羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「お母さんが料理を作っていたのは間違いだっていうのはおかしな話で」立川志らく
『グッとラック!』(TBS系、10月6日)
少し前に起きた、Twitter発のポテサラ論争をご記憶だろうか。
スーパーの惣菜コーナーで、幼児を連れた女性がポテトサラダのパックを手にしていると、高齢男性が近づいてきて、「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と声をかける様子を目撃した投稿者。うつむいてしまった女性に、投稿者は娘さんを連れて、「大丈夫ですよ」と心の中でつぶやきながら、2パックもポテサラを買ったといい、このツイートは大いにバズった。
ワイドショーなどがこの話題を取り上げ、その論調は「忙しいなら買えばいい」「人の家のことに口を出すな」というものが多数だったが、『グっとラック!』(TBS系)の出演者・国山ハセンアナウンサーは、しつこく「総菜のポテサラと手作りのポテサラ、どちらに愛を感じるか? やっぱり手作りのポテサラに愛を感じる」「手間暇かけるのは、愛と感じますでしょ?」と、“手作りイコール愛”とする主張を連呼。その結果、軽く炎上し、リターンマッチとしてか、ハセンアナは番組内で「人生で初めてのポテサラ作り」に挑戦していた。これは番組側が、ハセンアナにポテサラ作りの大変さを実感させることで、“手作りイコール愛”というのが、いかに世間ズレした考えなのかを理解させ、その姿を視聴者に見せるための企画だと思った。
料理の経験がないのか、ハセンアナはきゅうりを薄切りにできず、にんじんの皮をむくのを忘れ、じゃがいものゆで具合も微妙。試食した番組出演者は「じゃがいもの味がぱさぱさしている」「フツウのつぶれた芋、何かがおかしい」という評価で、味はさんざんだった模様。
ハセンアナは「手作りは当たり前じゃないし、料理が出てくるのも基本的に当たり前ではない」とまとめていて、これで一応のオチがついた形にはなったものの、私にはハセンアナがなぜ自身の発言が批判されたのか、理解したようには思えなかった。というのも、実際にポテサラを作ることで、彼は「面倒だから総菜のポテサラもあり」と思うのではなく、「こんな面倒だとわかったら、ますます手作りのポテサラの価値を感じるようになった」という方向に転がったように感じたからだ。
もちろん、ハセンアナが「総菜のおかずなんて認めない! オンナが作れ!」という考えでも、他人が文句を言う筋合いはない。しかし、「番組内での発言」は、ハセンアナ個人ではなく、番組の主張だと視聴者に捉えられる可能性もあるだけに、発言にはそれ相応の責任が生じるし、また番組の企画意図(手作りイコール愛)を汲んだ発言をしなければならない面もあるのではないか。にもかかわらず、企画意図を無視しているように見えるハセンアナを、番組がキャスティングするのは、話題作りのために炎上商法を狙っているからだと思っていたが、番組は視聴率の低迷がたびたび報じられていることから考えると、炎上は数字(視聴率)に結びついていないようだ。
テコ入れのためだろうが、『グッとラック!』は9月末から、メインコメンテーターなる聞きなれないポジションを作り、ロンドンブーツ1号2号・田村淳を投入した。
10月6日放送の同番組では、元テレビ東京アナウンサー・大橋未歩が「『料理は女性がするもの』と考える方にはドン引きします」と自身のインスタグラムにアップしたことを取り上げた。同番組の取材に対し、大橋アナは「女性が『結婚した』と男性に言ったときに、男性から『料理はできるの?』とすぐさま言われているのを見聞きしたことがありまして、『結婚=料理』という認識の方もいるのかなと思ったことがありました」と、性別によって役割を決められることに関して、違和感があると話していた。
番組では、この問題について議論が繰り広げられたが、ハセンアナは「フツウに何の意識もなく、聞いていました」「悪気はなかった」と告白。同番組の出演者で、後輩の若林有子アナからは、ハセンアナに「料理ができない」と言ったところ、「だからモテないんだよ」と指摘されたというエピソードまで暴露され、「料理を女性に作ってもらうことに憧れがある」と弁明していた。
