小室哲哉の不倫&引退会見があらわにした、フジテレビほかマスコミの“勝手な”認識

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

 評論家の西部邁氏が入水自殺した。生前、“自分の死は自分で決める”と公言していたが、やはり衝撃だ。1990年代、「噂の真相」では改憲、核武装といった主張を繰り返す西部氏の批判記事を掲載したが、最近では安倍晋三首相批判を繰り返していた。そんな西部氏に昨年偶然お会いしたことがあった。ニコニコしながら、しかし日本に対する憂いなど持論を熱く語っていたことが印象的だった。冥福を祈りたい。

第398回(1/18~1/23発売号より)
1位「小室哲哉 『涙の会見』で隠した未来の夢――『もう一度、KEIKOと復活を!』」(「女性自身」2月6日号)
2位 「特写&インタビュー 草なぎ剛 『立ち止まっているより前に進んだほうがいい』」(「週刊女性」2月6日号)
3位「秋元優里アナも!? “竹林不倫”の衝撃 とにかく外が好きな女たち」(「女性セブン」2月1日号)

 小室哲哉の不倫&引退会見が波紋を呼んでいる。先週発売の「週刊文春」(文藝春秋)が報じた小室不倫疑惑だったが、1月19日に行われた会見で小室は、療養中の妻KEIKOの介護生活を語り、かつ音楽界からの引退を発表したからだ。

 だが巻き起こったのは、“おかしな批判”だった。その最たるものが「妻の症状をそこまで詳細に話すべきではない」という批判だ。

 特にひどかったのがフジテレビの情報番組。『直撃LIVEグッディ!』では木村太郎が、妻のプライバシーを暴露したと激怒、「自分の奥さんを口実に、そういうことを人に言うのはありえないことだろう」「許せない」とまで言えば、安藤優子も小室の「(妻の現状を)お恥ずかしい話」という発言を非難している。また『バイキング』も、さらに輪をかけてひどかった。坂上忍は「いくら旦那とはいえ、あそこまで病状を赤裸々に語れるのかなって疑問に思う」と発言すると、IKKOもそれに同調、東国原英夫も「介護を理由にしたのは謹んでもらいたい」など“現状”を語った小室を批判した。これに対し、フィフィが珍しく介護について理解を求める場面もあったが、坂上はこれを感情的に制止までしたのだ。

 一体、何を言っているのか。そもそも小室がその詳細を語らなかったとしたら、記者たちは逆に根掘り葉掘りKEIKOの現状についての質問をしたはずだ。「KEIKOは不倫についてどう思っているのか」「何か話し合ったか」と。それに対し、小室は今回自ら語ったのと同じくらいKEIKOの詳細を語らざるを得なかったはずだ。そうでなければマスコミは納得しないのだから。それを小室が自ら話したらバッシング。ご都合主義もはなはだしい。しかも介護は個々のケースによってそれぞれ異なるものだし、大きな困難を伴うものだ。しかし坂上や安藤は、そんな想像力もなく、自分たちの勝手な価値観を押し付けようとした。自分たちの無知をさらけ出した。つまり、ここまで詳細に説明しなくては、マスコミや世間は理解しない。小室はそう判断したのだろうし、しかしそこまでしても、メディア、いやワイドショーは結局、理解しようともしなかったということだろう。

 そして今週の「女性自身」だ。記事は締め切りの関係上、こうした議論については触れてはいない。ただ、スポーツ紙記者のこんなコメントが掲載されている。

「KEIKOさんは少しずつ回復していると言われてきただけに、小室さんが自分の生活に支障をきたすほどつらい状態にあることに、驚きの声もあがりました」

 “状態を知って驚いた”。小室が自ら口を開く以前の、これがマスコミの“勝手な”認識だった。これはある意味必然であり、しかしある意味“事件”でもある。

 「週刊女性」に元SMAPの草なぎ剛のグラビアと独占インタビューが掲載された。草なぎの登場は実に20年ぶりだという。

 「週女」といえば、女性週刊誌の中でもジャニーズタブーから距離があったアンチ的雑誌だ。事務所にとって不都合なスキャンダル記事も掲載するだけに、ジャニーズタレントが登場することはない。それは芸能ジャーナリズムの志とはちょっと違う。18年ほど前、「週女」の発行元である主婦と生活社のアイドルインタビュー雑誌「JUNON」がジャニーズとトラブルを起こし、激怒したジャニーズは、それまでの蜜月関係を解消、以降は敵対関係となったからだ。

 SMAPだった草なぎも、当然、同誌に登場することはなかった。これまでは。そして今回、ジャニーズを独立した草なぎが満を持して「週女」に登場! 今やジャニーズとは関係ないし、“敵の敵”は味方だしね。「週女」サイドも、やり手のマネジャー・飯島三智氏も、このタッグは当然狙っていたはずだ。ジャニーズへの嫌がらせにもなる。

 今後、「週女」の表紙を草なぎ、香取慎吾、稲垣吾郎が飾るなんて事態も起こるかもしれない。だが一方で、心配だ。「週女」にとって独立組3人が新タブーになって、今後、ヨイショ記事しか掲載されないかもしれないことが。

 これまた“文春砲”がぶっ飛ばしたのが、フジテレレビアナにして生田竜聖アナの妻・秋元優里の不倫スキャンダルだ。そして「女性セブン」がこの追いかけ記事を掲載しているのだが、その切り口がすごい。ズバリ“カーセックスにはまる女性”である。

 「非日常な快楽にハマっていく」「自らカーセックスを望むように“調教”されていく」などなど。女性週刊誌ならではのエグい記事に、久々にのけぞった。

小室哲哉の不倫&引退会見があらわにした、フジテレビほかマスコミの“勝手な”認識

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

 評論家の西部邁氏が入水自殺した。生前、“自分の死は自分で決める”と公言していたが、やはり衝撃だ。1990年代、「噂の真相」では改憲、核武装といった主張を繰り返す西部氏の批判記事を掲載したが、最近では安倍晋三首相批判を繰り返していた。そんな西部氏に昨年偶然お会いしたことがあった。ニコニコしながら、しかし日本に対する憂いなど持論を熱く語っていたことが印象的だった。冥福を祈りたい。

第398回(1/18~1/23発売号より)
1位「小室哲哉 『涙の会見』で隠した未来の夢――『もう一度、KEIKOと復活を!』」(「女性自身」2月6日号)
2位 「特写&インタビュー 草なぎ剛 『立ち止まっているより前に進んだほうがいい』」(「週刊女性」2月6日号)
3位「秋元優里アナも!? “竹林不倫”の衝撃 とにかく外が好きな女たち」(「女性セブン」2月1日号)

 小室哲哉の不倫&引退会見が波紋を呼んでいる。先週発売の「週刊文春」(文藝春秋)が報じた小室不倫疑惑だったが、1月19日に行われた会見で小室は、療養中の妻KEIKOの介護生活を語り、かつ音楽界からの引退を発表したからだ。

 だが巻き起こったのは、“おかしな批判”だった。その最たるものが「妻の症状をそこまで詳細に話すべきではない」という批判だ。

 特にひどかったのがフジテレビの情報番組。『直撃LIVEグッディ!』では木村太郎が、妻のプライバシーを暴露したと激怒、「自分の奥さんを口実に、そういうことを人に言うのはありえないことだろう」「許せない」とまで言えば、安藤優子も小室の「(妻の現状を)お恥ずかしい話」という発言を非難している。また『バイキング』も、さらに輪をかけてひどかった。坂上忍は「いくら旦那とはいえ、あそこまで病状を赤裸々に語れるのかなって疑問に思う」と発言すると、IKKOもそれに同調、東国原英夫も「介護を理由にしたのは謹んでもらいたい」など“現状”を語った小室を批判した。これに対し、フィフィが珍しく介護について理解を求める場面もあったが、坂上はこれを感情的に制止までしたのだ。

