男尊思考の強い『バイキング』が低迷――坂上忍に「物言える」女性コメンテーター候補を考える

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「言えよ」野々村友紀子
『今夜くらべてみました』(日本テレビ系、5月8日)

 「女性セブン」(小学館)が、『バイキング』(フジテレビ系)の視聴率が低下していると報じた。同誌によると、視聴率が好調だった『バイキング』だが、『ヒルナンデス!』(日本テレビ系)に3月の視聴率は全敗、4月もほとんど負けているという。麻薬取締法違反で、電気グルーヴのピエール瀧が逮捕された際、相方である石野卓球のツイートを否定的に報じたり、電気グルーヴの曲を配信したサイトを売名扱いしたことがきっかけとなったのではないかと、同誌は分析している。

 ちょっとしたことで流れが変わってしまうのは、芸能界やテレビ界の怖さかもしれないが、『バイキング』の低迷は、ある種の“積み重ね”の結果ではないかと私は思っている。昼の12時という時間帯から考えて、主婦が主たる視聴者と言えるだろうが、『バイキング』は、男性コメンテーターのキャラは濃いにもかかわらず、女性コメンテーターは目立たない。それは、女性コメンテーターのコメント力に問題があるというよりも、番組側が、はっきり物を言わない女性タレントを好んで起用しているのではないかと思えるほどだ。

 昨年、財務省の事務次官(当時)が「森友問題」に関して取材を行った女性記者にセクハラを働いたことがあった。要は、事件のことをしゃべってほしければ、セクハラを受け入れろと交換条件を出されたわけだが、『バイキング』火曜レギュラー・柳原可奈子は、「それがセクハラだと(私は)気づかなかった」「もっとうまく切り抜けられなかったのか」とコメントしただけで終わってしまう。また、映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインへのセクハラ告発に端を発した「Me Too運動」を取り上げた際、水曜レギュラー・松嶋尚美は、ゴールデングローブ賞授賞式の女優のファッションを取り上げ、「おっぱいが半分見えてるような服はやめた方がいいんじゃないの?」コメント。パーティーで肌を見せることはマナー違反ではないし、「露出しているのだから、セクハラをしていい」と思っているのだとしたら、見当違いも甚だしい。

 司会者というのは、基本的に意見を言わない、もしくは中立の言動を取る立場なはずだが、『バイキング』のMC・坂上忍は、そうとは言えないのではないだろうか。自分の意に染まない意見だと表情が渋くなって食ってかかったり、もしくは自分と同じ意見が出るまで誘導することもある。メインの司会者に「こうコメントほしい」というひな形がある限り、出演者はその意に添わなくてはならないのだろう。視聴者のためでなく、坂上のための番組になってしまうと、視聴率が落ちてもむべなるかなである。

 坂上は、女優・斉藤由貴の不倫騒動の際には、「不倫の師匠」と褒め殺しながら、一方で渡辺謙に関して「謙さんほどの人でも、不倫しちゃダメなの?」と発言したことがある。そんな男尊思考の強い『バイキング』をてっとり早く盛り上げるとしたら、新しいレギュラー女性コメンテーターを入れることではないだろうか。ゴリゴリのフェミニストを入れると、坂上やほかの男性陣と完全に対立して収拾がつかなくなり、バラエティーの枠に収まらない。番組を盛り上げつつ、男性とは違う立場から物を言える人。そう考えたときに、頭に浮かぶのが、元お笑い芸人で現在は放送作家をしている野々村友紀子である。

 野々村の夫はお笑い芸人・二丁拳銃の川谷修士。川谷の相方、小堀裕之は4児の父であるが、家にカネを入れず、本業のお笑いそっちのけで、音楽活動をしている。そんな小堀に対し、野々村が「弾き語るな」と説教をする姿は、『人生が変わる1分間のイイ話』(日本テレビ系)で繰り返し放送されている。説教は「偉そう」という印象を与え、自分のイメージを落とすことにもなりかねないが、元芸人だけあって、どこかおかしさを含んでいるので、角が立たない。2児の母というポジションもお昼の番組にぴったりだろう。

 そして彼女の最大の武器は、「ガツンと物が言える」ことではないだろうか。

 芸人の世界は、性別を問わず、先輩後輩という上下関係が厳しいという。二丁拳銃・小堀が野々村の説教を受け入れるのは、番組の企画だからということもあるが、野々村が芸人として先輩であるからだろう。

 5月8日に野々村が出演した『今夜くらべてみました』(同)の司会は、フットボールアワー・後藤輝基とチュートリアル・徳井義実で、彼らも野々村の後輩である。SHELLYや指原莉乃も司会者という立場ではあるが、芸歴や年齢から、男性司会者の発言力の方が強くなりやすい。しかし、野々村は男性陣の先輩であるために、強く物が言える。

 同番組では、ギャル曽根が、ディレクターである夫とのメールのやりとりを公開。夫が浮気をしていると思い込んでいるギャル曽根は、メールに返事をしない夫に対して、何度もメールを送る。すぐに返事が来なかったことに加え、物の言い方がぶっきらぼうであることから、ますます浮気を疑ってしまうそうだ。後藤は、夫の心情について「仕事中でイライラしている」と説明し、いつもなら、このあたりでオチがつくが、野々村は「心配してる奥さんの気持ちを汲み取ってあげないといけない」とギャル曽根の味方をし、後藤に対しても「(ごめんねと)言えよ」と促すのだ。

 徳井に対しても同様で、「洗濯洗剤を買ってきて詰める」といった名もなき家事を、「徳井くんも、やらなあかん」と言う。上下関係がはっきりしているだけに、後藤も徳井も素直に「はい」というしかない。アイドルや女優にはできない芸当だし、かつ視聴者にとって男性司会者が怒られている姿は、新鮮ではないだろうか。

一方で野々村は、女性に対しても、言う時は言う。メールがしつこく感じられたのだろう、ギャル曽根の夫が、会議中の写真とともに「いい加減にしてくれ」という言葉を添えてきた。それでも疑うことをやめず、写真からあれこれ推測を繰り返すギャル曽根に対し、野々村は「なんのトリック暴いてる?」と婉曲にばかばかしさを伝えている。ここで「あんたもしつこい」と直接的な言葉を使わないところに、技を感じる。

 90年代の終わりにテレビの世界に、熟女タレントブームが起きて、デヴィ夫人や亡くなった野村沙知代さんなどが重宝されたことがあった。離婚や夫の不倫、借金に悩む女性たちに対し、激しい人生を送ってきたこの時代の熟女たちはオンナを叱った。しかし、現代は野々村のように、男女両方に対して物が言える熟女が求められているのではないだろうか。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

オードリー・春日俊彰、「公開プロポース」のリスクと婚約者に与えるメリット

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「キャバクラとクラブのVIPルーム行って」オードリー・若林正恭
『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送、4月28日)

 芸能人の仕事を、1分1秒でも長くテレビに映って、顔と名前を売る職業だと仮定した場合、プライベートをネタにすることもアリだろう。そういったネタの一つとして、芸人が番組で交際中の女性にプロポーズをすることがある。長時間テレビに映る上に、感動的なプロポーズができる。好感度も上がることを見越しての決断だろうが、実はこの公開プロポーズ、芸人側にリスクのある行為ではないだろうか。

 オードリー・春日俊彰が4月18日放送の『ニンゲン観察バラエティ モニタリング3時間スペシャル』(TBS系)で、交際歴10年以上の一般人女性にプロポーズをした。春日といえば、ブレークした後も、家賃3万9,000円のアパート住まいを続け、清涼飲料水は買わず、貯金に励んでいることを公言しているが、ケチなのは芸風ではなく真実らしい。春日の日ごろの金銭感覚は、女性いわく、「特急料金を払う意味がわからないから、鈍行で行く」「ホワイトデーのお返しをくれないので、バレンタインのチョコを送るのをやめた」といった具合で、徹底した“しぶちん”を貫いている。

