元極妻が考える、『ザ・ノンフィクション』ヤクザの更生――なぜ犯罪を繰り返してしまうのか?

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

■ヤクザをやめた男たちはどこへ?

 4月21日に『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)で元ヤクザの更生をテーマにしたドキュメンタリー『その後の母の涙と罪と罰』が放映されました。関東限定だそうですが、長い時間をかけて取材しているのが伝わってきて、見ごたえがありました。本作は、昨年7月15日に放映された『母の涙と罪と罰』の続編でした。前作はドキュメンタリーとしてはかなり高い視聴率7.2%をマークしたそうです。どちらの作品も「更生をめざす元ヤクザ」の姿に迫っていますが、やはりそう簡単なお話ではありません。

 前提として、ヤクザをやめる人が増えているのは事実です。警察庁によりますと、2018年末現在で、ヤクザ(暴力団構成員)は約1万5,600人。対前年比約1,200人の減少で、過去最少を更新したそうです。警察庁は、「暴力団排除の取り組みに伴い、資金を得るのが難しくなっていることなどから、構成員らの離脱が進んでいる」と得意顔です。

 でも、以前も何度か書かせていただいていますが、この「やめた人」たちはどこへ行くのでしょうか? 亡くなった人もゼロではないでしょうが、多くもないと思います。生活できなくてヤクザをやめた「元ヤクザ」たちに、仕事やお金、家、家族などはあるのでしょうか?

 今回のドキュメンタリーに関しても、ネット住民さんたちの感想は「ロクデナシに生きる権利などない」という感じのものが多いです。間違っているとは言いませんが、居場所をなくした元ヤクザたちは、生きるために、もっともっと悪いことをするでしょう。犠牲になるのは、ご自分かもしれませんよ?

 ネタバレしない程度に、ザ・ノンフィクションの『母の涙と罪と罰』と『その後の母の涙と罪と罰』の感想を書いてみますね。前回放送と内容が結構かぶっている印象はありますが、前回をご覧になっていない方も多いでしょうから、仕方ないと思います。

 前回は、元ヤクザの学さんとそのお母さんの思いを中心に、同じく元ヤクザで牧師の進藤龍也さんとそのお母さん、家族の愛に恵まれたことのないタカシさん(仮名)などのインタビューで構成されていました。

 学さんは、ヤクザ現役時代は誰も信じられず、覚醒剤のせいで生死の境もさまよいましたが、キリスト教に出会ったことで人生が変わります。今はお母さんともいい関係だそうです。進藤牧師もやはり覚醒剤に溺れ、若い頃はお母さんに反発していたそうですが、現在の関係は良好です。

 このお二人に限らず、親御さんとの関係がいいと更生できる例は、極妻時代から見てきました。逆に言うと、親の愛に恵まれずに育ってしまうと、愛し方がわからず、大切なものが守れないようです。

■居場所のない世の中

 今回の主人公・タカシさんは、大切なものを守れませんでした。タカシさんは進藤牧師の教会で学さんと知り合い、共同生活をしていました。学さんは仕事をしていますが、タカシさんは「元ヤクザ」をカミングアウトしているせいか、なかなか仕事が見つかりませんでした。それでもようやく採用され、進藤牧師のお母さんに保証人になってもらってアパートを借りることもできました。

 ところが、最初は生き生きと働いているように見えたのに、職場をクビになり、逮捕もされてしまいます。フジテレビの番組案内には、「社会復帰を目指していたが突然の逮捕」とか「うつ病と生活保護そして犯罪に手を……」となっています。

 一体、タカシさんに何があったのでしょうか? それはわからないのですが、カメラはうつ病になって引きこもるタカシさんを追います。自立して生活できていたのに、なぜ……と多くの方は思われるでしょうね。

 私には、なんとなくわかりました。愛された経験のないタカシさんは、寂しかったのではないでしょうか? とっくに成人しているはずのタカシさんからは、幼さしか感じませんでした。

 タカシさんは仕事と部屋があっても、独り暮らしで、仕事から帰っても誰もいない生活に耐えられなかったのだと思います。こういう若者に「甘えるな」と言っても伝わりませんよ。甘えたことがないんですから。

 オットの若い衆にも、親の愛に恵まれずに育った青年は何人もいました。部屋住みの生活を「居場所」として楽しめるコは、やっぱりいい顔つきになっていきましたね。かつてのヤクザの組は、家庭に恵まれなかった人の「居場所」でもあったのです。ヤクザがいいとは言いませんし、そもそも今はムリでしょうね。過剰な暴排で、今となってはヤクザにも居場所がありません。これからは、タカシさんのような青年は増えると思います。

元極妻が考える「アポ電問題」――ヤクザの間に“オレオレ詐欺”が広まるワケ

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

■アポ電詐欺で強盗殺人

「姐さん、『アポ電』て、どう思います?」

 編集者さんから聞かれました。

「どうって……いいわけないですよね」
「逮捕されているのは若い人ですけど、やっぱりヤクザとか背後にいるんですか?」
「わかんないけど、いてもおかしくはないでしょうね」

