毎年4月にカリフォルニア州インディオの広大な砂漠地帯で開催される世界最大級の野外音楽フェス「コーチェラ 2018」のフル・ラインナップが3日に発表されたが、そのチョイスが「クソすぎる」とネット上で不満が噴出している。ワン・ダイレクションのルイ・トムリンソンもFワードを使い「フェスなのにバンドが少なすぎてクソ」と批判した。
1993年に「L.A.はチケット販売会社の手数料が高すぎる」と反発したロックバンドのパール・ジャムが、ロサンゼルス郊外インディオのエンパイア・ポロ・クラブでコンサートを開催したところ、2万5,000人近くの観客が集まり大盛況となった。手配したプロモーターが「主要都市からはかなり離れているけど、だからこそ大規模フェスが開催できるし、ファンは絶対に来る」とフェスを考案。99年10月に、ベックやケミカル・ブラザーズらを招いて「コーチェラ・ヴァレー・ミュージック・アンド・アーツ・フェスティバル」、通称「コーチェラ・フェス」がスタートした。
第1回目が赤字となったため翌年は開催できなかったが、2001年に開催月を4月に移動し、ジェーンズ・アディクションをヘッドライナーに迎えたところ、大当たりとなった。02年からは開催期間を2日に増やし、オアシスとビークをヘッドライナーに招聘。さらにスージー・アンド・ザ・バンシーズ、フー・ファイターズ、プロディジーら、フェスを盛り上げること間違いなしのバンドやアーティストたちをラインナップした。03年のヘッドライナーはビースティ・ボーイズとレッド・ホット・チリ・ペッパーズで、イギー・ポップやアンダーワールドなどの豪華なメンツが世界中から注目を集めた。初めてチケットがソールドアウトした04年のヘッドライナーは、レディオヘッドとザ・キュアーだった。
成功を収めるようになったコーチェラは07年から開催期間を3日に増やし、約10万人の観客を動員する。プリンス、ロジャー・ウォーターズ、ジャック・ジョンソンをヘッドライナーに招いた08年のチケットは売れ残ってしまったが、ポール・マッカートニー、ザ・キラーズ、ザ・キュアーがヘッドライナーを務めた09年からソールドアウトに戻り、ジェイ・Z、ミューズ、ゴリラズがヘッドライナーだった10年は22万5,000人を動員。だが1日当たりのチケット販売数は6万枚だったため計算が合わず、11年からは警察の手を借りるなど警備を厳しくし、入場者を厳密にチェックするようになった。それほどまでに世界的な人気イベントに成り上がったのだ。今では大勢のセレブたちも見に来る、世界最大級の野外音楽フェスと認識されている。
しかし、ネット上では「コーチェラのラインナップがクソすぎ」だという声が年々高まっている。海外のバンドやアーティストを「無名で聞く価値なし」と認識する人や、「フェスといえばロックだろ!」「いやむしろ今どきのフェスはEMDがメインでしょ!」「フェスはバンドによる生演奏が魅力なんじゃないの?」などと文句たらたらな人が増えているのだ。
コーチェラは今や、チケットが発売開始直後に売り切れてしまい、入手するのが非常に困難なイベントになっている。チケット流通サイトやオークションサイトに流れるチケットは高値がついている上、偽物である可能性もある。運良く正規のチケットを入手できたとしても、それで安心してはいけない。会場は砂漠の中なので、そこまで行く交通手段を確保しなければならず、2日間見る場合は宿泊先も確保しなければならない。
宿泊施設の料金比較サイト「トリバゴ」によると、フェスの期間中、周辺ホテルの料金は通常より140%高く、インディオにあるホテルは中程度でも平均して1泊416ドル(約4万6,000円)と高額。しかし、これもすぐに埋まってしまう。フェス側も「入場券と駐車券をセットにしたチケット」「キャンピングできるチケット」「ホテル/空港と会場間のシャトルバス乗り放題チケット」を用意しているが、なるべく金を使わないように心がけても5万円、10万円は、あっという間に超えてしまう。
「1日にたくさんの豪華バンド&アーティストたちのパフォーマンスを見ることができるのなら、10万円払っても惜しくない」と多くの人が思い、「これほどまでに有名なコーチェラなら、金額に見合った満足感を提供してくれるはず」と期待を寄せる。しかし、ラインナップをじっくり見ると「果たして大枚はたいて見にいく価値があるのだろうか?」と不安になるというのである。
