松坂桃李と古田新太の男泣きで魅せる! 狂った運命の歯車が突き刺さる映画『空白』

 俳優・松坂桃李の役作りは、最近ますます凄みを増している。

 そう感じさせるのには役の幅広さの中に、ある共通する魅力があるからだ。しかもそれがすべて同じ演技に見えるというわけではなくて、全く異なるキャラクターの中に(松坂の本質にあると思われる)人間らしさを感じとることができる点だ。

 例えば、現在公開中の『孤狼の血 LEVEL2』では、主人公・日岡を演じている。前…

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モンスタークレイマーとヘタレ店長との壮絶戦!古田新太と松坂桃李が演じる不寛容社会『空白』

 どうしようもないダメ人間だけど、憎めない一面も持っている。人間は多面性を持った生き物であり、そんな人間の多面性まで全否定してしまうと、社会はとても息苦しくなってしまう。犯罪映画『ヒメアノ~ル』(16)などで巧みな心理描写を見せてきた吉田恵輔監督と、『新聞記者』(19)や『ヤクザと家族 The Family』(21)といった硬派な作品で知られる制作会社「スターサンズ」とのタッグ作『空白』は、…

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ムロツヨシが2人のヤクザの板挟みに! 『Iターン』は池井戸作品のパロディか?

 7月12日より、ドラマ『Iターン』(テレビ東京系)がスタートした。事前に公開されたイメージショットに写るは、主役のムロツヨシ、そして古田新太と田中圭だ。昨年は『大恋愛』(TBS系)で精神的イケメンを演じていたムロ、6月まで女装姿で「おつかレインボー!」と言っていた古田、そしてハイスペックなおっさんたちにモテまくっていた田中が、今までとまったく違う顔を見せてくれる今作。前クールの同じ枠で放送されていた『きのう何食べた?』(テレビ東京系)に続き、ムチャクチャ豪華な出演者たちである。

第1話あらすじ 広告マンなのに極道になるムロツヨシ

 広告代理店の営業マン・狛江光雄(ムロツヨシ)は、自分の悪口を言ったという理由で部長から最果ての阿修羅支店へ左遷を命じられる。狛江はその話を断れず、妻と娘を残し単身赴任することに。

 支店を立て直そうと、部下と取引先を回る狛江。すると、早々にドラゴンファイナンスという会社からチラシ制作の依頼が舞い込んだ。翌日、土沼印刷を訪ねた狛江は会社の様子を見て「私の求めるクオリティは期待できない」と、同社に今回が最後の仕事だと通告した。

 しばらくしてドラゴンファイナンスから呼び出された狛江は、社長の竜崎剣司(田中圭)からチラシの電話番号の誤植で店の売上が落ちたと責められ、500万円の賠償金を要求された。ドラゴンファイナンスとは表向きの顔で、正体は竜崎が組長を務める暴力団・竜崎組だった。誤植は、仕事を切られた腹いせに土沼建設の社長・土沼昭吉(笹野高史)がわざと行ったものだった。

 そこに、岩切組の組長・岩切猛(古田新太)が怒鳴り込んできた。誤植でチラシに載せられた電話番号は、岩切組が経営するテリヘル店の番号だった。竜崎に捕まる狛江に岩切は無理やり酒を飲ませ、「兄弟盃を交わした。こいつはワシの舎弟や」と狛江を連れ去った。

 岩切組に拉致された狛江は2階の窓から逆さ吊りにされ、迷惑料500万円と上納金月々5万円を約束させられる。こうしてサラリーマンでありながら、岩切組の組員になったのだった。

『Iターン』は2010年に福澤徹三が発表した同名小説が原作。今回のドラマ化に際し、アレンジを加えているところもあれば、元の設定をそのまま生かしている箇所もある。

 まず、阿修羅市行きの飛行機内で起こった出来事。身なりの良いビジネスマンを見て、みすぼらしい自分の靴を隠すなど、ムロは萎縮する。このビジネスマンが隣の席に座るや、2人の間で肘掛けの取り合いが勃発した。結果、あっさり敗北するムロからは腰の弱さが窺える。阿修羅市に到着すると、すれ違うのは危なそうな通行人ばかり。そんな人たちから話しかけられても、目も合わせず足早にムロは通り過ぎる。

 そんな彼の態度が一変したのは、道端でシンナーを吸っている女性2人組を見た時だ。うんこ座りする彼女たちを凝視し、説教しようとさえする。「こっち来いよ!」と挑発されたら、言われた通りに接近し始める強気ぶり。阿修羅支店では、有能に思われようと部下に虚勢を張り続ける。下手に出る印刷会社には、あっさり三行半を突き付けた。

