失踪した中国人女優のその後……巨額脱税、愛人・妊娠疑惑が噴出するファン・ビンビンの今

 2018年の7月頃から公の場所から姿を消し、「失踪」を報じられていた中国の女優・ファン・ビンビン(范冰冰)。同年の10月に、脱税で中国当局から厳重注意を受け、約150億円の罰金と追徴課税の支払いを命じられと報じられ、日本のメディアでも大きく取り上げられた。あれから1年以上たった今、彼女はどのような人生を歩んでいるのだろうか。

 失踪報道から約1年、ビンビンは中国版ツイッターWeiboで、3年以上交際していた婚約者との破局を告白。理由は明かされなかったが、政府の監視下に置かれるほどの脱税事件を起こしたこと、そしてそれが有罪判決であったことが決定的な理由ではないかと中華圏のメディアは推測している。

 仕事面でも人気は以前のようには回復せず、現在は海外メディアのインタビューにたまに露出するほかには、これといった活動はしていないと言っても過言ではない。中国芸能界への完全復帰はできていない状態だ。

 そんな中、ネット上では彼女が73歳の大御所中国人俳優・ワン・シュエチー(王學圻)と同棲しているのではないかといううわさが再燃した。ワン・シュエチーの妻は1998年から2006年まで国外で仕事をしており、夫婦は別居を続けている。そのため、離婚の危機だと言われ続けているのだが、なんの進展もないまま今に至っている。

 一方、ビンビンは映画『麥田』(09年公開)でワン・シュエチーと初共演。その後、再度共演した『孫文の義士団』(同年公開/原題:十月圍城)で仲を深め、「愛人」ポジションに収まったのではないかと、当時のメディアはこぞって報道していた。

 このうわさについて、本人は否定しているが「絶対に愛人だ!」「大御所に取り入って芸能界での地位を固めようとしている!」という声は絶えなかった。実際、出演した番組やインタビューで親しげな様子を見せたほか、2人が仲睦まじく手をつないでいる写真がスクープされたことから、「ビンビンが無理やりワンと妻を離婚させようとしている」と見る者も少なくない。一時は沈静化していた不倫ゴシップが、ビンビンの脱税および雲隠れをきっかけに再燃したのだ。なお、彼女の事務所は今回もこれをきっぱり否定。しかし、いまだに疑惑はくすぶり続けている。

 そして昨年9月16日、彼女が迎えた38回目の誕生日には、友人である台湾の女優チャン・チュンニン(張鈞甯)や、新人イケメン俳優のツァイ・ヤオ(蔡堯)、そして過去にマネジャーを務めていた人物からの祝福が寄せられた。が、しかし、2年前の誕生日の際は、もっと大勢の著名人が彼女に祝福メッセージを送っていたし、盛大なパーティーが開かれていたことを考えると、随分と寂しい印象が拭えない。多くの著名人が彼女から去っていった……などと評するメディアも多い。

 公式Weiboにはプレゼントの画像と、ささやかながらもあたたかい誕生日を過ごした様子が公開されていた。さらに、2日後に投稿された動画には、もらったプレゼントを紹介しながら涙を流す一幕もあった。やはり彼女自身が一番、境遇の変化を痛感しているに違いない。この投稿に対し、ファンからは「ビンビンはずっと幸せでいてね」「毎日ハッピーでありますように」といったコメントが殺到している。どんな状況に置かれていても、やはり「ファン」の存在は大きい。中国国内には彼女に対して厳しい意見を述べる国民も多いが、もちろんいまだに根強いファン層もかなり存在しているのである。

 2018年の7月頃から公の場所から姿を消し、「失踪」を報じられていた中国の女優・ファン・ビンビン(范冰冰)。同年の10月に、脱税で中国当局から厳重注意を受け、約150億円の罰金と追徴課税の支払いを命じられと報じられ、日本のメディアでも大きく取り上げられた。あれから1年以上たった今、彼女はどのような人生を歩んでいるのだろうか。

 失踪報道から約1年、ビンビンは中国版ツイッターWeiboで、3年以上交際していた婚約者との破局を告白。理由は明かされなかったが、政府の監視下に置かれるほどの脱税事件を起こしたこと、そしてそれが有罪判決であったことが決定的な理由ではないかと中華圏のメディアは推測している。

 仕事面でも人気は以前のようには回復せず、現在は海外メディアのインタビューにたまに露出するほかには、これといった活動はしていないと言っても過言ではない。中国芸能界への完全復帰はできていない状態だ。

 そんな中、ネット上では彼女が73歳の大御所中国人俳優・ワン・シュエチー(王學圻)と同棲しているのではないかといううわさが再燃した。ワン・シュエチーの妻は1998年から2006年まで国外で仕事をしており、夫婦は別居を続けている。そのため、離婚の危機だと言われ続けているのだが、なんの進展もないまま今に至っている。

 一方、ビンビンは映画『麥田』(09年公開)でワン・シュエチーと初共演。その後、再度共演した『孫文の義士団』(同年公開/原題:十月圍城)で仲を深め、「愛人」ポジションに収まったのではないかと、当時のメディアはこぞって報道していた。

 このうわさについて、本人は否定しているが「絶対に愛人だ!」「大御所に取り入って芸能界での地位を固めようとしている!」という声は絶えなかった。実際、出演した番組やインタビューで親しげな様子を見せたほか、2人が仲睦まじく手をつないでいる写真がスクープされたことから、「ビンビンが無理やりワンと妻を離婚させようとしている」と見る者も少なくない。一時は沈静化していた不倫ゴシップが、ビンビンの脱税および雲隠れをきっかけに再燃したのだ。なお、彼女の事務所は今回もこれをきっぱり否定。しかし、いまだに疑惑はくすぶり続けている。

