コブクロ・黒田俊介の“不倫&ストーカー”トラブルは「よくある話」!? “訴えられた”女性が法廷で語ったコト

 5月12日発売の「週刊文春」(文藝春秋)にて、一般女性・A子さんとの“不倫トラブル”を報じられた、人気デュオ・コブクロの黒田俊介。同誌によると、黒田とA子さんは2017年に知り合い、19年9月に不倫関係へと発展。しかし、昨年4月から2人の間に距離ができるようになり、A子さんは精神的に不安定な状態になったという。

 黒田とのLINEのやりとりをプリントアウトして自宅ポストに投函するなど、嫌がらせを行ったというA子さん。一方の黒田は、弁護士を介して警察に相談していたそうだが、今年4月中旬、A子さんは抗うつ薬と睡眠薬を大量に服用し、救急搬送される事態に。これを受け、黒田は弁護士を通じてA子さんの母親に見舞金300万円程度の支払いを提案した、などと伝えられている。なお、所属事務所は「文春」発売前日の11日に、公式サイトにて「記事に掲載されている女性、ご家族に対して大変ご迷惑をおかけしましたことを、心よりお詫び申し上げます」などと謝罪文を掲載していた。

 ネット上では、黒田に対して「イメージ最悪……もうコブクロの歌は聞けないわ」「これは相手に恨まれても仕方ないと思う。弁護士を出してくるもの卑怯」といった批判の声が噴出。さらに、黒田側が「文春」の記事を「ストーカーを助長する行為にあたる」として、10日に東京地方裁判所民事部に出版差し止めを請求する「仮処分命令申立書」を提出していたことも発覚し、「不倫しといて、相手をストーカー呼ばわりなの!?」「都合が悪くなったらストーカー認定って、人として最悪」など、さらに厳しい声が飛び交うことに。

 このような「不倫」と「ストーカー」というワードが飛び交うトラブルは、意外と“よくある話”のようだ。ライター・オカヂマカオリ氏によるサイゾーウーマンの不定期連載「傍聴席から眺める“人生ドラマ”」では、過去に2本、ストーカー容疑で訴えられた女性の裁判傍聴記を掲載しているが、そのどちらも不倫がきっかけだった。一体、法廷でどのようなやりとりがあったのか、当該記事を振り返ってみたい。

“ダブル不倫”の末、「彼」に通報されたアラフォー女性

 銀座でホステスをしていた被告・A美と、不倫相手の「彼」をめぐる裁判。一度は疎遠になったものの、A美から連絡を取って「彼」と再会し、既婚者同士で“ダブル不倫”の関係に発展したという。その後、「彼」は音楽関係の仕事をしていることを匂わせながら、A美が大ファンだというアーティスト・Xに「会わせる」と言ってきたそう。

 しかし、その約束は果たされず、A美は気分障害で通院。徐々に関係が悪化していく中、A美は「彼」に会うため自宅マンションへ行ったところ通報され、警官に身柄を確保、勾留された。なお、同記事の「彼」は黒田ではないことも補足しておく。

「都会的モテ男」と3人の女性をめぐる“ドロ沼”裁判

 家庭を持ち、仕事は教育関係という被告・R子は、スポーツジムで知り合った男性・A氏と不倫関係に。しかし、A氏はR子と出会う前からB美と不倫しており、さらにその後、2人とは別の“第3の女性”と結婚する。R子とB美は結婚後もA氏との関係を続けていたが、A氏の妻に関係がバレてしまい、R子は彼から別れを告げられることに。

 R子は「納得できない」と拒否したどころか、A氏とB美の職場に不倫を暴露したハガキなど13通の文書を送りつけ、嫌がらせ行為におよんだため逮捕。この裁判には、R子はもちろん、A氏とB美も出廷し、それぞれの立場から不倫について語られたが、その“ドロ沼”ぶりは、オカヂマ氏いわく「『課長島耕作』『黄昏流星群』で知られる、漫画家・弘兼憲史の世界」だったとか。

“超セレブタウン”東京・港区で起きた「死体遺棄」事件――87歳の姉を3カ月遺棄した、85歳被告の言い分

殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#014号法廷】
罪状
:死体遺棄
被告人:H志(85歳)

<事件の概要>

 公営アパートで、姉(死亡当時87歳)と2人暮らしをしていた被告・H志(85歳)。シルバー人材センターなどで働きながら姉の介護をしていたが、姉は4月に死去。しかし、遺体は8月まで自宅に放置され、発見された時は白骨化していた。死因は不詳(殺人ではない模様)。

“超セレブタウン”で起きた死体遺棄事件

 裁判所に行くと、まず当日の法廷スケジュールが書いてある「開廷表」をチェック。これを見て、どの裁判を傍聴しようか決めます。ただ、ここには法廷番号と罪名、被告人の氏名ぐらいしか記されていないので、報道されるほどの有名事件じゃないと、審議が始まるまで詳細がわかりません。

 傍聴していると、この事件は東京・港区の超セレブタウンで起こったことがわかり、「あの高級住宅街で死体遺棄!?」と驚きましたが、舞台は公営住宅。麻布で生まれ、洋服の仕立て職人をしていたという被告のプロフィールから、戦後の復興から高度成長期で湧く東京を、最前線で見ていた人なのでしょう。犯行現場でもある公営のアパートで、姉と同居を始めたのは1990年。バブル経済がピークの頃です。

