筋を丁寧に見せたり、患者、医師、家族のそれぞれのドラマを描くなかなか入り組んだ脚本で、見ごたえのある回でした。ラストスパートに期待しましょう。
(文=柿田太郎)

星野源も坂口健太郎もいなくなる!?『コウノドリ』3シーズンへの布石と“ONE PIECE化”の期待

 周産期母子医療センター(出産の前後を通し、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や妊婦の喜びと悲しみ、生命の誕生の素晴らしさや難しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。

 白川が転機を迎える第8話は視聴率12.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と着実にアップ。前回の終盤、BABYのライブ会場に突如現れた四宮(星野源)の真意とは……?

 

■BABYの正体を知っていた!

 

「やっぱり四宮にはバレてたか、僕がBABYだってこと」

 ライブ後に訪れてきた四宮に、鴻鳥(綾野剛)がそう語る、いきなりの展開。

 しかし前シーズンでは重要なポイントであった「鴻鳥が人気ピアニストBABYである」という設定は、今回あまり意味を持たなくなってきており、特に影響もなく話は進む。

 今回、四宮が訪ねて来たのは、大学から早期胎盤剥離防止の研究に誘われており、それに専念すべきか? という相談のため。

 実はすでに研究を手伝っているのだが、鴻鳥はそれを知っていたようで、そのことに今度は四宮が驚く。しかしよくお互いを知っている2人だ。

 四宮は以前早期胎盤剥離の手術中に妊婦を亡くし、さらにその子どもも脳性まひになってしまった、つらい過去がある。もはや家族も面会に来ない、眠り続ける子どもに、毎夜本を読んであげるなど、責任を感じていた四宮だったが、結局その子も息を引き取ってしまった(前シリーズ・9話)。

 そんな四宮が早期胎盤剥離防止の研究に参加していることは、間近で苦悩する姿(治してあげたかったと自分を責めるように号泣)を見ていた鴻鳥にとって、なんの不思議もないのだろう。

 人手不足のペルソナ産科を離れることを躊躇する四宮に、鴻鳥は「関係ない。自分で選択するべきだ。自分の行くべき道を」と背中を押す。四宮も鴻鳥にそう言われたくて、わざわざ来たのかもしれない。

 そんな中、四宮の父親が倒れたとの連絡が。

 

■四宮の里帰り

 

 急遽、故郷の石川・能登へ飛んだ四宮だったが、そこで目にしたのは病を押して妊婦の診察をする父・晃志郎(塩見三省)の姿。四宮の父も産科医だ。

 しかもステージ4の肺がんなのに「仕事を続けながら治療をすればいい」と言い張り、すぐ治療に専念させたい四宮を突っぱねる。

「俺はこの街を、子どもが産めない街にはさせない」と産科医不足の街のために踏ん張りたい晃志郎に、「だったら、生きろよ!」と複雑な思いをぶつける四宮。食卓には輪島塗が並んでいる。

 結局「この街のお産を守ることが使命だと思っている。だから最後までやらせてくれ」という晃志郎の強い意志の前に「……勝手にすればいいよ」としか四宮が言えなかったのは、彼が息子であるのと同時に、現場に生きる同じ産科医だからなのだろう。能登の曇った空が、静かに葛藤する四宮の心情とよくマッチしていた。

 ちなみに「だったら生きろよ!」という台詞は、台本では「だったら治療しろよ」だったのが、星野の案で強い言葉したいと変更されたらしく(公式HPのインタビュー)、より血の通ったシーンとなっている。

 

■今週の鴻鳥と四宮

 

 ライブハウスで、なぜか結婚の話題となり、

「僕たちもいつかそんな日が来るかもしれないね(笑)」

「言っておくがスピーチだけはごめんだからな」

「安心して? 四宮には絶対頼まないから(笑)。その代わり余興でお嫁サンバを…」

「絶対やらないぞ!」

 という謎の乳繰り合いがあり、先週に引き続き、対立もなく異様な仲の良さを見せつけてくれた。

 また、四宮が「ピアノって魔法みたいだな」と呟き、慣れなさそうに鍵盤を一つだけ叩くその姿に「もっと弾いてえええ」と思ったファンの方も多いだろう。

 今放送中のドラマ『民衆の敵』(フジテレビ系)の中で、篠原涼子演じる市議がカラオケで「恋しさと切なさと心強さと」を選曲してるのに、邪魔が入って結局一言も歌えない(歌わない)というシーンのヤキモキさを思い出す。

 

■天狗と化した白川

 

 前回から、医師として力をつけるにつれ自信過剰になっている新生児科医・白川(坂口健太郎)問題。「上を目指す」ことに取り憑かれたような姿は、救命科に移った同期の下屋(松岡茉優)が「患者が助かれば十分」と患者本位であるのに対し、白川のそれは評価されることに酔った自分本位と言える。

 そんなある日、白川は産後間もない子どもを新生児遷延性肺高血圧症(肺に血液が流れにくくなり血流中の酸素が不足する病気)と診断、肺に一酸化窒素を流す治療を開始する。

 だが、親である風間夫妻(高橋努・芦名星)への説明に、自分の力を誇示する様子が。過剰な自信により自分の考えに固執するその姿に、同じような時期に天狗になりかけた経験のある鴻鳥や今橋(大森南朋)も不安を感じており、危なっかしい。

 その後、数日しても一向に治療の効果が見えないので、研修医の赤西(宮沢氷魚)が「本当に肺高血圧なんですかね?」と違和感を口にしたり、看護師の麻生(古畑星夏)も「今橋先生に相談した方が……」と持ちかけるも、白川は「その必要はない!」と聞く耳をもたない。

 しかしあくる日、レントゲンに写る子どもの肺が白くなる事態が発生。麻生が独断で呼んだ今橋の診断により、総肺静脈還流異常症という先天性の心臓病(肺静脈が本来行くべき左心室以外に流れてしまう)であることが発覚する。

 

■懐かしいあの人が!

 

「それって医療ミスですよね!?」

 間違った治療をされていたことに激昂する風間(夫)。

 動揺する白川に代わり、今橋がよその病院に搬送して緊急手術をする必要がある旨を伝える。

 だが、気まずさゆえ搬送車内の付き添いを他の医師に頼もうとする白川に、今度は今橋が声を荒らげる。

「責任を持って最後まで見届けなさい!」

「君は過ちを犯した。自分の実力を過信して赤ちゃんの命を危険にさらしたんだ。自分の過ちから逃げるんじゃない」

 重苦しい空気の搬送車で向った講談医大でも、引き継ぎの医師にそっけなく言われた言葉が白川に刺さる。

「あとはこちらでなんとかしますから、もう帰っていいですよ」

 帰り際、ベンチで手術終了を待つ不安げな風間夫妻の姿が目に入るが、白川は逃げるように迂回してしまう。

 そんなズタボロの白川に声をかけてきたのは、以前同じ新生児科で「鉄の女」と呼ばれていた先輩医師・新井(山口紗弥加)だった。

 新井もかつて、気負いすぎ視野が狭くなったあげく、つまずき打ちのめされ、燃え尽きてペルソナから消えてしまった過去がある(前シーズン・9話)。

 今は講談医大の小児科で働きつつ、NICU(新生児集中治療室)を卒業した子どもらを外来で診ているという新井は、現場から離れていた半年間「ペルソナにほっぽり出してきた赤ちゃんのこと」が頭から離れなかったとの苦い体験を語り、「そろそろ帰んなよ? 赤ちゃんたちがあんたのこと待ってるよ」と、かつての後輩の尻を叩く。

 おそらく今の白川に声をかけるのに、彼女ほどの適任はいないだろう。

 前シリーズ・9話でこんなことがあった。

 一人で抱え込み過ぎている新井に「休んでください」と声をかけた当時研修医の白川。だが、バーンアウト寸前の新井は「いいってば! 白川先生に任せられない!」と突っぱね、白川をむっとさせてしまう。

 2人は、2年前のあの日のことを思い出していたのだろうか。そして白川は、後輩に強く当たりちらす今の自分をどう思っただろうか。

 

■強化された「救い」

 

 少し驚いたのは、原作コミックでは新井との出会いが全くの偶然として描かれているのだが、ドラマでは鴻鳥がこっそり新井に連絡をしていて、白川に声をかけて欲しいと段取りをしていたという点だ。これはドラマ、原作、それぞれによさがあると思う。

 ドラマの「段取り」パターンでは、まず、あんな消え方をした新井と鴻鳥が今も連絡を取っていたんだ、という「救い」があるし、「みんな新井先生に会いたがってますよ」「私もみんなに会いたいな」という通話の内容から、双方が気にしており今後また会うかもしれないんだな、という「救い」も見て取れる(鴻鳥の言葉は気遣いの可能性もあるが)。

 そして、原作では確認できなかった結婚指輪らしきものが新井の左手に光っていたのも「救い」だ。もちろん段取りを仕掛けた鴻鳥は主人公として株が上がるし、出会いの整合性や辻褄的にも、こっちの方が説得力があるだろう。

 それに対し原作の「偶然」パターンは、ドライだ。

 その後の新井と誰も連絡を取っている様子はなかったし、新井が婚約者とどうなったのかもわからないままだ。今後もペルソナ一派と関わることはないのかもしれない。それがシビアな現実なのかもしれない。

 しかし、だからこそ、失意の白川と、かつて同じ失意の底にいた新井が、何の手筈もなく偶然出会い、会話する中で共に救われるという奇跡はこちらの方が強烈に輝く。

 頼まれて探し出し励ますのと、無視することもできたであろう、たまたま見かけた後輩に声をかけ、過去の自分と似た境遇なのを知って自発的に励ますのとでは、励ます側の振りかぶり方が違うはずだ。

 後日ペルソナで、白川が再度、風間夫妻に遭遇するシーン。

 ここも原作ではお互い気まずそうな会釈程度で厳しい現実を見せるのに対し、ドラマでは白川に「力及ばず申し訳ありませんでした」としっかり頭を下げさせ、風間妻も「白川先生、お世話になりました」とぎこちないながらも向き合って挨拶させるなどの「救い」をいれている(旦那は仏頂顔)。

 どちらがいいというわけではないが、原作は実際あるのであろう厳しさをしっかりと描き、ドラマは視聴者の後味が悪くならないよう強めに配慮をいれているのだろう。

 ちなみに新井が仕事から離れていた間によく行っていたと白川に語った温泉や魚釣りというのは、山口自身の本当の趣味だ。

 

■どんどんレギュラーがいなくなる?

 

 屋上にて、いつものように下屋に軽口をたたく白川だが、唐突にペルソナをやめる決意を告げる。

 患者に寄り添う気持ちをなくしていたと反省を口にし、「どんな小さな命にももっといい未来を届ける」ため、よその小児循環器科(おそらくペルソナにはない)で研修を受けたいと語る。

「上を目指す」のではなく「先を目指す」と語るその気持ちは、下屋が救命科に転科するのを志願した気持ちと同じだろう。

 研修先が決まるまではいるようだが、しかし今後白川が出ていき、下屋も転科していて、これで四宮までいなくなったら、ドラマ的にはだいぶ寂しくなってしまいそうなのだが、これはシーズン3でまた結集するための布石なのだろうか?

 ここまでメンバーが散り散りになると、何年か経ってそれぞれ新たな能力を手にいれた手練の医師たちが一堂に会す、再開後の『ONE PIECE』(集英社)のような展開を期待してしまう。

 今回のラスト、ペルソナに戻った四宮のもとに、晃志郎から「一日一生」という書が届けられる。四宮はどんな決断をするのか。再度、晃志郎が倒れる次週も見逃せない。
(文=柿田太郎)

『コウノドリ』“萌え双子”綾野剛と星野源が「ザ・たっち」になっちゃった!?