 愛情表現をすることも少なく、番組いわく“奥手”な春日が、ひそかに猛特訓して、ゆずの「栄光の架け橋」をピアノ演奏し、手紙を読む形でサプライズのプロポーズを決行した。交際が5年を過ぎ、女性の方から「結婚はどう考えているの?」と聞かれることが増えても、春日は回答を避けていたようだ。その煮え切らない態度を振り返って、春日は「不安にさせて、悲しくさせて、つらい思いをさせてごめんなさい」「好きな人を一生幸せにする覚悟が生まれるまでに、10年もかかってしまいました」と、その理由を説明する。結婚から逃げていたのではなく、むしろ結婚を真剣に考えるからこそ、踏み切れなかったという理由は、特に若い女性に刺さるのではないかと思っていたが、果たしてそうだった。SNSでは「感動した」「プロポーズのために、指輪を買ってピアノも練習してくれるなんて」と、春日に好感を持ったという20代女性のコメントが見られた。

 私の感想はというと、「こういうのがプロポーズの標準だと若い女性が思い込んでしまったら、大変だろうな」である。春日のプロポーズは、テレビで放送する、つまりは仕事だから、裏方も出演者も本気で感動を作り上げる。視聴者が胸を熱くするのは、春日の人柄というより、プロの技によってではないだろうか。公開プロポーズをしたタレントは、裏方の尽力もあって、「いい人なんだ」と好感度を上げることができるが、プロポーズ成功後は、一人でその好感度をキープしなければいけない(スタッフは助けてくれない)という新たなタスクを背負わなくてはならない。

 春日は、早速しくじってしまう。「フライデー」(講談社)が、感動的なプロポーズを成功させた春日の“裏切り”を報じた。プロポーズする10日前、春日は飲み会の後、アパートに金髪の一般人女性を招き入れていたそうだ。同誌によると、この女性とは半年前から何度も密会していたという。

 春日は浮気を認めた。4月28日放送の『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)では、相方の若林正恭に「頭イカれてんの?」「(ここ数年の春日は)キャバクラとクラブのVIPルーム行って、オレの一番嫌いな芸能人の染まり方(をしていた)」、また電話出演した婚約者には「気持ち悪い」となじられていた。SNSでも「失望した」「だまされた」というような内容のコメントが多数見られたのだ。公開プロポーズは、視聴者を感動させて好感度を上げた分、信頼を裏切るような行動を取ると、好感度が下がるばかりか、「嘘つき」の称号まで授かってしまうというリスクがあるのではないだろうか。

 婚約者は、10年待ってやっとプロポーズされた後、すぐに浮気が発覚して、深く傷ついただろう。しかし、私に言わせるのなら、公開プロポーズでクビがしまったのは春日だから、婚約者は安心していいのではないか。

 公開プロポーズしていなかったら、そもそも写真週刊誌の記事が出ることもなかったのかもしれないが、非公開のプロポーズの後に、浮気問題が発覚した場合、二人がケンカ別れしてしまう可能性もないとは言えないだろう。しかし、テレビでプロポーズした以上、ハッピーエンドにしないと番組に迷惑をかけるから、破談を避けたいのは春日の方であるはず。最近の風潮から考えて、結婚後に不倫をしたら芸人生命が終わりかねない面もあるのだ。

 付け加えると、いくら人気芸能人とは言っても、春日と不倫したい女性もごくごく少数はではないだろうか。2016年放送の『ナカイの窓』(日本テレビ系)で、どきどきキャンプ・佐藤満春が、春日の相席居酒屋やキャバクラ通いを暴露していた。春日行きつけのキャバクラのキャストも、その番組に出演していたが、「割引チケットを必ず使う」「女の子にお酒を飲ませない」そうで、相変わらずケチらしい。その頃と今の遊び方が同じとは限らないものの、キャバ嬢たちは客にカネを使ってもらうのが仕事だから、お金を持っているのに使おうとしない春日は「がっがりな客」だろう。『モニタリング』で、婚約者は「(人気芸人なので)女優さんとも付き合えたかもしれないのに、(家賃の安いアパートに住むなど)変わらないところがいい」とも言っていたが、ここまでケチだと、女優の方から願い下げされるだろうし、一般人女性でも、春日のケチぶりについていける人は少数のように思う。

 10年も結婚の話から逃げていたり、キャバクラに通うカネはあっても、交際相手にはカネを使わないというのは、正直、婚約者のことをナメていた部分があると私は思うが、公開プロポーズをした結果、春日は婚約者を裏切れないところまで、追いやられたのである。結婚願望のある30代の女性を10年も待たせるのは本当に酷なことだが、女性側もやはり春日と離れがたかったのだろう。10年も待たされた分、どうか楽しい結婚生活を送っていただきたいものだ。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

オードリー・春日俊彰、「公開プロポース」のリスクと婚約者に与えるメリット

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「キャバクラとクラブのVIPルーム行って」オードリー・若林正恭
『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送、4月28日)

 芸能人の仕事を、1分1秒でも長くテレビに映って、顔と名前を売る職業だと仮定した場合、プライベートをネタにすることもアリだろう。そういったネタの一つとして、芸人が番組で交際中の女性にプロポーズをすることがある。長時間テレビに映る上に、感動的なプロポーズができる。好感度も上がることを見越しての決断だろうが、実はこの公開プロポーズ、芸人側にリスクのある行為ではないだろうか。

 オードリー・春日俊彰が4月18日放送の『ニンゲン観察バラエティ モニタリング3時間スペシャル』(TBS系)で、交際歴10年以上の一般人女性にプロポーズをした。春日といえば、ブレークした後も、家賃3万9,000円のアパート住まいを続け、清涼飲料水は買わず、貯金に励んでいることを公言しているが、ケチなのは芸風ではなく真実らしい。春日の日ごろの金銭感覚は、女性いわく、「特急料金を払う意味がわからないから、鈍行で行く」「ホワイトデーのお返しをくれないので、バレンタインのチョコを送るのをやめた」といった具合で、徹底した“しぶちん”を貫いている。

 愛情表現をすることも少なく、番組いわく“奥手”な春日が、ひそかに猛特訓して、ゆずの「栄光の架け橋」をピアノ演奏し、手紙を読む形でサプライズのプロポーズを決行した。交際が5年を過ぎ、女性の方から「結婚はどう考えているの?」と聞かれることが増えても、春日は回答を避けていたようだ。その煮え切らない態度を振り返って、春日は「不安にさせて、悲しくさせて、つらい思いをさせてごめんなさい」「好きな人を一生幸せにする覚悟が生まれるまでに、10年もかかってしまいました」と、その理由を説明する。結婚から逃げていたのではなく、むしろ結婚を真剣に考えるからこそ、踏み切れなかったという理由は、特に若い女性に刺さるのではないかと思っていたが、果たしてそうだった。SNSでは「感動した」「プロポーズのために、指輪を買ってピアノも練習してくれるなんて」と、春日に好感を持ったという20代女性のコメントが見られた。

 私の感想はというと、「こういうのがプロポーズの標準だと若い女性が思い込んでしまったら、大変だろうな」である。春日のプロポーズは、テレビで放送する、つまりは仕事だから、裏方も出演者も本気で感動を作り上げる。視聴者が胸を熱くするのは、春日の人柄というより、プロの技によってではないだろうか。公開プロポーズをしたタレントは、裏方の尽力もあって、「いい人なんだ」と好感度を上げることができるが、プロポーズ成功後は、一人でその好感度をキープしなければいけない(スタッフは助けてくれない)という新たなタスクを背負わなくてはならない。

 春日は、早速しくじってしまう。「フライデー」(講談社)が、感動的なプロポーズを成功させた春日の“裏切り”を報じた。プロポーズする10日前、春日は飲み会の後、アパートに金髪の一般人女性を招き入れていたそうだ。同誌によると、この女性とは半年前から何度も密会していたという。

 春日は浮気を認めた。4月28日放送の『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)では、相方の若林正恭に「頭イカれてんの?」「(ここ数年の春日は)キャバクラとクラブのVIPルーム行って、オレの一番嫌いな芸能人の染まり方(をしていた)」、また電話出演した婚約者には「気持ち悪い」となじられていた。SNSでも「失望した」「だまされた」というような内容のコメントが多数見られたのだ。公開プロポーズは、視聴者を感動させて好感度を上げた分、信頼を裏切るような行動を取ると、好感度が下がるばかりか、「嘘つき」の称号まで授かってしまうというリスクがあるのではないだろうか。