 シルバー人材センターなどで働きながら、日に日に弱っていく姉の介護をしていた被告。病院にかかることを勧めたそうですが、姉が嫌がり、ほかに身よりもないため自宅で世話を続け、そのまま死亡したとのこと。

 遺体を放置した理由が「自分の介護が不十分だと思って、(死んだのは自分のせいだと)責任を感じて、相談できなかった」ということからも、2人は決して不仲ではなかったとわかります。こういう場合に疑われがちな年金の不正受給もなかったといいます。

 そんな中で、裁判とまったく関係ないところで気になったのが、裁判長の質問でした。拝見したところ立派な中年男性ですが、「日に日に変わってゆくお姉さん(の遺体)を見て、どんな気持ちでした?」という質問が、仏教で無常を説く「九相図(美女がどんどん腐って骨になる様子を9段階で現した図)」的で宗教を感じさせたり、「お姉さんの誕生日が9月8日なので、その日に(亡くなったことを)言おうとか?」などと、“記念日好き”を連想させる内容で、人柄が見えてきます。

 なお、この質問に被告は、「お姉さんを見かけない」という通報を受けた高齢者相談センター職員の訪問に、最初は「姉は寝ている」と言って追い返してしていたものの、死後3カ月で遺棄が発覚。訪問されるたびに「今日こそ言おう、と思ってたけど勇気がありませんでした」と話していました。

 遺体が室内にあったのは初夏から真夏なので、エアコンをかけても腐臭がすごかったことが想像されますが、それでも外部にSOSが出せなかったのはなぜだったのか。親類縁者もない姉弟の、小さな世界が壊れてしまう恐怖があったのでしょうか。

 家を一歩出ると、ハイブランドの路面店や豪邸、大手企業のビルが林立する街、港区。そんな雰囲気についていけない老いた身には、なおのこと家族が大切に思えたのかもしれません。

 今件は微罪のうえ、初犯だったため、即日判決が出ました。懲役1年、執行猶予3年。猶予期間が明けるのは、被告が88歳になる時ですが、そこまで元気で、お姉さんの供養を続けてほしいと思います。

「酒を飲んだり、不倫するのが“男らしい”と思ってた」53歳の元公務員、準強制性交容疑で語られた「2人の愛人」と「ED治療」

殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#013号法廷】
罪状:準強制性交等
被告人:Y男(53歳)

<事件の概要>

 前職場の同僚たちとの酒宴から帰る途中、終電間際の山手線車内で、やはり飲酒のため酩酊状態の被害女性(親子ほど年が離れている)を見つけた被告・Y男は、S駅で彼女を抱き抱えて下車。共にタクシーに乗り込み、車内で被害者の乳房を揉んだ。その後、下車したアパートの敷地内で強姦した容疑。

 Y男はタクシー内でのわいせつ行為は認めたが、その先は「記憶にない」と否認。弁護士によれば「被告はお酒を飲むと勃起しません」とのことだが……。

酒を飲むと記憶が飛ぶのに、自制しなかった「バカな」理由

 証人として出廷した被害者女性に、まずは敬意を表したいと思います。Y男の弁護士が「(被告の)陰茎は見てないですよね?」「酒を飲んで(強姦されたと)勘違いしたということは?」などセカンドレイプまがいの下劣な質問をしても、取り乱すことなくきちんと答えていた彼女。いち傍聴人にすぎない筆者でさえ、「午前2時の暗がりで、チ○コが見えるかバーカ!」「科捜研立ち合いの下で診察を受けて、医学的証拠があるのに、それを信じないとは何事か〜!」と、心の中で激怒するほどだったので、さぞおつらかったことでしょう。本当にお疲れ様でした。

 さて、被告・Y男には、もともと公務員だったものの、2015年に飲酒による同僚への暴行で懲戒処分を受けて退職するという、“前歴”がありました。現在も酒を飲み過ぎると「2回に1回は記憶が飛ぶことがある」とのこと。

 検察の「(飲酒を)自制しようと思わなかったのですか?」という質問には、「もっと(酒に)強くなろうと、飲んでも飲まれないようになろうという、バカな考えがありました」と答えるあたりに、妙な“マッチョイズム”の香りがしました。

 訓練が必要かつ、上下関係が厳しそうな職場に50歳までいたと聞き、「“男らしさ”という呪い」との言葉がふと浮かびます。この後の被告人質問で来歴を知ると、まさに予想通りだったことが判明するわけですが……。

 16年と19年に勃起障害(ED)の治療を受けていたという被告・Y男。すでに子どももいるようですし、年齢的にも“そういう煩悩”から解放されていいような気はするのですが、まあ、個人の問題だし……と思っていたら、なんと、ED治療は当時付き合っていた“愛人”のためだったことが判明! さらに、今回の身元引き受け人も、保釈金の300万円を借りてくれたのも、その愛人なんだとか。

