深田恭子“無自覚”であることの才能と強さ――ドラマ『初めて恋をした日に読む話』第4話

(前回までのレビューはこちらから) 

 人間は、「自覚的」か「無自覚」かで、タイプ分けすることができる。

「自分がかわいいと自覚している女性」と「自分がかわいいことを自覚していない女性」、「自分が幸せだと思っている人」と「自分が幸せだと気づいていない人」など、どの場合にも言えるのは、自覚している人より無自覚であるほうが、よりかわいかったり、本当の意味で幸せだったりするものだ。

 なぜなら、「かわいい」とか「幸せ」を自覚している人は、それを維持するために大変な労力を要するから。それを失った時の恐怖心もあることだろう。「無自覚」の場合は、そのようなことは一切ないのだ。最強の人間は、「無自覚な人」ということができるだろう。

 ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)第4話。今回も、順子(深田恭子)の無自覚さが際立っていた。

 やっとの思いで、順子に告白した従兄弟の雅志(永山絢斗)。しかし、順子はその気持ちに全く気づかず、あくまでも親戚や友人としての情愛としか受け取らなかった。

 同じように、匡平(横浜流星)からの気持ちも、恋愛感情だとは気づいていない。順子は、東大受験に失敗して以来、自分に自信が持てず、今のモテ具合を全く自覚していないのだ。

 もちろん、先にも書いたように、無自覚であればあるだけ、順子の魅力は増していく。雅志と匡平も、お互いの順子に対する気持ちに気づきながら、どんどんと彼女への思いは募っていくのだ。もはや、ここまでくると一つの才能とも言える。

 この、無自覚な女性を演じるというのは、意外と難しい。なぜなら、下手な芝居をしてしまうと、「無自覚を演じている姿を演じている」というように受け取られてしまうから。いわゆる「ぶりっ子」に見えてしまうのだ。

 しかし、深田恭子がその役に入ると、本当に無自覚であるようにしか見えない。役に入りきっていることもあるだろうが、深田自身が、どこか無邪気な雰囲気を持っており、見ているものにあざとさを感じさせない力を持ち合わせているからではないだろうか。

 順子との微妙な関係を維持したまま、冬を越え、2018年春、匡平は無事高校3年生になった。勉強の方も、他の生徒たちに追いつき、1年後の東大受験に向け、順調に努力を続けるのだった。

 そんな頃、順子は、山下(中村倫也)から、匡平が中学時代に母親を亡くしていることを聞かされる。同情した順子は、匡平に対して、母親のような気持ちを募らせるのだ。

 複雑な思いを山下に相談する中で、順子は「幸せってなんなんだろう?」と口にする。それに答えて山下は言うのだ。

「幸せが何かなんて、幸せな時は考えない」

 今回のストーリーでは、この「幸せ」という言葉が大きなキーワードになった。

 迎えた5月のゴールデンウィーク、塾では、受験のための強化合宿が行われる。

 行きのバスの中、クラスのエリートである、鷲津(内藤秀一郎)や長宗我部(市川理矩)たちが、クラスメイトの大塚さつき(神岡実希)に嘘の告白をして、盛り上がる。それを注意した美香(吉川愛)と匡平は、エリートグループと対立することになってしまう。

 ここでまた新たな美少女の登場である。大塚役を演じた神岡実希は、2017年まで、アイドルグループ『ハコイリムスメ』のメンバーとして活動していた。愛らしいルックスと、強気な性格で人気を博し、卒業後は、映画『ナラタージュ』(2017)などで、女優として活躍している。こうしてメジャーなドラマに出てきたことで、人気が高まっていくかもしれない。

 さて、順子に対する匡平の気持ちを知った順子の友人・美和(安達祐実)は、「18歳の誕生日までは、法律的にダメ」と伝える。

 一方、雅志は順子を追いかけて、合宿所の近くにある会社の保養所に泊まりに来る。匡平は、雅志の元を訪ね、順子への思いを確認する。好きであることを告げた雅志に、匡平は言うのだ。「何の問題もなく告白できるなんて、幸せだ」。

 17歳はまだ子ども、そんな思いがあるのだろう。年が離れている自分への歯がゆさもあるのかもしれない。

 合宿中、相変わらず匡平に嫌がらせを続ける鷲津たちは、「匡平がロッジでタバコを吸っていた」と証言する。真偽を確かめるためロッジに向かった順子は、そこで匡平と二人きりになる。

