『M-1』グランプリの決勝が近づいている。今年は過去最多となる5,040組がエントリーし、夏から予選でしのぎを削ってきた。現在の『M-1』は予選出場者のネタ動画をGYAO!で配信しており、そこで要注目の新星を見つけるのも好事家たちの楽しみのひとつになっている。そして今年、「漫才うますぎる」「アマチュアってウソでしょ」と一躍話題をさらったのが「ラランド」だ。大学生と会社員、若き男女コンビは、いったい何者なのか?
***
――「『M-1』グランプリ」3回戦のネタ動画がGYAO!で公開されて、一躍話題になりましたね。お笑いファンがTwitterで反応しているのをたくさん見かけました(本インタビューは準決勝開催前の11月下旬に実施)。
さーや そうですね。お笑いのコアなファンの人たちが起点になってくれて、広がりました。私、毎分くらいの勢いでエゴサーチするんですけど、著名人の方もGYAO!の動画をリンク貼ってくれて「面白い」みたいにツイートしてくれてるんですよ。それがきっかけで、ライブを観に来てくれる人が増えてます。
――もともと上智大学のお笑いサークル出身の同級生なんですよね?
さーや そうです。SCS(Sophia Comedy Society)というお笑いサークルにいました。
ニシダ 同じ学部・学科の同級生です。
――ニシダさんはまだ大学生で、さーやさんが社会人2年目。
ニシダ 恥ずかしながら、僕は今も大学生ですね。ちょっと、退学したり復学したりとか、いろいろありまして……。
さーや 本来、社会人2年目くらいになってないといけないけど、足踏みしてるよね(笑)。
――さーやさんは広告系のお仕事をしながらお笑いをやっているとのことですが、これまで両立を続けてみてどうですか?
さーや 週5で働いて土日にライブ出るようなスケジュールでやってみて、意外といけるなって感じです。卒業のタイミングでいろんな事務所からオファーをいただいて、すごい迷ったし葛藤したんですけど、中学から大学まで私立に通わせてもらったとてつもない恩義が親にあるし、これは一回社会人にならないとなってことで就職したんです。でも、お笑いも諦めたくなかったので、両立してみよう、って。最近は平日もちょっとずつ依頼が増えてきてるんですけど、会社の制度を使いながらうまく空き時間を見つけてできているので、そんなに苦ではないですね。今日も午前休もらってて、このあと普通に出社します。
――おつかれさまです! ニシダさんは、相方が社会人になって自分だけ学生という状態に、不安はなかったですか?
ニシダ 最初は不安でしたけど、やってみたら学生の頃よりも活動できてるくらいなので、現状はそんなにないですね。ライブの数も、今のほうが増えてますし。
――ネタは2人で書いてるんですか?
さーや 2人で話し合いながら、私が大喜利部分を考えて、ニシダが笑ったところを使う感じです。
――さーやさんが社会人になって、ネタの中身が変わってきたところはありますか?
さーや どう……ですかねぇ。社会に出たらもうちょい鈍るのかなと思ってたんですけど、逆に人間観察がはかどった部分もあります。ネタの中でよくおばさん役を演じるんですけど、社会人になってからのほうがリアルさが増したんじゃないかなって思ってます。仕事の中でおじさん、おばさんと会って、リアルなところを見るので。
ニシダ 確かに、それはあるかもね。
――過去の『M-1』は2回戦進出が最高成績だったのが、今年は準決勝まで進めた理由は、どこにあると思いますか?
さーや 大学お笑いって、やっぱりお笑いマニアが集まってるから、どうしてもそこに向けたネタを作っちゃうんですよね。すごい伝わりづらいボケを楽しむみたいな文化があって、自分たちも、わりとそっち寄りになっちゃってたのかなと思います。それが社会人になって、「このボケはもうちょっと伝わりやすく変えよう」とか考えるようになりました。広告関係の仕事というのもあって、「伝える」「広める」ことに対してどんどん意識が変わってきたのを実感してます。多くの人に伝わって、それでいてちゃんとお笑いファンの人にも届くようなネタ作りになってきたというか。それは今年の結果に関係してると思います。もし大学を卒業したあとそのままお笑い一 本でやってたら、そういう発想になってなかったと思うので、そこはよかったかな。
ニシダ 場数も、学生の頃に比べると増えたよね。K-PROさんがよく呼んでくださって、いろんなプロの方たちと同じライブに出させていただいてます。それで新ネタもよく作るようになりました。今年は、月1~2本は作ってました。
さーや 大学お笑いのファンだけじゃない、普通のお笑いファンがいっぱいいるハコにたくさん出て、「どうやったらウケるのか」を考え直した感じはしますね。
――視界が広がった部分があるんですね。ただこの数年、大学お笑いに注目が集まる中で、「その代でいちばん面白いと言われる人ほど、芸人にならないで普通に就職する」と聞いたことがあります。
さーや それは本当にそうです。面白い人ほど就職しちゃう。しかもそういう人って、大企業にいくんですよ。大学お笑いで出した結果を武器に就活するので、いいところに入れる(笑)。それで揺らいじゃう部分があるみたいですね。最初から「お笑いをやるのはサークルの間だけ」と決めている人もいます。(小声で)信じらんない……。
――一緒にやっていた人からすると、「あんなに面白いのに続けないんだ……」って寂しくありませんか?
さーや でも逆に、プロになってスベってるところを観たくないとも思うんですよ。「あんなに輝いてた人が、(ヨシモト)∞ホール立つとこんなになっちゃうんだ!」って時がたまにあるので。
ニシダ あるある。
――さーやさんは、さっき小声で「信じらんない」って言ってましたが……?
さーや (笑)。私みたいに両方バリバリやるスタイルの人は今まであんまりいなかったので、後輩や先輩からも「頑張れ」「切り開け」って言ってもらえてます。今回の私たちを機に、同じような立場の人が「もっと活動しようって思っていいんだ」って思ってくれたらいいですよね。社会人をやりながらお笑いやるのってどうしても引け目を感じがちで、みんな「趣味です」って控えめな感じにしてるんですよ。私もちょっと前まではそうだったんですけど、そこに引け目を感じる必要はないのかなって最近は思い始めました。それでここ数カ月はオフィシャル感を出すというか、「趣味じゃないよ」って見せるやり方を結構考えてます。
ニシダ TwitterやSNSの発信の仕方を変えよう、って話は2人でしてるよね。
――それでいうと、今は事務所に所属しないフリーの芸人さんが増えてますよね。『M-1』はずっとアマチュアにも門戸を開いているけど、“フリーとアマチュアの違いってなんだろう?”と思うんです。「その仕事で食べている人」と定義すると、事務所に入っていてもお笑い一本で食べられてない若手の方はたくさんいるわけですし。
さーや そうなんですよね。『M-1』に出ているアマチュアの人を見てても、プロと差がないくらい面白い人はいっぱいいるので、「どう違うの?」って聞かれると……。
ニシダ 難しいとこだよね。何が違うんだろう。心意気?
さーや 「プロフェッショナルです」って言えるかどうか? でもそうなってくると、私たちも「プロ」って言いたいもんね。
ニシダ 頑張ってはいるからね。ただ、僕らは「アマチュア」で注目されてる部分も絶対あるから、難しいですね。「フリーです」って名乗ってたら、こんなに上がれてないのかもなと思う。
さーや そうだね。その恩恵はありがたく受けつつ、「アマチュアだからこれくらいでいいでしょ」っていうことではないものを見せたいなという思いはあります。
――しかしニシダさんはいま学生なので、今後は就活するかどうかというのもありますよね。
さーや それ、私も聞きたい。
ニシダ どうしようね?
さーや 知らん。ニシダは全然せかせかしないんですよ。
ニシダ 先のこと、あんまり考えないからね。俺の長所、1個だけしかなくて。「未来に不安を抱かない」なんですよ。
――かっこいいですね!
