脱北者たちの間で「北への送金に便利」とウワサの“都内某郵便局”を直撃した!

 ご無沙汰してます。安宿緑です。

 最近、日本政府の某関係者から、こんな話を耳にしました。

「東京の繁華街“S”にある郵便局が、脱北者の間で、北朝鮮の家族宛ての送金に、よく使われている」

 脱北者と頻繁に面会を行っている日本政府関係者は、次のように話します。

「8月にも、送金のため韓国から来日した脱北者と会いました。S郵便局は脱北者の間では有名で、よく使われています。S郵便局が送金を支援しているとか、特別に使い勝手が良いというわけではなく、多くの量を受け付けているうちに手続きがスムーズになっていった だけのようですが。利用者のほとんどは、親族訪問の名目で来日してきた元在日朝鮮人の脱北者とみられます 」

 そのウワサを検証すべく、S郵便局に赴き、窓口に直行しました。

 

筆者「北朝鮮に送金したいんですけど」

 すると職員は「少々お待ちください」と言って奥に入っていきました。予想に反し、意外と慣れていない様子。

 しばらくして戻ってきた職員は、慣れない手つきで書類をめくりながら「禁止リストに載っている住所には送れませんが、大丈夫ですか?」と聞いてきました。

 禁止リストとは、国連安保理決議による「北朝鮮のミサイル又は大量破壊兵器計画に関連する者」(16の団体・個人)、「北朝鮮に関連する国際連合安全保障理事会決議に基づく資産凍結等の措置の対象となる者(116団体と個人、うち10団体は国連安保理決議1695号、29個人・ 団体は国際協調に基づいて措置済み)、ほか日本政府が定めた「 国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するために講ずる資産凍結等の措置の対象となる北朝鮮の核その他の大量破壊兵器 及び弾道ミサイル関連計画その他の北朝鮮に関連する国際連合安全保障理事会決議により禁止された活動等に関与する者」(64団体と個人)。

 このほか、人道支援目的を除き、指定された禁制品の送付や、支払い目的での送金などは禁止。

 これが壁にもズラーっと張り出されているわけですが、誰が熟読するんじゃと。というか、 この宛先に送ろうとした時点で、公安に後ろから肩を叩かれる案件じゃないですか。

 当然ながら口座間送金はできず、「保険付き郵便物」として現金を封入して送ることになります。万国郵便条約に基づくため、いちおう法的には問題なく、現在は人道支援目的で10万円以下に限り受け付け可能とのこと。ちまたでは、パチンコの売り上げ金がこの郵便局から北に送られているというウワサもありますが、何回小分けにすりゃいいんだよ!というわけで、もはや現実味がないことがわかります。

 ちなみに北朝鮮は1974年に万国郵便協定に加盟しています。

筆者「受取人はミサイル関係じゃないので大丈夫かと」

職員「いくら送りたいの?」

筆者「試しに1万円くらいですかね」

職員「1万円!?」

「そんなはした金でいいのかよ」と言わんばかりの職員の視線をよそに、私は、この局が本当に“ ホット送金スポット”になっているのか探りを入れました。すると職員はあっさり肯定し、こう続けました。

職員「多いのは、ウチと、同じく都内のT局。毎月1人か2人は来ていたけど、やはりこういう情勢だからか、今月はゼロ。あと、きちんと届いてるかどうかは当然、こちらでは把握できない。届いても、おそらく何割かは抜かれるのではないかと思います」

 しかしそれ以前に、脱北者からの送金を受け取った家族は、罰せられはしないのでしょうか? 筆者が訪朝した際、北に残された脱北者の家族はどうなるのか聞いたところ「しかるべき場所に連れて行かれると思う」という回答を得たことがありますが……。前出の政府関係者は、このように話しました。

「脱北当初は家族に監視や調査が入ったといいますが、基本的に家族にはおとがめがなく、まだ平壌に住んでいるようです。脱北者からの送金だからといって没収されることもなく、手数料だけをを引いた額が受取人にしっかり届けられるとのこと。北の郵便局に対し、仮に圧力があったとしても、万国郵便条約と、郵便局員としての矜持もあり、越権行為を許すことはないそうです」

 この脱北者が脱北した時期は5~6年前といい、金正恩第一書記の就任時期と重なっています。 韓国統一部の調査によると、金正恩氏就任当初の2012年から16年までは1, 000人単位だった脱北者数が、今年は8月時点で780人にとどまっており、 統一部はその原因を国内の規制が厳しくなったためと分析しています。

 そんな中、脱北者家族への罰則がないのは予想外であります。しかも、平壌は選ばれた人間しか住めない場所。家族の受け取ったお金が、別の形で没収されることはないのでしょうか?

 しかし、政府関係者はこのように私見を述べます。

「それもないようです。世間の脱北者へのイメージは、大飢饉が起きた1990年代後半頃で固まっているようですが、最近は家族を収容所に入れたり処刑することも、ほぼない。ひとつ確かなのは、着の身着のまま逃げていく地方の人とは違い、平壌の人間は準備や根回しを相当うまくやって、後腐れなく脱北する点。その際に払いきれなかった裏金を、家族を通じて分割払いしているケースもあるのでは? これはあくまで仮説ですが」

 つまりは、カネ次第ということでしょうか……?

