羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな芸能人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の芸能人>
「面倒くさいよな、あいつって」若林正恭
『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送、1月7日)
テレビを見ていると、「この人、気難しいんだろうな」と思わされる芸能人が時々いるが、私から見て、ずば抜けて気難しそうなのが、お笑い芸人・オードリーの若林正恭である。
2008年の「M‐1グランプリ」2位受賞を皮切りに、オードリーは快進撃を続けている。ツッコミの若林は、16年の『IPPONグランプリ』(フジテレビ系)で初優勝したほか、映画『ひまわりと子犬の七日間』で第37回日本アカデミー賞話題賞を受賞、また『社会人大学 人見知り学部卒業見込み』(KADOKAWA)を上梓するなど、お笑いにとどまらず幅広い分野で活躍している。そんな若林は、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)で、「人見知り芸人」「女の子苦手芸人」「マイナス思考芸人」の回に出演するなど、テレビでは、非リア充のキャラで通している。
しかし、『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)を聞いていると、気弱な非リア充どころか、独特の扱いづらさに気付く。1月7日放送回で、若林は後輩芸人・オリエンタルラジオの藤森慎吾が疎ましくなった出来事について語っていた。
藤森の「グイグイ来てくれる感じが好き」と思って親しくしていた若林だが、収録の本番前に、若林が高級車・ランドクルーザーに乗っていることについて、「若林さんが、ああやってデカい車に乗ってるのダサいっす」といじってきたという。藤森は「若林さんはプリウスとか、そういうのでいいんすよ」と言っていたそうで、若林は「俺はいいのよ、ランドクルーザーに乗って笑われるのは。ちんまいし(小さいし)、俺みたいな地味なキャラがデカい車乗って」とその指摘に理解を示しつつも、「本番前に、藤森みたいなもんに受け身取るフリしたくない」と不快感をあらわにしていた。相方の春日俊彰が、「本番前のタイミングだから、面倒に感じたのでは?」と尋ねたが、若林は「本番後に同じことを言われても面倒くさい」と答えていたので、よっぽどカチンと来たのだろう。
この愛車についてのエピソードは、15年5月放送『アメトーーク!』の「マイナス思考芸人」でも披露している。
車が好きで念願のランドクルーザーを手に入れた若林だが、「売れない頃からつきあいのあるスタッフに、『昔はオーディションに原付で来ていたのに、偉くなったもんだ』と思われたくないから、バレないように駐車場の柱から柱へ、そそくさと移動している」と話して笑いを誘っていた。
トーク番組のエピソードは誇張があって当然。その真偽を探るのは無粋だが、芸能界のような数字が全ての世界では、スタッフが売れない人に注意を払う可能性は非常に低い。芸人に限らず、売れなかった時代、テレビ局に行く交通費にも困っていた芸能人が、売れたら高級車を買うケースもよく聞く。つまり、若林の変化は“大変よくあること”であり、スタッフの誰も気にも留めていないと私は思う。自意識の空回りと見ることもできるのだろうが、若林の場合、独特の“意固地さ”を感じるのだ。
その“意固地さ”は『アメトーーク!』の同じく「マイナス思考芸人」の回によく表れていた。「理解できないこと」というお題に、若林は「現場に犬を連れてくる人」と回答。加藤浩次も、『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)で、仕事場に犬を連れてくる芸能人を批判したが、加藤と若林では、その理由がまったく異なる。加藤が「スタッフに余計な仕事をさせることになるから」と、周囲の負担を増やすことを批判の理由に挙げた一方、若林は「犬を仕事場に連れていって結果が出せなかったら、仕事に集中しろと批判されることは目に見えている。よっぽど自分に“自信”があるんだなと思い、自分には理解できない」と述べていた。つまり、若林が気にしているのは、自分と相手の力量の差、突き詰めると自分と相手の力はどちらが上か下かという“上下関係”といえるのではないだろうか。
そう考えると、若林がランドクルーザーを乗っていることを知られたくない気持ちと、藤森に対してヘソを曲げた件が、つながってくる。若林が高級車に乗って「偉くなったと思われたくない」と感じてしまうのは、自分より“下”だと思っていた相手が、何らかのきっかけで高級車に乗っているのを、若林自身が苦々しく見つめた経験があるからではないだろうか。他人を批判的に見るから、自分もそう見られているに違いないと思い込み、その考えから逃れられなくなるということは、よくあることだ。「高級車に乗る自分は笑われているかもしれない」という思い込みがあるところに、自分より“下”だと思っている藤森がそこを突いてきたので、必要以上に不快に感じたように私には見える。
「面倒くさいよな、あいつって」と藤森に対する不快感を露わにした若林だが、温和に見せて、上下にうるさいあなたも、かなりの面倒くささですよと申し上げたい。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、最新刊は『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。
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