 婚約者は、10年待ってやっとプロポーズされた後、すぐに浮気が発覚して、深く傷ついただろう。しかし、私に言わせるのなら、公開プロポーズでクビがしまったのは春日だから、婚約者は安心していいのではないか。

 公開プロポーズしていなかったら、そもそも写真週刊誌の記事が出ることもなかったのかもしれないが、非公開のプロポーズの後に、浮気問題が発覚した場合、二人がケンカ別れしてしまう可能性もないとは言えないだろう。しかし、テレビでプロポーズした以上、ハッピーエンドにしないと番組に迷惑をかけるから、破談を避けたいのは春日の方であるはず。最近の風潮から考えて、結婚後に不倫をしたら芸人生命が終わりかねない面もあるのだ。

 付け加えると、いくら人気芸能人とは言っても、春日と不倫したい女性もごくごく少数はではないだろうか。2016年放送の『ナカイの窓』(日本テレビ系)で、どきどきキャンプ・佐藤満春が、春日の相席居酒屋やキャバクラ通いを暴露していた。春日行きつけのキャバクラのキャストも、その番組に出演していたが、「割引チケットを必ず使う」「女の子にお酒を飲ませない」そうで、相変わらずケチらしい。その頃と今の遊び方が同じとは限らないものの、キャバ嬢たちは客にカネを使ってもらうのが仕事だから、お金を持っているのに使おうとしない春日は「がっがりな客」だろう。『モニタリング』で、婚約者は「(人気芸人なので)女優さんとも付き合えたかもしれないのに、(家賃の安いアパートに住むなど)変わらないところがいい」とも言っていたが、ここまでケチだと、女優の方から願い下げされるだろうし、一般人女性でも、春日のケチぶりについていける人は少数のように思う。

 10年も結婚の話から逃げていたり、キャバクラに通うカネはあっても、交際相手にはカネを使わないというのは、正直、婚約者のことをナメていた部分があると私は思うが、公開プロポーズをした結果、春日は婚約者を裏切れないところまで、追いやられたのである。結婚願望のある30代の女性を10年も待たせるのは本当に酷なことだが、女性側もやはり春日と離れがたかったのだろう。10年も待たされた分、どうか楽しい結婚生活を送っていただきたいものだ。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

赤江珠緒アナ、博多大吉との不倫否定も……「相談女疑惑」「キャラ崩壊」がもたらすダメージ

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「でも、それをスタッフとかに言うのは……」赤江珠緒
『たまむすび』(TBSラジオ、4月24日)

 姦通罪のない日本で、どうして芸能人の不倫がバッシングされるかというと、「嘘をついている」ことに嫌悪感を抱く人が多いから、加えてネットが普及して、意見もしくは悪意の拡散が容易になったからではないだろうか。

 表向きは“いい人”に見せて、陰であんなことをやっている。そういう幻滅が不倫へのバッシングにつながっていくと仮定するのなら、芸能人が不倫と同じくらい恐れなくてはいけないのが、“キャラ崩壊”だろう。不倫をしていなくても、キャラが崩壊すると、不倫同様に「嘘をついていた」「だまされた」と憤る視聴者もいないとは言えないからだ。

 そもそも、キャラとは何だろう。

 例えば、休日に家でくつろいでいる時と、会社にいる時の自分がイコールな人はほとんどいないのではないだろうか。家ではだらしないけれど、会社では身なりも仕事もきちんとするということはよくあることだし、自分をより良く見せて、社会で評価してもらうため、誰もがキャラをかぶって演技していると言っていいだろう。それは偽装というより社会性だとも捉えられるかもしれない。

 しかし、芸能人のように、自分を商品にする職業の場合は、会社員よりも高度に差別化・細分化された偽装、つまりキャラが必要になる。オアシズ・大久保佳代子が『TVじゃ教えてくれない!業界裏教科書』(Abema TV)で、キャラの作り方についてレクチャーしていたことがある。「0からキャラを作ると、ウソだとバレる」「自分の中にあるものを、膨らませていく」ことがポイントだそうだ。ということは、芸能人のキャラというのは、「まるっきりウソではないけれど、100%本当でもなく、ある程度演じている」ということだろう。しかし、ウソだとバレると視聴者は興ざめするので、「生まれつき、こういう人だ」「本当にこういう性格なんだ」と視聴者に思わせるのが、芸能人としての腕の見せどころではないだろうか。

 先週発売された「フライデー」(講談社)で、お笑い芸人・博多大吉と芝生に寝っ転がって花見をしている姿を激写されたフリーアナウンサー・赤江珠緒。赤江アナはTBSラジオ『たまむすび』のメインパーソナリティーを務めており、大吉は水曜レギュラーとして出演している。親密そうな二人の雰囲気から不倫が疑われたが、手をつないでいたとか、ホテルに入ったというような証拠は何もない。しかし、キャラに疑義が生じたという意味で、赤江アナは結構な痛手を被ったのではないだろうか。

 同誌によると、二人は月曜日の夜にも食事をし、水曜日に番組で共演し、赤江アナが休みの金曜日の昼間、『あさイチ』(NHK)終わりの大吉と合流して、青山のレストラン(個室)でランチ。そこから公園で花見をし、二人して芝生に寝っ転がっていたそうだ。

 4月18日放送の『たまむすび』で、赤江アナは「大吉先生が相談に乗ってくれた」と不倫を否定。しかし、週に二度と“相談”の頻度が高いことと、赤江アナの夫が育児休暇中であることから、ネットでは「休みの日に夫に子どもを任せてまで、何の相談があるんだ」「なぜ相談で寝っ転がる必要があるんだ」と嫌悪を抱く意見もみられる。

 なぜ不倫の証拠があるわけでもないのに、赤江アナが叩かれるのかと、『たまむすび』リスナーの赤江ファンは疑問に思っているかもしれない。たいていこういう場合、「赤江アナに嫉妬しているから」で片づけられてしまうが、赤江アナが叩かれる理由の一つは、赤江アナがサバサバしたキャラを掲げていたにもかかわらず、大吉と会う理由に“相談”を挙げたことで、そのキャラが崩壊したからだろう。

 異性と会うためには、理由がいる。しかし、そうそう理由というものは見当たらない。そんなとき、「相談に乗ってほしい」というのは口実として使いやすい。そんな相談を手口として男性に近づく女性のことを、ネット上では“相談女”と呼ぶ。

 日本における“相談女”の歴史は古いだろう。1982年に発売した林真理子センセイの出世作『ルンルンを買っておうちに帰ろう』(角川文庫)にも“相談女”のエピソードが出てくる。真理子センセイと同じテニスサークルの女子が、複数の男性の先輩にだけ相談を持ち掛けていることに対し、「何をどうしたら、そんなに相談することがあるのか」と書いているのだ。90年代のドラマでも、主役カップルに横恋慕する脇役が「相談がある」と男性を呼びだして肉体関係に持ち込み、主役がそれを目撃してしまうというパターンがよくあった。

 一般的に言うと、異性に対して積極的に相談を持ち掛ける女性は、あまりイメージが良くない。そこに、“芝生ごろん”という、一般的に仕事仲間同士では取らない行動が加わると、90年代ドラマのように、「赤江アナは大吉と接近するために、計画的に相談を持ちかけた」と見てしまう人はいるだろう。無邪気なふりをしてオトコに近づいたのなら、サバサバと対極の存在、つまりキャラ偽装だとみなされ、バッシングされるのである。

 “相談女”と呼ばれることを危惧したのだろうか、赤江アナは同24日放送の『たまむすび』で、相談の内容について触れている。仕事と育児の両立に悩んでいることに加え、木曜パートナーであったピエール瀧が、先月、麻薬取締法違反で逮捕されたことから、「『たまむすび』をやっていけないかも」と思い、「でも、それをスタッフとかに言うのは……」と思ったので、大吉に相談していたそうだ。

 「オレたちのタマちゃんは、不倫なんてしていない、相談女でもない」。赤江ファンなら納得して胸をなで下ろすだろう。ケチつけて誠に申し訳ないが、私の印象は「やっぱり相談女だな」である。なぜなら、大吉に相談しても、解決しないことは目に見えているからだ。