  美和に言われたことを意識してか、匡平は「来年の2月3日、覚えておいて。18歳になるから」と告げる。

 ロッジのシーンでは、燃え上がる暖炉の炎や、ヤカンから吹き上がる蒸気が、匡平のあふれるような気持ちを暗喩していた。なかなか意味深な演出である。

 匡平に腰を抱かれて戸惑う順子が可愛らしい。

 深田恭子の魅力の一つは、戸惑ったような瞳の演技だ。一歩間違えば、わざとらしくなってしまうようなクルクルとした目の動きを、自然にこなしてしまう。

 そしてもう一つ、彼女の話し方にも、秘密があるような気がする。甘えるような、でもしっかりと気持ちを伝える口調と声。アリナミンAのCMで「だるおも~」とつぶやいただけで、そのセリフがしっかりと頭に残ってしまう。そんな声の魅力がある。

 合宿中のキャンプファイヤーのシーン。燃え盛る焚き火越しに、匡平が順子を見つめる。そこに主題歌である、back numberの「HAPPY BIRTHDAY」が流れる。“HAPPY BIRTHDAY”=誕生日。次の誕生日、匡平は18歳になる。そこが物語の最大のヤマ場になるのではないかと期待される。

 最後、インフルエンザで寝込んだ順子と匡平は、手をつないで眠っている。実はここで、ドラマの冒頭に出てきた、美和の店で働くホステス・もんちゃんの「男子高校生と手をつなぐだけで女性ホルモン出そう~」というセリフの伏線が回収されるのである。

 ロッジのシーンでの小道具の使い方や、主題歌の効果的なストーリーとのリンクなど、じっくり見ていくと、気付かされることがたくさんある。それらの仕掛けが、自然に見るものに伝わってくるのが、このドラマの妙なのだ。

 次回以降の展開だが、最後のシーンで、山下の手元には、妻からの離婚届が置かれていた。いよいよ、本格的に、順子への恋愛バトル参戦といったところだろうか。彼もまた、厭世観を漂わせながら、それほど不幸には見えない。

 そうなのだ。このドラマに登場する人たちは、それぞれの事情を抱えつつも、決して不幸ではない。それは、みんながさまざまな形で「恋をしている」からかもしれない。恋愛が全てだと言うつもりはないが、幸せであるための特効薬であることは間違いないだろう。

(文=プレヤード)

深田恭子“無自覚”であることの才能と強さ――ドラマ『初めて恋をした日に読む話』第4話

(前回までのレビューはこちらから) 

 人間は、「自覚的」か「無自覚」かで、タイプ分けすることができる。

「自分がかわいいと自覚している女性」と「自分がかわいいことを自覚していない女性」、「自分が幸せだと思っている人」と「自分が幸せだと気づいていない人」など、どの場合にも言えるのは、自覚している人より無自覚であるほうが、よりかわいかったり、本当の意味で幸せだったりするものだ。

 なぜなら、「かわいい」とか「幸せ」を自覚している人は、それを維持するために大変な労力を要するから。それを失った時の恐怖心もあることだろう。「無自覚」の場合は、そのようなことは一切ないのだ。最強の人間は、「無自覚な人」ということができるだろう。

 ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)第4話。今回も、順子(深田恭子)の無自覚さが際立っていた。

 やっとの思いで、順子に告白した従兄弟の雅志(永山絢斗)。しかし、順子はその気持ちに全く気づかず、あくまでも親戚や友人としての情愛としか受け取らなかった。

 同じように、匡平(横浜流星)からの気持ちも、恋愛感情だとは気づいていない。順子は、東大受験に失敗して以来、自分に自信が持てず、今のモテ具合を全く自覚していないのだ。

 もちろん、先にも書いたように、無自覚であればあるだけ、順子の魅力は増していく。雅志と匡平も、お互いの順子に対する気持ちに気づきながら、どんどんと彼女への思いは募っていくのだ。もはや、ここまでくると一つの才能とも言える。

 この、無自覚な女性を演じるというのは、意外と難しい。なぜなら、下手な芝居をしてしまうと、「無自覚を演じている姿を演じている」というように受け取られてしまうから。いわゆる「ぶりっ子」に見えてしまうのだ。

 しかし、深田恭子がその役に入ると、本当に無自覚であるようにしか見えない。役に入りきっていることもあるだろうが、深田自身が、どこか無邪気な雰囲気を持っており、見ているものにあざとさを感じさせない力を持ち合わせているからではないだろうか。