一方の淳は、自分は料理ができるので、「料理ができるのか?」という質問は、単なる日常会話に過ぎず、仮に「できません」という答えが返ってきたら、「じゃ、旦那さんが作るんだ」と聞き返すとのこと。3時のヒロイン・福田麻貴は「昔は女性がするのが当たり前」「女性はみんなオトナになったら、料理ができるようにならないとあかんねや」「合コンとかで『料理できるの?』と言われて、『できない』って言えないな」「ちょっとコンプレックスみたいな感じになってきたところに、大橋さんとかがこういうことを言ってくれた時に、『ほんまやん!』となる」と述べた。
そんな中、淳は「じゃ、言わせてもらいますけどね、女性誌でさんざん料理を作るオンナがモテるみたいなことを言って、さんざん料理スキルを高めましょうってあおってるんですよ。男子には、結婚したら女性が料理を作るんだって刷り込まれている人もいると思う」と、料理問題は女性が作った圧であると主張。ハセンアナは「いいぞ~!」と同調する。
ここで、なぜか志らくは「女性が、お母さんが料理を作っていたのは間違いだっていうのはおかしな話で」と言い出す。「日本は、お母さんが(料理を)作ってきたという文化があるわけですよ。中には本当の女中のようになって、苦しんでるお母さんたちもいたかもしれないけど、でも、お母さんが(料理を)作っていて幸せだった家庭もいっぱいある」「現代の女性が、そういう世代を否定するのは失礼」と持論を展開。誰も昔の女性を否定するようなことは言っていないので、話が飛躍しすぎな気はするが、このあたりが『グっとラック!』の視聴率が、いまいち伸びない理由……特に“女性視聴者”を逃している理由ではないだろうか。
志らくは「女性だからといって料理をする必要はない」と言ってしまうと、これまで専業主婦として家庭に貢献してきた年配の女性視聴者の生き方を否定していると思われることを恐れたのかもしれない。しかし、だからといって「現代の女性が、そういう世代を否定するのは失礼」とまで言い切ってしまうと、今度は現代の女性から「私たち、一言もそんなこと言ってませんけど?」と反感を買うだろう。味方をするふりをして、敵を作ってしまうわけだ。
それはハセンアナも一緒で「料理を女性に作ってもらうことに憧れがある」と女性を崇めるようなことを述べつつ、カメラの回っていないところでは「料理ができないとモテない」と言ってしまっている。「結局、女性を低く見ている」と言わざるを得ない小ネタがぽろぽろ出てきてしまうことから考えると、ポテサラ騒動以降も二人とも女性の味方になりきれていないのだ。
そうなると、女性視聴者の心をつかむには、女心に精通し、独身時代にはプレイボーイとして鳴らした淳頼みになるが、その淳が「女性誌が料理を作れとあおっていることについて、どう思う?」と女性陣に質問してしまう。淳が具体的な女性誌の名前を挙げたわけではないが、私個人の感覚としては「料理を作ればモテる」という記事は年々少なくなっているように感じる。
料理の代わりに増えたと感じるのが、筋トレの記事だ。お笑い芸人のゆりやんレトリィバァが、食事改善と筋トレで30キロ以上痩せたそうだ。ダイエットというと、痩せてきれいになることで恋愛に積極的になれる、つまり男性のためだと連想する人もいるだろう。しかし、「MAQUIA」11月号(集英社)によると、ゆりやんも今までは好きな人に振り向いてもらうためにダイエットをし、失恋するとリバウンドしていたそうだが、「体を鍛えて痩せることは、誰のためでもなく、自分のため」と気づいてから、結果を出せるようになったそうだ。
男性のための努力ではなく、自分のため。多くの筋トレ好き女性の意見を、ゆりやんは代弁した形になったのではないだろうか。同様に、昨今では料理に関しても、男性のためにするものではなく、日々の生活や自身の楽しみのためにするものという価値観になってきたのではないか。
その昔、「嫁の条件105カ条」を公言し、女性が自分に合わせることを当然としてきた淳が、この女性心理の変化を理解できるのか……。
船頭多くして船山に上るというが、メイン出演者を見る限り、この番組の先行きはなかなか厳しそうな気がしてならない。
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。