 仕事と育児との両立に悩むなら、スケジュールを見直したり、シッターを雇うなど、夫や制作側に相談するのが一番だろう。また、瀧がいないことで「番組をやっていけない」というが、法に背いた人が番組に出られなくなるのは当然のことである。もし本当に「やっていけない」と思うのなら、キャスティング権を持った制作者に相談すべきであって、大吉は相談相手として適任とは言えないだろう。結論を必要としない相談は、相談ではなく“なぐさめ”である。こういうとき、人は無意識に自分「が」好意を持っている、もしくは自分「に」好意を持っている相手を選ぶ。だから、ご指名は大吉オンリーなのではないだろうか。

 赤江姫に相談してもらえなかったほかの男性出演陣(カンニング竹山、南海キャンディーズ・山里亮太)は鷹揚に構えているものの、ひそかにショックを受けたり、嫉妬しているかもしれない。リスナーも含めた男性陣の心をかき乱せる赤江アナは、サバサバというより、年季の入った小悪魔と呼んでいい気がする。もちろん、それは芸能人としてプラスの能力である。

 ただ、不必要にサバサバを掲げているのに行動が一致しないと、私を含めたある種の人には「相談女だな」「サバサバしてないんだな」とバレて好感度が落ちかねない。十分ご注意いただきたいものである。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

博多大吉、『あさイチ』ゲスト・森高千里に対する一言に露呈した「男尊女卑」な素顔

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「森高サンが歌うなら手拍子できるけど、『マジにオバさんになってんじゃん』って人が歌っても……」博多華丸・大吉 博多大吉
『あさイチ』(NHK、4月12日)

 オトナの優しさに、悪意は不可欠。かつてこの連載で、博多華丸・大吉の博多大吉について、そう書いたことがある。人に何かをしてあげるとき、「自分がしてあげたいことをすれば、相手も喜ぶ」と考えるのではなく、「自分の行為に、相手は嫌な思いをするかもしれない」と、相手側の悪意にまでを想像めぐらすことにより、双方の精神的負担が減らせるという意味で書いたつもりだったが、この考え方の盲点は「自分が経験したことがベースになる」がゆえに、未経験のことに対しては、他者の悪意に想像が回らないことだろう。

 熟練した漫才の腕を持ち、笑いを取る。九州出身で、関西芸人のようなどギツいつっこみをせず、東京進出をしてきたのも35歳を過ぎてから。そんな背景から、博多華丸・大吉に対して、オトナで温和なイメージを持つ人も多いだろう。そこが買われて、『あさイチ』(NHK)の司会に起用されたのかもしれない。視聴率も好調なようだが、明らかに不得手な部分もある。それは「たまたまその性に生まれついたことで、受ける差別」に関して、まるで共感性がないことだ。

 もともと、このコンビ、特に大吉は女性への感覚が偏っているタイプなのではないだろうか。

 東京進出を果たしてまもなく、華大が今ほどブレークしていない頃、大吉が『おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)に出演していたことがある。大吉は「スターバックスにカップルで行った際に、ソファー側に座るオンナが許せない(オトコの方がソファーに座るべき)」といった旨の話をしていた。このほかにも、番組名は失念したが、大吉が飲み会で「あのグラビアアイドルが、番組中オレに色目を使ってきた」と自慢していたことを、後輩にテレビで暴露されるなど、頭の中は「ザ・九州男児」と言うべきか、なかなかマッチョ思想の持ち主であることをうかがわせる。しかし、さすがベテランらしく、証拠を滅多に残さないというか、はっきりしたエピソードでそれを感じさせられることは、ほとんどないと言っていいだろう。

 しかし、『あさイチ』のキャスターに就任してから、「やっぱり、この人……」と徐々に露呈されることが多くなっているように感じる。

 例えば、性的同意について特集した時のこと。性被害を防ぐため、カップルでも夫婦でも、キスやハグ、性行為はお互いの同意を確かめた上で及ぶというのが海外のスタンダードになりつつあるが、日本ではそれほど浸透していない。そもそも、日本は性について話すのがはばかられる風土なため、相手に伝えたくても伝えられないという専門家の意見が出た。するとまず華丸は「そこが日本の奥ゆかしさというか、大和撫子というか」と答えるなど、「性についてあれこれ言うオンナは、はしたない」とでも言うような本人の女性観を披露してしまう。大吉は大吉で、性的同意チェックリストのフリップを見せられると、「いちいち言わないといけない?」とした上で、「僕らが年取っちゃってるし、ある程度落ち着いているんで。若い時とかまっしぐらになっちゃうこともあるから」と、性活動が活発な若い世代への啓発が必要と発言したが、50代でも60代でも、性的な接触を持つのであれば、相手の同意は必要なのである。そこが抜け落ちてしまうのは、大吉が「セックスはオトコが選んでするもの」といった考えの持ち主、すなわち「男尊女卑」の価値観を強く持っているからだろう。

 ここまで、大吉の価値観と時代の流れがかみ合わないのは稀だが、またやらかしたなぁと思うことがあった。

 4月12日放送の回で、歌手・森高千里が出演した。もしかすると、大吉は森高のファンで、舞い上がっていたのかもしれない。森高は、代表曲の一つ「私がオバさんになっても」について、「ハタチを過ぎた自分に対して、『女盛りは19歳だよ』と言ったスタッフにカチンと来て作った“怒りソング”だった」と誕生秘話を語っていたが、大吉は「森高サンが歌うなら手拍子できるけど、『マジにオバさんになってんじゃん』って人が歌っても……」とまぜっ返す。「一方的にオバさんと言われるのが心外だ」という話をしているのに、大吉は「あなたはオバさんじゃないけれど、違う人はオバさんだよ」と答えているわけで、これが女性に対する上から目線でなくて何だろうか。

 “女性目線”を掲げてきた『あさイチ』だが、いきなりの昭和返り。がっかりする視聴者の中には、元NHKアナウンサー・有働由美子とV6・井ノ原快彦コンビの復活を願う人もいるだろう。まぁ、そうはいっても現実問題、二人が復帰するとは思えないが、このコンビが女性ウケ抜群だった理由の一つは、「女性が部長」「女性が年上」だったからではないだろうか。

 情報番組で多いのは、「おじさんと若い女性アナウンサー」という組み合わせである。現在の『あさイチ』で華大のアシスタント的な立場にある近江友里恵アナも30歳であり、華大と比べると大分若い。メインを張るおじさんは実績のある人だから、当然、女性アナウンサーは立てるし、合わせなくてはならないと考えるはずだ。嫌われたら、自分のクビが飛ぶことだってないとは言えないだろう。となると、意見があっても黙っているしかないと思ってしまうのではないか。しかし、有働&井ノ原コンビの場合、井ノ原の性質的なものに加えて、有働アナの方が年上で責任あるポジションについているから、周りは男性を含めてそれなりに気を使うだろう。その結果、番組のバランスが良くなっていたのではないだろうか。男尊女卑と保守は紙一重なので、そういうものを好む視聴者もいるだろうが、そこを「違うんじゃない?」と突っ込める人がいると、議論になって番組が盛り上がるし、見ていて感じがいい。

 しかし、『あさイチ』をはじめ、朝の情報番組のメインに女性はいない。女性を意識して番組を作っているはずのに、なぜ女性はメインに「なれない」のか。ここをスルーしてしまうと、「中身は男尊女卑」な男性芸能人が、入れ替わり立ち代わり現れては消えるということが続いていくように思えてしまう。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

博多大吉、『あさイチ』ゲスト・森高千里に対する一言に露呈した「男尊女卑」な素顔

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「森高サンが歌うなら手拍子できるけど、『マジにオバさんになってんじゃん』って人が歌っても……」博多華丸・大吉 博多大吉
『あさイチ』(NHK、4月12日)