 が、地方でも北と外界を行ったり来たりする人がいたり、「脱北がバレても土下座して許してもらえることもある」(中朝国境関係者)という話もあり、世界で報じられているほど北朝鮮社会は無秩序で非人道的ではない点もうかがえます。

 以前、ブログでも「脱北者ユーチューバー」の発言の真偽やマインドについて考察しましたが、ニュースだけでは決してわかりえない北朝鮮の人間模様、ますます興味が尽きないところであります。

●やす・やどろく
ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。 政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

脱北者たちの間で「北への送金に便利」とウワサの“都内某郵便局”を直撃した!

 ご無沙汰してます。安宿緑です。

 最近、日本政府の某関係者から、こんな話を耳にしました。

「東京の繁華街“S”にある郵便局が、脱北者の間で、北朝鮮の家族宛ての送金に、よく使われている」

 脱北者と頻繁に面会を行っている日本政府関係者は、次のように話します。

「8月にも、送金のため韓国から来日した脱北者と会いました。S郵便局は脱北者の間では有名で、よく使われています。S郵便局が送金を支援しているとか、特別に使い勝手が良いというわけではなく、多くの量を受け付けているうちに手続きがスムーズになっていった だけのようですが。利用者のほとんどは、親族訪問の名目で来日してきた元在日朝鮮人の脱北者とみられます 」

 そのウワサを検証すべく、S郵便局に赴き、窓口に直行しました。

 

筆者「北朝鮮に送金したいんですけど」

 すると職員は「少々お待ちください」と言って奥に入っていきました。予想に反し、意外と慣れていない様子。

 しばらくして戻ってきた職員は、慣れない手つきで書類をめくりながら「禁止リストに載っている住所には送れませんが、大丈夫ですか?」と聞いてきました。

 禁止リストとは、国連安保理決議による「北朝鮮のミサイル又は大量破壊兵器計画に関連する者」(16の団体・個人)、「北朝鮮に関連する国際連合安全保障理事会決議に基づく資産凍結等の措置の対象となる者(116団体と個人、うち10団体は国連安保理決議1695号、29個人・ 団体は国際協調に基づいて措置済み)、ほか日本政府が定めた「 国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するために講ずる資産凍結等の措置の対象となる北朝鮮の核その他の大量破壊兵器 及び弾道ミサイル関連計画その他の北朝鮮に関連する国際連合安全保障理事会決議により禁止された活動等に関与する者」(64団体と個人)。

 このほか、人道支援目的を除き、指定された禁制品の送付や、支払い目的での送金などは禁止。

 これが壁にもズラーっと張り出されているわけですが、誰が熟読するんじゃと。というか、 この宛先に送ろうとした時点で、公安に後ろから肩を叩かれる案件じゃないですか。

 当然ながら口座間送金はできず、「保険付き郵便物」として現金を封入して送ることになります。万国郵便条約に基づくため、いちおう法的には問題なく、現在は人道支援目的で10万円以下に限り受け付け可能とのこと。ちまたでは、パチンコの売り上げ金がこの郵便局から北に送られているというウワサもありますが、何回小分けにすりゃいいんだよ!というわけで、もはや現実味がないことがわかります。

 ちなみに北朝鮮は1974年に万国郵便協定に加盟しています。

筆者「受取人はミサイル関係じゃないので大丈夫かと」

職員「いくら送りたいの?」

筆者「試しに1万円くらいですかね」

職員「1万円!?」

「そんなはした金でいいのかよ」と言わんばかりの職員の視線をよそに、私は、この局が本当に“ ホット送金スポット”になっているのか探りを入れました。すると職員はあっさり肯定し、こう続けました。

職員「多いのは、ウチと、同じく都内のT局。毎月1人か2人は来ていたけど、やはりこういう情勢だからか、今月はゼロ。あと、きちんと届いてるかどうかは当然、こちらでは把握できない。届いても、おそらく何割かは抜かれるのではないかと思います」

 しかしそれ以前に、脱北者からの送金を受け取った家族は、罰せられはしないのでしょうか? 筆者が訪朝した際、北に残された脱北者の家族はどうなるのか聞いたところ「しかるべき場所に連れて行かれると思う」という回答を得たことがありますが……。前出の政府関係者は、このように話しました。

「脱北当初は家族に監視や調査が入ったといいますが、基本的に家族にはおとがめがなく、まだ平壌に住んでいるようです。脱北者からの送金だからといって没収されることもなく、手数料だけをを引いた額が受取人にしっかり届けられるとのこと。北の郵便局に対し、仮に圧力があったとしても、万国郵便条約と、郵便局員としての矜持もあり、越権行為を許すことはないそうです」

 この脱北者が脱北した時期は5~6年前といい、金正恩第一書記の就任時期と重なっています。 韓国統一部の調査によると、金正恩氏就任当初の2012年から16年までは1, 000人単位だった脱北者数が、今年は8月時点で780人にとどまっており、 統一部はその原因を国内の規制が厳しくなったためと分析しています。

 そんな中、脱北者家族への罰則がないのは予想外であります。しかも、平壌は選ばれた人間しか住めない場所。家族の受け取ったお金が、別の形で没収されることはないのでしょうか?

