「ドラマのこのシーンってありえるの?」「バラエティーのあのやり方ってコンプライアンス的にどうなの?」……テレビを見ていて感じた疑問を弁護士に聞いてみる、テレビ好きのための法律相談所。
<今回の番組>
『中居正広のミになる図書館 2時間スペシャル』(テレビ朝日系/6月12日午後7時~)
<今回の疑問>
『中居正広のミになる図書館』の生放送ロケで、映り込んだ一般人は肖像権の侵害を訴えられるのか?
6月12日に生放送された『中居正広のミになる図書館2時間スペシャル』(テレビ朝日系)で、リポーターとして出演したお笑いタレントの出川哲朗が、ロケ中に通りがかった一般人から怒鳴られるというハプニングがあった。出川は「ごめんなさい、愉快な方がちょっと……。生放送なんでいろんな方がいらっしゃって」と謝罪したが、視聴者からは「生放送だからこんなアクシデントが起こるんだ」「生放送やめろ」といった批判の声が上がっている。
今回は怒鳴った人の顔は映らなかったが、もし生放送のロケ中に一般人が偶然映り込み、本人は意図しないのに全国放送で顔が晒されてしまった場合、肖像権の侵害を主張し、テレビ局を訴えることはできるのだろうか? 「公共の場での撮影」について、アディーレ法律事務所の吉岡達弥弁護士に聞いた。
まず、肖像権の定義について、吉岡弁護士は以下のように述べる。
「肖像権とは、(1)理由なく自分の容貌や姿を撮影されない権利、(2)撮影された写真や動画を公表されない権利、のことをいいます。この権利は法律上保護されています。この権利を侵害し、侵害された人に精神的苦痛を与えれば、損害賠償を請求されます。ただし、肖像権侵害の判断は複雑です。放送の場合、放送目的、放送内容、放送の仕方、撮影された人の社会的地位、活動や発言の内容等によって侵害といえるかどうかが判断されます」
では、生放送中に一般人が偶然映り込み、本人は意図しないのに全国放送で顔が晒されてしまった場合、その人は肖像権の侵害を訴えられるのだろうか?
「肖像権の侵害を主張できる可能性があります。ロケですので、放送の目的と内容が事件についての報道等、公益性の高いものではありません。よって、目的と内容から放送が許されるということにはなりません。また、全国放送ですと情報の拡散範囲が大きいです」
そして、生放送でなくとも、番組側の放送方法やリポーターのコメントも、肖像権の侵害に当たる可能性があるという。
「リポーターの芸能人が、映った一般人を笑いものにするようなコメントをすると、放送の仕方としても侵害に当たる可能性があります。もし、笑いものにするために、その人が映ったシーンだけを放送したのであれば、さらに侵害となる可能性が高いです。ただし、撮影された人が公務員であり、公務中のことで、公益目的の撮影等であれば、国民からの税金によって公務を果たさなければならないため、肖像権侵害が成立しない傾向になります。加えて、映った人に対して、ネット上などで批判的なコメントが書き込まれた場合、精神的苦痛が生じる可能性もあり、肖像権の侵害を主張できる可能性があります」
吉岡弁護士によると、肖像権侵害の参考判例として、以下のものがあるという。
「生中継において、産業廃棄物等の収集に従事している様子を、無断で全国に放送されたというものです。肖像権やプライバシー権を侵害されたとして、テレビ局に対する損害賠償請求が認められました。ただ、司会のキャスターに対する損害賠償請求は棄却されています」
ところで、ドラマなどの撮影で道路を通行止めにすることもよくあるが、テレビ局や制作会社はどんな権利があって行っているのだろうか?
「道路は公共用物ですので、道路を通行以外の目的で使用する場合、道路使用の許可を所轄警察署から取る必要があります。許可をもらえれば、撮影等の目的で道路を使用することができます。テレビ局や制作会社は、その許可の上で使用していることになります。この場合、通行の邪魔にならないように使用しなければならない等の条件がつけられます。例えば、十分な交通整理要員の配置などが必要となります」
では、そうした撮影のために通行止めにしている場所で、「通行の邪魔だ」と文句を言った場合、一般人側が業務妨害罪等に当たる可能性はあるのだろうか?
「実際に通行の邪魔であれば、邪魔をしないように道路を使用しなくてはいけません。通行できるようにする対応が必要です。ただし、通行できるのに、理由なく文句を言って、撮影の妨害をすれば業務妨害罪が成立します」
テレビの撮影が公共の場で行われればトラブルも起こりうる。今回は大事にならずに済んだが、放送できないほどのトラブルや人権侵害により放送倫理・番組向上機構(BPO)の審理対象になる可能性もある。制作側には十分な配慮が必要だろう。
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