この1年ほど芸能ニュースで取り上げられることの多い、長嶋一茂のプチブレーク。「2018年の出演本数は、帯番組がないのに250本超え」「元プロ野球選手とは知らない世代からも人気」「“2世コンビ”石原良純との番組が絶好調」……と話題には事欠かない。
平成から令和にかけてのテレビ界隈でも、“歯に衣着せぬ一茂発言”は絶好調だった。その中での収穫は、彼の“本拠地”はやっぱりスポーツなんだな、と再認識できたこと。一茂目線の政治経済トークもお坊ちゃんあるあるも面白いのは間違いないが、深みが一段違うのだ。
28日放送の関西テレビ『マルコポロリ!』では、1994年5月18日の広島戦で巨人・槙原寛己投手が達成した“平成唯一の完全試合”について衝撃告白。「実は自分の送球ミスで広島側にセーフとなるプレーがあった。アウトに見せた(一塁手)落合(博満)さんがすごい」と、平成スポーツの金字塔に今さらながらのオチをつけていた。
また、30日夜のテレビ朝日系『羽鳥慎一モーニングショー夜の特大版 今夜決定!平成ニッポンのヒーロー総選挙』では、平成初期のサッカーブームに関して、「野球選手としては、サッカーの台頭は本当に恐ろしかった」「ドーハの悲劇、本当に『負けろ負けろ』とずっと思っていた。あれで勝ってもらっちゃ、野球の人気が負けちゃう」と、当時の心境を吐露していた。
特に後者の「ドーハで負けろと思っていた」発言は、昔からの一茂ウォッチャーからしてみても、なかなか味わい深いもの。というのも、「世間とはズレても本人の中ではブレない男」が売りの長嶋一茂であるにもかかわらず、サッカーに関してのスタンスだけは、ここ数年でブレがあったからだ。
そもそも論でいえば、「ドーハで負けろと思っていた」発言は、別に今回初めて明かした話ではなく、昔からずっと言ってきたこと。昭和気質を残す野球人・一茂としては、サッカーは敵対スポーツという立ち位置だったわけだ。それは平成後期になっても変わらず、2011年のなでしこブームの際にも、朝の情報番組『モーニングバード』(テレビ朝日系 ※現『モーニングショー』の前身番組)で司会の羽鳥アナからサッカーの話題を振られても、「もうその話はいいじゃないですか」と語ろうとすらしなかった。
それが3年後の14年、何かのニュースで羽鳥アナからサッカーを振られた際、「サッカーですか? 大好きです!」と何食わぬ顔で回答。朝食で飲んでいた牛乳を吹きそうになるくらい驚いたことをよく覚えている。この頃から、すでに一部で「朝ワイドの一茂コメントは面白い」と話題になっていただけに、「さしもの一茂でも、人気者になると過去の問題発言もオブラートに包むんだな」と思ったものだった。
でも、一茂はやっぱり一茂だったと再認識させてくれた平成最後の日。ここ最近の“プチブレーク”によって磨かれたトークスキルによるものなのか、しっかり勉強を重ねたのか、サッカーについての知識も備えつつ、「野球人・一茂」から見てどんな位置付けだったのか、という、以前のただ嫌っていた視点からもう一段深いトークになっていた。いずれにせよ、自分の過去の発言に縛られることなく、そのとき思った「正しいこと」「面白いと思うこと」に正直なだけなのだ。そこにこそ、長嶋一茂の魅力があるのだと思う。
そんな「変化する一茂」を見せつつも、この日は、元日本代表・武田修宏の過去の栄光に関して、「あのたけちんが? それはちゃんと調べ直してよ。今、見る影もないよ(笑)」と発言して笑いを誘う傍若無人ぶりも健在。松岡修造に対して、「修造、お前がさっき言ったのってなんだっけ? わかんないよ」と先輩風を吹かせるなど、スポーツ界の新ご意見番たる風格を感じさせる一幕も。最近はバラエティか情報番組ばかりの出演だが、今の長嶋一茂にこそスポーツ番組を任せてみたい、と妄想してしまう。
中でも期待したいのは、空手のスポークスマンとしての働きだ。今年1月に放送されたTBS系『新春!炎の体育会TV』では、昨年11月に52歳にして極真空手の公式大会「全関東空手道選手権大会」に挑戦し、「50歳以上+80キロ以上の部」で優勝を果たした様子が描かれていた。
空手といえば、来年に迫った東京オリンピックの新種目(編註:「寸止め」ルールを採用)。ただ、日本にはメダル候補がいるにもかかわらず、今ひとつ話題になりにくい競技でもある。そんな空手の魅力について、20年以上の競技経験者である長嶋一茂ならどう表現してくれるのか? まだまだテレビでは空手について語る場面が少ないだけに、大いに期待したい。
(文=オグマナオト)