 順子との微妙な関係を維持したまま、冬を越え、2018年春、匡平は無事高校3年生になった。勉強の方も、他の生徒たちに追いつき、1年後の東大受験に向け、順調に努力を続けるのだった。

 そんな頃、順子は、山下(中村倫也)から、匡平が中学時代に母親を亡くしていることを聞かされる。同情した順子は、匡平に対して、母親のような気持ちを募らせるのだ。

 複雑な思いを山下に相談する中で、順子は「幸せってなんなんだろう?」と口にする。それに答えて山下は言うのだ。

「幸せが何かなんて、幸せな時は考えない」

 今回のストーリーでは、この「幸せ」という言葉が大きなキーワードになった。

 迎えた5月のゴールデンウィーク、塾では、受験のための強化合宿が行われる。

 行きのバスの中、クラスのエリートである、鷲津(内藤秀一郎)や長宗我部(市川理矩)たちが、クラスメイトの大塚さつき(神岡実希)に嘘の告白をして、盛り上がる。それを注意した美香(吉川愛)と匡平は、エリートグループと対立することになってしまう。

 ここでまた新たな美少女の登場である。大塚役を演じた神岡実希は、2017年まで、アイドルグループ『ハコイリムスメ』のメンバーとして活動していた。愛らしいルックスと、強気な性格で人気を博し、卒業後は、映画『ナラタージュ』(2017)などで、女優として活躍している。こうしてメジャーなドラマに出てきたことで、人気が高まっていくかもしれない。

 さて、順子に対する匡平の気持ちを知った順子の友人・美和(安達祐実)は、「18歳の誕生日までは、法律的にダメ」と伝える。

 一方、雅志は順子を追いかけて、合宿所の近くにある会社の保養所に泊まりに来る。匡平は、雅志の元を訪ね、順子への思いを確認する。好きであることを告げた雅志に、匡平は言うのだ。「何の問題もなく告白できるなんて、幸せだ」。

 17歳はまだ子ども、そんな思いがあるのだろう。年が離れている自分への歯がゆさもあるのかもしれない。

 合宿中、相変わらず匡平に嫌がらせを続ける鷲津たちは、「匡平がロッジでタバコを吸っていた」と証言する。真偽を確かめるためロッジに向かった順子は、そこで匡平と二人きりになる。

  美和に言われたことを意識してか、匡平は「来年の2月3日、覚えておいて。18歳になるから」と告げる。

 ロッジのシーンでは、燃え上がる暖炉の炎や、ヤカンから吹き上がる蒸気が、匡平のあふれるような気持ちを暗喩していた。なかなか意味深な演出である。

 匡平に腰を抱かれて戸惑う順子が可愛らしい。

 深田恭子の魅力の一つは、戸惑ったような瞳の演技だ。一歩間違えば、わざとらしくなってしまうようなクルクルとした目の動きを、自然にこなしてしまう。

 そしてもう一つ、彼女の話し方にも、秘密があるような気がする。甘えるような、でもしっかりと気持ちを伝える口調と声。アリナミンAのCMで「だるおも~」とつぶやいただけで、そのセリフがしっかりと頭に残ってしまう。そんな声の魅力がある。

 合宿中のキャンプファイヤーのシーン。燃え盛る焚き火越しに、匡平が順子を見つめる。そこに主題歌である、back numberの「HAPPY BIRTHDAY」が流れる。“HAPPY BIRTHDAY”=誕生日。次の誕生日、匡平は18歳になる。そこが物語の最大のヤマ場になるのではないかと期待される。

 最後、インフルエンザで寝込んだ順子と匡平は、手をつないで眠っている。実はここで、ドラマの冒頭に出てきた、美和の店で働くホステス・もんちゃんの「男子高校生と手をつなぐだけで女性ホルモン出そう~」というセリフの伏線が回収されるのである。

 ロッジのシーンでの小道具の使い方や、主題歌の効果的なストーリーとのリンクなど、じっくり見ていくと、気付かされることがたくさんある。それらの仕掛けが、自然に見るものに伝わってくるのが、このドラマの妙なのだ。

 次回以降の展開だが、最後のシーンで、山下の手元には、妻からの離婚届が置かれていた。いよいよ、本格的に、順子への恋愛バトル参戦といったところだろうか。彼もまた、厭世観を漂わせながら、それほど不幸には見えない。