 さらに話が進むと、19年に再びED治療を受けたのは愛人・その2のためだったそうで、とんでもないウラの顔が明らかになったんです。Y男の妻はもちろん、300万円を渡した愛人・その1の心情を考えると、ため息しか出ません。ちなみに、今回の事件で妻とは離婚したとか。当然の結果でしょう。

 Y男は最後まで挿入について否認していましたが、これは「挿れなければセーフ」などという、“身勝手なルール”が頭にあったからかもしれません。開廷してすぐ「なんだよ、その男根原理主義!」と心の中で被告にツッコんでいましたが、「酒を飲んだり、不倫をするのが男らしいという、バカな生き方をしてしまいました」という力ない反省の言葉を聞いて、最後はちょっとつらい気持ちにもなりました。「男らしさ」の呪いにかかったままアップデートできず、年を重ねてしまった哀れな中年男性が、被告席にいたように見えたからです。

 現在はカウンセリングを受けているというY男。間違った「男らしさ」をどんどん積み重ねてできた人格は、どこまで最適化できるのでしょうか? でも、こういう時代錯誤な性差別って、自分も知らず知らず振りかざしてるよなぁ……と、反省しながら東京地裁を後にしました。

 ちなみに、コロナ禍の裁判所である変化を発見。検察官と弁護士は大量の資料を法廷に持ち込むのですが、この時代なのに、“風呂敷”で包んでいる人をよく見かけたんです。しかしそれが、いつの間にか「東京地検」と名前が入っている、オリジナルの“コンテナ”に変更! どっちが便利なのかよくわかりませんが、ほとんど変化のない地検でも「働き方改革」が起こっているようですね。

家族のケンカが裁判に発展! 法廷で「茶番」を主張した46歳の息子、「こうやって懲役に行かされる」実例

殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#012号法廷】
罪状
:建造物侵入
被告人:N男(46歳)

<事件の概要>

 今年5月29日午後2時、東京都A区A駅にあるテナントビルの3階に、非常階段から侵入した被告・N男。彼は2年前も同じく、不法侵入で逮捕されている。ほかに、覚醒剤取締法違反などで前科4犯。

 傍聴する前の印象は、「罪状が『建造物侵入』だけ?」でした。「窃盗」や「暴行」、「誘拐」の手段として不法侵入することはあっても、「建造物侵入」が裁判のメインになることは少なく、いわば“おまけ”みたいな罪状なんです。罰金、もしくは示談で済みそうな軽い罪ですし、これだけが問われる裁判をあまり見たことがなく、引っかかりを覚えたので傍聴することに。侵入することだけが目的の犯罪って、一体なんなのでしょう? 

 背景には、家族の問題がありました。 

父親の持ちビル兼“元自宅”に不法侵入した被告

 法廷に入って来たN男は、ず~っと裁判官や検察をガンつけたまま。一般人とは思えないその目力は、刑事ドラマの法廷シーンを見ているようでした。どこか韓国の映画俳優マ・ドンソクに似た風貌で、不謹慎ながら「キャラが立ってる!」とワクワクしてしまいます。

 侵入したのはN男の父親の持ちビルで、しかもN男が以前住んでいた“元自宅”なのだそう。ざっくりまとめると、家から追い出された不良息子(N男)が、自宅に無理やり戻ったら父親に通報された、という事件。要するに、家族ゲンカですね。

 ふてぶてしい態度を崩さない被告は、かなり裁判慣れしている感じ。覚醒剤などで前科4犯(罰金刑4回)だそうで、検察や裁判長からの質問にも堂々と答えていました。というか、「これ、茶番ですから。(自分は)無罪ですから」「法廷侮辱罪で(逮捕されても)かまわない」などと、1人でベラベラベラベラ……。

 裁判長も思わず「ここでしゃべられても、記録に残らないから」とダメ出ししていましたが(記録に残らないんだ!?)、N男は「残らなくても結構ですよ。法廷侮辱罪でもかまわない」と、一歩も引きません。さらに、裁判長が「いつまでしゃべるの?」とあきれてもガン無視。果ては「再審請求します!」と最高裁まで争う姿勢を見せ、1人でヒートアップ。あの、まだ第一審が始まったばかりなんですけど!

 ついに途中退廷を言い渡された被告は、警備員に押さえつけられながら、傍聴席に向けて「こうやって(はめられて?)懲役に行かされると、国民のみなさんわかってくださいね!」と、よくわからない捨て台詞を吐いて去っていきました。開廷10分ほどという短さでしたが、N男の話を聞いていると、不動産物件を多数所有する裕福な父親への恨みを感じます。いずれ相続問題が発生したら、もっとややこしい事態になるでしょうね。

 実刑になったとしても微罪なので刑期は短く、この“問題児”は早々にシャバに戻ってくると思われます。こういうボーダーラインギリギリの犯罪に困っている人は案外多いと思うのですが、どうしたらいいんでしょう……? トラブルが起こると「警察を呼ぶ」ことがある種の切り札になっていますが、結局は一時的に隔離されるだけで、被害者側が策を講じなければ、全ては元の木阿弥なんですよね。茶番劇(被告談)を見せられながら、「自分が被告の親族だったらどう対処するか?」と真剣に考えてしまった一件でした。

家族のケンカが裁判に発展! 法廷で「茶番」を主張した46歳の息子、「こうやって懲役に行かされる」実例

殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#012号法廷】
罪状
:建造物侵入
被告人:N男(46歳)