 一体、何を言っているのか。そもそも小室がその詳細を語らなかったとしたら、記者たちは逆に根掘り葉掘りKEIKOの現状についての質問をしたはずだ。「KEIKOは不倫についてどう思っているのか」「何か話し合ったか」と。それに対し、小室は今回自ら語ったのと同じくらいKEIKOの詳細を語らざるを得なかったはずだ。そうでなければマスコミは納得しないのだから。それを小室が自ら話したらバッシング。ご都合主義もはなはだしい。しかも介護は個々のケースによってそれぞれ異なるものだし、大きな困難を伴うものだ。しかし坂上や安藤は、そんな想像力もなく、自分たちの勝手な価値観を押し付けようとした。自分たちの無知をさらけ出した。つまり、ここまで詳細に説明しなくては、マスコミや世間は理解しない。小室はそう判断したのだろうし、しかしそこまでしても、メディア、いやワイドショーは結局、理解しようともしなかったということだろう。

 そして今週の「女性自身」だ。記事は締め切りの関係上、こうした議論については触れてはいない。ただ、スポーツ紙記者のこんなコメントが掲載されている。

「KEIKOさんは少しずつ回復していると言われてきただけに、小室さんが自分の生活に支障をきたすほどつらい状態にあることに、驚きの声もあがりました」

 “状態を知って驚いた”。小室が自ら口を開く以前の、これがマスコミの“勝手な”認識だった。これはある意味必然であり、しかしある意味“事件”でもある。

 「週刊女性」に元SMAPの草なぎ剛のグラビアと独占インタビューが掲載された。草なぎの登場は実に20年ぶりだという。

 「週女」といえば、女性週刊誌の中でもジャニーズタブーから距離があったアンチ的雑誌だ。事務所にとって不都合なスキャンダル記事も掲載するだけに、ジャニーズタレントが登場することはない。それは芸能ジャーナリズムの志とはちょっと違う。18年ほど前、「週女」の発行元である主婦と生活社のアイドルインタビュー雑誌「JUNON」がジャニーズとトラブルを起こし、激怒したジャニーズは、それまでの蜜月関係を解消、以降は敵対関係となったからだ。

 SMAPだった草なぎも、当然、同誌に登場することはなかった。これまでは。そして今回、ジャニーズを独立した草なぎが満を持して「週女」に登場! 今やジャニーズとは関係ないし、“敵の敵”は味方だしね。「週女」サイドも、やり手のマネジャー・飯島三智氏も、このタッグは当然狙っていたはずだ。ジャニーズへの嫌がらせにもなる。

 今後、「週女」の表紙を草なぎ、香取慎吾、稲垣吾郎が飾るなんて事態も起こるかもしれない。だが一方で、心配だ。「週女」にとって独立組3人が新タブーになって、今後、ヨイショ記事しか掲載されないかもしれないことが。

 これまた“文春砲”がぶっ飛ばしたのが、フジテレレビアナにして生田竜聖アナの妻・秋元優里の不倫スキャンダルだ。そして「女性セブン」がこの追いかけ記事を掲載しているのだが、その切り口がすごい。ズバリ“カーセックスにはまる女性”である。

 「非日常な快楽にハマっていく」「自らカーセックスを望むように“調教”されていく」などなど。女性週刊誌ならではのエグい記事に、久々にのけぞった。

小室哲哉の不倫&引退会見があらわにした、フジテレビほかマスコミの“勝手な”認識

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

 評論家の西部邁氏が入水自殺した。生前、“自分の死は自分で決める”と公言していたが、やはり衝撃だ。1990年代、「噂の真相」では改憲、核武装といった主張を繰り返す西部氏の批判記事を掲載したが、最近では安倍晋三首相批判を繰り返していた。そんな西部氏に昨年偶然お会いしたことがあった。ニコニコしながら、しかし日本に対する憂いなど持論を熱く語っていたことが印象的だった。冥福を祈りたい。

第398回(1/18~1/23発売号より)
1位「小室哲哉 『涙の会見』で隠した未来の夢――『もう一度、KEIKOと復活を!』」(「女性自身」2月6日号)
2位 「特写&インタビュー 草なぎ剛 『立ち止まっているより前に進んだほうがいい』」(「週刊女性」2月6日号)
3位「秋元優里アナも!? “竹林不倫”の衝撃 とにかく外が好きな女たち」(「女性セブン」2月1日号)

 小室哲哉の不倫&引退会見が波紋を呼んでいる。先週発売の「週刊文春」(文藝春秋)が報じた小室不倫疑惑だったが、1月19日に行われた会見で小室は、療養中の妻KEIKOの介護生活を語り、かつ音楽界からの引退を発表したからだ。

 だが巻き起こったのは、“おかしな批判”だった。その最たるものが「妻の症状をそこまで詳細に話すべきではない」という批判だ。

 特にひどかったのがフジテレビの情報番組。『直撃LIVEグッディ!』では木村太郎が、妻のプライバシーを暴露したと激怒、「自分の奥さんを口実に、そういうことを人に言うのはありえないことだろう」「許せない」とまで言えば、安藤優子も小室の「(妻の現状を)お恥ずかしい話」という発言を非難している。また『バイキング』も、さらに輪をかけてひどかった。坂上忍は「いくら旦那とはいえ、あそこまで病状を赤裸々に語れるのかなって疑問に思う」と発言すると、IKKOもそれに同調、東国原英夫も「介護を理由にしたのは謹んでもらいたい」など“現状”を語った小室を批判した。これに対し、フィフィが珍しく介護について理解を求める場面もあったが、坂上はこれを感情的に制止までしたのだ。

 一体、何を言っているのか。そもそも小室がその詳細を語らなかったとしたら、記者たちは逆に根掘り葉掘りKEIKOの現状についての質問をしたはずだ。「KEIKOは不倫についてどう思っているのか」「何か話し合ったか」と。それに対し、小室は今回自ら語ったのと同じくらいKEIKOの詳細を語らざるを得なかったはずだ。そうでなければマスコミは納得しないのだから。それを小室が自ら話したらバッシング。ご都合主義もはなはだしい。しかも介護は個々のケースによってそれぞれ異なるものだし、大きな困難を伴うものだ。しかし坂上や安藤は、そんな想像力もなく、自分たちの勝手な価値観を押し付けようとした。自分たちの無知をさらけ出した。つまり、ここまで詳細に説明しなくては、マスコミや世間は理解しない。小室はそう判断したのだろうし、しかしそこまでしても、メディア、いやワイドショーは結局、理解しようともしなかったということだろう。

 そして今週の「女性自身」だ。記事は締め切りの関係上、こうした議論については触れてはいない。ただ、スポーツ紙記者のこんなコメントが掲載されている。

「KEIKOさんは少しずつ回復していると言われてきただけに、小室さんが自分の生活に支障をきたすほどつらい状態にあることに、驚きの声もあがりました」

 “状態を知って驚いた”。小室が自ら口を開く以前の、これがマスコミの“勝手な”認識だった。これはある意味必然であり、しかしある意味“事件”でもある。

 「週刊女性」に元SMAPの草なぎ剛のグラビアと独占インタビューが掲載された。草なぎの登場は実に20年ぶりだという。

 「週女」といえば、女性週刊誌の中でもジャニーズタブーから距離があったアンチ的雑誌だ。事務所にとって不都合なスキャンダル記事も掲載するだけに、ジャニーズタレントが登場することはない。それは芸能ジャーナリズムの志とはちょっと違う。18年ほど前、「週女」の発行元である主婦と生活社のアイドルインタビュー雑誌「JUNON」がジャニーズとトラブルを起こし、激怒したジャニーズは、それまでの蜜月関係を解消、以降は敵対関係となったからだ。