 そして昨年9月16日、彼女が迎えた38回目の誕生日には、友人である台湾の女優チャン・チュンニン(張鈞甯)や、新人イケメン俳優のツァイ・ヤオ(蔡堯)、そして過去にマネジャーを務めていた人物からの祝福が寄せられた。が、しかし、2年前の誕生日の際は、もっと大勢の著名人が彼女に祝福メッセージを送っていたし、盛大なパーティーが開かれていたことを考えると、随分と寂しい印象が拭えない。多くの著名人が彼女から去っていった……などと評するメディアも多い。

 公式Weiboにはプレゼントの画像と、ささやかながらもあたたかい誕生日を過ごした様子が公開されていた。さらに、2日後に投稿された動画には、もらったプレゼントを紹介しながら涙を流す一幕もあった。やはり彼女自身が一番、境遇の変化を痛感しているに違いない。この投稿に対し、ファンからは「ビンビンはずっと幸せでいてね」「毎日ハッピーでありますように」といったコメントが殺到している。どんな状況に置かれていても、やはり「ファン」の存在は大きい。中国国内には彼女に対して厳しい意見を述べる国民も多いが、もちろんいまだに根強いファン層もかなり存在しているのである。

 その後、おなかが出ているプライベートショットをパパラッチされ「妊娠か?」と報じられたビンビンは、Weiboで「ほんとに太っちゃっただけなの!」と釈明。さらに、自撮りの投稿と共に「大好きな甘いものをやめて、25日で4.5キロ痩せました」と報告した。芸能活動はいまだ開店休業状態だが、SNSでの投稿を地道に続けているようだ。とはいえ彼女はきっと“俳優”としての復帰を願っているはず。そんな中すでに、ハリウッド映画『355』への出演が決まったと報じられている。中国屈指の名女優と謳われたビンビンが、今後再びスポットライトを浴びる日がくることを願いたい。

「日本でマスク1万枚爆買い」「武漢に送る」台湾版『花より男子』ヒロイン、本国で大炎上!

 新型コロナウイルスの影響でマスクが不足し、早朝から長蛇の列ができる薬局や、高額転売が日々話題になっている。徐々に拡大していく感染、そして花粉症シーズンの到来でますます“マスク難民”が増加する中、お隣の台湾で、とあるタレントが「大炎上」を続けているのはご存じだろうか。

 ことの発端は、台湾版「花より男子」で主人公のつくし役を務め、台湾や中国では「大S」というあだ名で親しまれているタレントの徐熙媛(バービィー・スー)と、その夫のSNS投稿だ。1月末に日本を訪れた彼女は、なんと1万枚のマスクを購入。それを全て中国・武漢に寄付するとSNSで発信したのである。

 今でこそ日本でもマスク不足が騒がれているが、1月の時点ではまだ薬局に「中国加油」「武漢加油」(編注:加油=「頑張れ」の意)といった激励のPOPが貼られていた時期。しかし、彼女の出身地である台湾は違った。この頃の台湾は、まさに現在の日本と同じくマスク難民が大量発生しており、政府がマスクの輸出を制限しはじめた時期なのだ。

 そんな中、彼女は自慢げに「日本で1万枚のマスクをゲット! 全て武漢に送ります!」と投稿したのである。それだけならまだしも、彼女は国民のために輸出制限を行った台湾政府を「人でなし」「愛がない」「人が困っているときは助けるべき」と痛烈に批判した。

 これらの言動に、台湾の人々は激怒。「人の国でマスクを爆買いするな!」「これからマスク不足になるだろうに……」といったコメントが大量に寄せられた。そして日本の掲示板・5ちゃんねるに「台湾人女優『日本でマスクを1万枚買い占めて中国に送りました!武漢頑張れ!』」というスレッドが立てられたことを知った台湾のネット民は、「日本でも話題になってる! ざまあみろと言いたいところだがあいつは台湾人じゃない、中国人だって誰か伝えてくれ~!」「日本の皆さんにマスクを返してあげてほしい」と述べるなどとし、大炎上に発展した。

 この大S、台湾タレントの中でもかなりの親中派で、中国本土出身の男性と結婚している。故に武漢を助けたいという思いが強かったのかもしれないが、台湾の世論は「だからと言って他国もこれからマスクが不足するかもしれないのに…」「寄付するにしても大声で自慢することではない」「台湾人タレントと報道されることが、もう恥ずかしい」と否定的だ。

 結局、この1万枚のマスクはどうなったのか。実はこの騒動が起こる前から台湾政府は水面下でマスクの転売を防ぐため「出国の際に所持、または他国に送付していいマスクは1人当たり5箱(250枚)まで」という法律を審議しており、あっという間に制定されたのだ。彼女も無論例外ではなく、この大量のマスクが武漢に送られることはなかった。後日、夫婦が経営しているホテルの従業員に配布するという声明が出されている。

 この炎上の影響で大Sが台湾で受け持っていたメディア仕事は激減。CMを担当する商品の不買運動が起こり、今でもさまざまな「中国との癒着」が報道されるなど、散々な結果を招いてしまった。

 ここまで騒動が大きくなったのだ、今後台湾での仕事は絶望的だろう。挙句の果てに、あろうことか中国のネット民からも「中国は生産国なのでマスク自体は足りている。一部が転売してるだけ」「状況を把握してない。いい人ぶりたいだけでしょ」と叩かれている状況だ。本来は善意のはずなのだが、どちらのファンからもそっぽを向かれてしまったようだ。

