『E.T.』『スタンド・バイ・ミー』好きにはたまらない! Netflix無料お試し期間中に見るべき3作

 次から次へと新作が上陸してくる海外ドラマ。前回は、数あるドラマの中から何を見るか、迷った時のとっかかりとして最新ドラマを紹介したが、現在の海外ドラマ市場において外せないのが、配信サービスのドラマ群だ。日本にも複数のサービスが登場しているが、海外ドラマファン的にまずチェックしておきたいのは、Netflix、Amazon、Huluの3大配信サービス。どれか1つでも押さえておけば、海外ドラマライフはかなり充実するはずだ。  配信サービスのうれしいポイントは、どのサービスも、無料のお試し期間があること。そこで、無料お試し期間中にトライできるオススメのドラマを、サービス別にご紹介! 第1弾は、急速に配信市場を活気づけたNetflix編だ。  Netflixの海外ドラマ的ポイントは、とにかくオリジナルコンテンツが群を抜いて多いこと。以前紹介した『ハウス・オブ・カード』(参照記事1)や『ザ・クラウン』(参照記事2)といった賞レースに絡むような力作から、『The OA』のような珍品不思議系まで、そのジャンルは多岐にわたる。とにかく新作が多いのでどれをチョイスするか迷ってしまうところだが、マーケティングでユーザーの好みをドラマ制作に反映していくNetflixだけに、はやりのジャンルもしっかりと押さえている。『ウォーキング・デッド』の成功によって、エンタメ界ではすっかりゾンビ物の人気がメジャーになったが、そこで登場したのが、先月配信開始されたばかりの『サンタクラリータ・ダイエット』だ。
■『サンタクラリータ・ダイエット』  ドリュー・バリモアとティモシー・オリファントという映画界で活躍してきた2人が夫婦役となり、突然ゾンビになってしまった妻と、それに戸惑いながらも妻をフォローしていく夫の悲喜こもごもを痛烈にブラックな笑いで描くゾンビ・コメディだ。コメディだけあってゾンビ・アポカリプスもののような悲壮感は皆無で、終始一貫、とにかくあっけらかんとした雰囲気。ドリュー演じる妻シーラはゾンビになったといっても、人肉(しかもフレッシュな)を欲しがるようになった以外は生前通りのせいか、あっさりと状況を受け入れている。良くも悪くもおおらかとぶっ飛んだキャラクターは、ドリューのハマり役だ。一方、ティモシー演じる夫ジョエルは、どんどん悪化していく状況を家族愛で乗り越えようと奮闘するも、妻の尻拭いでかなりヤバい橋を渡るハメに。  そんな夫婦の一人娘アビーは、母親の変質を案外クールに受け入れる。ゾンビになって(食生活以外は)普通の日常を送るこの一家の様子は紛う方なきファミリー・ドラマだが、そこはゾンビ・ドラマ。ホラーのような怖さはないが、かなりグロ描写は多い。そもそもゾンビになる過程が、いろいろな意味で想像を絶するものだったりする。妻がゾンビになった一家の行く末は予想外の方向に進み、笑いながらも、その先の読めない展開にハマること必至だ。
■『ストレンジャー・シングス 未知の世界』  先の読めない意外性のあるドラマというのは、現在の海外ドラマでは特に重視されるポイントのひとつ。そうしたドラマの中でもオススメの秀作が『ストレンジャー・シングス 未知の世界』だ。インディアナ州の田舎町に住む12歳の少年ウィルが突如失踪したことから始まるミステリーを描く本作は、昨年ドラマ界でも話題になった注目の作品だ。物語はウィルの失踪と時を同じくして謎の少女が町に現れ、ウィルを捜していた友人のマイク、ダスティン、ルーカスは、ひょんなことから出会ったその少女を、こっそりかくまうことになる。少年たちはエルと呼ぶようになった少女と過ごすうち、彼女に不思議な力があることを知る。一方、ウィルの母ジョイスは必死にウィルを捜すうち、家の中に彼の存在を感じるようになるが……。  失踪したウィルの行方、エルの能力の真実、そして怪しい研究所など、ミステリーとして十分な魅力が詰まっている本作。だが、なんといってもこのドラマが傑作なのは、全編から立ち上る、そのジュブナイル感! マイクら少年たちとエルの、ウィルを捜す大冒険が、もう大人世代にはまぶしすぎる。ドラマは80年代が舞台ということで、『E.T.』や『スタンド・バイ・ミー』『グーニーズ』といった当時の名作映画へのオマージュが満載で、映画好きはもちろん、あの頃のピュアな気持ちを取り戻したい人にも全力でオススメできる1作だ。
