タグホイヤーから青島ビールまで…リーグ優勝賞金は驚愕の70億円! Jリーグも完敗の中国サッカー

――欧州や南米から有名選手を、あり得ない金額で“爆買い”することで有名となった中国サッカー・スーパーリーグ。今や、資金力や観客数ではJリーグを凌駕するほどになっている。ただし、あまりの状態に中国政府もやんわり規制に入っている状態のようだ。このまま、中国サッカーバブルは終焉してしまうのか?

「中国の人々にとって、金額は問題ではない」

 中国・スーパーリーグの取材を始めた際、広州恒大淘宝足球倶楽部(以下、広州恒大)のイ・ジャンス元監督(元韓国人選手)が語った言葉だ。当初、イ元監督の言葉にはピンとこなかったが、取材を続けるほど、その意味するところが身に染みてきた。

 近年、広州恒大はアジアサッカー連盟・チャンピオンズリーグ(AFC)で2度優勝している。そのため、中国スーパーリーグのレベルの高まりを疑う人は徐々に減ってきている。そんな実力もさることながら、驚くべきは中国スーパーリーグの市場規模だ。すでにアジアの域を脱し、英プレミアリーグ、スペインリーグ、独ブンデスリーガ、伊セリエA、仏リーグアンなどといった、世界トップリーグのそれを脅かそうとしている。単純に中継権の規模だけをみても全世界で6位。前述した欧州のリーグを除けば、中国スーパーリーグより中継権が高いリーグは世界にない。

 中国のスポーツメディア『體奧動力』は2015年9月、中国スーパーリーグと5年間の中継権契約を結んだ。合計金額は80億元(約1252億7722万円)である。體奧動力が1年間で支給する中継権料(約250億円)は、DAZNがJリーグに支給する中継権料(約210億円)よりも多い。一方、韓国Kリーグの中継料は1年間で60億ウォン(約5億5910万円)ほどだ。仮に21年から中国スーパーリーグの中継権を得たい企業は、さらに高い金額を支払うことになろう。なお中国の中継料は、各球団の投資が増加すると共に一気に上昇した。2013シーズンにはわずか1000万元(約1億6000万円)に過ぎなかった。

 中国最大の生命保険会社であり金融機関でもある平安グループは、中国スーパーリーグのネーミングスポンサーを担い続けている。17年に再延長契約を結んだ際には、5年間で総額1億4500万ドル(約15億6128万円)を支払うとした。世界的なスポーツ用品メーカーであるナイキは、19年6月から29年までの10年間、用品スポンサー契約を結び、現金のみで毎年約18億円を支給することにしている。実際に、支給される製品や現物を金額換算して合わせると、その約3倍となる見通しだ。スポンサーは、平安グループやナイキだけではない。DHL、Shell、TAG Heuer、青島ビールなど、世界的な企業が中国スーパーリーグのスポンサーに名乗りをあげている。
 スポンサーシップの規模が膨らむ中、中国サッカー協会と中国スーパーリーグが掲げた優勝賞金も破格となっている。19シーズンの優勝チームには、4億5000万元(約70億4684万円)が支給される。なお、Jリーグで優勝すると優勝賞金と分配金を合わせ約21億5000万円が支給される。韓国・Kリーグ優勝賞金は日本円にすると約5000万円である。欧州サッカー連盟(UEFA)チャンピオンズリーグ優勝賞金が25億円程度であることを考えると、中国スーパーリーグの優勝賞金がどれだけ大きいか伺い知れよう。なお欧州サッカー連盟(UEFA)チャンピオンズリーグは、ラウンドを通過するたびに賞金を受け取るため、優勝すれば合計100億円程度をもらうことになるのだが。いずれにせよ、中国大陸を制覇した恩恵がとびきり大きいという事実は揺るがない。

 このように企業が中国スーパーリーグを後援する理由は何か。それは単に中国の経済規模が大きいからというだけではない。サッカー人気そのものにも着目しているのだ。中国スーパーリーグの平均観衆数は24107人(18シーズン)だ。これは、独ブンデスリーガ(44421人)、英国プレミアリーグ(37906人)、メキシコ・リーガMX(27832人)、スペインリーグ・プリメーラディビジョン(27143人)、伊セリエA(24784人)に次いで6位。すでに米メジャーリーグサッカー、仏リーグアンを上回っている。Jリーグは18883人(1部)であり、Kリーグは6505人に過ぎない。中国スーパーリーグの人気は今この瞬間にも高まっている。企業はそのような成長するリーグそのものに投資したいと思っている訳だ。

 中国スーパーリーグを見ているとたびたび驚く。世界的な選手や監督があまりにも多く活躍しているからだ(下段コラム参照)。16年に、長春亜泰と山東魯能の試合を取材した際には、世界的な選手や監督に直接遭遇したこともある。韓国人であるイ・ジャンス監督を取材するためロッカールーム前で待機していると、欧州のおじさんにすれ違いざまに目であいさつされた。よく見ると、ドイツの有名選手・指導者のフェリックス・マガト(当時、山東魯能の監督)ではないか! 続いて身体が大きな選手がひとりロッカールームに入っていった。元イタリア代表のグラツィアーノ・ペッレである。韓国人のチェ・ヨンス氏が江蘇蘇寧で監督を務めていた頃には、ラミレス・サントス・ド・ナシメント(英プレミア・チェルシー出身)に直接インタビューすることもできた。

 選手を引き抜くため、各チームは多額の契約金をばらまいている。有名選手の“爆買い”だ。中でも最も大きな話題となったのは、16年12月、上海上港がチェルシーでプレーしていたブラジル代表出身のMF・オスカル・ドス・サントス・エンボアバ・ジュニオールを、6000万ポンド(約88億円)で引き抜いた事例だろう。チェルシーにとっても、過去最高の移籍金収入だった。ちなみに、Kリーグの最高移籍金記録もすべて中国スーパーリーグの球団が作った。全北現代でプレイしていたキム・ギフィが上海申花に行く際には約7億円が支払われている。2019シーズンも同じような金額で選手が移籍しており、これらは欧州の球団が支払う移籍金よりもはるかに高い水準だ。

 中国で活躍する世界レベルの選手たちの年俸の総額は、実際のところベールに包まれている。誰も彼らがもらっている正確な金額を知らない。欧州でプレイするトップクラスの選手たちの週給は5000万円程度となるが、それと似たようなレベル、もしくは高い金額をもらっているとの予測があるだけだ。というのも、欧州よりも少ない年俸で知名度や格が低いとされる中国でプレイする理由がないからだ。なお中国リーグは年俸だけでなく、“手当”も破格だ。同国で活躍した韓国人選手のひとりは、「手当のことは親友にも明かしたことがない」と話す。これは勝利給のようなもので、重要な試合で勝利すると、手当が詰め込まれたキャリーバッグを引いて家に行くという話も事実に近いという。筆者が確認した最大の手当額は、一試合900万円だった。

 冒頭に書いた「中国の人々にとって、金額は問題ではない」という命題は現在、世界中のサッカー関係者だけでなくファンまで感じ取っている。欧州や日本、韓国のサッカー界は「中国スーパーリーグは最も非効率的なリーグ」と非難するが、中国側はその非効率をあまり気にしていない。金額は問題ではないからだ。

 ただし、中国内では多額の金額を支払って選手を獲得しようという動きが制限されつつもある。中国サッカー協会は、オスカルの移籍騒動をきっかけに、移籍収支(=移籍金収入-移籍金支出)が赤字となる球団が一定水準以上の移籍金を使った際、“その100%を「サッカー発展基金」として支払うべし”という規定を設けた。また、最高移籍金や最高年俸などを制限する制度も協議されている。

 中国サッカー協会が移籍金と年俸を制限しようとしている理由は、「金満体質的な獲得競争が激化するから」ではない。それは、球団とスポンサーが巨額の金額を取り交わす際に、そのお金を横領する可能性を当局側が疑っているからだ。中国の関係者は、「欧州のマスコミに出てくる選手の年俸をそのまま信じてはならない。選手が高い年俸をもらっているのは事実だが、実際はそれほど大きな金額ではない」と証言する。習近平主席の就任後、中国は以前とは異なり、規制が非常に厳しくなっている。いくら大企業の会長といえども、会社の資金を勝手に使うことができない。そんな中、中国の複数の関係者は、巨額の移籍金や年俸を支給するようにみせかけて、その一部を横領している可能性があると指摘している。