 狛江はそういう奴なのだ。人によって態度を変える。強い者の前ではおとなしく、弱い立場の人間には威圧的。この男の弱さとずるさを表すためには、実は伏線でもなんでもない肘掛けのくだりを原作通り忠実に再現する必要があった。

 この物語は、ムロが古田と田中の板挟みに合う形で展開する。両者ともにヤクザだ。だから、この先ずっとムロは及び腰である。だが、いつの間にかサラリーマンらしからぬ大胆さが芽生え、緩やかなキャラ変が行われていくから期待してほしい(原作通りに進むならば)。そういえば、このドラマのエンディングはムロと古田が海岸で仲良く犬の散歩をしている映像だった。

 ところどころ、他局のヒットドラマのオマージュをぶっ込んでいるのが面白い。

 ドラゴンファイナンスに初めて訪問した際、ムロは部下の渡辺大知と一緒だった。ムロが建物に入ろうとすると、渡辺は「定時なんで」と自分だけ仕事を上がった。完全に、『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)を意識した流れである。

 また、岩切組に連れ去られたムロは、カメラ目線で視聴者にこんなことを訴えた。

「皆さん、違うんですよ! このハードなドラマの展開、違うんですよ! これは、僕が中年の危機を乗り越える感動の物語なんですよー!」

 ムロの長ゼリフは、TBS日曜21時台でおなじみの池井戸潤作品のコンセプトそのままだ。あの世界観をパロディするムロ。この構図って、まさしく『LIFE!~人生に捧げるコント~』(NHK)だろう。内村光良と『集団左遷!!』(TBS系)のコントを演じるムロを、本人がオマージュしているみたいである。

 あと、田中がムロに言った「俺は優しいほうだぞ?」のセリフ。原作通りのキャラ設定なら、この男が優しくないのは明らかだ。「優しいほうだぞ?」に間髪入れず、『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)ばりに「んなわけねえだろっつうの」と突っ込みたくなってしまった。

 これらの気になるフックを散りばめつつ、初回の内容は様子見といったところだった。実写版『Iターン』についての評価は次回以降に持ち越しだ。

(文=寺西ジャジューカ)

『俺のスカート、どこ行った?』”毒親”板尾創路登場で、永瀬廉の闇が明らかに!

 

 5月25日に『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)の第6話が放送された。

 豪林館学園高校で、2年生に向けての進路説明会が開かれることに。生徒と一緒に保護者にも集まってもらい、その後、希望する保護者が授業参観する予定だ。

 そんな中、父・靖夫(小木茂光)の勧めで見合いをした里見萌(白石麻衣)の結婚が決まりかけていた。結婚相手は、医師の財前拓也(戸塚純貴)。靖夫は自分の病院を継いでもらうため、どうしても里見に医師と結婚してもらいたいと考えている。靖夫との約束で、里見は結婚したら学校を辞めなければならない。しかし、里見は結婚したくないし、教師を続けたいとも思っていた。里見は保健室を訪れ、養護教諭の佐川天音(大西礼芳)に結婚のことを打ち明けた。もう結婚するしかないとあきらめている里見の話を、ベッドで昼寝をしていた原田のぶお(古田新太)が聞いていた。

 里見は、寺尾綴校長(いとうせいこう)と長井あゆみ(松下奈緒)に、結婚と退職を報告する。そんな里見に対し、本当にそれでいいのかと諭す原田。原田の言葉を聞いた里見は、婚姻届へのサインを拒むなど抵抗したが、靖夫は自分が書いて提出すると強硬な態度だった。

 一方、明智秀一(永瀬廉)の父・純一(板尾創路)が授業参観に訪れた。授業後、純一が「こんな授業を受けてても金を稼げるわけではない」と明智に話している場面を原田は聞いてしまう。

 結婚式当日、ウエディングドレス姿で現れた原田は靖夫と口論になり、その様子を見ていた里見は結婚を取りやめたいと宣言。原田は靖夫を連れて里見とともに学校へ戻った。里見はウエディンドレス姿のまま教壇に立ち「あきらめなければ、極上の幸せは自分の手でつかめる。みんなも極上の道を自分の手でつかみ取りましょう」と話した。

 後日、里見の退職願は取り消されたが、明智が学校に退学届を出していた。

 第6話は「親」を描いた回だったように思う。まず、娘を自分が決めた相手と結婚させ、親の望むレールに乗せようとした晴夫。本当は結婚したくない里見を連れ戻した原田も、糸(片山友希)の父親だ。式場から戻った里見の授業を見る原田の表情は、完全に父親のそれだった。