 元極妻が言うことでもないですが、本当にイヤな世の中になりました。3月には、アポ電詐欺のグループの実行犯3名が逮捕されています。犯人はまだ若者で、被害者の高齢女性が殺害されてしまいました。

 初めて知りましたが、今は「アポ電詐欺」はネット版現代語辞典の『知恵蔵mini』(朝日新聞出版)にも載っている言葉なんですね。

「個人に電話をかけ、家族構成や資産状況を聞き出したうえで振り込め詐欺や強盗などを仕掛けること。アポ電とはアポイントメント(面会の約束)を電話で申し込むことの通称。アポ電詐欺を仕掛ける者は親族や警察官、役所の職員、銀行員、マスメディアの調査員などを装うことが多い。警視庁によれば、2018年にはアポ電詐欺が疑われる不審電話を受けたとする通報が東京都内で3万件以上に上り、16年の2倍以上と急増した。同庁や国民生活センターは被害を防ぐため、疑わしい電話には出ずに自動通話録音機や留守番電話を活用したり、電話に出てしまった場合でお金の話が出てきたら、すぐに電話を切って警察に通報するよう呼びかけている」のだそうです。

 3月の事件は、もはや詐欺ではなく強盗殺人です。なぜこんな事態になってしまったのでしょうか?

 少し前にオットの兄弟分のAさんが長期の務め(懲役のことです)を終えて出てきました。80歳近いですが、まだ「現役」のヤクザです。

 「でも、もうやめようかと思って」と寂しそうに言います。「そもそもシノギがないし、知り合いがみんなオレオレ詐欺をやってて、びっくりした」のだそうです。

「クスリ(違法薬物)は昔からさわる(売買する)ヤツはいたけど、オレオレはねえだろう。ましてやゴウサツ(強盗殺人)って、不良のやることじゃない。若い衆も、あんなことするために不良になったわけじゃねえだろうに。情けねえよなあ」

 Aさんは、ちょっと泣きそうです。長い間の収監で拘禁反応(神経症、鬱状態、幻覚、妄想など、自由を拘束された状態が続いた場合にみられる精神障害)も残っているかもしれませんが、今のオレオレ詐欺のまん延を純粋に悲しんでいるようでした。

 念のため申し添えますと、Aさんはヤクザで組織のために人を殺していますから、「いい人」ではないですし、いわゆる「任侠」的な「弱きを助ける」タイプでもありません。それに、マルチ商法などほとんど詐欺みたいなシノギをしているヤクザは、昔からたくさんいます。それでもAさんは、「年寄りを騙すなんてカッコ悪い。しかもゴウサツなんて最低」と憤懣やるかたない様子でした。

 Aさんによると、獄中(なか)でも、受刑者の間でオレオレ詐欺はよく話題になっていたそうです。刑務所でも、ある程度は新聞や雑誌が読めますし、テレビも視聴できますから、シャバの事情はだいたいわかるのですが、まさかここまでオレオレ詐欺が広まっているとは思わなかったんですね。

 もう何度も書いていますが、これは過剰な暴力団排除条例のせいです。「暴力団員」を徹底的に排除して、受け皿もなしに「排除されたくなければ暴力団をやめろ」と言うだけでは、世の中は平和になりません。

 そもそもやめたところで誰も雇ってくれませんし、ほとんどの条例は、やめても5年間は「暴力団員」と見なすとしています。これでは、生きていくためにオレオレ詐欺や違法薬物売買に手を染めるしかありません。それに、今はひとつのヤクザ組織ではなく、他組織や半グレなど「暴力団」以外の組織や、元暴走族など町の不良などが集まって犯罪グループを作ってカタギを狙っています。これから、ますます高齢者などの被害は増えるでしょうね。

 それもこれも、ここまでヤクザを追い詰めてしまった暴排条例が元凶なのです。求められているのは排除ではなく、元ヤクザや元受刑者を受け入れる環境の整備だと思います。

横浜のラーメン店で抗争が起こったワケ――元極妻が考える山口組二次団体幹部殺害事件

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

■ラーメン店で殺人事件

 すでに手打ち(和解)しているそうですが、3月20日に横浜市内のラーメン店でヤクザ同士のケンカがあり、2人が刺されて1人は死亡、1人は重傷を負いました。

 亡くなったのは六代目山口組二次団体・三代目小西一家の小濱直史統括委員長。ネットでは「ラーメン店の厨房の包丁でメッタ刺しされた」との話も出ていますが、真偽はわかりません。また、実行犯はこの原稿を書いている3月28日の時点では、まだわかっていませんが、稲川会二次団体・十二代目小金井一家の組員といわれています。この方も、また長い逃亡生活が続くのでしょうか。

 報道などによりますと、名前が似ていてわかりにくいですが、「小金井一家のシマで小西一家がシノギをしている」ということで、以前から両者の間で話し合いが持たれていたそうです。