■『トラベラーズ』 限られたお試し期間の中で、難しいことを考えずに、サクッとドラマを楽しみたいという人にピッタリなのが『トラベラーズ』だ。本作は滅亡の危機に瀕した未来から人類を救うため、現代にタイムトラベルした人々を描くSFエンタテインメント作品。タイムトラベルといっても生身の体で時間移動するわけではなく、未来の技術によって、もともと死ぬ予定の人の意識に入り込み、死を回避するというもの。その人物は未来のデータを元に死亡予定時刻を算出してランダムに選ばれているのだが、滅亡の危機に瀕した世界に残されているデータがそもそも完璧なものではないどころか、ソースがSNSだったりするトンデモ展開。そのため脳障害を持った人間に意識を移し、その変貌ぶりで周囲を驚かせたりと、いい具合にツッコミどころが配置されている。  タイムトラベルものの多くは過去を変えてはいけないというのがお約束だが、このドラマは過去を変えるためにあるので、それも問題なし。トラベラーズたちは結構な数、意識を飛ばしてやってきているようだが、中には現代の自由を謳歌しようとする者も。彼らに命令を下すのは、人工知能の司令官。ドラマは、物語が進むにつれ、それに危機感を抱く反対派の存在が浮上し、地球の危機を救うどころか、内部抗争へと発展。ストーリーは果たしてどこに向かうのか、続きが気になるのは間違いない。 ***  今回はオリジナル作品からチョイスしたが、実は日本初上陸のドラマも豊富なNetflix。以前紹介した『サバイバー 宿命の大統領』だけでなく、『ザ・シューター』や『ジ・アメリカンズ』など、Netflixでしか見られない独占配信のドラマも要注目だ。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

ジャック・バウアーなしで大丈夫!? 人気海外ドラマのスピンオフ3選

 配信サービスの台頭もあり、ドラマシリーズの制作が急増しているアメリカ。クオリティも大幅にアップし、日本にもどんどん新作が上陸する。しかし、これだけドラマが増えると、何から見ていいのかわからなくなるのも正直なところ。そんな時のとっかかりとしてオススメなのが、人気シリーズの兄弟番組や復活版といった、なじみのあるシリーズの新作だ。中には本国放送とほぼ同時に見られるものもある、最新アメリカン・ドラマを3本ご紹介!
YouTube「FOX NETWORKS」より
●『24:レガシー』  日本で一番有名なテレビシリーズといっても過言ではない『24 -TWENTY FOUR-』。日本中を睡眠不足にした本作の5年ぶりの復活となった『24 -TWENTY FOUR- リブ・アナザー・デイ』がきっかけとなり、全米ではリバイバル・ブームが巻き起こった。その復活版第2弾となるのが、この『24:レガシー』だ。今度の『24』は作品の代名詞でもあるキーファー・サザーランド演じるジャック・バウアーは登場しないという、かなりチャレンジングな1作。  ジャックのイメージが強烈すぎるため、ジャックなしの『24』で大丈夫なのか!? と思ってしまうが、実は『24』のフォーマットというのは、非常にスピンオフ向きだったりする。本作が成功すれば、“テロとの戦い”というテーマを軸に、今はやりのアンサンブル方式で新たな『24』を制作することも可能になる。  その試金石ともいえる本作で、ジャックに代わってテロと戦う主人公エリック・カーターを演じるのはコーリー・ホーキンズ。映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』で注目を集め、人気シリーズ『ウォーキング・デッド』にも出演していた期待の新星だ。彼が演じるエリックは、米軍のエリート部隊出身。半年前にイエメンでテロリストの首謀者を殺害したことがきっかけとなり、何者かから命を狙われる。そこからは、もう怒涛の『24』節が炸裂だ。目まぐるしく変わる危機的状況、息つく暇もないスピード感は、本家に負けず劣らず。もちろんスプリット・スクリーンや、あのカウントダウンも健在だ。『24』の人気キャラ、トニー・アルメイダの登場や、CTUとの関わりなど、『24』の世界ともしっかりとリンクしているので、『24』にハマった人なら、やはりこれは見逃せない。なんと本国放送から11時間後に日本で放送されるという最速上陸というのも肝。週1放送なら、睡眠不足の心配もない。