 周産期医療センター(出産の前後を通し、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や妊婦の喜びと悲しみ、生命の誕生の素晴らしさや難しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。いつも明るいムードメーカーの助産師・小松(吉田羊)を病魔が襲った第7話は視聴率11.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、やや上昇。どんな話だったのか振り返りましょう。

 

■卵巣がんになる可能性

 

 小松が倒れた。本人いわく、実は子宮筋腫を抱えていたらしい。

 子宮筋腫とは、子宮に良性の腫瘍ができる病気で、良性ということもあり忙しさにかまけ放っておいてしまったとのこと。だが、鴻鳥(綾野剛)らがちゃんと検査を受けさせたところ、それは子宮筋腫ではなく「子宮腺筋症」そして「卵巣チョコレート嚢胞」であることが発覚する。

 鴻鳥いわく「こんな状態で仕事をしてたなんて……」と言うほどの状態で、四宮(星野源)も「(子宮)全摘をすすめるのが本人のため」としている。

 子宮腺筋症にかかると月経が増えて貧血が多くなり、卵巣チョコレート嚢胞も腰や下腹部回りの痛みが悪化するだけでなく、卵巣がんに発展する恐れがあり、どちらも無視できない病気だ。

 鴻鳥は小松に、子宮が10センチ大を超えており、このままだと今後、貧血が進むこと、そして卵巣がんになる可能性があることを正式に告げる。

 小松も、子宮や卵巣を摘出しないとがんのリスクがなくならないことは重々わかっているが、どうしたらいいかわからないようで、あげく「でも私から子宮がなくなっても、世界が平和ならそれでいっか(笑)」とおちゃらけてみせる。

 小松が気まずそうなのは、「医者の不養生」状態だからということもあるだろうが、それ以上に自分が心配されることが恥ずかしくて仕方のない性格なのだろう。

 

■新天地での下屋と倉崎

 

 一方、自分を向上させるため自ら救命科に転科を志願した下屋(松岡茉優)は、慣れない救命現場で苦戦。産科を小馬鹿にする態度でおなじみの救命科部長・仙道(古舘寛治)に「どうせ妊婦のライン(点滴できる血管を探し出し確保すること)しか取れないだろ?」と嫌味を言われながらも、もがいている。

 さらに、下屋と入れ替わりでペルソナの産科勤務になったシングルマザーの倉崎(松本若菜)も、幼い子どもがいるからという理由で仲間に仕事を加減されることを過剰に嫌い、意固地になっている。

 子どもを連れてでも早朝の急患に駆けつけるとムキになる倉橋を「それは大変だよ?」と鴻鳥はなだめるが、「大変かどうかは私が判断します」と聞く耳を持たず、四宮にも「勝手にしろ」とあきれられてしまう。

 患者を助ける立場にありながらも、自身もそれぞれに悩みを抱え、もがく3人の女性。

 

■ムードメーカーの苦悩

 

 特に今回、いつも明るく他人の世話焼きばかりしてる小松に病魔が降りかかることで、いつもの笑顔の仮面に隠した「らしくない」部分を垣間見ることができる。

 飼っている金魚に餌をあげつつ「私の餌はこれか」と一人錠剤を口にする姿や、「お母さんになる人生と、お母さんにならない人生、何が違うのかな?」と、子持ちの同僚・向井(江口のりこ)にふと尋ねる様子など、今までの小松が見せなかった弱い姿だ。

 しかし、子宮摘出の決断を迫られる中においても、小松は自分のことを後回しにし、周囲の見えなくなっている後輩たちのフォローを優先する。

 甘えることができず意固地になってしまう倉崎にそっと寄り添い、冗談めかして「職場の仲間に、もう少しだけ頼ってみましょうか?」と肩を揉んでみたり、「私には肩の力を抜いてる暇がありません」と焦る下屋を「じゃあ、もう少し自分を認めてあげましょう」と気持ちを楽にしてあげる。

 それでいて自分が心配されそうになると、年齢をネタに冗談ぽくキレてみせたり、人前で「しのりーん!」と四宮を呼んでけん制したり、ムードメーカーゆえの責務を果たそうとする姿が痛々しくけなげだ。

 ちなみに原作コミックでは小松は現役バリバリの喫煙者で、元ヤンという設定。

 

■全員不器用

 

「小松さんまだ迷ってるみたいだな」

「小松さんの気持ちを想像したら、仲間だからこそどうしてあげたらいいのか……」

 四宮も鴻鳥も、いつも通りに振る舞うがゆえに、ほんのわずかな元気のなさが逆に目立ってしまう小松を気遣う。

 そんな中、倉崎の受け持つ患者の容態が急変、子どもを保育園に迎えに行かないといけないため患者の手術に立ち会えない倉崎の悔しさを感じ取った小松は、自分が子どもを引き取りに行くことを提案する。

「ここはチームだから(仲間に甘えろ)」と倉崎が残業することを回避させた鴻鳥に、「チームなら、こんな協力の仕方(小松が子どもを迎えに行く)もありだよね?」と提案する小松。それを聞いた鴻鳥もうれしそうだ。涙を浮かべて手術に向かう倉崎に「俺が前立ち(第一助手)してやる」と、ぶっきらぼうに言い放つ四宮。なんと素敵なチームだ。

 手術が無事終わり、自分の意固地さを詫びる倉崎に「俺だったらあと2分早く終わらしてた。まあそれ以外は完璧だったよ」という絵に描いたようなツンデレを繰り出す四宮。もう付き合っちゃえばいいのにと思ってしまったのは、筆者だけではないはずだ。

 その日の仕事終わり、鴻鳥は小松をピアノのあるバーに誘い、小松のために演奏する。小松だけは、鴻鳥が人気ピアニスト・BABYであることを知っているのだ。原作コミックではこういう時、小松は「ルパン三世」をリクエストするのだが、局の問題なのかリクエストしたのはこのドラマでよくかかる、聞き覚えのあるBGM(実はBABYの曲)。その曲を奏でながら、鴻鳥は小松にずっと助けられてきた恩を忘れないし、ずっと味方だとの感謝を口にする。それを聞き、小松は涙を浮かべ子宮摘出の決断をする。ついでに付き合っちゃえばばいいのにと思ってしまったのは、筆者だけではないはずだ。

 鴻鳥は、小松に「一人で全部抱え込まないで」とアドバイスをするが、それは小松が、悩む下屋や倉橋を助けたくて言っている言葉と同じだ。そういう鴻鳥でさえも、心配されているのに徹夜で仕事をして周囲を困らせていた(第5話)。人のことはわかるのに、自分のことはわからない、人には甘えろと言えるのに、自分は甘えられない。不器用どもの巣窟、ペルソナ医療センター。

 結局、無事小松の手術は成功し、以前よりも仲良くなった向井に小松が語る。

「親も兄弟も夫も子どももいない私にとって、子宮は最後の頼りだったんだ」

「でもみんなが自分のことのように心配してくれて、私は一人じゃないんだなって」

 実は誰よりも人を頼ることが下手だった小松が、子宮を失ってはっきりと気づいた仲間という「家族」。

 

■今回の鴻鳥と四宮

 

 今回は共通の先輩・小松のピンチとあってか、最初から最後までやけに仲が良く、意見の対立もまったくなかった。小松に検査を受けさせるために団結したり、小松の手術中にそれぞれ落ち着かずそわそわしたり、おのおのの好物であるカップ焼きそば(鴻鳥)とジャムパン(四宮)を無言で交換して食べたり(!)、術後で眠っている小松の枕元に焼きそばとジャムパンをそっと置いていたり。とにかく史上稀に見るシンクロ率の高い回だった。

 極めつきは、女手一つで子育てをする倉崎の意地を2人が理解していないという流れで「だからお前たちは彼女ができないんだ」と小松に言われ、「俺たちの何を知ってるんですか?」と、ザ・たっちばりに完全にシンクロして突っ込む鴻鳥・四宮コンビ。今日は、とにかく双子のように意見から呼吸からピッタリだ。

 ちなみにいつも鴻鳥が食べているカップ焼きそばは「ポヤングソース焼きそば」、四宮のジャムパンは普段は「ヤマザキ」だと思うのだが、ホイップクリーム入りの今回は「Posto」だった。

 

■自身過剰な白川

 

 小松の病気の件の一方で、学会に出席し手応えを感じた新生児科医・白川(坂口健太郎)は、若さゆえか少々自信過剰になっているようで、後輩の前で「家族に寄り添うのはもちろん大事だけど、それだけじゃ遅れをとる」と、今のペルソナを否定するようなことを語っている。

 ある日、看護師のちょっとしたミスを白川が過剰に責めるているのが気になった今橋(大森南朋)は、向上心で周りが見えなくなってしまった自身の若かりし頃の失敗を例に助言するが、「でもそれは、今橋先生の場合ですよね? 僕は自分のことはわかってるつもりなんで大丈夫です」と耳を貸さない。

 ドラマでは優等生すぎて影が薄かった白川だが、原作コミックではむしろ最初からこういう強気キャラだったので、「これこれ!」と歓迎したくなる。

 次回は、そんな調子に乗る白川に試練が……そして、何やら引き抜きを持ちかけられているっぽい四宮が「相談がある」とライブ直後の鴻鳥を訪ねる。

 あれ? BABYのことは……? 最終回まであと少し、目が離せない。
(文=柿田太郎)

“死亡フラグ”ビンビンだった『コウノドリ』ジャムパンおじさん星野源は健在!

 周産期周産期医療センター(出産の前後を通し、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や妊婦の喜びと悲しみ、生命の誕生の素晴らしさや難しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。

 準主役でもあり、最近成長著しい下屋(松岡茉優)に試練が降りかかりる第6話は視聴率11.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、またしてもほぼ横ばいで2ケタをキープ。振り返りましょう。

 

■下屋の焦り

 

 ペルソナ医療センターを離れ、他所の病院(こはる産婦人科)にヘルプとして当直に入る産科医・下屋。そこで出会ったのは前回の第5話でも出てきた症状・切迫早産(まだ適正な時期でないのに子宮口が開きかけ、早産「しそう」な状態)で入院中の妊婦・神谷カエ。2人は同い年で同じ名前ということで会話も弾み、仲良くなる。

 後日、ペルソナにて、下屋は自分の能力を過信して胎盤用手剥離(子宮内に手を入れ胎盤を取り出す娩出法)を行い、患者に不必要な痛みを与えてしまう。

 鴻鳥(綾野剛)に勝手な判断を注意され「次はもっとうまくやらないとって思ってます」と意気込むが、「そういうことじゃないだろ? 命を預かってる僕たちに驕りは決して許されない。誰かに頼ることも必要なんだ」と諭されてしまう。

 さらに、今のままでは独り立ちができない、先輩らに頼らずとも失敗を自分でリカバーして乗り越えられるようになりたい! と意気込む下屋に対し、鴻鳥は「それは乗り越えるものじゃない」と一喝、否定する。

 新人研修医だった前シーズンから正式な医師に昇格し、後輩もできて順調に成長してきたように見える下屋だが、実はかなり焦っているようだ。

 その後、こはる産婦人科での当直ヘルプ中、神谷から胸が少し苦しいことがあると聞いた下屋は帰り際、動悸や頻脈などから神谷の甲状腺に問題があるのでは? と担当医に伝えるが、今まで問題があるとは聞いてないが、一応週明けにでも検査するという約束を聞き、安心して帰宅する。

 

■緊急搬送されて来たのは……?

