オタクはなぜ上ずった早口で喋る? ボイストレーナーに聴いた結果、その秘密は「体内」にあった!

 オタクの喋り方は、なぜか「似ている」と同人誌即売会に行くと感じる。中川翔子(しょこたん)の喋り方は典型だ。「しょこたんの場合、ネットスラングなどのオタク用語を駆使するからオタクっぽいのでは?」という声もあるだろうが、特殊用語を抜いても、「上ずった超早口」が残り、これは多くのオタクに共通する。「マンガやゲームが好きなだけでオタクではない人」と「オタク」を分けるのは口調と言ってもいいのではないだろうか。

 今回も、ボイストレーニングスクール『アマートムジカ』を運営する堀澤麻衣子氏、司拓也氏に、オタク話法の謎について聞いた。

 

◆過去のインタビューはこちらから◆
[1]居酒屋で声を張り上げているのに店員が振り向かない人は何がいけない? ボイストレーナーに聞く!
[2]声がでかい人必見! もう傷つかずに済む声の調整法をボイストレーナーに聞いてみた
[3]ボイストレーナーが考える「イケボ俳優」とは? 今から間に合う“モテ声”入門

 

■オタクは「伝わりやすい喋り方」から真逆のことをしている

 

――オタクの喋り方も様々な流派がありますが、中川翔子さんのような上ずった早口で話す人はよく見かけます。私自身もその傾向はあるのですが、なぜ、そうなってしまうのでしょうか?

司拓也氏(以下、司) 中川さんなのですが、状況、場によって「声の使い分け」ができる、とても知性のある方だと感じています。東京五輪関連のお仕事をされている際のインタビューでは、落ち着いた低めの声でゆっくり話されていました。

 一方、話題がオタク的な内容になった際の中川さんのお話している映像を見て感じたのは、

・上ずった高い声
・早口に加えて「一文が長い」(「。」をつけずに話し続けていますね。)
・間がない
・息継ぎが少ない
・相手の反応を考慮しないで、頭の中の映像を描写したまま口にする

 などが特徴ですね。

――挙げていただいた点、心当たりがありすぎるオタクは多いと思います。

 「高い声」ではないですが、宅八郎さんもこんな感じでしたね。

――宅八郎から中川翔子へと、オタクの喋り方には伝統の「型」を感じさせますね。

 一般的なビジネスパーソンへの話し方のレッスンでは、これらとは真逆のことを教えています。まず「速度」ですが、本来理想とされるスピードは一分間に300文字です。

――原稿用紙なら3/4、Twitterならフルで書いて大体二つ分のツイートが300字です。

 また、一つの文は句読点を除き50~60文字以内にとどめ、強調したい語句の前には「間」をあけるよう指導しています。

――今の司さんの「また、一つの~始動しています」までが句読点を抜いて49文字です。なお、中川さんの話し方を見ると「。(読点)」で終わらせず「●●で、●●で、●●で………」と、「、(句点)」でひたすらつないでいくので、どうしても一文が長くなってしまいますね。

■オタクの声が上ずるのは、オタトークができる喜びからだった

 

――速度や文の長さについて伺ってきましたが、声が上ずってしまうのはなぜなのでしょうか?

堀澤麻衣子氏(以下、堀澤) 気持ちの問題ですね。感情が普段の平常心の状態から上がる、例えば「調子に乗っているとき」や「緊張しているとき」などもそうですが、体の中心である「丹田」の位置が上がってしまうんです。

 人が緊張したときに、よく、「あがった」といいますが、あれは「丹田」が上がるということなんです。丹田が上がると、肺が圧迫されて息が吸いづらくなります。なおかつ、心も落ち着かないから、どうしても声はふわふわと、上ずった感じになってしまうんです。

――オタクの声が上ずりがちなのは「オタトークができて超うれしい」という感情が根底にあるのですね。

堀澤 はい。ですので、「嬉しさのあまり思わず声が上ずってしまうような状況でも、落ち着いて話したいかどうか」というご本人の気持ちもまずありますよね。嬉しい感情を無理して止める必要はないと思います。

