羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「さっきからモニターが気になって」有村藍里
『有田哲平の夢なら醒めないで』(TBS系、5月16日)
「拡大解釈」という言葉をご存じだろうか。その名のごとく、文意を自分の都合で広げ、ねじまげて解釈してしまうことを指す。例えば、職場の先輩に「ここを直しておいてね」と指示されたとする。多くの人は、そのまま実行するが、拡大解釈する人は「先輩にダメ出しされた」というふうにニュアンスを変えてしまう。
女性にとって、一番身近な拡大解釈マターは、“ブス”ではないだろうか。男尊女卑傾向の強い国は、女性の美醜にうるさいと聞いたことがあるが、日本もそういった傾向があると言えるだろう。美をウリにする芸能人はもちろん、政治家、コメンテーターや作家、アスリートなど、人前に出る職業の女性は、美が本業ではないのにもかかわらず、美人もしくはブスかを取りざたされる。男性が女性の外見にうるさいことは言うまでもないが、女性でも「ブスとは友達になりたくない」と公言する人はいるし、ブスを攻撃対象にする人はいる(以前も書いたことがあるが、ブス嫌悪が強いのは、男性ではなく女性だと私は思っている)。
ダニエル・S・ハマーメッシュの『美貌格差―生まれつき不平等の経済学』(東洋経済新報社)によると、美人とそうでない人の生涯賃金格差は2700万円だそうで、ブスであることは不幸とは言いきれないものの、不利に働くことはあると言えるだろう。
ブスでいたくないという気持ちは、拡大解釈を起こさせるに十分な原因となるのではないか。世の女性は、美人とブス、そのどちらにも属さない「普通」の3種類に分けることができ、恐らく割合としては、普通の人が一番多いだろう。しかし女性の中には、自分がブスであることへの恐れが転じて、「美人と言われないのは、ブスということだ」と拡大解釈している人が多いように感じる。
■須田亜香里の試着エピソードは被害妄想的?
5月16日放送の『有田哲平の夢なら醒めないで』(TBS系)は、「おブス女子の愚痴」として、タレント・有村藍里、SKE48・須田亜香里らが出演し、おブスであることによる苦しみを訴えた。カネが取れる外見だからこそ芸能人になれたので、彼女たちがブスであるはずがない。しかし、美人やブスというのは、結局は隣にいる人との比較なので、容姿レベルの高い集団に行くほど、劣等感を持ちやすくなる側面はあるだろう。
しかしながら、やっぱり考え方が偏っているというか、拡大解釈もしくは被害妄想の気配も感じられるのである。同番組で須田は、洋服の試着を頼んだら、店員にドン引きされたことを「ブスだから」と説明していた。司会のくりぃむしちゅー・有田哲平、フリーアナウンサー・高橋真麻はそれぞれ「被害妄想強すぎ」「店員は、売り上げを上げることしか考えていないから、ブサイクだろうが、ブサイクでなかろうが関係ない」と須田の解釈が偏っていることを指摘していたが、私が興味深かったのは、須田の「SNSに載せたら見る人も多いのに、そんな扱いしていいんですか?」という発言だった。須田は、“自分は現役アイドルで影響力もある存在なので、一般人の何倍もいい接客を受けられるはず”と思っているのだろう。しかし、それがかなえられないのは“ブスだからだ”と関連付けたのではないだろうか。相手に対する要求が高すぎると、それがかなわなかったときに傷つき、その理由を探す。そして結果として、解釈を自分都合でねじ曲げ、被害妄想的になってしまう気がするのだ。
また、女優・有村架純の姉である藍里も、思考回路に偏りを感じる。藍里は「架純に似るから」という理由で、鼻の下に縦線を入れるメイクをしているという。藍里は「遺伝子的にも、妹が私の中での可愛いの最上級。なれそうな位置」と妹に似せる理由を説明していたが、芸能界に“有村架純”は2人もいらないことを考えると、その行為に意味があるとは思えない。芸能界にはいろいろなタイプの美人が必要なのに、藍里は「美人とは有村架純のこと」と決めつけていないだろうか。彼女は、脳内に架純を棲まわせ、その架空の架純によって苦しめられているように感じられるのだ。有田は藍里を「普通に可愛いよ」と褒めていたが、藍里自身は、「架純より可愛い」と言われたい、架純に勝ちたいと、常に思っているような気がしてならない。
同番組では、人気占い師のしいたけがゲストにアドバイスをするのが恒例で、藍里に「30歳からは逆転現象が起きる」といった具合に、“いい話”をしていた。しかし、それに対する藍里の感想は「さっきから、モニターが気になって」「ブスすぎる」。病的に悩む素振りを見せつつも、人の話を全然聞かないのも、ブスに悩んでる女性あるあるの1つだろう。それはさておき、バラエティという妹のいない世界でせっかくつかんだチャンス。ぜひ藍里には頑張ってほしい。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの」