正統派から変化球まで! 人間ドラマ3選

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 10月に入り、ようやく空気も秋めいてきた。秋といえばスポーツの秋、食欲の秋などいろいろあるが、ここはやはり芸術の秋らしく、ぐっと心を揺さぶるヒューマン・ドラマの注目作を紹介しよう。  アメリカでのドラマ制作数が急増し、その多くが日本にも上陸しているが、かなりのシェアを占めるのが犯罪ドラマだ。しかし、昨年全米でスタートするなり大きな話題を呼んだ『THIS IS US 36歳、これから』は、久しぶりに登場した正統派ヒューマン・ドラマだ。三つ子の誕生が控えているジャックとレベッカの夫婦、シットコムの主演でブレークした俳優ケビン、肥満に悩むケイト、成功を手にしたエリート、ランドールという36歳の5人を中心に、それぞれの日常を丁寧につづった本作は、派手な事件が起こるわけでもなく、きらびやかなセレブライフが描かれるわけでもないシンプルなストーリーだ。だが、そんな一見地味に思えるドラマがなぜ、全米で話題を呼ぶほどヒットしたのか?  実は、本作の第話のエンディングには、大きな驚きが隠されている。そしてそうした驚きや謎が毎回ナチュラルに散りばめられ、思いがけない展開に発展していくのだ。犯罪ドラマのような血生臭さは皆無であるのに、上質なミステリーを見るかのようなひねりの効いたストーリーラインがこのドラマの肝となる。かといって、変に斜に構えるのではなく、誰もが共感を覚えるようなキャラクターの心の機微を丹念につづる本作は、あくまでも普遍的なドラマに基軸に置いているからこそ、登場人物の心の動きがストレートに伝わってくる。時に驚き、時に感動し、気がつけば心癒される正統派でありながら革新的でもある、稀有なヒューマン・ドラマなのだ。
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『THIS IS US 36歳、これから』が、乾いた心にすっと水が染み込むような癒やし系ヒューマン・ドラマだとしたら、よりダイナミックに生と死を描いていくのが『シカゴ・メッド』だ。ヒューマン・ドラマというジャンルに置いて、メディカル・ドラマは鉄板中の鉄板。これまでも『ER 緊急救命室』や『Dr.HOUSE』、『グレイズ・アナトミー』などの人気シリーズを数多く生み出している医療ドラマの中でも、現在注目されているのが、この『シカゴ・メッド』だ。タイトル通り、シカゴにある医療センターを舞台にした本作は、その救急部門で働く医師や看護師たちが主人公。次々とやってくる患者と対峙し、懸命に医療に取り組んでも神のごとく命を操ることは当然ながら不可能だ。医師は完璧ではないし、それは患者も同様。納得がいかない場面に直面し、誰もが葛藤しながら常に挫折と成功を繰り返す医師たちの姿は、やはりぐっとくるものがある。  シカゴの救命救急というと『ER 緊急救命室』を彷彿とさせるが、ERばりのスピード感に加え、事件・事故の現場ではアクション・ドラマさながらの迫力、そして単純なハッピーエンドには至らないリアルな人間模様が三位一体となった見応えのあるシリーズとなっている。本作は大ヒットシリーズ『シカゴ・ファイア』の2つ目のスピンオフ作品ということもあり、『シカゴ・ファイア』や『シカゴPD』のキャラクターがサラりと本作にも登場するので、兄弟番組も共にチェックするとよりこのドラマの世界を楽しむ事ができるのもポイントだ。消防・救命のファイア、警察のPD、そして医療のメッド、そのどれもが熱い生きざまを見せてくれるだろう。
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 もちろん人気ジャンルの犯罪ドラマにだって、心を揺さぶるヒューマン・ドラマはある。少し前の作品になるが、『キリング/26日間』がそれだ。ヨーロッパで大ヒットしたデンマークのドラマ『THE KILLING/ザ・キリング』を、舞台をシアトルに移してリメイクした本作は、失踪した17歳の少女ロージー・ラーセン殺人事件をめぐる人間ドラマ。1話完結方式が多い犯罪ドラマの中で、本作は1話=1日で描かれる26日間の捜査劇をじっくりと描いているだけに、事件に関わる人間たちの姿がよりディープに描写されている。捜査を担当する刑事たちだけでなく、浮かび上がる容疑者たち、突然娘を失った被害者遺族、そして被害者である少女の友人や少女自身まで、たったひとつの事件が、それに関わる人間たちにどのような影響を及ぼすのかが克明に描かれ、登場人物の心の揺れが見る者をどんどん引き込んでいく。  特に被害者遺族の家族たちについては、突然家族を奪われた悲しみにどう対処するのか、誰もが懸命ゆえにゆっくりと家庭が崩壊していってしまう様があまりにもリアルすぎて、その慟哭が胸に迫る。一方で、二転三転する捜査の行方や真犯人にたどり着くまでまったく先が読めないストーリーなど、犯罪ドラマとしてもかなり練り込まれているので、1話完結型の犯罪ドラマに物足りなさを感じている人にはオススメだ。オリジナル版の持ち味を活かしつつ、徐々に独自性を発揮していくので、オリジナル版とアメリカ版それぞれの人間模様を見比べてみても面白い。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