さーや いや、すっごいよく言ってますけど、なんもしてないだけですから。明日テストでヤバいときでも、普通にタバコ吸ってぼーっとしてるし。うらやましいくらい焦りがない。それを長所って言われたらもう「そうですか」としか言えないよ。
ニシダ でも、もし今年の『M-1』きっかけで事務所から声かかって、それなのに就職活動したらヤバくない?
さーや 意外と大丈夫じゃない? 私もそうだけど、副業OKの会社も今は多いし。メディアの人から見て「会社員でもある」というのが面白みになれば仕事につながるし、芸人一本でやってる人より見せられるところが増えるんじゃないかと思ってます。
――一方で、やっぱりいずれはお笑い一本でやっていけるようになりたい考えもあるんでしょうか?
さーや そうですね……お笑いだけでやっていけるくらいになったら、会社の仕事にも支障を来しちゃうと思うので、そうするかもしれません。でも今の仕事もすごい楽しいし、相乗効果みたいになってるので、あんまり簡単には手放せないかな。上司もすごい応援体制で、『M-1』予選の前日には「練習あるだろうから休みなよ」って言ってくれるんですよ。お笑い大好きな上司で、すごく恵まれてます。ニシダは……?
ニシダ 両親には、お笑いやってるって言ってないんですよ。
さーや 今回の『M-1』を機に、バレる可能性あるよね。敗者復活でテレビ出るし。
ニシダ ちょっと嫌ですね。
――Twitterに「家族仲が悪い」って書いてましたね。
親と壊滅的に仲が悪いので、家で優しくしてくれるのは犬だけです。
最近飼いはじめたんです。かわいいです。
でも、いつかこいつも死ぬのかなって考えると悲しいです。
僕がオナニーをしたあとは、きまって僕の股間周りを注意深く嗅いでから吠えるので将来は警察犬になれるでしょうね。— ニシダ (ラランド) (@DaalsKe) August 5, 2017
ニシダ そうなんですよ、めちゃくちゃ仲悪いです。家庭内の序列は犬より下です。
さーや 犬のほうが高いヨーグルト食べてたんでしょ?
ニシダ そう、俺よりいいヨーグルト食べて、もりもりウンコしてる。
――バレて好転するといいですね……。話は変わりますが、さーやさんはTwitterのプロフィールに「ニートtokyoに出るのが夢」って書いてますよね。ヒップホップ好きなんですか?
さーや すごい好きです。
ニシダ 2人とも好きなんですよ。
――いま一番よく聴いてるのは誰ですか?
さーや dodo君が好きです。同い年だし、彼も仕事しながらラップやってるので、自分と通ずる部分があると思って。社会人になってから、ずっと聴いて励まされてます。いつかどこかで仕事で出会いたいです。
ニシダ 僕は最近だとwebnokusoyaroですね。
さーや 服装も、表舞台に立たないときはストリートっぽいのが多くて、そういうカルチャーも含めて好きですね。
――プロじゃなくても自分たちでやっていく、道は自分たちでつくっていくというラランドさんのスタイルは、ヒップホップと通じる部分があるのかもしれません。
さーや そういう歌詞も多いじゃないですか。般若の曲でも「メジャーもインディーも違いはねぇ」「ウソつけ(ライブの客)8割身内だろ」とかあって(「はいしんだ feat. SAMI-T from Mighty Crown」)、すごい通じる部分があるなって(笑)。
ニシダ そういう人、いるもんね。俺らもストリートっていうか野良みたいなもんだからね。野良芸人。
さーや 犬より高価なもん食べれてない、マジの野良ね(笑)。
●ラランド
さーや(1995年12月13日、東京都出身 )とニシダ(1994年07月24日、山口県出身)のコンビ。2014年結成。12月22日放送の「『M-1』グランプリ2019」敗者復活戦に出場予定。
Twitter@RRND01