 20日も、この件で話し合おうとラーメン屋に集まったところ、小金井一家側は3人だったのに、小西一家側はなぜか10人以上だったそうで、「話が違う」と口論となった挙げ句に刺されてしまった……ということです。「多勢に無勢」ではなく、多勢の方が刺されているのもどうなっていたのか、報道ではよくわかりませんね。

 被害者は、現在服役中である小西一家の最高顧問で二代目堀政連合・小濱秀治会長の養子さんでもあるそうで、カエシ(報復)による全面抗争も懸念されましたが、素早く手打ちが済んだことで、最悪の事態は回避できたんですね。ひとまずよかったです。

 南無阿弥陀仏。

 2011年の暴排条例の全国施行、15年の山口組分裂、17年の再分裂などを背景に、ヤクザ間のトラブルが続いているのはご存じと思います。ただ、ほとんどが六代目山口組と神戸山口組、神戸山口組と任侠山口組など、内部的な事件なんですね。他組織間はもちろん、山口組関係者の事件も大規模な抗争に発展しないのは、重罰化と併せて最高幹部の責任が重くなっているという事情があります。まったく今どきは何でもかんでも「教唆」とか「使用者責任」ですからね。

 でも、私もムリして長い懲役に行くことはないと思いますし、街中で抗争が起こるのは問題ですし、抗争はないほうがいいと思います。時代が違いますから、長い懲役で、いいことは何もないんです。裁判費用も組はなかなか出せないし、そもそも出所しても組が存続しているかどうかわかりませんからね。

 そういうこともあって、ずっと自粛ムードが続いている中で起こった今回の件は、ネット界隈を中心に「シマを侵略してきた山口組に稲川会が『ノー』を突き付けた」と評価する声も出ています。そうなると、これからが心配です。

 「やっぱり俠(おとこ)は行動してこそ俠」となっちゃうと、どうなるのでしょうか。「これまで抑えられていたエネルギーが暴発する……」というのは週刊誌の読みすぎだと思いたいです。でも、それもこれもヤクザを追い詰めた結果ではないでしょうか。暴排条例で正業を奪われて生活できなければ、オレオレ詐欺だって強盗だってやりますよね。

 作家の宮崎学さんは「かつてヤクザがここまで追い詰められた時代はなかった」とおっしゃっていましたが、追い詰められれば「せめて俠になって長期刑を務めよう」と思うのは、いいことではないですが、仕方ないかもしれません。「去るも地獄、残るも地獄」のヤクザ社会で、これから何が起こっていくのか……。元極妻としては「心配」しかないのです。

ピエール瀧の「コカイン使用容疑」とミナミのカジノバー銃撃――元極妻が考える「逮捕」の意味

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

■負けが込んだ常連が怒って発砲?

3月11日の大阪ミナミのインカジ(インターネットカジノ店)銃撃事件で、界隈の緊張感はかなり高まっているようです。現場は、あのグリコの看板のすぐ近くらしいですよ。

 事件は、この日の午前0時40分に発生しました。お店は、事前に電話予約を入れるシステムで、連絡してきた常連の青年が、ドアが開いたとたんにズドンと撃って逃げています。弾はお客さんと従業員さんに当たり、お客さんの意識は戻ったそうですが、従業員の方は意識不明の重体だそうです。

 すぐにヒットマンは指名手配されましたが、「暴力団員」ではないようです。拳銃で「いい仕事」をしているので、かなり場数を踏んでいるのでしょう。で、「負けが込んだ常連が怒って発砲した」のだとか。バクチに負けたくらいでいちいち発砲していたら、命がいくつあっても足らないはずですが、まあそういうことなんですね。

 もともとミナミ界隈は、六代目山口組、神戸山口組、任侠山口組の「三つの山口組」が覇権争いをしていることで知られています。もともとはひとつの組ですから、骨肉の争いの上にシノギのきつさがあって、暴行事件なども相次いでいます。みんな過剰な暴力団排除条例が悪いんですよ。

■ヒットマンはどこへ?

 今回のインカジ襲撃について、報復(カエシ)があるかどうかは微妙なところです。警戒態勢を強めるよう指示している幹部もいるようですが、わかりやすい組織同士の争いではありませんからね。今後の動きに注目です。

 ワタクシ的には、逃走中のヒットマンを心配しています。たとえば、1997年の山口組若頭射殺事件で逃げていた実行犯グループの末路は、哀れとしかいいようがありませんでした。病死のTさんも悲惨でしたが、16年の逃亡の末に逮捕されたSさんは「むしろ捕まってほっとした」と話していましたね。このあたりは中野太郎さんの『悲憤』(講談社)に詳しいです。

今回の方はまだ30代だそうで、どうなるのでしょうか。思えば、ここ数年のヤクザの銃撃事件では、ヒットマンはほとんど逮捕されていません。逃亡生活は心細いでしょうし、すでに亡くなっている可能性もゼロではないです。いずれにしろ切ないですね。