 オトナの優しさに、悪意は不可欠。かつてこの連載で、博多華丸・大吉の博多大吉について、そう書いたことがある。人に何かをしてあげるとき、「自分がしてあげたいことをすれば、相手も喜ぶ」と考えるのではなく、「自分の行為に、相手は嫌な思いをするかもしれない」と、相手側の悪意にまでを想像めぐらすことにより、双方の精神的負担が減らせるという意味で書いたつもりだったが、この考え方の盲点は「自分が経験したことがベースになる」がゆえに、未経験のことに対しては、他者の悪意に想像が回らないことだろう。

 熟練した漫才の腕を持ち、笑いを取る。九州出身で、関西芸人のようなどギツいつっこみをせず、東京進出をしてきたのも35歳を過ぎてから。そんな背景から、博多華丸・大吉に対して、オトナで温和なイメージを持つ人も多いだろう。そこが買われて、『あさイチ』(NHK)の司会に起用されたのかもしれない。視聴率も好調なようだが、明らかに不得手な部分もある。それは「たまたまその性に生まれついたことで、受ける差別」に関して、まるで共感性がないことだ。

 もともと、このコンビ、特に大吉は女性への感覚が偏っているタイプなのではないだろうか。

 東京進出を果たしてまもなく、華大が今ほどブレークしていない頃、大吉が『おぎやはぎのメガネびいき』(TBSラジオ)に出演していたことがある。大吉は「スターバックスにカップルで行った際に、ソファー側に座るオンナが許せない(オトコの方がソファーに座るべき)」といった旨の話をしていた。このほかにも、番組名は失念したが、大吉が飲み会で「あのグラビアアイドルが、番組中オレに色目を使ってきた」と自慢していたことを、後輩にテレビで暴露されるなど、頭の中は「ザ・九州男児」と言うべきか、なかなかマッチョ思想の持ち主であることをうかがわせる。しかし、さすがベテランらしく、証拠を滅多に残さないというか、はっきりしたエピソードでそれを感じさせられることは、ほとんどないと言っていいだろう。

 しかし、『あさイチ』のキャスターに就任してから、「やっぱり、この人……」と徐々に露呈されることが多くなっているように感じる。

 例えば、性的同意について特集した時のこと。性被害を防ぐため、カップルでも夫婦でも、キスやハグ、性行為はお互いの同意を確かめた上で及ぶというのが海外のスタンダードになりつつあるが、日本ではそれほど浸透していない。そもそも、日本は性について話すのがはばかられる風土なため、相手に伝えたくても伝えられないという専門家の意見が出た。するとまず華丸は「そこが日本の奥ゆかしさというか、大和撫子というか」と答えるなど、「性についてあれこれ言うオンナは、はしたない」とでも言うような本人の女性観を披露してしまう。大吉は大吉で、性的同意チェックリストのフリップを見せられると、「いちいち言わないといけない?」とした上で、「僕らが年取っちゃってるし、ある程度落ち着いているんで。若い時とかまっしぐらになっちゃうこともあるから」と、性活動が活発な若い世代への啓発が必要と発言したが、50代でも60代でも、性的な接触を持つのであれば、相手の同意は必要なのである。そこが抜け落ちてしまうのは、大吉が「セックスはオトコが選んでするもの」といった考えの持ち主、すなわち「男尊女卑」の価値観を強く持っているからだろう。

 ここまで、大吉の価値観と時代の流れがかみ合わないのは稀だが、またやらかしたなぁと思うことがあった。

 4月12日放送の回で、歌手・森高千里が出演した。もしかすると、大吉は森高のファンで、舞い上がっていたのかもしれない。森高は、代表曲の一つ「私がオバさんになっても」について、「ハタチを過ぎた自分に対して、『女盛りは19歳だよ』と言ったスタッフにカチンと来て作った“怒りソング”だった」と誕生秘話を語っていたが、大吉は「森高サンが歌うなら手拍子できるけど、『マジにオバさんになってんじゃん』って人が歌っても……」とまぜっ返す。「一方的にオバさんと言われるのが心外だ」という話をしているのに、大吉は「あなたはオバさんじゃないけれど、違う人はオバさんだよ」と答えているわけで、これが女性に対する上から目線でなくて何だろうか。

 “女性目線”を掲げてきた『あさイチ』だが、いきなりの昭和返り。がっかりする視聴者の中には、元NHKアナウンサー・有働由美子とV6・井ノ原快彦コンビの復活を願う人もいるだろう。まぁ、そうはいっても現実問題、二人が復帰するとは思えないが、このコンビが女性ウケ抜群だった理由の一つは、「女性が部長」「女性が年上」だったからではないだろうか。

 情報番組で多いのは、「おじさんと若い女性アナウンサー」という組み合わせである。現在の『あさイチ』で華大のアシスタント的な立場にある近江友里恵アナも30歳であり、華大と比べると大分若い。メインを張るおじさんは実績のある人だから、当然、女性アナウンサーは立てるし、合わせなくてはならないと考えるはずだ。嫌われたら、自分のクビが飛ぶことだってないとは言えないだろう。となると、意見があっても黙っているしかないと思ってしまうのではないか。しかし、有働&井ノ原コンビの場合、井ノ原の性質的なものに加えて、有働アナの方が年上で責任あるポジションについているから、周りは男性を含めてそれなりに気を使うだろう。その結果、番組のバランスが良くなっていたのではないだろうか。男尊女卑と保守は紙一重なので、そういうものを好む視聴者もいるだろうが、そこを「違うんじゃない?」と突っ込める人がいると、議論になって番組が盛り上がるし、見ていて感じがいい。

 しかし、『あさイチ』をはじめ、朝の情報番組のメインに女性はいない。女性を意識して番組を作っているはずのに、なぜ女性はメインに「なれない」のか。ここをスルーしてしまうと、「中身は男尊女卑」な男性芸能人が、入れ替わり立ち代わり現れては消えるということが続いていくように思えてしまう。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

「下ネタOK」の女子アナ・大橋未歩が、案外『5時に夢中!』に向かないと感じるワケ

 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「意外と大橋さん、嫌になるの早いと思う」マツコ・デラックス
『5時に夢中!』(TOKYO MX、4月8日)

 4月1日より、『5時に夢中!』(TOKYO MX)のアシスタントに、元テレビ東京アナウンサー・大橋未歩が就任した。知名度の高い人気アナが出演することで、画面は一気に華やかになった。「意外と大橋さん、嫌になるの早いと思う」とマツコ・デラックスが発言したのは、“人気アナウンサーがこんな番組に出てくれる”という歓迎の意を、自虐的に表現したのではないだろうか。

 今でこそ、人気番組となった『5時に夢中!』だが、視聴率が低迷していた時代があった。テレビに出たてのマツコが「校内放送みたいなものよ」と言っていたことがあるが、視聴者が多くないこと、地上波でないことを逆手にとって、猥談や隠語などの下ネタを平気で発していた。しかし、徐々に視聴率が上がり、多くの人の目に触れるようになると、そのやり方では問題が生じる。木曜レギュラーの作家・岩井志麻子は、“ちんこ”と発言するとき、チーンと鳴るベルを押して、その後に「こ」と付け加えるのだが、これは番組当初のコンセプトを生かしつつ、地上波に慣れた視聴者を取り込む作戦だと私は解釈している。

 下ネタと言えば、テレビ東京時代の大橋アナは下ネタを嫌がらないキャラで売っていた。恋もキャリアもあきらめたくない女性を応援するバラエティー番組『極嬢ヂカラ』(テレビ東京系)のレギュラーとなった際は、記者会見で「(興味をそそられた番組の企画は)アンダーヘア。主人はナチュラル派なので、自然体で行きます」と答えたり、番組内で「大橋ちゃんのHってどんなんなん?」と尋ねられ、「粗末にされるのが好き」と答えるなど、プライベートゾーン(性器)やセックスに関しても、臆することなく明かしている。また、本人の趣味か上司の指示がわからないが、バストを強調したり、かなり短いスカートをはき、“お色気”担当を担っていたようにも思う。

 ウェブメディア「JBpress」に掲載された『5時に夢中!』プロデューサー・大川貴史氏へのインタビューによると、同番組は「お色気ネタに抵抗のない30代主婦」をターゲットに番組作りをしてきたそうだ。ということは、番組は30代主婦にウケる下ネタを作ろうとしていると見ていいだろう。大橋アナの下ネタOKな芸風が買われて、今回の起用となったのかもしれないが、大橋アナと『5時に夢中!』の下ネタの路線は一致しているかというと、ちょっと違う気がするのだ。