ド派手なアクション、スピード感、血しぶき舞う肉弾戦! 見るとスカッとする海外ドラマ3選

 連日猛暑日が続くような暑さのピークは過ぎ、9月に入ってからはほんのりと秋の空気が感じられるようになったものの、今度は暑くなったり、寒くなったりの気温差に、どうにもぐったりしがちな人も多いのではないだろうか? 今回はそんな人たちにこそ見てほしい、スカッとするドラマを紹介しよう。 ■『HAWAII FIVE-0』
 夏のピークは過ぎても、まだまだ夏気分でいたい! という人や、日本のジメッとした暑さがどうにもしんどい、という人にオススメなのが『HAWAII FIVE-0』だ。70年代に大ヒットしたシリーズを現代にアップデートし、ハワイのあちこちで起こる事件を州知事直轄の特別捜査チーム“FIVE-0”が解決していくアクションシリーズだ。  とにかくこのドラマ、アクションにかける意気込みがハンパない。ワイキキのメイン通りでド派手なカーチェイスを展開したり、ダウンタウンの街中で機関銃をぶっ放したり。以前、キャストの一人、マシ・オカにインタビューした際、「予算は年々下がっているのに、なぜかアクションはどんどん派手になる」と語っていたのだが、その通り、アクションシーンはどんどんスケールアップしていく。その振り切ったド派手さが爽快なのだ。ハワイって観光地だよね? と思わず心配になってしまうところでもあるが、なにしろハワイ州の全面バックアップぶりがこれまたハンパない。日本人にもおなじみの観光名所から知られざる秘境まで幅広く網羅したロケーションは、この夏旅行に行けなかった人も観光気分が味わえる(もれなく銃撃戦が付いてくるが)。  そんなアクションと共に人気なのが、FIVE-0メンバーのキャラクターワークだ。特にシールズ出身の元軍人スティーヴと、彼の相棒となるホノルル市警の刑事ダニーのコンビの、もはや夫婦漫才のような絶妙な会話の応酬はすっかり番組の名物となっている。彼らをしっかりと支える頼れるタフガイ・チン、彼の従妹でチームの紅一点コノの健康的な魅力が絶妙にリンクし、最高のチームワークを見せてくれる。ちなみにこのドラマ、吹き替え版の人気が特に高いのも特徴のひとつ。本家以上に暑苦しく、絶妙なやりとりは必見だ。暑い時期にこそ熱いものを食べる感覚で、ここはやっぱり吹き替え版を暑い時期に見てほしい。 ■『SCORPION/スコーピオン』
『HAWAII FIVE-0』に負けず劣らずスカッとするが、FIVE-0ほどには暑苦しくない、よりオールラウンダーな夏バテ対策ドラマといえるのは『SCORPION/スコーピオン』だ。こちらはトータルIQ700の天才チーム「スコーピオン」が、その頭脳を駆使して事件を解決していく痛快犯罪ドラマ。IQ197の頭脳を持つコンピューターの天才で、このドラマの主人公ウォルター・オブライエンを筆頭に、行動心理学の天才、機械工学の天才、数学の天才という4人の天才たちがチームを組んで、国家に関わる重要な事件に挑んでいく。  天才というとギークなイメージが強いが、このドラマに出てくる天才たちはやけにアクティブ。司令塔として人員を動かすのではなく、チーム自らが危険な任務に乗り出し、(時に巻き込まれ)、窮地をその頭脳で鮮やかに乗り切っていく。主人公のウォルターは実在の人物がモデル。本人もこのドラマの製作に関わり、チームが難局を乗り切る際にどういう思考をするか、そのアイデアなどをアドバイスしているとか。  天才のイメージを覆す行動派なスコーピンのメンバーだが、社会性ゼロ、対人スキルに著しく問題がある点はイメージ通り。チームのメンバーがかなりクセのある彼らだけなら、その言動にも理解不能な面が多々出てくるわけだが、元ウエイトレスのシングルマザー(その子どもがまた天才だったりする)と、国土安全保障省の捜査官という“普通の人”をチームのまとめ役として投入することで、うまく天才である彼らと多くが一般人である視聴者との間をつないでいる。彼らを介することで、天才たちが持つ天才ならではの苦悩がより身近なものに感じられ、人間ドラマとしての面白さも感じられるようになっているのだ。  そうしたリアリティに加え、映画『ワイルド・スピード』シリーズのジャスティン・リン監督が製作総指揮を務めている(&第1話も監督)だけあって、内容が重くならず、スピード感あふれる軽快さと見応えのあるアクションでエンタテインメントに徹している。ドラマとアクションのバランス感覚の良さ、気軽に見られる敷居の低さ、それでいて1話、また1話と見たくなってしまう中毒性の高さがこのドラマの魅力だ。 ■『スパルタカス』
 夏バテが重症な人には荒療治的なドラマとして、少し古い作品になってしまうが『スパルタカス』をオススメしたい。共和制ローマ時代の最大の奴隷戦争となったスパルタクスの反乱をベースに、ローマ軍によって奴隷として捕らわれ、剣闘士となったスパルタカスを主人公に、血しぶき舞う肉弾戦がこれでもか! と繰り広げられる本作は、歴史に詳しくなくても興奮必至のドラマだ。  スパルタカスを筆頭に、屈強で半裸の男たちがウヨウヨ登場し、闘争本能をむき出しにあちらこちらでバトっては生首が飛び、臓物が飛び出る強烈極まる描写が続出。とにかく男たちが終始荒ぶっているので、見ているこちらも引きずられるように一気にテンションが上がっていく。闘技場の外に出れば、支配階級の者たちが野心をむき出しに駆け引きと謀略を張り巡らす。女たちは女たちでやはり自らの肉体を武器に、あらゆる手練手管を駆使していく。まさに生と生とのぶつかり合いとしか言い様のないドラマはどこを切り取ってもとにかく濃い。濃すぎる。  欲望と本能があまりにむき出しな世界は、生きているだけで疲れそうで今の時代に生まれたことを思わず感謝したくなるほどに強烈だ。だが、現代より生きることに貪欲な時代が舞台だからこそ、本能むき出しで闘う男と女のそのダイナミックな生きざまを、とことんエロスとバイオレンスに落とし込んだ濃すぎるドラマがストレートに響いてくる。ひ弱な現代人の夏バテなど、力技で吹き飛ばしてしまうパワーがあるのは間違いないが、荒ぶるパワーの過剰摂取でかえってぐったりする可能性もなきにしもあらずなのは、頭の片隅に入れておこう。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

