オタクばかりが住むアパート天水館を舞台に、そこで暮らすクラゲオタク・月海(芳根京子)の恋模様を描く月9『海月姫』(フジテレビ系)の第8話は、視聴率5.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と最低記録をギリギリ回避。天水館が買収される絶体絶命のピンチに現れた超大金持ちは敵か味方か?
(前回までのレビューはこちらから)
■月海がシンガポール行きを決意
世界を股にかけるアパレルブランド社長のカイ・フィッシュ(賀来賢人)は3億円出す代わりにジェリーフィッシュ(月海がデザインを手がける立ち上げたばかりのブランド)のドレスやデザインだけでなく、「他にない不思議な美的感覚をもっている」「0から1を生み出すことができる」デザイナーの月海ごと欲しいという。
カイの本拠地・シンガポールに連れて行くと聞き、蔵之介(瀬戸康史)は「月海のことも、あの服のこともわかっていない」と英語で反論、譲らない。
ジェリーフィッシュの出店スペースに戻った2人を待ち構えていたのは、ついに天水館の売買契約書を手に入れ、鼻高々のデベロッパー・稲荷(泉里香)。引っ越し資金50万出すから即退去しろと詰め寄る。
金もないし、住むところも奪われかけ、八方ふさがりの天水館オタク住人(尼~ず)たち。
一方、異母兄弟の兄・蔵之介の実母であるリナ(つまり父親の元愛人)にジェリーフィッシュ(蔵之介がプロデューサー)のドレスを届けるためミラノへ来ている修は、月海に渡す婚約指輪を作ろうとイタリア滞在を延期。
そうと知らない月海は、助けを乞おうと鯉淵宅を訪ねるが、会えないどころか修はスマホをなくしており、連絡すらつかない。修の両親(慶一郎・容子/北大路欣也・床嶋佳子)に、それとなく助けを求めるが「残念だけどね、私にもどうすることもできないよ」と慶一郎。修のフィアンセとされている月海は、持ち前の人の良さで両親に好印象を残すが、慶一郎にダメな長男だと揶揄される蔵之介を必死にフォローする姿は何を意味するのか。
失意の尼~ずメンバーは、お別れ会で泥酔。翌朝、稲荷が引っ越し業者を引き連れ天水館を強襲、力ずくで追い出しにかかるが、そこへ会社から急きょ買収が中止になったとの連絡が入る。
前日「ここでしか生きられない人たちの集まりでしたから」と悲しそうに語るジジ(木南晴夏)の言葉を聞き、月海がシンガポールに行くことで天水館を救おうとカイに連絡、要求を飲んでいたのだ。
「私さえ向こうに行けば、みなさんがここに残ることができ、立ち退かなくてもよくなりますので」
こう言って一人シンガポールに行こうとする月海を、尼~ずは引き止めるどころか「行ってまいれ」(まやや・内田理央)「天水館のためよ、がんばってね」(千絵子・富山えり子)と送り出す。その薄情ぶりにガッカリな蔵之介だけは、なんとか止めようとするも、迎えのリムジンに乗り月海はいなくなる。
■蔵之介と稲荷が手を組む?