 なお、嬉しさや緊張で丹田が上がると喉が締まります。そうなると、空気がうまく吸えず酸欠状態になります。自分の首を絞めたまましゃべるようなものです。少ない空気でなんとか情報量を伝えようとすると、早口になってしまうんですね。

――嬉しい→丹田上がる→上ずる&早口と、オタクの喋り方が似るのは、体中に理由があったんですね。

堀澤 繰り返しになりますが、嬉しい感情を無理に止める必要はないと思います。ですが、自分がいくら好きな話題でも、相手の興味度数はどれくらいなのか、は意識してみるといいかもしれません。相手の興味度数は「3」くらいしかないのに、本人がひたすら「10」でしゃべっていて、相手がつまらなそうにしているのも感じない、となるとコミュニケーションは一方通行になりがちなので、それはお互いにとってよくないですよね。

 興味度数がずれているなと気づき、一旦冷静に自分を感じることは大切です。そうすれば適量な長さや声でしゃべれるようになります。

* * *

 ひたすらに推しへの想いや、地雷に対する悪口などを黒部ダムの放水のように語るときの得難い気持ちよさというのは、オタクとしてよくわかる。オタクのトークは激しいギターソロ(最後にギターを燃やしたり壊したりするタイプ)なのだ。

 しかし、これに「分かって欲しい」「これをきっかけに聞いている人ともっと親睦を深めたい」などの野望が加わった場合は、このギターソロを「弾き語り」くらいにする工夫があるといいのだろう。それにおいて、声や喋り方の工夫は、大きな助けになるはずだ。

(文/石徹白未亜[http://itoshiromia.com/])

 

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ボイストレーナーが考える「イケボ俳優」とは? 今から間に合う“モテ声”入門

「声が好き」は時として超強力な「顔が好き」をも凌ぐ吸引力を発揮する。いわゆるイケボ(イケてるボイス)とは何なのか? そして、自らをイケボにするには何が必要なのか?

 東京品川にあるボイス&メンタルトレーニングスクール『アマートムジカ』を運営する堀澤麻衣子氏、司拓也氏に、イケボで歌うコツ、イケボで話すコツについて聞いた。

◆過去のインタビューはこちらから◆
[1]居酒屋で声を張り上げているのに店員が振り向かない人は何がいけない? ボイストレーナーに聞く!
[2]声がでかい人必見! もう傷つかずに済む声の調整法をボイストレーナーに聞いてみた

 

■テクニシャンは「地声」と「エアー」を使い分ける

 

――今の流行りの歌を聞いても「声を張って歌う」というよりも、「空気に音を乗せる」ようなものが目立ちます。昨年公開されたアニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』の主題歌であり、YouTube再生回数が1億回を超えた『打上花火』はDAOKO さん、米津玄師さんの男女のデュエット曲ですが、どちらも空気に声を乗せるような、張らない、叫ばない、「エアー」な歌い方ですよね。

司拓也氏(以下、司) 最近はエアー系が確かに多いですね。ただ、すべてがエアーばかりでなく、地声も載せてバランスを取りつつ歌っている人が多いと思います。

 地声ばかりだと聴き手は疲れてしまって、エアーばかりだと迫力がなくなってしまうんです。

堀澤麻衣子氏(以下、堀澤) 玉置浩二さんは、エアーなところはエアーですが、張るところは張っている。そのグラデーションを使って歌える人は歌が格段にうまいと思われますし、聞いている人が飽きないんですよね。

 例えば、DREAMS COME TRUEの吉田美和さんは声が出ているし、すごく歌が上手いのですが、基本的にはとても喉が強くてずっと張っていますよね。

――バラードや静かな曲でもクリアな歌声で、エアー感が確かにないですね。

堀澤 ただ、地声だけが続くと、一曲ならいいのですが、アルバム一枚聞くとちょっとおなか一杯になってしまうんですね。これはエアー系でも同じで、ずっとエアー系だと、ちょっとぼんやりしてしまう。どちらかだけだと飽きてきてしまいがちです。