 例えば、今は母親となり、お子さんの話も大分増えてきた月曜レギュラー、株式トレーダーの若林史江は、独身時代「ヤリマン」を自称していたが、「ヤる相手には事欠かないけれど、独身」という自虐でオチを作っていた。火曜日のレギュラーコメンテーター、作家の岩下尚史氏は『おーくぼんぼん』(TBS系)でセックスについて「あんないいものないよ」と話していたことがあり、『5時に夢中!』でも、セックスに興味のあるキャラを掲げている。木曜日レギュラーの岩井はオナニーについて語り、新潮社出版部部長・中瀬ゆかりは、事実婚をしていた故・白川通さんの存命中、「セックスレス」を公言していた。レギュラー陣の話は、カテゴリとしては下ネタであっても、具体的な話、例えば体位やオナニーのやり方について話すことはない。結局、「30代主婦に受ける下ネタ」というのは、「実生活では口にできないこと」かつ「生々しくはなく、共感できる(自慢と感じられない)こと」なのではないだろうか。

 それに対し、大橋アナの下ネタはそのものずばり、細部を連想させるもので、どちらかというと男性向け下ネタのように思うのだ。

 もう一つ、大橋アナは、案外「プライベートを語れない」というネックがあるように思う。大橋アナは二度結婚しているが、一度目の結婚は、ヤクルトスワローズ(当時)の城石憲之選手。大橋アナが軽度の脳梗塞を患った後、「(夫が)スムージーを作ってくれるのが日課になって、職人みたいになっています」と、「スポーツニッポン」の取材に答えていた。優しい夫と、そんな夫に愛される私をアピールしたものの、この直後に離婚。1年もたたないうちに、テレビ東京のプロデューサーである11歳年下の男性と再婚したことから、「不倫していたのでは?」という疑惑を持たれている。

 同番組のレギュラー陣にも、岩井や中瀬のように離婚経験者はいる。離婚は今時珍しくないし、イメージダウンでもない。しかし、不倫のように他人を傷つける形での離婚を疑われている大橋アナは、30代主婦ウケからは程遠いのではないだろうか。

 キャラかぶりがご法度というバラエティーの原則から言うと、『5時に夢中!』のレギュラー陣には、既婚者・母親も多いのだから、アシスタントは独身女性がいいのではないだろうか。30代主婦ウケを狙うなら、「結婚できない」自虐をする独身女性は見飽きた感があるので、離婚経験のある結婚生活不適合者キャラはどうだろう。番組ファンの私はそんなことを思ってしまった。

 そうは言っても、大橋アナのように知名度のある人が出ることで、番組が盛り上がることは事実。この番組ではアシスタントにもあけすけさは求められるが、エピソードのチョイスに気を付けないと、好感度が下がってしまう可能性はある。「意外と大橋さん、嫌になるの早いと思う」というマツコの発言が、予言にならないように願うばかりだ。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

フジ・山崎夕貴アナは「バラエティー向きの妻」――視聴者ウケを呼ぶ“2つの顔”とは?

 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「今年に入って、おにぎりが一回しかない」フジテレビアナウンサー・山崎夕貴
『ノンストップ』(フジテレビ系、3月29日)

 夫婦関係を扱うバラエティーに向く芸能人とは、本人のトークスキルよりも、配偶者の職種や社会的地位が重要なのではないだろうか。

 例えば、先日引退した米大リーグ・マリナーズの元外野手、イチロー。偏食とこだわりが強いことは本人も認めており、そばにいる弓子夫人はさぞ苦労したことだろう。しかし、だからといって、仮に世界記録保持者の妻がバラエティーに出演し、夫の愚痴を言ったなら、「あれだけの結果を出しているんだから、それくらい許してやれ」とか「年棒が高いんだから、我慢しろ」と叩く人はいるはずだ。

 かといって、弓子夫人が「夫はとてもいい人で、私は愛されています」とアピールをしたら、途方もない富だけでなく愛まで見せ付けられて、視聴者は立場がないだろう。超高収入な夫を持つ妻は、バラエティーには不向きと言えるのだ。

 それでは、どういう人が夫婦バラエティーに向くかと言えば、元フジテレビアナウンサー・中村仁美のようなタイプだろう。中村の夫は、お笑い芸人・さまぁ~ずの大竹一樹。日本全体の平均値で見れば、かなり高収入なカップルだろうが、中村はそれを前面に出さない賢さがある。かつ夫がお笑い芸人であるため、何を言っても「あれはネタ」だと言える逃げ道もある。よって、夫に対する不満を言っても、どこにも角が立たないのだ。

 大竹はいろいろな番組で中村を「鬼嫁」と呼び、中村もいろいろな番組で、それに対する反論や夫への愚痴を明かしている。3月27日放送の『ノンストップ』(フジテレビ系)では、夫からプレゼントされた「いらないもの(キャベツの千切りしかできないピーラーなど)」を挙げてみせた。ここでのポイントは、実生活で受けた愛情表現をテレビで話さないことだろう。大なり小なり夫に不満を持つ妻というキャラなので、のろけ的なニュアンスのエピソードを披露すると、矛盾が生じてしまうからだ。

 こうやって考えていくと、バラエティーで結婚生活について語るタレント枠で、がら空きのポジションがある。

 それは「愛され妻」だ。ドラマの主役が素直で善良な人物である場合、悪役を登場させると、主役のキャラクターに深みが増すように、バラエティーの世界も、夫の愚痴を言う妻だけでは盛り上がらない。「愛され妻」が必要である。しかし、上述した通り、「高収入の夫を持つ愛され妻」はバラエティーとして映えないだろう。そもそも、女性芸能人は高収入な男性と結婚するケースが多いことを考えると、なかなか適任の人物はいないように思うが、ここにきてバラエティー界に、「愛され妻」と「夫への愚痴をこぼす妻」両方のキャラクターをこなせる妻が現れた。フジテレビの山崎夕貴アナである。

 女子アナと言えば、プロ野球選手や会社経営者など、高収入な男性と結婚することが多いのに、山崎アナは売れているとは言い難い、お笑い芸人・おばたのお兄さんと結婚した。フジテレビのエースである山崎アナの方が、年収が高いことは間違いないだろう。

 しかしその結果、山崎アナはいじられやすくなり、露出が増しているようだ。『さんまのFNSアナウンサー全国一斉点検』(同)で、山崎アナは夫との“いちゃいちゃシーン”を放送されていた。テレビ局の控室で撮影した、夫への「LOVE動画(山崎アナが体でアルファベットを作ってLOVEの字を作る)」や、夫と後輩芸人を交えた食事の様子を隠し撮りした映像が流されたのだ。

 フジテレビのエースとも言える山崎アナが、売れているとは言い難い、夫と後輩芸人の食事会にやって来て、後輩に「いつも仲良くしてくれてありがとう」と挨拶し、おばたを立てる。一方のおばたも、椅子に座った山崎アナの体が冷えないように、毛布のようなものをかけてあげる優しさを見せる。後輩が先に帰り、二人きりになると、一気にいちゃいちゃモード。山崎アナはおばたの鼻をつつき、おばたも「いい奥さんだな」と返す。

 もし山崎アナの相手が、現役プロ野球選手や有名俳優だったら、こういったいちゃいちゃシーンは夫側のイメージダウンになりかねないので、まず無理だろう。しかし、おばたはまだまだ駆け出しの芸人。山崎アナの方に経済力があり、生活の心配はないという背景が共有されているため、おばたは「収入は今のところいまいちだが、愛情表現豊富な夫」というキャラクターとして視聴者に受け入れられるだろう。特に独身女性を中心として、好ましく解釈されるのではないか。おばたも、そういう男性とあえて結婚した山崎アナも、イメージを上げることになるわけだ。山崎アナは「愛され妻」の座を独り占めできるのである。

