『岩窟王』の名で知られる名作を現代の日本を舞台に焼き直したドラマ『モンテ・クリスト伯 ─華麗なる復讐─』(フジテレビ系)。無実の罪で収監されたのち脱獄、巨額の富と知性を手に舞い戻ったモンテ・クリスト・真海(ディーン・フジオカ)が仕掛ける復讐はいよいよ本格化。
第7話は、真海の復讐相手の一人である南條幸男(大倉忠義・関ジャニ∞)に重い鉄槌が下される他、大きな展開が。視聴率は5.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、ほぼ横ばい。放送時ネットでもずいぶん話題にはなってるようだが、登場人物の関係性が複雑なため、なかなか途中から新規参入しにくいのかもしれない。
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■真海=暖だと気付いていたすみれ
13年前のショーン・リー(南條の恩人で香港の有名俳優)殺害の情報を売ったと思われ、香港マフィア「ヴァンパ」に自宅に押し入られた南條。妻・すみれ(山本美月)と娘・明日花を人質に取られ、追い込まれた南條は自分が裏切っていないことを証明するため奔走。情報を売った「真犯人」が真海であると突き止め、ヴァンパ側に伝える。
ヴァンパ一味が去った自宅で、すみれが南條から聞かされたのは、香港時代に借金を返すためヴァンパと共にショーンの自宅に忍び込み、そこで予定外に帰宅したショーン夫妻を殺してしまったという過去。南條が手を下したわけではないが、見殺しにしたような格好だと告げる。
そしてこの情報を元に南條を潰そうとしているのが真海だと聞かされ、絶句するすみれ。
「一緒に乗り切ろう、今度は私が幸男を助ける番だよ。幸男がやったこと、私も抱えて生きていく。一生償っていこう」
当時の夫・暖(真海)が突然逮捕、のちに獄中死したと伝えられ、失意の底にいたすみれを支えたのは南條(幸男)だ。その南條を今度は自分が支えようと励ますすみれだが、南條こそが「暖がテロ組織とつながっている」と嘘の通報をした「犯人」であることをまだ知らない。
南條を心配するあまり、すみれは真海の元を訪れ、そしてついに本当のこと口にする。
「主人は悪くないんです。悪いのは貴方のことを待っていることができなかった私だよ……暖」
「暖なんでしょ? 死んだって聞いてたから信じられなかったから、わかったよ、最初に会った時から」
真海=暖だとわかっていたことを、ようやく打ち明ける。さらに、暖の母・恵(風吹ジュン)は孤独死しているのだが、それも、すみれが「テロリストの妻」だと責められないように、恵がわざと距離を取り会わなくなった末に起きた事件だという「真相」も明かされた。
ずっと無言で背を向け聞いていた真海(暖)だが、「幸男は悪くない、恨むなら私を恨んで」と必死に南條をかばうすみれの言葉に耐え切れず、反論する。
「何もわかってない、悪いのは幸男なんだよ!」
「紫門暖が警察に捕まるよう嘘の通報をしたのは南條幸男です。南條幸男が紫門暖を『殺し』たんです」
一瞬、「暖」としてのパーソナリティも垣間見えたが、現在「真海」である彼は、あくまで「暖」は牢獄で死んでいる、というスタンスですみれに接している。頑なにすみれに会おうとしなかったのは、自分の復讐の気持ちが揺らぐのを防ぐためだったのだろう。
真実を知ったまま、すみれは南條と合流し、夫妻で受賞したベストパートナー授賞式へ。
しかし壇上での南條の挨拶の最中、「ショーン・リー殺害に南條が関わっている」との速報が駆け巡り、授賞式は一転、追及の場に。壇上でずっとこれまで黙っていたすみれは、このタイミングでいきなり南條と報道陣を前に離婚する旨を告げる。舞台裏で、すみれに一番知られたくなかった秘密(暖をハメたこと)を知っていることを告げられた南條は呆然。南條はドラマも降板、CM違約金も発生と、全てを失った。
■首を吊る南條幸男
南條のマネジャー・江田愛梨(桜井ユキ)は、その日で退職することを告げつつ、自分が両親殺害の一部始終をを見ていた、当時幼かったショーンの娘・エデルヴァであると正体を明かす。
「ショーン・リー一家を殺したのが自分だと書いて責任を取らないと、奥さんと娘さんがヴァンパに狙われますよ?」
「あの後、知らない街の汚い部屋に閉じ込められて、汚い男たちの相手を毎日毎日させられた」
自分の壮絶な過去を語りつつ、南條に真相を交えた遺書を書くように言い残し出て行く。
ずっと落ち着いた口調だが、正直、かなり憎んでいる前振りもあったし、実際、親を殺され、その後売り飛ばされ男の相手をさせられたという事実も踏まえると、もっと憎しみを爆発させるものかと思いきや、唯一広東語で「人生の全てに懺悔しろ」と言った時以外、ずいぶんあっさりとした印象。
この後、南條は首を吊って自殺するのだが、江田が何も知らない南條の娘・明日花からの電話に、なんとも言えない表情を浮かべていたのは、かつての親を亡くした幼い自分と重ねていたからなのだろうか。
原作でも、南條(フェルナン)は妻と子に出て行かれ自殺するのだが、ドラマで一番違うのは、江田(エデ)が南條のマネジャーとして随時行動を共にしていたこと。そして最後、南條が首を吊った直後に、慌てて江田が戻ってきたのは何を意味しているのか? もしかしたら助けているのか?