<事件の概要>

 今年5月29日午後2時、東京都A区A駅にあるテナントビルの3階に、非常階段から侵入した被告・N男。彼は2年前も同じく、不法侵入で逮捕されている。ほかに、覚醒剤取締法違反などで前科4犯。

 傍聴する前の印象は、「罪状が『建造物侵入』だけ?」でした。「窃盗」や「暴行」、「誘拐」の手段として不法侵入することはあっても、「建造物侵入」が裁判のメインになることは少なく、いわば“おまけ”みたいな罪状なんです。罰金、もしくは示談で済みそうな軽い罪ですし、これだけが問われる裁判をあまり見たことがなく、引っかかりを覚えたので傍聴することに。侵入することだけが目的の犯罪って、一体なんなのでしょう? 

 背景には、家族の問題がありました。 

父親の持ちビル兼“元自宅”に不法侵入した被告

 法廷に入って来たN男は、ず~っと裁判官や検察をガンつけたまま。一般人とは思えないその目力は、刑事ドラマの法廷シーンを見ているようでした。どこか韓国の映画俳優マ・ドンソクに似た風貌で、不謹慎ながら「キャラが立ってる!」とワクワクしてしまいます。

 侵入したのはN男の父親の持ちビルで、しかもN男が以前住んでいた“元自宅”なのだそう。ざっくりまとめると、家から追い出された不良息子(N男)が、自宅に無理やり戻ったら父親に通報された、という事件。要するに、家族ゲンカですね。

 ふてぶてしい態度を崩さない被告は、かなり裁判慣れしている感じ。覚醒剤などで前科4犯(罰金刑4回)だそうで、検察や裁判長からの質問にも堂々と答えていました。というか、「これ、茶番ですから。(自分は)無罪ですから」「法廷侮辱罪で(逮捕されても)かまわない」などと、1人でベラベラベラベラ……。

 裁判長も思わず「ここでしゃべられても、記録に残らないから」とダメ出ししていましたが(記録に残らないんだ!?)、N男は「残らなくても結構ですよ。法廷侮辱罪でもかまわない」と、一歩も引きません。さらに、裁判長が「いつまでしゃべるの?」とあきれてもガン無視。果ては「再審請求します!」と最高裁まで争う姿勢を見せ、1人でヒートアップ。あの、まだ第一審が始まったばかりなんですけど!

 ついに途中退廷を言い渡された被告は、警備員に押さえつけられながら、傍聴席に向けて「こうやって(はめられて?)懲役に行かされると、国民のみなさんわかってくださいね!」と、よくわからない捨て台詞を吐いて去っていきました。開廷10分ほどという短さでしたが、N男の話を聞いていると、不動産物件を多数所有する裕福な父親への恨みを感じます。いずれ相続問題が発生したら、もっとややこしい事態になるでしょうね。

 実刑になったとしても微罪なので刑期は短く、この“問題児”は早々にシャバに戻ってくると思われます。こういうボーダーラインギリギリの犯罪に困っている人は案外多いと思うのですが、どうしたらいいんでしょう……? トラブルが起こると「警察を呼ぶ」ことがある種の切り札になっていますが、結局は一時的に隔離されるだけで、被害者側が策を講じなければ、全ては元の木阿弥なんですよね。茶番劇(被告談)を見せられながら、「自分が被告の親族だったらどう対処するか?」と真剣に考えてしまった一件でした。

6歳の幼女にディープキスした86歳老人――「かわいがりすぎた」「甘えてきたから」法廷での呆れた言い訳

殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#011号法廷】
罪状:強制わいせつ
被告人:S男(86歳)

<事件の概要>

 頻繁に通っていた都内大型ショッピングモールの遊び場で、被害女児・Aちゃん(6歳)と顔なじみになったS男。犯行当日、S男は授乳室のカーテンで仕切られたブースにAちゃんを連れ込み、自分の膝に座らせて体をなで回し、キスをして舌をなめるなどのわいせつ行為に及んだ。その翌日、Aちゃんが親に泣きながら「おじいちゃんがベロをなめた、口からバイキンが入っちゃった」と打ち明け、事件が発覚。

 手錠姿で法廷に入ってきた被告を見て、まずビックリ。白髪で足元もおぼつかない“老人”だったからです。「強制わいせつ」という罪名から、青年~中年が登場するのかと思い込んでいました。しかも、被害者は6歳の女の子……S男はいわゆる「ペドフィリア(小児性犯罪者)」なのでしょうか? ちなみに、被告・S男は一人暮らしで婚姻歴あり、子どもなしとのこと。

 ショッピングモールの遊び場で元気に遊ぶ子どもたちと、それをニコニコしながら眺めるお年寄り――これだけ想像すれば、絵に描いたようなほのぼの風景です。S男とAちゃんは犯行の2カ月前から顔見知りで、会えば「おじいちゃん、おじいちゃん」と慕ってくれるほどの仲でもあったとか。それだけに、日常風景に忌むべきものが潜んでいたということが、とても恐ろしいです。