豚コレラで豚肉価格が高騰するなか……中国で“死肉ロンダリング”が横行中

 アフリカ豚コレラのまん延により、豚肉の価格が高騰を続ける中国。国家統計局によると、11月の豚肉の価格は前年同月から2倍以上に上昇した。景気が低迷するなか、家計への影響は大きいが、それに乗じてひともうけしてやろうという中国人も少なくないようだ。

「聯合新聞網」(12月4日付)などによると、広東省仏山市にある精肉工場が病死した豚の肉を流通させていることがわかった。記者が潜入取材したところ、早朝4時頃、豚を載せたカートが工場内に運ばれてきた。生きている豚は生体取引エリアに降ろし、死んでいる2頭はカートに残したまま食肉処理場へと運ばれた。作業員はその1頭を吊るすと、包丁片手に慣れた手つきでどす黒い血を抜いた。体を熱湯で洗い、毛を抜き内臓を取り除くと、あっという間に健康そうな白い豚へと様変わり。検査員は最初、その肉を工場の外に出すことを拒否していたが、賄賂でも渡されたのか、最後は検疫の合格印を押した。

 また、工場内で記者は、畜産業者と従業員がもめているところを目撃した。警備員の話によると、賄賂を渡さなければ、工場が病死した豚を受け入れてくれないという。畜産業者の男が100元(約1,600円)を渡すと、従業員はすぐにそれを食肉処理場へと運び、10分後には“毒豚ロンダリング”が完了。畜産業者の男は合格印を押された豚肉をトラックに載せると、工場を出ていった。向かった先は、60キロ以上離れた広州市白雲区にある市場。その肉は普通の肉として、500グラム数十元で販売されていた。同工場では、こうした顧客から加工を請け負うだけでなく、自らも毎日数トンの病死した豚の肉をトラックで出荷。早朝4時から9時までが「死肉」の取引の時間で、広州や仏山の市場に流通させていたという。

 事件発覚後、当局はすぐに捜査に乗り出し、同工場は営業停止。19人が拘束されたが、これは氷山の一角にすぎないだろう。「死肉」は無害化処理をしていたということだが、豚コレラにかかった豚が混入していたとしても不思議ではない。豚コレラが一向に収束しない要因のひとつは、こうした悪徳業者が全国にはびこっているからかもしれない。

 豚コレラ騒動は、来年も続きそうだ。

(文=中山介石)

Koki,が中国で「アジア新人賞」受賞も、現地メディアは賛否両論「メイクが似合ってない!?」

 木村拓哉と工藤静香の次女でモデルのKoki,が6日、中国ネット動画配信大手・愛奇芸(iQIYI)が主催するエンタメアワード「愛奇芸尖叫之夜」に出席。中華圏およびアジアで活躍が目覚ましい芸能人に贈られる「亜洲新鋭芸人奨」(アジア新人賞)を受賞した。

 香港メディア「東網」(12月7日付)によると、北京で行われた同イベントには、中華圏を代表する著名人が大集結。ネットでも生中継され、大盛り上がりを見せたのだが、そんな中でも多くの視聴者の目をくぎづけにしたのは、日本人で唯一、招待されたKoki,だった。

 司会者が名前を発表すると会場は大きな歓声に包まれ、ヴァレンティノの青いドレスを着たKoki,が登場。流暢な中国語での自己紹介に続き、英語で受賞の喜びを語った。

 Koki,は中国の雑誌モデルや、「メンソレータム社・中国」のリップクリームのCMキャラクターを務めるなど、中国でも精力的に活動。それが、今回の受賞につながったようだ。

 イベントを開催したiQIYIはSNS上で、Koki,について「冬の訪れとともにドレス姿の美女がやってきた。目を奪われるほどの赤い唇、そしてKoki,のレッドカーペットを歩く姿は美しかった。16歳とは思えない」と、絶賛コメントを寄せている。

 中国のネットユーザーからも「美しすぎる。人間とは思えない」「中国語もどんどんうまくなっている。これからもっと中国で活躍してほしい」といった好意的なコメントが多く寄せられたのだが、一部現地メディアでは「年齢は16歳、印象は36歳」「16歳なのに、アイメイクと口紅は61歳のようだ」といった辛辣な記事が並んだ。

「Koki,の インスタグラムには、授賞式で披露したドレスの写真とともに、メイク・ヘア・スタイリングと、世界で活躍する一流アーティストの名前がクレジットされていましたが、16歳の少女には大人っぽすぎるメイクで、似合っているとは言い難い。以前から彼女のメイクは濃すぎると不評を買っており、年相応の幼い顔に合ったナチュラルなものにすべき、という声は多い。プロデュースをする母・静香さんの意向が強く働いているのでしょうが、私服にしても、絶妙にダサいイメージがつきまとってしまっています。モデルは、服もメイクも着こなしてナンボ。早く彼女が自分の意思を持って活動できるといいんですが……」(芸能記者)

 Koki,といえば先日、元EXOで俳優・歌手のクリス(ウー・イーファン)のMVにヒロイン役で出演するなど、中国での活動の場を大きく広げている。アンチ記事が飛び交うのも、人気の証しということだろうか?