 そうなのだ。このドラマに登場する人たちは、それぞれの事情を抱えつつも、決して不幸ではない。それは、みんながさまざまな形で「恋をしている」からかもしれない。恋愛が全てだと言うつもりはないが、幸せであるための特効薬であることは間違いないだろう。

(文=プレヤード)

大人らしい大人とはなんだろう?――ドラマ『初めて恋をした日に読む話』第3話

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 学校の先生が主役のドラマには、定番の展開がある。

 不良であったり、心を閉ざしていたりする生徒が、初めは反抗するものの、先生の熱意に触れ、信頼を寄せていくというパターンだ。『3年B組金八先生』(TBS系)や、『ごくせん』(日本テレビ系)、『GTO』(フジテレビ系)などもこの流れをふんでいた。

 そんな中でキーになるのは、「大人らしくない行動」である。周囲の先生が見放した生徒を、あきらめずに信頼し、立ち直らせようとしたり、自分の思いにまかせて無茶な行動をしてみたりといった姿が、生徒たちの気持ちを変えていくのである。

 一般的に言われる“大人”は、自分の感情を抑え、周囲に気を使って生きている。それは仕方のないことだ。無駄な労力を使わず、楽に生きるための知恵だから。ただ、周囲との軋轢を恐れず、後先のことを考えずに、思いのままに行動する、そんな“子どもじみた”部分も、時には必要なのだ。

 GTOの鬼塚も、ごくせんのヤンクミも、金八先生だって、子供じみたところがあった。でも、それでいいのである。ドラマの中とはいえ、結果的に彼らは生徒たちの心を掴んだのだから。

 ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)第3話。今回は、大人と子ども、それぞれの思いが交錯する展開となった。

 東大合格を目指す匡平(横浜流星)の指導法に悩む順子(深田恭子)は、同僚のカリスマ講師・勅使河原(髙橋洋)に相談する。しかし、現実的に合格は無理だということ、そして、万が一合格の可能性があるとしても、そのためには国語と英語を強化しなければならないことを論理的に説明されただけだった。

 国語と英語の重要性を知った順子は、古文の授業に力を入れる。そこには、匡平にアプローチをする女子高生・美香(吉川愛)も同席していた。

 順子に思いを寄せる従兄弟・雅志(永山絢斗)は、社内で「東大出のおぼっちゃん」と揶揄されたことで意地になり、新たなプロジェクトを引き受けてしまう。順子とデートする約束を取りつけていた彼は、時間を作るため、毎日無理をして仕事をこなすことになる。

 順子に比べれば、十分大人のように見える雅志も、どこか子どもじみたことをしてしまうのだ。ムキになって仕事を増やしてしまったり、照れてしまって順子にうまく想いを伝えられなかったり。でも、そんなところが人間的で、魅力があるようにも思える。

 匡平に対し、「普通のやり方では合格は難しい」と感じた順子は、友人・美和(安達祐実)の意見も聞こうと、相談をもちかける。しかし、そこでは「仕事もいいが、婚活も同時にした方がいい。昔からの知り合い男子はどうか」とアドバイスされるのだった。

 その時、店の前を美香が通りかかり合流、自身の過去の恋愛について語り始める。中学の時、家庭教師の男性と付き合ったが、相手に裏切られたことがあったという。そんな思いを吐露した後、彼女は言う。

「大人って、全然大人じゃないんだな」

 彼女の考える“大人”。それは、自分の行動に責任を持ち、逃げずに正面からぶつかっていく人のようなことだろう。でもそれは、“理想の大人”であって、現実の大人は、えてして要領よく問題からすり抜けていってしまうものだ。“大人”という概念は、捉え方次第で、良くも悪くもなってしまう。

 帰り道、順子は偶然、高校の同級生で匡平の担任でもある山下(中村倫也)と出会い、二人で飲みに行くことになる。美和の言った「昔からの知り合い男子」という言葉を思い出した順子は、山下を恋愛の対象と意識し、緊張してしまう。しかし、そこで山下が結婚していたことを知り、激しく落ち込むのだった。一方の山下は順子と会っていたことを、学校で匡平に話す。匡平は二人の関係に嫉妬を感じる。