 地声とエアーのグラデーションが上手いのはMisiaさんですね。

 なお、歌声のボイストレーニングは、まず「エアー」な声を出す指導をします。そうすると喉が開くので、そこから「芯を作る」練習をして地声も鍛えます。

 芯を細くすればするほど、地声になります。芯は麺の太さによく例えますね。エアー系はきしめん、地声は素麺というような。芯がくっきり細くない状態であればあるほど、空気交じりの、エアーな声になります。

 ちなみにエアーの強い声はジャズ、シャンソン、フレンチポップスに向いています。

――吐息を感じさせるから、大人っぽさや色気が必要な曲に合うのでしょうね。

堀澤 はい。もっとこれに芯を作ると、ポップスにも合うクリアな声になります。ポップスにエアーすぎる声だと「聞こえない、聞き取りにくい」となるので、声に芯があることが大切なんです。

■ボイストレーナーの考えるイケボ俳優、イケボ女優

――歌声について聞いてきましたが、話し声や演技での声が上手い俳優ですと、どなたになるでしょうか。

 堺雅人さんですね。先ほどの玉置さんなどのケースと同じで、エアーと地声の使い分けがうまいです。

堀澤 役所浩司さんも使い分けがうまいですよね。優しさを出したいときはエアー系でしゃべりますし、強さを出したいときは地声と、一辺倒じゃないです。

 あと、玉木宏さんは本当にいい声ですね。

――1回目の原稿で「声が大きすぎると、場合によっては嫌悪感を持たれますが、声が通るということで嫌悪感を抱かれることはまずありません」と伺いましたが、しっかりとクリアに通る玉木さんの声はまさにそうですね。「声が通る」の見本のような声ですね。

堀澤 以前、カフェで偶然隣の席に玉木さんが座られていたことがあったんです。顔は帽子をかぶっていたのでわからなかったのですが、声ですぐわかりました。玉木さんは完全に喉が開いている声です。骨伝導の、聞いていて気持ちのいい声ですね。

――女性だとどなたでしょうか?

堀澤 「エアー」な声が本人のキャラクターと一致しているという点で、鈴木京香さんもとてもいいですね。雰囲気と声が連動しているので、差異を感じさせません。

 中谷美紀さんも、芯のある声と、息の声を役によって上手に使い分けられています。内面の心の強さとしなやかさを感じます。

 最近では日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞された広瀬すずさん。芯のある声、間の作り方が天才的ですね。

* * *

 こうしてみると、「イケボ」の作り方にもいくつかの流派があることが分かる。

①エアと地声を状況に応じ効果的に使い分ける(玉置、役所型)
②通る声(聞いていて超気持ちのいい声)を極める(玉木型)
③キャラクターと声を一致させる(鈴木型)

 ファッションや体型維持、髪型など見た目に関する努力の一部を声に振り分けてみると、やっている人が少ないだけに差を出せるかもしれない。

 次回は最終回、オタクの喋り方はなぜ似るのか、について堀澤氏、司氏について伺う。

(文/石徹白未亜[http://itoshiromia.com/])

 

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せっかちな人ほど声がでかい!? もう傷つかずに済む、声の調整法をボイストレーナーに聞いてみた

 声の悩みというと「声が小さい」がクローズアップされがちだが、「声がでかい」だって深刻な悩みだ。著者である私も幼少期から、普通に話していても声が人一倍大きく、飲食店で隣の客がムカついたのか「もう少し声を落としていただけないでしょうか……?」と店員から申し訳なさそうに言われたこともある。これはやられた人にしかわからないだろうが、死にたくなるくらい堪える。前回(参照記事)に引き続き、東京品川にあるボイス&メンタルトレーニングスクール『アマートムジカ』を運営する堀澤麻衣子氏、司拓也氏に、声デカの処方箋について聞いた。

 

■声がでかい人が「声を小さくする努力」をするのはつらい!