『ザ・ディフェンダーズ』配信前に要チェック! NETFLIXのマーベルドラマ4選

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『Marvel ザ・ディフェンダーズ』NETFLIX公式サイトより(以下同)
 近年ますます活況を見せるアメコミ映画のユニバーサル化。DCもマーベルも映画・ドラマでそれぞれにユニバーサル展開しているが、やはり要注目なのはNETFLIXのマーベル・ドラマ・シリーズ。8月18日には各作品のヒーローが集結する『Marvel ザ・ディフェンダーズ』の配信もスタートする。それに先駆け、デアデビル役のチャーリー・コックスとアイアン・フィスト役のフィン・ジョーンズも来日し、放送前から大いに盛り上がっている。  見るからに仲の良さそうな雰囲気に、ドラマでのチームワークもバッチリだった様子。それぞれに強烈な個性を持つヒーローたちがどのようなタッグを組んでヴィランと対峙していくのか、そしてそのヴィランを演じるのがシガニー・ウィーバーとあって、期待は高まるばかりだ。もっとも、NETFLIXのマーベル・ユニバースは『ザ・ディフェンダーズ』単体で見るより、事前にこれまでのシリーズを見ておくのがマスト! 各作品とのつながりも時系列的に見たほうがより楽しめる作りになっているので、放送スタート順に紹介しよう。
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『デアデビル』
 NETFLIXが制作するマーベル・シネマティック・ユニバースに属するドラマ・シリーズ第1弾は『デアデビル』。映画のキャラクターが登場することはないが、世界観は共有しており、ニューヨーク決戦後の世界が舞台になっている。弁護士のマット・マードックは少年時代に視力を失った代わりに得た超感覚を生かし、夜は盲目のヒーローとしてヘルズ・キッチンの犯罪者たちと闘っていた。シーズン1ではヘルズ・キッチンの再開発計画を推し進める企業家ウィルソン・フィスクとの戦いを通して、マットがデアデビルとなるまでが描かれ、シーズン2では復讐に燃えるパニッシャーことフランク・キャッスルとの死闘を経て、大物麻薬ディーラーをめぐる攻防から闇の組織ヤミノテとの戦いへと発展していく。  マットの昔の恋人エレクトラの登場、謎の中国人マダム・ガオの存在、ヤミノテが探すブラックスカイとはなんなのか、そうした事柄が『ザ・ディフェンダーズ』へとつながり、さらなる広がりを見せていく。ちなみに『デアデビル』に登場する看護師のクレアは、唯一全シリーズに登場するキャラクター。クレアが各ヒーローたちとどう関わっていくようになるのかも、サイド・ストーリーとして要チェックだ。
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ジェシカ・ジョーンズ
 第2弾の『ジェシカ・ジョーンズ』はマーベル・シリーズ唯一の女性ヒーロー作品だ。主人公のジェシカは驚異的な身体能力を持つ人物。かつてはその力で世界を守ろうとしていたこともあるが、ある事件がトラウマとなり、ヒーロー稼業を断念。今では私立探偵としてヘルズ・キッチンを拠点に活動していた。そんな彼女の元に、行方不明の少女探しの依頼が舞い込み、調査を進める中、事件の背後に彼女のトラウマの原因となったキルグレイブの存在が浮かび上がる。他人を意のままに操れるキルグレイブという強敵と対峙し、トラウマを克服するというのがひとつのテーマ。  クリステン・リッター演じるハードボイルドなヒロイン像は、これまでのアメコミ作品にはない新鮮さがあり、ダークだが人間ドラマとしての見どころも大きい。シリーズ第3弾の主人公ルーク・ケイジが元彼として登場したり、ジェシカに仕事を斡旋する弁護士ホガースが、後に『デアデビル』のフォギーを雇ったり、アイアン・フィストの弁護を務めることになるなど、他シリーズとのつながりも多い。ヤミノテとの直接的な関わりはなかったが、『ザ・ディフェンダーズ』では、同じヘルズ・キッチンを拠点とするマット・マードックと探偵稼業の流れで関わるようになり、ヒーローチームに参加することになる。
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『ルーク・ケイジ』
マーベル・シリーズ第3弾『ルーク・ケイジ』では、『ジェシカ・ジョーンズ』の最後から数カ月後、ハーレムに移ったルークとストリート・ギャング、コットンマウスとのバトルが描かれる。鋼の肉体を持つルークだが、『ジェシカ・ジョーンズ』での出来事が尾を引き、ヒーローとして活動する気は一切なく、能力を隠して生きようとしていた。そんな彼の想いとは裏腹に、コットンマウスによってハーレムの状況は悪化の一途をたどり、彼は否応なくストリートの抗争に身を投じていくことになる。これまでのシリーズとは雰囲気もガラリと変わり、70年代の犯罪ドラマのようなグルーヴ感のある仕上がりで、他と一線を画す個性を作り上げている。 『ハウス・オブ・カード』のレミーことマハーシャラ・アリがコットンマウスを演じ、ルークの前に立ちはだかるヴィランとして強烈な存在感を見せているのも見どころだ。『ザ・ディフェンダーズ』ではハーレムの子どもたちが関わる汚れ仕事を追ううちに、アイアン・フィストことダニーと知り合い、ヒーローチームに参加する。
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『アイアン・フィスト』
 そして第4弾となる『アイアン・フィスト』は『デアデビル』シーズン2と並んで『ザ・ディフェンダーズ』とのつながりが最も濃い作品だ。幼い頃に飛行機事故で亡くなったと思われていた大富豪の息子ダニー・ランドが15年ぶりにニューヨークに戻ってくるところからドラマは始まる。事故で両親を失った彼は、秘境の地クン・ルンの寺院で育てられ、厳しい東洋武術の訓練を積み、闇の組織ヤミノテと戦うアイアン・フィストとなっていた。両親の死の真相を突き止めるためニューヨークにやってきた彼だったが、父が経営していた会社は今では従兄弟のウォードが実権を握り、ウォードはダニーを偽物と断じ、冷酷にあしらう。 家族同然だった者たちとの愛憎劇を挟みながら、紆余曲折の末、偶然出会った道場経営者のコリーンの世話になるダニーは、彼女とともにヤミノテを追うことになるわけだが、完全無欠のヒーローとは縁遠いNETFLIXのマーベル・ユニバース作品の中でも、ダニーは最も未熟なヒーローといえる。秘境で育った彼は世事に疎く、見た目は大人でも中身は子どものまま。アイアン・フィストの力をまだ上手くコントロールできず、何かうまくいかないことがあるとかんしゃくを起こす。だが、そんな未熟な青年がいかにして成長していくかというのがシリーズの見どころとなる。シーズン1ではまだその入り口に立ったばかり。『ザ・ディフェンダーズ』で他のヒーローと接し、それがシーズン2でどう反映され、成長していくのか注目だ。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