 などとしみじみ思っていたら、ピエール瀧さん逮捕のニュースが入ってきました。コカインの使用を認めているそうで、驚きました。

 俳優として数々の映画やテレビドラマに出演されている瀧さんは、電気グルーヴのメンバーであり、ミュージシャンとしての活動も長いですよね。逮捕(パク)られた時には、職業を「ミュージシャンです」と答えたそうです。

 それにしても、覚醒剤ではなくコカインですか……。コカインで思い出すのは、パンツに入れていた勝新太郎さん(古いか)とか、『コカイン』という曲まで作っているエリック・クラプトン、レディー・ガガ、ホイットニー・ヒューストンなどですね。アンジェリーナ・ジョリーやエアロスミスのスティーブン・タイラーも使用を認めています。

 瀧さんもやっぱりセレブなミュージシャンだから、コカインなのでしょうか。瀧さんが悪徳刑事として出演した映画『日本で一番悪い奴ら』(東映・日活、白石和彌監督、2016年公開)の原作者で元北海道警察警部の稲葉圭昭さんは、「(瀧さんは)パクられて、むしろホッとしているんじゃないかな」とコメントされていました。たしかに収監されれば、ひとまず薬物も使えません。

 この稲葉さんは、ご著書『警察と暴力団 癒着の構造』(双葉社)で、コカインやクラック、ヘロインなど、さまざまな違法薬物を試したことをカミングアウトされ、いちばんハマったのが覚醒剤なのだそうです。それもどうかと思いますが、瀧さんの場合、コカインは海外のミュージシャンは使う方が多いので、罪悪感も薄かったのでしょうか。

 ちなみに今年の初めには神奈川県の職員の方が大麻とコカインを使用したとして有罪判決を受けて、懲戒免職となったことが報じられています。この時は「職員さんでも、週末はミュージシャンでもやってるのかな?」と思った程度で、あまり気には留めませんでした。でも、これからは、セレブやミュージシャンでなくてもコカインに手を出す時代になるのかもしれませんね。

 それはさておき、瀧さんが関わられた映画やアルバムなどがすべて封印され、ライブも中止になってしまうのはどうかと思いますね。ゴーンさんが逮捕されても日産車は売られていますし、コマーシャルの自粛もないですよね。メーカーさんは、よく考えていただきたいと思います。

“居場所”がない元ヤクザたちの行き着く先は? 元極妻が考える「ヤメ暴」問題

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

■漂流する元ヤクザ

 ヤメ暴――最近よく聞く言葉です。元極妻としては、今年の流行語大賞も期待したいところですが、2月11日放映のTBS系のドキュメンタリー『ヤメ暴〜漂流する暴力団離脱者たち〜』も話題でした。

 暴力団をやめた男達=ヤメ暴が、今も漂流している。

 かっこいいフレーズですね。はびこっているわけでもなく、どこかへ行くわけでもなく、「漂流」。ほんと最近のヤクザはそんな感じです。元ヤクザたちが漂流の果てに、どこへたどり着くのかは、気になるところですね。

■昔は簡単には足を洗えなかった

 以前は、ヤクザをやめるのは大変でした。親分にケジメとして指を詰めて持って行ったり、代紋バッジを返す時に箱の下に札束を入れたりと、ガチで映画みたいなこともやってたんですよ。

 今は、時折「『やめたい』と言ったら監禁された」というような事件もありますが、ヤクザも人気商売なので、「構成員数が減ると困る。名前だけでも置いておいてくれ」と頼まれたりもしているようです。

 ちなみにネットでは「LINEで『やめます』と書いてくる若い衆がいる」ことが話題になりましたが、実際にはLINEどころか何も言わずに飛ぶ(逃げる)若い衆のほうが多いと聞いています。これも時代でしょうね。そして、やめたところで生活できるような仕事やお金がある例は、ほんのわずか。より悪い生活へと落ちていくことになります。

 ドキュメンタリー『ヤメ暴』に登場する元・山口組の西山俊一さんは、ご自身もヤメ暴で、30年にわたって経営されている建設会社に元受刑者や元ヤクザを受け入れてこられました。NPO・日本青少年更生社の理事長も務めておられます。

 さぞ大変だっただろうなあと思います。でも、統率力のあるコワモテさんだからこそできることですね。私も狭い世界で生きていますが、西山さんの悪口は聞いたことありません。精力的に世間から「こぼれた」人たちに寄り添っていらっしゃいます。とはいえ個人では限界がありますから、こういう事業こそ税金でやっていただきたいと思います。

 建設業のような3K職種は、適性もありますから、みんながみんなできるわけではないですよね。お仕事ができれば更生の余地もあるのですが、現実は厳しいです。

「姐さん、最近、○○の親分と連絡取ってます?」

 先日、亡きオットの元若い衆から聞かれました。この親分はオットとも兄弟分で、昔はよく一緒にゴルフや海水浴に行っていたのです。

「そういえば、しばらく音沙汰ないわー。でも、お互いに用事ないと連絡しないもん。お葬式とかさ」
「普通そうですよね……。なんかシノギがきつすぎで、うつ病になってるらしいです」
「そうなんだ……」