 

――「声を小さくするには」でグーグル検索するくらい、声が大きいのが悩みです。

堀澤麻衣子氏(以下、堀澤) 声は、口だけでなく、自分の顔や頭の骨を振動させて、相手に届きます。声が大きい人は、頭蓋骨が球体で、響きやすい造りになっていることが多いんです。

 響きやすい頭蓋骨を持った人が、自然に逆らう「声を小さくする努力」は難しいですし、つらいと思います。そうではなく「声に芯をつける」ことをお勧めしています。そうすれば、うるさいと思われず、「聞かされる声」ではなく、「聞いていたい声」と思われる、好かれる声になれます。

※注:このインタビューの著者であるライター石徹白の頭蓋骨も、堀澤氏に見てもらったところ、「ばっちり響く頭蓋骨(素で大きな声が出やすい)」とのこと。

――「芯」は、どのようにつければいいのでしょうか。

堀澤 前回の「居酒屋で声が通らない人」と解決法が同じで、声の出発点と到達点を決めることですね。大きい声を「小さい声」にするのではなく、「通る声」にすることです。まず出発点は、前歯に穴が開いていて、そこから声を出すイメージです。そして、声の到達点についても意識します。

 なお、私も大きなコンサートホールで歌うときは、観客の一番後ろの人の頭上1メートルくらい上を目標に声を出しています。ホールだと、ちょうど緑色の「非常口」のマークがあるあたりですね。そうすると、聞いている観客の方全員に、声がシャワーのように上から降り注いで届くんです。

――カラオケで歌うときも応用できそうですね。

堀澤 そうですね。ただ、カラオケの場合、画面を見て歌うことが多いですよね。本来は聞いている人の頭の上に向かって歌った方がいいですよ。ステージがあるカラオケ店も増えたので、そういったところではぜひ試してみてください。

 なお、これは対面で人としゃべるときも原則は一緒です。相手の頭の上を超えるように声を出すと、芯のある、通る声になります。

――「相手の耳や顔に向かって」ではなく、「相手の頭上を越えるように」、なんですね。

■せっかちな人ほど、声は大きくなる~相手を色で包むイメージ~

司拓也氏(以下、司) また、声が大きい人が意識したほうがいいのは「喋っているときの空気の流れ」ですね。例えば、大阪のおばちゃんが「あんた何してんのっ!!!」と怒鳴っている姿を想像してみてください。これは、「ひたすら吐くだけ」の声で、うるさく感じます。大きくても聞き心地のいい声は、しゃべっている間も喉が開いていて、空気の流れがあります。

――しゃべっている間は「吐いてばかり」ではないんですね。

 そうなんです。ほか、声の大きい人への対策として、声量を数値化するという手もあります。声量を10段階で数量化してもらって、「10」なら「5」の声量を出してもらい、実際それを録音して聞いてもらいます。5で通じますね、というように、客観的に自分の声を聞くことで、声量が調整できるようになります。

 あと、会話において「ワンクッション」がない人も声が大きくなりがちです。

――私がまさにそうです。すぐ答えたいんですよね。

 反射的な反応は、感情が乗るので声は大きくなってしまいがちですね。

――どうしたらいいのでしょうか。

堀澤 声を「伝言するための手段」ではなく、「相手へのプレゼント」だと思うといいですね。相手に「どんな感情で受け取ってほしいのか」を色に例えてみるといいですよ。情熱なら赤、優しさならピンク、感謝なら金色とか。その色で相手を包むイメージで話してみる。

 相手にどんな感情を伝えたくて、相手を何色に包みたくてこの言葉を発するのか、というのをしゃべる前に一度考える。そうすると、一息つけますし、何より、相手に話が伝わりやすくなります。

――色でイメージすると、確かに「大きそうな声の色」もあれば「小さそうな声の色」もありますね。

堀澤 ただ、「声が大きい」と店員さんに指摘されたのは、笑い声ではなかったでしょうか。

――確かに、笑っていたと思います。

堀澤 笑い声は、聞く側の受け取り方もあります。イライラしているときに赤の他人の笑い声は許容しにくいものです。でも、楽しいのに笑うな、というのも無理な話ですよね。相手がいることなので、常に完璧を目指すのは難しい話ですが、考えすぎないのも大切ですよ。それでも、どうしてもテクニックとして試してみたいという方は、口を大きく開けて笑うのではなく、笑ってもいいのですが、口をなるべくあけないで笑うことで、音量を下げることは可能です。