YouTube「FOX NETWORKS」より
●『レギオン』  現在のアメリカのエンタメ界では、映画とドラマの垣根を越えたアメコミ作品のユニバース化がどんどん加速している。それに伴い、アメコミ作品のドラマ化も相次いでいるが、そんな中、ついに登場したのが人気シリーズ『X-MEN』のドラマ版『レギオン』だ。特殊能力を持ったミュータントたちの活躍を描いた『X-MEN』は日本でも人気のシリーズだが、その原作コミックの世界観をベースに、新たな『X-MEN』物語が幕を開ける。  主人公は、X-MENたちを率いたプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビア教授の息子デヴィッド・ハラー。幼い頃から幻覚や幻聴に悩まされ、統合失調症の疑いで精神科病院に入院していた彼だが、その原因が、実は彼の中にある強大な力によるものだったことが明らかになっていく。地上最強のテレパスといわれる父の血を受け継いだ彼の能力“レギオン”とは、果たしてどんな力なのか? その謎をめぐるサスペンスを緻密に描き出していくのは、ドラマ『FARGO/ファーゴ』が高く評価されているノア・ホーリー。主人公デヴィッドを演じるのは、やはり人気シリーズ『ダウントン・アビー』のマシュー役で注目を集めたダン・スティーヴンス。そして映画版で第1作から最新シリーズまで手掛けている映画監督のブライアン・シンガーら強力なクリエイター陣が集結と、この布陣だけでもかなり期待値の高い作品だが、映画版と世界観を共有しながらもよりダークでミステリアスになったストーリーと、その映像表現にも注目。こちらも全米とほぼ同時放送という気合の入った1作だ。
YouTube「V Promo 360」より
●『クリミナル・マインド 国際捜査班』  アメリカでは、人気があれば数年どころか10年以上シリーズが続いていくが、そういった長寿シリーズはスピンオフが多いのも特徴だ。『CSI』(すでに全シリーズ終了)、『NCIS』、『シカゴ・ファイア』など、人気シリーズはいくつものスピンオフを生み出し、いわばドラマ版のユニバースを形成している。そんな長寿番組のひとつ『クリミナル・マインド』のスピンオフ第2弾となるのが『クリミナル・マインド 国際捜査班』だ。  上の2作ほどの最速上陸とはいかないが、こちらも昨年スタートしたばかりの最新作。本家はBAUというFBIの行動分析課のプロファイラー集団がシリアル・キラーを心理分析で追い詰めていく姿を描き、10年を超える人気シリーズとなった犯罪ドラマだが、『クリミナル・マインド 国際捜査班』でピックアップされるのは、海外で凶悪犯罪に巻き込まれたアメリカ人を救出するFBIの精鋭チームIRT(国際犯罪特別捜査班)だ。国境を越えた犯罪捜査は本家以上のスケール感。タイやインド、そして日本も舞台のひとつとして登場する。  その精鋭チームを率いるリーダー、ジャック・ギャレットを演じるのは『CSI:NY』でもおなじみの実力派俳優ゲーリー・シニーズ。脇を固めるのも『LAW & ORDER』(こちらもスピンオフが山盛り)のアラナ・デ・ラ・ガーザら実力派をそろえ、強固なチームワークを見せる。先ほど長寿シリーズはスピンオフが多いと書いたが、多くのシリーズは本家シリーズの人気が後押しとなりスピンオフも割と長寿化しやすいのだが、実は『クリミナル・マインド』だけは、なぜかそのスピンオフが短命に終わっている。それだけに背水の陣のような気合あふれる本作。その行く末を見守る意味でも、注目したい。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

ジャック・バウアーなしで大丈夫!? 人気海外ドラマのスピンオフ3選

 配信サービスの台頭もあり、ドラマシリーズの制作が急増しているアメリカ。クオリティも大幅にアップし、日本にもどんどん新作が上陸する。しかし、これだけドラマが増えると、何から見ていいのかわからなくなるのも正直なところ。そんな時のとっかかりとしてオススメなのが、人気シリーズの兄弟番組や復活版といった、なじみのあるシリーズの新作だ。中には本国放送とほぼ同時に見られるものもある、最新アメリカン・ドラマを3本ご紹介!