 ただ、中国スーパーリーグの“非効率的なお金の宴”は、今後少なくとも5年は続く可能性が大きい。すでに、中国国内選手たちの年俸や移籍金も高騰しおり、すぐに「正常」に戻すには時間がかかる。中国は1年のうちに自国選手であってもチームに5人しか連れて来ることができないルールがあるため、中国人選手の移籍金も非常に高くならざるを得ないという背景がある。同国のサッカーカルチャーや業界は非常に活性化しているが、選手を育てる速度がそれに対応できていないのが現状だ。結果的に、良い選手、中でも若い選手たちの“身代”はとても高価になるしかない。そのような需要と供給の不均衡が解決しない限り、「異常」は解決されないはずだ。

 さらに中国は、サッカー協会という枠組みを超え、政府レベルでスポーツ産業を振興しようという計画を持ち合わせている。中国の産業振興は、日本や韓国など資本主義国家とは異なり国のテコ入れがすさまじい。中国政府は2050年までにスポーツ産業の規模を大幅にはぐくむよう公式な計画を発表しているが、その中でサッカーが占める産業規模の割合は実に60%を超える。人知れず“それなりの計画”を“それなりの方法”で推し進めているのだ。

 そのような文脈では、中国スーパーリーグはお金の力で引き続き発展する可能性がある。リーグの発展は、サッカーのレベルと大きく関連しない。タイ、インドネシア、ベトナムのようにサッカーのレベルが比較的低い国でもプロリーグの人気は高い。そして今、中国市場は全世界の資本が集まる場所となった。しかも、中国市場は非常に成功しにくいところでもある。中国人が好きなサッカーを通じて、自社のイメージを変えようとする試みは一朝一夕では叶わない。企業は多額の金額を市場に投じるしかないのだ。

 そういう意味で、ナイキ、DHL、TAG Heuerのような多国籍企業も手をこまねいているわけではない。彼らは中国スーパーリーグと引き続き縁を保ち続けている。中国スーパーリーグはそれ自体、活用度が非常に高く、現在では、欧州でも中国スーパーリーグの中継を難なく見ることができる。また、全世界で中国人脈、また中国社会との関係を維持している“華僑”へのアプローチ手段にもなる。彼らは中国に関連したコンテンツを熱狂的に消費している。サッカーもそんな主要なコンテンツのひとつとなった。

 中国スーパーリーグという存在はとても不可思議だ。外部から見ると“異常”な部分が多い。取材をしてみても、理解できないことが多いのだ。それでも、我々が想像もできない方法で成長を遂げてきたのも事実である。今では、中国政府も注目するビッグコンテンツ。中国スーパーリーグがどんな道を歩んでいくか予想することは難しいが、ひとつだけ明らかなのは、どんな形であれ、今後も成長を続けていく、ということだ。


リュ・チョン(Chung Ryu)

サッカー専門誌「スポータルコリア」、英国雑誌「フォーフォーツー」のエディターを経て、2013年よりサッカー専門メディア「フットボリスタ」の取材チーム長として活躍。2017年からは中国および中国サッカーに関する記事を韓国最大ニュースポータル「NAVER」に寄稿。サッカー・旅行に関する書籍を多数執筆。

世界のタレントが中国に!

 中国スーパーリーグでは、数多くの世界的プレイヤーが活躍している。例えば、ブラジルの有名選手であるフッキことジヴァニウド・ヴィエイラ・ジ・ソウザや、オスカル・ドス・サントス・エンボアバ・ジュニオールが所属するのは上海上港だ。

 パウリーニョことジョゼ・パウロ・ベセーラ・マシエル・ジュニオール、タリスカことアンデルソン・ソウザ・コンセイソンは広州恒大に所属。広州は香港の北西部に位置する中国第三の都市である。テクノロジー都市・深センや観光地・マカオにも近く、広東料理が味わえる地域だ。サッカー観戦だけでなく、現代中国の動向や文化を知る上では欠かせない土地である。

 同じくブラジル代表のレナト・アウグストは、北京国安に所属している。一方、アレックス・テイシェイラ、本文に登場するラミレス、エデル・チタディン・マルティンス、元伊代表のガブリエル・パレッタは江蘇蘇寧に所属。現地に行けばそのプレイを直接拝むことができるかもしれない。江蘇省には東洋のベニスと冠される「山塘街」もある。中国にサッカーを見にいくならオススメの地域のひとつだ。

 また伊代表のグラツィアーノ・ペッレ、ベルギー現役代表のマルアン・フェライニは山東魯能に所属している。山東省はビールで有名な青島が人気の観光スポットとなっている。それ以外にも中国スーパーリーグでは、独代表だったザンドロ・ヴァーグナー(天津泰達)、ムサ・デンベレ(広州富力)、ヤニック・フェレイラ・カラスコ(大連一方)も中国大陸を闊歩している。アルゼンチン代表のエセキエル・ラベッシとハビエル・マスチェラーノは河北華夏幸福で大活躍だ。天津、河北、大連は、ともに北京から近い。少し長めの休暇を取れるのであれば、各選手を観戦しながら周遊することもできるかもしれない。

 なお、フッキ(2016年)やオスカル(2017年)が中国リーグに移籍した際、メディアからは「金を稼いですぐに去るだろう」という予測がすう勢だった。しかし、彼らは3年以上も上海上港に在籍している。パウリーニョは広州恒大でプレイした後、FCバルセロナに移籍。再び広州に戻ってきている。

 監督の面々も豪華だ。バロンドールを受賞したファビオ・カンナヴァーロ監督は広州恒大を率いており、独出身の戦術家ロジャー・シュミットは、北京国安を指揮している。韓国代表が望んでいたスペインの名匠キケ・サンチェス・フローレスは、上海申花の監督を務めているし、故ヨハン・クライフの息子であるジョルディ・クライフは重慶当代力帆の指揮を任されている。韓国代表監督だったウリ・シュティーリケは、今や天津泰達の監督だ。中国旅行を楽しみながら世界レベルのサッカーを楽しめる。サッカーファンにとって、そんなぜいたくな時代が訪れている。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)

テンセントにネットフリックスも参戦! もはや毒肉まんは過去の話、国家も支援する「中国食動画」

――中華料理なんてものはない――中国の広大な国土の中で多様な民族がおりなす食を紹介する動画が今、熱い。さままざな形で同地のグルメを追求する動画が中国では大量に生産されており、ユーチューブなどで配信されている。13億人の人民がユーザーが熱狂する、ハイクオリティグルメ動画をご紹介!

 最国・雲南省にある屋台街が真俯瞰で映し出される。もうもうと煙が立ち込める小さな店内に、客たちは名物の牛肉串焼きを50本、100本単位で注文し、黙々と食べ続けている。ドローンなど最新の撮影機器を使用した映像は、欧米のドキュメンタリーとそん色がない。ナレーションは従来のドキュメンタリーのように静ひつさや重厚さはなく、話し言葉のようにポップな口調で展開される。そこに「1本が安くてもこれだけ食べると割高だよ」「串焼きを食べ過ぎるとがんになるって、ばあちゃんが言ってた」などの弾幕(コメント)が映像にかぶさって飛び交う。

 中国各地の串焼きを紹介する「人生一串」【1】のワンシーンだ。同作は、中国最大級の動画プラットフォーム「bilibili(ビリビリ)」が2018年夏に初めて制作したオリジナルのドキュメンタリー。

「人生一串」のシーズン1(全6話)は約5697万回再生され、約1万人のユーザーによるレビューも9・8と高スコアとなっている。7月のシーズン2の放映開始を前にして、多くのユーザーが続編を心待ちにしているようだ。同作の特徴は「90后」や「00后」といった90年~00年代生まれの若者をターゲットにしたところで、ビリビリのメイン層である二次元・アニメオタクに刺さるタイトルやナレーションを多用している。弾幕でユーザーたちがコメントを入れられるよう、あえて「ツッコミどころ」を要所要所に忍ばせてあるのだ。