 しかし、こういう「いい話」というのは、実はすぐに飽きてしまうというか、バラエティー的に盛り上がらないという欠点もある。それを知っているのか、それとも素なのか、山崎アナがそうそうに「夫への文句」を『ノンストップ』で披露した。

 現在、『とくダネ!』(同)に出演中の山崎アナは、朝が早い。山崎アナは『とんねるずのみなさんのおかげでした』(同)で料理が苦手であることを明かしており、そんな山崎アナのために、料理が得意なおばたが、朝ごはんとしておにぎりを握るのがお決まりになっていたという。そのおにぎりも、「オムライスおにぎり(チキンライスを卵で包む)」といった具合に、手の込んだもの。しかし、今年になっておにぎりを握ってくれたのは、一回だけ。「これが結婚なんだ」と山崎アナはがっかりしたそうだ。

 愛されていると言ったり、夫への不満を言ったり、矛盾していると思われるかもしれないが、山崎アナの不満は、愛情うんぬんの話ではなく、料理は得意な方が担当するはずだったのに……といった「家事の分担」についてなので矛盾は生じないだろう。

 山崎アナの愛されアピールは、若い女性を中心とした独身女性に受けるだろうし、家事の分担に関する嘆きは、夫の行動に不満を感じたことのある既婚者にとって、「あるある」「そんなもんよね」と共感できるものだろう。つまり、愛されアピールと不満を言うことで、山崎アナの支持層は、より広くなっていくと言えるのだ。2つのジャンルを掛け持ちできるということは、それだけ活躍の場が多いということでもある。

 山崎アナのさらなるポテンシャルを感じさせたのが、『ダウンタウンなう』(同)での「次に浮気をされたら、離婚」宣言である。山崎アナはおばたとの交際直後に浮気をされるが、その時の経験があまりにもつらくて、「もう乗り越えられない」ときっぱり宣言していた。おばたの行動如何で、二人は離婚するとも限らない。この先行きの不安定さもネタになるし、バラエティー向きと言えるだろう。

 昨年、「週刊文春」(文藝春秋)主催の「好きな女子アナランキング」で4位をマークした山崎アナだが、今後もっと支持する人は増えるのではないだろうか。『みなさんのおかげでした』で、「入社試験まで東京に行ったことがなかった」と話していた山崎アナ。地方出身の彼女が、東京で天下を取る日はそう遠くない気がする。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

樹木希林さん、「夫には遺産遺さない」報道……彼女の「一筋縄ではいかない愛し方」を考える

 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「私が死んでも、夫に遺産は遺さない」樹木希林
「女性セブン」(小学館、3月27日号)

 一組の夫婦がいたとする。妻が夫に暴力を振るい、別居。そこで別の男性と交際するようになる(しかし、生活費は夫にもらっている)。妻が夫に内緒で離婚届を出し、離婚は成立した。しかし、夫は裁判を起こし、離婚は無効であると訴え、勝訴した。

 もしこんな話を聞かされたら、多くの人が「暴力を振るうなんてあり得ない」「生活の面倒を見てもらいながら、不貞を働くのはどういうことか」と妻をなじり、夫に離婚を勧めるだろう。それでも離婚しようとしない夫を「そこまで執着するなんて怖い」と見る人もいるかもしれない。

 しかし、これが男女逆だったらどうだろう。つまり、夫が暴力を振るい稼がずとも妻は生活費を出し、夫が不倫をしようとも妻は離婚しない。すると、なんだか懐の深い女になってしまわないだろうか。これは日本に「支えるオンナ、耐えるオンナは美しい」という価値観がそれだけ深く浸透しているからだろう。

 今、日本で一番「支えるオンナ」として扱われているのは、女優・樹木希林さんではないか。昨年の9月に亡くなった樹木希林さんの名言を集めた『一切なりゆき 樹木希林のことば』(文藝春秋)が売れに売れている。文藝春秋社によると、累計発行部数は100万部となり、平成最後のミリオンセラーとなるようだ。

 20代の頃から老け役をいとわず、第一線で活躍し続けた希林さんだが、気負わず、かといって「老け役なんです」などと自虐することもなく自分を語る希林さんと、恵まれているアピールが反感を買いやすい今の世相がマッチしたのだろうか、「モノを持たない」「求めすぎない」希林さんの生き方に支持が集まっている。成功から生まれる感謝と諦念を同じ量持ち合わせているかのような希林さんの言葉に、私も共感を得る一人だが、希林さんが夫にどれだけ振り回されても、ひたすら無償の愛で支え続けてきたという解釈のされ方には、個人的に腑に落ちないものがある。

 希林さんと、ミュージシャンである夫・内田裕也さんの結婚は、波乱含みだった。結婚してすぐに、内田さんの暴力が始まり、別居。その間、内田さんが女性問題を起こしたり、警察のお世話になったりもしたが、離婚はせずにマスコミに頭を下げ続けた。さらに、内田さんの生活費は希林さんが負担していたという報道もあった。ただ、内田さんがこっそり離婚届を提出したときは、すぐに裁判を起こして、勝訴している。60代になった希林さんが、がんを患い闘病を始めると、1カ月に一度は会い、共にハワイで過ごすような関係に戻ったが、同居することはなかったそうだ。

 晩年、希林さんはバラエティー番組で、はっきり不動産投資の話をするようになる。『ぴったんこカン・カン』(TBS系)では、不動産の出物があると、撮影をほっぽり出しても見に行ってしまったエピソードを暴露されたが、「いつ仕事がなくなるかわからない商売なんだから」と言い返していた。「女性セブン」(小学館)によると、希林さんは都内に8軒もの不動産を所有していたそうだ。物も欲も持つなと話していた希林さんが、不動産を多数所有することは矛盾しているようにも感じるが、内田さんのためと考えると、合点がいくのではないだろうか。

 希林さんが亡くなった後、娘の也哉子さんが荷物の整理をしていたら、結婚1年目に内田さんが希林さんに送ったとみられるラブレターを見つけたそうだ。そこには「祐也(自分)に経済力があれば、もっとトラブルも少なくなるでしょう。俺の夢とギャンブルで高価な代償を払わせていることは、よく自覚しています」とあり、はっきり金欠を認めている。しかし、同時に「メシ、この野郎、てめぇ(という態度を取ることもあるけれど)、でも本当に愛しています」としめくくられているのだ。要約すると、「カネがなくて態度も悪くてごめんね。でも愛してるよ」となるが、希林さんは惚れた弱みで、カネがないなら私が稼ぐとばかりに、仕事や不動産投資に励み、カネを渡したのではないだろうか。

 才能はあるけれど、世渡り下手で損ばかりしている男と、男の才能を信じて耐える妻というのは芸道小説の王道だが、献身妻の与えたものが「カネ」だと考えると、少し話が違ってくるのではないだろうか。親に養ってもらっているうちは、子どもは親に逆らいづらいのと同じように、カネをもらう側は立場が弱く、支配されることと紙一重な部分があるだろう。生活の面倒を見てもらっていたというだけに、内田さんはある程度、希林さんに気を使っていただろうし、実は頼りにしていたのではないだろうか。現在の希林ブームでは、「夫が外で何をしようと文句を言わず、耐えて愛し続けた妻」という扱いになっているが、希林さんを手放すと、生活に困ってしまうのは内田さんで、夫婦の力関係は「希林>内田」という部分があったのではないかと推測する。

 カネと言えば、「女性セブン」によると、希林さんの遺産は内田さんをスキップして、娘の也哉子さんや娘婿である本木雅弘、お孫さんに相続されているという。生前、希林さんは「私が死んでも、夫に遺産は遺さない」と語っていたそうだが、内田さんの経済感覚を信用していなかったこと、また二次相続で也哉子さんが相続税に悩まされないようにするために取った対策らしい。

 けれど、それだけだろうか?