 そして、純一。アルバイトで生計を立てる息子に金をせびりに来た、刑務所帰りの明智の父親だ。明智の部屋を見るとまだサッカーボールやスパイクが置いてあり、本心ではサッカーをやめたくなかったことがうかがえる。彼がサッカーをやめた理由には父親が関わっているが、犯罪のことを東条正義(道枝駿佑)たちには言えない。彼がふさぎ込む理由はそこにあるのではないか? 「家に入れろ」と迫る純一を入れてしまった明智。怯えていたように見える。番組ホームページの7話予告を見ると、純一は家族に暴力を振るっていたようである。

 明智は学校に退学届を出した。「原田を辞めさせる」と言いながら、自分のほうが先に辞めようとしている。

「大人って何もできねえくせに偉そうなこと言いますよね」(明智)

 あの父親が原因でこんな明智になったのだと、容易に想像がつく。

 今回は、親を描く回だった。里見の父親は娘に“そこそこの幸せ”を与えようとし、明智の父親は息子に寄生してすべてをむしり取ろうとしている。同じ毒親なのに、あまりにも対照的だ。

古田新太の死期は近い!?

 次回7話は明智が主役の回だ。ここで、今までを振り返りたい。第2話は部活(バトン部)が、3話は親思いの息子が、4話は情けない大人が、6話は毒親が、今作のテーマだった。実は、どれも明智が抱える問題とリンクしているのだ。大人に不信感を抱く明智。彼の心の闇を原田が晴らしてくれるのだと信じたい。

 原田に関して気になる描写がある。里見をさらいに式場へ行ったとき、彼はウエディングドレス姿だった。彼は“叶えたいこと”をノートにリスト化しており、今回は「ウエディングドレスでヴァージンロードを歩く」という夢を叶えた。里見父子には「1回きりの人生で幸せ遠慮してどうすんのよ!」と檄を飛ばした。

 以前より、彼は何かの薬を常用している。やはり、原田は病を抱えているのではないだろうか。余命を意識する人間だからこそ、こんなメッセージを発しているのでは? だとしたら、今まで原田が発してきた言葉ががぜん重く響いてくるのだが。

(文=寺西ジャジューカ)

『俺のスカート、どこ行った?』ラスボス的存在の永瀬廉、ついに“いい人フラグ”が立つ?

 5月18日に『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)の第5話が放送された。1話、2話……と高かった期待感に反し、かなり残念な内容だったこのドラマ、前回辺りからどんどん面白くなっている気がする。

 若林優馬(長尾謙杜)が拾ったスマホを職員室まで届けに来た。ちょうどその時、スマホを失くしたという別のクラスの生徒・山上愛理(田辺桃子)が職員室に来ていた。「見つけてくれてありがとう」とお礼を言われた若林は、愛理に一目ぼれ。東条正義(道枝駿佑)に、愛理のことを知っているか尋ねる。

 そこに原田のぶお(古田新太)が通りかかり、若林の恋を後押しするために「私があんたをプロデュースしてあげる」と言いだした。

 原田に促され、若林は愛理から連絡先を聞き出すことに成功。数日後、若林は愛理からデートに誘われる。しかし実は、愛理は明智秀一(永瀬廉)のことが好きで、明智とつながりたくて若林に連絡していたのだった。明智を呼び出した愛理は「友だちが勝手に連絡しちゃって」と言い訳。愛理の浅はかさを見抜いた明智は愛理を冷たくあしらい、相手にしなかった。

 そして、若林と愛理のデート当日。原田は若林に「お前は遊ばれていたんだ」と伝えてしまう。若林に本心を聞かれた愛理は、またも責任転嫁した。

「わざとじゃないの。なんていうか、ノリみたいなので。私、本当はダメだなって思ってたんだけど。だから、明智君にも言っといてほしいんだ。本当はダメだって思ってたこと」

 そんな愛理に、原田は「あんたの軽率な言動が1人の人間を傷つけた。相手の気持ちを想像できないと心がどんどんブスになるわよ」と言い放った。

 今は距離のある明智と東条の関係性だが、今回、2人の信頼関係がまだ崩れていないことがわかった。明智の紹介を愛理から迫られた東条は「いいよ」と返答。しかし、「でも明智、そういう女の子の、人を見下す感じのやつ嫌いだから気をつけて」と付け加えるのだ。今は仲良くできなくても、東条の明智への信頼は揺るいでいない。

 案の定だった。LINEで愛理に呼び出された明智。初めは至って普通だったが、人を呼んでおいて若林の悪口を言う愛理の人間性を見抜き、どんどん冷めた雰囲気になっていく。“人を見下すのが嫌いな明智”がそこにはいた。呼び出しには応じた。話も聞いた。そして、一気に目が死んでいく明智の対応。「明智ならばすぐに見抜くだろう」と信頼したからこそ、東条もあえて明智のLINEを愛理に教えたのだろう。