 SMAPだった草なぎも、当然、同誌に登場することはなかった。これまでは。そして今回、ジャニーズを独立した草なぎが満を持して「週女」に登場! 今やジャニーズとは関係ないし、“敵の敵”は味方だしね。「週女」サイドも、やり手のマネジャー・飯島三智氏も、このタッグは当然狙っていたはずだ。ジャニーズへの嫌がらせにもなる。

 今後、「週女」の表紙を草なぎ、香取慎吾、稲垣吾郎が飾るなんて事態も起こるかもしれない。だが一方で、心配だ。「週女」にとって独立組3人が新タブーになって、今後、ヨイショ記事しか掲載されないかもしれないことが。

 これまた“文春砲”がぶっ飛ばしたのが、フジテレレビアナにして生田竜聖アナの妻・秋元優里の不倫スキャンダルだ。そして「女性セブン」がこの追いかけ記事を掲載しているのだが、その切り口がすごい。ズバリ“カーセックスにはまる女性”である。

 「非日常な快楽にハマっていく」「自らカーセックスを望むように“調教”されていく」などなど。女性週刊誌ならではのエグい記事に、久々にのけぞった。

小室哲哉の不倫&引退会見があらわにした、フジテレビほかマスコミの“勝手な”認識

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

 評論家の西部邁氏が入水自殺した。生前、“自分の死は自分で決める”と公言していたが、やはり衝撃だ。1990年代、「噂の真相」では改憲、核武装といった主張を繰り返す西部氏の批判記事を掲載したが、最近では安倍晋三首相批判を繰り返していた。そんな西部氏に昨年偶然お会いしたことがあった。ニコニコしながら、しかし日本に対する憂いなど持論を熱く語っていたことが印象的だった。冥福を祈りたい。

第398回(1/18~1/23発売号より)
1位「小室哲哉 『涙の会見』で隠した未来の夢――『もう一度、KEIKOと復活を!』」(「女性自身」2月6日号)
2位 「特写&インタビュー 草なぎ剛 『立ち止まっているより前に進んだほうがいい』」(「週刊女性」2月6日号)
3位「秋元優里アナも!? “竹林不倫”の衝撃 とにかく外が好きな女たち」(「女性セブン」2月1日号)

 小室哲哉の不倫&引退会見が波紋を呼んでいる。先週発売の「週刊文春」(文藝春秋)が報じた小室不倫疑惑だったが、1月19日に行われた会見で小室は、療養中の妻KEIKOの介護生活を語り、かつ音楽界からの引退を発表したからだ。

 だが巻き起こったのは、“おかしな批判”だった。その最たるものが「妻の症状をそこまで詳細に話すべきではない」という批判だ。

 特にひどかったのがフジテレビの情報番組。『直撃LIVEグッディ!』では木村太郎が、妻のプライバシーを暴露したと激怒、「自分の奥さんを口実に、そういうことを人に言うのはありえないことだろう」「許せない」とまで言えば、安藤優子も小室の「(妻の現状を)お恥ずかしい話」という発言を非難している。また『バイキング』も、さらに輪をかけてひどかった。坂上忍は「いくら旦那とはいえ、あそこまで病状を赤裸々に語れるのかなって疑問に思う」と発言すると、IKKOもそれに同調、東国原英夫も「介護を理由にしたのは謹んでもらいたい」など“現状”を語った小室を批判した。これに対し、フィフィが珍しく介護について理解を求める場面もあったが、坂上はこれを感情的に制止までしたのだ。

 一体、何を言っているのか。そもそも小室がその詳細を語らなかったとしたら、記者たちは逆に根掘り葉掘りKEIKOの現状についての質問をしたはずだ。「KEIKOは不倫についてどう思っているのか」「何か話し合ったか」と。それに対し、小室は今回自ら語ったのと同じくらいKEIKOの詳細を語らざるを得なかったはずだ。そうでなければマスコミは納得しないのだから。それを小室が自ら話したらバッシング。ご都合主義もはなはだしい。しかも介護は個々のケースによってそれぞれ異なるものだし、大きな困難を伴うものだ。しかし坂上や安藤は、そんな想像力もなく、自分たちの勝手な価値観を押し付けようとした。自分たちの無知をさらけ出した。つまり、ここまで詳細に説明しなくては、マスコミや世間は理解しない。小室はそう判断したのだろうし、しかしそこまでしても、メディア、いやワイドショーは結局、理解しようともしなかったということだろう。

 そして今週の「女性自身」だ。記事は締め切りの関係上、こうした議論については触れてはいない。ただ、スポーツ紙記者のこんなコメントが掲載されている。

「KEIKOさんは少しずつ回復していると言われてきただけに、小室さんが自分の生活に支障をきたすほどつらい状態にあることに、驚きの声もあがりました」

 “状態を知って驚いた”。小室が自ら口を開く以前の、これがマスコミの“勝手な”認識だった。これはある意味必然であり、しかしある意味“事件”でもある。

 「週刊女性」に元SMAPの草なぎ剛のグラビアと独占インタビューが掲載された。草なぎの登場は実に20年ぶりだという。

 「週女」といえば、女性週刊誌の中でもジャニーズタブーから距離があったアンチ的雑誌だ。事務所にとって不都合なスキャンダル記事も掲載するだけに、ジャニーズタレントが登場することはない。それは芸能ジャーナリズムの志とはちょっと違う。18年ほど前、「週女」の発行元である主婦と生活社のアイドルインタビュー雑誌「JUNON」がジャニーズとトラブルを起こし、激怒したジャニーズは、それまでの蜜月関係を解消、以降は敵対関係となったからだ。

 SMAPだった草なぎも、当然、同誌に登場することはなかった。これまでは。そして今回、ジャニーズを独立した草なぎが満を持して「週女」に登場! 今やジャニーズとは関係ないし、“敵の敵”は味方だしね。「週女」サイドも、やり手のマネジャー・飯島三智氏も、このタッグは当然狙っていたはずだ。ジャニーズへの嫌がらせにもなる。

 今後、「週女」の表紙を草なぎ、香取慎吾、稲垣吾郎が飾るなんて事態も起こるかもしれない。だが一方で、心配だ。「週女」にとって独立組3人が新タブーになって、今後、ヨイショ記事しか掲載されないかもしれないことが。

 これまた“文春砲”がぶっ飛ばしたのが、フジテレレビアナにして生田竜聖アナの妻・秋元優里の不倫スキャンダルだ。そして「女性セブン」がこの追いかけ記事を掲載しているのだが、その切り口がすごい。ズバリ“カーセックスにはまる女性”である。

 「非日常な快楽にハマっていく」「自らカーセックスを望むように“調教”されていく」などなど。女性週刊誌ならではのエグい記事に、久々にのけぞった。

渡辺謙との離婚を明言しない南果歩が漏らした、「女性自身」と芸能事務所の“癒着”

下世話、醜聞、スキャンダル――。長く女性の“欲望”に応えてきた女性週刊誌を、伝説のスキャンダル雑誌「噂の真相」の元デスク神林広恵が、ぶった斬る!