 犯行現場には、主に休日に出向いていたというS男。なぜならば、「子どもが多いから」。「わいせつな気持ちでは全然ない」と供述していましたが、苦しい言い訳に思えます。わざわざカーテンで遮られた授乳室(子どもも孫もいないのに、なぜこの場所を知っていたのでしょうか?)に躊躇なく連れ込んだところからしても、ほかに被害者がいる可能性も考えられます。明るい性格だったAちゃんは、事件以降あいさつができなくなり、年上の男性を怖がるようになってしまったそう。性犯罪を「魂の殺人」と言いますが、これ以上深い傷にならないことを祈るばかりです。

 さて、肝心の動機ですが、S男が法廷で語ったのは「『おじいちゃん、チューしよう』なんて甘えられるとねぇ」「つい、かわいがりすぎた」「とにかく子どもが好きなので」といった、自分勝手でふんわりとした内容でした。「わいせつな気持ちでは全然ない」と言う被告に、弁護士が「ではなぜ、この時はこんな(わいせつな)気持ちになったのか?」と質問しても、やはり「甘えてきたから、つい」「そうなっちゃったんですよね」と繰り返すばかり。

 個人的には、徹底的に討議して「老齢ペドフィリア」について解析してほしかったし、するべきではないかと思っています。“チュー=ディープキス”って、なんだそれ! 子どもを「かわいい」と思うのはわかる! ただ、なぜそこから体を触ったり、キスしようと思うのか!? ……などと、まったく理解できませんでした。

 傍聴している限り、老齢による衰えに加え、S男は語彙が乏しく、社会生活を営むうえで必要なリテラシーも足りない印象でした。実は“前科2犯”であることも判明し、しかも60年ほど前に、やはり幼女に対するわいせつ行為で逮捕されていました。その時に適切な治療を受けていれば、Aちゃんが被害に遭うこともなかったかもしれないと思うと、残念でなりません。

“トリプル不倫”に巻き込まれ、ストーカーになった59歳のオンナ――「都会的モテ男」が法廷で見せたウラの顔

殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#010号法廷】

罪状:ストーカー
被告人:R子(59歳)

<事件の概要>

 家庭を持ち、仕事は教育関係――はたから見れば“堅実な人生”を送っていた被告・R子は、2017年2月ごろ、スポーツジムで知り合った男性A氏(49歳)と不倫関係に。しかし、A氏はその前から、部下の女性・B美(41歳、当時は既婚)とも不倫関係にあり、R子は二股をかけられていた。そんな中、A氏は17年3月に“第3の女性”と結婚。R子・B美との関係も継続しており、“トリプル不倫”となる。

 B美との関係が彼女の夫に発覚し、A氏は慰謝料を請求される。A氏は妻の束縛がキツいことをR子に相談しており、2人は親密な交際を続けていた。しかし、R子との関係がA氏の妻にバレてしまい、A氏は別れを切り出す。R子は「納得できない」と別れに応じないどころか、A氏とB美の職場に、不倫を暴露したハガキなど13通の文書を送りつけ、嫌がらせ行為におよんだため逮捕。

 ……ざっくりまとめると、「愛人と別れるのに失敗した男が、痛い目に遭って警察に駆け込んだ」という事案です。法廷では、R子が逮捕に至った経緯が時系列で説明されましたので、下記にて整理してみます。

16年9月 A氏(上司)とB美(部下、当時は既婚)が不倫関係に。

17年2月 R子(被告)とA氏が不倫関係に。B美もR子の存在を認識。「子どももいるのに、そんなこと(不倫)する女は許せない」と、R子。
3月 A氏、第3の女性と結婚。「束縛がキツく、携帯電話をチェックされる」とR子に相談。R子名義で携帯電話を契約し、A氏にわたす。

18年2月 B美との関係が彼女の夫に発覚。A氏は慰謝料を請求され、R子に相談。
3~4月 R子との関係がA氏の妻に発覚。
5月 B美が離婚。A氏、カフェでR子に別れを切り出す。R子は「納得できない!」と、周囲に聞こえるほどの大声で拒否。A氏はR子から「会社に(B子との関係を)バラす」と言われ、怖くなって逃げる。
6月 A氏・B美の会社に告発電話があり、B美はR子とはじめて対面することに。A氏はB美と会わないようR子を説得するも、失敗。A氏、大阪に左遷の内示が出る。
7月 匿名でA氏の会社にハガキが4通届く。その中には、A氏が女性用下着をつけている画像つきのものも。

19年4月 匿名でA氏の会社に封書が届く。「A氏は女から携帯電話と銀行口座の名義借りをしている。これは違法行為」との内容。A氏は警察に被害届を出す。R子逮捕。

 実はこの裁判、第1回公判の罪状認否で、被告・R子が「やっていません」と徹底抗戦の姿勢を見せ、非常に興味をそそられたため、第2回公判も傍聴しました。見せ場はなんと言っても、第2回公判で行われた、被害者A氏・B美の証人質問です。

 A氏と、その部下で“不倫相手1号”のB美は、1人ずつ法廷に登場。プライバシー保護のため、法廷と傍聴席の間は大きな衝立で遮られ、彼らの姿は見えませんでした。しかし、A氏はハキハキとした応答で、「プレゼン慣れしているキャリアサラリーマン」といった感じ。また、B美は被告・R子について「怒りのコントロールがきかない人間だと思います」と、考察まで披露します。