 しかし、政府関係者はこのように私見を述べます。

「それもないようです。世間の脱北者へのイメージは、大飢饉が起きた1990年代後半頃で固まっているようですが、最近は家族を収容所に入れたり処刑することも、ほぼない。ひとつ確かなのは、着の身着のまま逃げていく地方の人とは違い、平壌の人間は準備や根回しを相当うまくやって、後腐れなく脱北する点。その際に払いきれなかった裏金を、家族を通じて分割払いしているケースもあるのでは? これはあくまで仮説ですが」

 つまりは、カネ次第ということでしょうか……?

 が、地方でも北と外界を行ったり来たりする人がいたり、「脱北がバレても土下座して許してもらえることもある」(中朝国境関係者)という話もあり、世界で報じられているほど北朝鮮社会は無秩序で非人道的ではない点もうかがえます。

 以前、ブログでも「脱北者ユーチューバー」の発言の真偽やマインドについて考察しましたが、ニュースだけでは決してわかりえない北朝鮮の人間模様、ますます興味が尽きないところであります。

●やす・やどろく
ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。 政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

“脱北者”は、なぜ韓国に渡るのか? 女性ブローカーの人生が語る、南北分断と家族の別離

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 繰り返されるミサイル実験や、世界各地の銀行を狙って仕掛けているといわれるサイバー攻撃など、北朝鮮に関する報道を耳にして「この先、日本はどうなってしまうのだろう?」と不安に感じている人は多いのではないだろうか? 北朝鮮からの脱北者も、そんな母国に不安があるから脱出しようとするのかもしれない。そして脱北者がいる限り、彼らに手を貸す脱北ブローカーも存在する。

 映画『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』は、脱北ブローカーの女性の人生にスポットを当てたドキュメンタリー。北朝鮮に夫と息子2人を残して、中国へ出稼ぎに来たつもりが、実は貧しい農家に嫁として売られていたマダム・ベーは、生き抜くために中国の家族を受け入れながら、脱北ブローカーとして働く。彼女の数奇な人生を追いかけた、韓国人のユン・ジェホ監督に、脱北者が韓国に渡る理由、南北分断と家族、現在の韓国情勢について話を聞いた。

■出稼ぎのつもりが農家へ身売りされたという事実

――まず、脱北ブローカーのマダム・ベーさんとの出会い、彼女のことを映画にしようと思ったきっかけについて教えてください。

ユン・ジェホ監督(以下、ジェホ監督) 2013年、劇映画の準備をしようと中国へ行ったときにマダム・ベーに出会いました。私は彼女に脱北者のインタビューのガイドをお願いしていたんです。彼女は私を自分の家に連れて行き、中国人家族に紹介してくれました。そのとき、映画で描かれているような話を聞いたのです。そして「私のことを映画にしたら、面白いんじゃない?」と言われました。映画化を決意するまで時間を要しましたが、きっかけはそのときです。

――マダム・ベーの、出稼ぎに来たはずが、実は農家に売られていたというエピソードは衝撃的でしたが、彼女と中国人の夫との関係が良好な様子であることも驚きました。映画に登場する北朝鮮の夫といるときより、中国人の夫といるときの方が、幸福そうに見えたんですが、監督は撮影していて、どう思われましたか?

ジェホ監督 最初にマダム・ベーの中国の家族に会ったとき、彼女が身売りされたとは知りませんし、とてもいい家族だと思いました。中国の夫はユーモラスで活発な方で、てっきり本当の夫婦だと思っていましたよ。そのあと「騙されて身売りされた」という話を聞いたのです。中国人家族は、彼女の望んだ家族ではありませんが、2人が仲良く幸福そうに見えるのは、彼女にとって良いことであり、自然にそのようになっていったのだと思います。

――中国と北朝鮮で二重生活を送っているマダム・ベーについて本当に映画化することになったとき、彼女がゴネたり、それを監督が説得したりするということはありませんでしたか?

ジェホ監督 いいえ。彼女と私は最初、映画化について冗談めかして言っていましたが、心の中ではお互い「これは映画になる」という気持ちを抱いていました。僕が彼女を説得することなどなく、マダムから「いつ映画になるの?」と催促されていたくらいです(笑)。

 僕はフランスで映画を学んでいたのですが、韓国に住む決心をしてソウルに来たとき、北朝鮮や脱北者に対する韓国人の考え方を知りました。北朝鮮から来た人の中には、スパイ容疑をかけられる者がいますし、マダム・ベーもそのひとりでした。同じ韓国にいても、脱北者とわれわれは全然違うのです。そのとき、マダム・ベーの存在を映画にすべきではないかと本気で考えたのです。

――マダム・ベーが脱北者たちを連れて韓国を目指しますが、あの脱北ルートも驚きの連続でした。すごくハードでしたよね。撮影での苦労は、どんなものだったのでしょうか?

ジェホ監督 ラオス、タイ・バンコクを経て韓国に向かうルートは、本当にキツイものでした。スタッフは僕ひとり。特に山を越えるときは、雨が降って来て、滑りながら13時間余り歩き続けました。あのときは足を怪我してしまい、一応撮影はしていましたが、正直それどころではありませんでした。

 赤ちゃんを連れて脱北ルートに挑戦する女性もいました。脱北の理由はそれぞれあると思いますが、やはり韓国が同じ言葉、同じ文化、同じ食事であることは大きいと思います。でも、北朝鮮で平民だった人は韓国でも平民だし、北朝鮮で高官だった人は韓国でも高官です。そこは何も変わらないので、韓国へ渡って彼らが果たして幸福になれたかどうか、僕にはわかりません。

――マダム・ベーは、現在どのような生活をしていますか? また、この映画についてどんな感想を語っていましたか?

ジェホ監督 彼女は今、韓国で一人暮らしをしながら、バーを経営しています。そこでの収益金を、中国と北朝鮮から韓国へ連れてきた夫や息子に渡しているのです。中国の家族とも北朝鮮の家族とも同居していない理由は聞いていないのですが、もしかしたら双方の家族を傷つけたくないからではないかと思います。もちろん、映画を見てもらいましたよ。マダム・ベーは、すごく笑って見ていました。そして脱北ルートをひたすら歩くシーンでは「いちばん大変だったのに短い!」と言われたので、「撮影するどころじゃなかったから、あまり撮っていないんだ」と正直に答えましたよ(笑)。

■南北分断の中で生きる家族が、僕の映画のテーマ

――監督は前作『ヒッチハイカー』でも脱北者を描いていますが、なぜ彼らに惹かれるのですか?

ジェホ監督 脱北者に惹かれているわけではないのですよ。韓国における偏見と南北分断が、個人の人生を破たんさせたり、家族の別離を生んだりしていることを見つめていきたいのです。南北分断が引き起こす家族の物語は、人々に共感を与えることができるのではないかと思っています。

――では今後、どんな映画を撮っていきたいですか?

ジェホ監督 今後4~5年は、南北分断と家族をテーマに映画を撮っていきたいです。次に取り掛かる作品はドキュメンタリーではないのですが、家族の和解をテーマにした物語です。和解するには、ぶつからないといけない。でも、ぶつかるためにはお互いを知ることが重要で、お互いを知るためには、相手に対して一歩踏み込まないといけない。その一歩を踏み込むかどうかで、結果は変わっていきます。それが今の韓国社会を映し出すのではないかと考えています。

 僕は南北分断以降に生まれた世代なので、分断を意識することが家族関係に反映されるのです。僕の父は北朝鮮が大嫌いです。その原因は朝鮮戦争ですが、いくら親子でも父の憎しみの気持ちを僕に押し付けることはできません。僕は、会ったこともない人々を嫌いにはなれないからです。そのような気持ちを抱くようになったからこそ、僕は家族や分断について映画を撮り続けたいのです。

――先日、裁判が始まりましたが、パク・クネ前大統領が弾劾裁判で罷免され、失職、逮捕された件も含めて、不安な要素も多いようです。今の韓国についてどう思われますか?

ジェホ監督 今の韓国は変化の途中であり、世代交代の波を感じます。なぜなら、僕らが若いときはSNSなどなかったので、プロパガンダの中で育ちましたが、今の若者はSNSで自由に自分の考えを発信できる場を持っているのです。ある意味、メディアに左右されない世代ではないかと思います。僕は30歳を越えて自我に目覚めた感じがありますが、おそらく今の若い人は、もっと早く目覚めるでしょう。政府が望むような影響を受けない10代が出てくるのではないでしょうか。僕はそのように肯定的に見ています。彼らが40歳を越えたとき、韓国にどんな変化をもたらしてくれるのか期待しています。
(斎藤香)

ユン・ジェホ監督
韓国・釜山生まれ。フランスで、美術、写真、映画を学ぶ。短編映画『約束』がアシアナ国際短編映画祭の大賞を受賞。ほかにドキュメンタリー映画『北朝鮮人を探して』、短編『ヒッチハイカー』などの作品を発表している。『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』は、モスクワ国際映画祭、チューリッヒ国際映画祭にて、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した。

『マダム・ベー ある脱北ブローカーの告白』
2017年6月10日、シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
公式サイト

