羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「飲み友達です」高橋由美子
「週刊文春 3月22日号」(文藝春秋、動画)
芸能人がバラエティ番組に出る際は、キャラという“お土産”が必要になるが、そのキャラが必ずしも事実である必要はない。例えば、山口もえといえば、おっとりした口調を思い浮かべる人も多いだろうが、夫である爆笑問題・田中裕二やマネジャーから、いろいろな番組で「プライベートはすごく早口」と暴露されている。実際の自分とキャラが違っても、番組の中できっちり全うすればよいし、そのキャラが定着することで、違う展開も期待できる。
女優・観月ありさ、島崎和歌子、遠野なぎこなど、芸能界には酒豪を名乗る女性芸能人がたくさんいる。鈴木砂羽や水野美紀のように、“男前”“おっさん”といったキャラを自称する女性たちも大酒飲みだそうだ。飽和状態である“酒豪市場”に、“20世紀最後の正統派アイドル”こと高橋由美子が参戦した。
今年の1月2日放送の『今夜くらべてみました 元旦から生放送3時間スペシャル』(日本テレビ系)に酒豪キャラとして出演した高橋は、終始ハイペースで酒を飲んでいたが、私には高橋が酒豪とは思えなかった。
酒豪キャラを掲げてテレビに出たからには、たくさん飲んでもケロリとしているか、飲んで面白いことを言うなどが期待されるが、実際の高橋は飲みすぎて呂律が回っておらず、今年の運勢を占いにやってきたゲッターズ飯田に抱き着き、最終的には飲みすぎてスタジオから退場している。プライベートならそれで構わないが、画面から消えてはプロとしては失格ではないだろうか。高橋は酒豪というより、さみしがりで流されやすい人に、私には見えた。
その高橋の不倫が「週刊文春」(文藝春秋)にスクープされた。高橋は完全にノーガードだったようで、渋谷で既婚男性と痛飲した後、タクシー移動で歌舞伎町のラブホテルに入り、昼すぎにチェックアウトする姿を撮られている。「文春」記者に直撃され、男性との関係を尋ねられた高橋は「飲み友達です」「私、もっといろいろやってっから」と気色ばんでいたが、いい大人の柄の悪さが物悲しく感じられた。
ところで、酒豪キャラとしてバラエティに出る女性芸能人はいても、男性芸能人はいないのはなぜだろう。その答えになり得るのが、今、森友学園問題で話題の安倍昭恵夫人のエピソードである。彼女が初めてファーストレディーになった時、話題になったのが、その酒豪ぶりだった。森永製菓の社長令嬢にして、首相夫人というセレブリティーが酒好きであることは、「気取っていない」「ざっくばらん」と好意的に受け止められていた。当時、安倍首相は潰瘍性大腸炎を患っていたこともあり、飲酒できない安倍総理の代わりに、夫人が地元の支援者とノミニケーションを行っていると書いた週刊誌もあった。
しかし、流れは変わる。昭恵夫人はミュージシャン・布袋寅泰の大ファンであり、酔った夫人が電話で布袋を呼び出し、しなだれかかったり、首筋にキスをしたと「女性セブン」(小学館)が報じたのだ。この騒動をきっかけに、総理と昭恵夫人の不仲説、また「出たがり」「芸能人好き」といったバッシングが勃発した。
昭恵夫人の行動は、酒豪キャラの条件を明示しているのではないだろうか。酒豪キャラはまず社会的地位など、人からあこがれられるものを持っていなければならない。普段なら一般人には手の届かない人が、“酒を飲む”際は、一時的にこちら側に近づいてきてくれるところに、意味がある。アルコールの力で多少理性が緩む姿が見られるのも魅力だろう。けれど、いくら酒を酌み交わしても、簡単に深い仲になっては、単に「酒に飲まれている人」「酒の飲み方を知らない人」になってしまう。
つまり、酒豪キャラは恵まれていて、持たざる者にも優しいが、簡単に男女の仲にはならない、しっかりした貞操観念を持っていなくてはならないわけだ。酒豪キャラを自称する女性芸能人が美人ばかりなのは、美貌や性的魅力など“あこがれられるもの”がないと成立しないキャラだからである。
男性を形容する言葉、例えば“男前”を自称する女性芸能人に必要なのは、モテることと書いたことがあるが、酒豪キャラはさらに強固な貞操を必要とする。
手が届きそうだけど、ヤらない、もしくはその現場を撮られない。酒豪キャラは、ある意味、究極の清純派アイドルと言えるのではないだろうか。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
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