SNSの普及により、うかつな発言がしにくくなったテレビ界。肩の力を抜いて臨むべきトーク番組でも、演者は失言をしないよう留意しているのが事実だ。視聴者に“監視”されながら、内心ではひそかに緊張感を持っている芸能人が今では大半だろう。
そんな中、すがすがしい番組を観た。8月20日放送『チマタの噺』(テレビ東京系)にゲスト出演した吉幾三が、まるでノーブレーキだったのだ。
まず、吉が持ち出した話題は吉永小百合について。吉永が主演を務め、笑福亭鶴瓶も出演した2014年公開の映画『ふしぎな岬の物語 』に、吉も27年ぶりに映画出演を果たしている。
鶴瓶「あのとき、人が変わったみたいに真面目になってやなぁ~」
吉「そりゃもう、テレビで観てた吉永小百合さんやもん」
鶴瓶「きれいな顔してはんねや、かわいらしいし。俺、なんで知り合いになったんや思うわ。メール来たりするんねん」
吉「いいやんか。俺、泉ピン子さんからメール来るんやで」
「天は人の上に人を造らず」という言葉があるが、人間の中に思いっきり序列を作ってピン子をくさす吉。
吉「道端で会って、普通、挨拶といったら『吉くん~』とかって来るじゃない。俺の胸ぐらつかむんやで? 『(つかんだ胸ぐらを揺らしながら)元気か、おまえ~っ!』って。あと、山形出身のあき竹城と。散々や。もっと品のいい人おらんのかな、周りに」
半端ない口の悪さだが、彼なりの愛情表現だと察することは容易だ。そんな吉の愛情表現は、ピン子とあき以外にも向かった。若い頃の吉が会うと緊張する存在といえば、千昌夫だったという。
吉「仲人やってもらってるし。緊張するわぁ。でも、仲人が先に別れたんや。……そんな話してどうする!?」
余計なことしか言わない吉。仲人を務めた頃の千の妻はジョーン・シェパードで、確かにこの夫婦は1988年に離婚した。
吉「犬みたいな、あんな名前でのう」
相変わらずキレキレのトーク。でも、吉は日本を代表する演歌歌手である。後輩歌手も吉を慕っており、彼らと共に飲む機会は少なくないようだ。
吉「いっぺん、若手でイヤな奴は闇営業紹介してやろうかなと。潰しにかけて(笑)。俺はやらんで」
2010年、吉は「実姉3人への情」をテーマに「姉ちゃんへ」という曲を制作し、鶴瓶に贈っている 。しかし、鶴瓶はこの曲を歌うことを躊躇しているらしい。
鶴瓶「よう歌わんねん。1回うまいこといったんや。でも、次歌ったら(音を)外してんねん。怖いやん、もう」
吉「外れてる歌手ばっかりや、今! 若い歌手なんか、“ちゃんと歌っとんのか?”って」
若手に闇営業は紹介しないだろうけど、過激なげきは飛ばし続ける吉。
ネットでの炎上の原因として、夫婦問題や女性蔑視については避けて通れない。不満を抱える女性が多い昨今、男側の独りよがりな言い分を言いにくい空気感が世にはある。そんな時代に、吉と鶴瓶は妻の愚痴で盛り上がった。
「俺、納得いかんよ。昔は朝の5時までも起きて待ってた女やで。ベロベロで帰っても『外の酒は外の酒、家の酒は家の酒。一杯作れ』って作ってくれた人なんよ。それが、早く帰って1人で飲んでるものなら『飲んで来たんでしょ? 1杯だけにしい』って言われんねん。俺の買ったウイスキーがいっぱいあんねん。俺、なんでこまめに少しずつ飲まないかんの?」
「(食事してたら)こぼすやん。こぼすとな『あっ、も~う!』って言うわけ。『も~うって言ったってしゃあないやないかい。洗ってくれたらええやろ』『それ、なかなか落ちないの』って。落ちないものを食わすな(笑)」
「昔な、俺の耳元で『カァーッ!』っていびきかいててね。自分でびっくりしたんやろうな。目バッチリ開けて『今の何?』って言うから『お前のいびきじゃ』『本当? ごめんなさいね』って背中向けた途端『ブッ!』って屁こいて『あ、ごめんなさい』って」
言いたい放題の吉。 家に帰ってから、奥さんとは大丈夫なのだろうか?
吉「血圧は大丈夫? 俺、家に帰るたびに血圧上がんねん」
鶴瓶「これ、回り回って(奥さんが)観てるで」
吉「上がるものは上がんねん!」
テレビ局出禁経験者の2人による共演だった
令和とは思えない伸び伸びとした吉のトーク。この日の放送回を好意的に捉えると、ある種のアンチテーゼと受け取ることもできる。メディアが発信する公人の声は“監視”されるのが常だが、その視線を必要以上に意識しなければ、吉のように爆発力を生むことができるかもしれない。事実、この日の2人は物申した。
鶴瓶「なんか、『あれ、アカン。これ、アカン』になってきたよなあ?」
吉「歌詞カードにもあんねんで。(吉がリリースしたヒット曲)『俺はぜったい!プレスリー』、あれ、本当は『俺は田舎のプレスリー』やったんや。“田舎”があかんねん。“お巡り”もあかん。“百姓”もあかん。今は歌えるからそうやって歌ってるよ。なんで、あのときだけはそうだったのかと。今は“うんこ”も大丈夫やから」
鶴瓶「それは周りが止めないと。『こんな歌詞、あかんよ』と(笑)」
失言だろうがコンプライアンスから外れていようが、構わずに突き進んできた彼ら。生放送中に局部を出してテレ東を出禁になった鶴瓶と、ガウンのまま局アナに抱きつき、札幌テレビを出禁になった吉の2人によるアナーキーな共演だった。
(文=火の車)