 

 しかし後日、ペルソナで通常業務に励む下屋の目に飛び込んで来たのは、心停止(アレスト)を起こし、蘇生処置をされながら救急車で搬送されてきた神谷カエの姿だった。

 しかもその症状が甲状腺クリーゼ(甲状腺の病気がうまくコントロールできず、さまざまな臓器に障害が起こる難病)だということがわかり、動揺を隠せない下屋。妊娠状態を終わらせ、母体の血流を確保するため、鴻鳥は死戦期帝王切開を決行、心臓マッサージをしながら、子どもをなんとか無事出産させる。

 救命、産科、新生児科、一丸となっての懸命な手術が続くが、母体の心臓は動かぬまま。

「神谷さん! さくらちゃん(赤ちゃん)が呼んでるよ! お母さんって呼んでるよ!」

 私情により取り乱しまくった下屋が叫ぶ。

「助かるかどうかじゃねーだろ! 助けるんだ!」

 救命科の加瀬(平山祐介)も懸命にマッサージを続ける。しかし、神谷が反応することはなかった。

 

■下屋の迷走

 

「なんで私、あの時強く検査を勧めなかったんだろう!」「どうして甲状腺を触診しなかったんだろう!」自分を激しく責める下屋。

 後日、救命科も交えてのカンファレンスにて、動機や頻脈などは妊娠時によくある症状で、子宮収縮抑制剤の副作用ともかぶるため見分けにくいと産科医の四宮(星野源)が説明するが、救命科部長の仙道(古舘寛治)は、嫌味たらたらに産科を責める。

「ぶっちゃけ見落としじゃないの? だって産科ってさ、毎日妊婦さん相手にお世辞言ってる感じでしょ? 君たち、危機感足りないんじゃないの?」その言葉が下屋に突き刺さる。

 その日以来、強迫観念に追われる下屋は、待合室を大渋滞させるほど妊婦全員に甲状腺検査を行い、見かねた鴻鳥から休暇を取るように言われてしまう。

 四宮にも「患者の心配をするふりして、自分が神谷さんの死を乗り越えたいだけじゃないのか?」と図星を突かれ、言い返せない。

「下屋はどんな産科医になりたい? その答えが見つかったら帰ってこい」

 鴻鳥のこの言葉が、後に下屋を大きく動かすことになる。

 休暇中、人気ピアニスト・BABY(鴻鳥のもう一つの秘密の顔)のライブを鑑賞する下屋だが、産科でのいろいろな思い出が甦り「やっぱり産科に帰りたい……」と涙してしまう。

 ピアノの音色だけで産科の思い出を明確に呼び起こさせるBABY(鴻鳥)もすごいが、ちょっとだけ伸びた程度のヅラを被っただけで、直属の後輩に至近距離で一切気づかれない鴻鳥(BABY)のステルス具合もすごい。

 

■下屋の決断

 

 休暇から戻った下屋だが、休暇中に好物の一人焼肉に行っていたという会話から、何気なく白川(坂口健太郎)に言われた「お前このままでいいのかよ(笑)」という冗談に、「やっぱり産科はいいね……けど、だから今のままでいいわけがない」と、何かを決断した様子で答える。

 後日、救命救急センターの加瀬を訪ね、ある決意を伝える。

「やめとけ。患者一人亡くしたくらいでなめんなよ?」と、救命科ゆえに目の前で何人もの命を救えなかった経験を持つ加瀬に突っぱねられるが、「私と加瀬先生の悔しさは違います。私の悔しさは、『もっと自分に力があったら』っていう後悔です」と下屋も譲らない。

 屋上にて、その決意を鴻鳥にはっきり伝える下屋。

「やっぱり私は産科医なんだってよくわかりました。私は産科に戻りたい……だから……私を『救命』に行かせて下さい」

 憑き物の取れたようなさっぱりした顔で、下屋は語る。鴻鳥や四宮に甘えることなく、救命で全身管理を身につけ、母体も子どもも両方救える産科医になりたいと。

「救命、きついぞ」と心配する鴻鳥に「でも、これが私の『乗り越え方』です」と微笑む下屋の決意は堅そうだ。

 鴻鳥は、患者を亡くしてしまったことの後悔を忘れたり乗り越えることはできないとし、「悔しいこともうれしいことも、一つ一つ胸の中に積み重ねて、医者として進んでいくしかない」と下屋に教える。そしてその「自慢の後輩」を「行って来い。そして強くなって帰って来い」と送り出した。

 原作で、下屋が転科することは正直知っていたのだが、ドラマ的に重要な位置にいる松岡だけにどうするのかと思っていたら、原作通りに異動させた。ドラマのレギュラーの制約上、今後もまちがいなく登場するとは思うけど、アウェイにいる下屋をどう絡ませていくのか大変楽しみだ。

 ちなみに、鴻鳥や四宮の後輩でちょくちょく顔を出していた倉橋(松本若菜)も下屋と入れ替わりで産科で勤務することが決まり、原作コミックではいきなり登場した倉橋だったが、ドラマではゲストかと油断させておいて実はレギュラーに加わっていたというニクい演出で、うならされた。

 

■今回の四宮

 

 休憩中、下屋が手にした差し入れのジャムパン(四宮の好物)を「お前にジャムパンは早い」と奪い取る四宮。返す刀で「お前はこれだ」と違うパンを手渡し、「これ何も入ってないやつじゃないですかー」と下屋に嘆かれる四宮。鴻鳥がキープしていた焼きそばパンが小松(吉田羊)に食べられた際、すかさず「ダメだ自分でなんとかしろ」と、自分のジャムパンを保護する四宮。産科にお別れの挨拶に来た下屋に「甘ったれるな」と憎まれ口を叩きながら、ホイップクリーム入りのとっておきのジャムパンを手渡すツンデレ・四宮。今回もいろんな顔を見せてくれた我らがアイドル四宮だが、贅沢を言えば、救命科部長の仙道が産科に喧嘩を売るような嫌味を言った際、「あ?」だけでなく、思いっきりブチ切れて欲しかったところだ。

 

■やたらと神谷が死にそうな「フリ」が……

 

 今回気になってしまったのは、丁寧なドラマ作りだからそこのバランスは難しいのかもしれないけど、序盤にやたらと「神谷死亡フラグ」が立っていたこと。

「神谷さんって、きっとかわいいお母さんになると思う」(その前に死にそう)

「(出産後あげる予定の)結婚式でさくら(赤ちゃん)とお揃いのドレス着るってきめてるんだ!」(着れずに死にそう)

「先生(下屋)、式きてよ?」(式の前に死にそう)

「あーーーやりたいこといっぱいある! がんばんなきゃ」(すぐ死にそう)

 ……などなど、先週も仲良くなった切迫早産の患者が亡くなる回だっただけに「あれ? 今回も?」感が多々あり、せっかくの下屋が跳ねるいい話だったのに少しだけもったいない気がしてしまった。

 しかしながら、松岡は見事にこの「下屋回」を演じきっており、主役を張れる位置にリーチをかけるほど存在感を示したように思う。

 そして短い出番ながら救命科部長の仙道役の古舘寛治も強い印象を残した。

「(救命科でお世話になる期間が)1年ていうのは目安で、必要であれば2年でも、それ以上でも勉強させてもらえれば……」と弁解する下屋を「違う違う、『1年だけかよ』なんて嫌味言ったわけじゃないんだよ(笑)……『1年もたない』って言ってんだよ?」と痛烈に追い込むシーンは、液晶を叩き割りたくなるほど腹が立ったし。

 古舘は、『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)でバーのマスター山さんだったり、映画『箱入り息子の恋』(2013)で市役所の上司だったりと、星野源との共演も多いのだが、そんな場外でのゆかりを感じさせることなく、ただひたすらに役でムカつきを感じさせてくれてお見事。

 ちなみに今回、下屋と白川が2人で会話するシーンが多く、同期としての関係以上の白川の想いが見て取れたり、新人研修医の赤西(宮沢氷魚)が下屋に好感を抱いている様子だったりと、ほのかながら恋の芽生えらしきものも垣間見えたり、次回はムードメーカーの助産師・小松が窮地に陥るらしかったりと、折り返しをすぎて、レギュラー陣にも続々とスポットが当たり出し、ますます観逃せない。
(文=柿田太郎)

好調キープのTBS『コウノドリ』星野源が完全無欠のキャラクターになってしまう!?

 周産期医療センター(出産の前後を通して、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や助産師、妊婦やその家族の喜びや悲しみ、生命の誕生の素晴らしさや難しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。「泣けた」「感動した」との声も多かった第5話は、裏のサッカーブラジル戦の影響もあってか視聴率10.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)とやや下がりながらも2ケタをキープ。2年前の前シーズンでも第5話は神回との呼び声高かったが、今回も中だるみしかけるこの時期に、強い話を持ってきたようだ。

 

■同じ境遇の出会い

 

 今回、産科医・鴻鳥サクラ(綾野剛)が受け持つのは、切迫早産(まだ適正な時期でないのに子宮口が開きかけ、早産「しそう」な状態)のため急遽入院することになった西山瑞希(篠原ゆき子)。

 まだ妊娠27週である今、子どもが生まれてしまうと、十分に自力呼吸できなかったり合併症を起こす心配があるため、母体である瑞希は少しでも安静に過ごし、お腹の中で1日でも長く子どもを育み、早産を防ぐ必要がある。そのため出産まで2カ月ほどの長期入院になるらしい。

 突如始まった入院生活で隣のベッドになったのは、同じく切迫早産で1カ月前から入院している七村ひかる(矢沢心)。長らく一人で入院していた七村は、「よかったー! やっと話し相手が来てくれたー!」と瑞希を歓迎、同じ境遇、同じ趣味(ゾンビ映画好き)の2人はすぐに打ち解ける。

 瑞希の夫・寛太(深水元基)が持参した手作りプリンは、七村や医師らにも大好評。2人は洋菓子店を営んでおり、寛太は小まめに病院に足を運ぶいい夫なのだが、顔が怖く無口なだけで七村にも医師らにも第一印象で「殺し屋?」と勘ぐられてしまう美味しいキャラ。イメージはジャン・レノか。本当に人を殺せる能力を持つ旦那と結婚しているのは矢沢心の方なのだが、それはさておき、同室で過ごす2人の距離はどんどん縮まっていく。

 点滴針を毎日打つため腕が硬くなり、刺す場所が減っていくが、それでも2人は「赤ちゃんのためなら」と互いに励まし合う。

 

■突然の死

 

 いつものように鴻鳥はエコーで瑞希のお腹の様子を診ているが、どうしても胎児の心拍を確認できず、顔が曇る。夫の寛太や四宮も加わり、別室で改めて確認するものの結果は同じ。

「西山さん、やはり心拍を確認できません……残念ですが、お腹の赤ちゃんはもう……」

 鴻鳥の口から正式に告げられたのは、IUFD(子宮内胎児死亡)というあまりにも唐突で残酷な事実。原因もまだ不明で、当然、夫妻もまだ受け入れられるはずもないのだが、医師である鴻鳥は早めに出産すべき旨を伝えなくてはならない。亡くなった子どもの組織の一部が母親の血中に混じると、血液が固まりづらくなり、出産時に大出血してしまう恐れがあるのだ。

 子宮内で子どもが死亡しているというだけでも失意のどん底なのに、それでもお腹を痛めてお産をしなくてはいけないという現実。泣き崩れる妻を、寛太は抱きしめる。

 個室に移るためと看護師らが西山のベットを片付けているが、七村はなんの前触れもなく突然いなくなってしまった瑞希が気にかかる。鴻鳥もまわりが心配するほど徹夜で原因を調べている。