(文=廣瀬大介)

中国版「24時間戦えますか?」を支える大富豪たちのポッドキャスト

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界最大の人口14億人を抱える中国では、国家と個人のデータが結びつき、歴史に類を見ないデジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

今月のテクノロジー『996(ナインナインシックス)』

中国系のテクノロジー企業の創業者などに、苦労話や裏話などを聞き出すポッドキャスト番組(英語)。ホスト役は、シリコンバレーでも中国投資のプロとして名高いハンス・タン氏。2018年にスタートし、隔週で1本(60分)、新しいエピソードを配信している。日本でもSpotifyやAppleのポッドキャストアプリを通して楽しむことができる。

 あなたは中国で広がっている、996(ナインナインシックス)という言葉を知っているだろうか。

 これは朝の9時から、夜の9時まで、週6日間にわたって働く「中国式」の猛烈なハードワークのことを指す。何しろ14億人の人口を抱えており、すべてにつき競争、競争、競争という社会だ。とりわけテクノロジー業界では、こうした働き方を前提に、エリート社員が馬車馬のごとく働いている。

 世界で一流企業として注目されるようになった、中国の通信IT企業のファーウェイをはじめ、ショート動画「TikTok」で世を席巻しているバイトダンスや、ECサービス最大手のアリババまで、この「996文化」というのはどこまでも染み渡っている。

 いずれの会社もまだ創業一代目が健在であり、ゼロから会社を育ててきた遺伝子が残っているため、日本の「働き方改革」とは真逆のスタイルが事実上推奨されているわけだ。
 2016年に登場した996という単語は、中国の高度成長と、働けばお金持ちになれるという「チャイニーズドリーム」を象徴するポジティブな意味と同時に、あまりにも野蛮なサバイバル人生を意味するネガティブな意味も含んでいる。
 だから中国人のビジネスパーソンと996について雑談をすると、ジョークとして「いやいや、僕は007っすね」と返すのが定番になっている。もちろんこれはジェームズ・ボンド主演の、スパイ映画のことではない。これは0時から0時まで、つまり24時間体制で、一週間休みなく働いているよという意味になる。日本語に意訳すれば「もう働きすぎて、死にそうですね」といったところか。

 高度成長期の日本において、栄養ドリンクのリゲインのテレビCMで「24時間戦えますか?」というキャッチフレーズが一世を風靡したが、あの中国バージョンだと思ってもらえばいいだろう。

 しかし最近ではこの996をめぐって、中国のSNS上で炎上事件まで起きている。

 今年3月、世界最大級のエンジニアの開発プラットフォームであるギットハブ上で、こうした過酷な働き方を批判する「996.ICU」というプロジェクトが登場した。ICU(集中治療室)のアイコンを掲げて、ブラックと思われる中国企業を、名指しで批判し始めるムーブメントが起きたのだ。

 そうした批判について、億万長者になった創業者たちが、996を正当化するようなコメントを発信。それが“燃料”になってしまった。

「996で働けることは幸せなことだ。多くの企業や個人は、そんなことができる機会すらない。むしろ誇りに思うべきだ」(アリババ創業者、ジャック・マーの投稿)

 この投稿をめぐって、国民的ヒーローとして尊敬されているジャック・マーですら、釈明をする羽目になっている。若者世代からすれば、十分豊かな社会になった反面、お前が成功したときとは時代が違うんだよ、と言ったところだろうか。

 さて、前置きが長くなったが、私が密かにファンとして聴いているポッドキャストに「996」という番組がある。日本ではほとんど知られていないが、中国でイケイケの起業家たちが、毎回ゲストとして集まってくる。

 ここで放送される内容が、ものすごく面白い。登場する人たちの多くが、人生を996で生き抜いてきた人ばかりだ。

 例えば、ZOOM(ズーム)の創業者であるエリック・ヤン。

 このZOOM社は、今やスカイプやグーグルハングアウトといった有名サービスを押しのけて、世界中で使われるオンライン会議サービスの成長株だ。

 番組で、彼は単なる「英語のできない中国人」に過ぎなかった頃から、どのように996生活によって生き残ってきたかを生々しく語っている。

 中国で生まれて、まともに英語も話せなかったにもかかわらず、シリコンバレーに憧れて渡米。8回にわたってビザ申請を却下されたにもかかわらず、おそるべき執念によって、9回目のビザ申請でなんとかアメリカにたどり着いている。

 14年にわたってIT企業で働きまくった後に、彼が作り出したサービスこそ、ZOOMというとても便利なオンライン会議システムだった。

 そのきっかけになったのは1987年、中国の山東科技大学の学生だった頃、大好きな彼女に会いに行くために、片道10時間の鉄道旅行をしていたことだったという。列車は人で溢れ、トイレの中にまで旅客がすし詰めになっていた。

「それでも夏と冬、1年間に彼女と会えるのはたった2回だった。いつかスマートな端末で、遠くにいる彼女とお話ができたらと夢想してたんだ」(エリック)

 そんな10代の頃の中国での記憶が、シリコンバレーに裸一貫で渡ったヤンの心の中に残っており、それが40代の「中年起業」につながったと説明している。

 2019年4月、このZOOMが米ナスダックに上場すると、投資家たちから買いが殺到。今では2.6兆円の時価総額をほこる企業となっており、エリックはシリコンバレーでも例外中の例外となる、中国系創業者として億万長者になった。

 ちなみに学生時代、会いたくても会えなかった遠距離恋愛の相手の彼女は、今の奥さんになっている。そんな中国人起業家たちの生々しいエピソードと、その生存戦略が音声を通して伝わってくるのだ。

 いずれアメリカを抜いて、GDPで世界1位の大国になると思われる中国。しかし、これまでのような右肩上がりの経済成長が、永遠に続くわけではない。

 欧米や日本のように、豊かになるのと同時に、成熟した社会に向かっていくのは自然だ。その時にこの996という働き方が、いつまで中国で受け入れられるのかはとても興味深い。

 ジャック・マー(馬雲)や、テンセント創業者のポニー・マー(馬化騰)、シャオミ創業者のレイ・ジュン(雷軍)などは、1960年代~1970年代生まれの猛者たちだ。労働法規も関係なく、すさまじい競争に勝ち残って巨万の富をつかんだヒーローとなっている。

 しかし20代の中国人は「もはや、あそこまで巨大な企業をつくるチャンスはない」と語る人が多い。命がけで働いて、どこまでのリターンを得られるのか、冷静に見ている世代なのだろう。

 中国から今後どんな996物語が生まれてくるのか、この国の成長パワーと成熟度を理解する上でも、面白いテーマになるのは間違いない。(月刊サイゾー9月号より)

後藤直義(ごとう・なおよし)

1981年生まれ。青山学院大学文学部卒。毎日新聞社、週刊ダイヤモンドを経て、2016年4月にソーシャル経済メディア『NewsPicks』に移籍し、企業報道チームを立ち上げる。グローバルにテクノロジー企業を取材し、著書に『アップル帝国の正体』(文藝春秋)など。

中国版「女子高生コンクリ殺人事件 」か……拉致・監禁・集団強姦殺人の軽すぎる判決に批判噴出

 1988~89年に足立区綾瀬で発生した「女子高生コンクリート詰め殺人事件」は、30年以上が経過した今なお、人々の記憶に深く刻まれているが、そんな事件に酷似した少年犯罪が中国で話題となっている。

「捜狐新聞」(12月5日付)によると、昨年9月22日、陝西省楡林市で、15歳の女子中学生が突然行方不明となる事件が発生した。少女はこの日、「友人と会う約束がある」と家族に告げて自宅を出たが、その後、帰宅することはなかった。2カ月後、少女は遺体となって発見された。

 警察は少女を拉致・強姦の上、暴行を加えて殺害したとして、近所に住む15~17歳の少年6名を逮捕した。少年グループの供述によると、彼らは普段からSNSで女性を集め、地元のホテルなどで違法な売春あっせん業を行っていたという。少女が行方不明となった日、少年グループはSNSで知り合った彼女を言葉巧みに呼び出し、ホテルに監禁すると、無理やり売春させたというのだ。その後、少女が抵抗したため、集団で暴行を加えて殺害、遺体をバラバラに解体して遺棄したのだ。

 今月5日、少年グループの裁判が結審を迎えたのだが、その判決も綾瀬の女子高生コンクリ殺人事件を彷彿とさせるものとなった。裁判官は事件発生当時、彼らが未成年者であったことなどを配慮し、主犯格の少年に無期懲役を、ほかの5名には懲役3年半~15年というあまりにも軽過 ぎる判決を下したのだ。

 判決後、少女の父親はメディアの取材に応え、「少年グループやその家族からは、現在まで謝罪の言葉さえもありません。私も妻も事件のショックで、この1年、仕事も手につきません。娘が帰ってくる気がして、今も娘の分まで食事を作ってしまうのです。経済的な問題もあり、まだ娘をお墓に入れることもできません」と、つらい胸中を語った。

 これだけの凶悪な事件にもかかわらず、あまりにも軽い判決に、ネット上を中心に、裁判所に対する厳しい意見が寄せられている。中国では今年10月にも、大連市で13歳の少年が10歳の少女を強姦・殺害するという痛ましい事件が発生したが、少年法の壁に阻まれ、なんと犯人の少年には無罪判決が下っている。

 中国では凶悪犯罪の低年齢化が進んでおり、未成年者であっても、刑事責任を問うべきであるという議論が噴出している。たびたび少年法改正が議題となる日本にとっても、決して他人事ではないだろう。

(文=廣瀬大介)

スニーカー中毒者を量産する中国「ファッションアプリ」の裏事情

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界最大の人口14億人を抱える中国では、国家と個人のデータが結びつき、歴史に類を見ないデジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

今月のテクノロジー『毒(ドゥ)』 

「毒(ドゥ)」は、中国発のアプリで、スニーカーに特化した売買プラットフォーム。MAU(月間ユーザー)は800万人を超えており、運営企業の時価総額は約450億円にも達する。米国にもスニーカー転売市場の「StockX」が存在しており、すでにスニーカーの販売・転売はグローバル・ビジネスになっているが、人口14億人を抱える中国はその規模とお金の流入量で桁がちがう。

 一度聞いたら、忘れられない名前のメード・イン・チャイナのアプリがある。その名も「毒(ドゥ)」だ。

 これは現在、中国で大流行しているスニーカーを売買する専用プラットフォームだ。ここに毎月800万人ものユーザーが集まっては、まるで中毒者のように夢中になってスニーカーをあさっている。

 何せ人口14億人を抱えている中国だ。洗練されたファッションによって、自分は特別だとアピールするためには、手間やお金を惜しまない。

 中でも入手が難しい、希少な限定品のスニーカーは、若者がファッションでマウンティングするには格好のアイテムだ。中には1足あたり数十万円のプレミア価格で売買されている、レアシューズもある。

 自身も「毒」のヘビーユーザーであり、スニーカーが大好きだという北京在住の夏目英男さん(23)はこう語る。

「中国のスニーカー熱は、半端じゃありません。希少なスニーカーは高く転売できるため、多くの人が投資する“株式”のような存在になっています」
 例えば、ナイキの人気スニーカーである「エアジョーダン1」が、カリスマ的な人気を誇るストリートブランドのOFF-WHITE(オフホワイト)とコラボレーションしたことで生まれた1足。定価は1499元(約2万3700円)だが、現在の相場価格は2万8000元(約44万2300円)まで高騰している。

 また世界的なラッパーのカニエ・ウェストが、アディダスと一緒に作ったスニーカーブランド「YEEZY BOOST(イージーブースト)」も価格は急上昇。クラブなど暗い場所で光るようにデザインされている限定品は、1足あたり20万円前後の価格がついている。

「それでも、周囲から『あいつのスニーカーはカッコいいな』と言われたいじゃないですか(笑)。履いているスニーカーで、オシャレ度がわかりますから」(夏目氏)

 そこまで高価ではなくても、定価の1.5~2倍ほどのプレミア価格で売り買いするのは日常茶飯事だ。だから中国全土のスニーカーファンたちは、この毒をチェックして、1足4万円、5万円という金額を払って買うようになっている。

 人気があるのはナイキやイージーブースト、アディダス、コンバースなどの希少スニーカーに加えて、シュプリーム、オフホワイトなどのストリートブランドだ。

 ちなみにアプリ上では、こうした希少なスニーカーの取引価格が、どのように推移しているかも見ることができる。

 夏になれば、青色や白色などの爽やかなカラーリングの商品の値段が上がる。また希少スニーカーであっても、再販売されることが決まれば値段は下がる。まさに生の「スニーカー相場」だ。

 そしてバイヤーと呼ばれるプロたちは、こうした希少なスニーカーを大量に仕入れて、自社倉庫などに在庫を抱えており、それを高く売ることで利益を出しているわけだ。

 彼らは希少スニーカーを販売するナイキやアディダスなどの公式サイトの「抽選販売」を当てるため、ハッキングすれすれのソフトウェアを活用している業者なども発生。いたちごっこのような状況が続いているのだという。

 この毒(運営会社:上海识装信息科技)が生まれたのは、中国ならではのユニークな背景がある。

 それは、スポーツ関連のネット掲示板「虎扑」にさかのぼる。その運営者はスニーカー関連のネット掲示板の中で、ブランドの偽物を見破ることができるユーザーが、人気者になっている事象に目をつけた。

 中国では、人気ブランドの商品はすぐに偽物が出回ってしまう。

 そこで2015年、彼らは高級な希少スニーカーが本物か偽物か、専門家によって「真贋判定」するというサービスを思いつく。そのような鑑定機能を持ったスニーカーの売買プラットフォームを築き上げて、そこでなかなか手に入らないレアスニーカーなどを、安心して取引できるようにしたのだ。

 この仕組みが、革命的だった。これまでに真贋判定を受けたスニーカーは、2000万足以上に上るといわれている。それだけの取引量が生まれているのだ。

 毒の出品者たちは、自分が売りたい未使用のスニーカーを、まず運営側に発送する(任意)。そこで外箱からスニーカー本体まで、専門家のチェックを受けた上で、本物であれば「証明書」を受け取ることができる。

 1足あたり数万円から数十万円するスニーカーの価格を考えれば、このチェックサービスは役に立つ。そして毒は、自らのプラットフォーム上の売買時に手数料を取ることで利益を上げている。

 ちなみに中国においては、女子のスニーカー熱も負けてはいない。「毒」は男性ユーザーがとても多いことで知られているが、競合アプリである「nice(ナイス)」などでは、たくさんの女性たちが自慢のスニーカーを披露しあっている。

 そして欲しくなったら、まるで株価チャートのようなスニーカーの価格推移をチェックしながら、ここぞというタイミングで購入することになるのだ。

 こうしたスニーカー特化型の人気アプリが、中国にはいくつもあるのだ。

「自分、イージーブーストは6足持っているんですよ。先日も近々入る予定のアルバイト代を見越して、1足5万円以上で買ったばかり。毒のアプリを使っていると、本当の中毒者になってしまうんですよ」

 そう語ってくれた夏目氏だが、中国のジェネレーションZ世代(2000年~2010年に生まれた世代)たちは、まだまだレアスニーカーにカネを使いそうだ。

 実は毒のアプリ上では、毎月6~7回にわたって、限定スニーカーを無料でプレゼントするという「抽選会」をユーザーに向けてやっている。もちろん倍率は高いのだが、もらえるものは、もらっておきたい。

 実はここにも、仕掛けがしてある。毒のユーザーがもし、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などでこうした抽選会のお知らせをシェアすると、抽選に複数回チャレンジすることができるようになるのだ。

 スニーカー中毒者が、さらなるスニーカー中毒者を増やす。そんな成長サイクルによって、運営会社である上海识装信息科技の企業価値は30億元(約450億円)に。今や中国のポテンシャルユニコーン企業と呼ばれている。

 思えば中国ではつい先月に、ユニクロと米ニューヨークのデザイナー「カウズ(KAWS)」とのコラボレーション商品が発売されて、各地のユニクロ店舗では狂ったような奪い合いが起きたことが記憶に新しい。

 また私の会社オフィスの目と鼻の先にある「コム・デ・ギャルソン」の店舗でも、数量限定のTシャツなどを買うために、ものすごい人数の中国人が行列をしている光景をよく見かけるのだ。

 レア物、限定物、希少物。こうしたアイテムを求める中国人たちのエネルギーは、世界中のファッションブランドを巻き込みながら、しばらく尽きることがなさそうだ。(月刊サイゾー8月号より)

文・写真/後藤直義(ごとう・なおよし)

1981年生まれ。青山学院大学文学部卒。毎日新聞社、週刊ダイヤモンドを経て、2016年4月にソーシャル経済メディア『NewsPicks』に移籍し、企業報道チームを立ち上げる。グローバルにテクノロジー企業を取材し、著書に『アップル帝国の正体』(文藝春秋)など。

スニーカー中毒者を量産する中国「ファッションアプリ」の裏事情

――あまりにも速すぎるデジタルテクノロジーの進化に、社会や法律、倫理が追いつかない現代。世界最大の人口14億人を抱える中国では、国家と個人のデータが結びつき、歴史に類を見ないデジタルトランスフォーメーションが進行している。果たしてそこは、ハイテクの楽園か、それともディストピアなのか――。

今月のテクノロジー『毒(ドゥ)』 

「毒(ドゥ)」は、中国発のアプリで、スニーカーに特化した売買プラットフォーム。MAU(月間ユーザー)は800万人を超えており、運営企業の時価総額は約450億円にも達する。米国にもスニーカー転売市場の「StockX」が存在しており、すでにスニーカーの販売・転売はグローバル・ビジネスになっているが、人口14億人を抱える中国はその規模とお金の流入量で桁がちがう。

 一度聞いたら、忘れられない名前のメード・イン・チャイナのアプリがある。その名も「毒(ドゥ)」だ。

 これは現在、中国で大流行しているスニーカーを売買する専用プラットフォームだ。ここに毎月800万人ものユーザーが集まっては、まるで中毒者のように夢中になってスニーカーをあさっている。

 何せ人口14億人を抱えている中国だ。洗練されたファッションによって、自分は特別だとアピールするためには、手間やお金を惜しまない。

 中でも入手が難しい、希少な限定品のスニーカーは、若者がファッションでマウンティングするには格好のアイテムだ。中には1足あたり数十万円のプレミア価格で売買されている、レアシューズもある。

 自身も「毒」のヘビーユーザーであり、スニーカーが大好きだという北京在住の夏目英男さん(23)はこう語る。

「中国のスニーカー熱は、半端じゃありません。希少なスニーカーは高く転売できるため、多くの人が投資する“株式”のような存在になっています」
 例えば、ナイキの人気スニーカーである「エアジョーダン1」が、カリスマ的な人気を誇るストリートブランドのOFF-WHITE(オフホワイト)とコラボレーションしたことで生まれた1足。定価は1499元(約2万3700円)だが、現在の相場価格は2万8000元(約44万2300円)まで高騰している。

 また世界的なラッパーのカニエ・ウェストが、アディダスと一緒に作ったスニーカーブランド「YEEZY BOOST(イージーブースト)」も価格は急上昇。クラブなど暗い場所で光るようにデザインされている限定品は、1足あたり20万円前後の価格がついている。

「それでも、周囲から『あいつのスニーカーはカッコいいな』と言われたいじゃないですか(笑)。履いているスニーカーで、オシャレ度がわかりますから」(夏目氏)

 そこまで高価ではなくても、定価の1.5~2倍ほどのプレミア価格で売り買いするのは日常茶飯事だ。だから中国全土のスニーカーファンたちは、この毒をチェックして、1足4万円、5万円という金額を払って買うようになっている。

 人気があるのはナイキやイージーブースト、アディダス、コンバースなどの希少スニーカーに加えて、シュプリーム、オフホワイトなどのストリートブランドだ。

 ちなみにアプリ上では、こうした希少なスニーカーの取引価格が、どのように推移しているかも見ることができる。

 夏になれば、青色や白色などの爽やかなカラーリングの商品の値段が上がる。また希少スニーカーであっても、再販売されることが決まれば値段は下がる。まさに生の「スニーカー相場」だ。

 そしてバイヤーと呼ばれるプロたちは、こうした希少なスニーカーを大量に仕入れて、自社倉庫などに在庫を抱えており、それを高く売ることで利益を出しているわけだ。

 彼らは希少スニーカーを販売するナイキやアディダスなどの公式サイトの「抽選販売」を当てるため、ハッキングすれすれのソフトウェアを活用している業者なども発生。いたちごっこのような状況が続いているのだという。

 この毒(運営会社:上海识装信息科技)が生まれたのは、中国ならではのユニークな背景がある。

 それは、スポーツ関連のネット掲示板「虎扑」にさかのぼる。その運営者はスニーカー関連のネット掲示板の中で、ブランドの偽物を見破ることができるユーザーが、人気者になっている事象に目をつけた。

 中国では、人気ブランドの商品はすぐに偽物が出回ってしまう。

 そこで2015年、彼らは高級な希少スニーカーが本物か偽物か、専門家によって「真贋判定」するというサービスを思いつく。そのような鑑定機能を持ったスニーカーの売買プラットフォームを築き上げて、そこでなかなか手に入らないレアスニーカーなどを、安心して取引できるようにしたのだ。

 この仕組みが、革命的だった。これまでに真贋判定を受けたスニーカーは、2000万足以上に上るといわれている。それだけの取引量が生まれているのだ。

 毒の出品者たちは、自分が売りたい未使用のスニーカーを、まず運営側に発送する(任意)。そこで外箱からスニーカー本体まで、専門家のチェックを受けた上で、本物であれば「証明書」を受け取ることができる。

 1足あたり数万円から数十万円するスニーカーの価格を考えれば、このチェックサービスは役に立つ。そして毒は、自らのプラットフォーム上の売買時に手数料を取ることで利益を上げている。

 ちなみに中国においては、女子のスニーカー熱も負けてはいない。「毒」は男性ユーザーがとても多いことで知られているが、競合アプリである「nice(ナイス)」などでは、たくさんの女性たちが自慢のスニーカーを披露しあっている。

 そして欲しくなったら、まるで株価チャートのようなスニーカーの価格推移をチェックしながら、ここぞというタイミングで購入することになるのだ。

 こうしたスニーカー特化型の人気アプリが、中国にはいくつもあるのだ。

「自分、イージーブーストは6足持っているんですよ。先日も近々入る予定のアルバイト代を見越して、1足5万円以上で買ったばかり。毒のアプリを使っていると、本当の中毒者になってしまうんですよ」