 ここにきて、内田さんの身の回りの世話をし、闘病と最期を看取った女性マネジャーがいることを「女性自身」(光文社)が報じている。あまりの親密ぶりに内縁の妻と見る人もいるようだが、希林さんは仮に愛人でも構わず、感謝しているというスタンスだったそうだ。

 いつも女性に面倒を見てもらえるのは内田さんの魅力のなせる技だろうが、もし希林さんの遺産を相続した内田さんが、この女性と結婚すると言い出したら、相続で揉め事が起きるのは目に見えている。相続税対策として、也哉子さんに直接相続させたのが第一義ではあるものの、「カネはないが、オンナが放ってはおかない」という内田さんの長所と短所を知り尽くしているからこそ、トラブルを避けるためにも、「まとまった形で与えない」という選択をしたのではないだろうか。

 内田さんにあえて遺産を相続させなかったというのは、想像の域を出ないが、希林さんが死ぬまで内田さんを愛したことは事実だろう。人からどう思われようと自分の選んだ人を激しく愛し、そのためにひたすら稼いだようにも思える。菩薩のように内田さんを許す一方で、情が激しく冷静な面もある。希林さんのすごいところは、一筋縄ではいかない愛し方を私たちに見せたことではないかと、私は思っている。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

後藤真希、不倫報道後も「夫は裁判続行」……“オトコのプライド”は死語になるのか?

 羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます

<今回の有名人>
「そこ(裁判)をなしにして頑張っていこうとはならなかったのか?」極楽とんぼ・加藤浩次
『スッキリ』(日本テレビ系 3月14日)

 不倫は男性がするもの、というイメージを持たれていた時代もあったが、探偵をしている友人によると、今は「妻の不倫を調べてください」という依頼もかなり増えてきているそうだ。男女で違いがあるのは、女性が依頼をして来たとき、夫が不倫をしていないことは多々ある。しかし、男性が依頼してきたとき、妻はほぼ100%不倫しているそうだ。

 男性の方が、勘のニブい人が多いので、浮気の兆候に気づかないと見ることもできるだろうが、友人は「女性は思い立ったらすぐ行動するけど、男性は『女性に不倫をされたくない』『証拠を見たくない』というオトコのプライドが邪魔して、相談をするのが遅くなるのではないか」と分析していた。

 オトコのプライドという言葉は、意味がわかるようでわからない。しかし、女性はオトコのプライドを傷つけないように行動しろというのは、私が若い頃から現在に至るまで、脈々と受け継がれている。しかし、もう、オトコのプライドという言葉自体がなくなるのかもしれないと、ゴマキの不倫報道を見て思った。

 元モーニング娘・後藤真希。国民的アイドルグループの中心メンバーだったが、3歳年下の建設現場で働く夫と結婚、2児を設けている。最近はママタレ業にシフトしつつあり、料理や子ども、夫とのキス写真などをSNSに投稿し、家族円満を掲げてきた。しかし、実際はA氏(地方在住のハケン社員である元カレ)と不倫をし、これを知った夫が330万円の損害賠償を求めて裁判を起こしていると「週刊文春」(文藝春秋)が報じた。陳述書には、ららぽーと豊洲の映画館で、カップルシートに座って映画を見たことや、アパホテルに宿泊したこと、またセックスの回数についても触れられている。訴えられたA氏は、後藤から夫のモラハラやDVについて聞かされており、婚姻は破綻していたので不倫に当たらないと主張しているそうだ。

 同誌によると、不倫がバレたきっかけは、ドライブレコーダー。錦糸町のラブホテルに移動した際の記録を夫が見つけ、警察の実況見分さながらに後藤を問い詰め、後藤も白状したという。

 「文春」の報道を受け、後藤はブログで謝罪、夫とは離婚せずにやり直す意志を明かした。小さな子どももいることだし、めでたしめでたしと言いたいところだが、『スッキリ』(日本テレビ系)の司会・加藤浩次は、今も裁判が続行中であることに触れ、「夫婦でもう一回頑張って家族を作っていこうとなったんだから、不倫相手に対して訴えたい気持ちは残るのか?」と、その必要性を疑問に感じたようだった。

 同じような意見は、他番組でも出ていた。『バイキング』(フジテレビ系)で、「ご主人のはらわた煮えくりかえる気持ちはわかるけど、彼女とやっていこうと思うなら、ちょっと違うんじゃないかな」「家庭修復しようと思っているんだったら、外部には出しちゃいけないよね」と薬丸裕英が述べていた。

 加藤・薬丸は、離婚しないのであれば、裁判をする必要はないと判断したのだろう。不倫を「なかったこと」にするためにも……という考えがあったのかもしれない。これを、オトナの常識的な判断と見る人や、芸能人である妻を傷つけかねないことはやめた方がいいという判断と見る人もいるだろう。

 が、冒頭で述べた「妻に不倫されることを恐れるがあまり、不倫の証拠を突きつけられるのが怖い」ことをオトコのプライドだと仮定すると、「不倫を世間に明らかにするような行為をすべきではない」といった発言も、「自分は知りたくないし、ましてや世間にも知られたくない」という意味で、オトコのプライドを重視していると考えられるのではないだろうか。

 自分のパートナーに不倫をされてうれしい人はいないだろう。やり直すか離婚かはカップルそれぞれの決断だが、一つのポイントになるのが”収入”である。離婚して一人で生活をしていく自信がないので、収入の高い配偶者を手放したくないという判断をしても、なんら不思議はない。

 加藤も薬丸も妻は専業主婦であり、それぞれ3人、4人の子どもを育てている。これは、夫の収入がそれだけ多く、妻が差し迫って働く必要がないことをほのめかしている。この時代に、妻を専業主婦にできる甲斐性を持つ高収入な男性だ。加藤・薬丸本人がはっきり発言しているわけではなく、私の推測にすぎないが、金銭的な苦労を家族にさせていないという自負のある男性は、自分という存在を失いたくないため「妻は浮気しない」という一種の安心感を持っており、だからこそ一層「不倫された夫」が晒し者にされる今回のようなケースでは、「気の毒だ」「やりすぎだ」とオトコのプライドの面から思っているように、私の目には映るのだ。

 しかし、後藤の夫は、加藤や薬丸とは違う。人気の女性タレントは会社経営者やスポーツ選手など、高収入職の男性と結婚することが多いが、後藤の夫は一般的なサラリーマンなので、収入は後藤の足元にも及ばないのではないか。となると、後藤と離婚することは、子どもたちから母を奪うことになるだけではなく、人気タレントで高収入という自慢の妻をなくすことになる。そう簡単に手放したくないだろう。となると、溜飲を下げるために、不倫相手のA氏をワルモノにして訴えてもおかしくはない。「不倫をしたら、こうなる」と後藤にお灸を据えることにもなる。

 後藤を手放したくないのは、A氏とて一緒だろう。『バイキング』に出演した清原博弁護士によると、「文春」に掲載された陳述書は、「利害関係のある人しか見られない」ため、利害関係にある誰かが週刊誌に売ったと考えることができるだろう。不倫にうるさいこのご時世に、妻の仕事がみすみす減るようなことを後藤の夫がするとは思えないので、となるとA氏が売り込んだ可能性は低くはないだろう。後藤が芸能活動の謹慎に追い込まれたら、自分の元に帰ってくると思っているのかもしれない。

 夫もA氏も後藤が自分から逃げていかないように必死だと考えた場合、今回の騒動はそう理解できないものではない。二人とも後藤を手放さないために必死で、オトコのプライドなんて言っている余裕はないのだ。

 今から30年近く前、松田聖子が全米進出をし、白人男性と不倫をしていると報道された。家庭を持った女性が、夫と子どもをほっぱらかして仕事をするだけでもバッシングされた時代、それに加えて不倫である。聖子もバッシングされたが、確か「文春」の連載だったと思うが、林真理子が「オトコがしたいことは、オンナだってしたいんだ」と書いていた。

 今、本当に「オトコがすることは、オンナもする」時代になっている。仕事をする女性が増え、年収も「男性だから高い」「女性だから低い」という時代から、人それぞれになりつつある。浮気や不倫も、男女ともする人はするし、しない人はしない。

 2017年、Abema TV『極楽とんぼKAKERU TV』で、自身の年収を「億よりちょっと少ないくらい」と述べた加藤。結局、オトコのプライドなんてものを掲げられるのは、高収入男性であり、絶滅寸前種と見ることができるだろう。加藤のように高収入でない男性が掲げるオトコのプライドとは、オンナへの見くびり、もしくは怠慢を言い換えただけのものではないだろうか。

仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。