 うつになるヤクザや元ヤクザは、意外に多いんです。もともと不器用な寂しがり屋さんが大半で、シノギとかうまく回っている時はいいんですが、いったんダメになると、どんどん悪い方向へ行ってしまうのです。

 「抗うつ剤や向精神薬を多めにもらって、転売してシノギにしよう」とかハシャいでるうちはまだいいんですが、実際はとても苦しんでいます。そして、最期は死を選びます。拳銃を使うのはもちろん、ガソリンをかぶって火をつけたり、クルマごと海に落ちたりと、悲惨な結末をさんざん聞いてきました。

 ヤクザが「いい人」のわけはないのですが、昨今の過剰な暴力団排除は、ヤクザの居場所をどんどん奪っています。たとえば「今年はヤクザの構成員は前年比で○人減少」などと毎年報道されますが、減った人たちはどこにいるのでしょうか? 再就職ができるのはわずかですし、自殺者を除けば、大半は新たな「居場所」を求めて、新たな犯罪に手を染めているのです。

東京オリンピックでヤクザが自粛!? 元極妻が考える、過去の「イベント休戦」

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

■五輪に向けて、銃器使用を自重

 関東の主なヤクザ組織が加盟する団体が、関係者にファクスで「五輪に向けて、銃器使用の自重を改めて要請」するとした通達を出していたと報道されましたね。

 報道によりますと、通達の内容は「発砲事件が相次いでいる」ことから、銃器使用の「自重」を求めていて、警視庁は「2020年東京五輪・パラリンピックを控え、暴力団側が警察の摘発強化を警戒していることの表れとみている」そうです。

 たしかに最近は、関東だけでも昨年暮れに東京・歌舞伎町の雑居ビルのドアに弾痕が見つかったり、1月には川崎と歌舞伎町で銃撃事件が起こったりしていますから、捜査の目も厳しいのでしょう。それにしても、まだかなりの数の銃器が国内にあるんですね。

■あの山一抗争時でも休戦が

 「ヤクザも自粛するんですか……」と編集者さんが驚いていましたが、実は以前から大きなイベントの時にヤクザが「自粛」することはありました。

 思い出すのは、山一抗争の時の1985年の「ユニバ休戦」ですね。この年8月の「ユニバーシアード神戸大会」を前に休戦が宣言されて、当時はけっこう話題になりました。元神戸市長の弁護士さんが仲介したといわれています。

 山一抗争は、竹中正久組長の四代目山口組組長襲名に反対した山本広組長代行が84年6月に離脱して「一和会」を結成したところから始まっています。抗争終結までの5年間で大小317件の抗争が発生していて、山口組側は死者10人、負傷者17人、一和会側は死者19人、負傷者49人、逮捕者は合計で560人に及んだそうです。街中での銃撃が中心ですから、警察官や民間人もケガをしています(数字は、飯干晃一著『ネオ山口組の野望』<角川書店>より)。こんな状況なのに「ユニバの時は休戦」という通達を出して、実際に2カ月も休戦したんですね。

 このほか2015年8月末に六代目山口組から神戸山口組が分裂した翌16年の「伊勢志摩サミット」に際しても、休戦の通達が出ています。警察の捜査もありますが、国を挙げてのイベントには協力しようと思える空気があるのかもしれません。

「人相風体のよくないのが銀座をウロウロしては、外国人(観光客)も薄気味悪いだろう」

 これは、六本木で東声会を率いていた町井久之親分の言葉だそうです。64年の東京オリンピックが開催される2カ月前にこう言ったと、報道にありました。それで、当時500人ほどの東声会組員を東北に疎開させる計画もあったのだとか。いや人相というか素行の悪いのが500人もイッキに来たら、東北だって相当困りますよね。実現はムリでしょう。

 この町井さんは在日で実業家としても知られ、韓国の選手を東京に招聘するのにかなりのお金を出したともいわれます。今回は暴力団排除条例のせいでダメですが、前回は町井さんほどではなくても、ヤクザにも「出番」があったと思います。もちろん公共工事やダフ屋などのシノギもありますが、そうではなく、純粋に「スポーツの祭典」として楽しめていたのではないでしょうか。

 もちろん前回の公共工事でも、ヤクザの組織としては堂々と関与はできませんが、景気もよかったので、それなりのルートで下請けとして参入できていたと思います。いずれにしろ最近はオリンピック会場周辺どころか、全国で「ガラの悪いおっさん」のテキ屋は絶滅危惧種なので、個人的にはちょっと残念です。もう少しゆるい社会の方が生きやすい気がします。