『ザ・ディフェンダーズ』配信前に要チェック! NETFLIXのマーベルドラマ4選

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『Marvel ザ・ディフェンダーズ』NETFLIX公式サイトより(以下同)
 近年ますます活況を見せるアメコミ映画のユニバーサル化。DCもマーベルも映画・ドラマでそれぞれにユニバーサル展開しているが、やはり要注目なのはNETFLIXのマーベル・ドラマ・シリーズ。8月18日には各作品のヒーローが集結する『Marvel ザ・ディフェンダーズ』の配信もスタートする。それに先駆け、デアデビル役のチャーリー・コックスとアイアン・フィスト役のフィン・ジョーンズも来日し、放送前から大いに盛り上がっている。  見るからに仲の良さそうな雰囲気に、ドラマでのチームワークもバッチリだった様子。それぞれに強烈な個性を持つヒーローたちがどのようなタッグを組んでヴィランと対峙していくのか、そしてそのヴィランを演じるのがシガニー・ウィーバーとあって、期待は高まるばかりだ。もっとも、NETFLIXのマーベル・ユニバースは『ザ・ディフェンダーズ』単体で見るより、事前にこれまでのシリーズを見ておくのがマスト! 各作品とのつながりも時系列的に見たほうがより楽しめる作りになっているので、放送スタート順に紹介しよう。
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『デアデビル』
 NETFLIXが制作するマーベル・シネマティック・ユニバースに属するドラマ・シリーズ第1弾は『デアデビル』。映画のキャラクターが登場することはないが、世界観は共有しており、ニューヨーク決戦後の世界が舞台になっている。弁護士のマット・マードックは少年時代に視力を失った代わりに得た超感覚を生かし、夜は盲目のヒーローとしてヘルズ・キッチンの犯罪者たちと闘っていた。シーズン1ではヘルズ・キッチンの再開発計画を推し進める企業家ウィルソン・フィスクとの戦いを通して、マットがデアデビルとなるまでが描かれ、シーズン2では復讐に燃えるパニッシャーことフランク・キャッスルとの死闘を経て、大物麻薬ディーラーをめぐる攻防から闇の組織ヤミノテとの戦いへと発展していく。  マットの昔の恋人エレクトラの登場、謎の中国人マダム・ガオの存在、ヤミノテが探すブラックスカイとはなんなのか、そうした事柄が『ザ・ディフェンダーズ』へとつながり、さらなる広がりを見せていく。ちなみに『デアデビル』に登場する看護師のクレアは、唯一全シリーズに登場するキャラクター。クレアが各ヒーローたちとどう関わっていくようになるのかも、サイド・ストーリーとして要チェックだ。
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ジェシカ・ジョーンズ
 第2弾の『ジェシカ・ジョーンズ』はマーベル・シリーズ唯一の女性ヒーロー作品だ。主人公のジェシカは驚異的な身体能力を持つ人物。かつてはその力で世界を守ろうとしていたこともあるが、ある事件がトラウマとなり、ヒーロー稼業を断念。今では私立探偵としてヘルズ・キッチンを拠点に活動していた。そんな彼女の元に、行方不明の少女探しの依頼が舞い込み、調査を進める中、事件の背後に彼女のトラウマの原因となったキルグレイブの存在が浮かび上がる。他人を意のままに操れるキルグレイブという強敵と対峙し、トラウマを克服するというのがひとつのテーマ。  クリステン・リッター演じるハードボイルドなヒロイン像は、これまでのアメコミ作品にはない新鮮さがあり、ダークだが人間ドラマとしての見どころも大きい。シリーズ第3弾の主人公ルーク・ケイジが元彼として登場したり、ジェシカに仕事を斡旋する弁護士ホガースが、後に『デアデビル』のフォギーを雇ったり、アイアン・フィストの弁護を務めることになるなど、他シリーズとのつながりも多い。ヤミノテとの直接的な関わりはなかったが、『ザ・ディフェンダーズ』では、同じヘルズ・キッチンを拠点とするマット・マードックと探偵稼業の流れで関わるようになり、ヒーローチームに参加することになる。
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『ルーク・ケイジ』
マーベル・シリーズ第3弾『ルーク・ケイジ』では、『ジェシカ・ジョーンズ』の最後から数カ月後、ハーレムに移ったルークとストリート・ギャング、コットンマウスとのバトルが描かれる。鋼の肉体を持つルークだが、『ジェシカ・ジョーンズ』での出来事が尾を引き、ヒーローとして活動する気は一切なく、能力を隠して生きようとしていた。そんな彼の想いとは裏腹に、コットンマウスによってハーレムの状況は悪化の一途をたどり、彼は否応なくストリートの抗争に身を投じていくことになる。これまでのシリーズとは雰囲気もガラリと変わり、70年代の犯罪ドラマのようなグルーヴ感のある仕上がりで、他と一線を画す個性を作り上げている。 『ハウス・オブ・カード』のレミーことマハーシャラ・アリがコットンマウスを演じ、ルークの前に立ちはだかるヴィランとして強烈な存在感を見せているのも見どころだ。『ザ・ディフェンダーズ』ではハーレムの子どもたちが関わる汚れ仕事を追ううちに、アイアン・フィストことダニーと知り合い、ヒーローチームに参加する。
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『アイアン・フィスト』
 そして第4弾となる『アイアン・フィスト』は『デアデビル』シーズン2と並んで『ザ・ディフェンダーズ』とのつながりが最も濃い作品だ。幼い頃に飛行機事故で亡くなったと思われていた大富豪の息子ダニー・ランドが15年ぶりにニューヨークに戻ってくるところからドラマは始まる。事故で両親を失った彼は、秘境の地クン・ルンの寺院で育てられ、厳しい東洋武術の訓練を積み、闇の組織ヤミノテと戦うアイアン・フィストとなっていた。両親の死の真相を突き止めるためニューヨークにやってきた彼だったが、父が経営していた会社は今では従兄弟のウォードが実権を握り、ウォードはダニーを偽物と断じ、冷酷にあしらう。 家族同然だった者たちとの愛憎劇を挟みながら、紆余曲折の末、偶然出会った道場経営者のコリーンの世話になるダニーは、彼女とともにヤミノテを追うことになるわけだが、完全無欠のヒーローとは縁遠いNETFLIXのマーベル・ユニバース作品の中でも、ダニーは最も未熟なヒーローといえる。秘境で育った彼は世事に疎く、見た目は大人でも中身は子どものまま。アイアン・フィストの力をまだ上手くコントロールできず、何かうまくいかないことがあるとかんしゃくを起こす。だが、そんな未熟な青年がいかにして成長していくかというのがシリーズの見どころとなる。シーズン1ではまだその入り口に立ったばかり。『ザ・ディフェンダーズ』で他のヒーローと接し、それがシーズン2でどう反映され、成長していくのか注目だ。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

デヴィッド・リンチ『ツイン・ピークス』が26年ぶりに復活! 見逃し厳禁のリバイバル作品3選

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WOWWOWオンラインより
 いま、日本ではマンガ作品の実写化が次々と制作されているが、何かが当たればそれに続けとなるのはアメリカも同じ。そうした中でひとつの流れになっているのが、人気シリーズのリブートやリバイバル化だ。日本でも一世を風靡した『24-TWENTY FOUR-』が復活して以来、次々と人気作品が復活しているアメリカTV界。中でも注目を集めたのが、90年代にヒットした『ツイン・ピークス』の復活だ(7月22日より、WOWWOW独占放送)。主役のデイル・クーパー捜査官役のカイル・マクラクランやローラ・パーマー役のシェリル・リーら主要キャラクターからサブ・キャラクターまで多くのオリジナル・キャストが再登場することに加え、ナオミ・ワッツら豪華新キャストも登場するとあり、制作のニュースが流れるや、世界中のファンが熱狂。まさに待望の新作といえる。 もっとも、当時の人気をリアルタイムで知るのはアラフォー以上が大半だろう。鬼才デヴィッド・リンチとマーク・フロストが手掛ける本作のオリジナル版は、米ABC局で1990年に放送開始。カナダ国境にほど近い田舎町ツイン・ピークスを舞台に、16歳の女子高生ローラ・パーマー殺人事件をめぐるミステリーを描いた本作は、デヴィッド・リンチらしい独特で奇妙な世界観でもって、他の犯罪ドラマとは一線を画す仕上がりになっている。 その復活版である『ツイン・ピークス The Return』はオリジナル版終了の25年後が舞台となるが、オリジナル以上にリンチ節が炸裂。本来なら、ある程度、筋道立てたストーリーラインをざっくりと紹介するのだが、『ツイン・ピークス The Return』に関しては、それが難しい。通常、リバイバル作品というのは“オリジナル版を見ていなくても楽しめるけど、オリジナル版も見ていたらもっと楽しいよ”という作りがスタンダード。しかし『ツイン・ピークス』に関しては、“オリジナル版を見ていないとわけわからん、しかしオリジナル版を見ていてもやっぱりわけわからん”という作りなのだ。 それでもここでオススメするのは、そのわけのわからなさこそ、このドラマの醍醐味だから。ストーリーがどこに着地するのか、どこに連れて行かれるのかわからないからこそ、この奇妙な世界に引き込まれ、1話見るごとに誰かと話したくなってしまう。ドラマの中にはこれまでのリンチ作品の味わいが凝縮されているので、リンチファンにはそれだけでもたまらない魅力になるはずだ。 個人的には、できればオリジナル版もチェックした上で、梅干しをぶっ刺した木(この説明だけで、もはや意味不明だ)が登場した時の“なぜこうなった感”を味わってほしい。少なくとも、これだけたくさんのドラマが制作される時代になっても、これほどぶっ飛んだ作品を作れるのはリンチしかいないだろう。  今回は『ツイン・ピークス The Return』だけでドラマ3本分くらいの濃厚さなのだが、わけのわからないドラマだけでなく、ある意味でスカッとわかりやすいリバイバル・ドラマとして『プリズン・ブレイク シーズン5』(Amazonプライム、U-NEXTで配信中)もオススメしておきたい。
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Amazonプライムより
『24』と共に日本での海外ドラマブームをけん引した本作も、リバイバル・ブームに乗って復活。死んだはずのマイケルが実は人知れず生きていたというわかりやすいチートから始まり、中東を舞台に繰り広げられる脱獄劇は、もう単純にハラハラドキドキ、無駄に頭を悩ませることもない。いろいろツッコミどころもあるが、それがどうした! というすがすがしさすら感じさせる。あれこれと策を弄せず、『プリズン・ブレイク』を『プリズン・ブレイク』たらしめる陰謀絡んだ脱獄劇が楽しめればそれでいいのだ! というブレなさは、ある意味、正しいリバイバルの在り方だ。「マイケル生きてたとか、チートじゃん」「サラ、ただの医者だったのに、たくましくなりすぎ」「ティーバッグ、相変わらず変態……」などなど、いろいろと思いを馳せながら、素直にお祭り気分で楽しんでほしいドラマだ。
デヴィッド・リンチ『ツイン・ピークス』が26年ぶりに復活! 見逃し厳禁のリバイバル作品3選の画像3
Netflixより
 わけのわからないミステリーやハラハラドキドキのサスペンスの後にぜひ見てほしいのが、『ギルモア・ガールズ:イヤー・イン・ライフ』(Netfixにて配信中)だ。オリジナルは7年続いた人気ファミリー・ドラマ。ローレライとローリーという友達母娘を中心に、彼女たちが住む田舎町スターズ・ホローの住民たちの姿を描いたほっこりハートフルな人間ドラマは、あくまでなんでもない日常を描いているだけに、疲れた時ほど染みる。リバイバル版では春・夏・秋・冬の四季ごとにまとめた4エピソードで、オリジナルから10年たった1年間をつづっていく。 口の減らないローレライのおしゃべりには少々イラつく時もあるが、基本的に悪人の出てこない世界の優しさに心癒やされること必至。市民ミュージカルで町おこし(ブロードウェイの実力派を配して、無駄に本格的に仕上げている)など、期待を裏切らない田舎町ドラマに必須のほっこりイベント要素もしっかりと入れ込み、故郷願望を満たしてくれる。オリジナル版には、いまや押しも押されもせぬ売れっ子となったメリッサ・マッカーシーや、『スーパーナチュラル』で10年以上主役を張っているジャレッド・パダレッキなど多くのスターが出演していたが、リバイバル版には彼女たちを含め、ほとんどのオリジナル・キャストが登場。『ツイン・ピークス』や『プリズン・ブレイク』にもいえることだが、やはりオリジナル・キャストがどれだけ出演するかというのは、リバイバルにおいて重要なポイントだ。そのドラマの世界をより深く味わうためにも、リバイバル作品を見る際にはオリジナル版もチェックしてほしい。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