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●『24:レガシー』  日本で一番有名なテレビシリーズといっても過言ではない『24 -TWENTY FOUR-』。日本中を睡眠不足にした本作の5年ぶりの復活となった『24 -TWENTY FOUR- リブ・アナザー・デイ』がきっかけとなり、全米ではリバイバル・ブームが巻き起こった。その復活版第2弾となるのが、この『24:レガシー』だ。今度の『24』は作品の代名詞でもあるキーファー・サザーランド演じるジャック・バウアーは登場しないという、かなりチャレンジングな1作。  ジャックのイメージが強烈すぎるため、ジャックなしの『24』で大丈夫なのか!? と思ってしまうが、実は『24』のフォーマットというのは、非常にスピンオフ向きだったりする。本作が成功すれば、“テロとの戦い”というテーマを軸に、今はやりのアンサンブル方式で新たな『24』を制作することも可能になる。  その試金石ともいえる本作で、ジャックに代わってテロと戦う主人公エリック・カーターを演じるのはコーリー・ホーキンズ。映画『ストレイト・アウタ・コンプトン』で注目を集め、人気シリーズ『ウォーキング・デッド』にも出演していた期待の新星だ。彼が演じるエリックは、米軍のエリート部隊出身。半年前にイエメンでテロリストの首謀者を殺害したことがきっかけとなり、何者かから命を狙われる。そこからは、もう怒涛の『24』節が炸裂だ。目まぐるしく変わる危機的状況、息つく暇もないスピード感は、本家に負けず劣らず。もちろんスプリット・スクリーンや、あのカウントダウンも健在だ。『24』の人気キャラ、トニー・アルメイダの登場や、CTUとの関わりなど、『24』の世界ともしっかりとリンクしているので、『24』にハマった人なら、やはりこれは見逃せない。なんと本国放送から11時間後に日本で放送されるという最速上陸というのも肝。週1放送なら、睡眠不足の心配もない。
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●『レギオン』  現在のアメリカのエンタメ界では、映画とドラマの垣根を越えたアメコミ作品のユニバース化がどんどん加速している。それに伴い、アメコミ作品のドラマ化も相次いでいるが、そんな中、ついに登場したのが人気シリーズ『X-MEN』のドラマ版『レギオン』だ。特殊能力を持ったミュータントたちの活躍を描いた『X-MEN』は日本でも人気のシリーズだが、その原作コミックの世界観をベースに、新たな『X-MEN』物語が幕を開ける。  主人公は、X-MENたちを率いたプロフェッサーXことチャールズ・エグゼビア教授の息子デヴィッド・ハラー。幼い頃から幻覚や幻聴に悩まされ、統合失調症の疑いで精神科病院に入院していた彼だが、その原因が、実は彼の中にある強大な力によるものだったことが明らかになっていく。地上最強のテレパスといわれる父の血を受け継いだ彼の能力“レギオン”とは、果たしてどんな力なのか? その謎をめぐるサスペンスを緻密に描き出していくのは、ドラマ『FARGO/ファーゴ』が高く評価されているノア・ホーリー。主人公デヴィッドを演じるのは、やはり人気シリーズ『ダウントン・アビー』のマシュー役で注目を集めたダン・スティーヴンス。そして映画版で第1作から最新シリーズまで手掛けている映画監督のブライアン・シンガーら強力なクリエイター陣が集結と、この布陣だけでもかなり期待値の高い作品だが、映画版と世界観を共有しながらもよりダークでミステリアスになったストーリーと、その映像表現にも注目。こちらも全米とほぼ同時放送という気合の入った1作だ。