 中国では近年、ドキュメンタリー番組が急増している。中国国務院「中国ドキュメンタリー発展報告2019」によれば昨年、全土で番組制作に投入された総額は約766億円(前年比19%増)、同市場規模は約980億円以上となっている。この急成長の原因のひとつは間違いなくグルメ番組の存在だ。昨年、中国で最も観られたのはグルメドキュメンタリー「風味人間」【2】で、視聴回数は10・7億回、2位の「舌尖上的中国シーズン3」(約4億回)もグルメ番組だ。他ジャンルと違ってグルメ番組に若者の視聴者が多いのは、ビリビリのような事例のほか、スマホやスマートテレビの動画配信で気軽にクオリティの高いグルメ番組が見られるからだろう。
 世界的に「食コンテンツ」がはやり始めたのは16年頃から。ネットフリックスやアマゾンプライムでは「シェフのテーブル」や「アグリー・デリシャス」などグルメ番組が数多く作られるようになり、時を同じくしてSNS上では「Tasty」や「Delish Kitchen」などオシャレで質の高いレシピ動画が多くの人々の間でシェアされるようになる。日本では「孤独のグルメ」や「深夜食堂」などグルメドラマがヒットし、食コンテンツはテレビ・動画のメインジャンルのひとつとなった。

 こうしたなか、中国の食コンテンツは世界の潮流から影響を受けつつ、独自の進化を遂げてきた。中国のグルメドキュメンタリーの元祖にして金字塔とも言われるのは12年に放送された「舌尖上的中国(舌の上の中国)」【3】だ。中国国営のCCTVが制作した同作は各地の名産品や郷土料理を紹介する内容で、3シーズン累計で10億人以上が視聴し、ネットで10億回以上再生されたオバケ番組。シーズン1(全7話)の撮影期間は13カ月、中国の70のエリアで撮影され、ドキュメンタリー番組として中国で初めてHDカメラが導入された。国内だけでなく、マレーシアなど東南アジアやベルギーなどEU圏のテレビ局が放映権を購入し、各国で放送されている。

 映像はいわゆる欧米のドキュメンタリーそのもの。さまざまな手法で撮られた食材や料理、美しい山間や海辺の風景。生産者やシェフへのインタビューなどが“国営”ならではの重厚なナレーションとともに紹介されていく。一部ではクルーにオランダ人など海外のカメラマンを起用していたという。シーズン3は昨年2月に放送が終了したが、今も動画配信プラットフォームではキラー・コンテンツのひとつとなっている。

「舌尖上的中国」の総監督を務めたドキュメンタリー映画の著名な監督・陳暁卿は中国メディアのインタビューで、「当時、世界でスローフードがはやりだして、その視点で中国グルメを紹介したいと思った」と述べている。同作が誕生した時期はまだ胡錦濤政権の時代。規律より拝金が横行していた。毒食品や偽装食品など食の現場で不正が横行した時期でもある。こうした情勢の中、中国では安全で安心な食品・原材料への関心が高まっていたこともあり、同作のテーマと視点は一般大衆の心に刺さったのだろう。

 シーズン1終了後、陳には1・6億円の投資が集まり、番組名の使用権は12億円の値がついたという。一躍、有名人となった陳はこの後シーズン2で番組を降板し、新たにテンセントと前述の「風味人間」という人気シリーズを手がけていく。テンセントビデオで独占配信された同作は昨年の中国動画ランキングで特別賞を受賞し、公開3時間後に再生回数が1億回を突破するなど大きな話題を呼んだ。日本はもちろん、欧米のドキュメンタリーをも超える高レベルの圧倒的なクオリティにいち早く目をつけたのがネットフリックスで、同社は陳と独占配信契約を結び、「風味人間」の続編に当たる「風味原産地/Flavorful Origins(邦題:美味の起源 奥深き潮州料理の世界へ)」【4】を制作。同作はネットフリックスオリジナルのドキュメンタリー作品で初となる中国語作品で、20言語に翻訳され、190カ国以上に配信された。

 陳が切り開いた中国のグルメドキュメンタリーは、ネットフリックスが独占契約したことにより、新たなステージに入った。豊富な資金力でトップクリエイターを招集し、最新の撮影技術やCGで学術的な食材に関する知識をわかりやすく、丁寧に伝えて世界中の人々に感動を与える。完成した映像は芸術品そのものだ。お笑い芸人による食レポや大食いを中心とした稚拙な食コンテンツがまん延する我が国との差は歴然としている。中国人動画配信者による、日本料理や食品の紹介は中国本土でも人気コンテンツだが、近い将来、中国のクルーが日本にやってきて、和食をテーマにしたクオリティの高いグルメドキュメンタリーを制作する日も近いのではないか。

 中国の食コンテンツでもうひとつ、注目すべきは素人による動画配信だ。グルメの世界においても多数の中国版ユーチューバーが出現し、芸能人並みの人気を得ている配信者もいる。

 テンセントが発表した「2018年十大美食紅人」(紅人は人気配信者の意)に挙がった10人はそれぞれ、オーソドックスな中華料理のレシピを紹介する人や中国やアジアのスイーツをひたすら食べ歩く女性、美少女大食い系などジャンルもさまざまだ。皆、「優酷(Youku)」やテンセントビデオ、ビリビリ、微博などのプラットフォームを利用しており、フォロワー数は数百万人を抱えている。先の十大美食紅人でトップに輝いた「美食家大雄」【5】は、家庭料理を紹介するごく普通の内容だが、語り口調や手際の良さ、短時間で美味しい料理を作る小技が受け、フォロワー数は800万人に上る。

 ひときわオリジナリティ溢れる人気配信者のひとりが「亦公室小野(オフィスの小野さん)」【6】という25歳の女性だ。ユーチューブにもチャンネルがあり、日本語の動画説明もある。ただし日本人ではなく、四川師範大学出身でIT企業に勤める高畑充希似の中国人だ。日本名を名乗っているのは日本文化に親しみを持つ90后だからなのかもしれない。彼女はオフィスにあるもので料理を作るという一風変わったテーマを採用。17年に「ウォーターサーバーで火鍋を作ってみた」がバズって有名配信者となった。工作や実験の要素を取り入れたクッキング動画が世界中で受け、ユーチューブのチャンネル登録者数は670万人を突破。昨年、中国本土在住者で唯一のカリスマユーチューバーとしてグーグルからも表彰された。ちなみにユーチューブのアクセスが禁止されている中国で、彼女を含めた多くの食関連の配信者がどうやって動画をアップしているのか謎だが、国内動画サイトで配信した作品を、香港などにいるパートナーがアップしているようだ。テーマが食で“無害”だからか、今のところ中国当局は黙認している様子。

 もうひとり、十大美食紅人で忘れてはいけないのが「李子柒」【7】だ。四川省の山奥で祖母と暮らすアラサーの美女で、動画にナレーションはなく、彼女の声も一切入らない。ただ淡々と素朴な日々の暮らしを伝えるものばかりだ。映像は素人とは思えないクオリティで、美しい風景とともに自給自足の中国スローライフを紹介する彼女の動画は瞬く間に人気が出た。微博のフォロワーはなんと1698万人。ユーチューブのチャンネル登録者数は496万人に上っている。

 ただし李子柒をめぐっては、さまざまなうわさも飛び交う。「四川省の省都・成都でDJをしていたが父の死をきっかけに田舎に戻った」という設定だが、売れないタレントでバックにプロデュースする男性がいるという話もある。彼女の微博での投稿は中国共産党青年団のアカウントが頻繁にリツイートして称賛していることから、中国政府のプロパガンダではないかと見る向きもある。数々の謎に包まれている彼女だが、それもまた魅力になっているのだろうか。

 彼らは動画広告や企業とのタイアップ、番組出演などでマネタイズする。中には法人化して投資を受ける配信者もいる。テンセントが発表した「2018微博アカウント発展レポート」によれば、月10億PV以上ある20のカテゴリーのひとつに「美食」がランクインしている。関連アカウントは現在1・5億以上あり、MCN(配信者のマネジメント会社)は150を越えるという。今後も関連コンテンツは増えていくだろう。

「食の本場」の名の通り、中国の食コンテンツは想像をはるかに超える規模で発展し、欧米を凌駕しつつある。今後、どんな作品が発表されるのか楽しみだ。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)

テンセントにネットフリックスも参戦! もはや毒肉まんは過去の話、国家も支援する「中国食動画」

――中華料理なんてものはない――中国の広大な国土の中で多様な民族がおりなす食を紹介する動画が今、熱い。さままざな形で同地のグルメを追求する動画が中国では大量に生産されており、ユーチューブなどで配信されている。13億人の人民がユーザーが熱狂する、ハイクオリティグルメ動画をご紹介!

 最国・雲南省にある屋台街が真俯瞰で映し出される。もうもうと煙が立ち込める小さな店内に、客たちは名物の牛肉串焼きを50本、100本単位で注文し、黙々と食べ続けている。ドローンなど最新の撮影機器を使用した映像は、欧米のドキュメンタリーとそん色がない。ナレーションは従来のドキュメンタリーのように静ひつさや重厚さはなく、話し言葉のようにポップな口調で展開される。そこに「1本が安くてもこれだけ食べると割高だよ」「串焼きを食べ過ぎるとがんになるって、ばあちゃんが言ってた」などの弾幕(コメント)が映像にかぶさって飛び交う。

 中国各地の串焼きを紹介する「人生一串」【1】のワンシーンだ。同作は、中国最大級の動画プラットフォーム「bilibili(ビリビリ)」が2018年夏に初めて制作したオリジナルのドキュメンタリー。

「人生一串」のシーズン1(全6話)は約5697万回再生され、約1万人のユーザーによるレビューも9・8と高スコアとなっている。7月のシーズン2の放映開始を前にして、多くのユーザーが続編を心待ちにしているようだ。同作の特徴は「90后」や「00后」といった90年~00年代生まれの若者をターゲットにしたところで、ビリビリのメイン層である二次元・アニメオタクに刺さるタイトルやナレーションを多用している。弾幕でユーザーたちがコメントを入れられるよう、あえて「ツッコミどころ」を要所要所に忍ばせてあるのだ。

 中国では近年、ドキュメンタリー番組が急増している。中国国務院「中国ドキュメンタリー発展報告2019」によれば昨年、全土で番組制作に投入された総額は約766億円(前年比19%増)、同市場規模は約980億円以上となっている。この急成長の原因のひとつは間違いなくグルメ番組の存在だ。昨年、中国で最も観られたのはグルメドキュメンタリー「風味人間」【2】で、視聴回数は10・7億回、2位の「舌尖上的中国シーズン3」(約4億回)もグルメ番組だ。他ジャンルと違ってグルメ番組に若者の視聴者が多いのは、ビリビリのような事例のほか、スマホやスマートテレビの動画配信で気軽にクオリティの高いグルメ番組が見られるからだろう。
 世界的に「食コンテンツ」がはやり始めたのは16年頃から。ネットフリックスやアマゾンプライムでは「シェフのテーブル」や「アグリー・デリシャス」などグルメ番組が数多く作られるようになり、時を同じくしてSNS上では「Tasty」や「Delish Kitchen」などオシャレで質の高いレシピ動画が多くの人々の間でシェアされるようになる。日本では「孤独のグルメ」や「深夜食堂」などグルメドラマがヒットし、食コンテンツはテレビ・動画のメインジャンルのひとつとなった。

 こうしたなか、中国の食コンテンツは世界の潮流から影響を受けつつ、独自の進化を遂げてきた。中国のグルメドキュメンタリーの元祖にして金字塔とも言われるのは12年に放送された「舌尖上的中国(舌の上の中国)」【3】だ。中国国営のCCTVが制作した同作は各地の名産品や郷土料理を紹介する内容で、3シーズン累計で10億人以上が視聴し、ネットで10億回以上再生されたオバケ番組。シーズン1(全7話)の撮影期間は13カ月、中国の70のエリアで撮影され、ドキュメンタリー番組として中国で初めてHDカメラが導入された。国内だけでなく、マレーシアなど東南アジアやベルギーなどEU圏のテレビ局が放映権を購入し、各国で放送されている。

 映像はいわゆる欧米のドキュメンタリーそのもの。さまざまな手法で撮られた食材や料理、美しい山間や海辺の風景。生産者やシェフへのインタビューなどが“国営”ならではの重厚なナレーションとともに紹介されていく。一部ではクルーにオランダ人など海外のカメラマンを起用していたという。シーズン3は昨年2月に放送が終了したが、今も動画配信プラットフォームではキラー・コンテンツのひとつとなっている。

「舌尖上的中国」の総監督を務めたドキュメンタリー映画の著名な監督・陳暁卿は中国メディアのインタビューで、「当時、世界でスローフードがはやりだして、その視点で中国グルメを紹介したいと思った」と述べている。同作が誕生した時期はまだ胡錦濤政権の時代。規律より拝金が横行していた。毒食品や偽装食品など食の現場で不正が横行した時期でもある。こうした情勢の中、中国では安全で安心な食品・原材料への関心が高まっていたこともあり、同作のテーマと視点は一般大衆の心に刺さったのだろう。

 シーズン1終了後、陳には1・6億円の投資が集まり、番組名の使用権は12億円の値がついたという。一躍、有名人となった陳はこの後シーズン2で番組を降板し、新たにテンセントと前述の「風味人間」という人気シリーズを手がけていく。テンセントビデオで独占配信された同作は昨年の中国動画ランキングで特別賞を受賞し、公開3時間後に再生回数が1億回を突破するなど大きな話題を呼んだ。日本はもちろん、欧米のドキュメンタリーをも超える高レベルの圧倒的なクオリティにいち早く目をつけたのがネットフリックスで、同社は陳と独占配信契約を結び、「風味人間」の続編に当たる「風味原産地/Flavorful Origins(邦題:美味の起源 奥深き潮州料理の世界へ)」【4】を制作。同作はネットフリックスオリジナルのドキュメンタリー作品で初となる中国語作品で、20言語に翻訳され、190カ国以上に配信された。

 陳が切り開いた中国のグルメドキュメンタリーは、ネットフリックスが独占契約したことにより、新たなステージに入った。豊富な資金力でトップクリエイターを招集し、最新の撮影技術やCGで学術的な食材に関する知識をわかりやすく、丁寧に伝えて世界中の人々に感動を与える。完成した映像は芸術品そのものだ。お笑い芸人による食レポや大食いを中心とした稚拙な食コンテンツがまん延する我が国との差は歴然としている。中国人動画配信者による、日本料理や食品の紹介は中国本土でも人気コンテンツだが、近い将来、中国のクルーが日本にやってきて、和食をテーマにしたクオリティの高いグルメドキュメンタリーを制作する日も近いのではないか。

 中国の食コンテンツでもうひとつ、注目すべきは素人による動画配信だ。グルメの世界においても多数の中国版ユーチューバーが出現し、芸能人並みの人気を得ている配信者もいる。

 テンセントが発表した「2018年十大美食紅人」(紅人は人気配信者の意)に挙がった10人はそれぞれ、オーソドックスな中華料理のレシピを紹介する人や中国やアジアのスイーツをひたすら食べ歩く女性、美少女大食い系などジャンルもさまざまだ。皆、「優酷(Youku)」やテンセントビデオ、ビリビリ、微博などのプラットフォームを利用しており、フォロワー数は数百万人を抱えている。先の十大美食紅人でトップに輝いた「美食家大雄」【5】は、家庭料理を紹介するごく普通の内容だが、語り口調や手際の良さ、短時間で美味しい料理を作る小技が受け、フォロワー数は800万人に上る。

 ひときわオリジナリティ溢れる人気配信者のひとりが「亦公室小野(オフィスの小野さん)」【6】という25歳の女性だ。ユーチューブにもチャンネルがあり、日本語の動画説明もある。ただし日本人ではなく、四川師範大学出身でIT企業に勤める高畑充希似の中国人だ。日本名を名乗っているのは日本文化に親しみを持つ90后だからなのかもしれない。彼女はオフィスにあるもので料理を作るという一風変わったテーマを採用。17年に「ウォーターサーバーで火鍋を作ってみた」がバズって有名配信者となった。工作や実験の要素を取り入れたクッキング動画が世界中で受け、ユーチューブのチャンネル登録者数は670万人を突破。昨年、中国本土在住者で唯一のカリスマユーチューバーとしてグーグルからも表彰された。ちなみにユーチューブのアクセスが禁止されている中国で、彼女を含めた多くの食関連の配信者がどうやって動画をアップしているのか謎だが、国内動画サイトで配信した作品を、香港などにいるパートナーがアップしているようだ。テーマが食で“無害”だからか、今のところ中国当局は黙認している様子。

 もうひとり、十大美食紅人で忘れてはいけないのが「李子柒」【7】だ。四川省の山奥で祖母と暮らすアラサーの美女で、動画にナレーションはなく、彼女の声も一切入らない。ただ淡々と素朴な日々の暮らしを伝えるものばかりだ。映像は素人とは思えないクオリティで、美しい風景とともに自給自足の中国スローライフを紹介する彼女の動画は瞬く間に人気が出た。微博のフォロワーはなんと1698万人。ユーチューブのチャンネル登録者数は496万人に上っている。

 ただし李子柒をめぐっては、さまざまなうわさも飛び交う。「四川省の省都・成都でDJをしていたが父の死をきっかけに田舎に戻った」という設定だが、売れないタレントでバックにプロデュースする男性がいるという話もある。彼女の微博での投稿は中国共産党青年団のアカウントが頻繁にリツイートして称賛していることから、中国政府のプロパガンダではないかと見る向きもある。数々の謎に包まれている彼女だが、それもまた魅力になっているのだろうか。

 彼らは動画広告や企業とのタイアップ、番組出演などでマネタイズする。中には法人化して投資を受ける配信者もいる。テンセントが発表した「2018微博アカウント発展レポート」によれば、月10億PV以上ある20のカテゴリーのひとつに「美食」がランクインしている。関連アカウントは現在1・5億以上あり、MCN(配信者のマネジメント会社)は150を越えるという。今後も関連コンテンツは増えていくだろう。

「食の本場」の名の通り、中国の食コンテンツは想像をはるかに超える規模で発展し、欧米を凌駕しつつある。今後、どんな作品が発表されるのか楽しみだ。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)

NBAに続き『スラムダンク』も中国締め出しか? 香港デモめぐり、井上雄彦が新たな標的に…… 

 10月4日、米プロバスケットボールNBAの人気チームの幹部が香港デモを支持するツイートをTwitterに投稿したところ、中国が猛反発。国営中央テレビ(CCTV)が試合の放映を中止したり、現地スポンサー企業が広告出稿を取りやめるなど各所に影響を及ぼし、NBAは謝罪に追い込まれたが、日本人の企業や著名人にとっても対岸の火事ではなさそうだ。

 香港紙「香港01」(10月9日付)によると、ここへきて、中国で絶大な人気を誇るバスケットボール漫画『スラムダンク』の作者・井上雄彦氏に対し、怒りの矛先が向けられているという 

 今から約4カ月前、香港デモを支持する河野太郎外相(当時)のツイートなどに対して「いいね」を押していたことが、なぜか10月8日になって中国版Twitter「微博」で話題となり、強い反発の声が上がっているのだ。

『スラムダンク』は中国でも大人気で、多くの信者が存在するが、それでも井上氏の行動は許せなかったようで、微博上は「井上雄彦が“港独(香港の独立)”を支持している。中国のネット民は(『スラムダンク』の)ボイコットの意思を示すべきだ!」「井上雄彦が港独を支持するなんてとても複雑。好きな漫画家だったのに。芸術活動に携わる人間が、政治に口を挟むべきではない」などといった、井上氏に対する非難や失望の声であふれていた。中には、「彼が港独を支持するなら、俺はもう海賊版しか買わない」といった暴論まで見られる。

 中国でも近年は著作権を重視するようになり、海賊版への取り締まりを強化しているが、『スラムダンク』だけは黙認……なんてことにならなければいいが。

 

NBAに続き『スラムダンク』も中国締め出しか? 香港デモめぐり、井上雄彦が新たな標的に…… 

 10月4日、米プロバスケットボールNBAの人気チームの幹部が香港デモを支持するツイートをTwitterに投稿したところ、中国が猛反発。国営中央テレビ(CCTV)が試合の放映を中止したり、現地スポンサー企業が広告出稿を取りやめるなど各所に影響を及ぼし、NBAは謝罪に追い込まれたが、日本人の企業や著名人にとっても対岸の火事ではなさそうだ。

 香港紙「香港01」(10月9日付)によると、ここへきて、中国で絶大な人気を誇るバスケットボール漫画『スラムダンク』の作者・井上雄彦氏に対し、怒りの矛先が向けられているという 

 今から約4カ月前、香港デモを支持する河野太郎外相(当時)のツイートなどに対して「いいね」を押していたことが、なぜか10月8日になって中国版Twitter「微博」で話題となり、強い反発の声が上がっているのだ。

『スラムダンク』は中国でも大人気で、多くの信者が存在するが、それでも井上氏の行動は許せなかったようで、微博上は「井上雄彦が“港独(香港の独立)”を支持している。中国のネット民は(『スラムダンク』の)ボイコットの意思を示すべきだ!」「井上雄彦が港独を支持するなんてとても複雑。好きな漫画家だったのに。芸術活動に携わる人間が、政治に口を挟むべきではない」などといった、井上氏に対する非難や失望の声であふれていた。中には、「彼が港独を支持するなら、俺はもう海賊版しか買わない」といった暴論まで見られる。

 中国でも近年は著作権を重視するようになり、海賊版への取り締まりを強化しているが、『スラムダンク』だけは黙認……なんてことにならなければいいが。

 

ジャッキー・チェンは今や傍流…ブルース・リーから『イップ・マン』へ! カンフー映画の盛衰と進化の旅

――ブルース・リーやジャッキー・チェンの主演作を中心に、日本でも一大ブームを巻き起こし、後にハリウッド映画にも大きな影響を与えたカンフー映画。一方、近年の日本で話題になったのはジャッキーの主演作程度だ。こうしたカンフー映画は、その原産地の香港と、返還を受けた中国でどのように進化を遂げたのか?

 本誌読者であれば、一度は心を奪われたはずのブルース・リーやジャッキー・チェンのカンフー映画。本稿では1970~80年代に世界的ブームとなった香港産カンフー映画が、後の香港・中国映画に与えた影響、そして近年のカンフー映画の状況を有識者の声を交えながら探っていく。まずは、ファンの間では広く知られたカンフー映画の歴史や基礎知識をざっくりとおさらいしておこう。

 日本でカンフー映画が広く知られるようになったのは、73年の『燃えよドラゴン』(ブルース・リー主演)公開からだが、それ以前にもカンフー映画と呼べる作品は存在した。一般的に「カンフー映画の元祖」といわれるのは、実在の武術家のウォン・フェイホンをモデルにした49年の作品『黄飛鴻傳上集・鞭風滅燭』。そして50年代には、彼を主人公とした作品の量産が始まり、香港ではカンフーの見せ場をメインに据えた作品が多くなった。

 その中で生まれたヒット作のひとつがジミー・ウォング監督・主演『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』(70年)だったが、アメリカで同作品を見たブルース・リーはアクションのレベルの低さに憤慨。彼が香港で映画製作を行うきっかけになったという有名な逸話がある。そして語り尽くされている話だが、截拳道(ジークンドー)の創始者であり本格的な武道家であるブルース・リーが見せたアクションは、それまでの映画史のアクションとはまったく別次元のものだった。アクション映画、アジア映画について主に執筆するライターの藤本洋輔氏は次のように話す。

「ブルース・リーは現役の武道家として、さまざまな格闘技の要素を映画に持ち込んだ功績も大きいです。カンフーと聞くと中国武術をイメージする人が多いと思いますが、そこには多くの格闘技の要素が取り入れられています。特にブルース・リーは、極めて実践的な技術体系を持った詠春拳(少林武術を元にしたとされる徒手武術)をベースに、実際に総合格闘技の要素も取り入れている。映画を見ればわかるように、ブルース・リーは当時からフィンガーグローブを使用しており、関節技を決める場面もありました」(藤本氏)

 若い頃から路上でケンカに明け暮れていたブルース・リーは、武道家になってからもあらゆる格闘技を研究。蹴り技ではクラシックバレエの動きも参考にしたという逸話も残っている。既存の武道の形から自由なブルース・リーのアクションが世界に衝撃を与えた一方で、ジャッキー・チェンのアクションもまた違った新しさを持っていた。
「ジャッキー・チェンは映画のスタントの技術体系を作り上げた人であり、それまではシリアスなアクションがベースだったカンフー映画に、コメディテイストを取り入れた人でもありました。その背景には、ジャッキーが(サモ・ハン、ユン・ピョウらも学んだ)七小福という京劇のグループに所属していたことと、バスター・キートン等のサイレント時代の喜劇俳優の影響があるでしょう。またジャッキーも(アメリカの格闘家)ベニー・ユキーデと戦う『スパルタンX』(84年)で総合格闘技も取り入れている。中国武術が中心の動きだったカンフー映画は、その頃からさまざまな要素を取り入れて進化を続けてきました」(藤本氏)

