羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。
<今回の有名人>
「私も親バカかもしれませんが……」高畑淳子
(「週刊女性」2020年12月22日号、主婦と生活社)
若い方は驚かれるかもしれないが、昔のテレビというのは、結構なんでもアリだった。ファミリー向けドラマの銭湯のシーンで、女性のエキストラがバストとバストトップをもろだしにしていたし、トーク番組では司会者がタバコを吸っていた。大麻や覚醒せい剤で逮捕された芸能人が、少し時間をおいてテレビに戻ってくることも可能だった。
ところが時代は変わる。テレビ局がコンプライアンスを重視し、社会的良識を重んじるようになると、上記のような光景は一掃される。テレビ局、スポンサー、視聴者に嫌われないように、芸能人のみなさんは「正しく生きること」が求められているのかもしれないが、それでは視聴者たちが嫌う「正しくない生き方」の筆頭格は、“性犯罪”ではないだろうか。
女優・高畑淳子の息子で、俳優の高畑裕太が強姦致傷容疑で逮捕されたのは、2016年8月のこと。ドラマだけでなくバラエティー番組にも多数出演し、二世タレントとして頭ひとつ抜けていた感があった裕太だが、性犯罪を起こしたということで世間に与えた衝撃は大きかった。示談が成立し、不起訴処分となったものの、だからといって、今までどおり、テレビの世界に戻れるはずもない。
そうはいっても、芸能界の華やかさを味わってしまった、ほかの仕事を経験したことのない人が、芸能界以外の場所で生きていくのは、実質不可能だろう。「週刊女性」20年12月22日号(主婦と生活社)によると、裕太は19年8月に下北沢の小劇場で俳優としての活動を開始している。舞台はテレビほどスポンサーの意見が強くないだろうから、再出発の場としては適当だろう。舞台から始めて、映画というように、ゆっくり実績積み上げていけばいいのではないだろうか。
が、ちょっと足を引っ張りそうなのが、お母さんである女優・高畑淳子である。裕太が事件を起こした後、すぐに会見を開いて「芸能界に戻してはいけない」と話していたが、そもそも息子を売り込むために、バラエティー番組での共演も辞さなかった人だ。裕太が復帰し、経済的にも安定することを望んでいるだろう。その気持ちはわかるが、ちょっと「いらんこと」を言いすぎな気がしないでもない。
「週刊女性」の記者の直撃を受けた高畑は、記者に対し、「……まず、あの事件に対して、あなたはどう考えていらっしゃいますか? 本当に息子が、あんなことをしたと思われているのですか?」とカウンターパンチを仕掛けている。
そして高畑は「相手は被害届を出してすぐに“いくら出すんだ”と示談金を要求してくるなど、非常識なところがありました。それで警察は彼らの言い分がおかしいと判断して、不起訴処分にしたんです」と語り、ニュアンスとして“息子はやっていない、息子は悪くない”ということを匂わせている。
最後に「私も親バカかもしれませんが……。逃げてばかりじゃいけないなと思っています。私たち家族の4年間の苦しみを考えてほしいです」と、今後は事件に対して、反論する意思があるかのようにも思えるコメントを残し、去っていったという。
いろいろ言えないことも多いのだろうと推測できるが、記者会見では謝罪し、それが済んだら「被害者の椅子」に座ろうとすることは、得策でないように思える。それなら、示談にせず裁判で争えばよかったという声も出てくるだろうし、被害者側が高畑の言う「非常識なところがある人」の場合、“息子は悪くない”というニュアンスの発言をすると、反撃される恐れがないとはいえない。
高畑がこういう発言をすることで、世間に「女優として高い演技力を誇りながら、プライベートでは理知的でさばけたなお母さんだと思っていたけど、バカ親だった」という印象を持たれ、自分自身の好感度を下げる可能性もあるのだ。
もっとも高畑の「息子は無実」といった発言は、今に始まったことではなく、17年4月28日付のウェブサイト「女性自身」の記事においても、記者の質問に「彼は無実です」「あの子の人生が台無しになったんですよ!」と発言、やはり「息子はハメられた」と信じているようだ。
それでは、裕太は実際に、事件によって「人生台無し」になったのか?
確かに裕太のテレビ復帰は厳しくなったが、実際に同意があいまいな性交渉をしてしまったという意味では、自業自得な部分はあるだろう。一方で、お母さんである淳子の人生はというと、決まっていた舞台は降板しなかったものの、一時、テレビへの出演を控えたりしていたそうだ。淳子がテレビに出れば、性犯罪を思い浮かべる人もいるだろうから、その判断は有名人として妥当といえるだろうし、そうはいっても、実力のある女優だから、淳子にオファーが絶えることはない。こうなると、割を食っているのは、裕太のお姉さんである、女優・こと美ではないだろうか。
「週刊女性」19年8月6日号によると、こと美は裕太と意見がぶつかりがちな淳子に代わり、裕太の復帰を支えてきたそうだ。裕太が舞台に復帰したとき、こと美は「また何かあったら私は弟と縁を切ります」と言っていたという。言葉だけで解釈するとクールなように感じるが、オトナである裕太が復帰にこぎ着ける3年余の間、ずっと面倒をみていたわけで、実際はものすごく裕太に労力を割いていると言えるのではないだろうか。
もう一つ不思議に思うのが、淳子は裕太とバラエティー番組に出演するなど、芸能活動をプッシュしてきたのに、こと美のときにそれをしなかったのは、なぜなのかということである。こと美が自分一人の実力で仕事が取れるから心配ないと思ったのかもしれないが、お母さん、裕太をひいきしすぎではないだろうか。
番組名は失念したが、その昔、バラエティー番組で、淳子が「私が死んだら、この子(裕太)は税金とか払えないと思う」と話していた。経済力がなくて払えないという意味か、期日までに収める事務手続きができないという意味かはわからないものの、裕太への溺愛ぶりから考えると、こういう手間もお姉さんが背負わされるのかもしれない。
娘と息子がいると、母親が息子ばかりひいきするという話はよく聞くし、気の利く長女がつい家の尻ぬぐいをしてしまうのは、あるあるだろう。もし、高畑家もそのパターンに当てはまるとするのなら、お姉さんは長女の呪縛から逃れて、好きに生きてほしいと願わずにいられない。