 

■泣き声のない出産

 

 翌朝、鴻鳥による出産手順の説明を遮り、切迫早産になった自分が悪いのか? 安静にしていなかった自分が悪いのか? と自分を責める瑞希。

「僕も昨日からずっと考えています。なんでだろう、なんでだろうって。でも、わからないんです……。妊娠初期からずっと経過を診ていて、ご夫婦でうれしそうに検診に来られていたことを覚えています。入院して1カ月、赤ちゃんのために頑張っていたことも知っています。しかし、僕には今回のことを予測することができませんでした。結果としてこうなってしまい、申し訳ありません……」最後に頭をさげる鴻鳥。

 誰も悪くないだけに、やり場のない感情が瑞希の口から嗚咽となって溢れる。IUFDの1/4は今でも原因不明なのだ。

 そしてお産。苦しそうに力む瑞希に「がんばって」と声をかける助産師・小松(吉田羊)。後輩助産師は、そんなにがんばれっていったら瑞希がかわいそうではないか? とたしなめるが、小松は、

「子どもを産む母親に『がんばれ』って言って何が悪いの? 西山さん、ごめんね。私は器用な助産師じゃないから、いつも通りのお産のお手伝いしかできないの、だってさ、このお産暗くしたくないじゃない!」と、強い想いを伝える。明るい子になってほしいから「あかり」と命名した夫妻の想いを、小松は知っているのだ。

「もうすぐあかりちゃんに会えるからね!」小松に励まされ、「あかりー!」と叫びながら、我が子を産む瑞希。「あかりちゃん、きれいな女の子だねー」と小松に言われた瑞希は、笑顔を絞り出す。

 

■落ち込む下屋

 

 そして一組の患者。超低出生体重児として生まれた大松憲次郎・美代子夫妻(矢島弘一・井上依吏子)の子ども・しょうたは、動脈管開依存症(生後すぐに閉じなくてはいけない血管が閉じていない)を患っており、命に関わるため手術が必要なのだが、憲次郎は「どっちにしろ障害が残る可能性が高いってことですよね? 正直、手術をしてまで助けて欲しいと思いません」と手術に反対、新生児科医・今橋(大森南朋)の説明も聞かずに、にべもなく席を立つ。

 緊急搬送された際、お腹の中で看取る選択肢もあったのに帝王切開してまで障害を持つ我が子が生まれたことに、納得できていないらしい。執刀した下屋(松岡茉優)はカンファレンスでそれを知り、同意書を取ったことや、胎児が危険な状態だったから仕方ないことなどを主張、鴻鳥に「誰も下屋を責めていないよ」となだめられてしまうほど動揺している。

 判断は慎重にせねばという空気の中、唯一、新生児科医・白川(坂口健太郎)だけは、児童相談所と連携し、親権を一時的に停止してでも手術をすべきだとまで、真っ直ぐに言い切る。

 原作コミックでは自信過剰な鼻っ柱の強い若者なのだが、ドラマではアクが削がれすぎて、正直いてもいなくてもいいようなキャラにされている白川だが、今回は唐突に強い意思を見せてきた。これを機にもう少し活躍させてあげて欲しい。

 

■またしても、いいところを持っていく四宮

 

 そのカンファレンス後、自分の分のプリンを下屋に差し出し、落ち込むのはナンセンスだと伝える四宮。下屋は一瞬責められてるのかと思ったらそうではない。

「目の前に車に轢かれて死にそうになってる人間がいたら誰だって助けるだろう。その命を救った後に障害が残るかなんて誰も考えちゃいない。緊急オペってのはそういうもんだ」

 この一言で、下屋はどれだけ救われただろうか。この時、下屋が「……はい」と返事するのだが「ズキューン」と効果音を入れてもいいほど、うっとりしていたように見える。さらに最後にプリンが賞味期限切れであるとオチまでつける四宮。この嫌味にならない絶妙な抜き加減は、まさに星野源。

 最初にプリンを勧められた際も、食べないかと思ったら放送事故レベルなほどたっぷり無言の間をためて「冷蔵庫に入れておいて」と答えたり、小松に呼ばれた際も「ダメです、これは俺のジャムパンです」と即答でかましたり、今回はおもしろパートも随分受け持っていた。いよいよ完全無欠のキャラクターになってしまうのではないだろうか。

 

■下屋の決断

 

 お腹の中で亡くなってしまったあかりは、戸籍に表記されることはない。抱っこしてあげたり、一緒に写真を撮ってあげたり、手形や髪の毛を残してもいいと勧める小松。夫妻はいろいろな思いを胸に、我が子をお風呂に入れてあげる。そこに寄り添う鴻鳥や、「ベビー(大松しょうた)は俺がしっかりみてる。絶対あきらめない」と強く言い切る白川を見て、下屋は大松夫妻に手紙を書くことに。子どものことだけ考えて大松夫妻の気持ちを置き去りにしたのかもしれないとの思いから、主に自身の説明不足を詫びる内容だが、それを知った四宮は「サクラ(鴻鳥)が頭を下げたのは、西山さんの感情の圧を下げるためだ」「俺なら絶対に頭を下げない、次の出産に向けて綿密な計画を練る」と語る。両極端な先輩に揉まれ、吸収できて下屋は幸せなのか不幸なのか。

 

■七村との再会

 

 あかりの心拍停止がわかって個室に移って以来、瑞希は七村に会っていない。どう説明していいか、どんな顔をしていいかわからないからだろう。しかしそんな中、廊下で七村に発見されてしまう。何も知らない七村は「あかりちゃん、元気ー?」と、久しぶりの再会を喜ぶ。精一杯の作り笑顔で「かわいいよ」とだけ伝え「元気な赤ちゃんを産んでね!」と言葉にしがたい表情でエールを送り、立ち去る瑞希。病室に戻る途中、さすがにおかしいと感じた七村の耳に飛び込んできたのは、あかりが死産だったという看護師同士の会話。

 かつて、同じ苦しみを共有し励ましあった、もはや戦友といってもいい、同じ病院の釜の飯を食った同志の意外な現実を知り、一人涙する七村。それは、あのいなくなった日からずっと続いていたであろう瑞希の悲しみを知ることもなく過ごした「戦友」としての自分の不甲斐なさを嘆いているようにも見えた。一番視聴者が涙した場面もここではないだろうか。

 今回、題材的にも「泣けた」との声が多く、特に瑞希役の篠原ゆき子の言葉にならない苦悶の芝居や嗚咽は、観る者を鷲掴みにしたようだ。

「あかりおめでとう ママありがとう パパより」と書かれたバースデーケーキや、無事出産を終えた七村宅に宅配便で届けられたプリン(「おめでとうひかるさん」のカード付き)、七村の隣でずっと編んでいた毛糸の帽子があかりに被せられているなど、小道具に涙腺を刺激された人も多いだろう。

 だが、悲しい内容ながら、西山夫妻は少しずつ現実を受け止め前を向こうとしているようだし、初めは保育器の我が子を見ることもできなかった大松美代子が「手術の話がしたい」とNICU(新生児集中治療室)を訪れたり、明るい希望も最後に見せてくれた。美世子に、しょうたのことを感謝していると伝えられ涙する下屋もうれしそうだ。

 他にも、赤西(宮沢氷魚)は産科から新生児科に移り前向きに研修に励んでいたり、鴻鳥や四宮の元後輩の産科医・倉崎(松本若菜)も自身の子どもを預けるペルソナNICUのスタッフと馴染んできていたり。そんな中、さらに下屋に大きな試練がのしかかる模様。いよいよ佳境にさしかかる次週も楽しみだ。
(文=柿田太郎)

11.9%安定の綾野剛主演TBS『コウノドリ』は「ダメ夫を成敗する水戸黄門」か

 周産期医療センター(出産の前後を通して、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や助産婦、妊婦やその家族との悲喜こもごもと、生命の誕生の素晴らしさや厳しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。

 中盤にさしかかる第4話の視聴率は13.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と自己最高を記録。さっそく振り返ってみたい。

 

■新人にスポットが

 

 このシリーズから、新人研修医としてペルソナ総合医療センターの産科に加わっている赤西吾郎(宮沢氷魚)。産科での研修も終盤に差し掛かる中で、今ひとつ身の入らない仕事ぶりを続けていたが、安易な判断で患者の妊婦を危険にさらすミスを犯してしてしまう。

 それを先輩の産科医・四宮(星野源)に咎められるも、反省するどころか「いいんじゃないですかね? ま、何もなかったんだし(笑)」とヘラヘラする始末。それは直属の先輩医師である下屋(松岡茉優)にビンタされてしまうほどだ。

 産婦人科病院の二世でもある赤西に対し、四宮は「これだからジュニアは使えない」と皮肉を込める。人材不足で忙しい職場において平然と定時に仕事を切り上げては、またしても下屋をイラつかせる毎日。新規加入したものの、初回から今ひとつ見せ場のなかった赤西にようやくスポットが?

 

■陣痛に耐えたら愛情が湧く?

 

 今回の患者は、2人目の出産を間もなくに控えた秋野蓮(安めぐみ)。まだ幼い長女につらく当たってしまう自分が嫌で、今回は帝王切開ではなく自然分娩で産みたいと考えている。

「陣痛を味わって産道を通して産んだ方が、この子(お腹の子)に愛情が湧くんじゃないか」「痛みから逃げた、楽して産んだから、上の子の子育てもうまくいってないんじゃ?」という理屈らしい。

 このように、過去に帝王切開を経験したことある妊婦が、お腹を切らずに経膣分娩(自然分娩)に挑戦することをトーラック(TOLAC)といい、原作コミックによるとアメリカでは保険会社が医療費を抑えるために広めたらしいが、この「お腹を痛めて産んでこそ子どもに愛情を持てる」という根拠のない根性論は、耐えることを美徳とする日本人の心情に合っているのか、確かにもっともらしく、よく語られている気がする。

 主治医の鴻鳥(綾野剛)によると、トーラックにはもちろんリスクがあり、

・かつての帝王切開時の傷が裂ける子宮破裂の可能性があり、その場合、子どもの後遺症や母子の命に関わる場合もある。(確率は5/1000)

・トーラック成功率は7割、危なかったら途中から緊急帝王切開に切り替える。

 ……と伝えられるも、「産道を通した方が、子どもに対する愛情が違うんですよね?」と蓮の決意は固い。

 助産師の小松(吉田羊)は、その理屈を「思い込み」だという一方で、「それでもお腹を痛めて産みたいって思うものなの」と理解を示す。

 蓮はことあるごとに、夫の壮太(前野朋哉)に相談するのだが、仕事の忙しさにかまけて今ひとつ……ふたつほど親身になってくれない。このドラマでお馴染み「とにかく旦那がわかってない」案件である。

「ま、俺はなんでもいいよ」「好きな方法でいいんじゃないかな」「ごめん風呂入ってくる」と、今回も見事に女性の側をイラつかせる。陣痛が始まった蓮を病院に送った時も、出産する時間は何時か? と、まるで映画の上映時間かなんかのように尋ね、それまで同僚と屋形船で飲み会をしようとしていたほどの傑物だ。

 長女の育児に関しても、たいして育児に関わってなさそうな壮太は他人事のように「もっと余裕を持って接してあげたら?」と言い放ち、当事者である蓮と「朝バタバタしてるのに、そんな余裕なんてもてないよ!」とぶつかってしまう。残念ながら日本の育児でありがちな対立なのかもしれないが、こういうこともあって蓮は藁にもすがる思いでトーラックに挑みたいようだ。