 本日1月16日の『とくダネ!』(フジテレビ系)で再びあ然。話題は水戸ご当地アイドルが、運営者からセクハラ&未成年者飲酒の強要を受けたというものだったが、司会の小倉智昭氏が「運営者の能力が高い」といった意味不明のミスリードを繰り返し、セクハラを矮小化、告発者を批判することで、セクハラ告発さえ封じ込めようとしているふうにさえ見えたからだ。小倉は、少し前にゴールデングローブ賞の授賞式で、女優たちがセクハラ抗議のために黒い服装で参加した件に関しても、「女優さんにあんなに胸強調されたら、男の人もたまりませんよね」と発言していた。そのレベルの低さ、認識のなさに、朝からうんざり。

第397回(1/11~1/16発売号より)
1位「南果歩 『縁あって夫婦ですから…』本誌に明かした『妻の矜持』」(「女性自身」1月30日号)
2位「川中美幸 『歌をやめても、倒れようとも…母を全身全霊で見送りたかった』」
同「全国から悲鳴続々! 介護認定『格下げ』地獄が始まった!」(「女性自身」1月30日号)
3位「近藤真彦 『俺もちょっと司会をやりたい』勘違い発言がSMAPファンに総スカン」(「週刊女性」1月30日号)
※「女性セブン」は合併号休み

 渡辺謙の不倫問題がいまだに尾を引いている。その理由の1つに、妻の南果歩が離婚について明言せず、ある意味“思わせぶり”な発言と態度を取り続けていることもある。そのため不倫をスクープした「週刊文春」(文藝春秋)をはじめ、マスコミも“離婚へ向け協議”“泥沼”などと書き立てているが、そんな中、当の南が「女性自身」の直撃に答えている。それも一言ではなく、結構な時間を割いて。

 とはいえ、南はまたものらりくらり。離婚協議についても「先方のこともありますから、この場で詳しくは申し上げられない」とか、「(夫を)仕事に集中させてあげたい」とか、「私も、彼の仕事には協力したいと思っているんです」とか。

 もちろん、夫婦のことなので、外から真相などわかるはずもないし、当人たちもまだ結論を出していないかもしれない。だが、そんな直撃の中で、南は大変面白いコメントを残しているのだ。

「『女性自身』さんにはお世話になっていますから、もっとお話ししたいのですが、申し訳ありませんね」

 「女性自身」にお世話になった――。もちろんそこにはマスコミに対する気配りもあるかもしれない。“一流芸能人”の戦略もあるかもしれない。しかし、どうしても頭をよぎるのが昨年の不倫騒動勃発の後、「自身」が掲載したある芸能界の大物コメントとの関係だ。

 「自身」は昨年4月、夫の不倫にもかかわらず、逆に夫婦愛が深まり、その絆を強調する記事を掲載している。そして、その記事には“芸能界のドン”バーニングプロダクション・周防郁雄社長の盟友でもある、渡辺が所属する事務所ケイダッシュの川村龍夫会長のコメントを掲載したのだ。それは「離婚の可能性はゼロですよ」「まず果歩さんに謝ることでしょうね」といったものだったが、表舞台に滅多に姿を現さない川村会長がコメントを出すなど、非常に異例なことだった。

 その背景には、以前から所属事務所と“不協和音”が囁かれていた渡辺に、不倫を機にお灸を据え、かつ不倫騒動を収めて、その影響力を渡辺に再認識させるという意味があったようだが、ここでもう1つ明らかになったのが「自身」とケイダッシュとの“関係”だった。つまり絶大な影響力を持つ大手事務所が「自身」を選んだ、ということだ。

 そう考えると、確かに南も「『女性自身』にお世話になった」し、「いろいろ気を使ってくださってありがとう」といったところか。

 でも、そんな南の“お世話”コメントを嬉々として掲載しちゃう「自身」って……。これが、日本の芸能事務所と芸能マスコミの癒着の心理的実態なのか。

 演歌歌手の川中美幸が、実母の介護について語っている。川中は3年間に渡り実母(要介護3から最後は5に)を自宅で介護した。最後の1年半は事務所を辞め、ほぼ寝たきりの実母の介護に専念したが、川中も還暦直前。要するに “老老介護”だ。介護離職、老老介護など、現在少子高齢化の日本が直面する切実な問題がそこには詰まっていて、同時にいろいろと考えさせられるインタビューでもあった。

 医師からは施設に入る方法もあると言われたが、仕事をセーブしてでもデビュー以来自分を支えてくれた母親を自宅で介護したかったという川中。そしてぎっくり腰になっても、お風呂にゆっくり浸かる時間さえない壮絶な介護生活—――。

 だが、これはある意味、川中ならではの“現実”であって、一般のそれではない。仕事をセーブしてでも経済的にやっていけた川中。時には十数年という介護生活をする人もいるが、そうではなかった川中。介護が終われば仕事に復帰できる川中。そして気になるのが、こうした体験談が“在宅介護”をあまりに美化し、それを強要してしまうのではとの危惧だ。

 もちろんこうした著名人の体験を広く伝えることには意味もあるだろう。だがそれが単なる美談で終わっては、と思ったら、さすが「自身」。川中記事の後ろにさらなる問題提起の特集が。それが介護認定引き下げ問題に対するレポートだ。

 現在全国で、介護認定更新の審査が厳しくなり、要介護3から2へと格下げされるようなケースが相次いでいるという。さらに今年4月からは「改正介護保険法」が施行され、現実に即していない格下げに拍車がかかると指摘される。その理由は政府が推し進める、介護保険給付金の抑制――。

 高齢化社会、そして誰にでも訪れる介護問題を考える上で、2段仕立てで読んでほしい介護関連の問題提起記事だ。

 司会をやりたい! 近藤真彦が1月6日の音楽番組でこう発言し、ジャニーズファンが激怒しているらしい。なぜかといえば、ジャニーズの司会やバラエティ進出はSMAPが先達者だから。ついでにいえば、SMAP生みの親の飯島三智氏の手腕、功績だから。しかしマッチは、飯島氏を追い出し、SMAPを解散に追い込んだメリー喜多川副社長の“秘蔵っ子”(年は関係ない)。確かにお怒り、もっともです。それにしてもマッチ、現代のジャニーズファンに何かと不評のようで……。

「認知症は不便があっても不幸ではない」VRによる疑似体験で変わるもの

 最近、認知症と見られる高齢者が線路内や踏切内に立ち入り、電車にはねられて死亡する事故が相次いでいる。超高齢化社会に突入した日本は、国内の認知症高齢者が2012年時点で約462万人にのぼり、25年には1.5倍以上の700万人を超えると予想されている(厚生労働省発表)。もはや認知症は、誰にとっても他人事ではない時代になっているのだ。

 認知症になると、方向感覚が低下したり、家族など身近な人を認識できなくなったりするため、日常生活に支障が出てくることもある。現状では完治は難しく、「認知症になったら人生終わり」と思っている人も少なくないだろう。しかし、そうした認識を覆す啓蒙活動を先行している企業や団体も増えている。そのひとつが、高齢者向け住宅を運営するシルバーウッド。同社が手掛ける「VR認知症プロジェクト」では、VR(バーチャルリアリティー)の技術を活用して、認知症の症状や当事者の気持ちを疑似体験することができる。同社がこのプロジェクトを始めた経緯や目的、認知症のある人たちにとって暮らしやすい社会について、代表の下河原忠道氏に話を聞いた。

■従来の高齢者向け住宅に対するイメージを払拭したい

「認知症は重度でない限り、1人で電車も乗れますし、会話もできます。症状の出方はグラデーションで、人それぞれなんです。ただ、時として誰かに教えてもらわないと、自分がいまどこにいるのかわからなくなるケースもあります。じゃあ家に閉じこもっていればいいのか、というと、そんな押しつけはするべきではないし、認知症になったって自分らしく暮らす権利はあります。周囲に迷惑をかけたっていいんです」(下河原氏、以下同)

 こう語る下河原氏は、建築業から介護業に参入。インテリアや内装をはじめ、住み心地の良さを考えたサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀(ぎんもくせい)」を建築・運営する中で、認知症のある人たちに対する社会的心理環境に、さまざまな違和感を抱いたとなったという。

「よくある高齢者施設って、無機質な“ビニールクロスの館”みたいで、こんなところは住みたくないな……という印象しかなかった。認知症は、確かに病気には変わりありませんが、徘徊と呼ばれる行動ひとつとってみても、『当事者の方にとっては散歩なんじゃないのかな……?』 と思いましたし、運営者側の都合で入居者を“きれいな牢屋”に閉じ込めてしまうのは、ちょっと違うんじゃないかという気がします」

 高齢者や認知症の人が、一辺倒な暮らししか選べない現状に疑問を持った下河原氏。そこで、「銀木犀」では全館ヒノキの無垢フローリングを使用、家具や食器も厳選するなど、こだわったという。また、地域にオープンでありたいと、住居内に入居者が店長を務める駄菓子屋を作ったり、住民をおもてなしする趣旨のお祭りを開催したりと、斬新な試みをしている。