ヤクザのバイトはアリだった? 元極妻が考える暴力団の「シノギ」

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

■「郵便局でバイトしていた」ヤクザが詐欺で逮捕

 お正月明けでヒマらしく、「郵便局でバイトしていた」ヤクザが詐欺で逮捕されたニュースが話題になっていましたね。「ヤクザであることを隠したから詐欺」だそうですが、もう言葉もありませんでした。

 この件でよくわからないのは、逮捕された方は1日だけバイトしたあと、自分でヤクザだとウタって(カミングアウトして)退職したというところですが、「なんでそこでウタう?」と思った人は少なくないかなと思います。だって、外見ではわかんないから採用されたんですよね。

 うちの若い衆なんか、みんな「顔が反社会的勢力」でしたから、「暴力団員ですか?」って聞かなくてもバレバレで、まず郵便局になんか採用されませんよ。面接に行く前からアウトです。ま、この方は何かのご事情がおありだったのでしょう。

■「シノギ」の語源、ご存じですか?

 そもそもヤクザとは、何をして食っているのでしょうか? バイトしちゃダメなんでしょうか?

 ヤクザの資金獲得活動といえば「シノギ」ですよね。今はなんとWikipediaでも紹介されているのですね。初めて知りました。囲碁用語にもあるそうですが、こちらは割愛。「シノギの名手」とあっておもしろかったので、気になる方は調べてみてください。

 Wikiには、シノギ(しのぎ)とは、「収入を得るための手段(経済活動)の一つ。主に暴力団関係の団体・人物が収入を得るために使う手段であり、港湾業務や興行の元締めといった合法手段もあったが、たいていの場合、用心棒、賭博、違法薬物密売、ノミ屋・ダフ屋、闇金融、詐欺集団の元締めなど、違法手段のものが多い」とあります。

 まあ的確なわけですが、やっぱり「正業」は、昔は「シノギ」というニュアンスではあんまり使ってなかったなと思い出しました。たとえば飲食店のおしぼりや植木、玄関マットなどのリースの会社をヤクザが正業として経営する例は多かったんですが、昔はこういうのを「シノギ」とは言ってなかった気がします。もちろん間違いではないんですが、シノギってもっと非合法な感じでしたね。今は正業がまったくできず、非合法しかありませんから、そっちのほうが心配です。

 ちなみにヤクザは“武士”として生きていますから、「シノギ」も「鎬(しのぎ)を削る」からきているという説があります。時代劇で見る刀同士がぶつかるアレですね。鎬とは、日本刀の峰と刃先の間にある最も厚みのある部分だそうです。

 もう一つは「糊口をしのぐ」(貧しい生活をしている)からきているという説もあって、こっちのほうがなんとなく合っている気もします。だって、前から書いていますが、一部の大親分を除いて、ヤクザは基本的にウハウハではないんですよ。まあ80年代の不動産バブル期は、10代の若い衆もお金を持っていましたけど、そのくらいですね。

 だから、太いシノギのない若い衆は、道路工事や賭場の下足番まで、とにかくなんでもやっていました。そこから人間関係を作って、新たなシノギにしていくんです。思えばお金もうけがうまい若い衆は、どんな小さな仕事でもマジメにやってました。

 作家の宮崎学さんと元ヤクザの組長で現在は更生支援団体の代表である竹垣悟さんの対談『ヤクザと東京五輪2020 巨大利権と暴力の抗争』(徳間書店)には、このシノギの話も出てきます。

宮崎 他のシノギも厳しいですよね。バブル期から「大きなシノギやないとシノギと言えない」みたいになってきていますけど、昔ながらの小さなシノギはけっこうありますよね。消火器を売ったり、布団のマルチ商法とか。
竹垣 マルチ商法ありましたね。でもそれはわからんようにやってましたよ。そんなん知れたらアホにされるもん。
宮崎 (笑)。「シノギを知られたくない」というのは、普通なら他に取られたくないとか、パク(逮捕)られたくないからとかですけどね。バカにされると。
竹垣 そうです。やっとるのけっこういたけど、それはカタギつこうてみんなわからんようにやってましたわ。そもそもそういうことをヤクザはしないものなんです。でも知恵の回る者はシノギもうまいから。頭のいいのはみな噛んでましたわね。

 これをハッキリ言ってしまえる竹垣さんは、さすがです。シノギについては、記者さんたちは、まず具体的なことは書きませんし、親分衆も「シノギの話はカンベンしてや」と真顔になります。シノギの話はそれだけ重いんです。「あそこはウチのシマなのに、○○組がシノギをかけてるらしいじゃねえか」となって対立を生む可能性もあるからです。

 でも「バレたら(対立関係でなく)アホにされる」という理由は面白いですね。実は、ヤクザは他人様には言わないだけで、いろんなシノギをやってきたのです。今は全く合法のシノギはできないので、覚醒剤やオレオレ詐欺をやるしかないのです。

お祭り騒ぎにヤクザは不可欠!? 元極妻が考える山口組とハロウィン

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

■暴力団はハロウィンをやるな

 今年に入ってから、昨年のハロウィンで軽トラを壊したとして10人の若者たちが書類送検されたと報道されました。いいことではありませんが、トップニュースで顔出ししてまでやることでしょうかね。それよりも、約4万人の群衆の中から10人を割り出す監視カメラの性能にビックリです。