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●『クリミナル・マインド 国際捜査班』  アメリカでは、人気があれば数年どころか10年以上シリーズが続いていくが、そういった長寿シリーズはスピンオフが多いのも特徴だ。『CSI』(すでに全シリーズ終了)、『NCIS』、『シカゴ・ファイア』など、人気シリーズはいくつものスピンオフを生み出し、いわばドラマ版のユニバースを形成している。そんな長寿番組のひとつ『クリミナル・マインド』のスピンオフ第2弾となるのが『クリミナル・マインド 国際捜査班』だ。  上の2作ほどの最速上陸とはいかないが、こちらも昨年スタートしたばかりの最新作。本家はBAUというFBIの行動分析課のプロファイラー集団がシリアル・キラーを心理分析で追い詰めていく姿を描き、10年を超える人気シリーズとなった犯罪ドラマだが、『クリミナル・マインド 国際捜査班』でピックアップされるのは、海外で凶悪犯罪に巻き込まれたアメリカ人を救出するFBIの精鋭チームIRT(国際犯罪特別捜査班)だ。国境を越えた犯罪捜査は本家以上のスケール感。タイやインド、そして日本も舞台のひとつとして登場する。  その精鋭チームを率いるリーダー、ジャック・ギャレットを演じるのは『CSI:NY』でもおなじみの実力派俳優ゲーリー・シニーズ。脇を固めるのも『LAW & ORDER』(こちらもスピンオフが山盛り)のアラナ・デ・ラ・ガーザら実力派をそろえ、強固なチームワークを見せる。先ほど長寿シリーズはスピンオフが多いと書いたが、多くのシリーズは本家シリーズの人気が後押しとなりスピンオフも割と長寿化しやすいのだが、実は『クリミナル・マインド』だけは、なぜかそのスピンオフが短命に終わっている。それだけに背水の陣のような気合あふれる本作。その行く末を見守る意味でも、注目したい。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

ジャック・バウアーが“望まれない”大統領になって孤軍奮闘!『サバイバー 宿命の大統領』

YouTube「Netflix Japan」より
 ついに誕生したトランプ大統領。就任式では議員たちのボイコットが続出、観衆も当初予想されていた90万人を大きく下回り、さらには、アメリカのみならず世界各地で反トランプのデモが行われるなど、まさに波乱のスタートだ。前代未聞のヒール大統領誕生から当面、目が離せそうにないが、そんな“望まれない”大統領の苦労が垣間見えるドラマがある。それが『サバイバー 宿命の大統領』だ。  もっとも、トランプ氏は嫌われ者とはいえ、選挙で正式に選ばれた大統領。しかし、このドラマの大統領トム・カークマンは、選挙ではなく、繰り上がり方式で図らずも大統領になってしまったという人物。そんな苦労を背負い込んだトホホな大統領を演じるのが、『24 TWENTY FOUR』のジャック・バウアー役でおなじみのキーファー・サザーランドだ。  キーファーにホワイトハウスとくれば、やはり普通のドラマよりテロ絡みを想像してしまうが、その通り、このドラマはワシントンを舞台にした政治ドラマであると同時に、未曾有のテロと戦う大統領を描いたドラマだ。『24 TWENTY FOUR』といえば、今年は復活版第2弾が放送されるが、キーファーはそれには出演せず、今度は大統領となってテロと戦うことになる。  キーファーが演じるトムは、住宅都市開発庁という、閣僚とはいえ、超下っ端の地味省庁の長官。アメリカではテロなどによる政府機能の停止を回避するために、連邦議会議事堂で閣僚や議員が一堂に会する際などに、両院の各党1名ずつが欠席して別の安全な場所で待機する指定生存者制度があり、トムは一般教書演説の日に、この指定生存者となっていた。まさかのための措置ということで、下っ端閣僚のトムが選ばれていたわけだが、なんとその一般教書演説中に大規模テロが勃発し、大統領はおろか、上位の閣僚から両院の議員まで軒並み犠牲になってしまう。そんな混乱の中、どさくさまぎれのような状態で大統領になってしまったトム。住宅都市開発庁長官という、アメリカ人でもロクに知らない無名の存在からいきなり大統領となり、しかも議員すらひとりもいないという、限りなく無政府状態での船出は苦難の連続だ。  繰り上がり式大統領といえば、『ハウス・オブ・カード』のフランクも同様だが、彼は当時副大統領であり、内閣も議会も存在しているという点では通常運転の範囲。