モランボン楽団だけじゃない! 北朝鮮のイケメン芸能人予備軍を直撃

 こんにちは。  北朝鮮の芸能人といえば、とかく話題に上るのがモランボン楽団の姉ちゃんたちですが、男性若手スターの存在も忘れてはなりません。  特に男性芸能人は「若ければいいってもんじゃない」(平壌市23歳女性)、「わかりやすいイケメンが好まれるわけではない」(同20歳女性)といい、実力や醸し出す雰囲気が重視される傾向があります。  でも、やはり若いイケメンは全女性と一部男性の宝。北朝鮮はもったいぶってないで、どんどん世に出してほしいですね! そんなわけで、私の乏しいストックの中から何人かピックアップしてみました。  10年ほど前、平壌映画撮影所のセットで見かけた俳優。北朝鮮の加勢大周(古っ!)と呼ばれているとかいないとか。
nkikemen.jpg
小さい写真しかなくてすいません。
 個性派俳優ともいうべき若手実力派、リ・リョンフン。そのソフトな佇まいは、まるで“北朝鮮初”のオネエ系タレント?
nkikemen02.jpg
 そんな中でもイチオシなのが、北朝鮮のイケメン芸能人予備軍。芸術、芸能、科学技術などに特化した英才教育機関「金星学院」の舞踏家養成コースに通う、チェ・インソン君(仮名)です。
nkikemen03.JPG
 ウホッ いい男!
nkikemen04.jpg
インソン君(当時14歳)と、私の顔のデカさの対比をご覧ください。
 金星学院は、北朝鮮では誰もがその名を聞いてのけぞるほどの名門校。才能と実力を兼ね備えた人材の中でもさらに一部の者しか入学が許されず、東大よりも入学が難しいとされる、東京芸術大学さながらの狭き門です。  インソン君の場合、中学校の授業中、男子生徒の視察に訪れたスカウトマンがそのイケメンぶりに惚れ込み、「You、ちょっと立ってみて」とご指名。その場で「明日から金星学院に来ちゃいなよ」と命じたという、まさにシンデレラボーイなのです。  しかしいくらなんでも、国を挙げたエリート養成機関に顔だけでぶち込むほど無茶が利くわけでありません。インソン君の場合は、事前にしっかり選考過程を経た上での「You、来ちゃいなよ」だったか、その後に認められたかのいずれかだと思われます。いずれにしろ、なかなかアクロバティックな話です。後者の場合、たまたま居合わせただけで沖縄アクターズスクール校長にスカウトされて特待生になった安室奈美恵のようですね。    インソン君の夢は、国立芸術団に入団することだといいます。 「国立芸術団に入れば海外公演でロシアやヨーロッパにも行けるというので……特に行ってみたい国はフランスですね。フランスでは同性婚が合法だというから、ちょっと見てみたいんです」  なぜ彼が同性婚にこだわるのかはさておき、たくさんの才能がしのぎを削る群雄割拠の金星学院。ギルドホール(英国の名門演劇学院)で「顔だけ」と言われて腐ったオーランド・ブルームを見習わないよう、頑張ってほしいと思います!
nkikemen05.JPG
 選ばれし男性芸能人予備軍たちの貴重なオフショット。さすが芸能人の卵、美意識が高いのか人民服は着ません。しかしこの路線をやりすぎると、韓国ヤクザ映画のようになるので気をつけていただきたいです。
nkikemen06.JPG
 ちなみに北朝鮮では、17歳から飲酒OK。マイクを持ってる君、顔赤いぞ! ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

『ザ・インタビュー』を見たら厳罰、流布させたら銃殺!? 北朝鮮人民を震え上がらせる「DVD検閲の死神」とは

e10763c027951e285f5d9adfeed.jpg
映画『ザ・インタビュー』海賊版DVD
 北朝鮮当局が、金正恩氏暗殺を描いたコメディ米映画『ザ・インタビュー』の自国への流入を懸命に防ごうとしていることがわかった。わざわざ同作を見てはならないと人民に伝えるための講演会も行われているという。  咸鏡北道の内部情報筋は、次のように語る。 「今年の初めに講演会があった。『今まで韓流ドラマを見ていたことは水に流してやるから、今後外国から入ってきた映像は絶対に見ないこと』『特に米国の映像を見た者は絶対に許さない』との内容だった。また、『今までは賄賂を受け取って見逃したりしていたが、今後はいくら賄賂を渡しても無駄だ』「『最高尊厳(金正恩氏)をけなす映像は絶対に見るな』とも言われた」  さらに、今後米国の映像を見ていることが発覚したら見せしめのために収容所送りにしたり、映像の持ち込みや流布を行った者は銃殺に処すと伝えている。  一部では「DVDプレーヤーのバッテリーも充電するな」と言われるほど、取り締まりは強化されている。  北朝鮮当局は、韓流をはじめとする海外コンテンツを集中的に取り締まる「109常務」という特別部隊を組織している。この部隊は保衛部、検察所、保安署、党機関合同の組織であり、「DVD検閲の死神」と恐れられている。  彼らは真夜中でも構わず家に押し入って捜査し、VCD(映像を記録したCD)とプレーヤーを見つけ出す。また、バッテリーが少しでも残っていたら、プレーヤーごと没収されるという。  さらに国内への流入を遮断するため、国交があるミャンマーやカンボジア政府に対して同作の上映禁止を求めているが、内部情報筋は当局の統制は失敗に終わるとみている。  なぜなら、北朝鮮に映像ソフトが持ち込まれるルートは非常に多様で、すべてを防ぐのは事実上不可能。さらに、講演会で「米国の映像」と言及したことが、逆に人民の好奇心を煽る逆効果を生み出しているという。 「処罰が怖いのであからさまには話せないが、外国が最高尊厳をどうやって誹謗するのか見たがっている人もいる。中国の貿易業者にコネがある人民は、早速取り寄せようとしている」(内部情報筋)  当局と人民のイタチごっことなりそうな様相だが、果たして冒涜されている金正恩本人は『ザ・インタビュー』をすでに見たのだろうか? 気になるところだ。 (「デイリーNKジャパン」<http://dailynk.jp>より)