 それにしても、ハロウィンて、いつからこんなに盛り上がるようになったのでしょうか? 少し前までは、外国人のグループが魔女やドラキュラの格好をして街を歩いている程度だった気がしますが。

 もっとも港町である神戸は、もっと前からハロウィンで盛り上がっていたようです。

 山口組は、なんと田岡三代目の時代からハロウィンのお菓子を配っていたと聞いています。近所の外国人の子どもたちが「Trick or treat」と言いながらヘンな格好でやってくるので、当初は意味がわからずお小遣いをあげていましたが、その後に由来を聞いて、お菓子を配るようになったのだとか。由来といっても、もともとはケルト人の儀式が、アメリカで仮装行列みたいになっただけらしいですけどね。

 田岡三代目は1981年に亡くなっていますから、70年代から子どもたちにお菓子を配っていたんですね。ハイカラでいい感じですが、この暴力団排除のご時世に、そんな牧歌的なお話は通用するわけがありません。

 昨年のハロウィンでは、神戸市の地元住民たちが「暴力団はハロウィンをやるな!」というシュールなフレーズでパレードを始めたそうです。以前は「知らない人からはお菓子などをもらわないように」といった声かけをしていた程度でしたが、組事務所に親子でお菓子をもらいに行く人が年々増えているので、ついにパレード実施に至ったのだそうです。

 ちょっと気になったのは、兵庫県警が「菓子は違法な収益で購入した可能性がある」としたこと。いわゆる「人を泣かせたカネで……」というアレですね。でも、正業に就かせないのは暴排なのですから、まずは違法なことをしなくてもヤクザが生活できるようにしてほしいものです。

 さらに昨年暮れには、テレビ番組で、ハロウィン騒動の収拾を「山口組に頼みますか?」と言った爆笑問題の太田光さんのコメントが炎上しましたね。

 タレントのミッツ・マングローブさんが「お祭りの秩序はヤクザな人たちが治めている」と言ったことを受けての発言ですが、テレビ局には「反社会的勢力を肯定している」「軽々しい考え方」といった批判が殺到したそうです。番組の最後に、なぜか本人ではなく女子アナが「ヤクザに仕切らせるといった発言は不適切でした」と謝罪したのだとか。もちろんこれも「どうして本人が謝罪しないのか」と、またまた炎上してしまいました。

 なんでこんな発言が出たのでしょうか? そもそも、まず4万人もいたら、ヤクザだって仕切りきれませんし、名指しされた「山口組」も苦笑するほかなかったと思います。

山口組再編にオリンピック暴排……ヤクザも転換期へ——元極妻の2019年ヤクザ業界予想

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

■三つの山口組の再編どうなる

 あけましておめでとうございます。

 まさかの出版などワタクシ的にも激動だった2018年が終わり、元号も改まることになりましたね。皆様、今年もよろしくお願い申し上げます。

 さてさて、今年はどうなるのでしょうか? 業界的には今年も「三つの山口組」の動向が注目されますね。再編についてのウワサも出ては消えていますが、ひとまず平成最後の事始めは無事に終了したようです。

 事始めは、ヤクザにはとても重要なので、これがつつがなく済むとホッとします。昔は芸人さんとかも呼んでとても華やかで、それを後からビデオで見るのが楽しみだったのですが……。今でも動画サイトで昔のがいくつか見られますから、検索してみてください。

 今年は神戸山口組の事始めが短時間で終わったようで、ちょっと気になります。まあこのご時世なので、しかたないかもしれませんね。神戸山口組では、前身の山健組ご出身である元中野会会長・中野太郎さんの『悲憤』(講談社)の発売で幹部が激怒……とのウワサもあります。確かに、五代目山口組ナンバー2の宅見勝若頭射殺事件について語られていますし、実名が結構出ているので、ピリピリしますよね。でも、個人的には中野さんがこういうご本を出されてとてもよかったと思います。

 東京のオリンピックが目前となったわりに工事は微妙のようですが、大阪万博開催も決まりましたね。関連事業ではヤクザがかなり排除されているので、工事も進まないのは当たり前かもしれません。

 そして、もうひとつ気になるのは風俗街の行方です。東京には吉原、大阪には飛田を中心に性風俗のお店がたくさんありますが、一部では「日本の恥。五輪や万博の前に手入れをしろ」という声があるようです。もっとも、こういうお話は大きなイベントの前にはあるものですが、実際にはどうでしょうかね。

 最近は梅毒の増加がよく報道されていますが、これが「風俗排除の布石」とのお話もあるようですよ。風俗で遊んでいる人が多いから、梅毒も増える→風俗店をなくせ、ということです。産経新聞は相変わらず「ガイジンのせい」にしていますが(苦笑)、それだけではないでしょうね。