 映画評論家のくれい響氏もこう続ける。

「80年にジャッキー・チェンが監督・主演した『ヤング・マスター/師弟出馬』はカンフー映画の集大成的な作品で、それ以前のカンフー映画を過去のものにした作品と言えます。また香港の映画界では、82年に海外のアクションを取り入れた『悪漢探偵』が記録的なヒットを樹立し、カーアクションやガンアクションの映画への需要が増加。ジャッキーも『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(85年)など現代の刑事モノに進出するようになりました」

 そうした現代香港を舞台とした作品群の中で、特に話題を呼んだのがジョン・ウー監督の『男たちの挽歌』(86年)だ。香港黒社会に生きる男たちの友情と裏切りを、激しいアクションとともに描いた同作は、“香港ノワール”の代表的な作品で国外での人気も高い。同作について映画ライターの平田裕介氏はこう話す。

「カンフーではなくガンアクションの映画ですが、この作品にも香港映画ならではの過剰さやケレン味があります。実際に撃ったら当たりそうにない2丁拳銃も、そのカッコよさにしびれましたし、チョウ・ユンファが昔の仲間にリンチされる場面で、後ろにJALのネオンが映っているような香港のエキゾチックな景色もいいんです」

 あらゆる要素が過剰で、ごちゃ混ぜ感が強いのは、カンフー映画を含めた香港映画の特徴だろう。映画批評家の佐藤忠男氏は『中国映画の100年』(二玄社)で、『ポリス・ストーリー』や『男たちの挽歌』などに触れながら「香港映画は呆れるほどに猛烈なアクションで娯楽性を追求する」と言及。香港にはまったく違う種類があることを強調し、カンフー映画は「概して言えば子ども向きの低俗もの」と述べつつも、その頃の香港映画の状況をこう分析していた。

「京劇のアクロバット演技の伝統に、商業だけが存在理由の香港の土地柄が結びつき、さらに1997年に本土返還になったらあとはどうなるかわからないから稼げるうちに稼げるだけ稼がねばならないという強い意志でそれが強化されて、世界の映画史上でも珍しい徹底した商業主義路線が成立した」(佐藤忠男・前掲書)

 続く90年代のカンフー映画ではジェット・リー主演の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズ(91年~)がヒット。古装片(時代劇)のブームが起こるが、長くは続かなかった。

「ドニー・イェンが作品に主演するようになったのもその頃からですが、当時の香港はアクション映画が不遇の時代。彼も苦労を続けましたし、すでに香港でキャリアを築いた人たちは活躍の場を海外に移していきました」(くれい氏)

 そして99年に大ヒットしたハリウッド映画『マトリックス』にはカンフーアクション指導としてユエン・ウーピン(『ドランクモンキー 酔拳』などを監督)が参加。彼は00年の中国・香港・台湾・米国合作映画で米国アカデミー賞4部門を受賞の『グリーン・デスティニー』(00年)やタランティーノ監督の『キル・ビル』(03年~)シリーズにも参加することになる。

「これらの映画はハリウッドと香港のハイブリッドな作品なんですよね。『マトリックス』では、キアヌ・リーブスが最先端のVFXと融合したカンフーアクションを見せていますし、『グリーン・デスティニー』の竹林の中を舞うようなアクションは、香港最初の巨匠といわれているキン・フーのワイヤーワークをCG処理でさらに進化させたもの。ちなみにその頃は、三銃士がワイヤーワークで飛び回る『ヤング・ブラッド』(01年)という映画までありました(笑)。当時はハリウッドもスタローン的な肉体を売りにした俳優のアクション映画が一段落した時期で、アクション映画に新しい要素を求めていました」(平田氏)

 同時期にはジャッキー・チェンやジョン・ウーもハリウッドに進出。香港のカンフー映画の技術体系や、そこで育った人材は世界の映画市場に羽ばたいていく。

「一方で香港では、93年の『ジュラシック・パーク』の公開の頃からハリウッド映画が強くなり、自国の映画の製作本数が減少傾向に。ブルース・リーやジャッキー・チェンの映画を手がけてきた映画会社・ゴールデン・ハーベストのスタジオが98年に閉鎖したのは、そんな時代の変化を象徴する出来事でした」(くれい氏)

 同時期の香港映画ではチャウ・シンチー監督の『少林サッカー』(01年)、『カンフー・ハッスル』(04年)なども話題に。なお『カンフー・ハッスル』は中国・香港の合作映画。97年の返還後の香港映画は、中国との合作が一般化していった。

「返還前の香港映画は中国では外国映画の扱いで、ジャッキー・チェンの作品も94年の『酔拳2』あたりからこっそり公開された程度。広くは上映されていませんでした。チャウ・シンチーの『少林サッカー』も、少林寺をバカにしすぎと取られたのか、中国では公開されていません」(くれい氏)

 詳細は30日公開の記事にゆずるが、検閲国家の中国では、映画での公権力の批判はNG。際どいギャグなども通りにくい。そのため万人向けのアクション時代劇などが作られやすくなり、中国との合作が一般化した香港映画では、猥雑で活力あふれるローカル色が失っていった……との見方もある。

「サモ・ハン・キンポーに監督・主演作『おじいちゃんはデブゴン』(16年)についてインタビューをした際、『中国映画は制約が多くて苦痛だからもう監督はしたくない』と話していました」(平田氏)

 一方でジャッキー・チェンやチャウ・シンチーの映画は中国でもヒットしている。

「笑いの表現はギリギリでも、良い意味で思想のないエンタテインメント作品を作るチャウ・シンチーなどは、検閲もさほど足かせにはならないと思います。一方で香港ノワールの代表的作家のジョニー・トーや、ホラー映画の作り手パン・ホーチョンのように、『こういう映画を作りたい』という明確な思想がある人は、中国での映画製作は難しい。実際に彼らは香港を軸足にして活動を続けています」(藤本氏)

 そんな状況下で香港・中国で合作されるカンフー映画はどのように変わったのか。まず近年のカンフー映画の代表作として挙げられる作品で、中国でも大ヒットしたのがドニー・イェン主演の『イップ・マン』シリーズ(08年~)だ。

 イップ・マンはブルース・リーに詠春拳を教えた人物で、日中戦争下で日本軍に財産を没収され、困窮する経験もしている。シリーズ第1作の『イップ・マン 序章』では日本兵を倒す場面がクライマックスだ。藤本氏は『イップ・マン』の人気について「彼が民衆の側に立ち、犯罪者や権力と戦うヒーローとして描かれていることがまず大きい」と話す。くれい氏も『イップ・マン』ヒットの背景を以下のように解説する。

「『イップ・マン』の2年前にはジェット・リーや中村獅童が出演した『SPIRIT』(06年)というカンフー映画もヒットしていますが、中国人の武道家が日本人の敵を倒す……という話は『イップ・マン』の1作目と一緒。『イップ・マン』はその構成をなぞって成功した作品とも言えますし、反日ドラマが中国で増加する流れに乗った作品とも言えます」(くれい氏)

 また藤本氏は、ドニー・イェンのリアル志向のカンフーアクションの迫力も、やはり作品の成功に寄与していると分析する。

「ドニー・イェンがリアル志向のアクションに取り組むようになったきっかけには、日本でも話題になったタイの映画『マッハ!!!!!!!!』(03年)の存在がありました。同作はマジ当て(リアルヒッティング)や危険なスタントを前面に押し出した作品で、元をたどればジャッキーの強い影響下にある作品。それに触発されたドニー・イェンは、『SPL/狼よ静かに死ね』(05年)の撮影中から試みていたMMA(Mixed Martial Arts 混合格闘技)を本格的にアクションに導入。07年には関節技なども細かく見せる『導火線 FLASH POINT』という作品を作っています。こちらは、カンフー映画が現代化していくひとつのターニングポイントと言える作品でしょう」(藤本氏)