 こうした活動を続ける中で、特に課題を感じたのは、認知症の人たちに対して一般の人が抱くイメージだったそう。

「認知症になると、“不便”はあっても“不幸”ではないと思うんです。問題なのは認知症の当事者や家族が生きづらい社会。『認知症になったら人生終わり』という思い込みによる偏見をなくすためにはどうすればいいのかと考えた結果、VRが有効なんじゃないかと。啓蒙活動の一環には、『認知症サポーター養成講座』という約850万人が受講した有名な講座があるんですが、座学では得られないことをVRでは体験できるんじゃないかと思ったんです」

 VR作品の事例としては、電車で行き先がわからなくなるアルツハイマー病や、ないものが見える幻視という症状が特徴的なレビー小体型認知症など、認知症の中核症状を体験できるというものがある。内容は認知症の当事者や介護職員にリサーチの上、組み立てているそう。360度見渡せる臨場感ある映像への反響は大きく、学校や企業からVR体験会の要望が絶えず、1年で約3,500人が参加した。

 体験した人の中には、認知症のある人を家族に持つ人もいたという。

「認知症の親御さんが高齢者住宅に入居していて、近くのコンビニに買い物に行くそうなんですが、物忘れが進行していたので、心配した息子さんが『行っちゃダメだよ』と言い聞かせていたらしいんです。でも、VRを体験し終わってから、『親が買い物に行く楽しみを奪おうとしていた。自分は間違えていました』と話してくれました。その後、コンビニに行って店員さんに親御さんの顔写真を見せて、『これからも買い物に来ると思うので、何かあったら連絡をください』とお願いしたそうです。認知症のある人の生き方を否定することなく、我々が変わることが大事なんじゃないかなって思うんです」

 もちろんきれい事だけではない。スムーズなコミュニケーションが取れないことに、イライラすることだってあるはずだ。それでも、「病人だといって特別扱いをする必要はない」と下河原氏は考える。

 初作品から1年、認知症の中核症状を疑似体験できるものから、最近はストーリー性を重視したものにシフトチェンジしたという。

「認知症の疑似体験だけでは駄目だなと思ったんです。興味のない人たちに『認知症について勉強しよう』と言っても、ハートは動きませんよね。そこで、これからリリースを予定している6話目は、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された丹野智文さんのストーリーを描くことにしました。冒頭は病院で告知を受けるところから始まります。エンターテインメント寄りのストーリーになっていますが、認知症のある人たちがどんな思いを抱えて生きているのか、作品をきっかけに想像力を働かせてもらえたら」

 下河原氏は、VR作品による追体験によって当事者ではない個人の心が動き、ひいては行動が変わっていくと考える。

「大事なのは“迷惑をかけられる側”がどうサポートしていいのかを把握すること。どこに行けばいいかわからなくなっている人が目の前にいれば、全力で何とかしてあげようと接すると思うんです。特に日本には、助け合いの精神が心に根付いていると僕は信じています」

■偏見なく想像力をもって認知症のある人たちに接する仲間が増えること

 差しあたっての目標はあくまでも、たくさんの人にVRで認知症を疑似体験してもらうことだという。

「これからは行政と企業を巻き込んでいきたいと思っています。やはり福祉施設や買い物先など、当事者の生活に密接に関わる現場での啓蒙活動が必要ではないでしょうか。ただ、どうやって収益をあげるか、ビジネスモデルはまだ確立していません。でも、我々のコンテンツをたくさんの人に見てもらえれば、結果はついてくると思います。ゴールは“偏見なく想像力をもって認知症のある人たちに接する仲間が増えること”です」

 今秋には、米サンダンス映画祭のVR部門で作品エントリーを目指しているという。コンテンツのクオリティが評価されることで、ますます注目度が上がることが期待される。個人の認知症リテラシーを高めることが、ひいては認知症の人に優しい社会、そして私たちが生きやすい未来の実現につながるはずだ。
(末吉陽子)

シルバーウッド

「認知症は不便があっても不幸ではない」VRによる疑似体験で変わるもの

 最近、認知症と見られる高齢者が線路内や踏切内に立ち入り、電車にはねられて死亡する事故が相次いでいる。超高齢化社会に突入した日本は、国内の認知症高齢者が2012年時点で約462万人にのぼり、25年には1.5倍以上の700万人を超えると予想されている(厚生労働省発表)。もはや認知症は、誰にとっても他人事ではない時代になっているのだ。

 認知症になると、方向感覚が低下したり、家族など身近な人を認識できなくなったりするため、日常生活に支障が出てくることもある。現状では完治は難しく、「認知症になったら人生終わり」と思っている人も少なくないだろう。しかし、そうした認識を覆す啓蒙活動を先行している企業や団体も増えている。そのひとつが、高齢者向け住宅を運営するシルバーウッド。同社が手掛ける「VR認知症プロジェクト」では、VR(バーチャルリアリティー)の技術を活用して、認知症の症状や当事者の気持ちを疑似体験することができる。同社がこのプロジェクトを始めた経緯や目的、認知症のある人たちにとって暮らしやすい社会について、代表の下河原忠道氏に話を聞いた。

■従来の高齢者向け住宅に対するイメージを払拭したい

「認知症は重度でない限り、1人で電車も乗れますし、会話もできます。症状の出方はグラデーションで、人それぞれなんです。ただ、時として誰かに教えてもらわないと、自分がいまどこにいるのかわからなくなるケースもあります。じゃあ家に閉じこもっていればいいのか、というと、そんな押しつけはするべきではないし、認知症になったって自分らしく暮らす権利はあります。周囲に迷惑をかけたっていいんです」(下河原氏、以下同)

 こう語る下河原氏は、建築業から介護業に参入。インテリアや内装をはじめ、住み心地の良さを考えたサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀(ぎんもくせい)」を建築・運営する中で、認知症のある人たちに対する社会的心理環境に、さまざまな違和感を抱いたとなったという。

「よくある高齢者施設って、無機質な“ビニールクロスの館”みたいで、こんなところは住みたくないな……という印象しかなかった。認知症は、確かに病気には変わりありませんが、徘徊と呼ばれる行動ひとつとってみても、『当事者の方にとっては散歩なんじゃないのかな……?』 と思いましたし、運営者側の都合で入居者を“きれいな牢屋”に閉じ込めてしまうのは、ちょっと違うんじゃないかという気がします」

 高齢者や認知症の人が、一辺倒な暮らししか選べない現状に疑問を持った下河原氏。そこで、「銀木犀」では全館ヒノキの無垢フローリングを使用、家具や食器も厳選するなど、こだわったという。また、地域にオープンでありたいと、住居内に入居者が店長を務める駄菓子屋を作ったり、住民をおもてなしする趣旨のお祭りを開催したりと、斬新な試みをしている。

 こうした活動を続ける中で、特に課題を感じたのは、認知症の人たちに対して一般の人が抱くイメージだったそう。

「認知症になると、“不便”はあっても“不幸”ではないと思うんです。問題なのは認知症の当事者や家族が生きづらい社会。『認知症になったら人生終わり』という思い込みによる偏見をなくすためにはどうすればいいのかと考えた結果、VRが有効なんじゃないかと。啓蒙活動の一環には、『認知症サポーター養成講座』という約850万人が受講した有名な講座があるんですが、座学では得られないことをVRでは体験できるんじゃないかと思ったんです」

 VR作品の事例としては、電車で行き先がわからなくなるアルツハイマー病や、ないものが見える幻視という症状が特徴的なレビー小体型認知症など、認知症の中核症状を体験できるというものがある。内容は認知症の当事者や介護職員にリサーチの上、組み立てているそう。360度見渡せる臨場感ある映像への反響は大きく、学校や企業からVR体験会の要望が絶えず、1年で約3,500人が参加した。

