『下町ロケット』第9話 変人・軽部に父性を目覚めさせた意外な相手は!? 時代劇とSFとが融合

 前シリーズに比べて視聴率が伸び悩んでいる阿部寛主演ドラマ『下町ロケット』(TBS系)ですが、かなりユニークな状況となってきました。石原プロのイケメン俳優だった徳重聡が変人キャラ・軽部を演じていることでも話題ですが、ここにきて軽部が人間らしい表情を見せるようになってきたのです。軽部を変えたのは、いったい誰だったのでしょうか? さっそく『下町ロケット ヤタガラス』第9話を振り返りたいと思います。

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 第9話は杉良太郎演じる「帝国重工」の藤間社長が大活躍です。経営不振から引退がささやかれていた藤間社長ですが、次期社長と目されている重役の的場(神田正輝)が完成させた農業用大型ロボット「アルファ1」がデモンストレーションに大失敗してしまったことで俄然ヤル気が蘇りました。的場に任せては、「帝国重工」には未来はないと確信したのです。一方、目の前で「アルファ1」が大横転した現場を見てしまった的場は、急に白髪が増えたようです。

 的場の太鼓持ち・奥沢部長役の福澤朗は演技がビミョーなことが以前から気になっていましたが、今回はまた違った意味で気になりました。「アルファ1」の問題点は、走行システムを開発した野木教授(森崎博之)側にあると主張する奥沢は、異議を唱える財前部長(吉川晃司)をギョロ目で睨みつけます。落ち着きなくやたらに目をギョロギョロさせるメガネ姿が、ある人物を連想させました。佐村河内ゴーストライター事件で有名になった新垣隆さんです。視聴者の注目を惹く表情の作り方など、参考にしているのかもしれません。新垣さんはクラシック音楽業界の闇を暴露することで一躍ブレイクしましたが、俳優・福澤朗にブレイクする日は果たして来るのでしょうか。

 

■杉良太郎の背中に刻まれた桜吹雪は消えてなかった!

 話を進めましょう。「アルファ1」の問題箇所を調べるため、佃社長(阿部寛)率いる「佃製作所」が協力することになりました。野木教授の走行システムを搭載した「佃製作所」の試作ロボットで「アルファ1」と同じような走行テストを行い、これで問題がなければ野木教授のシステムに不備はないことになります。

「よし、行け!」「がんばれ!」と立花(竹内涼真)とアキ(朝倉あき)は走行テストを始めた試作ロボットに声援を送ります。いつもはクールに後ろのほうで腕組みをしている軽部(徳重聡)ですが、この日は立花やアキと一緒になって「がんばれ~!!」と前のめりになってコブシを震わせています。今まで見せたことのない軽部の熱い姿がそこにはありました。

 プログラムに従って動くロボットを励ますなんて、意味がないことです。これまでの軽部なら、熱くなる立花たちを冷笑していたことでしょう。でも、軽部が開発に関わったトランスミッションを内蔵した試作ロボットゆえに、他人事ではありません。生まれたてのロボットに対して、軽部に父性的な愛情がいつしか芽生えていたのです。平気で嘘をついたり、他人の顔色をうかがう人間よりも、無口だけど正直なロボットに軽部は愛情を抱いているのかもしれません。ロボットを育てることで、コミュ障っぽかった軽部が人間らしくなっていく。不思議な感慨が湧いてくるシーンでした。

 走行テストに無事成功した「佃製作所」の試作ロボットですが、それでも的場と奥沢は「帝国重工」側に非があることを頑なに認めようとはしません。そこに颯爽と現れたのが、藤間社長です。このときの杉良太郎は時代劇スターとしてのオーラ全開でした。

 失敗の責任を野木教授ひとりに押しつけようとする的場と奥沢を、藤間社長は厳しく叱責します。「自分たちが世の中の中心だと思っている連中に、新規事業ができるはずがない」と一刀両断。胸がすくような大岡裁きです。いや違った、杉良太郎の当たり役だった時代劇『遠山の金さん』(テレビ朝日系)の世界でした。スーツ姿の藤間社長の背中には、きっと桜吹雪が咲き乱れていたことでしょう。

■親子鷹の夢は、遥か火星を目指すことに

 第9話は佃利菜(土屋太鳳)と佃航平との父子関係もクローズアップされました。祖母(倍賞美津子)が詩吟の練習に使っている古いカセットレコーダーを利菜が修理していたところ、会社から帰ってきた父・航平も手伝うことに。父子で一緒に修理に取り組む姿は往年の「日曜劇場」を思わせるものがありました。幼い頃の利菜は、航平が映らなくなったテレビやラジオを直してしまう様子を見て「パパは魔法が使えるんだ」と感動し、彼女自身も理系の道へと進むことになったのです。仕事に追われる佃航平にとっては、娘と話す思い出話は格別なものがありました。

「帝国重工」のロケット用バルブの開発リーダーに抜擢された今の利菜にとって、「佃製作所」の社長である佃航平はライバルでもあります。利菜がありったけの情熱を注いで開発した自社バルブは性能試験の結果、見事に合格ラインをクリアしますが、「佃製作所」の改良バルブはさらにそれを上回る数値を記録します。利菜は完敗を喫します。でも、利菜がエンジニアとしての成長を諦めない限り、いつかは父・佃航平に引導を渡す日が訪れることでしょう。