 平田氏が「『ボーン・アイデンティティー』(02年)から始まる『ボーン』シリーズで、世界のアクション映画の潮流が一気にリアル志向に変わった」と話すように、今や世界のアクション映画は国境を越えた相互作用のなかで進化をするものになったわけだ。
「『ボーン』シリーズにも『マトリックス』や香港映画に参加していた人たちが数多く参加し、後に彼らは『ジョン・ウィック』(14年)など最先端のアクション映画を生み出しました。また『キングスマン』(14年)や『キック・アス』(10年)のアクションを手がけているのも、ジャッキーの弟子のブラッド・アランです」(藤本氏)

 そのようにアクション映画が現代化・リアル志向に変化する中で、往年のジャッキーやブルース・リーが見せたような純粋なカンフー映画は減少。「ただ、今もカンフー的な要素が強く、香港映画のスピリットを感じる作品はあります」と平田氏は話す。

「孫文の暗殺をもくろむ敵をひたすらアクションでなぎ倒しまくっていく『孫文の義士団』(09年)は、カンフーイズムを猛烈に感じる作品でした。また『コール・オブ・ヒーローズ 武勇伝』(16年)のアクション監督はサモ・ハン。内戦下の中国が舞台の作品で、アクションはカンフーまみれです。あとカンフーへのリスペクトを感じたのはドニー・イェン主演の『カンフー・ジャングル』(14年)。過去に名を馳せたカンフーの達人たちが路頭に迷う姿も描き、現実のカンフー映画の衰退が反映されたレクイエムのような作品でもあります」

 またカンフー的なアクションを新しい描き方で表現する作品も登場している。

「『ファイナル・マスター 師父』(15年)は香港ではなく中国本土出身のシュー・ハオフォンが監督した作品。派手さやケレン味はありませんが、その分リアルで怖いんです。香港映画とは違うもの、新しいものを撮ろうという監督の意図が伝わってくるおもしろい作品でした」(平田氏)

 今の時代でも、撮り方次第でカンフー映画はおもしろくできるわけだ。

「シュー・ハオフォン監督はもともと武侠小説を書いていた人で、映画の中でも武術家の思想や生き様をメインに描いています。映像も絵画のような雰囲気で非常に独特ですね。“カンフーそのもの”へのリスペクトを捧げつつも、表現として少しひねったことを行っている点は『カンフー・ジャングル』と同じだと思います」(藤本氏)

 一方で中国映画では、『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』(17年)や『オペレーション:レッド・シー』(18年)のようなミリタリーアクション超大作、『流転の地球』(19年)のようなSF超大作が自国で大ヒット中。「ハリウッド大作を意識したようなCGバリバリの作品や、解放軍全面協力の国策的な映画が主流になってきています」とくれい氏は話す。また香港でも、自国の映画よりハリウッド映画が強い状況は変わっておらず、カンフー映画の人気は想像以上に低いようだ。

「香港の20代の人と話すと、ハリウッド映画や日本のアニメなどには詳しくても、昔のカンフー映画はほとんど知らなかったりしますからね。ショウ・ブラザーズの映画がDVD化されたのも、ハリウッドでカンフー映画が話題になった00年頃からですし、古いものを見直す文化があまりない国なんです。ただ、タランティーノの新作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(8月30日公開)にもブルース・リーが登場しますし、そうしたきっかけで香港でもまたカンフー映画に注目が集まるかもしれません」(くれい氏)

 藤本氏も「今後は配信の分野でカンフーの人気が高まる可能性はある」と話す。

「ドラマでもアクション要素の強い作品は増えていますし、ドニー・イェンが『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(16年)に出演したように、アメリカでもアジア人俳優の活躍の機会は増えています。アクションドラマ『バッドランド~最強の戦士~』(15年~)は、ジャッキーが見出した中国系アメリカ人俳優のダニエル・ウーが製作・主演していますし、『ザ・レイド』のイコ・ウワイスが主演でNetflixで配信予定の『Wu Assassins』もカンフーアクションが見られそうなドラマです」(藤本氏)

 香港映画では中心から退き、中国でもメインの存在ではないカンフー映画だが、世界には一定数のファンがおり、“ジャンルムービー”的なポジションは確立しているわけだ。

「そもそも純粋なカンフー映画というのは、時代や舞台を限定しないと成立し得ない作品で、ジャンルとしてはかなり特殊なもの。現代の話にすると銃などの要素が入ってきて、違う種類のアクション映画になってしまうんです」(藤本氏)

 優れた性能の武器が存在する世界では、アクションをリアルに進化させないと絵空事に見えてしまうカンフー映画だが、「カンフー映画のいちいち腹を何発も殴ったりするアクションは、ムダなんですけどやっぱり面白いんですよね(笑)」と平田氏。香港で育まれたサービス精神も過剰なアクションは、これからもポップな存在として映画やドラマの中で受け継がれていくはずだ。

香港で公開されない新作も……ジャッキー・チェンも今や香港で嫌われ者?

 ブルース・リーと並ぶカンフー映画界の2大スターで、今も現役で活躍中のジャッキー・チェン。だが先の香港の「逃亡犯条例」改正反対の大規模デモについては、インタビューで「詳しい事情は知らない」と答えて大ひんしゅく。デモで香港が揺れる最中に、YOSHIKIがジャッキーとの会食写真をインスタグラムにアップして炎上する騒動もあった。そもそも彼は中国映画家協会副主席という肩書も持っており、過去には中国共産党を擁護する発言も行っている。

「彼はもともと中国(安徽省)にルーツを持つ人ですし、フィルムメーカーとしていち早く中国で映画を成功させた人でもある。映画界で後進を育てた功績なども大きい人ですが、意思を持って香港に残った映画人からは嫌われても仕方ない立場だと思います」(藤本氏)

 香港での一般人からの人気も今はないという。

「はっきり言って、中国資本メインになった近年のジャッキーの映画はおもしろくなくなっていますし、現に香港で公開されない作品も出てきている。残念ながら、彼の存在は香港人の心にはまったく残っていない状況です」(くれい氏)

 なんだかんだでジャッキーの新作を今も楽しみにしている日本人のほうが、今や香港人以上にジャッキーにとって優しい存在となっているのだ。(サイゾー8月号『中韓(禁)エンタメ大全』より)

「龍角散は中毒性があって危険!?」中国紙、日本の“神薬”に警鐘を鳴らすも人民は意に介さず

 日韓関係の影響で日本を訪れる韓国人の数が激減している一方で、日本政府観光局(JNTO)の発表によると、8月の中国人観光客数は前年同月比16.3%増の100万600人と好調を維持。中国国内の景気悪化で消費力は弱まっているものの、日用品をはじめとする日本製品への人気は根強い。そのひとつが薬で、中国人の一部の間では「神薬」とあがめられている。ところが、中国ではそれを面白く思っていない人たちがいるようだ。

「澎湃新聞」(9月25日付)によると、浙江大学医学院附属第一医院の中国版LINE「微信(WeChat)」公式アカウントが、こんな投稿をした。

〈大正(製薬の)風邪薬、白兔止痛片(エスエス製薬の解熱鎮痛薬「イブA錠」のこと)……あなたはこの島国の神薬の“迷信”をまだ信じるのか? 真相を掘り起こそう〉

 同薬学部の専門家の主張によると、日本の薬は効き目が強すぎるというのだ。大正製薬の「パブロンゴールドA」に含まれる成分のうち、いずれも中国国内では目にすることはないという。そして、「風邪薬の多くの成分は、それぞれの調子の悪い症状を緩和するだけで、風邪の経過を短くするわけではない」と指摘。風邪をひいた時にはその症状に合った成分を選択すべきで、余計な成分は人体にとって副作用を引き起こすにすぎないと強調する。

 また、中国人に人気の「龍角散せき止め錠」についても言及。せきを鎮める作用のあるジヒドロコデインリン酸塩やノスカピンといった成分は、中国製の薬ではほとんど見ることがなく、特に前者には中毒性があるため、長期間使用するべきではないと警鐘を鳴らす。これが投稿されたのは9月23日だった。10月1日からの国慶節連休に日本を訪れ、“神薬”を爆買いする観光客を意識したネガティブキャンペーンだろうか。