 体験した人の中には、認知症のある人を家族に持つ人もいたという。

「認知症の親御さんが高齢者住宅に入居していて、近くのコンビニに買い物に行くそうなんですが、物忘れが進行していたので、心配した息子さんが『行っちゃダメだよ』と言い聞かせていたらしいんです。でも、VRを体験し終わってから、『親が買い物に行く楽しみを奪おうとしていた。自分は間違えていました』と話してくれました。その後、コンビニに行って店員さんに親御さんの顔写真を見せて、『これからも買い物に来ると思うので、何かあったら連絡をください』とお願いしたそうです。認知症のある人の生き方を否定することなく、我々が変わることが大事なんじゃないかなって思うんです」

 もちろんきれい事だけではない。スムーズなコミュニケーションが取れないことに、イライラすることだってあるはずだ。それでも、「病人だといって特別扱いをする必要はない」と下河原氏は考える。

 初作品から1年、認知症の中核症状を疑似体験できるものから、最近はストーリー性を重視したものにシフトチェンジしたという。

「認知症の疑似体験だけでは駄目だなと思ったんです。興味のない人たちに『認知症について勉強しよう』と言っても、ハートは動きませんよね。そこで、これからリリースを予定している6話目は、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された丹野智文さんのストーリーを描くことにしました。冒頭は病院で告知を受けるところから始まります。エンターテインメント寄りのストーリーになっていますが、認知症のある人たちがどんな思いを抱えて生きているのか、作品をきっかけに想像力を働かせてもらえたら」

 下河原氏は、VR作品による追体験によって当事者ではない個人の心が動き、ひいては行動が変わっていくと考える。

「大事なのは“迷惑をかけられる側”がどうサポートしていいのかを把握すること。どこに行けばいいかわからなくなっている人が目の前にいれば、全力で何とかしてあげようと接すると思うんです。特に日本には、助け合いの精神が心に根付いていると僕は信じています」

■偏見なく想像力をもって認知症のある人たちに接する仲間が増えること

 差しあたっての目標はあくまでも、たくさんの人にVRで認知症を疑似体験してもらうことだという。

「これからは行政と企業を巻き込んでいきたいと思っています。やはり福祉施設や買い物先など、当事者の生活に密接に関わる現場での啓蒙活動が必要ではないでしょうか。ただ、どうやって収益をあげるか、ビジネスモデルはまだ確立していません。でも、我々のコンテンツをたくさんの人に見てもらえれば、結果はついてくると思います。ゴールは“偏見なく想像力をもって認知症のある人たちに接する仲間が増えること”です」

 今秋には、米サンダンス映画祭のVR部門で作品エントリーを目指しているという。コンテンツのクオリティが評価されることで、ますます注目度が上がることが期待される。個人の認知症リテラシーを高めることが、ひいては認知症の人に優しい社会、そして私たちが生きやすい未来の実現につながるはずだ。
(末吉陽子)

シルバーウッド

「認知症は不便があっても不幸ではない」VRによる疑似体験で変わるもの

 最近、認知症と見られる高齢者が線路内や踏切内に立ち入り、電車にはねられて死亡する事故が相次いでいる。超高齢化社会に突入した日本は、国内の認知症高齢者が2012年時点で約462万人にのぼり、25年には1.5倍以上の700万人を超えると予想されている(厚生労働省発表)。もはや認知症は、誰にとっても他人事ではない時代になっているのだ。

 認知症になると、方向感覚が低下したり、家族など身近な人を認識できなくなったりするため、日常生活に支障が出てくることもある。現状では完治は難しく、「認知症になったら人生終わり」と思っている人も少なくないだろう。しかし、そうした認識を覆す啓蒙活動を先行している企業や団体も増えている。そのひとつが、高齢者向け住宅を運営するシルバーウッド。同社が手掛ける「VR認知症プロジェクト」では、VR(バーチャルリアリティー)の技術を活用して、認知症の症状や当事者の気持ちを疑似体験することができる。同社がこのプロジェクトを始めた経緯や目的、認知症のある人たちにとって暮らしやすい社会について、代表の下河原忠道氏に話を聞いた。

■従来の高齢者向け住宅に対するイメージを払拭したい

「認知症は重度でない限り、1人で電車も乗れますし、会話もできます。症状の出方はグラデーションで、人それぞれなんです。ただ、時として誰かに教えてもらわないと、自分がいまどこにいるのかわからなくなるケースもあります。じゃあ家に閉じこもっていればいいのか、というと、そんな押しつけはするべきではないし、認知症になったって自分らしく暮らす権利はあります。周囲に迷惑をかけたっていいんです」(下河原氏、以下同)

 こう語る下河原氏は、建築業から介護業に参入。インテリアや内装をはじめ、住み心地の良さを考えたサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀(ぎんもくせい)」を建築・運営する中で、認知症のある人たちに対する社会的心理環境に、さまざまな違和感を抱いたとなったという。

「よくある高齢者施設って、無機質な“ビニールクロスの館”みたいで、こんなところは住みたくないな……という印象しかなかった。認知症は、確かに病気には変わりありませんが、徘徊と呼ばれる行動ひとつとってみても、『当事者の方にとっては散歩なんじゃないのかな……?』 と思いましたし、運営者側の都合で入居者を“きれいな牢屋”に閉じ込めてしまうのは、ちょっと違うんじゃないかという気がします」

 高齢者や認知症の人が、一辺倒な暮らししか選べない現状に疑問を持った下河原氏。そこで、「銀木犀」では全館ヒノキの無垢フローリングを使用、家具や食器も厳選するなど、こだわったという。また、地域にオープンでありたいと、住居内に入居者が店長を務める駄菓子屋を作ったり、住民をおもてなしする趣旨のお祭りを開催したりと、斬新な試みをしている。

 こうした活動を続ける中で、特に課題を感じたのは、認知症の人たちに対して一般の人が抱くイメージだったそう。

「認知症になると、“不便”はあっても“不幸”ではないと思うんです。問題なのは認知症の当事者や家族が生きづらい社会。『認知症になったら人生終わり』という思い込みによる偏見をなくすためにはどうすればいいのかと考えた結果、VRが有効なんじゃないかと。啓蒙活動の一環には、『認知症サポーター養成講座』という約850万人が受講した有名な講座があるんですが、座学では得られないことをVRでは体験できるんじゃないかと思ったんです」

 VR作品の事例としては、電車で行き先がわからなくなるアルツハイマー病や、ないものが見える幻視という症状が特徴的なレビー小体型認知症など、認知症の中核症状を体験できるというものがある。内容は認知症の当事者や介護職員にリサーチの上、組み立てているそう。360度見渡せる臨場感ある映像への反響は大きく、学校や企業からVR体験会の要望が絶えず、1年で約3,500人が参加した。

 体験した人の中には、認知症のある人を家族に持つ人もいたという。

「認知症の親御さんが高齢者住宅に入居していて、近くのコンビニに買い物に行くそうなんですが、物忘れが進行していたので、心配した息子さんが『行っちゃダメだよ』と言い聞かせていたらしいんです。でも、VRを体験し終わってから、『親が買い物に行く楽しみを奪おうとしていた。自分は間違えていました』と話してくれました。その後、コンビニに行って店員さんに親御さんの顔写真を見せて、『これからも買い物に来ると思うので、何かあったら連絡をください』とお願いしたそうです。認知症のある人の生き方を否定することなく、我々が変わることが大事なんじゃないかなって思うんです」

 もちろんきれい事だけではない。スムーズなコミュニケーションが取れないことに、イライラすることだってあるはずだ。それでも、「病人だといって特別扱いをする必要はない」と下河原氏は考える。