 バルブ対決を終えた佃父子は自宅前の川の堤防に横になり、頭上に広がる夜空を眺めます。淀んだ東京の夜空でも、火星は赤く輝いています。いつの日か利菜が開発した新型バルブを搭載したロケットが、火星まで到着することになるかもしれません。理系親子ならではの、大きな大きな夢を共有する佃航平と利菜でした。

 いつもはストーリー展開が早すぎて、ドラマの描き方が雑な『下町ロケット』ですが、第9話はかなり上質な出来だったと思います。杉良太郎と吉川晃司が登場する「帝国重工」の場面は完全に時代劇の世界ですし、変人・軽部が農業用ロボットに愛情の眼差しを注ぐシーンはSFドラマの要素を感じさせます。さらに第9話では、理系親子が夢をバトンリレーしていくエピソードが描かれました。池井戸潤原作の企業ドラマ『下町ロケット』ですが、ひとつの作品の中に時代劇、SFドラマ、ホームドラマと実にいろんなレイヤーが重なって構成されていることが分かります。「日曜劇場」という伝統ある放送枠を使って、TBSドラマ班は新しい試みに挑戦していると言えるのではないでしょうか。挑戦なくして、伝統を育んでいくことはできません。

 気になる第9話の視聴率は12.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でした。第7話は12.0%、第8話は11.5%とワースト記録を更新していましたが、クライマックスを控えてようやく持ち直すことができました。企業ドラマ、時代劇、SF、ホームドラマと多彩な側面を持った『下町ロケット』は残り2話で、果たしてどんな領域にまで進むことができるのでしょう。軽部の活躍ともども期待したいと思います。

(文=長野辰次)

『下町ロケット』第8話 シニア向け回春誌「週刊ポスト」が大スクープ!? イモトアヤコはプー生活

 オジさんたちがこれからの日本産業の進むべき未来を熱く語り合う、熱血理系ドラマ『下町ロケット』(TBS系)。農業用の新型ロボットが次々と登場し、激しく火花を散らします。なんだか『鉄腕アトム』の人気エピソード「地上最大のロボット」を思わせるSFチックな展開になってきました。さっそく、『下町ロケット ヤタガラス』第8話を振り返ってみましょう。

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「社長、見てください!」。吹けば飛ぶような中小企業「佃製作所」を経営する佃社長(阿部寛)のもとに、経理部の迫田係長(今野浩喜)があわてて出社してきました。迫田が手にしているのは「週刊ポスト」(小学館)です。いつもは高齢者向きの回春特集や懐かしいアイドルのセクシーグラビアが多い「週刊ポスト」ですが、迫田が「見てください」と開いたページはそうではありません。なんと「帝国重工」の次期社長と目されている的場(神田正輝)が下請け企業をイジメていた過去が暴露されていたのです。「週刊ポスト」にとっては、久々のスクープ記事だったのではないでしょうか。ちなみに池井戸潤の原作小説は小学館から発売中です。

 スクープネタをリークしたのは、小型エンジンメーカー「ダイダロス」の重田社長(古舘伊知郎)と「ギアゴースト」の伊丹社長(尾上菊之助)でした。重田も伊丹も、かつて的場の出世の踏み台として使い捨てにされた苦い過去があります。2人の的場に対する復讐心が、“下町トラクター”こと小型農業ロボット「ダーウィン」を生み出したのです。「ダーウィン」は哀しい生い立ちを持ったロボットのようで、不憫に思えてきます。そういえば、鉄腕アトムも天馬博士の亡くなった息子の代用品として誕生した哀しい生い立ちの持ち主でしたね。

 重田たちの仕掛けた罠に、的場はまんまと引っ掛かります。的場の醜聞は「帝国重工」内でも問題視され、退任がウワサされていた藤間社長(杉良太郎)がもう一期続投することに。反藤間派の沖田会長(品川徹)から呼び出された的場は「このままでは君は終わりだ」と警告されるのでした。焦った的場は、太鼓持ちの奥沢部長(福澤朗)に大型ロボット「アルファ1」の完成を急がせます。農業関係者が10万人集まる大イベント「アグリジャパン」で、重田たちが出品する「ダーウィン」と直接対決し、劣勢を挽回しようと考えたのです。すべては古舘伊知郎扮する重田の考えたアングルどおりの展開です。

 

■M-1の裏で繰り広げられたロボットバトル

 裏では『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)で霜降り明星と和牛が激しいお笑いバトルを繰り広げる中、いよいよ田んぼのど真ん中で「アグリジャパン」が開催されます。こちらは超リアルなロボット対決で盛り上がります。ロケ地となった新潟県燕市には大勢のエキストラが集まり、米どころ新潟での『下町ロケット』人気の高さが伝わってきます。