総連ビル“買い戻し”の一方で閉店! 北朝鮮マニアに愛された「コリセン」ってなんだ!?

korisen06.jpg
朝鮮出版会館とコリア・ブックセンター
 事実上、本部ビルの買い戻しが実現しそうな朝鮮総連中央本部ビル(東京都千代田区)売却問題。本部ビルは維持する一方で、東京都文京区にある「朝鮮出版会館」は1月23日に大阪市内の不動産会社に約23億円で売却され、解体される見込みとなった。北朝鮮研究者やマニアからは「コリセンがなくなる……」と、惜しむ声がTwitterなどで相次いでいる。日本の好事家に愛された「コリセン」とは……。  朝鮮出版会館は白山通り沿いにあり、地上13階、地下1階建ての巨大なビル。屋上には北朝鮮からの通信やラジオを受信するためなのか、ワイヤーアンテナが張りめぐらされている。  総連系機関紙や出版の会社のほか、ミサイルや核関連の技術を北に“輸出”しているという指摘がある「在日本朝鮮人科学技術協会」など、総連傘下の団体がこのビルに住所を置いているが、実際には人の出入りは少ない。  1階の一角には「コリア・ブックセンター」(通称・コリセン)と看板のかかる書店がある。営業時間は月曜から土曜の午後1~5時までと、すさまじく短いが、北朝鮮マニアらは「コリセンがなくなると寂しくなる」と口をそろえる。  それもそのはず、日本で数少ない、北朝鮮が発行する書籍を扱う書店だからだ。「北朝鮮の書籍はまれに新刊が入る程度で代わり映えしないが、在日朝鮮人や親北朝鮮の日本人が出版した訪朝記をはじめとする自費出版や総連系の雑誌のバックナンバー、映像ソフトを手に取って購入できるのがうれしい」とは、常連客の一人。  そもそも在日同胞のために開設された書店のようだが、朝鮮語の書籍は平均2,000円以上と結構な値段で、今は全国に400人程度いると推測される北朝鮮マニアか、研究者が時折足を運ぶ程度だ。
korisen03.jpg
マニア氏が閉店セールでゲットした、金正日総書記の記録映画
 「定価5,000円だった記録映画のVHSテープが昨年12月ごろからいきなり500~1,000円セールとなった。数十年間、強気な価格だったので、『閉店も近いのでは……』と、マニアの間で臆測が流れていた。会館売却の報道が出て『やっぱり!』と思いましたよ」とは、前述のマニア氏だ。
korisen01.jpg
ビデオには在りし日の姿が!
korisen02.jpg
ビデオに出てきた、貴重な元帥服のご真影
 マニア氏は「いや~、こういう事態が起きると思って金正日総書記の現地指導をまとめた記録映画を買いだめしておきましたよ。『世界で歌われる金正日将軍の歌』というテーマで、全世界の歌手が『金正日将軍の歌』を歌いまくっているという、かなり無理のあるストーリーのドキュメンタリーは、なかなかYouTubeでも見つからないですね」と熱っぽく語る。
korisen04.jpg
金正日総書記の歌を歌うアジア人
korisen05.jpg
金正日総書記の歌を歌う西洋人
 さらにマニア氏が「貴重」と断言するのは「ワンジェサン軽音楽団」のCDだ。韓国の報道によると、同楽団の団員が自作AVをコッソリ制作していたことが判明。2013年12月に金正恩第1書記により解散が命令され、実行犯は処刑された。  「北朝鮮ではすべてCDが回収されて、ラジオでもワンジェサンは流れないのに、なぜかコリセンでは現在も1枚3,000円で販売が続いている」(同)というのだ。  とはいえ、そっち系の趣味がない大多数の日本人にとって、「コリセン閉店」は、やはりなんの関係もない話だ。 (文=金正太郎)

