毎回ハイエンドな話題のレストランなどを取り上げ、意識高い系を中心に支持を得ているライフスタイル誌「東京カレンダー」。同誌スマホアプリで配信する、港区を舞台にアッパーな男女たちが織り成す人間模様を描いた動画ドラマも人気で、「港区おじさん」「港区女子」という言葉も浸透させた。
筆者は上京して2年、そんなキラキラな港区ライフに憧れつつも、大学と住まいのある豊島区からほぼ出ることのない毎日を送っている現役女子大生(21)だ。そんな筆者だが、港区女子になれるかもしれないチャンスを見つけたのだった。
「日本最大級のアッパー層限定審査制婚活・恋活マッチングアプリ」
「東京カレンダーが提供するコンテンツの世界を踏襲」
「ワンランク上の、多くの素敵な男女の会員がお待ちしております」
これは、同誌が運営する出会い系サイト「東カレデート」の紹介記事である。豊島区女子の前に突然現れた港区女子への扉を、筆者は開かずにはいられなかった……。
登録に際し、Facebookまたは携帯SMSによる認証と、本人確認書類の提出が必要なのはほかの出会い系アプリも同様だ。しかし、同アプリが特徴的なのは、顔写真と自己紹介文を提出したうえで、運営と既会員による入会審査が行われているということだ。
ルックスにはまったく自信のない筆者だったが、過去に撮った写真の中で奇跡的に「盛れてる」1枚をチョイスしアップしたところ、登録から2日後には晴れて審査合格となった。
すると、男性会員からの大量の「いいね!」が届き始めた。その数は、審査合格から1日で60を超えた。「いいね!」を送ってくれた男性に「ありがとう」と返せばマッチング成立となり、直接メールでやりとりできるようになる。
港区女子への扉が開いたことに小躍りしながら、「いいね!」をくれた男性全員に、次々に「ありがとう」を返した。気づけば、マッチョボディを縦縞スーツの下に隠した褐色のアラフォー男に、ホテルのバーでルームキーをチラつかせて口説かれることを想像してニヤついたりもしていた。
マッチングした男性の中で、最初にメールを送ってきたのは37歳会社経営、年収5000万円というスペックの人物。しかし、興奮しながら開封したメールは以下のような内容だった。
「お となの関係でお会いいただけませんか、じょうけん5で検討していただければ幸いです」
不自然なスペースや仮名遣いは、おそらくアプリが設定している禁止ワードに触れることを避ける狙いがあるのだろう。港区ライフへのお誘いかと思いきや、まさかの買春のオファーに落胆しつつ、筆者は「え? そういうのはやっていないんですが……」と返信。しかし相手は「みんなやってますよ。7だすからどう?」と、まったくひるまない。
ほかのみんながやっていようが、買春オヤジには用のない筆者は、それ以上の返信をすることはなかった。しかし、次に受け取った、年収2000万円の52歳の医師からのメールも、売買春を持ち掛けるものだった。
「最初会ってみてお互い気が合えば、おとなの方都度5で考えています」
もはや筆者は男性からのメールを待つことはやめ、マッチングした男性の中から真面目そうな相手を選び、こちらからメールをしてみることに。
「港区女子に憧れています。まずは食事をしながら、お互いのことを知り合えたらと思います」
そんな文面のメールを、公務員や会社員、自営業など、庶民的な肩書の男性10人ほどに複数送った。
その後、3日以内に返信があったのは、6人。しかし、初対面でドライブデートをしたいという怪しい人や、「お食事だけの方は普通に間に合っていますよ」と意味深な人、なぜか赤羽での面会にこだわる北区おじさんなどばかりで、キラキラの港区ライフに誘ってくれそうな男性はいなかった。「現在、海外出張中なのでまたメールします」と言っていた商社マンも、その後、連絡が途絶えている。
結局、出会えるのは港区おじさんではなく買春おじさんばかりという結果となった。筆者のスペックが不十分だっただけかもしれないが……。
ちなみに東京カレンダーには、出版事業の傍らで出会い系サイトを運営する意義や、そこで売買春が行われている疑いについて、4月26日までに電話とメールで見解を求めた。しかし5月12日時点では返答を得られていない。
(文=大塚ナミ)