 デモンストレーションの先攻は、伊丹社長がトランスミッションを提供している「ダーウィン」です。小型ロボットらしく小回りがよく、トラブルなくパフォーマンスを終えました。立ち上がった観客たちは“下町トラクター”に惜しみない拍手を送ります。続いては「帝国重工」が完全自社製造した大型ロボット「アルファ1」の入場です。会場に現われたその大きさに圧倒されますが、日本の小さな田んぼには不向きなようです。馬力はあるものの、仕事ぶりは雑。トランスミッションの性能に難があります。極めつけは最後の安全テストでした。目の前に置かれていたカカシを、「アルファ1」は無惨にも轢き潰してしまったのです。会場から思わず悲鳴が上がります。

 ロボットが人命を脅かすという、「ロボット工学三原則」に抵触する事態を起こしてしまった「アルファ1」。しかも衆人の見ている場で。「アグリジャパン」に参加するために米国から緊急帰国した藤間社長の顔に泥を塗ることとなりました。「センサーに泥が付いたようです」と言い訳する奥沢部長は、武士の世なら切腹ものです。大企業「帝国重工」は社内の派閥争いによって、その信頼を一気に失ってしまいました。ロボット新世紀の幕開けに、暗い影を落とす結果となったのです。

■しゃぶりつく軽部とリアルに悩むイモトアヤコ

 今週の軽部の時間です。「佃製作所」きっての変人・軽部(徳重聡)の言動をチェックしてみたいと思います。第8話は軽部の出番が思いのほか多く、軽部ファンにはうれしい回となりました。北海道農業大学の野木教授(森崎博之)の監修のもと、「佃製作所」でも独自に農業ロボットを開発しています。試作機の性能が思うように上がらず、焦る立花(竹内涼真)は軽部に協力を求めるのでした。そんないきり立つ立花をいなすように、軽部は「お昼になったので、メシに行ってきま~す♪」と相変わらずのあまのじゃくぶりです。実用化までの長い長い開発をモノにするには、軽部のようなマイペースさは大切です。しょげる立花を、「北海道はうまいもんがいっぱいあるからな」と技術部の山崎部長(安田顕)が肩を叩いて励ますのでした。

 トランスミッションの開発と同様に、軽部の扱い方もなかなか難しいものがあります。軽部が昼食をしっかり摂る派であることを理解したアキ(朝倉あき)は、「とのむらのお米」で炊いたご飯でおにぎりを作ってきました。タコさんウインナーと卵焼きがおかずです。アキが「軽部さんもどうぞ」と言い終わるやいなや、軽部は瞬時に手を伸ばしておにぎりを頬張ります。「いただきます」も「ありがとう」も言わない軽部ですが、自分が作った料理を美味しそうに食べる姿にアキは満足げです。意外と軽部は母性本能をくすぐるタイプかもしれません。男くさい職場で、アキが眩しく輝く第8話でした。

 イモアトアヤコ演じる天才エンジニア・島津のその後の動向も気になるところです。伊丹社長がダースベイダー化してしまったため、「ギアゴースト」を退職するはめになった島津は、第7話ではボウリング場で孤独さを噛み締めていました。しばらくプー子状態だった島津ですが、貯金も限りがあるのか就活を始めます。企業間の権力闘争に巻き込まれるのが嫌で大学の研究職を探す島津ですが、思うような仕事は見つかりません。カレンダーを見ると、週1ペースでいろんな大学の面談を受けていることがうかがえましたが、反応は思わしくないようです。

 暇を持て余した島津は「アグリジャパン」の会場に出掛けたものの、自分が設計したトランスミッションを内蔵した「ダーウィン」の活躍を目の当たりにしても、笑顔にはなれません。エンジニアとして純粋な情熱を注いだトランスミッションを、「帝国重工」への復讐の道具として利用されたのがつらいのです。

 単なる偶然でしょうが、イモトアヤコのホームグラウンドとも言うべき『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)はヤラセ問題で番組の存続が危ぶまれています。プー子となり、自分の将来に不安を感じている島津の姿が、現実のイモトアヤコと重なって映ります。これまで通りにバラエティー番組を主戦場として続けていくのか、それとも女優業へシフトチェンジするべきか。イモト自身も自分のこれからの進路に悩んでいるのではないでしょうか。

 第8話の視聴率は11.5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、先週の12.0%からさらにワースト記録を更新。『M-1 グランプリ』の17.8%に、あっさり破れてしまいました。佃社長たちが密かに開発する理想の農業ロボットは、「帝国重工」と重田たち「ダーウィン・プロジェクト」との骨肉の争いにどのような形で割り込んでいくことになるのか。最終回まで残すところ、あと3話。佃社長が新型ロボットの開発によって日本の産業を新次元のものへ変えようとしているように、TBSのドラマ班も視聴率に惑わされない新次元のドラマづくりに挑戦してほしいと思います。
(文=長野辰次)

下請けをバカにするヤツは下請けに泣くはめに!! 変人・軽部が笑ったよ『下町ロケット』第7話

 戦国武将・織田信長は「人生は50年。天界に比べ、人間の一生は夢か幻みたいなもの」という言葉を残して本能寺で散ったそうです。戦国時代と比べ、現代では日本人の平均寿命も大きく伸びました。40代~50代は言ってみれば“オッサン盛り”です。体のいろんなところから、オッサン汁が溢れ出し、実に味わい深い世代なのです。『下町ロケット』(TBS系)の主人公・佃航平率いる中小企業「佃製作所」は、戦国時代同様に誰が敵か味方か分からない経済戦国時代をまさに絶賛サバイバル中です。アクの強いオッサンキャラクターが群雄割拠する『下町ロケット ヤタガラス』第7話を振り返ってみましょう。