 初作品から1年、認知症の中核症状を疑似体験できるものから、最近はストーリー性を重視したものにシフトチェンジしたという。

「認知症の疑似体験だけでは駄目だなと思ったんです。興味のない人たちに『認知症について勉強しよう』と言っても、ハートは動きませんよね。そこで、これからリリースを予定している6話目は、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された丹野智文さんのストーリーを描くことにしました。冒頭は病院で告知を受けるところから始まります。エンターテインメント寄りのストーリーになっていますが、認知症のある人たちがどんな思いを抱えて生きているのか、作品をきっかけに想像力を働かせてもらえたら」

 下河原氏は、VR作品による追体験によって当事者ではない個人の心が動き、ひいては行動が変わっていくと考える。

「大事なのは“迷惑をかけられる側”がどうサポートしていいのかを把握すること。どこに行けばいいかわからなくなっている人が目の前にいれば、全力で何とかしてあげようと接すると思うんです。特に日本には、助け合いの精神が心に根付いていると僕は信じています」

■偏見なく想像力をもって認知症のある人たちに接する仲間が増えること

 差しあたっての目標はあくまでも、たくさんの人にVRで認知症を疑似体験してもらうことだという。

「これからは行政と企業を巻き込んでいきたいと思っています。やはり福祉施設や買い物先など、当事者の生活に密接に関わる現場での啓蒙活動が必要ではないでしょうか。ただ、どうやって収益をあげるか、ビジネスモデルはまだ確立していません。でも、我々のコンテンツをたくさんの人に見てもらえれば、結果はついてくると思います。ゴールは“偏見なく想像力をもって認知症のある人たちに接する仲間が増えること”です」

 今秋には、米サンダンス映画祭のVR部門で作品エントリーを目指しているという。コンテンツのクオリティが評価されることで、ますます注目度が上がることが期待される。個人の認知症リテラシーを高めることが、ひいては認知症の人に優しい社会、そして私たちが生きやすい未来の実現につながるはずだ。
(末吉陽子)

シルバーウッド

「犬畜生だと思ってた」偏屈オヤジも夢中に――アニマルセラピーがもたらす老後の生きがい

 癒やし効果があるといわれるものには、いろいろな種類がある。音楽や朗読など耳に心地よいもの、アロマテラピーや風や川のせせらぎなど自然に包まれることなど、挙げればキリがない。中でも、ペットとして飼われている犬や猫の存在は、動物好きな人にとって、何よりの癒やし効果を生むだろうということは想像に難くない。

 しかし、犬や猫などの動物に何の関心もない人、嫌いな人に対して、動物は何の効果ももたらさないのだろうか? 長年、東京都世田谷区内の老人ホームなどに動物を連れて訪問し続けているボランティアグループ「アマノ・アニマルセラピーサークル」の代表、天野喜美子氏にお話を伺った。

■飼い犬を連れてお見舞いに行ったのがスタート

——天野さんは、いつ頃からアニマルセラピーの活動をされているのでしょうか? 始めたきっかけは、どういうことでしたか?

天野喜美子氏(以下、天野) アニマルセラピーを始めて、もう20年以上の月日がたちました。最初は、「アニマルセラピー」という言葉も知らないくらいで、単にうちで飼っていた犬と猫をお見舞いに連れて行ったのが始まりです。

 あるとき、知り合いのおばあさんが、入院していた病院からリハビリ施設に移ったと聞いたので、お見舞いに行きました。ちょうどそのとき、同じ施設にいる人と、ささいなことでケンカを始めた場面に遭遇して。施設の職員さんに様子を聞くと、入所している人の多くがイライラしていて、険悪な雰囲気になることがよくあるということでした。それで、何かできないかと思い、「うちのペットを連れてきて良いですか?」とたずねたら、「ぜひ来てほしい」というお話をいただいたので、次にお見舞いに行くとき、わが家で飼っていた犬と猫を連れて行きました。そうしたら、なんとなくその場の空気が和やかになり「また連れてきてほしい」と頼まれて。それでまた伺うことにしました。だから最初は、私ひとりでのスタートでした。

——その後は、どういう活動をされてきたのですか? どんな動物を連れて行かれたのでしょうか?

天野 それからも私ひとりでうちの犬と猫を連れて定期的に訪問していたのですが、ひとりでは間が持てない。そこでお仲間をつくろうと思いました。獣医師で動物病院を経営していた夫亡き後の寂しさもあり、生き甲斐としてアニマルセラピーをライフワークにしようと思っていたので、うちの動物病院に来ていた患者さんや病院のスタッフ、知り合いを誘ったり、近くにある駒沢公園に行って、犬を連れた人にも声をかけました。その頃、私がノーフォークテリアを飼っていたので、同じ犬種を連れた人を誘い、メンバーが少しずつ増えていきました。

 その後は、メンバーの1人が始めたブログを見て参加する人や、世田谷区の区報に載せた告知の効果で人数が増えました。現在、活動としては、20年以上、毎月1回必ず伺っている介護老人保健施設「ホスピア三軒茶屋」のほか、2カ所の有料老人ホームと、年1回、重症心身障害者施設にも訪問しています。

 訪問のときに連れて行くのは、今は犬だけです。以前は猫も連れて行ったことがありましたが、猫はどんなに人になれている子でも、知らない場所に連れて行くと隠れてしまったりするので難しいですね。

——現在、メンバーの方は何人くらいいらっしゃるのでしょうか? また、参加する犬には、特別な訓練を施していますか?

天野 今、サークルのメンバーは27名。いつでも全員が参加するわけではありませんけれど。登録している犬は22頭です。すべてメンバーの飼い犬です。犬たちにはセラピーのための特別な訓練はまったくしていません。ただ、人が好きで性格的に落ち着いた子、嚙んだり、吠えたりしないこと、膝に乗せてもおとなしくしているような子に参加してもらっています。

 特別な訓練をしなくても、犬たちはよく理解しています。訪問したとき、高齢者の方に犬を紹介する際には、必ず「セラピードッグの○○ちゃんです」と言います。そうすると、犬なりに自覚するんです。私がアメリカで作ってきたセラピードッグのユニフォームを犬たちに必ず着せるのですが、それで犬自身もセラピードッグとしてのお仕事モードに入るのか、キリッとしますね。

 また、初めての訪問でも、ほかの犬がやっているのを見て、しっかりマネをします。だから最初でもちゃんとやり遂げることができますね。今まで20年以上の間、人を嚙んだり、何か事故を起こしたりというトラブルは、一度も起きていません。

■動物がいるだけで、高齢者は自然な笑顔に

——メンバーの方たちは、どんな気持ちで参加されているのでしょうか?

天野 長く参加してくれている人、最近参加するようになった人、みんなそれぞれいろんな思いでいるのでしょうが、きっとやりがいを感じてくれているんだと思っています。自分の飼っている犬が、「セラピーに行くよ」と言うと、本当に喜んで行くからです。だから、飼い主であるメンバーも生きがいを持って参加してくれていると思います。

——これまで訪問されて、高齢者の方たちはどんな反応が多いですか?

天野 エピソードは本当にいろいろありますが、だいたい動物好きな方は、以前ご自分が飼っていた犬や猫の話をされることが多いです。今まで動物と触れ合った経験のない方、生まれて初めて犬を触るような方は「こんなに温かいんですね」と感動されたりします。ごはんを食べたことを忘れる方が、犬の名前を覚えているということもあります。

 それから、これは7~8年前のことですが、ある特別養護老人ホームに伺ったとき、「犬は嫌い」とはっきり拒否する方がいました。それが、何度も伺ううちに、だんだん大丈夫になって触れることができるようになりました。また、それまで自分が育った田舎では犬畜生でしかなかったから、ずっとそう思っていたという方からは、初めて犬を抱いて「こんなに気持ち良いとは思わなかった」と言われたりしました。

 また以前、教師をされていたという、絶対に笑顔を見せない、施設のスタッフにも厳しく気難しい性格の方がいました。その方も犬たちと何度も会ううちに、だんだん笑顔が見られるようになったと言って、スタッフさんも驚いていました。本当に動物の持つ力はすごいと思いますね。

——今後はどのように活動をしていきたいと考えておられますか?