 そう語ってくれた夏目氏だが、中国のジェネレーションZ世代(2000年~2010年に生まれた世代)たちは、まだまだレアスニーカーにカネを使いそうだ。

 実は毒のアプリ上では、毎月6~7回にわたって、限定スニーカーを無料でプレゼントするという「抽選会」をユーザーに向けてやっている。もちろん倍率は高いのだが、もらえるものは、もらっておきたい。

 実はここにも、仕掛けがしてある。毒のユーザーがもし、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などでこうした抽選会のお知らせをシェアすると、抽選に複数回チャレンジすることができるようになるのだ。

 スニーカー中毒者が、さらなるスニーカー中毒者を増やす。そんな成長サイクルによって、運営会社である上海识装信息科技の企業価値は30億元(約450億円)に。今や中国のポテンシャルユニコーン企業と呼ばれている。

 思えば中国ではつい先月に、ユニクロと米ニューヨークのデザイナー「カウズ(KAWS)」とのコラボレーション商品が発売されて、各地のユニクロ店舗では狂ったような奪い合いが起きたことが記憶に新しい。

 また私の会社オフィスの目と鼻の先にある「コム・デ・ギャルソン」の店舗でも、数量限定のTシャツなどを買うために、ものすごい人数の中国人が行列をしている光景をよく見かけるのだ。

 レア物、限定物、希少物。こうしたアイテムを求める中国人たちのエネルギーは、世界中のファッションブランドを巻き込みながら、しばらく尽きることがなさそうだ。(月刊サイゾー8月号より)

文・写真/後藤直義(ごとう・なおよし)

1981年生まれ。青山学院大学文学部卒。毎日新聞社、週刊ダイヤモンドを経て、2016年4月にソーシャル経済メディア『NewsPicks』に移籍し、企業報道チームを立ち上げる。グローバルにテクノロジー企業を取材し、著書に『アップル帝国の正体』(文藝春秋)など。

iPhone密輸組織が摘発! 香港から中国へ地下トンネルで……!?

 今年3月に発生した香港の大規模デモによって、市民生活はもちろん、世界経済にも大きな影響が出始めている。中国と香港を結ぶ税関でも荷物検査が強化されるなど、当局の管理体制が厳しくなっているが、そんな中、税関の目をかいくぐるため、トンデモな手段で密輸を行っていた組織が摘発された。

 中国メディア「網易新聞」(11月28日付)によると、広東省深セン市の警察当局は同27日、iPhoneなどを密輸していたとして5人の男を逮捕した。この組織は、最新型のiPhone  11など人気スマートフォンを香港で購入、地下に掘った全長250メートルのトンネルを利用して中国側に密輸していたという。

 警察はアジトから2,000台以上のスマホを押収しており、密輸されたスマホの金額は1,000万元(約1億6,000万円)に上るとされている。組織は中国と香港のそれぞれの国境沿いにアジトを持ち、そこをつなぐ地下トンネルを造っていたようだ。地下トンネルの入り口がある部屋には目張りがされており、さらにトンネルが外部から見えないよう、大量の古タイヤを積み上げるなど、カムフラージュをしていたという。

 香港と中国では税制が異なるため、消費税のからない香港でiPhoneを購入し、それを中国国内に持ち込むことで利ざやを得ている密輸組織は後を絶たない。昨年3月には、ドローンを使ってスマホを密輸していた大規模な組織が摘発、26名が逮捕される事件が起こっている。この組織は、ドローンにスマホをくくりつける手口で、5億4,000万元(約85億円)分のスマホを密輸していたという。

 陸海空とさまざまな手段で密輸を行うさまは、アメリカへ密輸を行うメキシコの麻薬カルテルを彷彿とさせる。iPhoneは、麻薬の並みにもうかるということの証左なのだろう。

(文=廣瀬大介)

中国流リサイクル⁉ 客の食べ残しを再利用した「唾液白玉団子」の提供が発覚!

 中国では、食に関する不祥事が一向になくなる気配がない。以前、当サイトでは客が残したスープをろ過して再利用した「口水油(唾液スープ)」について紹介したことがあるが(参照記事)、またもや同様の事件が起きた。

「中国経済網」(11月28日付)などによると、江蘇省南京市江北新区にある老舗餡入り白玉団子店で、客が残した白玉団子を再利用する、いわゆる「唾液白玉団子」を提供していたことがわかった。現場を目撃した隣接する飲食店の通報で発覚したが、店主はそれを否定。ところが監視カメラの映像には、「再生作業」の一部始終がしっかりと映っていた。

 10月2日夜11時5分、店主は、客が食べ残した白玉団子をひとつのお椀にまとめると、作業台の上に置いた。そして外の様子をうかがい、誰もいないことがわかるとそれを鍋に入れ、さっとゆでれば完成だ。さらに映像には、約30分後にも再び同様の「再生作業」を行っていることが捉えられている。30分の間に2回もやっているということは、日常的に行われているとみて間違いないだろう。実際、江北新区管委会市場監管局によると、同店は6月と9月に同様の容疑で通報されていたが、証拠不十分でおとがめなしだった。

 店主は「ゴミの分別のため、ボウルに移しておいただけ」と釈明しているが、今回は動かぬ証拠があるため、苦しい言い訳は通じず、ついに営業停止処分を科された。同店の白玉団子は1杯5元(約78円)と格安のため人気だったが、ここまで大々的に報じられると、営業を再開させるのは難しいだろう。

 中国では、飲食店で客が残した火鍋のスープを別の客に出す行為なども横行しているが、食べ物の種類を問わず、同様の再利用は頻繁に行われているようだ。

 中国でお食事の際は、くれぐれも覚悟してほしい。

(文=中山介石)