――今回教えていただいたテクを駆使し、かつ声が普段以上に大きくなる飲酒時は個室を予約するなど配慮しつつ、自分を責めすぎないよう励みます。

* * *

 声が大きいことを気にするあまり、なるべく小さな声で話そう、と今思えば間違った心がけを長く続けてきた。しかし、地声の大きい人間が頑張って小さい声で話そうとすると、気分がどんどん沈んでいくのだ。「声を小さくするのではなく声を通す」。また、「一拍置く」こと。全国の声デカさんとともに頑張っていきたい。

 次回は引き続き堀澤氏、司氏に、「イケボ」とは何なのかについて伺う。

(文/石徹白未亜[http://itoshiromia.com/])

 

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居酒屋で声を張り上げているのに店員が振り向かない人は何がいけない? ボイストレーナーに聞く!

「自分の声が好き」という人は多くないはずだ。声が小さい/大きい/こもる/聞き返される/居酒屋で店員を呼んでも振り向いてもらえないなど、声に関する悩みを抱えている人は少なくない。一方で、身なりは多くの人が気を使うわりに、声をなんとかしようと気を使う人は少ない。だからこそ、声を効果的に使うことができれば、日常生活にとって大きな武器になるはずだ。

 様々な人が抱える声の問題とその解決法を、東京品川にあるボイス&メンタルトレーニングスクール『アマートムジカ』を運営する堀澤麻衣子氏、司拓也氏に話を聞いた。

 

■宇多田ヒカルは、しゃべるときになぜ声が「こもる」?

 

――ボイススクールに通う人は、どういった方が多いのでしょうか。

司拓也氏(以下、司) 男女比は半々で、年代は10~80代までと様々です。職業は会社員の方が一番多いですね。アナウンサー、役者さん、声優さんや、その志願者といった「プロおよびプロ志願者」の方は全体の5%ほどで、ほとんどが一般の方です。

堀澤麻衣子氏(以下、堀澤) 以前は30~40代の方が多かったのですが、最近は20代の方が増えましたね。就活の前に受けられる方も増えました。

――スクールに通う一般の方は、どういった声の悩みを抱えているのでしょうか。

 声が小さい、喉が痛くなる、声がこもる、聞き返される、滑舌が悪い、声の音量のコントロールができない、早口になる、吃音などですね。声が「こもる」ことで悩まれている方は多いです。

――「声がこもる」とはどういう状態なのでしょうか。

 「声が大きい」の反対は「声が小さい」という音量の問題です。一方、「声が通る」の反対は「声がこもる」という質的な問題になります。声が大きすぎると、場合によっては嫌悪感を持たれますが、声が通り過ぎることで嫌悪感を抱かれることはまずありません。

――こもっている声でイメージしやすい著名人の方はいますか?

 モデルの栗原類さんはこもっていますね。表情を変えずにボソボソと喋りますよね。

堀澤 キャラクターですけれど、『クレヨンしんちゃん』のしんちゃんもこもっています。

――不思議なのが、歌手の宇多田ヒカルさんです。歌っているときは感じさせないのに、歌番組などでのトークを聞くと、しゃべり声がこもっている印象を受けます。

堀澤 たしかに以前の宇多田さんの声もこもっている印象を与える話し方をされてますね。宇多田さんは頬から上の表情があまり動かないんです。しゃべるときに使っているのが、頬から下の口の周りだけなんですよね。

――明らかに無表情の栗原さんと違い、宇多田さんは笑顔でしゃべっていた印象を受けますが……?