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「佃製作所は切れ!」。神田正輝演じる「帝国重工」の“ダーティ重役”的場の顔面クローズアップから第7話は始まりました。次期社長の座を狙う的場は、財前部長(吉川晃司)が企画立案した無人農業ロボットを、自分の手柄にしようとしています。長年、「石原プロモーション」の重役を務めていたせいもあってか、『太陽にほえろ!』(日本テレビ系)のドック刑事もすっかり腹黒い役が似合うようになりました。

 財閥系の大企業「帝国重工」は戦車などの軍需産業にも関わっているので、無人で動く農業トラクターなんて簡単に自社で製造できるだろうと的場は高を括っているのでした。「佃製作所」を製造ラインから外すように命じたその舌で、農業ロボット開発の第一人者である野木教授(森崎博之)が引き続き協力するように、佃社長(阿部寛)に頼めと言い出します。的場の無茶ぶりに、財前部長は苦悶します。神経の弱い人なら、心の病に罹ってしまいそうです。大企業の暗黒面がまざまざと描かれます。

■悪役たちのデフレーション現象

 舞台は変わって、新潟県燕市。実家の農業を継いだ殿村(立川談春)の前にも悪役が立ちはだかります。妻・咲子(工藤夕貴)が実家の様子を覗きに東京から訪ねてきたので、いいところを見せようと張り切っていた殿村ですが、お米の販売所で唖然としてしまいます。消費者に人気だった「とのむらの米」はそれまで販売所の目立つところに置いてあったのに、隅っこに追いやられていました。農林協に勤める吉井(古川雄大)の地味な嫌がらせでした。

 翌朝、殿村家の玄関前には生ゴミがぶちまけられていました。これも、どうやら吉井の仕業のようです。日本の農業の未来を考える財前部長らに比べ、何とスケールの小さな嫌がらせでしょうか。ミュージカル界の貴公子・古川雄大は、小悪党ぶりを楽しげに演じています。

 さらに場所は変わって、時代劇『水戸黄門』(TBS系)に出てきそうな立派な料亭。的場に恨みを持つ「ダイダロス」の重田社長(古舘伊知郎)はダースベイダー化した「ギアゴースト」の伊丹社長(尾上菊之助)らを集めて、ニヤニヤと的場に煮え湯をのませる策略を練っています。ダークサイドに墜ちた彼らは、成功者を地獄に引きずり込むのが愉快で堪りません。

「ヤタガラス編」は、どこもかしこも悪人ばかりです。古舘率いる悪のマシン軍団に加え、天才エンジニア・島津(イモトアヤコ)の後釜となった「ギアゴースト」の開発主任・氷室(高橋努)や的場の太鼓持ち・奥沢(福澤朗)も実に憎々しい表情で、ヒール役は過剰供給状態です。悪役俳優の存在価値が暴落しないか、ちょっと心配になります。

 これだけゲス野郎が多いと、「佃製作所」きっての変人・軽部(徳重聡)がまともに見えてくるではありませんか。「帝国重工」から切り捨てられた佃社長ですが、織田信長のようにここで散るわけにはいきません。目先の利益を求めるのではなく、日本の未来のために農業ロボットを独自開発することを全社員の前で宣言するのでした。「目指すは、まったく別次元のトランスミッションだ!」という佃社長の雄叫びに、トランスミッション開発チームの軽部は「ムフッ」と小さく笑みをこぼします。変人・軽部の表情の変化を追っているだけで、我々視聴者もほっこりするのでした。

■首都圏と地方との視聴率格差が明確に

 佃社長を差し置いて、第7話の主人公となったのは「TEAM NACS」のリーダー・森崎博之演じる野木教授でした。大学時代の親友・佃社長に説得され、「帝国重工」との気乗りしない農業ロボットの開発を続けていた野木教授がついにブチ切れます。演技もビミョーな元日本テレビアナウンサーの福澤朗演じる奥沢が、まさに怒りの琴線にジャストミートしてしまったのです。野木教授と農業ロボットの持つ大きな可能性について語り合っていた佃社長を見つけるなり、「下請けさんはこちらの指示に従えと言っているんですよ」と慇懃無礼な言い回しで、この場を立ち去るように奥沢は命じます。「佃製作所」だけでなく、全国の下請け業者を敵に回す大失言です。大企業の看板という虎の威を借る奥沢に向かって、野木教授は一喝します。

「開発コードはくれてやる。ただし、世界中に公開してやる。下請けが必要ないというなら、下請けぬきで作ってみろ!」

 社内での保身しか考えていない奥沢を一刀両断した野木教授の鮮やかな啖呵に、佃社長に同行していた技術開発部の山崎部長(安田顕)もテレビを観ていた視聴者も溜飲が下がる思いでした。この様子を黙って眺めていた軽部は、白い歯を見せて笑っています。ひねくれ者の軽部と視聴者とのハートがシンクロした瞬間でした。台詞は決して多くない軽部ですが、彼の一喜一憂ぶりから目が離せません。