 ただこじらせているのではなく、芯のある青年だった明智。つまりこれは、今後の展開に向けた“明智、実はいい人フラグ”になるかもしれない。

フラれても友だちは増えていた若林

 からかわれていると知っても、あえて待ち合わせ場所に向かった若林。愛理の口から本当のことを聞きたかったのだ。なかなかできることではない。1話で屋上から飛び降りた若林。一度死んだ身でもあり、死ぬ気で頑張っている。結果、彼はフラれた形になった。でも、若林のことを気にかけるクラスメイトは大勢いる。いじめられっ子だったのに、いつの間にかクラスの人気者だ。フラれたけれど、代わりにたくさんの友だちができていた。

 ぼっちが学校生活で最もつらい時間のひとつに、昼休みが挙げられる。原田は、昼食の時間を常にクラスの生徒と共にする。決して、ぼっちをぼっちにさせない。彼なりの教育方針なのだろう。

 愛理から呼び出された明智。彼が本当に悪人だったら愛理の好意を利用し、原田と若林を陥れてもおかしくなかった。でも、そういう人間じゃない。クラスのラスボス的立ち位置にいる明智だが、実は今までに悪いことをまったくしていないのだ。

 ショーパブに入ろうとするチア部の動画、カンニングする光岡慎之介(阿久津仁愛)を目撃するなど、決定的な材料は今まで何度も手に入れていた。なのに、なんだかんだ一度も活用していない。原田を辞めさせようとしていること以外、彼は結構いい奴だ。

 じゃあ、なんであんなに大人に突っかかるのか? 5話エンディングで、明智のスマホに妙な連絡が届いた。

「おい 秀一 父親を無視するなよ」

 どうやら彼は、父親との根深い確執があるようだ。だから、大人に不信感を抱いている。

 家に帰ると涙するくらい、ギリギリのメンタルでいる明智。その状態で学校生活とアルバイトに励んでいる。彼こそ、真っ先に原田に相談してほしいくらいなのだが……。原田を中心にクラスが明るくなればなるほど、明智の闇が際立っていくのが皮肉だ。

(文=寺西ジャジューカ)

『俺のスカート、どこ行った?』永瀬廉が誰もいない家でひとり涙……彼の抱える闇とは?

 5月11日に『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)の第4話が放送された。今回のテーマ……というか、ドラマからのメッセージは“謝罪”だろうか。

 豪林館学園高校にて、さまざまな職場で仕事をする授業「職業体験」が行われた。原田のぶお(古田新太)と里見萌(白石麻衣)は探偵事務所の職業体験を引率することになり、東条正義(道枝駿佑)や若林優馬(長尾謙杜)を含めた生徒たちを連れ、魚住探偵事務所へ向かった。

 事務所で原田たちが任されたのは人探しだった。依頼者は、探偵事務所長・魚住(前野朋哉)の祖母の豆子。食堂で自分が食べきれない分を食べてくれた上に、代金まで払ってくれた人を探して欲しいそうだ。原田たちは豆子の話を参考に似顔絵を描き、それをもとに目的の人を探し始める。

 一方、明智秀一(永瀬廉)は工場で職業体験をしたものの、工場長(岡部たかし)に邪魔者扱いされ衝突していた。他の生徒を連れ工場から引き揚げたことがバレた明智は、寺尾綴校長(いとうせいこう)に呼び出された。そこで工場に戻るよう言われた明智は、「原田が工場長へ頭を下げてくれたら戻る」と言いだす。

 一方、人探しをしていた原田たち。原田の娘の糸(片山友希)が描いた似顔絵は豆子が探している人物にそっくりで、しかもその人物は原田のクラスの生徒・駒井和真(堀家一希)だということに気が付いた。

 翌日、工場行きをボイコットした明智や駒井らに怒り、学校に工場長がやって来た。工場長は「お前らの面倒を見ないといけない俺らは手間が増える」「お前らに仕事させてミスが起きたら俺が責任取らなきゃいけない。だから、リスクを取らないために見てろと言った」と高圧的な態度を取る。原田は「あんたも若いとき、間違ったら上司に頭下げてもらったんじゃないの?」と意見するが、工場長は「じゃあ、お前が謝れ。こいつらの担任だろ?」と原田を挑発。原田は土下座をし、たじろいだ工場長は帰っていった。

 原田は駒井を豆子と会わせ、豆子は食堂で代金を支払ってくれた駒井にお礼をした。

永瀬廉(明智)が大人に挑発的な理由

 職業体験の受け入れ体制を整えていなかった工場側。許可なしに帰ってしまった明智たち。どちらが悪いかは、ここでは問わない。というか、両者まずい。工場側は学生用の仕事を用意するなど、準備しておくのが普通。生徒たちもボイコットによって周囲に迷惑をかけている。どちらにも非があるのだ。