海外ドラマを牽引する売れっ子クリエーター! ライアン・マーフィの押さえておきたい代表作3選

 新作ドラマの数が急増しているアメリカTV界で、押しも押されもせぬ売れっ子がライアン・マーフィーだ。以前紹介した『アメリカン・ホラー・ストーリー』(参照記事)でアンソロジー・ドラマ人気に火をつけ、大御所女優ジェシカ・ラングを起用。監督を務めた映画『食べて、祈って、恋をして』に主演したジュリア・ロバーツと意気投合し、映画女優だった彼女を『ノーマル・ハート』でTV界に引っ張り出した辣腕ぶり。生存競争の激しい世界でアンソロジー・シリーズというひとつの潮流を生み出し、定着させた功績は大きいだろう。今、アメリカのドラマを見るなら彼の作品は外せない。なかでもまずは押さえておきたい、マーフィー作品をチョイスした。
海外ドラマを牽引する売れっ子クリエーター! ライアン・マーフィの押さえておきたい代表作3選の画像1
Huluより
 彼がブレークしたきっかけとなった作品が、2009年にスタートした青春ミュージカル・コメディ『glee/グリー』だ。オハイオの田舎町にある高校を舞台に、スクール・カーストの最下層にいる負け犬キッズたちが、合唱部でその才能を発揮し、成長していく姿を描いていく本作。合唱と言ってもここで描かれるのはパフォーマンス重視のショウ・クワイアー。生徒を演じるのはブロードウェイ出身のリア・ミシェルなど実力派がそろい、本格的なパフォーマンスを披露する。今でこそミュージカル作品は人気だが、一昔前までミュージカルといえばダサいというイメージ。そんな負のイメージを塗り替える音楽的クオリティの高さに度肝を抜かれるドラマだ。  60年代から現代に至るまでのヒットナンバーや、ミュージカル・ソング、映画のテーマ曲など幅広い楽曲がチョイスされているため、高校が舞台の青春ドラマでありながら大人世代が見ても楽しめる。普通にサントラを買いたくなるほど“聴ける”楽曲が盛りだくさんだ。もちろん音楽だけでなく、コミカルでありながら、イジメ問題やジェンダー問題など社会風刺を盛り込み、決して説教臭くならずにポジティブなメッセージを発信している点がドラマとしても秀逸なところだ。周囲からバカにされても決して自分を曲げない生徒たちがまぶしく、その何かにひたむきに打ち込む姿に思わず自分の高校時代が懐かしくなる事必至だ。
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スターチャンネルより
『アメリカン・ホラー・ストーリー』がヒットして以来、次々とアンソロジー・シリーズを手掛けているマーフィー。なかでも評価が高いのが、実録犯罪ドラマ・シリーズ第1弾『アメリカン・クライム・ストーリー/O・J・シンプソン事件』だ。1994年に元妻とその友人を殺害した罪で起訴された元人気アメフト選手O・J・シンプソンの裁判と、その結果をドラマ化。実際に起こった事件なのでその結末はすでに周知だが、当時“世紀の裁判”といわれるほど全米が注目した事件で一体何が起こったのか、判決が下るまでをリアルに描き、結末が分かっていてもその緊迫感で引き込まれてしまう。実際この事件に関しては刑事と民事で判決結果が分かれており、そうしたグレーな部分が事件から20年以上が経過しても見る者の興味を引くのだろう。もっとも、ドラマは単なる興味本位にスキャンダルを煽るものではない。“世紀の裁判”に関わる事になった人たちのそれぞれの目線で、苦悩や葛藤が深く描かれ、それをキューバ・グッディング・ジュニアやジョン・トラボルタなど実力派俳優たちが迫真の演技で大熱演。この俳優陣のアンサンブルだけでも見る価値がある。この年の賞レースを席巻したのもうなずける渾身の1作だ。  ちなみに『アメリカン・ホラー・ストーリー』の最新シリーズでは、トランプ大統領を取り上げることが決まっている。今のロシア・ゲート疑惑で世間を騒がせている様子を見ると、『アメリカン・クライム・ストーリー』で取り上げるほうが合っているような気もするが、もはやトランプ政権はアメリカにとってホラー同然ということなのだろう。
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『NIP/TUCK-マイアミ整形外科医〈ファースト〉 セット1』(ワーナー・ホーム・ビデオ)
 注目作は多々あれど、売れっ子クリエイターの原点という意味で押さえておきたいのが『NIP/TUCK』だ。『アメホラ』にしても、『アメクラ』にしても、この人の視点は基本ブラック。それは『glee/グリー』のような青春ドラマでも例外ではない。そうしたマーフィーのイジワルな視点が最大限に発揮されているのが本作なのだ。  2人の美容整形外科医を主人公に、美にとらわれ、飽くなき欲望を抱く人々の姿を痛烈に皮肉った本作は、ほかのどのマーフィー作品よりエグ味たっぷり。患者も患者なら医者も医者で、誰も彼もが己の欲に溺れ、抜き差しならない状態に陥っていく。あくまで美容整形業界を舞台にした人間ドラマなのに、まるで犯罪ドラマを見ているかのような“悪”の魅力に満ちているが、一方で良くも悪くも欲に忠実という意味では1本筋が通っており、欲望に振り回される人たちの姿もいっそ清々しく思えるほど。舞台がマイアミというのもまた、強すぎる日差しが濃い影を生むように、完璧な外見の裏に隠された人間のダークサイドを表現するのに絶妙にマッチしていて小憎らしい。自分から遠いようでいて、どこか共感が潜むそのディープな人間模様に、後のマーフィー作品の原点がしっかりと見て取れるドラマだ。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