 

■今回の「鴻鳥 vs 四宮」

 

「妊婦の希望に沿ってあげましょう」という鴻鳥に対し、「お前のその優しさのせいで、妊婦はもちろん、俺たちも余計なリスクを背負わされるんだ」「夜間に子宮破裂が起きたらもっと危険だ」と反発する四宮。

 前回の放送ではBLに発展しそうなほど見つめ合い、理解し合う様子を見せていたのに、また周囲が気まずくなるほどの衝突。というか、主にけしかけてるのは四宮で、もめ出すのも四宮なら、最後に態度を軟化させ我々をキュンとさせてくれるのも四宮だ。今回も、もはや主役といっていいほど見せ場のほとんどを四宮が生み出しており、おそらくキャラクター人気投票をしたら主役を差し置いて1位になってしまうであろう美味しい立ち位置。従来なら星野と綾野は逆のキャスティングの方がイメージ通りのはずだが、あえて外したところが功を奏しているように見える。

 鴻鳥も「僕らの仕事は妊婦にトーラックをやめさせることじゃないよ」「忙しくて余裕がないから妊婦の希望に添えないなんて、根本が間違ってるんじゃないかな」と物腰こそやわらかいが、譲らない。荒れた空気を読んで、上司として人員不足を詫びることで場を収めようとする今橋医師(大森南朋)が健気だ。

 2人がいない場所で「(鴻鳥)サクラと四宮、あの2人、仲いいんだか悪いんだかわからないですよね!」と後輩の下屋が愚痴るが、ごもっとも。

 しかし、小松いわく「でも考えてることは一緒なんだよ、最終的には妊婦さんのこと、そして家族のことを誰よりも考えている」らしい。実際その通りなのだろうが、原作では、直前に小松が、揉める2人を「そういうの余所でやってくんない? (食事の)味がわかんなくなるんだよ」と一喝していた。ドラマではそこが描かれていないので、単に安易に2人の関係性を言葉だけで説明してしまっているように見えたのが残念だ。

 

■トーラックは成功しなかったが……

 

 結局、トーラックを実施し自然分娩に挑むが、出産は難航し、それでも蓮は頑なに帝王切開を拒否する。しかし、長女の泣きながらの「ママ、がんばってる(だからもういいじゃん)」という一言で自身の考えを改め、途中から帝王切開に切り替え、無事出産。子どもにもっと愛情を持てるのでは? という想いから始めたトーラックだが、その想いは違う形で成就されたようだ。余談だが「安めぐみ」って、これ以上ないくらいの安産ネームだ。

 赤西は「なんで危険を冒してまで自然分娩にこだわるのか? 帝王切開すればいいのに」と何の気なしに四宮に語るが、「まだ切らなくていいものを、なんで急いで切る必要がある? そんなの優しさでもなんでもない。それで産まれて、お前はお母さんに(妊婦)におめでとうって言えるのか?」とやり返されてしまう。

 ん?? 結局トーラックをすることに理解を示しているのか? ライバル鴻鳥のしていることを新人にわかったように言われたくなかったようだが、本当にややこしい性格だ。

 だが、赤西は四宮に背中を押されて陣痛で苦しむ出産現場を訪れ、結果的に帝王切開手術に初の「前立ち」と呼ばれる第一助手として参加。出産直後、メインで執刀した下屋を差し置き「おめでとうございます! 本当におめでとうございます!」と蓮に興奮気味に声をかけ、下屋に引かれる。産科研修の最後にして、ようやく何かを掴んだ様子だが、またしてもキーマンは四宮だ。

 しかも四宮が赤西を「ジュニア」と呼んで執拗に小馬鹿にしていたのは、自分も実は産科医の息子で、かつてそう呼ばれていたことに由来しているらしく、四宮なりの非常にわかりにくいエールのようだ。目立ちすぎだぞ四宮。

 

■もう一組のゲスト夫妻

 

 肺に疾患があり、鼻から挿管されている子どもを新生児集中治療室(NICU)に預けている青木夫妻(木下優樹菜・パーマ大佐)。しかし連絡もなく2人でのんきに旅行に行き、その他人事具合を新生児科医の白川(坂口健太郎)に注意されてしまう。

「もう家族なんです。夫婦で楽しむことはもちろん大事ですが、これからは家族で楽しむことも考えてみてください」非常に短い出番だったためか、怒られるためだけにやってきたかのようなゲスト人選だと勘ぐってしまう。

 

■四宮の恋?

 

 何話かにわたり四宮と旧知の様子で接していたシングルマザーの倉橋恵美(松本若菜)。子どもをペルソナのNICUに預けているが、四宮とは医師と患者以上の関係がありそうで、それを勘ぐる白川が一人で勝手にドタバタとコメディーしていたのだが、その正体が明らかに。なんのことはない倉橋は研修医時代に四宮や鴻鳥らの下にいた後輩の産科医で、これにより数週に渡る白川の勘繰りはあっけなく終了。

 とはいえ、それでも四宮と倉橋には先輩後輩以上の感情があるようにも見え、だとしたら原作コミックにはない色恋沙汰な展開だ。

 倉橋は別れた夫に出産したことも告げずに復職を模索しているが、なかなか先が見えず行き詰まっている模様で、職を持つ女性の産休、復職問題も、このドラマでよく描かれるテーマとなっている。

 

■ダメな夫が成敗される水戸黄門

 

 あからさまに出産をナメていた蓮の夫・壮太だが、苦しむ妻や尽力する医師らを目の当たりにして自分の浅はかさを知る。

「まさか、こんなに大変だとは思いませんでした。女性は命がけで出産に立ち向かっているんですね」

「先生たちも大変ですね、僕たち夫婦のわがままを聞いてくれて本当にありがとうございます」

「バカなことを言ってすみませんでした」

 と、黄門様に悪代官が懲らしめられたかのような絵に描いた撃沈ぶりで、今回は特に勧善懲悪感が目立った。夫がわかりやすく謝罪する場面は原作になかったので、ドラマ化において、どの辺をターゲットにしているのかが見て取れる。ネットでの評判を見ても、物語そのものよりもダメな夫に対するいらだちの共感と自身の出産経験を思い出しての感動がメインのようで、やはりそこを意識して作られているのだろう。

 そのためか、感情移入のメイン媒体となるゲスト妊婦(母親)は、今まで実力派の女優が多かったのだが、今回は実力派というよりママタレありきのキャスティングだったため評判がいまいちなようで、ダメな夫役以上に引き受ける女優は大変そうだ。

 しかし本物の新生児を使う撮影は毎度リアルだし、デリケートな部分に気をつけつつ情報量の多い内容をうまくまとめあげているので、このまま人気シリーズとして安定しそう。

 個人的に今回一番気になったのは、帝王切開の最中に、メインの助手を初めて務める新人・赤西が、意識ある妊婦の目の前で何度も何度も叱られていたところ。素人バレバレの新人が何度も怒られながら自分の手術に関わってる状況って、単純に地獄だろうなって思いました。
(文=柿田太郎)

11.9%安定の綾野剛主演TBS『コウノドリ』は「ダメ夫を成敗する水戸黄門」か

 周産期医療センター(出産の前後を通して、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる病院)を舞台に、医師や助産婦、妊婦やその家族との悲喜こもごもと、生命の誕生の素晴らしさや厳しさを描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。

 中盤にさしかかる第4話の視聴率は13.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と自己最高を記録。さっそく振り返ってみたい。

 

■新人にスポットが

 

 このシリーズから、新人研修医としてペルソナ総合医療センターの産科に加わっている赤西吾郎(宮沢氷魚)。産科での研修も終盤に差し掛かる中で、今ひとつ身の入らない仕事ぶりを続けていたが、安易な判断で患者の妊婦を危険にさらすミスを犯してしてしまう。

 それを先輩の産科医・四宮(星野源)に咎められるも、反省するどころか「いいんじゃないですかね? ま、何もなかったんだし(笑)」とヘラヘラする始末。それは直属の先輩医師である下屋(松岡茉優)にビンタされてしまうほどだ。

 産婦人科病院の二世でもある赤西に対し、四宮は「これだからジュニアは使えない」と皮肉を込める。人材不足で忙しい職場において平然と定時に仕事を切り上げては、またしても下屋をイラつかせる毎日。新規加入したものの、初回から今ひとつ見せ場のなかった赤西にようやくスポットが?

 

■陣痛に耐えたら愛情が湧く?

 

 今回の患者は、2人目の出産を間もなくに控えた秋野蓮(安めぐみ)。まだ幼い長女につらく当たってしまう自分が嫌で、今回は帝王切開ではなく自然分娩で産みたいと考えている。

「陣痛を味わって産道を通して産んだ方が、この子(お腹の子)に愛情が湧くんじゃないか」「痛みから逃げた、楽して産んだから、上の子の子育てもうまくいってないんじゃ?」という理屈らしい。

 このように、過去に帝王切開を経験したことある妊婦が、お腹を切らずに経膣分娩(自然分娩)に挑戦することをトーラック(TOLAC)といい、原作コミックによるとアメリカでは保険会社が医療費を抑えるために広めたらしいが、この「お腹を痛めて産んでこそ子どもに愛情を持てる」という根拠のない根性論は、耐えることを美徳とする日本人の心情に合っているのか、確かにもっともらしく、よく語られている気がする。

 主治医の鴻鳥(綾野剛)によると、トーラックにはもちろんリスクがあり、

・かつての帝王切開時の傷が裂ける子宮破裂の可能性があり、その場合、子どもの後遺症や母子の命に関わる場合もある。(確率は5/1000)

・トーラック成功率は7割、危なかったら途中から緊急帝王切開に切り替える。

 ……と伝えられるも、「産道を通した方が、子どもに対する愛情が違うんですよね?」と蓮の決意は固い。

 助産師の小松(吉田羊)は、その理屈を「思い込み」だという一方で、「それでもお腹を痛めて産みたいって思うものなの」と理解を示す。

 蓮はことあるごとに、夫の壮太(前野朋哉)に相談するのだが、仕事の忙しさにかまけて今ひとつ……ふたつほど親身になってくれない。このドラマでお馴染み「とにかく旦那がわかってない」案件である。

「ま、俺はなんでもいいよ」「好きな方法でいいんじゃないかな」「ごめん風呂入ってくる」と、今回も見事に女性の側をイラつかせる。陣痛が始まった蓮を病院に送った時も、出産する時間は何時か? と、まるで映画の上映時間かなんかのように尋ね、それまで同僚と屋形船で飲み会をしようとしていたほどの傑物だ。

 長女の育児に関しても、たいして育児に関わってなさそうな壮太は他人事のように「もっと余裕を持って接してあげたら?」と言い放ち、当事者である蓮と「朝バタバタしてるのに、そんな余裕なんてもてないよ!」とぶつかってしまう。残念ながら日本の育児でありがちな対立なのかもしれないが、こういうこともあって蓮は藁にもすがる思いでトーラックに挑みたいようだ。

 

■今回の「鴻鳥 vs 四宮」

 

「妊婦の希望に沿ってあげましょう」という鴻鳥に対し、「お前のその優しさのせいで、妊婦はもちろん、俺たちも余計なリスクを背負わされるんだ」「夜間に子宮破裂が起きたらもっと危険だ」と反発する四宮。