 さて、第7話の視聴率ですが、12.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と先週の13.1%からさらにダウンして、前シリーズも含めてワーストとなってしまいました。東京に本社のあるTBSの営業部や広告代理店は『下町ロケット』新シリーズの数字が伸び悩んでいることを懸念していると思いますが、ロケ地となっている新潟県や北海道では軒並み高視聴率を記録しているそうです。殿村が農業に専念するために退職した第5話は新潟地区で25.7%、森崎演じる野木教授が初登場した第6話は札幌地区で19.4%をマークしています。新しい時代の農業をテーマにした新シリーズを地方の人たちは身近に感じ、都心の人たちはさほど興味を感じないようです。関東地区の数字だけでは読み取れない面白さが新シリーズにはあるようです。

 第7話の終わりに、的場が陣頭指揮を執った大型農業ロボット「アルファ1」と重田社長たちが開発した小型農業ロボット「ダーウィン」がそれぞれ完成。さらに次週以降は佃社長が独自に試作した農業ロボットも加わり、三つ巴のロボットウォーズが勃発します。経済戦国時代を制するのは、いったい誰になるのでしょうか。
(文=長野辰次)

『下町ロケット』不発だった……TBSに漂うあきらめムード「敗因は脚本家の変更」

「局内では、すでに『2は不発だった』という結論に達してますよ。演出の福澤克雄さんも『また来年だな』と、すでに匙を投げてますからね。やっぱり第2話でテレ朝の『おかしな刑事スペシャル』に負けたのが痛かったようです」(TBS関係者)

 阿部寛主演で、現在放送中のドラマ『下町ロケット』第2期(TBS系)。第6話までの平均視聴率が13.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、通常のドラマであれば大成功と言われる数字だが、前作と比較するとやはり物足りない結果となっている。

「前作が平均視聴率18.5%だったことから、当然、目標は20%でした。ところが、このままでは15%も怪しい雰囲気になっています。局内でも『キャスティングに奇をてらいすぎたんじゃないか』とか『ストーリーの展開が早すぎるんじゃないか』とか“戦犯探し”がすでに始まってますよ。今のところ、脚本家が変更になったことが“不発”の原因という風になりそうです」(ドラマスタッフ)

 すでに一部週刊誌でも報じられたように、来年には再び池井戸潤氏の原作でドラマ化が予定されている作品があるという。

「題材はラグビーで、同局でドラマ化もされた『ルーズヴェルト・ゲーム』のような作品になる予定だそうです。演出の福澤さんはラグビー部出身で、U-23日本代表としても活躍しましたし、来年はラグビーのW杯が日本で開催されるので話題性もある。放送は7月クールで、9月からはW杯本戦が始まるので、TBSもそこに向けていろいろな仕掛けを考えているようですから、今回の失敗はあまり気にしてないようですよ」(芸能事務所関係者)

 ヒットメーカーは転んでもただでは起きない!?

『下町ロケット』第6話 悪役たちが“顔面パレード”する後半戦スタート!! 変人・軽部に恋の予感か

 鍋料理の後のおじやのように味わい深い、オジさん俳優たちが大挙出演する熱血理系ドラマ『下町ロケット』(TBS系)。今週もいい出汁加減です。阿部寛演じる佃社長の道楽みたいなものだったロケット開発ですが、新章「ヤタガラス編」に突入し、具体的なビジネスへと展開していくことになります。高齢化、労働者不足が叫ばれる日本社会に、新しい希望をもたらすことになりそうです。さっそく、『下町ロケット ヤタガラス』第6話を振り返ってみましょう。

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「けったくそ、悪い話だなぁッ」。理系ならではの変人キャラ・軽部(徳重聡)が2週間ぶりの登場です。ベンチャー企業「ギアゴースト」の伊丹社長(尾上菊之助)が佃社長(阿部寛)を裏切って、ライバル社「ダイダロス」と資本提携したことが「佃製作所」の社員全員に知らされます。ひねくれ者と思われている軽部ですが、社員みんなの気持ちを率直に代弁するのでした。

 今週の軽部の台詞はこのひと言だけでしたが、その後もなかなかの挙動不審ぶりで楽しませてくれました。「ギアゴースト」を退職した副社長・島津(イモトアヤコ)が「佃製作所」へ最後のあいさつに訪れたのですが、立花(竹内涼真)やアキ(朝倉あき)は「一緒にやりましょうよ」と「佃製作所」に再就職することを勧めます。普段はぶっきらぼうな軽部ですが、天才エンジニアである島津の実直な仕事ぶりには好意を抱いています。無言ながらも、子犬のようなつぶらな瞳で、「島ちゃん、一緒に働こうよ♪」とアイコンタクトを懸命に送る軽部でした。

 苦労を共にしてきた伊丹社長から用済み扱いされた島津ですが、捨てる神あれば拾う神ありです。変人と天才との間で恋は芽生えるのでしょうか。池井戸潤の原作小説にはなかったサイドストーリーに俄然注目です。

 

■夢は現実化するとノルマに変わる!?

