空前絶後の盛り上がりを見せているラグビーW杯。いまや報道番組だけでなく、情報系番組でもラグビーネタがズラリ。このまま決勝トーナメントに進もうものなら、一体どこまで盛り上がるのか?
といっても、その多くは「選手を支える妻たち」「恩師との約束」といったサイドストーリーばかり。もっとラグビーの本質的なこと、さらにいえば対戦国についても学びたい。
そこで少々勇み足かもしれないが、日本が決勝トーナメントに進出した場合、初戦で対戦する可能性のある南アフリカとニュージーランドについて、そしてラグビーの魅力そのものも味わえるオススメ作品を、比較的手軽に視聴できる映像系コンテンツの中からいくつか紹介したい。
対「南アフリカ」戦に向けて
南アフリカにとってのラグビーの立ち位置、代表チームの存在意義を知る上では、ラグビー映画の定番『インビクタス/負けざる者たち』は外せない。
1994年に南アフリカ共和国初の黒人大統領となったネルソン・マンデラ。彼は、国から差別を排して一致団結するには、95年に自国開催するラグビーW杯での優勝が必要と感じ、白人の代表キャプテンと接触。彼らの志と不屈の闘志が国を変え、W杯で奇跡を生む……という実話を元にしたストーリーだ。
監督はクリント・イーストウッド。モーガン・フリーマンとマット・デイモンのW主演という豪華メンバーだけでも十分楽しめるはず。実はW杯開幕日の9月20日にも日本テレビが『金曜ロードSHOW!』で放送していたのだが、このときは視聴率4.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)……。タイミングが早すぎたと言わざるを得ない。今なら2桁は堅いのではないか。
そして、南アとの再戦となれば、やはり「史上最大の番狂わせ」と称された前回大会の因縁を振り返るのは必至。各番組でも最後のトライシーンとともに振り返り企画が展開されるはずだ。ただ、あの試合に至るまでの日本の“弱小国”ぶりや指揮官との軋轢、選手たちの悲壮な決意なども知っておかなければ、その快挙の真の意味は理解できない。
そこでオススメしたいのが映画『ブライトン ミラクル』。今ならAmazonプライム、もしくはDAZNで視聴可能だ。試合シーンには実際のW杯映像がふんだんに使われている(どうやって権利をクリアしたのか?)ので見応え十分なのはもちろん、それ以上に見どころも名言も満載なのがドラマパートだ。
前回大会のキーマンである主将のリーチ・マイケル、前主将にして『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)以降すっかり人気者になった廣瀬俊朗、エースの五郎丸歩、そして脳梗塞を患いながらもチームを率いた名将エディ・ジョーンズなど、本人たちの証言を挟みつつ、再現ドラマでその内幕を詳細に描いていく。
このドキュメンタリー映画でキーワードとなるのが「決断」だ。エディとリーチ主将との会話、エディの会見シーンで、何度も何度も「決断する(できる)ことの重要性」が説かれていく。
南ア戦での奇跡の逆転トライは、エディの指示を無視し、リーチ主将がスクラムからのトライを目指そうと決断したことで生まれたプレーだった、というのは有名な逸話。その決断に至るまでのエディと日本代表との1300日戦争は、ラグビーの奥深さ、ハードさも教えてくれる。
どうせなら世界最強オールブラックスと戦ってほしい、という声も意外なほど多い。ここまでW杯2連覇中。今大会で前人未到の3連覇を目指す、王者オールブラックスの強さの秘密とは?
それを知るための格好の教材が、Amazonプライム『オール・オア・ナッシング~ニュージーランド オールブラックスの変革~』だ。
『オール・オア・ナッシング』といえば、Amazonプライムが誇るチーム密着型スポーツドキュメンタリー。これまで、NFL名門チームや、プレミアリーグのマンチェスター・シティに密着して好評を博してきた人気シリーズが、満を持してオールブラックスを特集。2017年の戦いを追った45分のドキュメンタリーが6本展開されている。
オールブラックスの、数々のスーパープレーだけでも眼福。今大会でも注目のスター選手、ボーデン・バレットですら苦悩する超一流選手同士の激しいレギュラー争い、世間からの強烈なプレッシャーなど、異世界の住人たちの奮闘劇が随所に描かれている。
映像作品45分×6本も見る時間がないという人、もっとお手軽にオールブラックスを味わいたい、という人には、オールブラックス公式パートナーであるAIG生命のCMなんてどうだろう?
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CMといっても、もはや立派なショートフィルム。オールブラックスが東京の街を練り歩きながら未然に事故を防ぐという3分間のCM「Tackle The Risk」では、彼らの超人ぶりがコミカルに描かれていて実に楽しい。一方、2分CM「Diversity is Strength」では、差別と戦う意義を訴えている。
オールブラックスの魅力として「多様性」が紹介されることは多い。先住民のマオリ族、ヨーロッパ系移民、フィジーやトンガなど近隣の島国からやってきた人……ひとつのチームにさまざまな選手たちが集い、それぞれの個性を認め合いながらチーム力につなげていく。その多様な色は交じり合うと黒になる、というメッセージもまた秀逸だ。
今回は南アフリカ、ニュージーランドの魅力が味わえるコンテンツばかりを紹介したが、決勝トーナメントに勝ち上がってくる超人たち、魅力的なチームはほかにも多士済々。ラグビーってこんなにも面白かったんだ!と、改めてその魅力にはまった人は多いはず。
そんな方には、NHKスペシャル『ラグビーワールドカップ2019シリーズ』も、ぜひオススメしたい。これまでに「第1回:“世界最強” 神 真髄に迫る」「第2回:日本代表 “奇跡”の先へ」をすでに放送済みだが、今後再放送もあるだろう。
特に第1回の「“世界最強” 神髄に迫る」では、100台の高精細カメラを使った自由視点映像をもとにオールブラックスの戦術面を深掘りするほか、タックルで勝負をかけるオーストラリア、スクラムに磨きをかけるヨーロッパ勢、といった具合に各国の特徴や強化ポイントをわかりやすく、そして科学的な裏付けとともに提示してくれている。
そんなNHKスペシャルで五郎丸歩が語っていたラグビーの魅力が、含蓄あるものだった。
「ラグビーが大事にしているのは、相手に対してのリスペクト。南アフリカ戦後、彼らは負けたにもかかわらず、日本の陣地にまで来てたたえてくれた。ただはしゃいでいただけの自分たちが、少し恥ずかしくなった。勝った負けた、だけの世界ではなく、彼らが何をしようとしているのか、何を成し遂げようとしているのか、みんなが追い求めてほしい」
日本のラグビー、そして世界のラグビーがこれから何を成し遂げてくれるのか? その素晴らしいドラマを最後まで追いかけていきたい。
(文=オグマナオト)