 明智は工場に戻る条件として「原田が工場に謝ること」を提示した。彼は親と同居しておらず、大人に不信感を抱いている。やたらと教師に取る挑発的な態度は、信用できる大人なのか試しているフシがあるのだ。

 ほかの教師は理不尽な工場長にペコペコと頭を下げ、事なかれ主義を露呈した。そんな中、原田だけは自分たちの味方として工場長と対決し、土下座までした。その姿を前に、明智は葛藤する。原田の土下座も本心ではない。彼は誰に謝っていたのか? 工場長のような情けない大人がいる事実を、大人を代表して原田が明智たちに謝罪していたように見えた。

 原田の謝罪を求めた明智だったが、本当に謝罪するなんて計算外だったはず。ほかの生徒は、明らかに原田に惹かれ始めている。大人への不信が根深い明智とは温度差がある。

 東条が明智グループからハブられている。職業体験のグループ分けで、彼はひとりぼっちに。そして、希望職種を記入する用紙は白紙のまま提出した。自分が引率する探偵体験の班に東条を入れ、若林と組ませたのは、原田による教育的配慮だろう。

 3話エンディングで、かつての仲間から机の上の筆箱を落とされた東条。その場面を見て、若林は何もしなかった。東条にいじめられてきた若林にはわだかまりがある。それなのに、フラットな態度で笑顔で話しかけてくる東条。若林はガマンならなかった。

「なんで、普通に喋り掛けられるわけ? 僕、許したつもりないんだけど。『ごめん』の一言も言えないわけ? まあ、言われても何だけど」(若林)

 東条は、頭を下げる原田の姿を見て感化された。そして、若林に謝罪し、土下座しようとした。若林は「工場長みたいな大人になりたくない」と、東条を許した。

 4話にして、明智以外の全員が原田を受け入れた。「誰が最初に原田を辞めさせられるか」というゲームも、もはや有名無実化している。原田の生徒への思いやりが、明智が孤立化するフラグになっているのは皮肉だ。

 前回のエンディング、誰もいない自宅で明智はひとり涙していた。彼の抱える闇はなんなのだろう? 明智もいつか、原田に救われてほしい。

(文=寺西ジャジューカ)

古田新太『俺スカ』爆死で日テレと絶縁!? 番宣不足に不満タラタラ?

 53歳にしてスカートまではいたというのに、本人からすれば「俺の視聴率、どこ行った?」という思いなのだろう。

 古田新太主演のドラマ『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)の視聴率が低空飛行となっている。同ドラマは、古田演じるゲイで女装家の現代文教師・原田のぶおが、新任で赴任した高校で担任を受け持つ2年3組を型破りな方法で教育していく学園コメディー。初回こそ10.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)の2ケタスタートとなったが、第2話は9.7%、3話では7.9%と右肩下がり、4話で8.6%と、やや持ち直したものの厳しい状況に変わりはない。

「放送前には古田は『これで低視聴率ならただのミスキャストですよ』と自信満々でしたが、視聴者からは『説教が屁理屈ばっかで心に響いてこなかった』『何言ってるか聞き取りづらい』『設定が狙いすぎて寒い』と脚本や演出への不満が目立ち、『古田新太の無駄遣い』とまで言われています。脇にも乃木坂46・白石麻衣、King & Prince・永瀬廉、なにわ男子・道枝駿佑、長尾謙杜ら若者人気の高い美男美女を揃えているにしては低い数字になってしまっています」(テレビ誌ライター)

“爆死”のニオイが漂い始めていることに、古田もイラ立ちを隠せなくなっているといい、テレビ関係者はこう耳打ちする。

「古田からすれば、女装までしてこの数字ではとんだ赤っ恥。『日テレには二度と出ない!』と激怒しているといいます。怒りの矛先は日テレの宣伝部。しっかりとした番宣をしてもらえていないことに不満を募らせているようです。実は、日テレの番宣予算は際立って少ない。他局ならドラマ1クールで2,000~3,000万円のPR予算があるのですが、日テレは1,000万円がいいところ。実際、放送前にはそれなりに出演者の番宣出演がありましたが、始まった後はほとんどPRの場がなくなっていますからね」

 7月クールにはテレビ東京系ドラマ『Iターン』でムロツヨシとのW主演が決まっている古田。心の中ではすでに『俺スカ』には見切りをつけているのかもしれない。

『俺のスカート、どこ行った?』は正統派学園ドラマだった! 古田新太が女装する必然性はあるのか……

 5月4日に『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)の第3話が放送された。

 原田のぶお(古田新太)は、明日に迫ったテストに向け張り切って授業を行っている。しかし、光岡慎之介(阿久津仁愛)が相変わらず欠席のままだった。テスト当日、校門の前で光岡と会った教師・里見萌(白石麻衣)は、彼の手を引いて教室へ連れていき、光岡はテストを受けることに。しかし、不登校が続いていた光岡は問題が解けず、隣の席の女生徒の解答をカンニングしてしまった。

 光岡は父を亡くし、働く母親(須藤理彩)の代わりに幼い弟妹の面倒を見ている。それを知った原田は、保育園へ弟妹を迎えに行く光岡に付いていった。そして、そのまま光岡の家に上がり込み、「全国の母親が幸せになれるようなサービスをつくりたい」という目標を持っていると光岡から打ち明けられた。

 後日、光岡のカンニング行為が学校に発覚する。決まりでは光岡は全教科0点になるが、「私たちが教えなきゃいけないのは、間違えてももう一度挑戦できる社会の優しさ」と原田は異を唱え、光岡のために2年3組全員が再テストを行うこととなった。

 この決定に不満を口にする生徒は多かった。3組の中心人物である明智秀一(永瀬廉)は、原田に「国語のテストでクラスの平均点が前回より高かったら1つだけ言うこと聞いてくれ」と持ちかけた。

 再テスト2日目、クラスメイトに責められることを気にした光岡は登校しなかった。原田は「お前のカンニングを許さない奴もいるだろう。私がミスくらい許せるクラス作ってやる」と、光岡を学校に連れてきた。クラスメイトに謝罪する光岡。しかし、みんなはあまり気にしていない様子である。テスト終了後、光岡はクラスメイトと仲良く下校した。一方、明智は誰もいない家に帰宅し、1人で涙を流していた。

毎週おなじみ原田の名言

 次第に脚本が整理されてきたか、1、2話に比べ今回はかなり見やすくなった印象だ。真っ先に印象に残るのは、毎度おなじみとも言える原田からの名言。カンニング行為が発覚した光岡に、同僚の長井あゆみ(松下奈緒)は「社会に出ると、一度間違えたら大変なことになる。間違いは許されない」と叱った。原田はそれを否定する。

「間違えることが許されないほうが間違えてるのよ。私たちが教えなきゃいけないのは、一度でも間違えちゃいけない社会の厳しさより、間違えてももう一度挑戦できる社会の優しさじゃないかしら」

 最近は、一度の失敗で集中砲火を浴びる芸能人が多い。子どもたちも、その姿をよく見ているはずだ。でも、「それだけの世の中ではない」と生徒に伝えていきたい。それが、原田の教育方針だった。

 クラス内の人間関係に動きが見え始めた第3話。ようやく、このドラマもエンジンがかかってきた感がある。

 何より、明智と衝突した東条正義(道枝駿佑)のハブられ方にリアリティがあった。といっても、明智が先導して東条をのけ者にしているわけではなさそう。周囲が勝手に明智と東条と天秤にかけ、パワーバランスで明智に付いたという感じだ。

 最も印象的だったのは、放課後の1シーンである。明智に声を掛けたクラスメイトが、勢いで東条の机の上にあった筆箱を落とした場面。すでに、視界に東条が入っていない事実を残酷なまでに表している。筆箱を拾う際の東条の表情には、憤りと切なさがにじみ出ていた。初回であれだけ威勢よく原田に突っかかっていたのに、落差がえぐすぎである。

 さらにリアルだったのは、この場面を目にしながら若林優馬(長尾謙杜)が何もしなかったこと。平凡な学園ドラマなら、若林も一緒に筆箱を拾うだろう。そして、仲良くなったりする。でも、若林は逡巡した。東条は自分をいじめていた張本人。自分をいじめの標的にしていた。最近まで的にしていた自分に助けられても……というためらいが彼にはあったはずだ。加えて、明智への恐怖心もある。原田の檄でマスクは取ったものの、ヒーローに変身したわけじゃない。この辺の心理描写はリアルだった。

『マツコ会議』へのバトンタッチは自然

 帰宅した明智は、なぜか1人で泣いていた。サッカーをやめ、夜はアルバイトに励む日々。家で家族は待っていない。成績優秀でスクールカースト最上位にいる明智は、クラスメイトに本当の自分を見せていないのだ。完璧を演じることで自分を守っているようにも見える。明智は闇を抱えている。

 第3話の主役は光岡だった。学校でトラブルを起こしても、家庭では彼は愛に包まれていた。明智とのコントラストはあまりに鮮明だ。

……と、生徒にフォーカスしてこのドラマを見ると、ちゃんと見どころはつかめてくる。つまり、今作はあまりにも正統派な学園ドラマなのだ。『俺のスカート、どこ行った?』というタイトルだが、教師より生徒に注目したほうがストーリーを楽しむことができる。このドラマが、とりわけジャニーズファンに好評なのも当然だろう。

 そうなると、古田新太が女装をする設定の必然性が疑問に思えてくる。風変わりな教師が過激なメッセージを放てば、実はなんでも良かった?