 前回の放送ではBLに発展しそうなほど見つめ合い、理解し合う様子を見せていたのに、また周囲が気まずくなるほどの衝突。というか、主にけしかけてるのは四宮で、もめ出すのも四宮なら、最後に態度を軟化させ我々をキュンとさせてくれるのも四宮だ。今回も、もはや主役といっていいほど見せ場のほとんどを四宮が生み出しており、おそらくキャラクター人気投票をしたら主役を差し置いて1位になってしまうであろう美味しい立ち位置。従来なら星野と綾野は逆のキャスティングの方がイメージ通りのはずだが、あえて外したところが功を奏しているように見える。

 鴻鳥も「僕らの仕事は妊婦にトーラックをやめさせることじゃないよ」「忙しくて余裕がないから妊婦の希望に添えないなんて、根本が間違ってるんじゃないかな」と物腰こそやわらかいが、譲らない。荒れた空気を読んで、上司として人員不足を詫びることで場を収めようとする今橋医師(大森南朋)が健気だ。

 2人がいない場所で「(鴻鳥)サクラと四宮、あの2人、仲いいんだか悪いんだかわからないですよね!」と後輩の下屋が愚痴るが、ごもっとも。

 しかし、小松いわく「でも考えてることは一緒なんだよ、最終的には妊婦さんのこと、そして家族のことを誰よりも考えている」らしい。実際その通りなのだろうが、原作では、直前に小松が、揉める2人を「そういうの余所でやってくんない? (食事の)味がわかんなくなるんだよ」と一喝していた。ドラマではそこが描かれていないので、単に安易に2人の関係性を言葉だけで説明してしまっているように見えたのが残念だ。

 

■トーラックは成功しなかったが……

 

 結局、トーラックを実施し自然分娩に挑むが、出産は難航し、それでも蓮は頑なに帝王切開を拒否する。しかし、長女の泣きながらの「ママ、がんばってる(だからもういいじゃん)」という一言で自身の考えを改め、途中から帝王切開に切り替え、無事出産。子どもにもっと愛情を持てるのでは? という想いから始めたトーラックだが、その想いは違う形で成就されたようだ。余談だが「安めぐみ」って、これ以上ないくらいの安産ネームだ。

 赤西は「なんで危険を冒してまで自然分娩にこだわるのか? 帝王切開すればいいのに」と何の気なしに四宮に語るが、「まだ切らなくていいものを、なんで急いで切る必要がある? そんなの優しさでもなんでもない。それで産まれて、お前はお母さんに(妊婦)におめでとうって言えるのか?」とやり返されてしまう。

 ん?? 結局トーラックをすることに理解を示しているのか? ライバル鴻鳥のしていることを新人にわかったように言われたくなかったようだが、本当にややこしい性格だ。

 だが、赤西は四宮に背中を押されて陣痛で苦しむ出産現場を訪れ、結果的に帝王切開手術に初の「前立ち」と呼ばれる第一助手として参加。出産直後、メインで執刀した下屋を差し置き「おめでとうございます! 本当におめでとうございます!」と蓮に興奮気味に声をかけ、下屋に引かれる。産科研修の最後にして、ようやく何かを掴んだ様子だが、またしてもキーマンは四宮だ。

 しかも四宮が赤西を「ジュニア」と呼んで執拗に小馬鹿にしていたのは、自分も実は産科医の息子で、かつてそう呼ばれていたことに由来しているらしく、四宮なりの非常にわかりにくいエールのようだ。目立ちすぎだぞ四宮。

 

■もう一組のゲスト夫妻

 

 肺に疾患があり、鼻から挿管されている子どもを新生児集中治療室(NICU)に預けている青木夫妻(木下優樹菜・パーマ大佐)。しかし連絡もなく2人でのんきに旅行に行き、その他人事具合を新生児科医の白川(坂口健太郎)に注意されてしまう。

「もう家族なんです。夫婦で楽しむことはもちろん大事ですが、これからは家族で楽しむことも考えてみてください」非常に短い出番だったためか、怒られるためだけにやってきたかのようなゲスト人選だと勘ぐってしまう。

 

■四宮の恋?

 

 何話かにわたり四宮と旧知の様子で接していたシングルマザーの倉橋恵美(松本若菜)。子どもをペルソナのNICUに預けているが、四宮とは医師と患者以上の関係がありそうで、それを勘ぐる白川が一人で勝手にドタバタとコメディーしていたのだが、その正体が明らかに。なんのことはない倉橋は研修医時代に四宮や鴻鳥らの下にいた後輩の産科医で、これにより数週に渡る白川の勘繰りはあっけなく終了。

 とはいえ、それでも四宮と倉橋には先輩後輩以上の感情があるようにも見え、だとしたら原作コミックにはない色恋沙汰な展開だ。

 倉橋は別れた夫に出産したことも告げずに復職を模索しているが、なかなか先が見えず行き詰まっている模様で、職を持つ女性の産休、復職問題も、このドラマでよく描かれるテーマとなっている。

 

■ダメな夫が成敗される水戸黄門

 

 あからさまに出産をナメていた蓮の夫・壮太だが、苦しむ妻や尽力する医師らを目の当たりにして自分の浅はかさを知る。

「まさか、こんなに大変だとは思いませんでした。女性は命がけで出産に立ち向かっているんですね」

「先生たちも大変ですね、僕たち夫婦のわがままを聞いてくれて本当にありがとうございます」

「バカなことを言ってすみませんでした」

 と、黄門様に悪代官が懲らしめられたかのような絵に描いた撃沈ぶりで、今回は特に勧善懲悪感が目立った。夫がわかりやすく謝罪する場面は原作になかったので、ドラマ化において、どの辺をターゲットにしているのかが見て取れる。ネットでの評判を見ても、物語そのものよりもダメな夫に対するいらだちの共感と自身の出産経験を思い出しての感動がメインのようで、やはりそこを意識して作られているのだろう。

 そのためか、感情移入のメイン媒体となるゲスト妊婦(母親)は、今まで実力派の女優が多かったのだが、今回は実力派というよりママタレありきのキャスティングだったため評判がいまいちなようで、ダメな夫役以上に引き受ける女優は大変そうだ。

 しかし本物の新生児を使う撮影は毎度リアルだし、デリケートな部分に気をつけつつ情報量の多い内容をうまくまとめあげているので、このまま人気シリーズとして安定しそう。

 個人的に今回一番気になったのは、帝王切開の最中に、メインの助手を初めて務める新人・赤西が、意識ある妊婦の目の前で何度も何度も叱られていたところ。素人バレバレの新人が何度も怒られながら自分の手術に関わってる状況って、単純に地獄だろうなって思いました。
(文=柿田太郎)

綾野剛×星野源が、まさかのBL的展開に……『コウノドリ』損をするのはナオト・インティライミだけ!?

 周産期医療センターを舞台に、出産にまつわるこもごもを、優しく厳しく描く医療ヒューマンドラマ『コウノドリ』(TBS系)。今回も、視聴率は11.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と横ばいで安定。第3話を振り返ります。

 

■さて、今回のゲストは……

 

 出だしから山崎麗子(川栄李奈)と山崎友和(喜矢武豊/ゴールデンボンバー)の派手な茶髪夫妻が登場。診察室でも2人してツバのまっすぐなピカピカのキャップを被り、きゃっきゃとしている、いわゆる「今どきの若者ってこうでしょ?」的なカップルだ。

 そんな麗子は、肺動脈狭窄症という心臓の弁が狭くなっている持病のため、産科の主治医・鴻鳥サクラ(綾野剛)に無痛分娩で出産するよう進言される。今は治療により日常生活には影響なく暮らしているが、自然分娩での力みや陣痛は、心臓に過剰な負荷がかかるため、麻酔で痛みを逃す無痛分娩が必要とのこと。鴻鳥のそれなりに噛み砕いた説明を聞いても、全く理解できなかった麗子だが、友和の「心臓がグアーーーってなるのを、ぱぁ~って少なくしてお産」という通訳を聞き「無痛分娩、超ちょー神!」と歓喜、純粋に幸せそうだ。

 川栄は、ドラマ『フランケンシュタインの恋』(日本テレビ系)での元ヤンの大工役や、auのCMでの乙姫役など、「ちょっと抜けてるけど根はいい真っ直ぐな今どきの娘」を演じるのがハマり役で、今回もその路線と言える。

『フランケン~』では主演が同じ綾野剛だが、川栄が同じタイプの役なのに対し、綾野は人間になりたい心優しき人造人間の役だったので、どちらも優しさが強調されてはいるものの、怪物→産婦人科医というギャップがすごい。

 一方、第1話からずっと出演している、佐野彩加(高橋メアリージュン)。かねてより不安視されていた生まれて間もない子どもの持病(心臓に小さな穴があく=心室中隔欠損)が、さほど問題ないということがわかったばかりなのに「すぐに子どもを保育園に預けても平気か?」「仕事に復帰したいのに、だいぶ遅れてしまっている……!」と、我が子の健康状態には目もくれず、職場復帰への焦りが以前にも増して高まっている模様。今回診察を受け持った新生児科医・白川(坂口健太郎)も、子どもの顔をまるで見ようとしない佐野に動揺を隠せない。

 助産師・小松(吉田羊)は、かねてから佐野の精神状態を心配しており、ロビーで偶然遭遇した際も「産科に顔出してかない?」「何か困ったことない?」と声をかけるが、当の佐野は「もう産科の検診の時期は終わりましたよね……?」「なんか私、心配されてるんですね(笑)」と、心配されている自分にピンと来ていない。

 心ここにあらずといった様子で立ち去る佐野の後ろ姿に、鴻鳥はかつての患者・三浦芽美(松本穂香)の姿をオーバーラップさせる。初回から何度も回想で短く登場しているこの女性のことはまだよくわからないが、佐野の状態と関連があるようだ。

 

■最強の無神経コンビ

 

 良かれと思って突如来宅した佐野彩加の実母。連絡もなく来ておいて、部屋が汚いとか髪がボサボサだとか、精神的に参ってる実の娘を、冗談まじりながら無神経に責め立てる。母乳をあげていないことや、保育園に預けて仕事復帰しようとしてることを知ると、さらに実母の無神経攻撃はヒートアップ。

「(会社に)あんたがおらんでも大丈夫なんじゃないん?」

「仕事はあんたの代わりはおる。だけど母親の代わりはおらんで?」

「お産のギリギリまで働いておったけー、こげーなこと(子どもの心臓疾患)のになったんじゃないの?」

 まったく自分の現状を理解しようとしてくれない身内からの責め立て。方言のフランクさが、逆に神経を逆なでするように使われ、この地域(どこかはわからないようにしてる気もする)ごと嫌われてしまわないか不安になるほどの傍若無人ぶり。しかしこれは、実は“子育てあるある”なのであろう。実母に言われてこれだから、義理の母にでも言われたらと思うとゾッとする。

 後日、なかなか決まらない保育園探しにイラつく佐野に、帰宅した夫(ナオト・インティライミ)が「(仕事)復帰は、もっとゆっくりしてからでもいいんじゃない? そんな焦らなくてもー?」と、軽い気持ちで言ってしまう。悪気はないのだが、この夫は初回から基本ずっと佐野(妻)の地雷を踏み続けている。演じるナオトの好感度が下がらないか心配なほどだ。

「焦るに決まってるじゃない! 早くしないと今のポジションがなくなっちゃう、もうデッドラインだって言ってるでしょ!?」

 仕事を持つ女性が感じる、職場から離れていく焦りが沸騰する。

 佐野(夫)はブチ切れた妻に一瞬面食らいながらも、さすがの無神経さで立て直そうとする。

「何でそんなイライラしてんのぉー?」

「出産してから性格変わったよー?」

「このままじゃ俺しんどいよ」

 このイライラが限界のところに子どもが気管支炎を起こし、母である佐野は、診察中に「なんで私の邪魔するの……」とつぶやいてしまうほど、危険な精神状態に。

 佐野(夫)は、義母が来た際も多少は妻を気遣うそぶりを見せたが、義母が娘の彩加を下げる言い方をした際、「大丈夫です、僕会社では『イクメン』って呼ばれてますから(笑)」という冗談を発し、悪気はないのに例によって逆鱗に触れてしまう。嗚呼……。

■対照的な患者

 

 いくら心配しても、医師や助産師たちに甘えずに塞ぎ込む佐野に対し「家の近所で火事を見たためアザのある赤ちゃんが生まれるのではないか?」と、祖母に聞いた丸出しの迷信に怯えながら予約外でも平気で産科を尋ねてくる妊婦・山崎麗子。どちらも両極端だ。

 彼女は他にも、妊婦が体を冷やすのは厳禁だからと上着4枚(ダウンまで!)にレッグウォーマー2枚を着用して来たり、飲み物は白湯しか飲まないと言っているわりに熱くてこぼしたり、とにかく素直すぎるくらいに素直で、情報に左右されすぎているよう。

 あげく、出産当日に友人に何か吹き込まれ、無痛分娩をやめて自然分娩で産みたいと言い出し、周囲を困らせる。友人に言われたのは、

・赤ちゃんより自分のことが大切なの?