左折しにくそうな長いリムジンで寂れた漁港に連れて来られた月海は、そこでなぜか釣りをしながらカイの身の上を聞くことに。親に捨てられ施設で育ったこと、昔こうして釣った魚を、みんなで分け合って食べたこと。
その後、気のいい漁労関係者にすんなり混じって、明らかに冷凍されてたような色あいの焼き魚を齧りつつ2人の距離がちょっと近づく。カイは「君が世界を変えるんだ」と、とことん本気。
戻ってきたカイの元に詰め寄る「昨日の敵は今日の友」蔵之介と稲荷コンビ。往年のジャンプを思わせるライバル同士の力の合わせっぷり。ピッコロと悟空が手を組んだ時のような期待をしたものの、あっさり警備員に取り押さえられ、あげくカイに「私は月海さんを一流にする。貴方にそれができますか?」と圧倒的な自信を突きつけられる始末。
パスポートができるまでと月海が送り込まれたのは、クリエーターたちが集まるという秘密のサロン・キューブ。「個人が持つ感性を高めることを目的として集まっている」らしいが、ただのオシャレ無職の合コン会場に見えなくもない。中には、今をときめくにゃんこスター(OPを歌う)も本人役で混在。ザ・ワタナベパワー。ちなみに稲荷の手下・佐々木として短い出番ながら好演が光る元アクシャンの安井順平もワタナベ所属だ。
■ずぶ濡れで抱かれる月海
今回、月海がいなくなったことで、月海に対する蔵之介の気持ちがどんどん大きくなる。
「ここまでこれたのは、あいつがいたからだ」「なのに、あいつだけ犠牲にするなんて俺にはできない」と、月海を探すため運転手・花森(要潤)に頭を下げる様子や、ようやく帰国した修に「なんでちゃんと捕まえておかなかったんだ」「俺は諦めない。どこにいようと、どんな遠くに行こうと俺はあいつを捕まえる」と語る様子など、もう完全に恋。
それでいて、月海のいるホテルに忍び込んでまで「あんなに真っ直ぐ好きになってくれるやつ他にいないからな?」「天然記念物みたいなもんだよ、あいつは」と修のフォローをするなど、じれったかった蔵之介だが、酔ってシャワーで倒れた勢いのまま「行くな、どこにも行くな月海!」と、介抱しようとする月海を強く抱きしめる。シャワーも止めずにずぶ濡れで抱き合う姿がエロし。
だが、カイはカイで、「今夜は彼らの最後のパーティだ」と蔵之介が来ているのを知ってて泳がせつつ、次の日、蔵之介が寝ている隙に月海を連れだし「仲間なんてこの世界ではなんの意味もない、早く切り捨てたほうがいい」と迫るなど、余裕をみせる。ちなみに蔵之介たちはセックスとかしていないのかと勘ぐったが、してない模様です。
■尼~ずの真意
気になるのは、月海を「売った」尼~ずたちだが、なぜあの時止めなかったんだと蔵之介に問い詰められると「月海殿の才能が買われたのだぞ」(まやや)「わしらと違ってあいつには才能がある」(ばんば)「みんな全然平気なんかじゃないわよ! 寂しいに決まってるじゃない! 悲しいに決まってるじゃない!」(千絵子)と、卑屈さゆえの行動だったことが判明。
月海にこの気持ちを伝えるため彼らがとった行動は、ジジの愛する中原丈雄(本人役)の『たけ散歩』の生放送ロケに見切れる作戦。蔵之介や修、花森らとともに「月海さん帰って来てください」「尼~ずは永遠に不滅」と書かれたプラカードを持ち、気持ちを叫ぶ仲間の姿を月海は偶然目撃する。偶然すぎるけど。
そこで皆の気持ちを知った月海は号泣。尼~ずのためならと自分を騙していた気持ちが崩れる中、次週へ。
■次回が最終回?
次回予告には「ラストミッション」の文字が。普通なら、あと2話あるはずだが、視聴率的に打ち切りもあり得るだけに、今回の数字次第でどちらにもできる予告にしている気がする。十分来週終われるお膳立てが整ってしまっているのが気になってしまうが、なんとか持ちこたえていただきたい。
今回、なんと言っても見所は蔵之介の覚醒だが、脇のサポートも光っていた。
蔵之介に頭を下げられ「なる早で居場所調べて欲しい“ちゃんねー”いるんだけど?」と、ちゃらい口調で仲間に電話する花森は、ドラマ花森史上かつてなくかっこよかった。
「正直、前々から兄と月海さんとの間に固い絆のようなものを感じていて、僕が入り込んじゃいけないんじゃないかって」と気づいてしまった悲しい修の背中を「んなもん簡単でしょ? 好きか嫌いかどっち?」「だったらそのダサい指輪で止めて来なさいよ」と強く押してやる咬ませ犬的な稲荷もイカしていた。
原作ではカイ・フィッシュが出てからそこそこ長いのだが、ボリューム的にも内容的(具体的なファッション業界の内情)にも無理だろし、どうまとめ上げるのか。もともと漫画の勢いで乗り切れていた整合性が実写だとどうしても気になってしまう部分も多いのだが、それを超える気持ちよさを最後に持ってきて欲しい。とりあえず、修と稲荷がくっつくことを勝手に強く希望して来週を待ちます。
(文=柿田太郎)