 ロケット開発の現場から外された「帝国重工」の財前部長(吉川晃司)の新しい部署は「企画推進部」でした。ロケットに関わる周辺ビジネスを考える部署のようです。そこで財前部長が閃いたアイデアは、人工衛星による測位情報を利用した無人農業ロボットの実用化でした。この農業ロボットが全国に普及すれば、高齢化が進む日本の農業を救うことができるのです。単なる道楽と思われていたロケットの打ち上げが、日本の第一次産業に大革命をもたらすことになるのです。財前部長から農業ロボット用のエンジンとトランスミッションの提供を頼まれ、佃社長の鼻息はいつになく強めです。

 佃社長はエンジンとトランスミッションの開発に加え、もうひとつ重要なミッションを託されます。農業ロボット研究の第一人者である北海道農業大学の野木教授(森崎博之)を、このプロジェクトに巻き込んでほしいというものでした。野木教授は佃社長の大学時代の親友です。北海道で久々の再会を果たした佃社長と野木教授は、学生たちと一緒にキャンパス内での宴会を楽しむのでした。北海道で生まれた「TEAM NACS」のリーダー・森崎だけに、ジンギスカン鍋を囲む姿がよく似合います。

 ところがビジネスの話になると、野木教授の顔色がサッと変わるではありませんか。以前、「キーシン」というベンチャー企業から共同開発を持ち掛けられ、情報を盗まれるという痛い目にあっていたのです。金儲けのために自分の研究が利用されることを嫌った野木教授は、名台詞を吐くのでした。「企業と組むことで、夢は目標となり、ノルマに変わる」と。この名言を話す相手が現われる日を、野木教授はずっと待っていたようです。

 しかし、佃社長も自社の存続が掛かっているので、「そりゃ、そうですね」と引き下がるわけにもいきません。学会で上京してきた野木教授を「いいものを見せてやる」と誘い、「帝国重工」へと強制的に連行するのでした。佃社長の「いいもの」とは、「帝国重工」と「佃製作所」が共同で開発しているロケット用新型バルブの実験現場でした。会社の垣根を越えて、開発チームのメンバーたちが共に汗を流しています。BGMは英国合唱団「LIBERA」が歌う中島みゆきの名曲「ヘッドライト・テールライト」。佃社長の「彼らにはノルマを乗り越える歓びがあるんだ」という言葉に、ついついうなずいてしまう野木教授でした。一流詐欺師のような佃社長の見事な手口に、若干の恐ろしさを覚えます。

 

■悪の貴公子、さっそうと登場!

 池畑慎之介演じる悪徳弁護士・中川は刑務所送りとなりましたが、新章スタートに合わせて新しい悪役たちがぞろぞろと姿を見せました。「ダイダロス」の重田社長(古舘伊知郎)のもとに、野木教授から情報を盗んだ「キーシン」の戸川社長(甲本雅裕)、広報担当の北堀(モロ師岡)が顔をそろえます。これにダースベイダー化した「ギアゴースト」の伊丹社長が加わり、悪のマシン軍団の完成です。カメラは丁寧に、一人ひとりの悪党づらをクローズアップで映して見せます。オジさん俳優たちは、みんな悪いことがしたくて堪らないといった風情です。『下町ロケット』はサラリーマン版『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)なのかもしれません。

 美味しい悪役をオジさん俳優たちだけに独占させるのは、もったいないというものです。「佃製作所」を退職して、新潟県燕市にある実家の農業を継いだ殿村(立川談春)ですが、故障しがちな古いトラクターに頭を抱えている殿村の前に、さっそうと悪役界の貴公子が現われるのでした。ミュージカル『テニスの王子様』や『エリザベート』『モーツァルト!』など、ミュージカル界で活躍する古川雄大の出番です。

 農林協に勤める大農家の三男坊である吉井(古川雄大)は、殿村家の自家米が農林協を遠さずに消費者に直売されていることが気に入りません。トラクターの故障箇所を見ていた佃社長を「こんな、修理のおっさん」呼ばわりした挙げ句、「米の品質なんて、客に分かるわけないだろ。米なんて、喰えりゃいいの」と農林協の職員とは思えない大暴言を吐くのでした。そのくせ、殿村から「あんたみたいな人がいると、米がまずくなる」と怒鳴られると、すたこらと退散していきます。とてもライトな小悪党ぶりは、古舘伊知郎率いる悪のマシン軍団とは違った軽やかなフレーバーで視聴者を楽しませてくれます。
 
 タレントの好感度ランキングがもてはやされた時期は、テレビドラマでも映画でも悪役をやると好感度が下がり、CMの仕事が来なくなってしまうという底の浅い理由から、俳優たちが悪役をやりたがらないというつまらない風潮がありましたが、北野武監督の『アウトレイジ』(10年)がヒットしたあたりから、風向きが変わってきたようです。俳優はダークサイド側の人間も演じられてこそ一人前です。うさん臭い芸能プロダクションの社長役のモロ師岡は、北野監督の名作『キッズ・リターン』(96年)では才能ある新人ボクサー(安藤政信)に酒と下剤を教えて潰してしまうロートルボクサーを好演しました。こういうアクのある俳優がいることで、いい出汁加減のドラマができるのです。甘い夢を語る、いい人たちだらけでは社会もドラマも回りません。

