「会社に勤めずに屋根と壁を手に入れている」“プロヒモ”ふみくんが説く、令和の「シン・ヒモ」論

  ふみくんは、これまで13年間で10人以上の女性宅に転がり込み、都合1000万円もの家賃を浮かせ、飯をおごられ物品を貢がれてきた。いわゆる「ヒモ」である。自ら称すところの「決してイケメン」ではないノーマル顔ながら女性にパラサイトし、会社に勤めるといった嫌なことから逃げまくる。「三十にして立つ」とはどこぞの偉い人の言葉だが、もちろん立っていない。

 だが、「誰も…

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プレステのコントローラーを取り上げられたヒモ男、パチンコだけで生きていけると確信してみた

(これまでのお話はこちらから)

 働きたくないながら、彼女の圧力がいよいよ凄いことになってきたヒモ男。そんな私に、新たな危機が迫っていた。

 働かないヒモ男は、当然ヒマを持て余している。そんなヒモ男の頼れる味方が、プレステだ。某アイドルがCMをやっている、「〇〇ないと!」なシューティングゲームをやりまくる日々。このゲームは無料ダウンロードできるので、貧しいヒモでも心置きなく遊び倒せるのだ。

 彼女の部屋で、彼女のテレビにつないだ、彼女のプレステのコントローラーをガッチャガッチャ鳴らして遊んでいる私に、彼女が言い放った。

「ゲームしすぎ。明日、会社にコントローラー持っていくから」

 絶望した。「やだやだやだやだ」とじたばた抵抗するも、拳で鎮圧された。

 こうして、教育ママの如くコントローラーを彼女が没収し、私はヒマつぶしの手段を失ったのであった。

 早急にコントローラーを買い直さなければならない。奪われることのない、自分のコントローラーを手に入れる必要がある。

 そのためにはお金が必要で、哀しいかな、お金を得るためには働かなければいけないのだ。

 しかし、働きたくないし、ここで素直に働く人間ならコントローラーを没収されていない。

 苦悩する私の頭に、天啓が降りた。

 そうだ。パチンコで勝てば、働かずにお金が入るし、ヒマつぶしにもなって一石二鳥。

 ここで焦ってパチンコを打ちに行くのは、三流のヒモである。二流のヒモは、どうすれば勝てるのかを、入念にシミュレートする。なお、一流のヒモは彼女にコントローラーを取り上げられたりはしない。

 まず、基本的なパチンコの仕組みを考える。

 お金を入れる。玉が貸し出される。その玉をガラガラ打つと、何発かが機体の真ん中にある穴に入る。穴に玉が入った数だけ、スロットが回る。このスロットが揃うと、玉が増える。

 このスロットの当たりやすさと、当たったときに増える玉の多さを表すのが、スペックというデータである。

 細かい話をすっ飛ばし、ザックリ説明すると、次のようになる。

 データを入念に読み解くと。1,000円で真ん中に20発以上入るなら、期待値はプラスで、打ち続ければいつか儲かる。という感じの、機種を見つけることができる。

 必勝法と言えるだろう。

 意気揚々と近所のパチンコ屋に出向いた。そして、その日のうちに7,000円ほど勝ってパチンコ屋を後にした。

 タバコを吸いながら、ハンドルに指を引っ掛けて固定して、スマホを眺めているだけで、7,000円である。

 私は思った。私は天才なのではないかと。これならパチンコを打っているだけで生きていけると確信した。

 翌日、有り金の全てを握りしめ、朝イチで同じ店に入った。

 狙い通り、前日と同じ台をゲットした。

 ガラスに鼻の皮脂がつくほどベッタリ密着し、釘が変わっていないか一本一本チェックした。周囲の客が怯え、離れていく気配を感じながら、気が済むまで念入りに確認。釘は変わっていなかった。

 一日中、その台を打ち続け、収支2万円ほど勝利を収めた。玉満載の箱が背後に積み上げられていくたびに、鼻の穴が膨らむのを感じた。

 コントローラーを取り上げたのに、平然としている私を不思議そうに見ている彼女の様子に、笑いをこらえるので必死だった。

 翌日も、朝イチで同じ台を確保。親の顔より見た釘だ。変わっていないと、確信を持って言える。

 順調に玉は機体の真ん中に入っていき、スロットは回っていく。しかし、ここで異変があった。

 抽選を平均300回すれば大当たりになるはずなのに、500回を超えても一向に当たる気配がない。

 しかし、ここまで回したのだから、じきに当たる。むしろ、ここで台を移動して他の人にカッさらわれる方がもったいない。

 執念で回し続け、なんとか当たりを引く。が、ぶち込んだ金額に対して、戻ってくる玉はあまりに少ない。

 そこで引いては、負けで帰ることになる。許容できなかった。

 期待値はプラスなのだ。一時的にヘコむことがあっても、回し続ければ勝てる。

 そう信じ、打ち続けること半日。威勢よくガラガラ鳴っていたパチンコ台は、スカンッスカンッスカンッと虚しい空打ちの音を響かせていた。

 残金、700円。持ち玉、0発。

 いつの間にか、全てを失っていた。期待値はプラスだったはずなのに。なぜか、圧倒的大敗北を喫していたのだ。

 これは、遠隔操作をされたに違いない。私は店の天井を睨みつけた。が、蛍光灯がまぶしくて、目がチカチカしたのですぐにやめた。

 遠隔操作とは、パチンコ界隈の都市伝説で、勝っている客がいると、店員がバックヤードから操作して、当たり確率を下げるというものだ。ありそうだ。いかにもありそうだ。

 私は脳内で激怒した。必ず、かの邪智暴虐なパチンコ屋の企みを除かんと。鼻息荒く家に帰ると、彼女に宣言した。

「俺、バイトする」

 そのパチンコ屋でバイトをし、内側から遠隔操作の真実を暴くのだ。

 こうして、私はとうとう働くことになったのである。

(文=窪田ショウ/第5話へつづく)