 中国では食品や製薬における相次ぐ不祥事により、消費者は安全性に対して非常に敏感になっているため、この報道を受けて不買の動きが広がるかと思いきや、ネット上では意外な反応が多かった。「少なくとも私はイブを飲むとすぐに効果が現れる」「これだから国産の薬は売れない」「効果のある薬には副作用があるもの。効果が不明で副作用も不明な薬よりよっぽどいい」などと、日本の“神薬”への信頼は揺るぎない。

 中国の製薬業界が信頼を取り戻すまでの道のりは遠そうだ。

(文=大橋史彦)

中国インカレ女子陸上競技に男性が参戦!? ホルモン投与による副作用説も……

 スポーツ競技は最も公平さが求められる分野のひとつだが、中国の女子陸上界で、それを根底から覆す疑惑が持ち上がっている。「香港01」(9月25日付)によると、7月下旬に開催された中国全国大学陸上競技選手権の女子4×100mリレーで金メダルを獲得した湖南省チームのうち、2人が男性ではないかというのだ。

 短髪ゆえに男性っぽく見えるというのは他の競技でもよくあることだが、それだけではここまでの騒動にはならない。くだんの2人には体に女性特有の丸みがなく、骨格が男性に近い。脂肪がほとんどないにもかかわらず、腰のくびれもないのだ。2人は5月に開催された「IAAF世界リレー2019横浜大会」にも出場しており、競技後にテレビのインタビューに応じたのだが、その映像も衝撃的だった。うち1人の声が完全に男性そのものだったからだ。

 この疑惑に、国内外のメディアが注目。特に韓国のメディアが率先して報じたという。収束を図ろうと、中国国家陸上チームの中国版Twitter「微博」公式アカウントは 「デマである」と疑惑を否定しているが、中国のネット上では、この件について「人権侵害だ」と憤慨する 人がいる一方で、「薬の飲み過ぎで女性ホルモンが減少したのだろう」「韓国の女子だって、整形しなければみんな男だろう」と、デマだと信じていない人が多いようだ。

 記事によると、こうした事態が起きないよう、国際陸上競技連盟(IAAF)は、1950年代には、選手を全裸にして検査を実施。68年の冬季五輪からは、国際オリンピック委員会(IOC)が遺伝子・染色体検査を導入した。しかし、それとて完璧ではなく、IAAFは92年には検査を停止し、IOCも96年に追随した。

 代わって現在、注視されているのは、男性ホルモンであるテストステロン値だ。テストステロンは筋肉の強さや骨量を増すとされており、この値が一般的な女性より高ければ不公平が生じることになる。当然、それを増やすための措置は禁止されているし、賛否がありながらもIAAFは、女性選手のテストステロンの濃度の上限を、 1リットル当たり5ナノモルに定めている。

 2人は果たして男性なのか、はたまたホルモン注射によるものなのか――。いずれにせよ、次に国際大会に参加する際は、テストステロン値の検査は免れないだろう。そこで真相が明らかになるかもしれない。

(文=中山介石)

美人インフルエンサーの素顔は汚女! マンションを糞尿まみれにして夜逃げ

 中国では「綱紅(ワンホン)」と呼ばれるネットインフルエンサーの影響力が強く、SNSで100万超のフォロワーを抱える者も少なくない。タレント顔負けのきらびやかな生活を送る一方で、裏の顔を持つ者もいるようだ。

「澎湃新聞」(9月22日付)などによると、陝西省西安市に住む陳さんは、所有しているマンションの一室を賃貸に出していた。19日にその契約が終了することになっていたが、借主と連絡がつかなくなってしまった。しかも、管理費や光熱費など3,000元(約4万5,000円)が未払いのままだ。そこで部屋を訪れてみると、その変わり果てた姿に驚いた。借主は犬を飼っていたため、ドアなどはかみ傷だらけ。部屋の中は、犬の糞尿とゴミであふれていたのだ。

 陳さんによると、借主の外見は美しく、外出の際はいつも小ぎれいな格好をしていた。それもそのはず。困り果てた陳さんが借主の情報をネットに公開したところ、「李艾佳Lisa」という名前で活動しているネットインフルエンサーであることがわかったのだ。李は、中国版Twitter「微博」で110万人以上のフォロワーを抱えている。

 この件を受け、管理会社が警察に通報したところ、李は23日夜になって陳さんの前に姿を現し、謝罪するとともに部屋の掃除を行ったという。さらに26日には、自身の「微博」に謝罪動画を投稿。それまで金髪だった髪の毛を黒くしてメガネをかけ、反省している姿勢を演出したうえで、同日夜に事の経緯をライブ動画配信で説明すると打ち明けた。

 その配信によると、李は出張で3~4日家を空けていたために、部屋の中が犬の糞尿まみれになってしまったのだという。しかも、引っ越しをしなければならない時期にちょうど体調を崩して入院し、部屋の掃除ができなかったと釈明する。それに対し、視聴者からは「3~4日であんなに汚くなるか?」「体調が悪いと言った途端にせき払いをした」「笑わせるな」といった厳しいコメントが殺到。必死の演出も実らず、ユーザーは彼女の釈明をウソと判断したようだ。それでも時折涙を見せながら、約2時間も淀みなく話し続けた李。彼女を擁護するフォロワーも少しはいるだけに、もはや「投げ銭」を目的とした炎上商法にしか見えないが……。

(文=中山介石)

GENERATIONS片寄涼太、中国でも人気爆発! NYタイムズスクエアをジャックし、誕生日を祝福するファンも……

 中国版Twitterともいわれる「微博」だが、その利用者は7億人を突破し、山下智久や木村拓哉、福山雅治など、日本の人気芸能人たちもアカウントを開設。日々、中国語で更新を行うなど、中国進出の重要な足掛かりとなっている。そんな中でも今、最も注目されている日本人がGENERATIONS from EXILE TRIBEのメンバー・片寄涼太(25)だ。片寄の微博は現在、フォロワー数200万人を超える人気アカウントとなっている。

 片寄の25回目の誕生日となった8月29日には、太妃糖(タフィー)と呼ばれる中国人ファンたちが費用を出し合い、米ニューヨーク・タイムズスクエアに設置されている複数の屋外ビジョンにお祝い広告を掲出。この広告は一日中、繰り返し表示されていたというから、費用はかなりのものだったと思われる。また、同日には上海中心街の屋外ビジョンでも、同様のお祝い広告が掲出されていたという。

 そもそも中国で片寄の人気が爆発したきっかけは、2017年に公開されたラブコメ映画『兄に愛されすぎて困ってます』への出演だった。血のつながらない兄妹の禁断のラブストーリーで、兄役を演じる片寄が、妹役を演じる土屋太鳳と恋をするという内容で、日本の人気少女コミックが原作だったこともあり、中国や台湾などの中華圏でも大きな注目を浴びていた。さらに、中国では同作のドラマ版および映画版がネット配信されたことで、若い世代の女性を中心に片寄のファンが急増したのである。

 その人気を物語るかのように、同年8月に上海で開催された「サマーソニック上海」に出演するため降り立った空港ではファンが殺到、パニックになったほどである。

 また、18年3月に深セン、北京、上海で行われたGENERATIONSの初チャイナツアーも大成功を収めている。

 中国人女性が夢中になる片寄の魅力のひとつに、流暢な中国語が挙げられる。片寄は目下、中国語を猛勉強中で、「微博」はもちろん、ステージ上での挨拶や自己紹介、インタビューなどにも中国語で対応しているのだ。また今年3月に上海で開催されたファンミーティングでは、2,000人のファンを前に、中華圏の人気アーティスト、ジェイ・チョウ(周杰倫)の楽曲を中国語で完璧にカバーするなど、ファンの間では中国への本格進出を期待する声が高まっている。

 昨年12月には微博が主催する「WEIBO Account Festival in Japan  2018」で年間人気アーティスト賞を受賞し、今年6月には声優として参加したアニメーション映画『きみと、波にのれたら』が上海映画祭で最優秀アニメ賞を受賞するなど、個人としても中国における実績を確実に積み重ねている。

 片寄の先輩にあたるEXILEメンバーAKIRAが今年6月に台湾のトップモデル、リン・チーリンと結婚したことは記憶に新しいが、片寄をはじめ、中華圏で存在感を強めるEXILEグループ、その勢いはまだまだ収まりそうにない。

(文=青山大樹)