無慈悲な料理本『有名な平壌料理』のメニューを作ってみた【牛足の煮こごり】編

P1280677nnnk.jpg
 冷麺を「粉から打て」と指示するなどでおなじみ、無慈悲な北朝鮮料理本『有名な平壌料理』から作ってみた! シリーズ第2弾です。  今回は、「牛足の煮こごり」に挑戦してみたいと思います。  この料理は韓国ではあまり食べたことがなく、北朝鮮の宴会でしばしば見かけます。出てくること自体が珍しいので、おそらく主に祝いの席や慶事の料理ではないかと思われます。  ゼリーの中にいろいろな薬味が入っていて、健康に良さそうですが、本によると「味が素朴で栄養価が高く、さまざまな薬効成分が入っているため健康長寿に良いです」とのこと。そ、そんなにすごい料理なのか……?  材料は以下の通り。 牛足 1kg テール肉 400g アキレス 100g すね肉 500g タン 300g ネギ 3g ニンニク 15g 塩 10g こしょう 2g 錦糸卵 10g しいたけ 10g 糸唐辛子 2g 松の実の粉 5g 辛酢味噌 60g  多いよ!   調理はとりあえず、肉を煮込むところから始めます。
PC060559nk.JPG
 まず、肉を全種類用意するのに骨が折れました。意外と一つの店で買うことができない。アキレスと牛足はハナ◯サにもなかったので、わざわざ韓国食材店まで行って調達しました。分量は適当です。 「1. 牛足は割り、テールは切ってタン、すね肉、アキレスとともにさっと湯搔いてよく洗った後に強火で煮込む」  「割る」とかサラッと書いてありますが、硬ッ!! 真ん中に骨があるので、包丁がまったく入りません。早速、無慈悲な指示に応えることはできませんでした。
PC060562nk.JPG
 全部ぶち込み、サッと湯通し。
PC060564nk.JPG
 茹で汁を捨てます。
PC060566nk.JPG
「2. 煮え始めたら火を弱め、ゆっくりと煮立てながら脂と泡を取り除き、フタを閉めてやわらかくなるまで煮込む」  アクや脂を取り除きながら、さらに3時間ほどコトコトと煮込みます。圧力鍋なら、もっと短縮できるんでしょうが……。
PC060575nk.JPG
「3.肉が煮えた順に取り出し、骨を取り除いたら、刻みネギとニンニク、塩、こしょうで味付けをし、茹で汁は布でこして味付けをする」  煮立った肉を引き上げ、骨を取り除きます。あんなに硬かった肉がゼラチン状になり、骨がスルッと抜けるのが気持ちよいです。
IMG_1742nk.JPG
IMG_1743-nk2.jpg
 茹で汁の味付けの仕方がよくわからないので、とりあえずしょうゆとだし汁を混ぜておきました。適当……。 「4.鍋の中に、切った肉と味付けした茹で汁を6:4の比率で入れ、もう一煮立ちさせてから冷ます」 「5.ほぼ冷めたところに錦糸卵、しいたけ、糸唐辛子、ネギ、松の実の粉を混ぜて容器に入れ、冷蔵庫で6時間ほど冷まし固めた後、長方形に切って皿に置き、辛酢味噌と一緒に出す」
IMG_1748nk.JPG
 この時、煮こごり素人の私は失敗しました。  「これ、ほとんど水だけど、後で本当に固まるのかな……?」と不安になり、ダッシュで粉ゼラチンを買ってきて5袋すべてをザシャーーーッ! とブチ込んだのです。ざっくりすぎるレシピの説明からして、アキレス100gで固まると主張している点に疑心暗鬼となった私。それが後に弊害を生むとは……。  とりあえず、プラスチック容器に詰めて冷やすこと数時間。それらしい物体が誕生!
IMG_1777nk.JPG
 できたぜ!
PC140606nk.JPG
 なんだかんだで、形にはなりました。しかし、なんか見本と比べて、身が詰まりすぎじゃね? という感じも否めません。もうちょっと見本みたいに透明感がほしかったんですが。
PC140598nk.JPG
 食べてみると、「硬っ! なんじゃこりゃ!」。  そう、あの時ビビッて入れた粉ゼラチンが、ガチガチの大仕事をしてらっしゃったのです。そりゃもう、グミキャンディ並みの硬さでございました。ゼラチンを加えた分、相応の水を加えていれば、程よい硬さと透明感を醸し出すことができていたでしょう。ついでに、脂分も凝縮されたせいか、一切れ食べただけで胃もたれがしてしまいました。  しかし、味は決してマズくはなく、先輩に差し入れたところ、いつもはケチを付けられるはずが、今回はそこまでボロクソに言われませんでした。  それにしても、日本でもこれだけ手間がかかるなら、北朝鮮ではなおさら、機会を逃したら一生食えないというレベルのレア料理なのかもしれません。そのほか、これを上回る無慈悲な料理がめじろ押しなので、今後も無理のない範囲でチャレンジしていきたいと思います。 ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

平壌に“北朝鮮版コンビニ”登場 輸入品排除宣言も「中国製品なしで大丈夫か!?」の声

7eleven11111.jpg
イメージ画像
 朝鮮新報によれば、北朝鮮の首都・平壌に昨年12月20日、「新しい形態の商店」がオープンしたという。営業時間は朝6時から夜12時までで、韓国メディアは「北朝鮮式コンビニが登場」と伝えている。  店名は「ファングムポル(黄金原)商店」で、チェーン店の形態を備えたサービス網である」としている。  店舗展開の第1弾として、平壌市中心部の中(チュン)区域と普通江(ポトンガン)区域の3カ所でオープン。金正日総書記の誕生日に当たる2月16日に数店舗が第2弾オープンするなど、春までに20店舗の開店を目指し、将来的には平壌で100店舗を展開するという。  また、運営主体は国営の貿易会社で、各商店も国営。在日朝鮮人や外国人がチェーンに加盟できるかは言及されていない。  一方、北朝鮮の官営メディアは最近、「創造と建設で国産化の比重を高め、輸入病を大胆に打ち捨てなければならない」(労働新聞1月11日付)などとして、輸入品依存を「病(やまい)」であると規定。国産品の利用を促している。  北朝鮮の商業事情に詳しい在日コリアンの会社経営者は「北朝鮮のマーケットは、中国から流入するモノなしには回らない。国営商店が国産品にこだわるなら、コンビニを100店舗も展開するのは難しいのではないか」と分析。  まさか、商品棚がガラガラなんてことにならなければよいが……。 (「デイリーNKジャパン」<http://dailynk.jp>より)

厚底靴にハイヒール、ミニスカートまで! 北朝鮮“ファッションの自由化”が加速中!?