今年のコーチェラのラインナップは、4月13日と20日のヘッドライナーはザ・ウィークエンド。その下に太字で表示されているのは、R&BシンガーソングライターのSZA、トロピカルサウンドが十八番のノルウェーのDJで音楽プロデューサーのカイゴ、アシッドジャズ・グループのジャミロクワイ、インディー・ポップのシンガーソングライター、セイント・ヴィンセント、インディー・ロック・バンドであるザ・ウォー・オン・ドラッグス、ラッパーのビンス・ステープルズ。〈今年のラインナップはこちら〉
4月14日と21日のヘッドライナーは、昨年は双子ご懐妊でドクターストップがかかり、出演を取りやめたビヨンセ。その下に太字で表示されているのは、インディー女子ロックバンドのハイム、ラッパーのタイラー・ザ・クリエイター、イギリス人ロッカーでトーキング・ヘッズでの活動が有名なデヴィッド・バーン、イギリスのロックバンド、アルト・ジェイ、ラッパーのポスト・マローン、フォーク・ロックバンドのフリート・フォクシーズ。
韓国系エレクトロニック・ミュージシャンのヤージなど個性的なアーティストも多くラインナップされており、日本が誇るX JAPANも出演する予定となっている。
4月15日と22日のヘッドライナーは、エミネム。その下に太字で表示されているのは、トラックメイカー・デュオのオデッザ、オルタナティヴ・ロック・バンドのポルトガル・ザ・マン、ヒップホップ・トリオのミーゴズ、ロックバンドのア・パーフェクト・サークル、女性ラッパーのカーディ・B、R&Bシンガーのミゲル。
コーチェラの会場はとにかく広く、メインのコーチェラ・ステージのほかにも、名のあるバンドがパフォーマンスを行う「アウトドア・シアター」、ロック・テントの「モハーヴェ」、ヒップホップやワールドミュージシャン用テントの「ゴビ」、ダンスミュージックが楽しめる「サハラ」など、いくつかのステージがある。これらのステージで、世界中からよりすぐられたアーティストやバンドによる、バラエティー豊かなジャンルの音楽が楽しめるのが魅力となっている。
しかし、ワン・ダイレクションのルイ・トムリンソンは、発表された日に「コーチェラのラインナップ、今見たけど…… バンドがファックほどもいないじゃないか!? フェスなんだろ!?」とツイート。「確かにバンドは少ないかも」「なくはないけど、よく知られていないバンドばかり」「ボーイズ・バンドの1Dがパフォーマンスすれば?」など1万近いリプライが送られた。
米国版2ちゃんねる「Reddit」では、「ヒップホップは去年に引き続きクソ」「EDMのラインナップにもがっかり」「全体的にがっかり」という意見と、「行けば楽しめるのに」「昨年よりはマシ」という意見が交錯。コーチェラ専用のフォーラムでは、さっそく「イケてるチョイス」「アホなチョイス」「チョイスすべきだったバンド/アーティスト」を論じるスレッドが立ち、「アホなチョイス」にミーゴズ、フレンチ・モンタナ、ザ・ウィークエンドを挙げる書き込みが目立っている。
もちろん、今年のラインナップに大興奮している音楽ファンも多く、フェスに向けて気持ちを高めている者も少なくない。米音楽情報サイト「ステレオガム」は、ルイの文句ツイートに対して「最近はバンドを見たいと思ってフェスに行く人はいないんだよ」「若者たちはドレイクのパフォーマンスに熱狂するけど、レジェンドやロックスターでは盛り上がらない」と説明。「そういう意味では、今回のコーチェラのラインナップは、フェス好きな観客が求めているものをバッチリ反映していると思う」と称賛した。
今回、ヘッドライナーを務める3人は文句なしの大物であり、サブでラインナップされているバンド/アーティストたちもヒット曲を持つ人気者ばかり。アメリカでは無名だが本国では有名な実力派たちもラインナップされており、フェスを大いに盛り上げてくれることが期待できそうだ。
ちなみに毎年、コーチェラのパロディ・フライヤーがつくられ、ネット上でひと盛り上がりする。伝説的バンドや故人であるレジェンド、自分の好きなバンドやアーティストがヘッドライナーを務めたら……という願望を反映したものが多いのだが、「ヘッドライナーは“才能はないけどコネがあるファック”“コマーシャルで流れるあのバンド”“クールな黒人”」などと皮肉ったものも少なくない。昨年はフェスのオーナーであるフィリップ・アンシュッツがアンチ・ゲイだという告発があったため、ヘッドライナーに「行くな!」「チケットを買うな!」という言葉を入れ、ボイコットを呼びかけるパロディ・フライヤーもあった。
今年もまた文句たらたらのパロディ・フライヤーが出回りそうなコーチェラのチケットは、公式サイトで現地時間5日12時(PST)に発売される予定だ。日本から行く人は、ぜひ楽しんできていただきたい。