羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「お前の自撮りで頑張れると思っているのか?」HKT48・指原莉乃
「痛快TVスカッとジャパン」(フジテレビ系)
とんねるず・石橋貴明が自らの看板を下ろそうとしている。
7月1日放送の『石橋貴明のたいむとんねる』(フジテレビ系)に出演したYOUに、妻である女優・鈴木保奈美を好きになった理由を聞かれた石橋は、「すげー食べるから、おごり甲斐がある」と答えていた。それなら、ギャル曽根も好きなのだろうか。石橋は、自身の女性の好みについて、盟友・秋元康から「おまえは本当に系列が一緒」と言われたそうだが、確かに共通点はある気がする。
番組名は失念したが、石橋は「JJ」(光文社)の表紙モデルが好きで、「こういう、いいところのお嬢さんと付き合いたい」「自分を見下してる美人に言うことを聞かせたい」などと言っていた。全盛期の石原真理子(お父さんは社長で、田園調布に住み、聖心女子学院に初等科から通うお嬢さま)にもあこがれていたという。石橋は後藤久美子とウワサになったこともあるが、「はっきり物を言う美人」が好きなのだろう。
そんな石橋は、自分が「美人ではない」と思った女性芸能人への外見イジりが激しい。『うたばん』(TBS系)に友近が初めて出演した時も、ネタについてはコメントせず、ずっと「足短け~」と言っていた。芸人としてのネタよりも、美醜をイジる。それが石橋のスタイルで、それで笑いも取れていた。
しかし、時代は変わりつつある。石橋がかつて『とんねるずのみなさんのおかげです』(フジテレビ系)で、散々「ブス」とイジった山崎夕貴アナが、「週刊文春」(文藝春秋)主催の「好きな女子アナランキング」で9位にランクインし、フジのアナでは最高位を記録。山崎は石橋のタイプではないと扱われていたが、一般人には好まれるようだ。石橋の好みである“都会の裕福な家庭に育った、ツンとした美人”タイプの女子アナは、今の時代には合っていないと見ることができるだろう。オトコ芸人も、女性をブスイジりすることは、自分の好感度を下げる要因になると気づきつつある。それでは、石橋の築いた“ブスイジり”という芸自体が消えるのかというと、そんなことはない。すごい後継者が現れた。HKT48の指原莉乃である。しかも、美醜だけに着目した石橋より、ブスイジりが巧妙になっているところが、すごい。
7月2日放送の『痛快TVスカッとジャパン』(同)に出演した指原は、嫌いなオンナについて質問され、「ワールドカップで『日本代表がんばれ!』って一言と共に、自撮りを載せるオンナ」と答え、「その気持ちが日本代表に届くのか? お前の自撮りで頑張れると思っているのか?」と続けた。SNSユーザーにとって、ワールドカップのようなイベントは格好のネタであり、あまり深い意味はないと思うのだが、指原はこの「時事ネタ」の投稿に対し、2種類の嫌悪を感じたのではないだろうか。1つめは、一般人が芸能人気取りで日本代表メンバーを応援する滑稽さ、2つめは、自分が日本代表メンバーの士気を高めるほど価値の高い存在であるという自意識だ。確かに一般人の全ての応援投稿を日本代表メンバーが見ているとは考えにくいので、指原の指摘は正しいだろう。しかし、こういう言い方で一般人を笑っていいのは、同じポジションの人、つまり一般人女性ではないだろうか。
指原のようなトップアイドルがこれを言うと、一般人をバカにしているように見えてしまうし、自撮りを添えて日本代表を応援する“自意識”を腐しているようにも見え、もっと単純に「美人でもないのに、ブスがはしゃぐな」という意味の言葉に取れなくもない。しかし、ブスイジりが好意的に受け入れられていた全盛期の石橋同様、現在の指原はバラエティで無双である。指原が過激なことを言うほど、番組が盛り上がるという図式ができつつある。
■指原のブスイジりはここがすごい!
指原のすごいところは、「やりっぱなし」にしないところである。指原は番組放送後、自身のインスタに、出身地である大分県のサッカーチーム、大分トリニータのユニフォームを着た「自撮り」をアップし、「日本代表ガンバレ~!」と言葉を添えた。そして「#お前の自撮りじゃ頑張れない」「#ロシアまで届かない」「#都内出られない」というハッシュタグまで添えてみせたのだ。
一般人をバカにしたままでは悪いから、嫌いなオンナ、つまり自意識がブスなオンナをあえて演じ、「私の自撮りは、ロシアまで届かないどころか、都内を出られません」と自虐して見せたのである。一般人を斬るだけでなく、さらに強く自分を斬ることでバランスを取り、文句を言わせないようにしているのだろう。
SNS上のイヤなオンナネタは、今や指原の十八番と言っていいのではないか。イヤなオンナの個人名をあげる必要はないので、自分の評判を下げることなく、悪口が言えるからだ。自意識が強い、もっと言うと、自分以外好きではないといった若い世代にはウケることだろう。
しかし、長い目で見ると、どうなのだろうか。芸人の横澤夏子も、よくイヤなオンナネタで登場するが、指原も横澤も「文春」が企画する「女が嫌いな女」にランクオンしている(2017年版で、指原は12位、横澤は30位)。人気があるだけに、アンチも多いと言うこともできるだろうが、ある程度の年齢だと予想される「文春」読者層には、必ずしも「オンナの悪口」が受け入れられていないと見ることもできるのではないだろうか。
悪口は一種のエンターテインメントなので笑いを起こすが、人は笑っているようで、「この人、ほかの場所では私のこと悪く言っているんだろうな」とシビアに見ているものである。人は悪口を言うのは好きでも、悪く言われるのは大嫌いだからである。
こんなことを、賢い指原が気づかないはずがない。次にどんな凝った“ブス斬り”を仕掛けてくるのか、怖いような楽しみなような気分である。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
ブログ「もさ子の女たるもの」