 ただ、このドラマを見て、後に続く『マツコ会議』(日本テレビ系)をそのまま見続けるのは、自然なバトンタッチではあると思う。

(文=寺西ジャジューカ)

『俺のスカート、どこ行った?』突飛な設定には納得も、初回にも増して凡庸な第2話

 4月27日に放送された『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)第2話。豪林館学園高校が学校全体の偏差値を上げるための補習期間に入った。放課後の補習には、担任教師も付き添わなければならない。原田のぶお(古田新太)は、残業代なしで補習に付き合わされると聞いて「ブラック企業じゃん?」と不満たらたら。

 そんな中、チアダンス部顧問の戸塚(平岩紙)が産休に入ったため、代わりに顧問をやってほしいと依頼された原田。部活の顧問をやれば補習担当が免除になり、手当がもらえると聞き、引き受けることに。

 大会が迫り、朝練はもちろん、夜遅くまで猛練習を重ねる部員たちに対し、原田は「練習しすぎよ」「ブラック部活ね」と練習を止めたが、今度の大会でどうしても上位入賞したい部員たちはこっそり自主練を続行。そんな中、川崎結衣(髙橋ひかる)が練習中に足をくじいてしまった。川崎のケガは学校に知られ、チア部は補習期間中の練習休止を命じられる。原田はチア部を御用達のショーパブへ連れて行き、そこで練習をするよう場所を提供した。

 大会当日、川崎は会場へ姿を現さなかった。しかし、副担任の田中みちる(桐山漣)に見つけられ、戸塚が入院する病院へ連れて行かれる。実は、戸塚はシングルマザーになることを隠し、出産しようとしていたのだ。「チアは誰かを応援するもの」と、原田はチア部員たちに戸塚を応援するよう指示。チアをやめるつもりでいた川崎も、原田と部員たちに説得され、戸塚にダンスでエールを送った。

なぜ主人公は女装をしているのか

 このドラマは、風変わりな先生が破天荒なやり方で現代の生徒に接するという方向性。ということは、よく考えると主人公が女装している必要性がないようにも感じられてしまう。風変わりであれば、女装家でも、爆破で生徒を監禁する先生でも、なんでも良かった?

 いや、このドラマは既存のルールに縛られることで生じる生きづらさに物言い、変容させる原田の姿が描かれていくはずだ。残業手当の出ない補修を担当することや、己の生活を犠牲に部活顧問をする勤務体制に教師はなかなか文句が言えない。だからこそ、ダイバーシティを提唱する寺尾綴校長(いとうせいこう)はズケズケ意見を言う原田の存在を欲したのかもしれない。そんな同作の方向性を象徴するのが、主人公の女装姿ということ。

 熱く部活に打ち込む姿勢こそ美徳とされる風潮についても同様。原田は足の痛みを気にする川崎に気づき、練習を終わらせるよう命じた。

「オーバーワークはケガのもと。定時退社が一番なの」(原田)

 日本に息づく美徳とは正反対の姿勢。既存の価値観からの脱却を恐れない原田ならではだった。

 そう考えると、若林優馬(長尾謙杜)と屋上でランチしている場面も腑に落ちる。屋上への立ち入りは禁止になっているが、この人はどこ吹く風。もしかしたら次回から、川崎も、この屋上ランチに加わっているかもしれない。

 そういったドラマの意図を踏まえたとしても、物足りない。ストーリーが凡庸でおとなしいのだ。第2話は特に。

 いじめもあり、崩し難いヒエラルキーも存在していたはずの2年3組。なのに、前回とは打って変わって今回はいい子たちばかりになっていたのだ。第2話でフィーチャーされた川崎だって、ちょっと原田を小馬鹿にしている感があった。それが今回は、部活に懸けるピュアで真面目な明るい子に変身している。執拗に原田に絡んでいた東条正義(道枝駿佑)の性格の悪さも、第2話では見る影もなし。職員室でも、原田はあっさり周囲に馴染んでいるようだ。原田とウマが合わなかった生活指導の長井あゆみ(松下奈緒)は、早くも原田に理解を示し始めている。

 加えて、原田本人までおとなしくなっている。初回では生徒を屋上から飛び降ろさせ、校門をブルドーザーで破壊するなどアナーキー極まりなかったが、今回はせいぜいチア部の練習場所にショーパブを紹介した程度。感動路線なのかコメディ路線なのか、中途半端だ。緊張感がなくなり、凡庸な雰囲気がドラマを覆い尽くすようになってしまった。