 新章スタートとなった第6話の視聴率は13.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でした。福澤克雄チーフディレクターの演出により、前回の12.7%からちょい数字が回復しました。佃社長が言った「ノルマを乗り越える歓びがある」という台詞は、野木教授だけでなく、TBSのドラマ班にも向けた言葉でもあるようです。平均視聴率18.5%を記録した前シリーズに、どこまで後半戦は迫ることができるのか。軽部の恋の行方と共に注目したいと思います。
(文=長野辰次)

『下町ロケット』第6話 悪役たちが“顔面パレード”する後半戦スタート!! 変人・軽部に恋の予感か

 鍋料理の後のおじやのように味わい深い、オジさん俳優たちが大挙出演する熱血理系ドラマ『下町ロケット』(TBS系)。今週もいい出汁加減です。阿部寛演じる佃社長の道楽みたいなものだったロケット開発ですが、新章「ヤタガラス編」に突入し、具体的なビジネスへと展開していくことになります。高齢化、労働者不足が叫ばれる日本社会に、新しい希望をもたらすことになりそうです。さっそく、『下町ロケット ヤタガラス』第6話を振り返ってみましょう。

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「けったくそ、悪い話だなぁッ」。理系ならではの変人キャラ・軽部(徳重聡)が2週間ぶりの登場です。ベンチャー企業「ギアゴースト」の伊丹社長(尾上菊之助)が佃社長(阿部寛)を裏切って、ライバル社「ダイダロス」と資本提携したことが「佃製作所」の社員全員に知らされます。ひねくれ者と思われている軽部ですが、社員みんなの気持ちを率直に代弁するのでした。

 今週の軽部の台詞はこのひと言だけでしたが、その後もなかなかの挙動不審ぶりで楽しませてくれました。「ギアゴースト」を退職した副社長・島津(イモトアヤコ)が「佃製作所」へ最後のあいさつに訪れたのですが、立花(竹内涼真)やアキ(朝倉あき)は「一緒にやりましょうよ」と「佃製作所」に再就職することを勧めます。普段はぶっきらぼうな軽部ですが、天才エンジニアである島津の実直な仕事ぶりには好意を抱いています。無言ながらも、子犬のようなつぶらな瞳で、「島ちゃん、一緒に働こうよ♪」とアイコンタクトを懸命に送る軽部でした。

 苦労を共にしてきた伊丹社長から用済み扱いされた島津ですが、捨てる神あれば拾う神ありです。変人と天才との間で恋は芽生えるのでしょうか。池井戸潤の原作小説にはなかったサイドストーリーに俄然注目です。

 

■夢は現実化するとノルマに変わる!?

 ロケット開発の現場から外された「帝国重工」の財前部長(吉川晃司)の新しい部署は「企画推進部」でした。ロケットに関わる周辺ビジネスを考える部署のようです。そこで財前部長が閃いたアイデアは、人工衛星による測位情報を利用した無人農業ロボットの実用化でした。この農業ロボットが全国に普及すれば、高齢化が進む日本の農業を救うことができるのです。単なる道楽と思われていたロケットの打ち上げが、日本の第一次産業に大革命をもたらすことになるのです。財前部長から農業ロボット用のエンジンとトランスミッションの提供を頼まれ、佃社長の鼻息はいつになく強めです。

 佃社長はエンジンとトランスミッションの開発に加え、もうひとつ重要なミッションを託されます。農業ロボット研究の第一人者である北海道農業大学の野木教授(森崎博之)を、このプロジェクトに巻き込んでほしいというものでした。野木教授は佃社長の大学時代の親友です。北海道で久々の再会を果たした佃社長と野木教授は、学生たちと一緒にキャンパス内での宴会を楽しむのでした。北海道で生まれた「TEAM NACS」のリーダー・森崎だけに、ジンギスカン鍋を囲む姿がよく似合います。

 ところがビジネスの話になると、野木教授の顔色がサッと変わるではありませんか。以前、「キーシン」というベンチャー企業から共同開発を持ち掛けられ、情報を盗まれるという痛い目にあっていたのです。金儲けのために自分の研究が利用されることを嫌った野木教授は、名台詞を吐くのでした。「企業と組むことで、夢は目標となり、ノルマに変わる」と。この名言を話す相手が現われる日を、野木教授はずっと待っていたようです。

 しかし、佃社長も自社の存続が掛かっているので、「そりゃ、そうですね」と引き下がるわけにもいきません。学会で上京してきた野木教授を「いいものを見せてやる」と誘い、「帝国重工」へと強制的に連行するのでした。佃社長の「いいもの」とは、「帝国重工」と「佃製作所」が共同で開発しているロケット用新型バルブの実験現場でした。会社の垣根を越えて、開発チームのメンバーたちが共に汗を流しています。BGMは英国合唱団「LIBERA」が歌う中島みゆきの名曲「ヘッドライト・テールライト」。佃社長の「彼らにはノルマを乗り越える歓びがあるんだ」という言葉に、ついついうなずいてしまう野木教授でした。一流詐欺師のような佃社長の見事な手口に、若干の恐ろしさを覚えます。

 

■悪の貴公子、さっそうと登場!