 でも、ご近所のドクターは「性病検査をする人が増えたから、感染が増えたように思えるだけ。前は検査すらしなかったから」とおっしゃっていました。ムムム、たしかにそういうことかもしれません。ドクターによると、「オーラルセック○で感染することもありますから、コンドームをつけても100%は防げない」そうです。そういうお店がお好きな方は、マメな検査しかないんですね。

 お正月早々、キワどいお話になってしまいましたが、今年もよろしくお願いしますね。

ヤクザの人生は「理不尽」の一言——元極妻が読む今年のヤクザ本

今は亡き某指定組織の三次団体幹部の妻だった、待田芳子姐さんが語る極妻の暮らし、ヤクザの実態――。

■“不良”の本が続々出版

 あっという間に今年も終わりですが、思えば2018年も“不良”の本がたくさん出版されましたね。

 ざっくり発売月順に、『サムライ 六代目山口組直参 落合勇治の半生』(山平重樹著/徳間書店、3月)、『ヤクザの幹部をやめて、うどん店はじめました。 極道歴30年中本サンのカタギ修行奮闘記』(廣末登著/新潮社、7月)、『死に体』(沖田臥竜著/れんが書房新社、7月)、『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』(鈴木智彦著/小学館、10月)、『王国の復活 序章 山口組三國志の消滅』(桜井健治著/ジーウォーク、11月)、『歌舞伎町 阿弥陀如来 闇東京で爆走を続けるネオ・アウトローの不良社会漂流記』(藤井学著/サイゾー、11月)、『最強武闘派と呼ばれた極道 元五代目山口組若頭補佐 中野会会長 中野太郎』(山平重樹著/かや書房、12月)、『悲憤』(中野太郎著/講談社、12月)、『ヤクザと東京五輪2020 巨大利権と暴力の抗争』(竹垣悟・宮崎学著/徳間書店、12月)などなど。後半に集中していますね。

 なお、いわゆる実録ではありませんが、『親鸞がヤクザ事務所に乗り込んで「悪人正機」を説いたら』(向谷匡史著/ベストセラーズ、7月)も興味深かったです。作家の向谷さんは浄土真宗のお坊さんでもあるんですね。

 そういえば『極姐2.0 ダンナの真珠は痛いだけ』(徳間書店)なんていうのもありましたね……と宣伝しておきます。

 これらの労作の中で、ダントツで話題なのは、やはり中野太郎さんの『悲憤』ですね。ヤクザや元ヤクザだけではなく、カタギさんの間でも話題のようです。とにかくいろいろ赤裸々に書かれているので、「有害図書」に指定している組織もあるそうですが、この本を渡されて、「オマエもタマ(命)トってこい(=殺してこい)」と言われるよりは、いいのではないかと思います。

 ネタバレにならない程度に感想を書かせていただきますね。

 注目されている、五代目山口組のナンバー2だった宅見勝若頭射殺事件については、今まで「ウワサ」になっていたこととほぼ同じでした。事件から20年あまりを経て、ようやく“首謀者”とされていた中野さん本人の口から語られたということに意義があります。『悲憤』というタイトルからもわかるように、ずっと言えずにいたことを言ってしまおうと思われたのでしょう。

 出版の経緯については、『ヤクザと東京五輪2020 巨大利権と暴力の抗争』でも触れられています。それによると、中野さんはご自身に関する報道について反論されたかったのだそうです。やはり傘寿を過ぎて思うところはおありだったのですね。

 ちなみに不良とは全く関係なさそうな社会学者の宮台真司さんが、「週刊現代」(12月29日号・講談社)の書評欄で『悲憤』を「ギリシャ悲劇のよう」と評されておりました。なるほど、そうきましたか。思えば神話や昔話は、たいてい理不尽ですよね。人間の業というヤツでしょうか。

 一方で、『悲憤』で紹介されている中野さんのお若い頃の無茶苦茶ぶりや若い衆とのエピソードは映画にもなりそうで、クスっと笑えるところもあります。ヤクザも切った張ったで24時間ピリピリしているわけではなく、それなりに笑いや涙のある日常を送っていることをわかっていただけると思います。本当に面白いご本でした。

 また、今年は「週刊大衆」(双葉社)などで活躍されていた記者の齋藤三雄さんが亡くなられました。私は一度しかお会いしていませんが、亡きオットもお世話になっています。週刊大衆編集部と『山口組分裂「百年の修羅」 “菱の代紋” はなぜ割れたのか!?』(2016年・双葉社)などのご本も出されています。

 大衆のほか「週刊アサヒ芸能」(徳間書店)、「週刊実話」(日本ジャーナル出版)、「実話時代」(三和出版)、今はないですが「実話時報」(竹書房)にも書かれていました。実話誌の編集者さんによると、「穏やかな性格で、誰からも悪口を言われない人」だそうで、かなり貴重な存在だったことがわかります。

 まだ50代だったそうで、とても残念ですね。この場を借りてお悔やみ申し上げます。