・楽して産むんだから母乳も出ない

・自然出産で産んだ母親の愛情には敵わないからかわいそう

 という、世にはびこる誤解を基にしたもの。

 主治医の鴻鳥は、妊娠・出産は一人ひとり違う、考え方も人それぞれだから、個人的にはどちらを選んでもいいと説いた上で、今回は心臓疾患があるので、母体に負担がかかると赤ちゃんにも負担がかかると諭す。

「僕は産科医なので、お友達のデタラメ話のせいで、2つの命を危険にさらすことは絶対にできません」

 さらに「出産は終わりではなく、始まりですから」とも。精神的に追い込まれている佐野のケースと照らして見ていると、出産がいかに「ゴール」でないかがよくわかる。

「自然分娩も帝王切開も無痛分娩も、立派な出産です。育む気持ちや愛情は、僕らではなく赤ちゃんが教えてくれますよ」

 テレビやネットでも、こと出産や育児に関しては、やたらと口を挟みたがったり、勝手な「モラル」らしきものを振りかざす人が多いのは事実だ。子どもを産む母親は、今や初産が多いわけだから、多すぎるくらいあふれる「情報」に振り回される人が増えているのだろう。現代ならではのエピソードだ。

 

■今回も医師、助産婦内での意見が対立

 

 どうやら佐野の症状は産後鬱(うつ)である可能性が高いらしく、もっと親身になってあげたいとする小松と、産後鬱は立派な鬱病で、それは精神科の領分だから、きちんと専門の医師に診てもらうように誘導すべきだ(キリがないから首を突っ込みすぎないでいい)とする四宮(星野源)が激しく対立する。

 小松は佐野を心配するあまり、個人的にラインのIDを渡してしまい、それは病院として絶対にまずいらしく、さらに四宮と対立する。

「1日に何人も診察する中で、さらに心療内科のようなことをできるのか?」と言う四宮と「話を聞くだけ楽になってくれる人もいるのだから、手遅れになる前に何かしてあげてもいいのでは?」と小松を擁護する鴻鳥。

 どちらの言い分も正しい、だからこそ産後鬱の問題は難しい、と今橋(大森南朋)が語るように、ドラマでは答えは出さず問題提起にとどめている。

■いよいよ佐野がビルの屋上に!

 

 子どもを夜の病院の受付に置き、屋上から下を見下ろす佐野彩加。簡単に屋上まで行けるこの病院(周産期医療センター)のセキュリティはどうなっているのかという防犯上の問題は置いといて、そこに間一髪現れたのは、鴻鳥でも小松でもなく、なんと四宮だった。

 どうしてここに現れたのかはわからないが、にくい演出だ。

 誰にも必要とされず、戻る職場も失った(同僚にポジションを奪われていた)ので、死にたいと言い切る佐野。

「俺にあなたの気持ちはわからない。だから今、あなたを引き留めてるのは、俺のワガママです。まだ治療の道がある患者を放っておくことはできない」

 クールな四宮の中の優しさが見える。意見が対立していた四宮の気持ちを知り、遠くから見つめる鴻鳥。

「少しだけ話を聞いてください、お願いします」と手を佐野に差し伸べる四宮は、まるで往年の『ねるとん紅鯨団』(フジテレビ系)で告白する素人のようだったが、しっかりと手をつなぎ返した佐野の心は溶けだしたかのように見える。

 駆けつけた佐野(夫)が「夫婦は2人でひとつって……」と語るやいなや「何だそりゃ? 人間は2人でひとつになんかなれない。死ぬまで1人だよ」「別々の人間だからお互いを尊重し合う、それで初めて助け合えるんだろ!」と一喝する四宮。ああ、第1話でもこんなシーンがあったのに……。ナオト……。

 この後、今橋に、仕事ばかりで育児をしていないことを「自分も同じだ」と慰められ、挽回を誓ういいシーンもあったのだが、それでもなんでナオトはあまり得しなそうなこの出演を受けたのか、イマイチ謎だ。

 周囲の声にようやく耳を傾けられるようになった佐野(妻)に対し、今度こそ改心した感じの夫が「俺イクメンじゃなくて、父親になるから」と微笑む姿でハッピーエンドでしたが、正直「こいつゼッテーわかってない! またきっとやらかすハズ!」って思ってしまいました。

 

■鴻鳥と四宮の関係がさらに濃く

 

 実は鴻鳥は、かつて自分が忙しさにかまけ、産後鬱の患者(三浦)の出す信号をキャッチしてあげられずに亡くしてしまった(飛び降り自殺)こと、声はかけていたつもりだが、三浦の言う「大丈夫、大丈夫」という言葉の裏を見抜けなかったこと、踏み込む勇気が出なかったことをひどく悔いていたのだった。

 その告白を聞いた四宮は、「いい加減にしろ。前を向けよ。お前が『大丈夫』じゃないんだよ?」と肩をさすり励ます。

 い、いつの間に?? もう我々が思ってる以上に、距離があったはずの2人の信頼関係は、かなりの高みに達してるいるようだ。

 ドラマのラストでは、「ああいうの(人に優しくすること)は、お前のほうが得意だろ」と手柄を鴻鳥に譲るような会話も見られ、「ありがとう」と微笑む鴻鳥に、四宮は「なんのことだ」ととぼけながら、見つめあっていた。

 朝日の差し込む部屋の効果もあってか、もうこのまま抱きしめ合ってしまうんじゃないかというくらいの空気。原作にはない、あざとさすら感じるBL的空気に、この同人誌があるなら読みたいと思いました。鴻鳥はいつもの通りの優しい口調なのが、四宮と2人の時はなぜかオネエに見えて来てしまうほどでした。こんなに近づいてしまって、この先大丈夫なのだろうか……。

■名言もたくさん

 

 今回は、無痛分娩の話に加え、3話に渡って描かれてきた佐野の産後鬱の話がひと段落することもあり、かなり盛りだくさんな内容ながら、各人物も丁寧に描かれ、よくまとまったいい回でした。ドラマ満足度ランキングで高評価なのも納得する内容で、次回以降、視聴率を上げそうな予感もひしひし感じます。

 また育児をまったくわかっていない筆者でも、いつかタメになるようなリアルな名言がいっぱいで、思わずメモしながら見たくなるほど。

・他の人の力を頼るのはダメなことじゃないよ?

・みんな子育て美化しすぎです。髪振り乱して必死にやってるんです。少しくらい誰かに頼っていいんですよ?

・赤ちゃんが0歳ならお母さんもお父さんも0歳です。

・子どもと四六時中一緒にいるのは妻ですからね。子どもにばかり目が行きがちですけど、お母さんは誰にも頑張ってるって褒めてもらえない。

 今回、新米研修医の赤西(宮沢氷魚)がミスを連発して四宮に怒られたり、下屋(松岡茉優)にビンタされたり、後半に向かって大きなトラブルを招きそうな空気を振りまいており、次回以降も楽しみです。
(文=柿田太郎)

好調キープの『コウノドリ』シーズン2、いよいよ星野源の“ツンデレ”が完全炸裂へ!?

 周産期医療センター(出産の前後を通して、産科と新生児科で連携した医療体制のとれる施設)を舞台としたヒューマン医療ドラマ『コウノドリ』(TBS系)。2年ぶりとなるシーズン2の第2話目が放送され、視聴率も11.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調をキープ。その内容を振り返りたい。

 

■出産は奇跡、育児は現実

 

 前回の第1話で、心室中隔欠損(新生児の心臓の心室に穴が開いてしまっている)の子どもを身ごもっていることが発覚した佐野彩加(高橋メアリージュン)が引き続き登場。新生児の疾患は、さほど問題がないことがわかるが、いくら産科医師の四宮(星野源)や助産師の小松(吉田羊)が不安なことなどないかと質問をしても、佐野は執拗に「大丈夫です」としか口にせず、すぐに仕事復帰したいという焦りもあってか、一人で背負いすぎてるように見える。

 前回の終盤では、妻への無理解を謝罪した夫(ナオト・インティライミ)も、結局育児休暇を取らなかった事実が明かされ、泣きじゃくる赤ん坊を横にあやすでもなく呆然と一人佇む佐野妻の姿が、先の不安を予感させた。

 その際、主役の産科医師・鴻鳥(綾野剛)の声を借りたナレーションで「出産という奇跡の後には、現実が続いていく」と語られ、これはドラマの冒頭で語られた「出産は奇跡だ」という言葉を受けてのものなのだろうが、出産(一瞬の奇跡)から育児(長く続く現実)になだれ込むように突入する一連の苦労も繋げて描こうとしていることがわかる。

 特にそれを感じるのは、このドラマが完全な1話完結という区切り方ではなく、何話かにわたり並行して妊婦やその家族が登場し、幾つかの軸として散りばめられている点だ。2年前の前シリーズでも、妻を出産と同時に亡くしてしまった小栗旬がシングルファザーとして奮闘する様子を追いかけ、定期的にその後の苦労(働きながらの育児)が描かれていた。

 医師側からしてみれば、随時同時進行で複数の患者の経過を看ているわけだから、ドラマだからといって「一人出産したら次」とならないのは当然なのかもしれない。さらに、並行して見せることで、妊娠・出産だけでなく、その後も母親と新生児の両方の健康を連携し見守る「周産期医療センター」という施設の特色もよく表現されているといえるだろう。

 

■母体を選ぶか赤ちゃんを選ぶか

 

 そして、今回登場したもう一人の妊婦は、妊娠して間もなく自身が子宮頸がんに侵されていることが発覚した久保佐和子(土村芳)。子宮の入り口を一部切除したものの、すでに周囲に転移しており、胎児に転移はしないものの子宮を全摘出しなくてはならないことが告げられる。佐和子の選べる選択肢は2つ。

・子どもをすぐ諦め、子宮を全摘出する。
・子どもを出産した後、子宮を全摘出する。

 当然、子どもを望んでいたわけだし、子宮も摘出してしまうので、佐和子は後者を選択したいが、問題はお腹の子が、まだ19週という、出産するにはあまりに早すぎる段階(帝王切開でも、早期すぎるため子どもに疾患や後遺症などが出てしまう可能性がとても高い)だということ。生まれてくる子どもの健康のために、もう少し母体内での成熟を待ちたいが、当然その間に母体のがんが進行する恐れがある。

 子が母体にいるうちは抗がん剤も使えない。乱暴な言い方をすれば、母体を優先するか、それとも母体を危険にさらしてでも生まれてくる子のリスクを減らすか、という大変難しい選択。結果次第で正解がないため、夫婦も、医師も、安易には決めかねる案件だ。

■鴻鳥 vs 四宮

 

 カンファレンスと呼ばれる、医師やスタッフ同士の検討会議では、久保夫妻が妊娠継続し出産を希望する場合、主治医の鴻鳥は28週で出産させるつもりだと発言。これに対し四宮は、早すぎて子どもに障害が出る可能性があると反論、母体の様子を見つつ32週までは引っ張るべきだと主張。2人の意見は完全に対立する。

 生まれてくる子どもの健康を優先する四宮と、母体の治療と両立させたい鴻鳥。鴻鳥の気持ちの裏には、生まれてくる子どもに影響の出そうな治療を拒んで、産後すぐがんで亡くなった、鴻鳥自身の母親への思いがあるはずだ(前シリーズ5話)。

鴻鳥「お母さんのがんの状態は、フタを開けてみないとわからない」

四宮「フタを開けてから、ベビーに重い後遺症が残りました、じゃダメなんだ」

鴻鳥「予想以上にがんが進んでいたらどうする?」

四宮「ベビーに後遺症が予想以上に残ったらどうする?」

鴻鳥「もちろんそれもわかった上で僕は話してる」

 久々に見る鴻鳥と四宮の完全対立。鴻鳥に対してライバルであり親友である(あってほしい)四宮はツンデレが魅力なのだが、新たなシリーズになってからは前シリーズより距離が縮まったのか、やや「ツン」の部分が弱く見え、物足りなかった。久しぶりにがっつりと対立してくれて、後は心置きなく「デレ」を待つばかりだ。

 

■産科 vs 新生児科

 

「我々新生児科は、産科の出した結論に添います。その時は全力でサポートします」と新生児科のベテラン医師・今橋(大森南朋)は言うものの、カンファレンス後の若手同期2人だけの会話で、「(28週で子どもを取り出しても)うちのNICU(新生児集中治療室)なら大丈夫なんじゃない?」という産科医の下屋(松岡茉優)、それに対し「そんな簡単に言うな、信頼してくれるのはうれしいけど、こっち(新生児科=NICUを管轄)に丸投げしないでほしい」と反論する新生児科医の白川(坂口健太郎)、それを受けて「私たち産科は、別にあんたたちに責任を負ってほしいなんて考えてないよ」と返す下屋。産科は出産までが主な担当で、新生児科は生まれた後の(特に疾患や障害がある)子どもの治療が主な担当なので、原作でもこの立場の違いはよく描かれている。

 ちなみにこの産科医の下屋とNICUの白川が、少しいい関係になるのでは? と若干思わせるところもあるのだが、それが同期の友情なのか恋愛なのかはわからない。

 冷静になった白川が最後に言った「結局は子どもに何かあった時に、親がその現実を受け入れられるか受け入れられないかが問題なんだよな……」という言葉が、出産に関わる医師の気持ちを表している。

 

■「出産」女優は毎回実力派揃い

 

 子宮摘出は避けられないと告げられた診察室を出てすぐ、夫(福士誠治)に子どもも産めなくなるのだから離婚していいよと言い出す佐和子。もちろん離婚したいわけではないのだろうが、どうしていいのかわからなくてなってしまった妻としての、女性としての苦悩がよく表れているシーン。

 ここで、NHK朝ドラ『べっぴんさん』でも主人公の友人・君ちゃんとして脇を締めていた土村が魅せる。診察室内で「子どもを産みたい」と涙する芝居も見事で、脚本上目立つ役ということもあるが、それを差し引いても光っていた。

 この女優、芝居のうまさというか、質が黒木華に似ているなと思っていたら、京都造形芸術大学映画学科俳優コースで、黒木の一つ後輩に当たる。しかも、かなり影響を受けたとのことで、どこか納得。

 先週の志田未来もそうだが、このドラマの妊婦役には達者な女優が多く、2年前の前シーズンでも、子どもを捨てる母親の苦悩を鬼気迫る演技で演じた清水富美加(第1話)や、無事産まれたばかりの我が子を、出産と同時に里子に出すため別れを告げねばならない中学生女子の、喜びと後悔の入り混じった非常に複雑な心理状態を見事に演じきった山口まゆ(第5話=神回とされる)などの演技が印象深い。男優の塩顔配役以上に、ゲスト女優の配役もこだわっているようだ。当たり前か。

■原作との違い

 

 原作コミックでは、鴻鳥が、出産時期の決断で悩む久保の夫(原作では市川姓)を、自身が育てられた養護施設に連れて行き、自身が出生の際に同じ子宮頸がんで母親を亡くしていることを伝える。そこで鴻鳥の養母・景子ママ(綾戸智恵)が久保に言った「彼女(鴻鳥の亡くなった母親)はサクラ(鴻鳥)を育てたかったと思うよ」という言葉が、夫が早期出産を妻に希望するきっかけとなっていた。

 しかし今回のドラマでは、おそらく迷っているのであろう鴻鳥が、単身養護施設を訪ねる設定になっており、そこで前述の養母の言葉を自ら聞き、早期出産を久保夫妻に勧めることを決める流れになっているので、若干意味合いが違ってきている。ちなみに母親の死因は、ドラマでは乳がんだ。

 この後、鴻鳥は、28週での出産を久保夫妻に提案する際「お母さんご自身の手でお子さんを育てて欲しいからです」と思いを込める。

 結局、母体を守るため早期出産を望む夫に対し、妻・佐和子はもし自分が死んでも、夫一人で育てる苦労が少しでも減るように、例え自身のがんが進行したとしてもギリギリまで体内で子どもを育み健康に産んであげたい(32週での出産)とし、夫婦間でも意見は対立する。

 しかし夫の「2人で育てるんだ、俺たちの子だよ? 3人の人生だよ?」との言葉に、妻も28週での早期出産を決意する。先週、育児を「手伝う」と発言し、四宮に「手伝うじゃないだろ? あんたの子どもだ」と一喝されてしまったナオト・インティライミが聞いたら、気まずいであろうほどの久保の夫の言葉。いや、言われたのはナオト本人ではなく佐野の夫としてなのだが、なぜか星野源にナオトが怒られた印象になってしまうのが忍びない。

 

■子宮頸がん予防ワクチン

 

 今回、子宮頸がん予防ワクチンの使用の是非についても描かれている。子宮頸がん予防ワクチンは、唯一予防できる可能性が高いワクチンと言われているが、運動障害など副作用らしき事例が複数起き、現在は推奨されていない。しかし、それがそのワクチン自体によるものなのか因果関係は正式には解明されておらず、ワクチンを打っていれば助かった命も多かったとの意見もある。

 日本では毎年、約1万人が新たに子宮頸がんになり、約3,000人が亡くなっているという現状の中、ワクチンが危険なモノなのかはっきりとした結論は出されておらず、ドラマでもあえてこの結論は出さずに、この議論そのものを登場人物の口で語らせ、問題提起している。自身も子宮頸がんで摘出手術を受け、ワクチンを推奨したことで一部で問題視された三原じゅん子参院議員と絡めて覚えている方も多いのではないだろうか。

 

■おもしろシーン

 

 題材が題材なだけに真面目なシーンが多いこのドラマで、時折挟み込まれるわずかな面白パート。前シーズンではダジャレを連発する麻酔医・船越(東京03・豊本明長)がその多くを担っていたが、今回は登場していないため、どうするのかと思っていたら逸材が現れた。

 医師や助産師らが休憩中に育児のストレスを語り合っている際、地味なソーシャルワーカーの向井(江口のりこ)が自身の一番の苦労として、「(旦那が)私のこと、子どもを産んでからも女として見るんです……」とつぶやき、休憩中の全員を絶句させる。食事の途中で、あからさまに中座する下屋や鴻鳥、タイミングを逃し向井に捕まる小松などを巻き込み、突然のコメディパートに。

 四宮と小松のじゃれあいなど、他にも息抜き的な場面はあるのだが、ここだけ際立って攻めている印象を受けた。思い返せば、前シーズンでも何の前触れもなく、その素朴な顔面を突如「ツタンカーメン」といじられ、即座に「関係ないし」と不機嫌に応答するなどピンポイントながら見事な印象を残していた(ここもネット上で好評だった)のだが、今回もこのホームランを機に、緊張の多いこのドラマに緩和を差し込んで欲しい。

 個人的には、突如、向井を「ツタンカーメン」といじったぽっちゃり助産師の真田(小林きな子)と2人はいい凸凹コンビだと思うので、前シリーズでもあったクリスマスでのレクリエーション会では是非2人でC-3POとR2-D2に扮していただきたい。

 ちなみに原作コミック(14巻)では、気分の優れない久保の妻(原作では市川姓)が自宅でお笑いのDVDを鑑賞している場面があり、そのトリオの風貌が、どう見ても東京03っぽい。これは東京03・豊本がレギュラー出演していた前シーズンの放送より半年は前のことなので、つまりドラマ以前から原作に登場させるほど、原作者の鈴ノ木ユウが彼らのファンだから3人がキャスティングされた(角田晃広は第1シーズンの7話ゲストとして、飯塚悟志は最終話にエキストラ的に出演)のでは? と思っていたら、どうやら鈴ノ木と東京03・角田が大学時代に同じ音楽サークルだったのが発端らしい。交流はなかったらしいが。

■今後の見どころ

 

 結局、久保の出産も子宮摘出手術も成功し、子どもの経過も順調、がんの転移も見つからなかった。

「運が良かったな」という四宮に、「お母さんが子どもを助けたいって思いが勝ったんだよ」という鴻鳥。しかしここで四宮のデレが炸裂する。

「いや、母親の手で子どもを育てさせたいっていうお前の思いが、勝ったんじゃないか」

 そう言い残して新生児集中治療室を出る四宮。少しだけニヤつく鴻鳥。いやーライバルって本当にいいもんですね! と水野晴郎が出てきても許せるシーン。

 お腹の中で大きくなるまで子どもを育てられなかった劣等感を感じたと告白する久保妻に「ちょっと、早く生まれちゃったけど、赤ちゃんがご家族と一緒に生きていくために、この誕生日を選んだんです」と、告げる今橋医師。出産を経験した女性が特に支持するドラマなのもわかるなーと思った直後、産後うつらしき佐野彩加が病院の屋上に立ち、まさに飛び降りようとしているシーンで次週へ続く。無事出産したからといって、そこで終わりではないという周産期医療の現場をドラマチックに描き出す。

 今後、気になるのは、鴻鳥がよく回想している赤ちゃんを抱えた三浦芽美(松本穂香)という存在、そして今回、四宮に対し「正式に離婚しました」と告げた謎の妊婦・三上いづみ(柊瑠美)だ。

 特に三上と四宮が2人きりで病院外のカフェで会話をするシーンでは、フリかもしれないが男女関係を匂わせる空気もあった。医療に携わる側の男女はたくさんいるのに、シリーズ通して、そして原作でも特に恋愛模様が描かれたことはないので、貴重な要素になるのかもしれない。

 このカフェのシーンで四宮が珍しく私服(白い丸首インナーに、黒のカジュアルなジャケット)だったため、ネットでは女性ファンがざわめいており、改めて巷での四宮人気を感じる。

 ちなみに主役である鴻鳥は謎の人気ピアニストとしての一面もあるのだが、今シリーズではあまりその必然性がなく、設定を持て余しているように見えるので、今後展開にからめていただけたらうれしいです。
(文=柿田太郎)