 池畑慎之介演じる悪徳弁護士・中川は刑務所送りとなりましたが、新章スタートに合わせて新しい悪役たちがぞろぞろと姿を見せました。「ダイダロス」の重田社長(古舘伊知郎)のもとに、野木教授から情報を盗んだ「キーシン」の戸川社長(甲本雅裕)、広報担当の北堀(モロ師岡)が顔をそろえます。これにダースベイダー化した「ギアゴースト」の伊丹社長が加わり、悪のマシン軍団の完成です。カメラは丁寧に、一人ひとりの悪党づらをクローズアップで映して見せます。オジさん俳優たちは、みんな悪いことがしたくて堪らないといった風情です。『下町ロケット』はサラリーマン版『渡る世間は鬼ばかり』(TBS系)なのかもしれません。

 美味しい悪役をオジさん俳優たちだけに独占させるのは、もったいないというものです。「佃製作所」を退職して、新潟県燕市にある実家の農業を継いだ殿村(立川談春)ですが、故障しがちな古いトラクターに頭を抱えている殿村の前に、さっそうと悪役界の貴公子が現われるのでした。ミュージカル『テニスの王子様』や『エリザベート』『モーツァルト!』など、ミュージカル界で活躍する古川雄大の出番です。

 農林協に勤める大農家の三男坊である吉井(古川雄大)は、殿村家の自家米が農林協を遠さずに消費者に直売されていることが気に入りません。トラクターの故障箇所を見ていた佃社長を「こんな、修理のおっさん」呼ばわりした挙げ句、「米の品質なんて、客に分かるわけないだろ。米なんて、喰えりゃいいの」と農林協の職員とは思えない大暴言を吐くのでした。そのくせ、殿村から「あんたみたいな人がいると、米がまずくなる」と怒鳴られると、すたこらと退散していきます。とてもライトな小悪党ぶりは、古舘伊知郎率いる悪のマシン軍団とは違った軽やかなフレーバーで視聴者を楽しませてくれます。
 
 タレントの好感度ランキングがもてはやされた時期は、テレビドラマでも映画でも悪役をやると好感度が下がり、CMの仕事が来なくなってしまうという底の浅い理由から、俳優たちが悪役をやりたがらないというつまらない風潮がありましたが、北野武監督の『アウトレイジ』(10年)がヒットしたあたりから、風向きが変わってきたようです。俳優はダークサイド側の人間も演じられてこそ一人前です。うさん臭い芸能プロダクションの社長役のモロ師岡は、北野監督の名作『キッズ・リターン』(96年)では才能ある新人ボクサー(安藤政信)に酒と下剤を教えて潰してしまうロートルボクサーを好演しました。こういうアクのある俳優がいることで、いい出汁加減のドラマができるのです。甘い夢を語る、いい人たちだらけでは社会もドラマも回りません。

 新章スタートとなった第6話の視聴率は13.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)でした。福澤克雄チーフディレクターの演出により、前回の12.7%からちょい数字が回復しました。佃社長が言った「ノルマを乗り越える歓びがある」という台詞は、野木教授だけでなく、TBSのドラマ班にも向けた言葉でもあるようです。平均視聴率18.5%を記録した前シリーズに、どこまで後半戦は迫ることができるのか。軽部の恋の行方と共に注目したいと思います。
(文=長野辰次)

山崎努も出演へ……TBSドラマ『下町ロケット』続編が10月クール放送に向けて準備着々

「本人はもう高齢ということもあって『ドラマはどうしても出たい作品にしか出ない。映画は、まだ拘束時間も短いから別だけど』と話していました。今公開されている作品も、さすが名優という演技をされてますよ」(映画関係者)

 現在公開中の映画『モリのいる場所』で、『死に花』(2014)以来14年ぶりに主演を務めている山崎努。この作品は文学座での出会いから56年の時を経て、初めて夫婦役を務めた樹木希林との初共演も話題になっている。

「最近の山崎さんは、映画は年に2、3本のペースで出演されていますが、ドラマは年に1本出ればいいほうです。年末には82歳になりますから、確かに以前のような露出は難しいと思いますが、そんな中でも山崎さんが『君たちの作るドラマは必ず出る』と言っているチームがあるんです」(テレビ局関係者)

 それが、2006年に出演した『クロサギ』(TBS系)のスタッフたちだという。

「特に、プロデューサーの伊與田英徳さんには全幅の信頼を寄せていて、実際、『新参者』シリーズや『ルーズヴェルト・ゲーム』にも出演しています。さらに、単発ドラマの『LEADERS リーダーズ』や『RED CROSS -女たちの赤紙-』にも(すべてTBS系)。そのチームが、今年の10月クールに『下町ロケット』の続編を放送するんです。山崎さんは前作には出演していませんが、今作の目玉として、すでにオファーはしているようです。本も今、池井戸先生が執筆中のようですから、間違いなく今年1番の話題作になりますよ。10月クールは米倉涼子さん主演のドラマもあるので、TBSとしても、どうしても山崎さんを起用して注目を集めたいようです」(芸能事務所関係者)

 阿部寛と米倉涼子の視聴率対決の行方を左右するのは、脇の名優たちかもしれない。