 勉強に興味を持ってもらえるよう、順子は匡平と美香に、古典や歴史について学べる漫画を渡す。匡平は素直に受け取ったものの、美香はそんな順子に反抗する。

「いい先生ぶって、自分が気持ちいいだけでしょ」

 このセリフからは、美香の順子に対する嫉妬心が見え隠れする。匡平が順子に思いを寄せていることを知って、悔しさを感じているのだろう。匡平にたしなめられた美香は、やけになり、知り合いの男に連絡するが、優しく答えてくれる人はいない。唯一、過去に付き合っていた家庭教師の水野(森田甘路)だけが、下心を持って、明日会ってもいいと言ってきたのだった。

 そんな自分の状況に迷った美香は、塾の教員室を訪ね、思いをぶつける。

「どうやったら自分を好きでいてもらえるのか分からない……」

 自暴自棄になった美香は、そのまま水野と会い、ホテルに入ろうとする。そこに順子が現れ、美香を助けるのだった。「好きになった自分に、もっと責任を持ちなさい」そう言う順子に、美香は少しずつ心を開いていく。

 一方、プロジェクトが佳境に入った雅志は、仕事で荷物を運ばなければならない日、過労により街中で倒れてしまう。偶然通りかかった匡平らに助けられ、順子も駆けつける。なんとしてもやり遂げようとする雅志を見て、順子は、自分が運転して荷物を運ぶことを決意する。

 順子と匡平の助けもあり、無事に荷物を届けることができた。帰り道、休憩している時、雅志はそっと順子を抱きしめ、「好きだ」と告げる。そして、それを匡平に目撃されてしまうのだった……。

 今回は、恋愛のシーンが少なかったが、最後に波乱含みの展開を持ってきた。この時点で、匡平は雅志と山下に嫉妬心を抱いており、雅志もまた匡平に同じような感情を持っている。山下だけが、今のところ冷静に順子と接しているように見える。果たして、彼の“結婚”は、今も続いているのか? そのあたりが今後のカギになるだろう。

 さて、作中で問いかけられた、“本当の大人”とはどういうものなのだろうか。

 配慮しなければならない常識や周囲の目、それでも何かをしたいという自分の思い、それらをバランスよく考え、前に進んでいく人。ある意味、大人的な配慮と子どもじみた感情を両立させている人こそ、本当の意味で大人なのかもしれない。

 今週は、字幕を使うなど、面白い演出も見られた。笑って楽しめる部分と、真剣に人生を考える部分、そして恋愛の要素がバランスよく混ざりあったこのドラマ。大人になってしまった人が見ても、これから大人になる人が見ても、役立つことがふんだんに詰まっている。

(文=プレヤード)

思い通りにいかない人生はつまらない?――ドラマ『初めて恋をした日に読む話』第2話

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 学校の行事でよく行われる、「タイムカプセル」や「未来の自分への手紙」。あいにく私は参加した記憶が無いのだが、若い頃は、面白そうな企画だと思っていた。

 しかし、歳を重ねるごとに、“残酷さ”のようなものを感じてしまい、今では「ああいう企画がなくてよかった」と胸をなで下ろしている。

 誰もが感じているように、自分の将来などというのは、思った通りにいかないものだ。それを「過去の自分」という、誰よりも身近な存在に検証されるのである。厳しいことこの上ない。

 ドラマ『初めて恋をした日に読む話』(TBS系)第2話では、そんな「過去の自分からの手紙」が効果的に使われていた。

「東大に入りたい」という落ちこぼれ高校生・由利匡平(横浜流星)の熱意に押され、塾講師を続けることになった順子(深田恭子)。そんな彼女の元に、15歳の時、大人になった自分宛てに書いた手紙が届く。

「東大には行けたか?」「どんな人と結婚しているのか?」そして、「なりたい自分にはなっているか?」――それらの問いかけに、何一つ応えられていないことに順子は愕然とする。

 そんな挫折を味わいながらも、指導している匡平は、順調に勉強を続けており、順子の励みにもなっていた。

 ある日、匡平は、学校の仲間に誘われて行った合コンで、女子高生・江藤美香(吉川愛)と出会う。彼女は匡平を気に入り、彼と同じ、順子が勤める塾に通うようになる。

 新たなキャラクターの登場だが、演じている吉川は、かつて“吉田里琴”の名前で活躍した名子役であった。2008年に放送されたドラマ『オー!マイ・ガール!!』(日本テレビ系)では、6歳の天才子役という、自分の立場ともリンクした役を見事に演じていたことも印象深い。