長く接していただけに(特に娘に)情がわいた可能性はありそうだが、どうなったのか気になる。
南條が書き残した内容は、遺書というよりすみれへの想いを綴った純粋すぎるラブレター。
「僕はずっと君のことが好きでした」
「君を守ること、君を幸せにすること、それだけが僕の夢でした。それだけが僕の人生でした」
「君を守れなくてごめんなさい」
回想での、暖がいなくなり落ち込むすみれに南條が想いを告げるシーンでも、
「これから一生暖ちゃんのこと思い続けてていいから、俺はずっと都合のいい『お兄ちゃん』でいい。俺はただ、すみれに生きてて欲しいだけなんだよ」
おそらく、すみれを想いすぎるあまり、南條の中では暖を裏切った事実は、都合よく、なかったことになっていたのかもしれない。
南條の殺害関与報道を受け、暖を陥れた「共犯」である神楽清(新井浩文)は「あいつ生きてる」、入間公平(高橋克典)は「やっぱりそういうことか」と、共に紫門暖のことを思い浮かべるのだが、南條は最後まで、真海が暖だとは疑いもしなかった。純粋すぎる想いが彼の中で、暖を本当に「殺し」ていたからだろう。
ちなにみヴァンパが真海邸に襲ってきたものの、すでにヴァンパ内部とつながっていた真海は、仲間割れを起こさせ、事なきを得る。
原作でも、盗賊の親玉ルイジ・ヴァンパ(こちらは個人名)とモンテ・クリスト伯(真海)はつながっており、捕らえられたフェルナン(南條)の息子(ドラマでは娘)を助けたりしている。
■今回も瑛里奈の悪魔ぶりが
祖父である貞吉(伊武雅人)が怪しんでいるのを知り、貞吉のお手伝いの女性も(おそらく)殺害、これを機に自分の殺人鬼である一面を貞吉にだけさらけ出しはじめた入間瑛里奈(山口紗弥加)。美蘭(岸井ゆきの)を貞吉が殺したように見せかけて毒殺し、さらにその貞吉も自殺に見せかけて殺すと、貞吉に予告する。全ては血の繋がっている息子(瑛人)にだけに遺産を残すための歪んだ愛情からきており、病気で全身が麻痺し動けない貞吉の耳元でそれを語って聞かせる瑛里奈の様子は、ヒッチコックやスティーブン・キングの作品のような恐ろしさ。伊武雅人の目の芝居だけの芝居が今回も冴えていた。
瑛里奈は夫の公平が警察幹部であるため、自宅での事件が公にされることはないとたかをくくっているため、やりたい放題になってきている。
一方、その入間公平は、前回殺害された寺角類(渋川清彦)が紫門暖と同じ浜浦町出身だと知り、怪しんでいる様子。暖の死亡報告書はラデル共和国から届けられていたのだが、その資料の中に「ファリア真海」(暖に知識や資産を与えた恩人)の名を発見し、何かピンときたようだ。
今回は、真海が寺角殺害の件で警察に連行されるところで終了となった。神楽も「元・漁師の勘」だと真海を疑いだしているし、果たして双方どこまで掴んでいるのか?
原作では、入間(ヴィルフォール)にしろ神楽(ダングラール)にしろ、途中で真海=暖(モンテ・クリスト伯=エドモン・ダンテス)であると見破る展開はなく、どちらも本人に種明かしをされて「えーーー!」となるお約束であるだけに、ドラマならではの展開だとしたら、この先をどう描くのか楽しみだ。
■東京-鎌倉間の移動が早すぎないか?
細かい点だが気になった点をいくつか。
エデルヴァはなぜ「江田」という近い偽名を使ったのか? 原作では、ドラマでのマネジャー設定がないためフェルナン(南條)とエデ(江田)が、最後フェルナンが告発される法廷まで接触することはなく、そのため偽名自体出てこないのだが、ドラマでは少なくともバレる可能性は排除したいはずなのに「エデルヴァ」に近い名前を使っている。絶対にバレないという自信がそうさせているのか、はたまたバレてほしい気持が根底にあるからなのか、謎だ。
そしてもう一点。南條やすみれが、東京-鎌倉間を行き来するのだが、その移動時間がやけに短いのだ。南條は、ヴァンパに3時までに情報を掴んで自宅に戻らないと妻子を殺すと脅されてるのに、鎌倉の真海邸を出たのは2時だし(ギリギリ間に合っている)、すみれも、ベストパートナー賞の楽屋にもう南條は入っているのに、単身真海邸に赴き、込み入った話をして、こちらも本番までにギリギリ戻れている。
どちらも車で移動のはずだが、大事な授賞式や、ましてや妻子の命がかかっているのにそんなギリギリで行動するだろうか?
ちなみに鎌倉と東京(港区だとして)はグーグル検索で1時間15分(車使用)はかかる距離だ。
真海がシンガポールまで密航した際などもそうだが、このドラマは移動の描き方だけは随分雑な気がする。
次回予告。入間が「復讐ごっこは終わりだよ、お前の負けだ、紫門暖」と笑うシーン。原作にはなさそうな展開が楽しみだ。
(文=どらまっ子HARUちゃん)