●窪田ショウ
勤労意欲は、タバコと一緒に燃やしてしまった現役のヒモ。楽をしようとすればするほど、妙に大変なことに巻き込まれるのはなぜだろう。

彼女に張り倒されたヒモ男、ラーメン屋の軒先に現れる“脱糞犯”を追ってみた

 先日はマルチ商法と闇金の合体モンスターに襲われかけた、現役のヒモの私だが、とうとう彼女に張り倒された。まもなく壊れそうなラジオを歌う名曲がテレビで流れたのがきっかけだ。彼女が言った。

「もう思春期終わってるんだから、少年から大人になったら?」

 強烈な一言である。すかさず言い返してやった。

「ぼくまだ思春期きてないもん!」

 音速で張っ倒された。妥当な結果である。すっかり成人して、青ひげ生やした男が言っていいセリフじゃない。

 さて、下半身しか思春期を迎えていない私は、お下品なものを男子小学生並みに愛している(男子小学生の皆さん、ごめんなさい)。

 これは、彼女に大人になることを強いられているヒモ男が、お下品な仕事に嬉々として立ち向かう奮闘記である。

 * * *

 未だ大学生をしている悪友と飲んでいるときに、悪友が愚痴を漏らした。

「この前さ、バイト先でやばいことがあって」

 彼は個人経営のラーメン屋でアルバイトをしている。

「店に入ってきた爺さんが、『あっ』って言って、そのまま出て行ったんだよ。財布でも忘れたのかなーと思って気にしてなかったんだけど、そのあと会計済ませたお客さんが戻ってきて『店の前にう○こ落ちてる!』って」

 それだけで腹を抱えて笑ってしまった。

「お爺さん、我慢できなかったのかね」

 などと、まだ犯人と決まっていないお爺さんを犯人だと決めつけ、笑い続けた。

 その日はこれで終わった。が、う○こ騒動はそれだけでは終わらなかった。後日、その友人からLINEが届いた。

「暇だよな?」

「無限に暇」

「さすが無職。この前、う○こ落とし爺さんの話したじゃん」

「花咲か爺さんみたいな言い方やめろ」

「あれからまた、う○こ落とされてるみたいで、店長が犯人探ししてるんだよ。で、見つけてとっ捕まえて警察に通報したら1万円くれるらしい」

「やる。絶対捕まえるわ」

 こうして、う○こ犯を捕まえる大作戦が始まった。作戦は簡単で、暇なやつが、店の向かい側のコンビ二付近で待機し、脱糞している人物を見かけたら捕獲するというものである。

 タバコを吹かしながら暇な悪友たちと見張り続けた。集中力はそう長く続かないもので、途中から「あの人、いかにも脱糞しそうな顔してる」「あのお姉さんが脱糞してたら熱い。いや、しろ!」などと、勝手に通行人の脱糞を想像するゲームに変わっていた。

 見張り続けていれば腹が減る。ラーメン屋に入り、のんびりと夕食を済ませたあとのことである。外に出ると、のれんの下にあったのだ。う○こが。

「やられた!」

 全員、悔しいというよりも、「マジで脱糞犯いるんだ」という事実に、笑いをこらえていた。

 面白かったが、見張り組の失態なのは間違いない。証拠隠滅して誤魔化すことになった。誰が処分するのか揉めに揉め、果てにじゃんけんで負けた私がやることになった。

 ビニール袋を重ねてひっつかみ、厳重に包んで店の裏のゴミ捨て場に投げ込んだ。指先に伝わる柔らかな感触と、捨てたときの「どちっ」という重たい音と、「かしゃっ」という軽やかなビニールの音が、今でも記憶にこびり付いている。ただ、健康そうな便であったことは報告しておこう。おそらく、世界一要らない報告だとは思うが。

 こうして、敗北を一つ刻み、我々は闘志を燃やすこととなった。見張りも、以前より隙のないシフトで組まれた。

 数日間の見張りの後、友人と私がタバコを吸いながら待機していると、友人が囁いた。

「あの爺さんだ」

 見た目はごく普通の、カーキ色のカーディガンを着た、70代くらいのご老人だ。格好はどこも変ではないが、挙動が不審である。きょろきょろと周囲の様子をうかがっているようだ。そこで、何かを察したのか、年に見合わぬ健脚で、走って逃げ出した。

 慌てて二人で追いかけたが、ヘビースモーカーのスタミナのなさが仇となり、すぐには追いつけなかった。

 そのお爺さんは、周到にも近くに自転車を用意していたらしく、ママチャリに乗ったカーキ色の背中が遠ざかっていった。

 戦いは、始まる前から結果が決まっているものなのだ。我々は、老獪な脱糞犯に、完全敗北した。

 結局、脱糞犯を捕まえることはかなわなかったが、それ以来被害はないということで、5000円頂いた。

 これは十分、働いたと言えるのではないだろうか。彼女にそう自慢をしたら、とても哀しいものを見る目をされた。そろそろ心が痛いので、少しは働いてみようと思う。

(文=窪田ショウ/第4話へつづく)

●窪田ショウ
勤労意欲は、タバコと一緒に燃やしてしまった現役のヒモ。楽をしようとすればするほど、妙に大変なことに巻き込まれるのはなぜだろう。