それでも、選挙で選ばれていないことが弱点になったところからしても、トランプがどれだけ嫌われようとも選挙で選ばれたというのは、それだけでかなり大きなアドバンテージなのだとしみじみと思ってしまう。それなのに本作のトムは、選挙で選ばれていないだけでなく、めぼしいキャリアもなければ、実はクビになる寸前だったというのだから、望まれてない感も極まれりだ。   そんな大統領トム(キーファー)は、無敵のジャック・バウアーとは違い、アクションバリバリでテロリストと対峙することはない。しかし、孤軍奮闘という意味では、トムも近いものがある。もはや議会も存在せず、政府の立て直しと同時にこのテロの首謀者を追わなければならないトムだが、そのために必要な軍のトップは完全にトムをナメきっているわ、マスコミからは徹底的に攻撃されるわ、共和党の指定生存者だった下院議員フックストラテンは明らかにトムより一枚上手なしたたか者で、大統領のポジションを虎視眈々と狙っているわ……という四面楚歌の状況は、ある意味、ジャック・バウアーより過酷だ。しかし、そんな過酷さの中で、決して無双ではないトムが奮闘するからこそ、多くの人は共感を覚えるだろう。下っ端閣僚だったからこその庶民感覚や、人として当たり前の感覚を大事にするトムは、いまだアメリカ人が理想の大統領と語ることが多いドラマ『ザ・ホワイトハウス』のバートレット大統領に匹敵する人気大統領キャラクターとなる可能性がある。自身の代名詞となったジャック・バウアーを超えることができるか、これはキーファーにとっても大きな挑戦なのだ。  一般教書演説中のテロで政府がほぼ全滅という荒唐無稽な場面から始まる本作だが、 “壊滅状態の政府を立て直すための政治”という視点は、これまでの政治ドラマにはなかったものとしてかなり新鮮だ。日頃は“アメリカ”とひとまとめに考えてしまうが、このドラマを見ると、アメリカは“合衆国”なのだということがあらためて鮮明に浮き上がってくる。荒唐無稽とはいえ、決して非現実的というわけでもないその絶妙なバランスで、今のアメリカを絡め取りながら、しっかりとエンタテインメントしている点が秀逸だ。  余談だが、トムのスピーチライターとなるセスを演じるカル・ペンは、俳優活動を中断してオバマ政権でホワイトハウス広報部のアソシエイト・ディレクターを務めた異色の経歴を持つ人物。リアルな政治の世界を知る俳優がキャスティングされているところも、微妙にリアリティにつながっているのかもしれない。  そんな政治ドラマとしての面白さはもちろんのこと、やはり『24 TWENTY FOUR』のキーファーがテロと戦う大統領を演じるとなれば、議事堂テロをめぐるストーリーにこそ、期待が集まるのは当然だ。ジャック・バウアーのように自らが体を張ってテロと戦うわけではない大統領というポジションで、いかにテロリストを追い詰めていくのか? トムのキャラクターからは、今度は知略で攻めていくぞ、という姿勢が見て取れる。その分、実働部隊となりそうなのが、『NIKITA/ニキータ』で主人公ニキータを演じていたマギー・Q演じるFBI捜査官ハンナだ。事件の捜査を担当しているうちに、ある疑念を持った彼女は、やがてこのテロ事件を独自に捜査していく。トムが政府を立て直すために、わずかな味方だけを頼りに孤軍奮闘する間、彼女はテロ事件の捜査で、やはり孤軍奮闘する。シーズン序盤はトムとハンナにそれほど接点はないが、それゆえに、そんな2人の道がいつどこで交わるのかにも注目だ。  怪しげな生存者や、もはやお約束な内通者の影など、『24 TWENTY FOUR』好きならたまらないポイントはしっかりと押さえつつ、いくつもの疑念が複雑に絡まり合い、次第に議事堂テロという未曾有の事件の背後にさらなる大きな陰謀があることが徐々に浮かび上がってくる本作。第2の『24 TWENTY FOUR』を待望する人の期待にしっかり応えるスリリングな展開は、まさに王道のアメリカン・ドラマだ。 ★このドラマにハマった人におすすめ! 『ザ・ホワイトハウス』 『ハウス・オブ・カード』 『24 TWENTY FOUR』 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin