唐田えりか主演 男と女の本音がクロスする街歩き『の方へ、流れる』

 男と女の関係は、あみだくじのように複雑で、どんな結末を迎えるのか予測するのは難しい。「理想の恋人だ」と直感が働いても、残念な結果に終わることもある。「ちょっと無理」と思っていた相手と結ばれるケースもある。どう転がるのか読めない男女の心のナイーブな動きを鮮やかに描いてみせたのが、新鋭・竹馬靖具監督による映画『の方へ、流れる』だ。

 運河の街・清澄白河が舞台。偶然に出会った男女が…

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香川照之14年ぶりの主演作『宮松と山下』 多面体俳優が素顔に戻る瞬間

 映画は基本的にフィクションの世界であり、脚本や演出に基づいて、俳優は架空のキャラクターを演じてみせる。だが、観客はしばしば、スクリーン上に映し出されたキャラクターと演じている俳優とを重ねて観てしまう。どんなに巧妙に演じられているキャラクターであっても、演じている役の仮面が外れる瞬間があり、俳優の素顔が見えてしまうことがあるからだ。ある意味、すべての映画はドキュメンタリー的な側面があるとも言…

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韓国で大ヒットした新型パニック映画! 欠陥住宅をめぐる恐怖『奈落のマイホーム』

 大地震、大火災、大水害、人喰いザメ、巨大隕石の落下、謎のウイルスの感染爆発……。さまざまな災害が人類を襲うパニック映画が、これまで数多くつくられてきた。韓国では実話系マッドマックス『モガディシュ 脱出までの14日間』(21)に続く、2021年の年間興収第2位の大ヒットを記録した『奈落のマイホーム』(英題『SINKHOLE』)は新種のパニック映画となっている。「シンクホール」と呼ばれる都市型…

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映画愛溢れるロードムービー 全国のミニシアターを巡る『あなたの微笑み』

 ミニシアター文化はこのまま消滅してしまうのだろうか。街の古い映画館はすべて取り壊され、シネコンや配信サービスに変わってしまうのだろうか。岩波ホールやテアトル梅田などの伝統ある劇場の閉館ニュースを聞くと、時代が大きく変わりつつあることを感じずにはいられない。コロナ禍によって、より苦境に立つ日本各地のミニシアターの現状を、セミドキュメンタリータッチで描いた映画『あなたの微笑み』が公開される。マ…

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瀬戸内寂聴がモデルの大人の恋愛映画 寺島しのぶが剃髪で挑む『あちらにいる鬼』

 恋多き女。2021年11月9日に99歳で亡くなった瀬戸内寂聴は、生涯そう呼ばれた。若手作家時代に発表した『花芯』は性描写の赤裸々さから、「子宮作家」とも呼ばれることになった。戦後派を代表する作家・井上光晴と不倫関係にあったことでも知られている。11月11日(金)より公開される映画『あちらにいる鬼』は、直木賞作家・井上荒野が父・井上光晴と瀬戸内寂聴をモデルにして描いた同名小説が原作だ。脚本家…

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佐々木譲の大河小説が韓流映画に! 悪と善との境界に立つ『警官の血』

 親を早くに亡くした子どもは、親が亡くなった年齢が近づくと考え込むようになる。親はなぜ死んだのか、死を避ける方法はなかったのかと。もはや答えを返してはくれない親に代わって、子は自分自身でその答えを探すしかない。佐々木譲の長編小説『警官の血』(新潮社)は、勤務中に亡くなった警官を父に持つ主人公が、自身も警官になることでその死因を究明しようとする物語だ。2008年版「このミステリーがすごい!」の…

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バイオレンスホラー新時代の幕開け! 閉塞感を吹き飛ばす『オカムロさん』

 低予算ながら、振り切った演出が売りとなるホラー映画は、新しい才能が次々と誕生するゆりかごのような映画ジャンルだ。ハリウッドでは『ゲット・アウト』(17)でジョーダン・ピール監督が、『ヘレディタリー/継承』(18)でアリ・アスター監督が大ブレイクした。1999年生まれの松野友喜人監督の長編デビュー作『オカムロさん』も、Jホラー新世代の到来を思わせる快作となっている。

 2021…

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田中裕子、尾野真千子、安藤政信ら共演『千夜、一夜』 人はなぜ失踪するのか?

 年間およそ8万人。日本国内における行方不明者の数である。犯罪に巻き込まれたケース、認知症などの疾病が原因で行方が分からなくなったケースなどもあるが、原因がはっきりしないことも少なくない。人はなぜ失踪するのか、そして失踪者の帰りを待つ家族はどんな心境で過ごしているのか。そんなナイーヴな問題をドラマ化したのが、田中裕子、尾野真千子、安藤政信らが共演した映画『千夜、一夜』だ。

 本…

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阿部サダヲ主演の痛快コメディと思いきや…孤独死を描く『アイ・アム まきもと』

 阿部サダヲ主演のコメディ映画といえば、水田伸生監督と組んだ『舞妓Haaaan!!!』(07)や『謝罪の王様』(13)が共に興収20億円を超えるヒットになったことが思い出される。その2人の最新タッグ作『アイ・アム まきもと』の公式サイトを覗くと、そうしたヒット作を連想させる賑々しい予告動画が並んでいる。だが、「大笑いさせてくれそうだな」と思って劇場に足を運んだ人は、戸惑いを覚えることになるだ…

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「彼女は私だ」幡ヶ谷バス停殺人事件をモチーフにした劇映画『夜明けまでバス停で』

 「彼女は私だ」

 2020年11月16日未明に渋谷区幡ヶ谷のバス停で起きた暴行致死事件のあと、そんな声がSNSに上がった。NHK総合のドキュメンタリー番組『事件の涙』が亡くなった大林三佐子さんの生前の足取りを伝えると、その声はより大きく広がった。コロナ禍で仕事と居場所を失った大林さんは、バス利用者の邪魔にならないよう、運行を終えた後の深夜のバス停で過ごしていたところ、男に頭を…

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