1253_1.jpg
平壌で見かけた女性。中国のファストファッションのような雰囲気
 北朝鮮はまだまだエボラによる鎖国が続く状況ですが、今回は北朝鮮における、特に女性のファッションの流行についてお話ししたいと思います。  昨今、北朝鮮の男子大学生は全員、金正恩第一書記と同じ髪形にしなければならないといった報道があるなど、北朝鮮では人民の髪形や服装から、何から何まで当局が口を出すというイメージがあると思いますが、それは事実ではありません。  確かに過去、美容院に「女性はパーマをあてなければならない」という金正日総書記の「教示集」が置いてあったり、90年代には女性はズボンをはいてはならないなどの決まりがありましたが、昨今では自然発生的に流行が生まれては廃れるのを繰り返しているようです。ここ数年では、中国製品の影響も多く受けているようです。  ここ数年は「アムラー」のような厚底靴がはやりましたが、昨夏にはすでに消え去り、ハイヒールが主流となっていました。また、膝丈のミニスカートも容認され始めました。ただ、あまりに露出が多かったり、「風紀を乱すような」場合は当局より指導が入り、以後禁止されます。
1259.jpg
ヘビ皮模様(右)のような思い切ったアイテムも
 やはり流行の発信源には「ファッションリーダー」がいるようで、第一書記の夫人である李雪主氏を筆頭に、モランボン楽団のスター歌手や映画女優、世界大会で好成績を残しているスポーツ選手のファッションを真似しているようです。昨年9月に行われた「年度ファッションショー」では、そのような最先端のテイストが集約されていましたが、高麗航空の中で見かけた女性もこのような感じでした。  こうした女性たちの目まぐるしいファッションの変遷は、意識の変化と関係しています。北朝鮮の婚姻率は日本に比べると断然高く、女性は基本的に20代前半、遅くとも30歳までには結婚しますが、昨今では晩婚化が進んでおり、「男の世話で苦労させられるくらいなら、独身でいたほうがいい」と娘に助言する母親も増えています。というのも、“国民総共働き”で専業主婦が存在しないにもかかわらず、家事育児のほとんどを女性に課せられる風潮が根強いため、自分と同じ苦労をさせたくないという親心のようです。 「家事育児は、“慈しむ性”である女性が担当すべき」と話す女性幹部もいましたが、本音はツラそうでした。そのような古き女性性からの解放を目指す動きと、ファッションの開放が比例しているのかもしれません。  ちなみに私も結婚適齢期に差し掛かっているため、訪朝するたびに人民たち(赤の他人含む)から「その年で未婚とはこれいかに」などと無理問答を食らっており、そろそろ発狂しそうなので、次回までには結婚しておかなければと思っています。 ●やす・やどろく ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

正月から北朝鮮人民を悩ませる、金正恩演説“丸暗記”の苦行 できないと反省会!?

junys.jpg
「新年の辞」の演説を行う金正恩氏。ちょっと不安げ?
 2012年に執権して以降、今年で3度目となる金正恩第1書記の肉声による「新年の辞」。父・金正日総書記が公開の場で演説を行わなかったため、2年前の「新年の辞」は祖父の金日成主席以来、実に19年ぶりのことだった。  再開した当初、北朝鮮人民は好奇心と期待をもってそれを見守ったが、昨年からは「期待するほどではない」といった雰囲気が漂っており、それは今年も変わっていない。  咸鏡北道の消息筋は1日、デイリーNKの電話取材に対し、「『新年の辞』を読む正恩の目つきと動作は、昨年よりも不自然だった。原稿を見ずに演説していると見せようとしたのだろうが、それがむしろ不自然で、不安な印象を与えた」話した。 「こちらの人間は皆、正恩が金日成の『新年の辞』を真似ているのを知っているので、昔の『新年の辞』と比べて評価している。金日成は洗練された自然な様子で演説していたが、正恩はまるで、討論の準備もせず演壇に立った学生を見るようだった。それに正恩の今年の『新年の辞』は昨年と同様、人民が期待する内容にまったく言及しなかった。単なる(今年の)党創建70周年の宣伝文みたいだった。人民は『新年の辞』を通してのみ、1年間の(体制の)事業方針を知ることができるのに、理解しにくい部分が多々あった」(同)  内容より気になるのは、原稿の長さだ。というのも、人民は毎年、「新年の辞」の全文を丸暗記するよう体制から強要されるからだ。暗記したかどうかは党幹部などによってチェックされ、不十分と見なされると、「組織生活総和」と呼ばれる職場や学校、地域単位での「反省会」で批判の対象とされる。  両江道の消息筋によれば「人民の多くは『新年の辞』を聞く際、その内容よりも長さを測ることに集中する。今年は原文が約9000字もあるとされており、長すぎて心配だ。テレビで25分以上もの演説を聞く間中、ずっと不安な気持ちだった。内容も不明瞭なため、余計大変そうだ」と、深いため息をついた。 (「デイリーNKジャパン」<http://dailynk.jp>より)