 この作品、確かに学園モノのセオリーを抑えてはいるが大きな破綻がないので、見終えた直後の脳裏に「無難」の2文字を浮かべてしまう。突飛な設定はある。クセのある役者もこんなに揃っている。面白くなる要素は十分揃っているはずなのだが……。

(文=寺西ジャジューカ)

『俺のスカート、どこ行った?』は期待外れ? 古田新太におんぶに抱っこで、目新しさはなし……

 4月20日より、『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ系)がスタートした。個人的に、今期一番期待していたドラマだ。

 勝手に期待していたこっちが悪い。なんか、思ってたのと違ったのだ。もっと笑わせてくれる、コメディ要素満載のドラマだと予想していた。違う。この作品はLGBTやいじめといった社会問題に、案外真面目に向き合う方向性だった。ゲイで女装家の主人公・原田のぶお(古田新太)が高校の教師に転身。生意気な生徒たちと対峙し、改心させていく内容だ。『今日から俺は!!』『3年A組』に続く、日テレ日曜夜枠のお得意の手法が土曜夜へ移植された感がある。

 つまり、よくあるやつなのだ。ぶっ飛んだ言動で子どもたちに人生を教える先生。今までに『女王の教室』『ごくせん』『伝説の教師』(すべて日本テレビ系)等があったが、最も似たテイストを感じるのは『GTO』(フジテレビ系)である。型破り教師のポジションが元ヤンから女装家に変わった、と説明すればわかりやすい。

 では、設定ではなくストーリーそのものに関してはというと、説教の内容に目新しいところはなかった。自分の顔にコンプレックスを持ち、いつもマスクしている生徒に授けた「顔で得してる奴だけじゃなく、損してる奴を見て楽になれ」という考え方も、ダメな自分、頑張りすぎない自分を責めるのではなく認める昨今の風潮と合致し、ドラマのピークにはなり得ない。どの要素もテンプレ通りだった。こちらのハードルが上がっていたので酷だが、低調な初回だったと思う。

狙い過ぎの設定と白石麻衣のポコチン発言

 とにかく、狙いすぎなのだ。古田新太が女装するだけで「面白そう!」と思うに決まってる。のぶおの歓迎会で同僚の里見萌(白石麻衣)が「ポコチンはどうしてるんですか?」と聞いたくだりもそう。アイドルにスレスレのことを言わせた制作陣がドヤ顔している光景が目に浮かんでしまう。

 脇を固める役者陣も、荒川良々、大倉孝二、いとうせいこうと、妙においしいとこばかりだ。で、ここでもうゴールを決めてしまった感がある。ほかの部分(会話や流れ)にあまりに厚みがなさすぎる。こんな手練を集め、盛り上がりを感じさせない展開に仕上げるのも逆に偉業というか。古田の存在感におんぶに抱っこのドラマになってしまっていた。

 あんまり言いすぎたので、ひとつくらいはフォローしたい。今期のドラマは『きのう何食べた?』(テレビ東京系)、『腐女子、うっかりゲイに告る。」(NHK総合)など、LGBTを扱う作品が多い。もはや、はやりの題材といえる。でも、今作を「安易にはやりに乗っかったドラマ」と無下に切り捨てることはできない。

 のぼるはゲイで女装家。だからこそ、フラットな目線で世を俯瞰することができる。しかも、彼の口から多様性を説く以前に、のぼるの存在がそのままテキストになる。「どんな風に生きてもいい。でも、困難を伴うこともある」ということを、この教師は体現している。

 実はこのドラマ、94年に放送された『人間・失格〜たとえばぼくが死んだら』(TBS系)の舞台となった修和学園の校舎をそのまま使用している。あのドラマでは体育教師・宮崎信一(斉藤洋介)に女装趣味があり、その盗撮写真をばら撒かれた宮崎が逆上するというくだりがあった。時代は変わった。かつては女装すると変態扱いだったけれど、今は堂々と教師になることができる。

 第1話のエンディングは、のぼるがブルドーザーで校門を破壊する場面だった。この学校では“5分前行動”が義務付けられており、間に合ったとしても定時の5分前に校門が閉まる決まりになっている。

 時代によってルールは変わる。今は正しいルールに思えても、5年後10年後はわからない。現代のルールは永遠のルールではない。今の正義と価値観は、決して真理とはいえない。既存の価値観に意見し、変化を促すことを恐れないのがのぼるという存在だ。

 伏線をひとつ見つけた。学校ではオネエ言葉で話すのぼるが、帰宅すると自分のことを「わたし」ではなく「俺」と言っているのだ。彼は、本当はノーマルな気がする。この人はなぜ女装し、そして教師になろうとしたのだろう? この先に、何か深いテーマが潜んでいるのだと信じたい。

(文=寺西ジャジューカ)