 そして、16年、学業に専念することを理由に、一度芸能界を引退している。これからの活躍が期待される中での引退だったので、残念がる声は多かった。しかし、彼女は彼女なりに、「なりたい自分」を探していたのだろう。

 引退から一年後、女優として芸能界に復帰。どのような気持ちの変化があったかは知る由もないが、彼女なりに自分の人生を見直した結果だと思われる。そんな経緯をたどった彼女が、今回のドラマの「なりたい自分になれているか?」というテーマと重なって見えてしまう。子役時代から見ているが、愛らしいルックスと視線を巧みに使って演じる演技力は健在で、これからどう絡んでいくかが楽しみである。

 一方、順子に想いを寄せる、エリートの従兄弟・雅志(永山絢斗)。彼に届いた、未来の自分への手紙には、今でも変わらない順子への思いが綴られていた。雅志は、順子の幼馴染みの美和(安達祐実)から匡平のことを聞き、複雑な思いを抱く。

 そんな時、順子の塾で、近隣の高校に出向いて授業を行う「出張講師」をすることになる。なりゆきで、匡平の通う南校に行くことになった順子。そこで、学校側の担当となった教師は、高校の同級生・山下(中村倫也)だった。

 高校時代、山下は進学校の授業についていけず、落ちこぼれていた。そんな彼に、勉強を教え立ち直らせたのが順子だった。そして山下は、順子の人生で、唯一告白をしてきた男性でもあった。ほろ苦い思い出とともに、二人は再会したことになる。

 当時、付き合うことはなかったものの、「山下が自分を好きになってくれた」という事実は、その後も順子が落ち込んだ時に力をくれた。人が躓いた時に励みになるのは、誰かに愛されていたという実感なのだろう。それは、愛された経験が少ない者にとっては、大切にしておきたい思い出であるはずだ。

 山下と再会し、愛されることが励みになっていたことを思い出した順子は、匡平に「受験勉強しながら恋愛もしてほしい」と告げる。それに対し、「自分を肯定してもらったのが嬉しい」と答える匡平。いい雰囲気になったところで、順子の腰痛が再発する。心配して、生徒は立入禁止の講師ルームに付き添う匡平。他の先生が戻ってきたことから、順子は慌てて匡平を、自分の机の下に押し込む。

 同僚の教師が、匡平の父(鶴見辰吾)は文部科学省の局長であることを噂する中、順子は「受験会場でペンを持つのは本人、親なんか関係ない!」と言い切る。その言葉を聞いた匡平は、順子の膝に頬を当てるのだった。

 小さな出来事の積み重ねで、徐々に徐々に、匡平が順子に惹かれていくシーンが描かれる。年齢差もあるし、「先生と生徒」という立場もある分、匡平は自分の気持ちに戸惑っているようにも見える。20年もの長きに渡って恋をしている雅志や、これから大人の恋愛に発展しそうな山下とは違い、初々しさを感じる。おそらく、不良のような外見と、ピュアな気持ちとのギャップに、見ている女性の方々はキュンとなっているのではないだろうか。

 迎えた出張授業の日、教壇に立った順子に対し、生徒の反応は冷ややかだった。皆一様に聞く気がない。「勉強して何の役にたつのか?」そう尋ねる生徒に、「私もそう思う」と答える順子。

「だけど、みんなに大事な人ができた時、その人を守るために必要なことはある」

 そんなふうに語る順子に、生徒たちは耳を傾け始める。落ちこぼれた生徒たちは、順調に人生を歩んできた人の話を聞きたいわけではない。順子が自分のダメなところをさらけ出して話をしたことで、心を開いていったのであろう。

 打ち上げの席で、匡平と二人になった順子。酔った順子は、自分が今、匡平に夢中だと口にする。そして、匡平もまた、順子が好きな気持ちに気づくのだった。

 ドラマのラスト、順子のモノローグで、15歳の自分に向けた手紙を読んでいる。

「私は、君の想像する未来を、何一つ叶えていません。それでも、想像以上に忙しい日々を過ごしています」

 未来は、自分の思った通りになんかならない。でも、何かを手にしようという気持ちを持っていれば、そんなに悪い方向にはいかないんじゃないかな、と思う。大切なのは、何かを目指し、前に進もうという気持ちだ。

 このドラマは、そんな思いを持った人たちが、少しずつ幸せに近づいていく物語なのだ。ただの恋愛ドラマだと思って見ていてはもったいない。

(文=プレヤード)