天野 今まで20年以上、ずっと無報酬のボランティアで、和気あいあいの楽しいグループとして活動をしてきました。せっかく長く続いているので、私がいなくなっても、このまま続けてほしいと思っています。そのためには、単なるサークルではなく、NPO法人にしたい。そうして、ずっとアニマルセラピーを続けていってもらいたいと思います。

 同サークルが月1度訪れている介護老人保健施設「ホスピア三軒茶屋」の職員は、「わんちゃんが来ると、どの高齢者の方も自然な笑顔になります。天野さんたちがお帰りになった後も、みなさん穏やかに過ごされています」と話す。毎月楽しみにしている入所者も多く、セラピー効果を実感しているそうだ。

(村田泰子)

犬猫が認知症を改善⁉︎ 特養の高齢者にもたらすメリット

 高齢者が老人ホームに入居する場合、通常は同居していた犬や猫とは別れなければいけないことがほとんど。一般的に老人ホームは、ペットの飼育を許可していないからだ。

 老人ホームにもいくつかの種類があり、ペットを飼うことが許されている一部の施設はあるが、最も重度の介護が必要な高齢者の多い特別養護老人ホーム(以下、特養)においてはまず見られないのが現状。そんな中、「さくらの里山科」は、自宅で飼っていた犬や猫とホームに入っても一緒に暮らせる特養として、その名が広まっている。ほかでは類を見ない特養での動物の飼育が、入居者にもたらす影響とは? また高齢者のケアだけでも多忙な介護の現場で、動物の世話もしているスタッフの反応はどうなのか? 同ホームの施設長、若山三千彦氏にお話を伺った。

■できるだけ自宅にいたときと変わらない状態で過ごしてもらう

ーーさくらの里山科は、ペットが飼える特養として知られていますが、全フロアのどこでも飼えるのでしょうか?

若山三千彦施設長(以下、若山) 当ホームは4階建てで、1階は共用部分、2〜4階が居室になっています。こちらはユニット型といって、10の個室が1つのユニットになっていて、特養100名、ショートステイ20名の120名定員ですので、12のユニットがあります。そのうち2階の4つのユニットでペットが飼えます。2つが犬専用、もう2つが猫専用。動物の嫌いな方やアレルギーの方もいるので、3階と4階はペットは入れない通常のユニットになっています。

ーー老人ホームでペットを飼うということは、どなたの発案だったのでしょうか? また、それに対して、職員さんはどういうご意見だったのでしょうか? 実際、そうでなくても多忙なお仕事がさらに増えて、非常に大変なのではないかと思いますが。

若山 ペットを飼うことは、トップダウンで私が決めました。もちろん、それについては職員たちともよく話し合いました。おそらくご存じでしょうが、福祉業界は人手不足で、辞める人も多い。特養に入るような高齢者の方は、自分のことが十分にできない場合が多いですから、結局、ペットの世話は、職員がすることになります。

 世話をする手間を考えると、「できるだろうか?」という思いがあったので、犬猫のいるフロアは志願制にし、動物好きな職員には自分から進んで、そのフロア担当になってもらいました。確かに職員の負担は大きいですし、特に犬のユニットは散歩などもあるので、ボランティアさんにも助けていただいていますが大変です。

 しかし始めてみて意外だったのは、何の不満も上がってこないこと。実際の負担と、職員の感じる負担が違う。世話が大変というより、働く喜びの方が上回っている。ペットフロア担当の職員は、モチベーションが高いですね。

ーーそうして、ペットが飼えることがホームの特徴の特徴として知られるになったのでしょうか?

若山 いえ、そもそも当ホームは、ペットが飼えるということがいちばんの特徴とは思っていません。

 人は誰でも自分の家がいちばんよいでしょう。しかし、高齢の方が、老人ホームへ入ることになった。でも、いざ入ったら外出もできない。旅行や買い物にも行けない。お酒も飲めない。そんな不自由な生活では、生きているのがイヤになるでしょう。

 当ホームでは、自宅にいたときと変わらない状態で過ごしてもらいたい、そこで入居者の方の生活の質をできるだけ維持しよう、と考えています。そのために、外出や旅行も条件はありますが基本的にOK。食事も、ある程度の時間の間で、好きなときに食べられる。起床時間、消灯時間もない。入浴はさすがに職員の全面介助が必要なので、毎日というわけにはいきませんが、一般の特養より多い。要は、可能な限り、自宅と変わらない生活をしてもらえるようにしているのです。ペットが飼えるということも、そのひとつです。

■ペットの存在は、心身ともに良い影響を与える

ーー実際に、犬や猫を連れて入所された方はどのくらいいらっしゃいますか? また現在、ペットは何頭くらいいるのでしょうか?

若山 入居時に連れてこられたペットは、これまでに犬4頭、猫4頭です。意外に少ないと思われるかもしれませんが、実は、こちらに来られる前に、ペットとの暮らしを諦めて過ごしておられた方が多いのです。かわいがっていた子(ペット)が亡くなったが、自分は高齢だからもう飼わない。こちらに入居する前に入ったほかの施設ではペットが飼えなかったから、誰かにあげてしまったなどという方がほとんどです。

 ペットのいるユニットへの入居は、希望者の方のみですが、そんな状況で、飼いたくても飼えず諦めていたペットと、もう一度一緒に暮らせるようにしようということでもあります。そのため、入居者のペットとは別にホームで飼っているペットもいます。

 ちなみに現在、犬が7頭、猫が9頭いて、入居者の方が連れてきた犬は3頭、猫は4頭。あとは保護犬、保護猫を譲渡してもらったホームの子たちです。

ーー実際にペットがいることで、どういう効果があるのでしょうか? 今までどういった実例がありますか?

若山 やはり動物好きな方にとって、ペットの存在は大きいですね。心身ともに良い影響があります。例えば、認知症の進行が遅くなったり、認知症が進んでしまって表情が乏しくなったり、家族の名前がわからなくなっていた方が、お気に入りのワンちゃんの名前を覚えて犬とコミュニケーションを取っていたら、だんだんご家族の名前も思い出し、再び会話ができるようになったり……。

 また、車椅子を使うと生活意欲が低下しがちなのですが、お気に入りのペットを探して、車椅子を自分で動かしてあちこちに行くことで、良い運動になっているケースもあります。

 それから高齢になると筋肉の拘縮が起こりやすく、腕などが動きにくくなる傾向がありますが、犬や猫がそばに来るからなでようとして腕を動かしていたら、動くようになってきたなどということもあります。

 昨年、ワンちゃんと入居された方は、体が動かなくなる病気で、自宅ではほとんど這って移動しているような状態でしたが、愛犬のことを考えて、どこにも行きたくないと、施設行きを拒否されていました。しかし、当ホームでは最期まで一緒にいられると聞いて、安心して入居されました。その後、こちらで適切なリハビリを受けられたこともあって、体の機能もかなり回復しています。

 もちろん、認知症や体の症状が大きく改善されるまでのことはありませんが、このようなわずかな変化であっても大きな意味があります。

ーー今後、ペットの飼えるフロアをもっと増やすなどのプランはおありですか?

若山 今は特にそういったプランはありませんが、いずれニーズがあればそうなるかもしれません。

 動物好きな方は、ペットがそばにいるだけで認知症の症状が改善されたり、心身の状態が良くなったりします。それが、旅行が好きな方なら、旅行に行くと元気になったり。ミュージックセラピーなどの例もあるように、音楽なども良い影響があります。要するに好きなことがいちばん、心と体に良い影響があります。

 ですので、今後もペットに限らず、入居者お一人おひとりのニーズに応えていくこと、生活の質を上げることをいちばんに考えていきたいと思っています。
(村田泰子)

社会福祉法人 心の会 特別養護老人ホーム「さくらの里山科」