ハイクオリティなHBO作品を独占配信! Hulu無料お試し期間中に見るべき3作

 お試し期間中にトライしたい配信サービスのオススメドラマ(参照記事12)。トリを飾る第3弾は、Huluだ。Hulu制作のオリジナル・ドラマだけでなく、日本初上陸の最新ドラマの独占配信やCS局FOXの見逃し配信FOX PLAYにも対応している点が特徴だ。 ■『エメラルドシティ』
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その中でもオススメの1本が、先日DVDがリリースされたばかりの話題のダーク・ファンタジー『エメラルドシティ』だ。かつて何度も映像化された名作『オズの魔法使い』をベースに、オズを支配する魔女や魔法使いの壮絶な覇権争いを描いていく本作。20歳の看護師・ドロシーは、巨大竜巻に巻き込まれ、異世界のオズへとたどり着く。不可抗力で東の森の女王である魔女を殺してしまった彼女は追われる身となりながら、かかしのように張り付けにされ、瀕死の状態だった記憶喪失の元兵士ルーカスと共に、魔法使いが支配するオズの都エメラルドシティを目指していく。ドロシーは大人になり、脳を求めたカカシは記憶喪失の兵士へと変貌。心を探すブリキの木こりや臆病なライオンがどのような形で登場するのかにも注目だ。原作で悪い魔女とされていた西の魔女だけでなく、オズの魔法使いも南の良き魔女とされているグリンダも、かなりいわくありげな人物となり、ダイナミックな人間ドラマが展開される。映画『ザ・セル』や『落下の王国』など、その独特の映像美で知られるターセム・シン監督がシーズン1全10話を監督している点も重要なポイント。アメリカのドラマは基本エピソードごとに監督が代わるが、一人ですべてを監督することで、そこには映画と同じように担当した監督の美学が強烈に反映される。その映像美は、やはり見応え抜群。3月から週1ペースで先行配信している本作だが、すでに全話そろったので、お試し期間中にイッキ見することも可能だ。 ■『マジシャンズ』
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 ダーク・ファンタジーでもう1本、オススメしたいのが『マジシャンズ』だ。レヴ・グロスマン原作の世界的ベストセラー・ファンタジーを映像化した本作は、大人版ハリー・ポッターと呼ばれる注目作。子ども向けのファンタジー小説『フィロリー』シリーズに夢中で大学生になっても周囲に馴染めない主人公クエンティンが、その魔法の才能を認められ、魔法大学ブレイクビルズに入学したことから始まる成長物語だ。最初からその才能を大いに発揮し、(敵も多いが)人気者だったハリー・ポッターと違い、本作の主人公クエンティンは、完全にぼっちポジション。才能はあれど、自分になかなか自信が持てずに能力をうまく発揮することができない。しかしそんな彼だからこそ、謎の怪人ビーストに追われ、たびたび窮地に陥りながら不器用に少しずつ成長していく姿は、魔法というチートな能力者ぞろいの中でよりいっそう共感を深めていく。魔法世界を舞台にした青春ドラマというラノベ的な舞台でありながら、なかなかにエグいビジュアルや人物描写で、お子様向けのファンタジーとは一線を画すドラマに仕上がっているのもここでオススメしたいポイントだ。 ■『ニュースルーム』
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 ファンタジーばかりオススメしてもなんなので、最後の1本は社会派ドラマを。新作ドラマの独占配信だけでなく、アメリカのハイクオリティドラマの代名詞であるHBO作品の独占配信をしているのもHuluの大きな特徴。以前紹介したダーク・ファンタジーブームを決定付けた『ゲーム・オブ・スローンズ』ほか、これまで未上陸だった秀作ドラマも続々配信されている。中でもイチオシなのが、WOWOWで放送されたきり、DVD化もされていない隠れた名作『ニュースルーム』だ。アメリカン・ドラマ史に残る傑作『ザ・ホワイトハウス』を手掛け、映画『ソーシャル・ネットワーク』でアカデミー賞脚色賞を受賞したアーロン・ソーキンが製作総指揮・脚本を務める本作は、ニュース専門のケーブル局ACNを舞台に、ニュース番組『ニュース・ナイト』のアンカー、ウィル・マカヴォイを中心とした人間模様を描いていく。ドラマで扱うのはすべて現実に起こったニュースばかり。その事件が起こった時、報道に携わる人間たちがいかにしてその出来事に向き合い、どういう形でニュースにしていくのか、ニュース番組の製作の裏側をスリリングに描いていく。熾烈な視聴率争いや強烈な出世欲で激しくぶつかり合いながらも真実を追求していく彼らの姿を通して描かれるニュースの世界は、ソーキンらしい理想主義に満ちている。現実にはそう理想を追求できるわけでもなく、どこかで妥協していくことも多い。それでも真摯に自らの職務に向き合う彼らを見ていると、明日も仕事頑張ろうと、ほんのりとした勇気が湧いてくる。少し前の作品ではあるが、GWが終わってまた仕事に追われる日常に戻る今だからこそ、ぜひとも見てほしいドラマだ。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