 A氏とB美が勤務するのは、東京・中央区が所在地の会社で、大阪にも支社もあるという、そこそこ大規模な会社。しかも、A氏は都内の高級住宅街に住み、ジム通いが日課なのだとか(法廷では、こんなプロフィールまで晒されます。気をつけましょう)。「こういうちょいワルオヤジ(死語)まだいるんだ!」と絶滅危惧種を確かめるように、思わず前のめりに。

 B美の夫から慰謝料を請求されていることを、R子へ頻繁に相談し、B美へ送るメールの返信文まで考えてもらっていたというA氏。それなのに、R子と別れ話でモメている際に「怖くなって、たまらなくなって」、結婚1年だった自身の妻を呼び出したとのこと。「都会的なモテ男」のはずが、証言が進むにつれて「ナヨナヨした男」に見えてくるのが不思議です。ちなみに、R子のことは「本気ではなく、ペットみたいな感じ」に思っていたとか……。は〜絶句!

 そんなA氏、B美に「(R子から)脅されて付き合っている」と泣き言を言ったかと思えば、R子とのLINEでは「じゃ、俺を縛って征服しろ」などとナルシシストな文言を送っていたそう(刑事事件の原告・被告になり、証拠採用されると、どんな“黒歴史メッセージ”も公文書となって公開されます。ますます気をつけましょう)。ここまでくると、A氏のパーソナリティが猛烈に気になってしまいます。

 やり手キャリアウーマン(B美)と、お堅い年上女性(R子)を遊び分け、めとったのは修羅場にも付き添ってくれる従順な女(妻)……脳内で果てしなく広がるのは、『課長島耕作』『黄昏流星群』で知られる、漫画家・弘兼憲史の世界。先生、この裁判を次回作の参考にしてはいかがでしょうか?

“トリプル不倫”に巻き込まれ、ストーカーになった59歳のオンナ――「都会的モテ男」が法廷で見せたウラの顔

殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#010号法廷】

罪状:ストーカー
被告人:R子(59歳)

<事件の概要>

 家庭を持ち、仕事は教育関係――はたから見れば“堅実な人生”を送っていた被告・R子は、2017年2月ごろ、スポーツジムで知り合った男性A氏(49歳)と不倫関係に。しかし、A氏はその前から、部下の女性・B美(41歳、当時は既婚)とも不倫関係にあり、R子は二股をかけられていた。そんな中、A氏は17年3月に“第3の女性”と結婚。R子・B美との関係も継続しており、“トリプル不倫”となる。

 B美との関係が彼女の夫に発覚し、A氏は慰謝料を請求される。A氏は妻の束縛がキツいことをR子に相談しており、2人は親密な交際を続けていた。しかし、R子との関係がA氏の妻にバレてしまい、A氏は別れを切り出す。R子は「納得できない」と別れに応じないどころか、A氏とB美の職場に、不倫を暴露したハガキなど13通の文書を送りつけ、嫌がらせ行為におよんだため逮捕。

 ……ざっくりまとめると、「愛人と別れるのに失敗した男が、痛い目に遭って警察に駆け込んだ」という事案です。法廷では、R子が逮捕に至った経緯が時系列で説明されましたので、下記にて整理してみます。

16年9月 A氏(上司)とB美(部下、当時は既婚)が不倫関係に。

17年2月 R子(被告)とA氏が不倫関係に。B美もR子の存在を認識。「子どももいるのに、そんなこと(不倫)する女は許せない」と、R子。
3月 A氏、第3の女性と結婚。「束縛がキツく、携帯電話をチェックされる」とR子に相談。R子名義で携帯電話を契約し、A氏にわたす。

18年2月 B美との関係が彼女の夫に発覚。A氏は慰謝料を請求され、R子に相談。
3~4月 R子との関係がA氏の妻に発覚。
5月 B美が離婚。A氏、カフェでR子に別れを切り出す。R子は「納得できない!」と、周囲に聞こえるほどの大声で拒否。A氏はR子から「会社に(B子との関係を)バラす」と言われ、怖くなって逃げる。
6月 A氏・B美の会社に告発電話があり、B美はR子とはじめて対面することに。A氏はB美と会わないようR子を説得するも、失敗。A氏、大阪に左遷の内示が出る。
7月 匿名でA氏の会社にハガキが4通届く。その中には、A氏が女性用下着をつけている画像つきのものも。

19年4月 匿名でA氏の会社に封書が届く。「A氏は女から携帯電話と銀行口座の名義借りをしている。これは違法行為」との内容。A氏は警察に被害届を出す。R子逮捕。

 実はこの裁判、第1回公判の罪状認否で、被告・R子が「やっていません」と徹底抗戦の姿勢を見せ、非常に興味をそそられたため、第2回公判も傍聴しました。見せ場はなんと言っても、第2回公判で行われた、被害者A氏・B美の証人質問です。

 A氏と、その部下で“不倫相手1号”のB美は、1人ずつ法廷に登場。プライバシー保護のため、法廷と傍聴席の間は大きな衝立で遮られ、彼らの姿は見えませんでした。しかし、A氏はハキハキとした応答で、「プレゼン慣れしているキャリアサラリーマン」といった感じ。また、B美は被告・R子について「怒りのコントロールがきかない人間だと思います」と、考察まで披露します。

 A氏とB美が勤務するのは、東京・中央区が所在地の会社で、大阪にも支社もあるという、そこそこ大規模な会社。しかも、A氏は都内の高級住宅街に住み、ジム通いが日課なのだとか(法廷では、こんなプロフィールまで晒されます。気をつけましょう)。「こういうちょいワルオヤジ(死語)まだいるんだ!」と絶滅危惧種を確かめるように、思わず前のめりに。

 B美の夫から慰謝料を請求されていることを、R子へ頻繁に相談し、B美へ送るメールの返信文まで考えてもらっていたというA氏。それなのに、R子と別れ話でモメている際に「怖くなって、たまらなくなって」、結婚1年だった自身の妻を呼び出したとのこと。「都会的なモテ男」のはずが、証言が進むにつれて「ナヨナヨした男」に見えてくるのが不思議です。ちなみに、R子のことは「本気ではなく、ペットみたいな感じ」に思っていたとか……。は〜絶句!

 そんなA氏、B美に「(R子から)脅されて付き合っている」と泣き言を言ったかと思えば、R子とのLINEでは「じゃ、俺を縛って征服しろ」などとナルシシストな文言を送っていたそう(刑事事件の原告・被告になり、証拠採用されると、どんな“黒歴史メッセージ”も公文書となって公開されます。ますます気をつけましょう)。ここまでくると、A氏のパーソナリティが猛烈に気になってしまいます。

 やり手キャリアウーマン(B美)と、お堅い年上女性(R子)を遊び分け、めとったのは修羅場にも付き添ってくれる従順な女(妻)……脳内で果てしなく広がるのは、『課長島耕作』『黄昏流星群』で知られる、漫画家・弘兼憲史の世界。先生、この裁判を次回作の参考にしてはいかがでしょうか?

“神待ち”で出会った15歳の少女を「引き取って育てる」――孤独な青年が起こした「未成年者誘拐」事件

 殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#009号法廷】

罪状:未成年者誘拐
被告人:O太(25歳)

<事件の概要>

 いわゆる“神待ち”(家出した少女が、その日の食事や宿を無償で提供してくれる男性=神をインターネットで探すこと)をしていた15歳の少女とTwitterで知り合い、ひとり暮らしする自宅に数日間泊めていたO太。少女は無事に保護されたものの、母親が被害届を出し、逮捕された。O太の動機は「ひとり暮らしを始めて、寂しかったので」。

被告が少女の母親に発した「普通じゃない」言葉

 大学時代に統合失調症を発症し入院、退院後は自立を目指して3年間グループホームで生活していたO太。非正規とはいえ就労できたため、ひとり暮らしを始めたそう。ただ、孤独感から「女性と暮らしたい」欲が湧き、Twitterで“神待ち”少女を探してみることに。O太が連絡してから6日後にリプライを送ってきた少女と運良く(悪く?)つながってしまったそうです。

 朝早く出勤するO太は、少女を自宅に泊めている間、寝ているところを起こさないよう支度したり、職場から「おはようございます」とTwitterのDMを送っていたりしたそう。わいせつ行為どころか、扱いにはかなり気を配っていたことがわかります。

 しかし、O太は自責の念に耐えられず、逮捕当日、電話で警察に相談していたとか。ファミレスで警察官と落ち合い、一緒に帰宅したところ、少女はスマホ片手にベッドでリラックスしており、さらに「自分で(ここまで)来ました」と主張。少女は保護されましたが、O太の留守中には、少女と母親がLINEでやりとりしていたこともわかっており、ずいぶん自由に過ごしていたようです。

 “どこにでもいる素朴な青年”という感じの被告。ドラマなどとは違い、生で見ると拍子抜けするぐらい“普通”な被告人は多いですが、彼はその中でも特に普通。「さっき寄ったコンビニの店員」だと言われても、納得してしまうほどです。情状証人として登場した父親の弁論も「子どもの頃から優しくて人のいい子でした。拾ったお金を交番に届けたり……」「病気でも真面目に勤務していました」「今後は二度と(犯罪を)繰り返さないよう見守っていきたい」と、ほぼ常套句でしたね。それだけに、O太の「寂しかった」という動機が、とても身近に感じられます。

 ただ、少女の母親に「娘さんを引き取って育てるつもり」といったメッセージを送っていたり、少女と暮らす前提で「家賃の一部を(少女の母親に)負担してもらい、フラットな付き合いをするつもり」と考えていたことが明らかになると、「ちょっと普通じゃないな」とも思いました。O太は思い込みが激しいタイプなのでしょうか。

 それにしても、気になるのは少女の母親です。家にオトコを連れ込んで、娘の居場所を奪っていたことが明らかになり、それだけでもひどいのに、他人の家から「お母さん心配しないで、大丈夫」とLINEをしてきた娘の心情を、どこまで理解していたのでしょうか? 本当に娘を心配していたら、もっと早く通報していたと思うのですが……。もちろん、保護者には監督責任があるわけで、むしろこの母親を証人として呼んでほしかったところです。

 O太が最後に「(神待ち少女を招き入れても)寂しさを埋められるものではなかった」と言っていたのは、ある種“救い”だったと思います。成人が未成年と2人きり、個室で一晩過ごすといった「みだらな性行為又はわいせつな行為」を疑われるようなことをすると、少女が被害を訴えた場合「青少年保護育成条例違反」になる可能性が出てきます。これでO太が「少女で寂しさを埋めることができる」と感じてしまえば、また同じことを繰り返していたでしょう。

 こんな世の中ですが、O太がきちんと罪を償ったあとは、少しずつでいいから実社会に慣れて、寂しさを自身で埋められるようになってほしいものです。

宗教団体の内部で起きた「窃盗未遂」事件――“手かざし”では救えなかった、50代女性の深い闇

 殺人、暴行、わいせつ、薬物、窃盗……毎日毎日、事件がセンセーショナルに報じられる中、大きな話題になるわけでもなく、犯した罪をひっそりと裁かれていく人たちがいます。彼らは一体、どうして罪を犯してしまったのか。これからの生活で、どうやって罪を償っていくのか。傍聴席に座り、静かに(時に荒々しく)語られる被告の言葉に耳を傾けると、“人生”という名のドラマが見えてきます――。

【#008号法廷】

罪状:有印私文書偽造、同行使、窃盗未遂
被告人:Y子(58歳)

<事件の概要>

 入信している新興宗教団体の道場で、同じ信者女性の財布を拾得したY子。しかし、団体関係者に知らせたり、警察に届けたりすることはせず、そのまま所持していた。Y子はその財布の中から、被害者名義のクレジットカードを使用し、U銀行Y支店のATMで10万円の借り入れを試みるも、すでに利用停止届が出されており失敗。被害者名義のキャッシュカードでも払い戻しを試みたが、暗証番号がわからず未遂に終わる。

 ここで思いとどまるどころか、Y子はそのキャッシュカードと被害者の運転免許証をわざと銀行のゴミ箱に捨て、そばにいた清掃員に「見つかったら連絡ちょうだい」と自分の電話番号を教えた。後日、実際に連絡を受け、そのキャッシュカードを受け取るため同じU銀行Y支店に出向き、被害者本人になりすまして「印鑑と暗証番号を変えたい」と申し出る。キャッシュカードの再発行を勧められて手続きに入ったものの、被害者の名前を間違え、免許証の写真(被害者)とY子が別人だったことで怪しまれ、銀行員が通報、逮捕。なお、被告は生活保護受給者で精神科通院歴あり。平成18年と28年に有罪判決を受けており、前科2犯。

“国会答弁”のような、ぼんやりした回答

 まるで“不条理芝居”を見ているような法廷でした。見終わっても、「なぜ、財布を拾ったときに道場へ届けなかったのか?」「なぜ他人のキャッシュカードをATMに入れて操作したのか?」「暗証番号も知らないのに、なぜ金が引き出せると思ったのか?」などなど、「そもそもどうして?」という疑問が多数残りました。一般常識を凌駕した被告の行動からは、動機となったはずの“欲”なども全く見えてきません。

 被告人質問の回答をピックアップすると、Y子の“人となり”が見えてくるような気がします。

「クレジットカードは使っていません。ATMに入れ(て操作し)ただけ」
「キャッシュカードは、きっぷ売り場に置いてありました。ほかの人が持って行ったのを見たので、『私も持って行っていいのかな?』と思い持ってきました」(さっぱり意味不明)
「(被害者に)なりすまそうとは思ってなかったけど、(被害者の名前を)書いてしまったのは事実」
「ウソの電話番号を書こうとしたけど、思いつかなかったので自分のを書きました」
「(虚偽の届け出をしても)銀行が処理してくれると思いました」

 「結果としてそうなった」というニュアンスの回答が多く、Y子に反省の色はほとんど見えません。さらに、「そう言うなら、そうだったんだと思う」「記憶はないけど、記録があるなら私がやったと思う」など、まるで国会中継の答弁を見ているようなシュールな答えまで。なりゆきで犯罪を犯してしまった、ということなのでしょうか? Y子は「印鑑を買うために百均へ出向き、すぐ銀行に戻る」といった行動も取っていたようで、冷静になれるタイミングはあったはずなのですが……。とにかくうすぼんやりした回答が続き、頭がクラクラしてしまいました。

 しかし、ただ一点だけ、Y子が自ら具体的に話したことがありました。「財布を拾ったとき、なぜ警察に届けなかったのか?」という質問です。

Y子 元夫のDVで、(自分が)通報したり、よく警察には行っていたけど、放置されたり脅されたりと真剣に取り合ってくれなかったので、行くのが怖かった。

 なぜかここだけ、必要以上に詳しく理由を話していたのです。しかも、今回はその元夫(と思われる人)から、Y子を減刑してもらうための“嘆願書”も出ていました。Y子は過去、警察にどんなひどいことをされたのか? Y子と元夫の間に何があったのか? このあたりに、被告人のバックグラウンドを読み解くヒントがあるような気がします。ちなみに、裁判中はY子が入信している新興宗教の名前も出ました。「“手かざし”では救えないこともある」と学んだ事案でした。