堀澤 宇多田さんの場合、目は笑っているけれど、もしかすると心から笑っていなかったのかもしれませんね。本当に笑っているときは目だけでなく、頬の上、顔全体の筋肉が動きますから。

 「緊張」していたり、「相手に気持ちを悟られたくない」という気持ちが強い場合、頬から上の筋肉が動かなくなります。宇多田さんは歌では表情豊かであるのに、ある一時期、感情を出されるのが苦手だったのかもしれません。休養され、結婚、出産されてからはずいぶん暖かく優しい印象の話し方に変わりました。

 宇多田さんに限らず、「目は笑っていても頬の上は動いていない」という人は、若い女性でもよく見かけます。

――そうした方が可愛く見えるから(本気で笑うと可愛くなくなるから)という理由からなのでしょうね。

堀澤 ただ、頬より上の顔を使わず、表情が乏しいまま口だけで話そうとすると、ボソボソと、こもりがちなしゃべり方になったり、喉を閉めて高音でしゃべろうとするので逆に耳についたり、不自然な声になったりしてしまうんです。

――口先ではなく、顔全体を使って話すことが大切なんですね。

堀澤 「顔全体」を超え、頭蓋骨の中で声を響かせるというイメージでいるとさらにいい声が出ますよ。そうするには、息の吸い方、吐き方だけを変えるだけ。それだけで、本当の自分自身の魅力的な声にあっという間に変わります。

 今はメールやSNSでのコミュニケーションが増え、しゃべることの絶対量が昔よりは減っていますよね。その結果表情が乏しく、口だけしか使えずに話す人が増えています。口をあけずにしゃべる親御さんに育てられたお子さんは、親を見て、真似をして話しますから、声に関しては以前よりどんどん退化していると感じます。

■歌うときと話すときのボイストレーニングで鍛えるポイントは異なる

――しゃべるときはこもっていても、宇多田さんは歌うときはまったくそう感じさせませんよね。

堀澤 はい。歌のときは思い切り息を吸わないといけないのと、音程をとるために、自然と頬骨が上がり顔全体が動くんです。

――歌のボイストレーニングと、話すためのボイストレーニングは必ずしも一致していないんですね。

堀澤 はい。スクールでも歌のコースと話し声のコースは分けています。ただ一部は共通しており、正しい発声の基本は、息を吸って吐くことです。歌のトレーニングでは、喉をあけてたくさん息を吸って吐けるようにトレーニングをします。そうすることにより声が小さくて悩んでいた人が、歌のトレーニングで呼吸が上手になり、気がついたら、しゃべり声も改善されていたということはよくあります。

 ただ、話す声をよくするには「メンタル的な要素」が大きいんです。「自分に自信がない」という気持ちが強い人にそのままの素の声を出してもらう際には、ボイストレーニングにプラスして「メンタルアドバイス」という別のアプローチをすることで声が良くなっていきます。

■居酒屋で店員を呼んでいるのにさっぱり振り向いてもらえない問題

――賑やかな居酒屋で、店員さんに「すみませーん!」と本人にしてみれば大きな声で叫んでいるのに店員さんがさっぱり気づかない人っていますよね。

 はい。それが「大きいのに通らない声」です。一方で、声量は大したことがないのに、店員さんがすぐ気づく声もあります。これが通る声と通らない声の違いです。

――声をどうしたら通せるのでしょうか?

 通らない声の人は空間に声が拡散しているんです。一方、通る声の人は一点から声が出ている。スクールでは、口全体で声を出すのでなく、上の歯の前歯と歯茎の間に1ミリ以下の小さな穴があいていて、その一点から声を高速で出すように、と指導しています。

堀澤 さらに、声の目的地ですね。後ろを向いている店員さんを呼びたいなら、「店員さんの後頭部の下の首の骨が出っ張っているあたり」を的にして、発声しましょう。

――目標は頭じゃなく、首なんですね。

堀澤 はい。正しい発声法を用いて、声の目的地を首にしてみてください。

――声を散漫に空間に広げようとせず、始点と目的地の、声の道を作ることが大切なんですね。

* * *

 次回は引き続き堀澤氏、司氏に、「声がこもる」「声が小さい」に並ぶ声の悩み、「声がデカい」の解消法について聞いていく。
(文/石徹白未亜[http://itoshiromia.com/])

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