ハイクオリティなHBO作品を独占配信! Hulu無料お試し期間中に見るべき3作

 お試し期間中にトライしたい配信サービスのオススメドラマ(参照記事12)。トリを飾る第3弾は、Huluだ。Hulu制作のオリジナル・ドラマだけでなく、日本初上陸の最新ドラマの独占配信やCS局FOXの見逃し配信FOX PLAYにも対応している点が特徴だ。 ■『エメラルドシティ』
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その中でもオススメの1本が、先日DVDがリリースされたばかりの話題のダーク・ファンタジー『エメラルドシティ』だ。かつて何度も映像化された名作『オズの魔法使い』をベースに、オズを支配する魔女や魔法使いの壮絶な覇権争いを描いていく本作。20歳の看護師・ドロシーは、巨大竜巻に巻き込まれ、異世界のオズへとたどり着く。不可抗力で東の森の女王である魔女を殺してしまった彼女は追われる身となりながら、かかしのように張り付けにされ、瀕死の状態だった記憶喪失の元兵士ルーカスと共に、魔法使いが支配するオズの都エメラルドシティを目指していく。ドロシーは大人になり、脳を求めたカカシは記憶喪失の兵士へと変貌。心を探すブリキの木こりや臆病なライオンがどのような形で登場するのかにも注目だ。原作で悪い魔女とされていた西の魔女だけでなく、オズの魔法使いも南の良き魔女とされているグリンダも、かなりいわくありげな人物となり、ダイナミックな人間ドラマが展開される。映画『ザ・セル』や『落下の王国』など、その独特の映像美で知られるターセム・シン監督がシーズン1全10話を監督している点も重要なポイント。アメリカのドラマは基本エピソードごとに監督が代わるが、一人ですべてを監督することで、そこには映画と同じように担当した監督の美学が強烈に反映される。その映像美は、やはり見応え抜群。3月から週1ペースで先行配信している本作だが、すでに全話そろったので、お試し期間中にイッキ見することも可能だ。 ■『マジシャンズ』
ハイクオリティなHBO作品を独占配信! Hulu無料お試し期間中に見るべき3作の画像2
 ダーク・ファンタジーでもう1本、オススメしたいのが『マジシャンズ』だ。レヴ・グロスマン原作の世界的ベストセラー・ファンタジーを映像化した本作は、大人版ハリー・ポッターと呼ばれる注目作。子ども向けのファンタジー小説『フィロリー』シリーズに夢中で大学生になっても周囲に馴染めない主人公クエンティンが、その魔法の才能を認められ、魔法大学ブレイクビルズに入学したことから始まる成長物語だ。最初からその才能を大いに発揮し、(敵も多いが)人気者だったハリー・ポッターと違い、本作の主人公クエンティンは、完全にぼっちポジション。才能はあれど、自分になかなか自信が持てずに能力をうまく発揮することができない。しかしそんな彼だからこそ、謎の怪人ビーストに追われ、たびたび窮地に陥りながら不器用に少しずつ成長していく姿は、魔法というチートな能力者ぞろいの中でよりいっそう共感を深めていく。魔法世界を舞台にした青春ドラマというラノベ的な舞台でありながら、なかなかにエグいビジュアルや人物描写で、お子様向けのファンタジーとは一線を画すドラマに仕上がっているのもここでオススメしたいポイントだ。 ■『ニュースルーム』
ハイクオリティなHBO作品を独占配信! Hulu無料お試し期間中に見るべき3作の画像3
 ファンタジーばかりオススメしてもなんなので、最後の1本は社会派ドラマを。新作ドラマの独占配信だけでなく、アメリカのハイクオリティドラマの代名詞であるHBO作品の独占配信をしているのもHuluの大きな特徴。以前紹介したダーク・ファンタジーブームを決定付けた『ゲーム・オブ・スローンズ』ほか、これまで未上陸だった秀作ドラマも続々配信されている。中でもイチオシなのが、WOWOWで放送されたきり、DVD化もされていない隠れた名作『ニュースルーム』だ。アメリカン・ドラマ史に残る傑作『ザ・ホワイトハウス』を手掛け、映画『ソーシャル・ネットワーク』でアカデミー賞脚色賞を受賞したアーロン・ソーキンが製作総指揮・脚本を務める本作は、ニュース専門のケーブル局ACNを舞台に、ニュース番組『ニュース・ナイト』のアンカー、ウィル・マカヴォイを中心とした人間模様を描いていく。ドラマで扱うのはすべて現実に起こったニュースばかり。その事件が起こった時、報道に携わる人間たちがいかにしてその出来事に向き合い、どういう形でニュースにしていくのか、ニュース番組の製作の裏側をスリリングに描いていく。熾烈な視聴率争いや強烈な出世欲で激しくぶつかり合いながらも真実を追求していく彼らの姿を通して描かれるニュースの世界は、ソーキンらしい理想主義に満ちている。現実にはそう理想を追求できるわけでもなく、どこかで妥協していくことも多い。それでも真摯に自らの職務に向き合う彼らを見ていると、明日も仕事頑張ろうと、ほんのりとした勇気が湧いてくる。少し前の作品ではあるが、GWが終わってまた仕事に追われる日常に戻る今だからこそ、ぜひとも見てほしいドラマだ。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

巨匠監督や人気俳優を続々期用! Amazonプライム無料お試し期間中に見るべき3作

 お試し期間中にトライしたい、配信サービスのオススメドラマ第2弾はAmazon編。オーケストラの舞台裏を描いたコメディ『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』や中年トランスジェンダーを主人公にしたファミリー・コメディ『トランスペアレント』など、賞レースで高く評価される作品も多いAmazonのオリジナル・シリーズ。先月には『ウディ・アレンの6つの危ない物語』が配信スタートしたように、巨匠監督・人気俳優などを起用したシリーズにも積極的だ。 ■『ナイト・マネジャー』
 その中でもオススメなのが、スパイ・サスペンス『ナイト・マネジャー』。ジョン・ル・カレの同名小説を元に、舞台を現代に移した本格ハードボイルド作品だ。主人公のジョナサン・パインを演じるのは、映画『マイティ・ソー』シリーズで人気急上昇の英国俳優トム・ヒドルストン。彼の宿敵リチャード・ローパーは『Dr.HOUSE』のヒュー・ローリーという、豪華キャストになっている。  元英国軍兵士でホテルの夜間マネジャーをしていたパインは、かつてカイロのホテルで有力者の愛人と親しくなり、ローパーの違法な武器取引の情報を手に入れ、英国情報機関に通報するが、それが漏れ、愛人は殺害されてしまう。4年後、スイスのホテルで働いていたパインは、ローパーに復讐するため再び情報機関に通報し 、スパイとして潜入する。息子ダニエルの誘拐事件を仕組み、彼を救出することでローパーの信頼を得たパインだが、彼の動向を探るうち、愛人ジェドと惹かれ合っていく……。  綱渡りのような潜入捜査を続ける パインと、大物武器商人であるローパーとの緊張感あふれるやりとり、そんな中で繰り広げられるローパーの愛人ジェドとのロマンス、ル・カレの原作が持つカラーを見事に写し取ったハードボイルドな作風と、実力派俳優たちの演技バトルに、くぎ付けになること間違いなしの 作品だ。 ■『スニーキー・ピート』
 もう少しライトな作品が好みなら、クライム・サスペンス『スニーキー・ピート』がオススメだ。近年のアメリカン・ドラマの中でも傑作の『ブレイキング・バッド』のライアン・クランストンが製作総指揮を務める本作は、凶悪なギャングに追われる一人の詐欺師の姿を描いた物語。主人公の天才詐欺師マリウスを演じるのは映画『アバター』などに出演している個性派俳優ジョヴァンニ・リビシ。ある詐欺事件により収監されていたマリウスは、疎遠になったという祖父母の話を、囚人仲間のピートから毎日のように聞かされていたが、仮出所直前、ギャングのボスが自分を追っていることを知り、ピートになりすまして彼の祖父母の家に転がり込む。保釈保証人をしている彼らの仕事を手伝うことになったピートことマリウスだったが、弟がギャングのヴィンスに捕らえられ、身代金を用立てなければならなくなる。保釈保証人の仕事を手伝うことで日常的に警察関係との関わりができてしまうという危険な日々を送る中、さらに弟救出のための身代金を工面しなければならない二重の綱渡り生活に陥ったマリウスが、詐欺師としての頭脳を駆使して相手を出し抜いていくさまが小気味良い。製作総指揮のブライアン・クランストン 演じるヴィンスも要所要所で抜群の存在感を発揮し、オフビートなコミカルさとスリリングな攻防が絶妙にミックスされたストーリーで一気にハマること間違いなし。 ■『弁護士ビリー・マクブライド』
 アメリカン・ドラマの中でも人気が高い法廷ドラマにも、オススメがある。『弁護士ビリー・マクブライド』はビリー・ボブ・ソーントンとウィリアム・ハートというアカデミー賞俳優が競演する法廷ドラマだ。ソーントン演じる主人公ビリーは、かつては大手法律事務所の創立パートナーとして法廷でも一目置かれた弁護士だったが、事務所を辞めた今ではアルコールに溺れる日々を送っている。そんな彼の元に、ひょんなことから大手兵器製造企業従業員ラーソンの爆死事件の訴訟が舞い込んでくる。相手企業の弁護は、彼の古巣であるクーパーマン・マクブライドだった。クーパーマンは打倒ビリーに執念を燃やし、執拗に彼を追い詰める。事件を隠ぺいしようとする企業側のもくろみで、周辺がどんどんキナ臭くなっていく中、ビリーは新米弁護士パティとたった2人で巨大企業に挑んでいく。  弁護士ドラマを数多く手掛けてきたデヴィッド・E・ケリーとジョナサン・シャピロが制 作しているだけに、法廷闘争も見ものだが、それ以上に強烈なのが個々のキャラクター。ドラマ『FARGO/ ファーゴ』でも怪演を見せたソーントンは、今作では絶妙な枯れ具合で、うらぶれた元エリート弁護士を熱演。そんな彼と対立するクーパーマンを演じるハートは、執念深く、かなり変態なキャラクターを異様な存在感で演じ切る。デヴィッド・E・ケリーが描くドラマのキャラクターには変わり者が多いが、今作はまさにそれが集約されている。法廷ドラマとしても、人間ドラマとしても、 非常に見応えのある作品だ。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin

巨匠監督や人気俳優を続々期用! Amazonプライム無料お試し期間中に見るべき3作

 お試し期間中にトライしたい、配信サービスのオススメドラマ第2弾はAmazon編。オーケストラの舞台裏を描いたコメディ『モーツァルト・イン・ザ・ジャングル』や中年トランスジェンダーを主人公にしたファミリー・コメディ『トランスペアレント』など、賞レースで高く評価される作品も多いAmazonのオリジナル・シリーズ。先月には『ウディ・アレンの6つの危ない物語』が配信スタートしたように、巨匠監督・人気俳優などを起用したシリーズにも積極的だ。 ■『ナイト・マネジャー』
 その中でもオススメなのが、スパイ・サスペンス『ナイト・マネジャー』。ジョン・ル・カレの同名小説を元に、舞台を現代に移した本格ハードボイルド作品だ。主人公のジョナサン・パインを演じるのは、映画『マイティ・ソー』シリーズで人気急上昇の英国俳優トム・ヒドルストン。彼の宿敵リチャード・ローパーは『Dr.HOUSE』のヒュー・ローリーという、豪華キャストになっている。  元英国軍兵士でホテルの夜間マネジャーをしていたパインは、かつてカイロのホテルで有力者の愛人と親しくなり、ローパーの違法な武器取引の情報を手に入れ、英国情報機関に通報するが、それが漏れ、愛人は殺害されてしまう。4年後、スイスのホテルで働いていたパインは、ローパーに復讐するため再び情報機関に通報し 、スパイとして潜入する。息子ダニエルの誘拐事件を仕組み、彼を救出することでローパーの信頼を得たパインだが、彼の動向を探るうち、愛人ジェドと惹かれ合っていく……。  綱渡りのような潜入捜査を続ける パインと、大物武器商人であるローパーとの緊張感あふれるやりとり、そんな中で繰り広げられるローパーの愛人ジェドとのロマンス、ル・カレの原作が持つカラーを見事に写し取ったハードボイルドな作風と、実力派俳優たちの演技バトルに、くぎ付けになること間違いなしの 作品だ。 ■『スニーキー・ピート』
 もう少しライトな作品が好みなら、クライム・サスペンス『スニーキー・ピート』がオススメだ。近年のアメリカン・ドラマの中でも傑作の『ブレイキング・バッド』のライアン・クランストンが製作総指揮を務める本作は、凶悪なギャングに追われる一人の詐欺師の姿を描いた物語。主人公の天才詐欺師マリウスを演じるのは映画『アバター』などに出演している個性派俳優ジョヴァンニ・リビシ。ある詐欺事件により収監されていたマリウスは、疎遠になったという祖父母の話を、囚人仲間のピートから毎日のように聞かされていたが、仮出所直前、ギャングのボスが自分を追っていることを知り、ピートになりすまして彼の祖父母の家に転がり込む。保釈保証人をしている彼らの仕事を手伝うことになったピートことマリウスだったが、弟がギャングのヴィンスに捕らえられ、身代金を用立てなければならなくなる。保釈保証人の仕事を手伝うことで日常的に警察関係との関わりができてしまうという危険な日々を送る中、さらに弟救出のための身代金を工面しなければならない二重の綱渡り生活に陥ったマリウスが、詐欺師としての頭脳を駆使して相手を出し抜いていくさまが小気味良い。製作総指揮のブライアン・クランストン 演じるヴィンスも要所要所で抜群の存在感を発揮し、オフビートなコミカルさとスリリングな攻防が絶妙にミックスされたストーリーで一気にハマること間違いなし。 ■『弁護士ビリー・マクブライド』
 アメリカン・ドラマの中でも人気が高い法廷ドラマにも、オススメがある。『弁護士ビリー・マクブライド』はビリー・ボブ・ソーントンとウィリアム・ハートというアカデミー賞俳優が競演する法廷ドラマだ。ソーントン演じる主人公ビリーは、かつては大手法律事務所の創立パートナーとして法廷でも一目置かれた弁護士だったが、事務所を辞めた今ではアルコールに溺れる日々を送っている。そんな彼の元に、ひょんなことから大手兵器製造企業従業員ラーソンの爆死事件の訴訟が舞い込んでくる。相手企業の弁護は、彼の古巣であるクーパーマン・マクブライドだった。クーパーマンは打倒ビリーに執念を燃やし、執拗に彼を追い詰める。事件を隠ぺいしようとする企業側のもくろみで、周辺がどんどんキナ臭くなっていく中、ビリーは新米弁護士パティとたった2人で巨大企業に挑んでいく。  弁護士ドラマを数多く手掛けてきたデヴィッド・E・ケリーとジョナサン・シャピロが制 作しているだけに、法廷闘争も見ものだが、それ以上に強烈なのが個々のキャラクター。ドラマ『FARGO/ ファーゴ』でも怪演を見せたソーントンは、今作では絶妙な枯れ具合で、うらぶれた元エリート弁護士を熱演。そんな彼と対立するクーパーマンを演じるハートは、執念深く、かなり変態なキャラクターを異様な存在感で演じ切る。デヴィッド・E・ケリーが描くドラマのキャラクターには変わり者が多いが、今作はまさにそれが集約されている。法廷ドラマとしても、人間ドラマとしても、 非常に見応えのある作品だ。 ●まくた・ちひろ 映画・海外ドラマライター。『日経エンタテインメント!海外ドラマSpecial』『ゲーム・オブ・スローンズ パーフェクト・ガイド』(日経BP社)、『海外ドラマTVガイド WATCH』(東京ニュース通信社)、『映画秘宝EXドラマ秘宝vol.2~マニアのための特濃ドラマガイド』(洋泉社)等に寄稿。Twitterアカウントは@charumin